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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】浄化方法及び浄化システム
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20240628BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20240628BHJP
   F24F 8/24 20210101ALI20240628BHJP
   F24F 8/95 20210101ALI20240628BHJP
   F24F 8/30 20210101ALN20240628BHJP
   F24F 8/26 20210101ALN20240628BHJP
【FI】
A61L9/12
A61L9/14
F24F8/24
F24F8/95
F24F8/30
F24F8/26
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021528105
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(86)【国際出願番号】 JP2020022656
(87)【国際公開番号】W WO2020261972
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2019119074
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020049490
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】池嶋 博子
(72)【発明者】
【氏名】大山 達史
(72)【発明者】
【氏名】宮下 万里子
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-110508(JP,A)
【文献】特開2007-187326(JP,A)
【文献】実開昭58-000006(JP,U)
【文献】国際公開第2016/208013(WO,A1)
【文献】特開2003-202129(JP,A)
【文献】特開平01-261832(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0078832(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第107941665(CN,A)
【文献】中国実用新案第205461441(CN,U)
【文献】特開2007-171012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-9/22
G01N 15/00-15/14
F24F 7/00-7/007
F24F 8/00-8/99
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光センサと、浄化部と、を含む浄化システムを用いる浄化方法であって、
前記光センサを用いて、対象空間内に浮遊するエアロゾルで散乱した散乱光を検知することにより、前記エアロゾルの位置及び量を特定することと、
前記エアロゾルの前記量が閾値を超えた場合に、前記浄化部により前記エアロゾルを浄化することと、を含み、
前記浄化システムは、前記対象空間内にある物体の位置を検出するセンサと、気流生成装置と、をさらに含み、
前記浄化方法は、
前記センサを用いて前記物体が人物又は動物であるか否かを識別することをさらに含み、
前記識別することにおいて、前記物体が人物又は動物であると識別された場合、前記気流生成装置は、前記エアロゾルが、前記物体との接触を避けて前記浄化部まで至る回避経路を決定し、
前記浄化することにおいて、前記気流生成装置は、前記回避経路に沿って前記エアロゾルを前記浄化部に導く気流を生成する、
浄化方法。
【請求項2】
光センサと、浄化部と、を含む浄化システムを用いる浄化方法であって、
前記光センサを用いて、対象空間内に浮遊するエアロゾルで散乱した散乱光を検知することにより、前記エアロゾルの位置及び量を特定することと、
前記エアロゾルの前記量が閾値を超えた場合に、前記浄化部により前記エアロゾルを浄化することと、を含み、
前記浄化システムは、前記エアロゾルの前記位置に前記エアロゾルを無害化する薬剤を放出する浄化装置をさらに含む、
浄化方法。
【請求項3】
前記浄化することにおいて、前記浄化部は、前記エアロゾルの前記位置に気体又は液体を放出する、
請求項1又は2に記載の浄化方法。
【請求項4】
前記浄化部は、前記エアロゾルを吸い込む吸引口を含み、
前記浄化することにおいて、前記浄化部は、前記吸引口から前記エアロゾルを吸い込むことにより、前記エアロゾルを捕集又は無害化する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の浄化方法。
【請求項5】
前記浄化部は、前記エアロゾルを吸い込む気流を生成することにより、前記吸引口から前記エアロゾルを吸い込む、
請求項に記載の浄化方法。
【請求項6】
前記浄化システムは、気流生成装置をさらに含み、
前記浄化することにおいて、前記気流生成装置は、前記エアロゾルの前記位置に気流を放出する、
請求項に記載の浄化方法。
【請求項7】
前記浄化システムは、前記対象空間の外部に向けて開口する排出口をさらに含み、
前記浄化することは、前記気流によって導かれたエアロゾルを前記排出口から前記外部に排出することを含む、
請求項又はに記載の浄化方法。
【請求項8】
前記気流生成装置は、前記物体の移動経路を予測し、前記エアロゾルが、前記移動経路に沿って移動する前記物体との接触を避けて前記浄化部まで至ることができる経路を前記回避経路として決定する、
請求項に記載の浄化方法。
【請求項9】
