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  • 特許-固体電解質材料、および、電池 図1
  • 特許-固体電解質材料、および、電池 図2
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  • 特許-固体電解質材料、および、電池 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】固体電解質材料、および、電池
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/06 20060101AFI20240628BHJP
   C01F 17/36 20200101ALI20240628BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240628BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240628BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240628BHJP
【FI】
H01B1/06 A
C01F17/36
H01M4/62 Z
H01M10/052
H01M10/0562
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019567868
(86)(22)【出願日】2018-11-14
(86)【国際出願番号】 JP2018042062
(87)【国際公開番号】W WO2019146219
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-07-30
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2018011536
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100202142
【弁理士】
【氏名又は名称】北 倫子
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】境田 真志
(72)【発明者】
【氏名】浅野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】酒井 章裕
(72)【発明者】
【氏名】西尾 勇祐
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 晃暢
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 真也
【合議体】
【審判長】恩田 春香
【審判官】中野 浩昌
【審判官】松永 稔
(56)【参考文献】
【文献】BOHNSACK Andreas et al.,Ternary Chlorides of the Rare-Earth Elements with Lithium, Li3MCl6(M=Tb-Lu, Y, Sc):Synthesis, Crysta,Journal of inorganic and General Chemistry,1997年07月,Vol.623/Issue 7,pp.1067-1073
【文献】BOHNSACK Andreas et al.,The Bromides Li3MBr6(M=Sm-Lu, Y):Synthesis, Crystal Structure, and Ionic Mobility,Journal of inorganic and General Chemistry,1997年09月,Vol.623/Issue 9,pp.1352-1356
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式Li 6-dで表され、
ここで、Mは、LiおよびYを除く金属元素と半金属元素とからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
Xは、Cl、Br、及びIからなる群より選択される少なくとも1種であり、
0<a、
0<b、
0≦c≦1、かつ、
0<d<6、
を満たす、
固体電解質材料。
【請求項2】
2≦a≦3.3、
0.6≦b≦1.33
≦d≦3、かつ、
a+3b+mc=6、
を満たし、
ここで、mは、Mの価数であり、かつ、c=0の場合にはm=0である、
請求項1に記載の固体電解質材料。
【請求項3】
c=0、を満たす、
請求項1または2に記載の固体電解質材料。
【請求項4】
0.9≦b≦1.33、を満たす、
請求項3に記載の固体電解質材料。
【請求項5】
0<c、を満たし、
Mは、Ca、Sr、Ba、Zr、及びAlからなる群より選択される少なくとも1種である、
請求項1または2に記載の固体電解質材料。
【請求項6】
Mは、Caを含み、
0.05≦c≦1、を満たす、
請求項5に記載の固体電解質材料。
【請求項7】
0.6≦b≦1.17、を満たす、
請求項6に記載の固体電解質材料。
【請求項8】
Mは、Srを含み、
0.15≦c≦0.3、を満たす、
請求項5に記載の固体電解質材料。
【請求項9】
2.4≦a≦2.7、を満たす、
請求項8に記載の固体電解質材料。
【請求項10】
Mは、Baを含み、
0.15≦c≦0.6、を満たす、
請求項5に記載の固体電解質材料。
【請求項11】
0.8≦b≦1、を満たす、
請求項10に記載の固体電解質材料。
【請求項12】
Mは、Alを含み、
