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特許7511100テンプレート非依存性核酸合成の方法およびキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】テンプレート非依存性核酸合成の方法およびキット
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/34 20060101AFI20240628BHJP
   C12N 9/12 20060101ALI20240628BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20240628BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240628BHJP
【FI】
C12P19/34 A
C12N9/12
C12N15/54
C12N15/11 Z ZNA
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022539257
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 US2020066336
(87)【国際公開番号】W WO2021133713
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】16/725,420
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522252419
【氏名又は名称】陳 呈堯
【氏名又は名称原語表記】CHEN, Cheng-Yao
【住所又は居所原語表記】Room 717, Innovation & Incubation Hall, National Tsing Hua University, 101, Sec. 2, Kuang-Fu Rd., Hsinchu, 30013, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100230156
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 心
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】陳 呈堯
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-500069(JP,A)
【文献】特表2009-509534(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0171078(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0085073(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0035690(US,A1)
【文献】特開平10-004966(JP,A)
【文献】特開平09-285289(JP,A)
【文献】特表2004-500052(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0078126(US,A1)
【文献】Biochemistry,2011年,50,5379-5390
【文献】Biochemistry,2004年,43,13459-13466
【文献】Biochemistry,2018年,57(12),1821-1832
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 9/10
C12P 19/34
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護されていないヌクレオシド塩基およびその3’末端に保護されていない3’ヒドロキシル基を有するイニシエーターを提供すること、
ファミリーBのDNAポリメラーゼの保存的触媒ポリメラーゼドメインを少なくとも有する核酸ポリメラーゼを提供すること、
ヌクレオチドモノマーを提供すること、および
核酸ポリメラーゼおよび少なくとも1種類の二価のカチオンである金属補因子の存在下、テンプレートの非存在下で、ヌクレオチドモノマーがイニシエーターに組み込まれるように、イニシエーターをヌクレオチドモノマーに曝露すること
を含み、
前記イニシエーターが、一本鎖形態であり、
前記核酸ポリメラーゼが、さらに3’から5’のエキソヌクレアーゼドメインを有し、
前記核酸ポリメラーゼが、ファミリーBのDNAポリメラーゼであり、
前記ファミリーBのDNAポリメラーゼの3’から5’のエキソヌクレアーゼドメインが、不活性化および減衰からなる群から選択される方法で修飾されたものであり、
前記ファミリーBのDNAポリメラーゼが、サーモコッカスDNAポリメラーゼ又はピロコッカスDNAポリメラーゼである
核酸を合成する方法。
【請求項2】