前記特定することにおいて、前記光センサは、互いに等しい周波数間隔で離れた複数のピークを有する光を前記対象空間内に出射し、
前記周波数間隔は、大気を構成する分子によるレイリー散乱光の周波数のピークの半値幅未満である、
請求項1からのいずれか1項に記載の浄化方法。
【請求項10】
前記散乱光はミー散乱光を含む、
請求項1からのいずれか一項に記載の浄化方法。
【請求項11】
前記散乱光はレイリー散乱光を含む、
請求項1から10のいずれか一項に記載の浄化方法。
【請求項12】
光センサと、
浄化部と、
対象空間内にある物体の位置を検出するセンサと、
気流生成装置と、を備え、
前記光センサは、前記対象空間内に浮遊するエアロゾルで散乱した散乱光を検知することにより、前記エアロゾルの位置及び量を特定し、
前記浄化部は、前記エアロゾルの前記量が閾値を超えた場合に、前記エアロゾルを浄化し、
前記センサを用いて前記物体が人物又は動物であるか否かを識別した場合において、前記物体が人物又は動物であると識別されたとき、前記気流生成装置は、前記エアロゾルが、前記物体との接触を避けて前記浄化部まで至る回避経路を決定し、前記回避経路に沿って前記エアロゾルを前記浄化部に導く気流を生成する、
浄化システム。
【請求項13】
光センサと、
浄化部と、
浄化装置と、を備え、
前記光センサは、対象空間内に浮遊するエアロゾルで散乱した散乱光を検知することにより、前記エアロゾルの位置及び量を特定し、
前記浄化部は、前記エアロゾルの前記量が閾値を超えた場合に、前記エアロゾルを浄化し、
前記浄化装置は、前記エアロゾルの前記位置に前記エアロゾルを無害化する薬剤を放出する、
浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浄化方法及び浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、気体又は微細な液体の成分を室内の目的の場所に目的の濃度で搬送し、空気を清浄にするため、空気砲発生装置を利用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-188189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、空気中を浮遊するウイルスなどのエアロゾルが浄化の対象物である場合、エアロゾルが空気中を移動しうるため、浄化成分とエアロゾルとの接触確率が悪くなる。このため、エアロゾルの浄化を効率良く行うことができない。
【0005】
そこで、本開示は、空気中に浮遊するエアロゾルを効率良く浄化することができる浄化方法及び浄化システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る浄化方法は、光センサと、浄化部と、を含む浄化システムを用いる。前記浄化方法は、前記光センサを用いて、対象空間内に浮遊するエアロゾルで散乱した散乱光を検知することにより、前記エアロゾルの位置及び量を特定することと、前記エアロゾルの前記量が閾値を超えた場合に、前記浄化部により前記エアロゾルを浄化することと、を含む。
【0007】
また、本開示の一態様に係る浄化システムは、光センサと、浄化部と、を備える。前記光センサは、対象空間内に浮遊するエアロゾルで散乱した散乱光を検知することにより、前記エアロゾルの位置及び量を特定する。前記浄化部は、前記エアロゾルの前記量が閾値を超えた場合に、前記エアロゾルを浄化する。
【0008】
また、本開示の一態様は、上記浄化方法をコンピュータに実行させるプログラムとして実現することができる。あるいは、当該プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、空気中に浮遊するエアロゾルを効率良く浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態1に係る浄化システムの構成を示す図である。
図2図2は、実施の形態1に係る浄化システムの動作を示すフローチャートである。
図3図3は、実施の形態1に係る浄化システムによる浄化の様子を模式的に示す図である。
図4図4は、実施の形態1に係る浄化システムの動作のうち、エアロゾルの検出処理を示すフローチャートである。
図5図5は、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置が出射するマルチレーザ光のスペクトルの一例を示す図である。
図6図6は、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置の光学素子を通過する第0の透過光及び第1の透過光を説明するための図である。
図7図7は、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置の光学素子を通過する第0の透過光及び第2の透過光を説明するための図である。
図8図8は、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置が出射したマルチレーザ光を散乱させることで発生する散乱光のスペクトルの一例を示す図である。
図9図9は、ミー散乱光とレイリー散乱光とを含む散乱光をマイケルソン干渉計で干渉させた場合のインターフェログラムの計算結果を表す図である。
図10図10は、図9の一部を拡大して示す図である。
図11図11は、エアロゾルによる散乱がなく、大気散乱だけを考慮した場合のマイケルソン干渉計による干渉フリンジの周波数間隔の依存性を説明するための図である。
図12図12は、実施の形態1の変形例1に係る浄化システムによる浄化の様子を模式的に示す図である。
図13図13は、実施の形態1の変形例2に係る浄化システムによる浄化の様子を模式的に示す図である。
図14図14は、実施の形態1の変形例3に係る浄化システムによる浄化の様子を模式的に示す図である。
図15図15は、実施の形態2に係る浄化システムの構成と、当該浄化システムによる浄化の様子の一例を示す図である。