c=0.1、および、b=0.9、を満たす、
請求項5に記載の固体電解質材料。
【請求項13】
Mは、Zrを含み、
0.15≦c≦0.3、を満たす、
請求項5に記載の固体電解質材料。
【請求項14】
0.7≦b≦0.85、を満たす、
請求項13に記載の固体電解質材料。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載の固体電解質材料と、
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に配置される電解質層と、
を備え、
前記正極と前記負極と前記電解質層とのうちの少なくとも1つは、前記固体電解質材料を含む、
電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電解質材料、および、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、硫化物固体電解質を用いた全固体電池が開示されている。
【0003】
非特許文献1には、インジウムとフッ素を含むハロゲン化物固体電解質のイオン伝導度が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-129312号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Y.Tomita et.al. Recent Innovations in Chemical Engineering,2017,10,12-17
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術においては、高いリチウムイオン伝導度を有する固体電解質材料を実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一様態における固体電解質材料は、組成式Li6-dで表され、ここで、Mは、LiおよびYを除く金属元素と半金属元素とからなる群より選択される少なくとも1種を含み、Xは、Cl、Br、及びIからなる群より選択される少なくとも1種であり、0<a、 0<b、 0≦c、かつ、0<d<6、を満たす。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、高いリチウムイオン伝導度を有する固体電解質材料を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態2における電池1000の概略構成を示す断面図である。
図2図2は、イオン伝導度の評価方法を示す模式図である。
図3図3は、ACインピーダンス測定によるイオン伝導度の評価結果を示すグラフである。
図4図4は、初期放電特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態が、図面を参照しながら説明される。
【0011】
(実施の形態1)
実施の形態1における固体電解質材料は、下記の組成式(1)により表される材料である。
Li6-d ・・・式(1)
ここで、Mは、Li(リチウム)以外およびY(イットリウム)以外の金属元素と半金属元素とのうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
また、Xは、Cl(塩素)、Br(臭素)、I(ヨウ素)からなる群より選択される1種または2種以上の元素である。
【0013】
また、実施の形態1における固体電解質材料は、下記の条件、
0<a、
0<b、
0≦c、
0<d<6、
を満たす。
【0014】
以上の構成によれば、高いリチウムイオン伝導度を有する固体電解質材料を実現できる。すなわち、ハロゲン化物固体電解質材料にフッ素を導入して電気化学安定性を向上させながら、高いリチウムイオン伝導度を維持させることができる。これに対して、非特許文献1の構成では、フッ素の導入によりリチウムイオン伝導度が著しく低下する。
【0015】
また、以上の構成によれば、実施の形態1の固体電解質材料を用いることで、硫黄を含まない全固体二次電池を実現することができる。すなわち、実施の形態1の固体電解質材料は、大気に曝露された際に硫化水素が発生する構成(例えば、特許文献1の構成)ではない。このため、硫化水素の発生が無く、安全性に優れた全固体二次電池を実現することができる。
【0016】
なお、「半金属元素」とは、B、Si、Ge、As、Sb、Teである。
【0017】
また、「金属元素」とは、水素を除く周期表1族から12族中に含まれるすべての元素、及び、前記の半金属元素とC、N、P、O、S、Seを除く全ての13族から16族中に含まれる元素である。すなわち、ハロゲン化合物と無機化合物を形成した際に、カチオンとなりうる元素群である。
【0018】
なお、Mは、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Sc、Al、Ga、Bi、Zr、Hf、Ti、Sn、Ta、Nbからなる群より選択される1種または2種以上の元素であってもよい。
【0019】
以上の構成によれば、固体電解質材料のイオン導電率をより向上することができる。
【0020】
なお、組成式(1)においては、
2≦a≦3.3、
0.6≦b≦1.33、
0≦c≦1、
1≦d≦3、
a+3b+mc=6、
が満たされてもよい。
【0021】
ここで、mは、Mの価数であり、かつ、c=0の場合にはm=0である。
【0022】
以上の構成によれば、固体電解質材料のイオン導電率をより向上することができる。
【0023】
なお、組成式(1)においては、c=0、が満たされてもよい。