前記イニシエーターが、非自己相補性配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イニシエーターが固体支持体に連結され、かつ当該固体支持体に連結された5’末端を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固体支持体が、マイクロアレイ、ビーズ、カラム、光ファイバ、ワイプ、ニトロセルロース、ナイロン、ガラス、石英、ジアゾ化膜、シリコーン、ポリホルムアルデヒド、セルロース、酢酸セルロース、紙、セラミック、金属、メタロイド、半導体材料、磁性粒子、プラスチック、ゲル形成材料、ゲル、ナノ構造表面、ナノチューブ、およびナノ粒子から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記イニシエーターが10℃から90℃の範囲の温度でヌクレオチドモノマーに曝露される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記イニシエーターが、8.0以上のpHでヌクレオチドモノマーに曝露される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金属補因子が、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Mn2+、Co2+、Fe2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ファミリーBのDNAポリメラーゼは、サーモコッカス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis、KOD1)のファミリーBのDNAポリメラーゼ、ピロコッカス・フューリアス(Pyrococus furious、Pfu)のファミリーBのDNAポリメラーゼ、サーモコッカス属(Thermococcus sp.、9°N)のファミリーBのDNAポリメラーゼ、サーモコッカス・ゴルゴナリウス(Thermococcus gorgonarius、Tgo)のファミリーBのDNAポリメラーゼ、およびサーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis、Vent)のファミリーBのDNAポリメラーゼからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記イニシエーターが少なくとも5つのヌクレオチドモノマーを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ヌクレオチドモノマーが、一リン酸塩、二リン酸塩、三リン酸塩、四リン酸塩、五リン酸塩および六リン酸塩から選択されるリン酸塩基を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ヌクレオチドモノマーが、3’-O-ブロッキング部分、塩基ブロッキング部分、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される除去可能なブロッキング部分を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
保護されていないヌクレオシド塩基およびその3’末端に保護されていない3’ヒドロキシル基を有するイニシエーター、ファミリーBのDNAポリメラーゼの保存的触媒ポリメラーゼドメインを少なくとも有する核酸ポリメラーゼ、およびヌクレオチドモノマーを含む、核酸を合成するキットであって、
前記キットが、前記核酸ポリメラーゼを使用してテンプレート非依存性核酸合成を行うためのものであり、
前記イニシエーターが、一本鎖形態であり、
前記核酸ポリメラーゼが、さらに3’から5’のエキソヌクレアーゼドメインを有し、
前記核酸ポリメラーゼが、ファミリーBのDNAポリメラーゼであり、
前記ファミリーBのDNAポリメラーゼの3’から5’のエキソヌクレアーゼドメインが、不活性化および減衰からなる群から選択される方法で修飾されたものであり、
前記ファミリーBのDNAポリメラーゼが、サーモコッカスDNAポリメラーゼ又はピロコッカスDNAポリメラーゼである、キット。
【請求項13】
前記イニシエーターが、非自己相補性配列を有する、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記ファミリーBのDNAポリメラーゼは、サーモコッカス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis、KOD1)のファミリーBのDNAポリメラーゼ、ピロコッカス・フューリアス(Pyrococus furious、Pfu)のファミリーBのDNAポリメラーゼ、サーモコッカス属(Thermococcus sp.、9°N)のファミリーBのDNAポリメラーゼ、サーモコッカス・ゴルゴナリウス(Thermococcus gorgonarius、Tgo)のファミリーBのDNAポリメラーゼ、およびサーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis、Vent)のファミリーBのDNAポリメラーゼからなる群から選択される、請求項12に記載のキット。
【請求項15】
前記ヌクレオチドモノマーが、3’-O-ブロッキング部分、塩基ブロッキング部分、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される除去可能なブロッキング部分を有する、請求項12に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