図16図16は、実施の形態2に係る浄化システムの動作を示すフローチャートである。
図17図17は、実施の形態2に係る浄化システムの動作のうち、回避処理を示すフローチャートである。
図18図18は、実施の形態2に係る浄化システムによる浄化の様子の別の例を模式的に示す図である。
図19図19は、実施の形態3に係る浄化システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の概要)
本開示の一態様に係る浄化方法は、光センサと、浄化部と、を含む浄化システムを用いる。前記浄化方法は、前記光センサを用いて、対象空間内に浮遊するエアロゾルで散乱した散乱光を検知することにより、前記エアロゾルの位置及び量を特定することと、前記エアロゾルの前記量が閾値を超えた場合に、前記浄化部により前記エアロゾルを浄化することと、を含む。
【0012】
これにより、閾値を超えた量のエアロゾルをまとめて浄化することができるので、空気中に浮遊するエアロゾルを効率良く浄化することができる。
【0013】
また、例えば、前記浄化することにおいて、前記浄化部は、前記エアロゾルの前記位置に気体又は液体を放出してもよい。
【0014】
これにより、気体によってエアロゾルの濃度を低下させることにより、エアロゾルの危険度が下がり、健康被害の発生を抑制することができる。あるいは、例えば、エアロゾルを無害化する能力を有する液体を用いることによって、エアロゾルを効率良く浄化することができる。
【0015】
また、例えば、前記浄化部は、前記エアロゾルを吸い込む吸引口を含み、前記浄化することにおいて、前記浄化部は、前記吸引口から前記エアロゾルを吸い込むことにより、前記エアロゾルを捕集又は無害化してもよい。
【0016】
これにより、吸い込んだエアロゾルを捕集又は無害化することで、浄化部からエアロゾルが対象空間に放出されないようすることができ、対象空間内のエアロゾルを効率良く減らすことができる。
【0017】
また、例えば、前記浄化部は、前記エアロゾルを吸い込む気流を生成することにより、前記吸引口から前記エアロゾルを吸い込んでもよい。
【0018】
これにより、吸引口を介してエアロゾルを吸い込むことで、対象空間内のエアロゾルを減らすことができる。
【0019】
また、例えば、前記浄化システムは、気流生成装置をさらに含み、前記浄化することにおいて、前記気流生成装置は、前記エアロゾルの前記位置に気流を放出してもよい。
【0020】
これにより、気流によってエアロゾルを浄化しやすい位置に導くことができるので、空気中に浮遊するエアロゾルを効率良く浄化することができる。
【0021】
また、例えば、前記浄化システムは、前記対象空間の外部に向けて開口する排出口をさらに含み、前記浄化することは、前記気流によって導かれたエアロゾルを前記排出口から前記外部に排出することを含んでもよい。
【0022】
これにより、気流でエアロゾルを排出口から排出することができるので、対象空間内のエアロゾルを簡単に効率良く減らすことができる。
【0023】
また、例えば、前記浄化システムは、前記対象空間内にある物体の位置を検出するセンサをさらに含み、前記浄化方法は、前記センサを用いて前記物体が人物又は動物であるか否かを識別することをさらに含んでもよい。
【0024】
これにより、物体が人物又は動物であるか否かを識別することができるので、人物又は動物に気流などを当てないようにすることができる。
【0025】
また、例えば、前記浄化システムは、気流生成装置をさらに含み、前記識別することにおいて、前記物体が人物又は動物であると識別された場合、前記気流生成装置は、前記エアロゾルが、前記物体との接触を避けて前記浄化部まで至る回避経路を決定し、前記浄化することにおいて、前記気流生成装置は、前記回避経路に沿って前記エアロゾルを前記浄化部に導く気流を生成してもよい。
【0026】
これにより、対象空間内に存在する物体とエアロゾルとの接触を回避しやすくなるので、物体に妨げられずにエアロゾルを効率良く浄化することができる。
【0027】
また、例えば、前記気流生成装置は、前記物体の移動経路を予測し、前記エアロゾルが、前記移動経路に沿って移動する前記物体との接触を避けて前記浄化部まで至ることができる経路を前記回避経路として決定してもよい。
【0028】
これにより、物体が移動している場合に、移動中の物体とエアロゾルとの接触を回避しやすくすることができる。
【0029】
また、例えば、前記物体は、人物又は動物であってもよい。
【0030】
これにより、エアロゾルがウイルスを含む場合には、人又は動物に対する健康被害が発生する可能性がある。人又は動物とエアロゾルとの接触を回避しやすくすることができるので、健康被害の発生を抑制することができる。
【0031】
また、例えば、前記特定することにおいて、前記光センサは、互いに等しい周波数間隔で離れた複数のピークを有する光を前記対象空間内に出射し、前記周波数間隔は、大気を構成する分子によるレイリー散乱光の周波数のピークの半値幅未満であってもよい。
【0032】
光センサは、例えば、出射した光のエアロゾルによる散乱光を受光することで、エアロゾルの有無及び濃度を検出することができる。このとき、受光する光には、エアロゾルに起因するミー散乱光だけでなく、大気を構成する分子に起因するレイリー散乱光が含まれる。本態様に係る光センサによれば、干渉を利用することでレイリー散乱光を受光の際に除去することができるので、エアロゾルを精度良く検出することができる。
【0033】
また、例えば、前記浄化システムは、前記エアロゾルの前記位置に前記エアロゾルを無害化する薬剤を放出する浄化装置をさらに含んでもよい。
【0034】
これにより、薬剤によってエアロゾルを直接的に無害化することができる。
【0035】
また、例えば、前記散乱光はミー散乱光を含んでもよい。
【0036】
これにより、大気を構成する分子よりも大きいエアロゾルを精度良く検出することができる。
【0037】
また、例えば、前記散乱光はレイリー散乱光を含んでもよい。