【0024】
このとき、0.9≦b≦1.33、が満たされてもよい。
【0025】
以上の構成によれば、固体電解質材料のイオン導電率をより向上することができる。
【0026】
なお、組成式(1)においては、0<c、が満たされてもよい。
【0027】
このとき、Mは、Ca、Sr、Ba、Zr、Alからなる群より選択される1種または2種以上の元素であってもよい。
【0028】
以上の構成によれば、固体電解質材料のイオン導電率をより向上することができる。
【0029】
なお、Mは、Caを含んでもよい。例えば、Mは、Caであってもよい。
【0030】
このとき、0.05≦c≦1、が満たされてもよい。
【0031】
このとき、さらに、0.6≦b≦1.17、が満たされてもよい。
【0032】
以上の構成によれば、固体電解質材料のイオン導電率をより向上することができる。
【0033】
なお、Mは、Srを含んでもよい。例えば、Mは、Srであってもよい。
【0034】
このとき、0.15≦c≦0.3、が満たされてもよい。
【0035】
このとき、さらに、2.4≦a≦2.7、が満たされてもよい。
【0036】
以上の構成によれば、固体電解質材料のイオン導電率をより向上することができる。
【0037】
なお、Mは、Baを含んでもよい。例えば、Mは、Baであってもよい。
【0038】
このとき、0.15≦c≦0.6、が満たされてもよい。
【0039】
このとき、さらに、0.8≦b≦1、が満たされてもよい。
【0040】
以上の構成によれば、固体電解質材料のイオン導電率をより向上することができる。
【0041】
なお、Mは、Alを含んでもよい。例えば、Mは、Alであってもよい。
【0042】
このとき、c=0.1、および、b=0.9、が満たされてもよい。
【0043】
以上の構成によれば、固体電解質材料のイオン導電率をより向上することができる。
【0044】
なお、Mは、Zrを含んでもよい。例えば、Mは、Zrであってもよい。
【0045】
このとき、0.15≦c≦0.3、が満たされてもよい。
【0046】
このとき、さらに、0.7≦b≦0.85、が満たされてもよい。
【0047】
以上の構成によれば、固体電解質材料のイオン導電率をより向上することができる。
【0048】
なお、実施の形態1における固体電解質材料は、結晶質であってもよく、非晶質であってもよい。
【0049】
また、実施の形態1における固体電解質材料の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、針状、球状、楕円球状など、であってもよい。例えば、実施の形態1における固体電解質材料は、粒子であってもよい。複数の粒子を積層した後、加圧によりペレット状もしくは板状に成形してもよい。
【0050】
例えば、実施の形態1における固体電解質材料の形状が粒子状(例えば、球状)の場合、固体電解質材料のメジアン径は、0.1μm以上かつ100μm以下であってもよい。
【0051】
また、実施の形態1においては、固体電解質材料のメジアン径は0.5μm以上かつ10μm以下であってもよい。
【0052】
以上の構成によれば、イオン伝導性をより高めることができる。また、実施の形態1における固体電解質材料と活物質などとのより良好な分散状態を形成できる。
【0053】
また、実施の形態1においては、固体電解質材料のメジアン径は、活物質のメジアン径より小さくてもよい。
【0054】
以上の構成によれば、実施の形態1における固体電解質材料と活物質などとのより良好な分散状態を形成できる。
【0055】
<固体電解質材料の製造方法>
実施の形態1における固体電解質材料は、例えば、下記の方法により、製造されうる。
【0056】
目的とする組成の配合比となるような二元系ハロゲン化物の原料粉を用意する。例えば、LiYBrを作製する場合には、LiBrとYBrとYFを、3:0.83:0.17程度のモル比で用意する。合成プロセス過程における組成の変化を考慮して、変化分を相殺するようにあらかじめ配合比を調整してもよい。これらにより、上述の値「a」と「b」と「c」と「d」とを調整できる。
【0057】
原料粉をよく混合した後、メカノケミカルミリングの方法を用いて原料粉同士を混合・粉砕・反応させる。その後、真空中または不活性雰囲気中で焼成してもよい。
【0058】
もしくは、原料粉をよく混合した後、真空中または不活性雰囲気中で焼成してもよい。焼成条件は、例えば、100℃~650℃の範囲内で、1時間以上の焼成を行うことが好ましい。
【0059】
これにより、前述したような組成を含む固体電解質材料が得られる。
【0060】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2が説明される。上述の実施の形態1と重複する説明は、適宜、省略される。
【0061】
実施の形態2における電池は、上述の実施の形態1で説明された固体電解質材料を用いて構成される。
【0062】
実施の形態2における電池は、固体電解質材料と、正極と、負極と、電解質層と、を備える。
【0063】
電解質層は、正極と負極との間に設けられる層である。
【0064】
正極と電解質層と負極とのうちの少なくとも1つは、上述の実施の形態1における固体電解質材料を含む。
【0065】
以上の構成によれば、高いリチウムイオン伝導度を有する固体電解質材料を用いた電池を実現できる。これにより、例えば、電池の充放電特性を向上させることができる。
【0066】
以下に、実施の形態2における電池の具体例が、説明される。
【0067】
図1は、実施の形態2における電池1000の概略構成を示す断面図である。