この出願は、2019年12月23日に出願された米国特許出願第16/725,420号の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、核酸合成の方法およびキット、より具体的には、テンプレート非依存性核酸合成の方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0003】
DNAテンプレートを使わないデノボ(De novo)DNA合成は、過去数十年の間に開発されてきた。現在利用可能なテンプレート非依存性DNA合成法の中で、ホスホルアミダイト系の化学的DNA合成は、1980年代初頭からよく知られているが、基本的にはそれ以来変更されていない。ホスホルアミダイト系の化学的DNA合成では、固体支持体につながれた別のヌクレオシドに1つのヌクレオシドを追加するために、脱ブロック、カップリング、キャッピング、および酸化の工程を含む4つの連続した反応工程が必要である。しかしながら、ホスホルアミダイト系の化学的DNA合成の主要な欠点の1つは、前記の反応工程で有害な化学物質の使用が避けられないことである。
【0004】
環境保護に対する需要の高まりから、DNA合成に適用可能なグリーンテクノロジーが研究者に注目されている。したがって、有害な化学物質の使用を大幅に削減できる酵素的DNA合成は、より長い鎖の生成、より低いエラー率、より速いサイクルタイム、より低い製造コストなどのメリットを有するので、有望であると思われる。
【0005】
テンプレート非依存性酵素的DNA合成と言えば、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)は、すべての4つのデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)をDNA鎖の3’末端に付加するテンプレート非依存性DNAポリメラーゼとして発見されている。TdTは、低忠実度のDNAポリメラーゼであるXファミリーに属している。TdTベースのDNA合成には、合成されている一本鎖DNA鎖の延長された3’末端から、TdTによる一塩基付加と、それに続く3’保護基の除去という2つの反応工程のみが必要である。TdTとそのホモログは多くのDNA合成プラットフォームに適用されているが、TdTに基づくテンプレート非依存性酵素的DNA合成は、生成物の長さ、試薬の再利用性、サイクルタイムなどが不十分であるため、ほとんど商品化されできない。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本開示の目的は、従来技術の欠点の少なくとも1つを軽減することができる、核酸を合成する方法およびキットを提供することである。
【0007】
この方法は、保護されていないヌクレオシド塩基およびその3’末端に3’ヒドロキシル基を有するイニシエーターを提供すること、ファミリーBのDNAポリメラーゼの少なくとも保存的触媒ポリメラーゼドメインを有する核酸ポリメラーゼを提供すること、ヌクレオチドモノマーを提供すること、核酸ポリメラーゼおよび少なくとも1種類の二価のカチオンである金属補因子の存在下、テンプレートの非存在下で、ヌクレオチドモノマーがイニシエーターに組み込まれるように、イニシエーターをヌクレオチドモノマーに曝露することを含む。
【0008】
キットは、上記のようなイニシエーター、上記のような核酸ポリメラーゼ、上記のような少なくとも1種類の金属補因子、および上記のようなヌクレオチドモノマーを含む。キットは、上記の方法に従って使用される。
【0009】
本開示の他の特徴および利点は、添付の図面を参照する以下の実施形態の詳細な説明において明らかになる
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ファミリーBのDNAポリメラーゼを使用するデノボ核酸合成スキームである。
図2】KOD1exo-DNAポリメラーゼを使用して、異なる反応温度で得られたテンプレート非依存性核酸合成の生成物を示す変性尿素-ポリアクリルアミドゲルの画像であり、記号「S」はイニシエーターDNAの位置を示す。
図3】Ventexo-DNAポリメラーゼを使用して、異なる反応温度で得られたテンプレート非依存性核酸合成の生成物を示す変性尿素-ポリアクリルアミドゲルの画像であり、記号「S」はイニシエーターDNAの位置を示す。
図4】、Pfuexo-DNAポリメラーゼを使用して、異なる反応温度で得られたテンプレート非依存性核酸合成の生成物を示す変性尿素-ポリアクリルアミドゲルの画像であり、記号「S」はイニシエーターDNAの位置を示す。
図5】、Ventexo-DNAポリメラーゼ、KOD1exo-DNAポリメラーゼ、またはPfuexo-DNAポリメラーゼを使用して、Mg2+のみの存在下、またはMn2+との組み合わせで、得られたテンプレート非依存性核酸合成の生成物を示す変性尿素-ポリアクリルアミドゲルの画像であり、ここで、記号「S」はイニシエーターDNAの位置を示し、記号「V」、「K」、および「P」は、それぞれVentexo-DNAポリメラーゼ、KOD1exo-DNAポリメラーゼ、およびPfuexo-DNAポリメラーゼを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において先行技術の刊行物が参照される場合、そのような参照は、その刊行物が台湾または他の国における当技術分野の一般的な知識の一部を形成することを認めるものではないことを理解される。
【0012】