【0038】
これにより、例えばエタロン等を利用してレイリー散乱光を除去することで、大気を構成する分子よりも大きいエアロゾルを精度良く検出することができる。
【0039】
また、本開示の一態様に係る浄化システムは、光センサと、浄化部と、を備える。前記光センサは、対象空間内に浮遊するエアロゾルで散乱した散乱光を検知することにより、前記エアロゾルの位置及び量を特定する。前記浄化部は、前記エアロゾルの前記量が閾値を超えた場合に、前記エアロゾルを浄化する。
【0040】
これにより、閾値を超えた量のエアロゾルをまとめて浄化することができるので、空気中に浮遊するエアロゾルを効率良く浄化することができる。
【0041】
本開示の一態様に係る浄化方法は、光センサを用いて対象空間内のエアロゾルを検出するステップと、前記エアロゾルの量が閾値を超えた場合に、前記エアロゾルを浄化部に導く気流を生成するステップと、前記浄化部が、前記気流によって導かれたエアロゾルを浄化するステップとを含む。
【0042】
これにより、光センサを用いてエアロゾルを検出し、検出したエアロゾルを気流で浄化部に導くことができる。エアロゾルの浄化を行う浄化部にエアロゾルが導かれるので、空気中に浮遊するエアロゾルを効率良く浄化することができる。
【0043】
なお、本明細書において「浄化」とは、対象空間内で検出されるエアロゾルを減らすことで、対象空間内で検出されるエアロゾルによる健康被害の発生を抑制することを意味する。また、本明細書において「浄化」とは、エアロゾルに含まれるウイルスを無害化すること、及び/又は、エアロゾルを対象空間から単に排出することも意味する。また、本明細書において「浄化」とは、エアロゾルの濃度を低下させることにより、エアロゾルの危険度が下がり、健康被害の発生を抑制することも意味する。
【0044】
また、例えば、前記浄化部は、前記対象空間に設けられた吸引口を含み、前記浄化するステップでは、前記気流によって導かれたエアロゾルを前記吸引口から吸い込んでもよい。
【0045】
これにより、吸引口を介してエアロゾルを吸い込むことで、対象空間内のエアロゾルを減らすことができる。
【0046】
また、例えば、前記浄化するステップでは、さらに、前記吸引口から吸い込んだエアロゾルを捕集又は無害化してもよい。
【0047】
これにより、吸い込んだエアロゾルを捕集又は無害化することで、浄化部からエアロゾルが対象空間に放出されないようすることができ、対象空間内のエアロゾルを効率良く減らすことができる。
【0048】
また、例えば、前記浄化部は、前記対象空間と当該対象空間の外部とを連通する排出口を含み、前記浄化するステップでは、前記気流によって導かれたエアロゾルを前記排出口から前記外部に排出してもよい。
【0049】
これにより、気流でエアロゾルを排出口から排出することができるので、対象空間内のエアロゾルを簡単に効率良く減らすことができる。
【0050】
また、例えば、本開示の一態様に係る浄化方法は、さらに、物体を検出するステップと、前記エアロゾルが前記物体との接触を避けて前記浄化部まで至ることができる回避経路を決定するステップとを含み、前記生成するステップでは、前記エアロゾルの量が前記閾値を超えた場合に、前記回避経路に沿って前記エアロゾルを導く前記気流を生成してもよい。
【0051】
これにより、対象空間内に存在する物体とエアロゾルとの接触を回避しやすくなるので、物体に妨げられずにエアロゾルを効率良く浄化することができる。
【0052】
また、例えば、前記決定するステップでは、前記物体が検出された位置を通過しない経路を前記回避経路として決定してもよい。
【0053】
これにより、物体が静止している場合に、物体とエアロゾルとの接触を回避しやすくすることができる。
【0054】
また、例えば、本開示の一態様に係る浄化方法は、さらに、前記物体の移動経路を予測するステップを含み、前記決定するステップでは、前記エアロゾルが、前記移動経路に沿って移動する前記物体との接触を避けて前記浄化部まで至ることができる経路を前記回避経路として決定してもよい。
【0055】
これにより、物体が移動している場合に、移動中の物体とエアロゾルとの接触を回避しやすくすることができる。
【0056】
また、例えば、前記物体を検出するステップでは、前記光センサと異なるセンサを用いて前記物体を検出してもよい。
【0057】
これにより、物体を検出する専用のセンサを利用することができるので、物体の検出精度を高めることができる。物体の検出精度が高まることにより、物体とエアロゾルとの接触を回避しやすくなり、エアロゾルを効率良く浄化することができる。
【0058】
また、例えば、前記周波数間隔は、3.9GHz以下であってもよい。
【0059】
これにより、干渉を利用することでレイリー散乱光を充分に抑制することができるので、受光器には、エアロゾルに基づくミー散乱光を受光させることができる。したがって、受光器による受光強度に基づいてエアロゾルの有無及び濃度を容易に計測することができる。
【0060】
また、例えば、前記光センサは、光源及びエタロンを含み、前記複数本のピークを有する光は、前記光源から発せられて前記エタロンを通過した光であってもよい。
【0061】
これにより、エタロンを利用することで、マイケルソン干渉計を用いる場合に比べて部品点数を削減することができるので、光センサの構造を簡単にすることができる。また、エタロンによってレイリー散乱光を除去することができるので、複雑な信号処理を必要とせず、受光器による受光強度に基づいてエアロゾルを簡単に精度良く検出することができる。
【0062】
また、例えば、本開示の一態様に係る浄化システムは、対象空間内のエアロゾルを検出する光センサと、浄化部と、前記エアロゾルの量が閾値を超えた場合に、前記エアロゾルを前記浄化部に導く気流を生成する生成装置とを備え、前記浄化部は、前記気流によって導かれたエアロゾルを浄化する。
【0063】