【0068】
実施の形態2における電池1000は、正極201と、負極203と、電解質層202とを備える。
【0069】
正極201は、正極活物質粒子204と固体電解質粒子100とを含む。
【0070】
電解質層202は、正極201と負極203との間に配置される。
【0071】
電解質層202は、電解質材料(例えば、固体電解質材料)を含む。
【0072】
負極203は、負極活物質粒子205と固体電解質粒子100とを含む。
【0073】
固体電解質粒子100は、実施の形態1における固体電解質材料からなる粒子、または、実施の形態1における固体電解質材料を主たる成分として含む粒子である。
【0074】
正極201は、金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵・放出する特性を有する材料を含む。正極201は、例えば、正極活物質(例えば、正極活物質粒子204)を含む。
【0075】
正極活物質には、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物(例えば、Li(NiCoAl)O、LiCoO、など)、遷移金属フッ化物、ポリアニオンおよびフッ素化ポリアニオン材料、および、遷移金属硫化物、遷移金属オキシフッ化物、遷移金属オキシ硫化物、遷移金属オキシ窒化物、など、が用いられうる。
【0076】
正極活物質粒子204のメジアン径は、0.1μm以上かつ100μm以下であってもよい。正極活物質粒子204のメジアン径が0.1μmより小さいと、正極において、正極活物質粒子204と固体電解質粒子100とが、良好な分散状態を形成できない可能性が生じる。この結果、電池の充放電特性が低下する。また、正極活物質粒子204のメジアン径が100μmより大きいと、正極活物質粒子204内のリチウム拡散が遅くなる。このため、電池の高出力での動作が困難となる場合がある。
【0077】
正極活物質粒子204のメジアン径は、固体電解質粒子100のメジアン径よりも、大きくてもよい。これにより、正極活物質粒子204と固体電解質粒子100との良好な分散状態を形成できる。
【0078】
正極201に含まれる、正極活物質粒子204と固体電解質粒子100の体積比率「v:100-v」について、30≦v≦95であってもよい。v<30では、十分な電池のエネルギー密度確保が困難となる可能性がある。また、v>95では、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0079】
正極201の厚みは、10μm以上かつ500μm以下であってもよい。なお、正極の厚みが10μmより薄い場合には、十分な電池のエネルギー密度の確保が困難となる可能性がある。なお、正極の厚みが500μmより厚い場合には、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0080】
電解質層202は、電解質材料を含む層である。当該電解質材料は、例えば、固体電解質材料である。すなわち、電解質層202は、固体電解質層であってもよい。
【0081】
なお、電解質層202は、実施の形態1における固体電解質材料を、主成分として、含んでもよい。すなわち、電解質層202は、実施の形態1における固体電解質材料を、例えば、電解質層202の全体に対する重量割合で50%以上(50重量%以上)、含んでもよい。
【0082】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0083】
また、電解質層202は、実施の形態1における固体電解質材料を、例えば、電解質層202の全体に対する重量割合で70%以上(70重量%以上)、含んでもよい。
【0084】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0085】
なお、電解質層202は、実施の形態1における固体電解質材料を主成分として含みながら、さらに、不可避的な不純物、または、実施の形態1における固体電解質材料を合成する際に用いられる出発原料および副生成物および分解生成物など、を含んでいてもよい。
【0086】
また、電解質層202は、実施の形態1における固体電解質材料を、例えば、混入が不可避的な不純物を除いて、電解質層202の全体に対する重量割合で100%(100重量%)、含んでもよい。
【0087】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0088】
以上のように、電解質層202は、実施の形態1における固体電解質材料のみから構成されていてもよい。
【0089】
もしくは、実施の形態1における固体電解質材料とは異なる固体電解質材料のみから構成されていてもよい。実施の形態1における固体電解質材料とは異なる固体電解質材料として、例えば、LiMgX、LiFeX、Li(Al,Ga,In)X、Li(Al,Ga,In)X、LiI、など(X:F,Cl,Br,I)、が用いられうる。
【0090】
固体電解質層は、実施の形態1における固体電解質材料と、上述の実施の形態1における固体電解質材料とは異なる固体電解質材料とを、同時に含んでもよい。このとき、両者が均一に分散していてもよい。実施の形態1における固体電解質材料からなる層と、上述の実施の形態1における固体電解質材料とは異なる固体電解質材料からなる層とが、電池の積層方向に対して、順に配置されていてもよい。
【0091】