本明細書の目的のために、言葉「含んでいる(“comprising”)」は「含むがこれらに限定されない」を意味し、言葉「含む(“comprises”)」は対応する意味を有することが明確に理解される。
【0013】
別途での定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。当業者は、本開示の実施に使用することができる、本明細書に記載のものと類似または均等な多くの方法および材料を認識する。実際に、本開示は、記載された方法および材料に決して限定されない。
【0014】
驚くべきことに、出願人は、テンプレート依存性DNAポリメラーゼとしてよく知られているファミリーBのDNAポリメラーゼを使用して、テンプレート非依存性核酸合成(すなわち、デノボ核酸合成)を実施できることを発見した。図1を参照すると、ファミリーBのDNAポリメラーゼを使用するデノボ核酸合成スキームが示されている。
【0015】
ファミリーBのDNAポリメラーゼ(タイプBのDNAポリメラーゼとしても知られている)は、触媒ポリメラーゼドメインと3’から5’のエキソヌクレアーゼドメインを本質的に有する複製・修復のポリメラーゼ、細菌、古細菌、真核生物、およびウイルスに見られる。用語「触媒ポリメラーゼドメイン」とは、タンパク質のアミノ酸配列において、タンパク質の触媒DNA/RNAポリメラーゼ活性を有し、他の触媒活性、例えば、編集活性(例えば、3’から5’のエキソヌクレアーゼドメインの校正活性)、複製中の岡崎プライマーの切除活性、および他のタンパク質との相互作用活性を含まない構造部分または領域を指す。ファミリーBのDNAポリメラーゼの触媒ポリメラーゼドメインは、右手に似ており、親指、手のひら、および指のドメインからなる共通の全体的なアーキテクチャを持っている。最も保存されている領域は、触媒部位を含む手のひらのドメインである。
【0016】
ファミリーBのDNAポリメラーゼの例としては、細菌ファミリーBのDNAポリメラーゼ(例えば、Pol II)、真核生物ファミリーBのDNAポリメラーゼ(例えば、Polα、Polδ、Polε、およびPolζ)、古細菌ファミリーBのDNAポリメラーゼ(例えば、Pol B、Pol BI、Pol BII、Pol BIII、9°N、Kod1、Pfu、Tgo、Vent)、およびウイルスファミリーBのDNAポリメラーゼ(例えば、HSV-1、RB69、T4、B103およびΦ29)が含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
したがって、本開示は、
保護されていないヌクレオシド塩基およびその3’末端に3’ヒドロキシル基を有するイニシエーターを提供すること、
ファミリーBのDNAポリメラーゼの少なくとも保存的触媒ポリメラーゼドメインを有する核酸ポリメラーゼを提供すること、
ヌクレオチドモノマーを提供すること、および
核酸ポリメラーゼおよび少なくとも1種類の二価のカチオンである金属補因子の存在下、テンプレートの非存在下で、ヌクレオチドモノマーがイニシエーターに組み込まれるように、イニシエーターをヌクレオチドモノマーに曝露することを含む、核酸を合成する方法を提供する。
【0018】
本明細書で使用される用語「核酸」、「核酸配列」および「核酸断片」とは、一本鎖または二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド配列を指し、天然に存在するヌクレオチドまたは人工化学模倣物を含む。本明細書で使用される用語「核酸」とは、使用上、「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」、「DNA」、「RNA」、「遺伝子」、「cDNA」および「mRNA」という用語と交換可能である。
【0019】
一般に、「テンプレート」は、標的ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドである。ある実施態様では、「標的配列」、「テンプレートポリヌクレオチド」、「標的核酸」、「標的ポリヌクレオチド」、「核酸テンプレート」、「テンプレート配列」およびそれらの変形という用語は、交換可能に使用される。具体的には、用語「テンプレート」とは、テンプレート依存性核酸ポリメラーゼの活性を介してヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体から相補コピーが合成される核酸の鎖を指す。二本鎖内では、テンプレート鎖は、慣例により、「ボトム」鎖として示され、説明されている。同様に、非テンプレート鎖はしばしば「トップ」鎖として示され、説明される。また、「テンプレート」鎖は「センス」鎖、非テンプレート鎖は「アンチセンス」鎖と呼ばれることもある。
【0020】
用語「組み込まれた(incorporated)」または「組み込まれる(incorporation)」とは、核酸の一部になることを指す。核酸前駆体の組み込みに関する用語には既知の柔軟性がある。例えば、ヌクレオチドdGTPはデオキシリボヌクレオシド三リン酸である。DNAに組み込まれると、dGTPはdGMP、すなわち、デオキシグアノシン一リン酸部分になる。DNAにはdGTP分子が含まれていないが、dGTPをDNAに組み込んでいると言える。
【0021】
用語「イニシエーター」とは、核酸をデノボで合成するためのモノヌクレオシド、モノヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはそれらの修飾類似体を指す。