これにより、光センサを用いてエアロゾルを検出し、検出したエアロゾルを気流で浄化部に導くことができる。エアロゾルの浄化を行う浄化部にエアロゾルが導かれるので、空気中に浮遊するエアロゾルを効率良く浄化することができる。
【0064】
本開示において、回路、ユニット、装置、部材又は部の全部又は一部、又はブロック図の機能ブロックの全部又は一部は、半導体装置、半導体集積回路(IC)、又はLSI(Large Scale Integration)を含む一つ又は複数の電子回路によって実行されてもよい。LSI又はICは、一つのチップに集積されてもよいし、複数のチップを組み合わせて構成されてもよい。例えば、記憶素子以外の機能ブロックは、一つのチップに集積されてもよい。ここでは、LSIまたはICと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、若しくはULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、Field Programmable Gate Array(FPGA)、又はLSI内部の接合関係の再構成又はLSI内部の回路区画のセットアップができるreconfigurable logic deviceも同じ目的で使うことができる。
【0065】
さらに、回路、ユニット、装置、部材又は部の全部又は一部の機能又は操作は、ソフトウェア処理によって実行することが可能である。この場合、ソフトウェアは一つ又は複数のROM、光学ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録され、ソフトウェアが処理装置(processor)によって実行されたときに、そのソフトウェアで特定された機能が処理装置(processor)および周辺装置によって実行される。システム又は装置は、ソフトウェアが記録されている一つ又は複数の非一時的記録媒体、処理装置(processor)、及び必要とされるハードウェアデバイス、例えばインタフェース、を備えていてもよい。
【0066】
以下では、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0067】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0068】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0069】
また、本明細書において、直交又は一致などの要素間の関係性を示す用語、及び、円柱又は角柱などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0070】
(実施の形態1)
[1.構成]
まず、実施の形態1に係る浄化システムの構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る浄化システム1の構成を示す図である。
【0071】
図1に示されるように、浄化システム1は、エアロゾル計測装置100と、気流生成装置110と、浄化部120とを備える。浄化システム1では、エアロゾル計測装置100がエアロゾル90を検出し、気流生成装置110が生成する気流112によって、検出されたエアロゾル90を浄化部120まで導き、導かれたエアロゾル90を浄化部120が浄化する。
【0072】
[1-1.エアロゾル計測装置]
エアロゾル計測装置100は、光センサの一例である。図1に示されるように、エアロゾル計測装置100は、対象空間内の空気中に照射光L2を出射し、空気中に浮遊するエアロゾル90が照射光L2を散乱させることで発生する散乱光L3を取得する。エアロゾル計測装置100は、取得した散乱光L3を処理することで、エアロゾル90を計測する。
【0073】
対象空間は、例えば、住居、オフィス、介護施設又は病院などの建物の一部屋である。対象空間は、例えば、壁、窓、ドア、床及び天井などで仕切られた空間であり、閉じられた空間であるが、これに限らない。対象空間は、屋外の開放された空間であってもよい。また、対象空間は、バス又は飛行機などの移動体の内部空間であってもよい。
【0074】
計測対象物であるエアロゾル90は、例えば、対象空間内を浮遊している塵埃、PM2.5などの浮遊粒子状物質、生物系粒子、又は、微小水滴などである。生物系粒子には、空気中に浮遊するカビ若しくはダニ、又は花粉などが含まれる。また、微小水滴には、咳又はくしゃみなどの人体から動的に発生する物質が含まれる。
【0075】
エアロゾル90は、空気を構成する分子に比べて十分に大きい。本実施の形態では、エアロゾル90の粒径が照射光L2の波長以上であるので、エアロゾル90は、照射光L2を散乱させることでミー散乱光を発生させる。
【0076】
なお、散乱光L3を発生させる要因物質には、エアロゾル90だけでなく、空気を構成する分子も含まれる。空気を構成する分子は、照射光L2の波長よりも十分に小さいので、照射光L2を散乱させることでレイリー散乱光を発生させる。
【0077】
したがって、エアロゾル計測装置100が取得する散乱光L3には、ミー散乱光とレイリー散乱光とが含まれる。ここでのミー散乱光は、ミー散乱による後方散乱光である。本実施の形態に係るエアロゾル計測装置100は、散乱光L3からミー散乱光を抽出し、抽出したミー散乱光に基づいてエアロゾル90の有無及び濃度を計測する。
【0078】
本実施の形態に係るエアロゾル計測装置100は、対象空間内の異なる方向に向けて照射光L2を出射する。照射光L2の出射方向は、例えば、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)ミラー(図示せず)などによって変更される。あるいは、エアロゾル計測装置100全体の向きを変更することで、照射光L2の出射方向が変更されてもよい。エアロゾル計測装置100は、対象空間内を走査することにより、対象空間内のエアロゾル90の分布を作成することができる。
【0079】