固体電解質層の厚みは、1μm以上かつ1000μm以下であってもよい。固体電解質層の厚みが1μmより薄い場合には、正極201と負極203とが短絡する可能性が高まる。また、固体電解質層の厚みが1000μmより厚い場合には、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0092】
負極203は、金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵・放出する特性を有する材料を含む。負極203は、例えば、負極活物質(例えば、負極活物質粒子205)を含む。
【0093】
負極活物質には、金属材料、炭素材料、酸化物、窒化物、錫化合物、珪素化合物、など、が使用されうる。金属材料は、単体の金属であってもよい。もしくは、金属材料は、合金であってもよい。金属材料の例として、リチウム金属、リチウム合金、など、が挙げられる。炭素材料の例として、天然黒鉛、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、人造黒鉛、非晶質炭素、など、が挙げられる。容量密度の観点から、珪素(Si)、錫(Sn)、珪素化合物、錫化合物、を好適に使用できる。平均反応電圧が低い負極活物質を用いた場合に、実施の形態1における固体電解質材料による電気分解抑制の効果が、より良く発揮される。
【0094】
負極活物質粒子205のメジアン径は、0.1μm以上かつ100μm以下であってもよい。負極活物質粒子205のメジアン径が0.1μmより小さいと、負極において、負極活物質粒子205と固体電解質粒子100とが、良好な分散状態を形成できない可能性が生じる。これにより、電池の充放電特性が低下する。また、負極活物質粒子205のメジアン径が100μmより大きいと、負極活物質粒子205内のリチウム拡散が遅くなる。このため、電池の高出力での動作が困難となる場合がある。
【0095】
負極活物質粒子205のメジアン径は、固体電解質粒子100のメジアン径よりも、大きくてもよい。これにより、負極活物質粒子205とハロゲン化物固体電解質材料との良好な分散状態を形成できる。
【0096】
負極203に含まれる、負極活物質粒子205と固体電解質粒子100の体積比率「v:100-v」について、30≦v≦95であってもよい。v<30では、十分な電池のエネルギー密度確保が困難となる可能性がある。また、v>95では、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0097】
負極203の厚みは、10μm以上かつ500μm以下であってもよい。負極の厚みが10μmより薄い場合には、十分な電池のエネルギー密度の確保が困難となる可能性がある。また、負極の厚みが500μmより厚い場合には、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0098】
正極201と電解質層202と負極203とのうちの少なくとも1つには、イオン伝導性または化学的安定性・電気化学的安定性を高める目的で、硫化物固体電解質または酸化物固体電解質が含まれてもよい。硫化物固体電解質として、LiS-P、LiS-SiS、LiS-B、LiS-GeS、Li3.25Ge0.250.75、Li10GeP12、など、が用いられうる。酸化物固体電解質として、LiTi(POおよびその元素置換体を代表とするNASICON型固体電解質、(LaLi)TiO系のペロブスカイト型固体電解質、Li14ZnGe16、LiSiO、LiGeOおよびその元素置換体を代表とするLISICON型固体電解質、LiLaZr12およびその元素置換体を代表とするガーネット型固体電解質、LiNおよびそのH置換体、LiPOおよびそのN置換体、など、が用いられうる。
【0099】
正極201と電解質層202と負極203とのうちの少なくとも1つには、イオン伝導性を高める目的で、有機ポリマー固体電解質が含まれてもよい。有機ポリマー固体電解質として、例えば高分子化合物と、リチウム塩との化合物が用いられうる。高分子化合物はエチレンオキシド構造を有していてもよい。エチレンオキシド構造を有することで、リチウム塩を多く含有することができ、イオン導電率をより高めることができる。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiSOCF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiC(SOCF、など、が使用されうる。リチウム塩として、これらから選択される1種のリチウム塩が、単独で、使用されうる。もしくは、リチウム塩として、これらから選択される2種以上のリチウム塩の混合物が、使用されうる。
【0100】
正極201と電解質層202と負極203とのうちの少なくとも1つには、リチウムイオンの授受を容易にし、電池の出力特性を向上する目的で、非水電解質液、ゲル電解質、イオン液体が含まれてもよい。
【0101】