【0022】
本開示によれば、イニシエーターは、非自己相補性配列および非自己相補性形成配列から選択される配列を有してもよい。用語「自己相補性(self-complementary)」とは、配列(例えば、ヌクレオチド配列またはPNA配列)がそれ自体に折り返され(すなわち、配列の領域が配列の別の領域と結合またはハイブリダイズする)、核酸合成のテンプレートとして機能し得るデュプレックス、二本鎖のような構造を形成することを意味する。配列の相補的ない領域がどれだけ接近しているかに応じて、鎖は、例えば、ヘアピンループ、接合部、バルジまたは内部ループを形成してもよい。用語「自己相補性形成」とは、配列(例えば、ヌクレオチド配列、XNA、またはPNA配列)がテンプレートとして機能するときに、その配列から相補性の拡張部分が形成される(すなわち、テンプレートとして機能するその配列に基づいて、自己相補性配列が形成される)ことを表すために用いられる。例えば、自己相補性形成配列は「ATCC」であってもよい。「ATCC」配列がテンプレートとして機能する場合、その配列から当該配列に相補的な拡張部分「GGAT」が形成される(すなわち、自己相補性配列「ATCCGGAT」が形成される)。
【0023】
用語「保存(conservative)」または「保存された(conserved)」とは、同じ構造および/または機能を有する複数のタンパク質間で同じであるアミノ酸残基を含むドメインを説明するために使用される。保存されたアミノ酸残基の領域は、タンパク質の構造または機能にとって重要である可能性がある。したがって、三次元タンパク質で同定された連続した保存アミノ酸残基は、タンパク質の構造または機能にとって重要である可能性がある。
【0024】
例えば、Alba(2001)、Genome Biology、2(1):reviews3002.1からreviews3002.4で報告されているように、ファミリーBのDNAポリメラーゼには、触媒ポリメラーゼドメインの活性部位の一部を形成し、それはそれぞれ保存アミノ酸残基「DT」および「SLYPS」を含むことができる領域IおよびIIを有する。領域Iは、アミノ酸残基512から582、アミノ酸残基513から582または583、あるいはアミノ酸残基535から604にまたがることができる。領域IIは、アミノ酸残基375から441または442、あるいはアミノ酸残基397から464にまたがることができる。
【0025】
本開示によれば、核酸ポリメラーゼはさらに3’から5’のエキソヌクレアーゼドメインを有してもよく、細菌ファミリーBのDNAポリメラーゼ、真核生物ファミリーBのDNAポリメラーゼ、古細菌ファミリーBのDNAポリメラーゼ、およびウイルスファミリーBのDNAポリメラーゼからなる群から選択されるファミリーBのDNAポリメラーゼであってもよい。いくつかの実施形態において、ファミリーBのDNAポリメラーゼは、サーモコッカス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis、KOD1)のファミリーBのDNAポリメラーゼ、ピロコッカス・フューリアス(Pyrococus furious、Pfu)のファミリーBのDNAポリメラーゼ、およびサーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis、Vent)のファミリーBのDNAポリメラーゼからなる群から選択される。
【0026】
本開示によれば、ファミリーBのDNAポリメラーゼの3’から5’のエキソヌクレアーゼドメインは不活化されてもよい。代わりに、ファミリーBのDNAポリメラーゼの3’から5’のエキソヌクレアーゼ活性は低減されてもよい。さらに代わりに、ファミリーBのDNAポリメラーゼの3’から5’のエキソヌクレアーゼドメインは変化しないままであってもよく、本開示において、ファミリーBのDNAポリメラーゼの3’から5’エキソヌクレアーゼドメインを阻害するために、阻害剤が使用されてもよい。
【0027】
本開示によれば、代わりに、核酸ポリメラーゼは、前記の保存的触媒ポリメラーゼドメインのみを有してもよい。いくつかの実施形態において、核酸ポリメラーゼは、もともと前記の保存的触媒ポリメラーゼドメインのみを有するように設計されている。他の実施形態において、核酸ポリメラーゼは、もともと3’から5’のエキソヌクレアーゼドメインを有するファミリーBのDNAポリメラーゼであり、当該ドメインは核酸ポリメラーゼから除去されている。
【0028】
いくつかの実施形態において、イニシエーターは一本鎖形態である。
【0029】
いくつかの実施形態において、イニシエーターは、少なくとも5個のヌクレオチドを有する。例示的な実施形態において、イニシエーターは45個のヌクレオチドを有する。
【0030】
いくつかの実施形態において、イニシエーターは、10℃から90℃の範囲の温度でヌクレオチドモノマーに曝露され、および/またはイニシエーターは、8.0以上(例えば、8.8)のpHでヌクレオチドモノマーに曝露される。
【0031】