図1に示されるように、エアロゾル計測装置100は、光学素子10と、光源20と、ミラー22と、集光部30と、集光レンズ40と、受光器50と、分析部60とを備える。なお、集光部30の一例が集光レンズ30aである。以下では、エアロゾル計測装置100が備える各構成要素について説明する。
【0080】
光学素子10は、入射する光を内部で干渉させることにより、互いに等しい周波数間隔で離れた複数本のピークを有する光として出射する。複数本のピークを有する光は、マルチ光とも呼称される。本実施の形態では、光学素子10は、単一の光学素子である。つまり、光学素子10は、一体的に構成された1つの部材である。光学素子10の形状は、例えば、円柱体又は角柱体などである。光学素子10は、具体的にはエタロンである。
【0081】
図1に示されるように、光学素子10は、透光部11と、2つの多層膜12及び13とを有する。透光部11は、例えば石英又は水晶などの透明な材料を用いて形成されている。透光部11は、2つの多層膜12及び13に挟まれており、2つの多層膜12及び13の各々に接触している。2つの多層膜12及び13はそれぞれ、複数の誘電体膜の積層構造を有する誘電体多層膜である。例えば、2つの多層膜12及び13はそれぞれ、屈折率が低い誘電体膜と屈折率が高い誘電体膜とを交互に積層されることで形成されている。誘電体膜としては、例えば、チタン酸化膜、ハフニウム酸化膜、シリコン酸化膜などが用いられる。なお、透光部11は、空気層であってもよく、2つの多層膜12及び13は、一定距離を保つように枠体などによって固定されていてもよい。
【0082】
光学素子10は、光源20から発せられた出射光L1を内部で干渉させて、互いに等しい周波数間隔で離れた複数本のピークを有する光である照射光L2として出射する。照射光L2は、マルチレーザ光である。本実施の形態では、出射光L1は、光学素子10の多層膜12から入射し、多層膜13から出射される。多層膜12の、透光部11に接する面とは反対側の第1面12aは、出射光L1が入射する入射面である。多層膜13の、透光部11と接する面とは反対側の第2面13aは、照射光L2が出射される出射面である。出射面である第2面13aは、入射面である第1面12aとは反対側の面である。第1面12aと第2面13aとは、互いに平行である。第1面12a及び第2面13aに直交する方向は、光学素子10の中心軸に平行である。
【0083】
また、光学素子10には、集光レンズ30aによって集光された散乱光L3が入射する。本実施の形態では、散乱光L3が、光学素子10の多層膜13から入射し、散乱光L3の一部であるミー散乱光L4が、多層膜12から出射される。多層膜13の第2面13aは、散乱光L3が入射する入射面である。多層膜12の第1面12aは、ミー散乱光L4が出射される出射面である。つまり、出射光L1の入射面と散乱光L3の入射面とは異なっている。なお、ミラーなどを利用して、出射光L1の入射面と散乱光L3の入射面とが同じ面であってもよい。
【0084】
また、図1に示されるように、光学素子10は、出射光L1が通過する経路を含む第1部分10aと、散乱光L3が通過する経路を含む第2部分10bとを有する。図1では、第1部分10aと第2部分10bとの境界を破線で模式的に表している。第1部分10aと第2部分10bとは、互いに異なる部分である。例えば、光学素子10が円柱状のエタロンである場合、第1部分10aと第2部分10bとは、中心軸を含む面で仮想的にエタロンを分割したときの半円柱状の部分に相当する。なお、円柱状のエタロンの円形の上面及び底面が光の入射面及び出射面に相当する。
【0085】
なお、第1部分10aと第2部分10bとはそれぞれ、別のエタロンであってもよい。つまり、エアロゾル計測装置100は、出射光L1用のエタロンと、散乱光L3用のエタロンとである2つのエタロンを光学素子10として備えてもよい。
【0086】
散乱光L3には、互いに等しい周波数間隔で離れた複数本のピークを有する光が含まれるので、光学素子10を通過する際に、それぞれの光が干渉を起こす。本実施の形態では、光学素子10の厚みが調整されており、散乱光L3に含まれるミー散乱光L4を通過させ、レイリー散乱光の通過を抑制する。これにより、散乱光L3からレイリー散乱光を適切に除去することができるので、エアロゾル90に起因するミー散乱光L4を受光器50に受光させることができる。
【0087】
本実施の形態では、光学素子10は、光源20から出射された出射光L1の光路上に位置している。具体的には、光学素子10は、ミラー22と、エアロゾル計測装置100の筐体に設けられた開口との間に位置している。当該開口は、光学素子10から出射される照射光L2が通過するために設けられている。さらに、光学素子10は、エアロゾル90から発生する散乱光L3の光路上に位置している。具体的には、光学素子10は、集光レンズ30aと集光レンズ40との間に位置している。
【0088】
光源20は、光学素子10を介して、照射光L2を大気中に出射する。具体的には、光源20は、出射光L1を発する。出射光L1は、例えばパルス光であるが、連続光であってもよい。出射光L1は、特定の波長帯域にピークを有する単色光であってもよく、ブロードな波長帯域を含む光であってもよい。出射光L1は、例えば、ピークの波長よりも10pmから10nm短い波長から、ピークの波長よりも10pmから10nm長い波長までの範囲の波長成分を含んでいる。出射光L1は、例えば、紫外光、青色光又は赤外光などである。出射光L1は、ミラー22で反射された後、光学素子10の内部での干渉により、互いに等しい周波数間隔で離れた複数のピークを有する光である照射光L2として大気中に出射される。
【0089】
光源20は、例えば、パルスレーザ光を出射光L1として発する半導体レーザ素子である。出射光L1のビームモードは、例えばマルチモードであるが、シングルモードであってもよい。一例として、光源20は、405nmの近傍にピークを有するレーザ光を出射光L1として発する。あるいは、光源20は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)素子であってもよい。また、光源20は、ハロゲンランプなどの放電ランプであってもよい。