非水電解液は、非水溶媒と、非水溶媒に溶けたリチウム塩と、を含む。非水溶媒としては、環状炭酸エステル溶媒、鎖状炭酸エステル溶媒、環状エーテル溶媒、鎖状エーテル溶媒、環状エステル溶媒、鎖状エステル溶媒、フッ素溶媒、など、が使用されうる。環状炭酸エステル溶媒の例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、など、が挙げられる。鎖状炭酸エステル溶媒の例としては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、など、が挙げられる。環状エーテル溶媒の例としては、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、など、が挙げられる。鎖状エーテル溶媒としては、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、など、が挙げられる。環状エステル溶媒の例としては、γ-ブチロラクトン、など、が挙げられる。鎖状エステル溶媒の例としては、酢酸メチル、など、が挙げられる。フッ素溶媒の例としては、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピオン酸メチル、フルオロベンゼン、フルオロエチルメチルカーボネート、フルオロジメチレンカーボネート、など、が挙げられる。非水溶媒として、これらから選択される1種の非水溶媒が、単独で、使用されうる。もしくは、非水溶媒として、これらから選択される2種以上の非水溶媒の組み合わせが、使用されうる。非水電解液には、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピオン酸メチル、フルオロベンゼン、フルオロエチルメチルカーボネート、フルオロジメチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素溶媒が含まれていてもよい。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiSOCF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiC(SOCF、など、が使用されうる。リチウム塩として、これらから選択される1種のリチウム塩が、単独で、使用されうる。もしくは、リチウム塩として、これらから選択される2種以上のリチウム塩の混合物が、使用されうる。リチウム塩の濃度は、例えば、0.5~2mol/リットルの範囲にある。
【0102】
ゲル電解質は、ポリマー材料に非水電解液を含ませたものを用いることができる。ポリマー材料として、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、エチレンオキシド結合を有するポリマー、など、が用いられてもよい。
【0103】
イオン液体を構成するカチオンは、テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウムなどの脂肪族鎖状4級塩類、ピロリジニウム類、モルホリニウム類、イミダゾリニウム類、テトラヒドロピリミジニウム類、ピペラジニウム類、ピペリジニウム類などの脂肪族環状アンモニウム、ピリジニウム類、イミダゾリウム類などの含窒ヘテロ環芳香族カチオンなどであってもよい。イオン液体を構成するアニオンは、PF 、BF 、SbF6- 、AsF 、SOCF 、N(SOCF 、N(SO 、N(SOCF)(SO、C(SOCF などであってもよい。また、イオン液体はリチウム塩を含有してもよい。
【0104】
正極201と電解質層202と負極203とのうちの少なくとも1つには、粒子同士の密着性を向上する目的で、結着剤が含まれてもよい。結着剤は、電極を構成する材料の結着性を向上するために、用いられる。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、など、が挙げられる。また、結着剤としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体が用いられうる。また、これらのうちから選択された2種以上が混合されて、結着剤として用いられてもよい。
【0105】
また、正極201および負極203のうちの少なくとも一方は、必要に応じて、導電助剤を含んでもよい。
【0106】
導電助剤は、電極抵抗を低減するために、用いられる。導電助剤としては、天然黒鉛または人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維または金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウムなどの金属粉末類、酸化亜鉛またはチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子化合物、など、が挙げられる。なお、導電助剤として、炭素導電助剤を用いることで、低コスト化が図れる。
【0107】
なお、実施の形態2における電池は、コイン型、円筒型、角型、シート型、ボタン型、扁平型、積層型、など、種々の形状の電池として、構成されうる。
【実施例
【0108】
以下、実施例および比較例を用いて、本開示の詳細が説明される。
【0109】
≪実施例1≫
[固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴン雰囲気で、原料粉LiBrとYBrとYFとを、モル比でLiBr:YBr:YF=3:0.83:0.17となるように、秤量した。これらを乳鉢で粉砕して混合した。その後、遊星型ボールミルを用い、12時間、500rpmでミリング処理した。
【0110】
以上により、LiYBrの組成式で表される実施例1の固体電解質材料の粉末を得た。
【0111】
[イオン伝導度の評価]
図2は、イオン伝導度の評価方法を示す模式図である。
【0112】
加圧成形用ダイス300は、電子的に絶縁性のポリカーボネート製の枠型301と、電子伝導性のステンレス製のパンチ上部303およびパンチ下部302とから構成される。
【0113】
図3に示す構成を用いて、下記の方法にて、イオン伝導度の評価を行った。
【0114】
露点-30℃以下のドライ雰囲気で、実施例1の固体電解質材料の粉末を加圧成形用ダイス300に充填し、400MPaで一軸加圧し、実施例1の伝導度測定セルを作製した。