本開示によれば、ヌクレオチドモノマーは、その構成要素が糖、リン酸塩基および窒素塩基である天然核酸ヌクレオチドであってもよい。糖は、RNAにおけるリボース、またはDNAにおける2’-デオキシリボースであってもよい。合成される核酸がDNAまたはRNAに応じて、窒素塩基はアデニン、グアニン、ウラシル、シトシン、およびチミンから選択される。あるいは、ヌクレオチドモノマーは、3つの構成要素のうちの少なくとも1つが修飾されているヌクレオチドであってもよい。例として、修飾は、塩基のレベルで行って、修飾された生成物(例えば、イノシン、メチル-5-デオキシシチジン、デオキシウリジン、ジメチルアミノ-5-デオキシウリジン、ジアミノ-2,6-プリンまたはブロモ-5-デオキシウリジン、およびハイブリダイゼーションを可能にする他の修飾塩基)を生産することができ、糖のレベル(例えば、デオキシリボースの類似体による置換)で、またはリン酸塩基のレベル(例えば、ボロネート、アルキルホスホネート、またはホスホロチオエート誘導体)で行うことができ。
【0032】
本開示によれば、ヌクレオチドモノマーは、一リン酸塩、二リン酸塩、三リン酸塩、四リン酸塩、五リン酸塩、および六リン酸塩から選択されるリン酸塩基を有してもよい。
【0033】
本開示によれば、金属補因子は、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Mn2+、Co2+、Fe2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。例示的な実施形態において、金属補因子はMg2+である。別の実施形態において、金属補因子は、Mg2+とMn2+との組み合わせである。
【0034】
本開示によれば、ヌクレオチドモノマーは、除去可能なブロッキング部分を有してもよい。除去可能なブロッキング部分の例には、3’-Oブロッキング部分、塩基ブロッキング部分、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
また、除去可能なブロッキング部分を有するヌクレオチドモノマーは、可逆的ターミネーターとも呼ばれる。したがって、3’-Oブロッキング部分を有するヌクレオチドモノマーは、3’-ブロッキング可逆的ターミネーターまたは3’-O修飾可逆的ターミネーターとも呼ばれ、また、塩基ブロッキング部分を有するヌクレオチドモノマーは、3’-非ブロッキング可逆的ターミネーターまたは3’-OH非ブロッキング可逆的ターミネーターとも呼ばれる。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「可逆的ターミネーター」とは、化学的に修飾されたヌクレオチドモノマーを指す。そのような可逆的ターミネーターがポリメラーゼによって成長中の核酸に組み込まれると、ポリメラーゼによるヌクレオチドモノマーのさらなる組み込みをブロックする。そのような「可逆的ターミネーター」塩基および核酸は、化学的または物理的処理によって脱保護することができ、また、そのような脱保護に続いて、ポリメラーゼによって核酸をさらに伸長させることができる。
【0037】
3’-O-ブロッキング部分の例としては、O-アジドメチル、O-アミノ、O-アリル、O-フェノキシアセチル、O-メトキシアセチル、O-アセチル、O-(p-トルエン)スルホネート、O-リン酸塩、O-硝酸塩、O-[4-メトキシ]-テトラヒドロチオピラニル、O-テトラヒドロチオピラニル、O-[5-メチル]-テトラヒドロフラン、O-[2-メチル、4-メトキシ]-テトラヒドロピラニル、O-[5-メチル]-テトラヒドロピラニル、およびO-テトラヒドロチオフラニル、O-2-ニトロベンジル、O-メチル、およびO-アシルが含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
3’-非ブロッキング可逆的ターミネーターの例としては、7-[(S)-1-(5-メトキシ-2-ニトロフェニル)-2,2-ジメチル-プロピルオキシ]メチル-7-デアザドATP、5-[(S)-1-(5-メトキシ-2-ニトロフェニル)-2,2-ジメチル-プロピルオキシ]メチル-dCTP、1-(5-メトキシ-2-ニトロフェニル)-2,2-ジメチル-プロピルオキシ]メチル-7-デアザ-dGTP、5-[(S)-1-(5-メトキシ-2-ニトロフェン-イル)-2,2-ジメチル-プロピルオキシ]メチル-dUTP、および5-[(S)-1-(2-ニトロフェニル)-2,2-ジメチル-プロピルオキシ]メチル-dUTPが含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
本開示によれば、塩基ブロッキング部分は、可逆的色素ターミネーターであってもよい。可逆的色素ターミネーターの例としては、イルミナ(Illumina)NovaSeqの可逆的色素ターミネーター、イルミナNextSeqの可逆的色素ターミネーター、イルミナMiSeqの可逆的色素ターミネーター、イルミナHiSeqの可逆的色素ターミネーター、イルミナゲノムアナライザー(Genome Analyzer)IIXの可逆的色素ターミネーター、LaserGenのライトニングターミネーター(Lightning Terminator)、およびHelicos Biosciences Heliscopeの可逆的色素ターミネーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