【0090】
ミラー22は、出射光L1を反射する。出射光L1に対してミラー22を適切な角度で配置することにより、出射光L1の進路を所望の方向に曲げることができる。本実施の形態では、ミラー22は、出射光L1を反射して光学素子10に入射させる。なお、エアロゾル計測装置100は、ミラー22を備えなくてもよい。
【0091】
集光部30は、大気中に含まれるエアロゾル90を含む散乱体が照射光L2を散乱させることで発生する散乱光L3を集光するものである。集光部30の一例として、例えば、凸状の集光レンズ30a、又は、少なくとも1つの反射鏡などがある。例えば、集光レンズ30aで集光された光は、コリメートレンズを含むレンズ群により、平行光に変換されて出射される。集光レンズ30aによって集光された散乱光L3は、光学素子10に入射する。散乱光L3の信号強度が強い場合は、特に、集光部30が配置されていなくてもよい。
【0092】
集光レンズ30aによって集光された散乱光L3は、光学素子10に入射する。本実施の形態では、散乱光L3は、光学素子10の第2面13aに対して正面から、すなわち、入射角が0°で入射する。
【0093】
集光レンズ40は、集光レンズ30aによって集光された散乱光L3のうち、光学素子10を通過したミー散乱光L4を集光する。集光レンズ40は、例えば凸レンズである。集光レンズ40は、受光器50の受光面にミー散乱光L4を集光する。
【0094】
受光器50は、集光レンズ30aによって集光された散乱光L3のうち、光学素子10を通過したミー散乱光L4を受光し、受光強度に応じた信号を出力する。受光強度は、ミー散乱光L4の強度であり、例えば、受光器50が出力する信号の信号レベルで表される。
【0095】
受光器50は、光電変換を行う素子であり、例えば、PMT(Photomultiplier Tube)である。あるいは、受光器50は、PMTとフォトンカウンタとを有してもよい。また、受光器50は、アバランシェフォトダイオードであってもよい。
【0096】
分析部60は、受光器50から出力された信号を分析することで、散乱体に含まれるエアロゾル90を分析する。例えば、分析部60は、信号の信号レベルに基づいてエアロゾル90の有無及び濃度を決定する。具体的には、分析部60は、信号レベルとエアロゾル90の濃度とを対応付けた対応情報を参照することで、信号レベルに対応するエアロゾル90の濃度を決定する。対応情報は、例えば、分析部60が備えるメモリ(図示せず)に予め記憶されている。
【0097】
また、分析部60は、照射光L2が出射されてからミー散乱光L4を受光するまでに要する時間に基づいて、TOF(Time Of Flight)方式によってエアロゾル90までの距離を算出する。分析部60は、算出した距離と照射光L2を出射した方向とに基づいて、対象空間内のエアロゾル90の位置を特定する。照射光L2の出射方向を変更しながらエアロゾル90の位置の特定を繰り返すことで、分析部60は、対象空間内でのエアロゾル90の分布を作成する。
【0098】
分析部60は、複数の回路部品を含む1つ又は複数の電子回路で構成されている。1つ又は複数の電子回路はそれぞれ、汎用的な回路でもよく、専用の回路でもよい。つまり、分析部60が実行する機能は、電子回路などのハードウェアで実現される。あるいは、分析部60は、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどで実現されてもよい。分析部60が実行する機能は、プロセッサで実行されるソフトウェアで実現されてもよい。
【0099】
エアロゾル計測装置100が備える各構成要素は、例えば、図示しない筐体の内部に収容されている。筐体は、エアロゾル計測装置100の外郭筐体であり、遮光性を有する。筐体には、照射光L2及び散乱光L3を通過させるための開口が設けられている。開口は、照射光L2と散乱光L3との各々に対応させて1つずつ設けられていてもよい。集光レンズ30aは、当該開口に設けられていてもよい。
【0100】
上記態様では、エアロゾル計測装置100が光学素子10及び集光レンズ40を備える構成を説明した。これに対して、例えば散乱光L3の信号強度が強い場合などは、特に、光学素子10及び集光レンズ40が配置されていなくてもよい。つまり、エアロゾル計測装置100は、光源20と受光器50とのみを備えてもよい。
【0101】
[1-2.気流生成装置]
気流生成装置110は、気流112を生成する生成装置の一例である。気流生成装置110は、エアロゾル計測装置100によって計測された対象空間内のエアロゾル90の量が閾値を超えた場合に、気流112を生成して放出する。対象空間とは、言い換えれば、照射光L2を出射する空間のことである。
【0102】
気流生成装置110は、例えば、ファンを含む機器であり、具体的には、対象空間に配置された換気扇、送風機、扇風機、エアコン又は空気清浄機などである。気流生成装置110は、気流を発生するファンの代わりに又はファンに加えて、ポンプ又は渦輪発生装置を含んでもよい。
【0103】
閾値は、予め定められた値であり、例えば気流生成装置110のメモリなどに記憶されている。閾値は、例えば、エアロゾル90が人体に健康被害を与える可能性がない範囲におけるエアロゾル90の量の上限値である。
【0104】
気流生成装置110は、エアロゾル計測装置100と通信可能に接続されている。通信は、有線通信であってもよく、無線通信であってもよい。気流生成装置110は、エアロゾル計測装置100によるエアロゾル90の計測結果を取得し、取得した計測結果に基づいて気流112を生成する。
【0105】
気流112は、エアロゾル90を浄化部120に導く気流である。気流生成装置110は、エアロゾル90と浄化部120と気流生成装置110との位置関係に基づいて気流112のパラメータを決定し、決定したパラメータで気流112を放出する。パラメータは、風量、風速、風向及び放出範囲の少なくとも1つである。