【0115】
加圧状態のまま、パンチ上部303とパンチ下部302のそれぞれから導線を取り回し、周波数応答アナライザを搭載したポテンショスタット(Princeton Applied Research社 VersaSTAT4)に接続し、電気化学的インピーダンス測定法により、室温におけるイオン伝導度の測定を行った。
【0116】
インピーダンス測定結果のCole-Cole線図を図3に示す。
【0117】
図3において、複素インピーダンスの位相の絶対値が最も小さい測定点(図3中の矢印)のインピーダンスの実数値を実施例1の固体電解質のイオン伝導に対する抵抗値とみなした。
【0118】
電解質の抵抗値を用いて、下記式(2)より、イオン伝導度を算出した。
σ=(RSE×S/t)-1 ・・・・ (2)
ここで、σはイオン伝導度、Sは電解質面積(図2中、枠型301の内径)、Rは上記のインピーダンス測定における固体電解質の抵抗値、tは電解質の厚み(図2中、複数の固体電解質粒子100の圧縮体の厚み)である。
【0119】
22℃で測定された、実施例1の固体電解質材料のイオン伝導度は、2.58×10-4S/cmであった。
【0120】
≪実施例2~63≫
以下、Li6-dの合成および評価方法について説明する。
【0121】
[固体電解質材料の作製]
実施例2~63においては、露点-90℃以下、酸素値5ppm以下のドライ・低酸素雰囲気で保たれるグローブボックス内で、原料粉を秤量した。
【0122】
実施例2~4においては、原料粉LiBrとYBrとYFとを、モル比でLiBr:YBr:YF=a:(3-d)/3:d/3となるように、秤量した。
【0123】
実施例5においては、原料粉LiClとYClとYFとを、モル比でLiCl:YCl:YF=3:0.33:0.67となるように、秤量した。
【0124】
実施例6においては、原料粉LiIとYFとを、モル比でLiI:YF=1:1となるように秤量した。
【0125】
実施例7においては、原料粉LiIとLiBrとYBrとYFとを、モル比でLiI:LiBr:YBr:YF=0.5:2.5:0.33:0.67となるように、秤量した。
【0126】
実施例8においては、原料粉LiIとLiBrとYFとを、モル比でLiI:LiBr:YF=1:2:1となるように、秤量した。
【0127】
実施例9~17においては、原料粉LiIとLiBrとYBrとYFとを、モル比でLiI:LiBr:YBr:YF=2:a-2:c-d/3:d/3となるように、秤量した。
【0128】
実施例18~19においては、原料粉LiIとLiBrとYBrとYFとを、モル比でLiI:LiBr:YBr:YF=2.5:a-2.5:c-d/3:d/3となるように、秤量した。
【0129】
実施例20においては、原料粉LiIとYBrとYFとを、モル比でLiI:YBr:YF=1:0.5:0.5となるように、秤量した。
【0130】
実施例21においては、原料粉LiBrとLiClとYClとYFとを、モル比でLiBr:LiCl:YBr:YF=2:1:0.33:0.67となるように、秤量した。
【0131】
実施例22においては、原料粉LiBrとYClとYFとを、モル比でLiBr:YBr:YF=3:0.5:0.5となるように、秤量した。
【0132】
実施例23においては、原料粉LiIとLiClとYClとYFとを、モル比でLiI:LiCl:YBr:YF=2:1:0.33:0.67となるように、秤量した。
【0133】
実施例24においては、原料粉LiIとLiBrとYBrとYFとCaBrとを、モル比でLiI:LiBr:YBr:YF:CaBr=0.5:2:0.13:0.67:0.55となるように、秤量した。
【0134】
実施例25においては、原料粉LiIとLiBrとYBrとYFとCaBrとを、モル比でLiI:LiBr:YBr:YF:CaBr=1:1.25:0.08:0.67:0.75となるように、秤量した。
【0135】
実施例26~47においては、原料粉LiIとLiBrとYBrとYFとMBrとを、モル比でLiI:LiBr:YBr:YF:CaBr=2:a-2:b-0.67:0.67:cとなるように、秤量した。
【0136】
実施例48においては、原料粉LiIとLiBrとYBrとYFとCaBrとを、モル比でLiI:LiBr:YBr:YF:CaBr=2.1:0.3:0.2:0.6:0.6となるように、秤量した。
【0137】
実施例49においては、原料粉LiIとLiBrとYBrとYFとCaBrとを、モル比でLiI:LiBr:YBr:YF:CaBr=2.15:0.25:0.23:0.57:0.6となるように、秤量した。
【0138】
実施例50~51においては、原料粉LiIとLiBrとYBrとYFとCaBrとを、モル比でLiI:LiBr:YBr:YF:CaBr=2.2:a-2.2:b-d/3:d/3:cとなるように、秤量した。
【0139】
実施例52~53においては、原料粉LiIとLiBrとYBrとYFとCaBrとを、モル比でLiI:LiBr:YBr:YF:CaBr=2.25:a-2.25:b-d/3:d/3:cとなるように、秤量した。
【0140】
実施例54においては、原料粉LiIとYBrとYFとCaBrとを、モル比でLiI:YBr:YF:CaBr=2.5:0.25:0.5:0.625となるように、秤量した。
【0141】
実施例55~56においては、原料粉LiIとLiClとYClとYFとCaClとを、モル比でLiI:LiCl:YBr:YF:CaBr=2:0.4:b-0.67:0.67:cとなるように、秤量した。
【0142】