可逆的ターミネーターは当業者によく知られており、一般的に使用されているので、簡潔にするために、同じもののさらなる詳細は本明細書では省略される。それにもかかわらず、適用可能な3’‐ブロッキング可逆的ターミネーター、適用可能な3’‐非ブロッキング可逆的ターミネーター、および保護と脱保護のための適用可能な条件(すなわち、除去可能なブロッキング部分を追加および除去するための条件)は、例えば、Gardner et al.(2012)、nucleic acids Research、40(15):7404-7415、Litosh et al.(2011)、nucleic acids Research、39(6):e39、and Chen et al.(2013)、Genomics Proteomics Bioinformatics、11:34-40で探すことができる。
【0041】
本開示によれば、イニシエーターは、固体支持体に連結され、かつ固体支持体に連結された5’末端を有していてもよい。イニシエーターは、支持体に直接付着していてもよく、またはリンカーを介して支持体に付着していてもよい。
【0042】
本開示によれば、固体支持体の例としては、マイクロアレイ、ビーズ(コーティングされたまたは非コーティング)、カラム、光ファイバ、ワイプ、ニトロセルロース、ナイロン、ガラス、石英、ジアゾ化膜(紙またはナイロン)、シリコーン、ポリホルムアルデヒド、セルロース、酢酸セルロース、紙、セラミック、金属、メタロイド、半導体材料、磁性粒子、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)、ゲル形成材料[タンパク質(例えば、ゼラチン)、リポ多糖、ケイ酸塩、アガロース、ポリアクリルアミド、メチルメタクリレートポリマーなど]、ゾルゲル、多孔質ポリマーヒドロゲル、ナノ構造表面、ナノチューブ(カーボンナノチューブなど)、およびナノ粒子(金ナノ粒子または量子ドットなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
さらに、本開示は、前記のイニシエーター、前記の核酸ポリメラーゼ、前記のヌクレオチドモノマーおよび前記の少なくとも1種類の二価のカチオンを含む、核酸を合成するキットを提供する。当該キットは、本開示の方法に従って使用される。
【0044】
以下の実施例により、本開示についてさらに説明する。ただし、以下の実施例は、単に例示を目的としたものであり、本開示を実際に限定するものとして解釈されるべきではないことを理解する必要がある。
【実施例
【0045】
実施例1.サーモコッカス・コダカラエンシス(KOD1)のファミリーBのDNAポリメラーゼを使用したテンプレート非依存性核酸合成
合成反応混合物は、適切な量の以下の成分を使用して調製された:配列番号1のヌクレオチド配列および保護されていないヒドロキシル基を有する3’末端ならびにフルオレセインアミダイト(FAM)で標識された5’末端を有する一本鎖イニシエーターであり;dATP、dGTP、dCTP、およびdTTPを含むヌクレオチドモノマーとして機能するデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)であり;3’から5’が不活性化されたエキソヌクレアーゼドメインを有し、KOD1exo-DNAポリメラーゼと呼ばれるサーモコッカス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis、KOD1)のファミリーBのDNAポリメラーゼであり;およびトリス-HClバッファー(pH8.8)である。具体的には、合成反応混合物は、100nMのイニシエーター、100μMのdNTP、および200nMのKOD1exo-DNAポリメラーゼを含んでいた。
【0046】
KOD1exo-DNAポリメラーゼは以下のように調製した。サーモコッカス・コダカラエンシスのファミリーBのDNAポリメラーゼをコードする遺伝子コンストラクト(インテインを含まず、通常の3’から5’のエキソヌクレアーゼドメインを有する)は、Genomics BioSci&Tech Co.(新北市、台湾)によって合成された。KOD1exo-DNAポリメラーゼを得るために、Asp141をAla(D141A)に、Glu143をAla(E143A)に変更し、すなわち保存的3’から5’のエキソヌクレアーゼドメインの保存アミノ残基「DIE」を変更することにより、保存的3’から5’のエキソヌクレアーゼドメインの不活性化を達成した。具体的には、アミノ酸修飾「D141A」および「E143A」を達成するために、前記の遺伝子コンストラクト上の対応するヌクレオチド残基を、Q5部位特異的変異誘発キット(New England Biolabs、米国マサチューセッツ州イプスウィッチ)を使用して部位特異的変異誘発に供した。得られた変異誘発遺伝子コンストラクトをBL21(DE3)細胞で発現させ、発現したタンパク質をAkta Pure FPLCシステム(GE Healthcare Life Sciences、マールボロ、マサチューセッツ州、米国)を使用してHisTrap QおよびHeparinカラムで順次精製した。このようにして得られたKOD1exo-DNAポリメラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列を有する。
【0047】
10μLの核酸合成反応混合物を、以下の温度のいずれかで2分間プレインキュベートした:10℃、20℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、70℃、80℃および90℃。続いて、補因子として機能する適切な量のMg2+をそれぞれの反応混合物に添加して、テンプレート非依存性核酸合成を開始し、5分間進行させた。合成は、10μLの2Xクエンチ溶液(95%脱イオン化ホルムアミドと25mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む)を添加することにより終了した。