実施例57においては、原料粉LiIとYClとYFとCaClとを、モル比でLiI:YBr:YF:CaBr=2.4:0.13:0.67:0.6となるように、秤量した。
【0143】
実施例58においては、原料粉LiClとLiBrとYBrとYFとCaBrとを、モル比でLiCl:LiBr:YBr:YF:CaBr=2:0.4:0.13:0.67:0.6となるように、秤量した。
【0144】
実施例59においては、原料粉LiClとYBrとYFとCaBrとを、モル比でLiCl:YBr:YF:CaBr=2。4:0.13:0.67:0.6となるように、秤量した。
【0145】
実施例60においては、原料粉LiIとLiClとYClとYFとCaBrとを、モル比でLiCl:LiBr:YBr:YF:CaBr=2:0.4:0.13:0.67:0.6となるように、秤量した。
【0146】
実施例61においては、原料粉LiBrとLiFとYBrとYClとAlClとを、モル比でLiBr:LiF:YBr:YCl:AlCl=2:1:0.33:0.57:0.1となるように、秤量した。
【0147】
実施例62~63においては、原料粉LiBrとLiFとYBrとYClとZrClとを、モル比でLiBr:LiF:YBr:YCl:ZrCl=2:1:0.33:(2-4c)/3:cとなるように、秤量した。
【0148】
実施例2~63のそれぞれにおける「aの値」、「bの値」、「cの値」、「dの値」、「Mの元素種」は、後述の表1に示される。
【0149】
上記の実施例1と同様の方法で、実施例2~63のそれぞれの固体電解質材料を作製した。
【0150】
[イオン伝導度の評価]
露点-90℃以下、酸素値5ppm以下のドライ・低酸素雰囲気で保たれるグローブボックス内で、上記の実施例1と同様の方法で、実施例2~63のそれぞれの伝導度測定セルを作製した。
【0151】
これ以外は、上記の実施例1と同様の方法で、イオン伝導度の測定を行った。
【0152】
上述の実施例2~63におけるイオン伝導度は、後述の表1に示される。
【0153】
上述の実施例1~63における各構成と各評価結果、および、非特許文献1に記載されている組成・伝導度(すなわち、比較例1と2)とが、表1に示される。
【0154】

【0155】
[二次電池の作製]
アルゴングローブボックス内で、実施例35の固体電解質材料と、活物質であるグラファイトを、50:50の体積比率で秤量した。これらをメノウ乳鉢で混合することで、合剤を作製した。
【0156】
絶縁性外筒の中で、LiPSを700μm厚相当分、上述の合剤を13.3mgの順に積層した。これを300MPaの圧力で加圧成型することで、第1電極と固体電解質層を得た。
【0157】
次に、固体電解質層の第1電極と接する側とは反対側に、金属In(厚さ200μm)、金属Li(厚さ300μm)、金属In(厚さ200μm)の順に1.1:1:1.1の体積比率で積層した。これを80MPaの圧力で加圧成型することで、第1電極、固体電解質層、第2電極からなる積層体を作製した。
【0158】
次に、積層体の上下にステンレス鋼集電体を配置し、集電体に集電リードを付設した。
【0159】
最後に、絶縁性フェルールを用いて、絶縁性外筒内部を外気雰囲気から遮断・密閉した。
【0160】
以上により、実施例35の二次電池を作製した。
【0161】
[充放電試験]
図4は、初期放電特性を示すグラフである。
【0162】
図4に示される結果は、下記の方法により、測定された。
【0163】
すなわち、実施例35の二次電池を、25℃の恒温槽に、配置した。
【0164】
電池の理論容量に対して0.05Cレート(20時間率)となる電流値で、定電流充電し、電圧-0.62Vで充電を終了した。
【0165】
次に、同じく0.05Cレートとなる電流値で、放電し、電圧1.38Vで放電を終了した。ここでいう充電とはグラファイトへのLiを挿入する反応を進行させることであり、放電とはグラファイトからLiを脱離させる反応を進行させることである。
【0166】
以上の測定の結果、実施例35の二次電池の初期放電容量は、1005μAhであった。
【0167】
≪考察≫
実施例1~63は、比較例1および2と比較して、室温近傍において、2.5×10-7S/cm以上の高いイオン伝導性を示すことがわかる。一方で、非特許文献1のハロゲン化物固体電解質では、室温で2×10-7S/cm程度の低いイオン伝導度しか確認されていない。
【0168】
特に、式(1)で定義されるMの置換量cの値が0≦c≦1.0の範囲であれば、より高いイオン伝導性を示す。特に、M=Caのときは0.01≦c≦1.0の範囲、M=Srのときは0.01≦c≦0.3の範囲、M=Baのときは0.01≦c≦0.6の範囲、M=Alのときは0.01≦c≦0.1の範囲、M=Zrのときは0.01≦c≦0.3の範囲であれば、より高いイオン伝導性を示す。
【0169】
さらに、実施例1~63の材料は、構成元素に硫黄を含まないため、硫化水素の発生がない。
【0170】
以上により、本開示による固体電解質材料は、硫化水素の発生が無く、かつ、高いリチウムイオン伝導度を有する電解質材料であることが示される。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本開示の電池は、例えば、全固体リチウム二次電池などとして、利用されうる。
【符号の説明】
【0172】
100 固体電解質粒子
201 正極
202 電解質層
203 負極
204 正極活物質粒子
205 負極活物質粒子
300 加圧成形用ダイス
301 枠型
302 パンチ下部
303 パンチ上部
1000 電池
図1
図2
図3
図4