【0048】
得られた合成反応生成物を98℃で10分間変性させた。続いて、合成反応生成物を15%変性尿素-ポリアクリルアミドゲルにより分析した。ゲル上の合成反応生成物は、Amersham Typhoon Imager(GE Healthcare Life Sciences、マールボロ、マサチューセッツ州、米国)によって視覚化された。
【0049】
結果:
図2に示すように、KOD1exo-DNAポリメラーゼは、試験した各温度でテンプレート非依存性核酸合成を実行できる。これにより、ファミリーBのDNAポリメラーゼを使用して、テンプレートがなくても核酸を合成できることが示される。
【0050】
実施例2.サーモコッカス・リトラリス(Vent)のファミリーBのDNAポリメラーゼを使用したテンプレート非依存性核酸合成
テンプレート非依存性核酸合成および反応生成物の分析は、不活性化された3’から5’のエキソヌクレアーゼドメインを有し、かつ、Ventexo-DNAポリメラーゼと呼ばれるサーモコッカス・リトラリス(Vent)のファミリーBのDNAポリメラーゼを使用した以外に、概ね実施例1に記載の手順に従って行った。Ventexo-DNAポリメラーゼは、サーモコッカス・リトラリス(Vent)のファミリーBのDNAポリメラーゼをコードする遺伝子コンストラクト(インテインを含まず、通常の3’から5’のエキソヌクレアーゼドメインを有する)を使用した以外に、KOD1exo-DNAポリメラーゼを調製する場合と同じ手順に従って調製した(実施例1を参照)。Ventexo-DNAポリメラーゼは、配列番号3のアミノ酸配列を有する。
【0051】
結果:
図3に示すように、Ventexo-DNAポリメラーゼは、試験した各温度でテンプレート非依存性核酸合成を実行できる。これにより、ファミリーBのDNAポリメラーゼを使用して、テンプレートがなくてもDNAを合成できることが示される。
【0052】
実施例3.ピロコッカス・フューリアス(Pfu)のファミリーBのDNAポリメラーゼを使用したテンプレート非依存性核酸合成
テンプレート非依存性核酸合成および反応生成物の分析は、不活性化された3’から5’のエキソヌクレアーゼドメインを有し、かつ、Pfuexo-DNAポリメラーゼと呼ばれるPfuのファミリーBのDNAポリメラーゼを使用したこと以外に、概ね実施例1に記載の手順に従って行った。Pfuexo-DNAポリメラーゼは、PfuのファミリーBのDNAポリメラーゼをコードする遺伝子コンストラクト(インテインを含まず、通常の3’から5’のエキソヌクレアーゼドメインを有する)を使用した以外に、KOD1exo-DNAポリメラーゼを調製する場合と同じ手順(実施例1を参照)に従って調製した。Pfuexo-DNAポリメラーゼは配列番号4のアミノ酸配列を有する。
【0053】
結果:
図4に示すように、Pfuexo-DNAポリメラーゼは、試験した各温度でテンプレート非依存性核酸合成を実行できる。これにより、ファミリーBのDNAポリメラーゼを使用して、テンプレートがなくても核酸を合成できることが示される。
【0054】
実施例4.ファミリーBのDNAポリメラーゼと単一種類の二価のカチオンまたは異なる二価のカチオンとの組み合わせによるテンプレート非依存性核酸合成
異なるタイプの二価のカチオンがファミリーBポリメラーゼによるテンプレート非依存性核酸合成の効率に影響を与える可能性があるかどうかを評価するために、以下の実験を行った。
【0055】
テンプレート非依存性核酸合成および反応生成物の分析は、KOD1exo-DNAポリメラーゼ(実施例1に記載)、Ventexo-DNAポリメラーゼ(実施例2)、およびPfuexo-DNAポリメラーゼ(実施例3に記載)のそれぞれ1つを使用し、それぞれの合成反応混合物を70℃でプレインキュベートし、それぞれの反応混合物にMg2+のみまたはMg2+とMn2+との組み合わせを加えたこと以外に、概ね実施例1に記載の手順に従って実施された。
【0056】
結果:
図5に示すように、3つのファミリーBのDNAポリメラーゼのいずれでも、2種類の異なるタイプの二価のカチオンの存在下で、テンプレート非依存性核酸合成の効率が向上した(新たに合成された核酸が多く見られた)ので、異なる種類の二価のカチオンの組み合わせを使用することで、ファミリーBポリメラーゼによるテンプレート非依存性核酸合成の効率が向上できるすることが明らかになった。
【0057】
本明細書で引用されているすべての特許および参考文献は、参考文献としてその全体が本明細書に組み込まれている。矛盾がある場合は、定義を含む本件の説明が優先される。
【0058】
本開示は、例示的な実施形態と見なされるものに関連して説明されてきたが、本開示は、開示された実施形態に限定されず、包含するように最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な取り決めを網羅することを意図し、そのようなすべての変更と同等の取り決めることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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