【0106】
なお、浄化システム1は、複数の気流生成装置110を備えてもよい。複数の気流生成装置110から放出される複数の気流112を利用して、エアロゾル90を浄化部120に導いてもよい。これにより、エアロゾル90と浄化部120とを結ぶ直線上に障害物が存在する場合、又は、エアロゾル90と浄化部120と気流生成装置110との位置関係が複雑な場合であっても、エアロゾル90を浄化部120に導くことができる。
【0107】
[1-3.浄化部]
浄化部120は、気流112によって導かれたエアロゾル90を浄化する。本実施の形態では、浄化部120は、対象空間の外部と連通する排出口121を含む。排出口121は、対象空間の外部に向けて開いている。浄化部120は、気流112によって導かれたエアロゾル90を排出口121から外部に排出する。
【0108】
浄化部120は、例えば、対象空間を形成する部屋の壁又は天井に設けられた換気口である。あるいは、浄化部120は、窓又はドアであってもよい。すなわち、浄化部120は、エアロゾル90を外部に排出する機能だけを有してもよく、エアロゾル90を無害化する機能を有しなくてもよい。
【0109】
[2.動作]
続いて、本実施の形態に係る浄化システム1の動作について、図2及び図3を用いて説明する。図2は、本実施の形態に係る浄化システム1の動作を示すフローチャートである。図3は、本実施の形態に係る浄化システム1による浄化の様子を模式的に示す図である。
【0110】
図2に示されるように、浄化システム1では、まずエアロゾル計測装置100がエアロゾル90の検出を行う(S10)。具体的には、図3の部分(a)に示されるように、エアロゾル計測装置100は、対象空間内の所定の方向に照射光L2を照射することで、対象空間内に存在するエアロゾル90を検出する。エアロゾル90の検出方法の具体的な処理については、後で説明する。
【0111】
次に、浄化システム1は、エアロゾル90の検出結果に基づいて、検出されたエアロゾル90の量と閾値とを比較する(S20)。エアロゾル90の量が閾値を超えた場合(S20で“閾値より大きい”)、浄化システム1は、エアロゾル90の浄化を行う(S30)。
【0112】
具体的には、図3の部分(b)に示されるように、気流生成装置110が気流112を生成することで、エアロゾル90を浄化部120に導く。なお、エアロゾル90は、微粒子単体で存在することは稀であり、通常、複数の微粒子が集まって集合体として存在する。気流生成装置110は、検出されたエアロゾル90の集合体が分散しないように、エアロゾル90の集合体の全体を押し出すような気流112を生成する。例えば、気流112の放出範囲は、エアロゾル90の集合体よりも大きな範囲である。
【0113】
浄化部120は、気流112によって導かれたエアロゾル90を浄化する。具体的には、浄化部120は、気流112によって導かれたエアロゾル90を排出口121から対象空間の外部に排出する。
【0114】
エアロゾル90の量が閾値以下である場合(S20で“閾値以下”)、浄化処理は終了する。
【0115】
なお、閾値との比較(S20)は、例えば、気流生成装置110で行われるが、エアロゾル計測装置100が行ってもよい。あるいは、浄化システム1の全体の動作を制御する制御装置(図示せず)が行ってもよい。
【0116】
[3.エアロゾルの検出処理]
続いて、本実施の形態に係る浄化システム1の動作のうち、エアロゾル90の検出処理の詳細について、図4を用いて説明する。図4は、本実施の形態に係る浄化システムの動作のうち、エアロゾルの検出処理(S10)を示すフローチャートである。
【0117】
図4に示されるように、光源20が出射光L1を出射する(S11)。出射光L1は、ミラー22に反射されて進行方向が曲げられて、光学素子10の第1面12aから光学素子10に入射する。出射光L1は、光学素子10を通過することによって、互いに等しい周波数間隔で離れた複数本のピークを有する光であるマルチ光に変換される。つまり、光学素子10は、入射する光を内部で干渉させて、互いに等しい周波数間隔で離れた複数本のピークを有する光として出射する(S12)。マルチ光である照射光L2は、対象空間内に出射されて、エアロゾル90を含む散乱体によって散乱される。
【0118】
次に、集光レンズ30aは、散乱体から発生する散乱光L3を集光する(S13)。集光レンズ30aによって集光された散乱光L3は、光学素子10の第2面13aから光学素子10に入射する。光学素子10を通過することによって、ミー散乱光L4が抽出される。つまり、集光部30によって集光された散乱光L3を光学素子10の内部で干渉させて、光学素子10を通過させる(S14)。言い換えると、光学素子10は、散乱光L3のうち、レイリー散乱光を実質的に除去し、ミー散乱光L4のみを通過させる。
【0119】
次に、受光器50は、ミー散乱光L4を受光し、受光強度に応じた信号を出力する(S15)。
【0120】
分析部60は、受光器50から出力された信号を分析することで、散乱体に含まれるエアロゾル90を分析する(S16)。具体的には、分析部60は、ミー散乱光L4の強度に基づいてエアロゾル90の有無、個数及び位置を検出する。検出結果は、気流生成装置110に出力される。
【0121】
エアロゾル計測装置100は、以上のステップS11からステップS16までの処理を、照射光L2の出射方向を変えながら繰り返し行う。すなわち、エアロゾル計測装置100は、対象空間内を、照射光L2を用いてスキャンする。例えば、対象空間内の所定の方向に向かって照射光L2を出射し、散乱光L3が取得できた場合に、散乱光L3の発生源をエアロゾル90の位置として特定することができる。また、そのときの散乱光L3の強度に基づいてエアロゾル90の量を特定することができる。これにより、エアロゾル計測装置100は、対象空間内のエアロゾル90の位置及び量を示す分布図を生成することができる。
【0122】
上記態様では、出射光又は散乱光をエタロンで干渉させ、散乱光を集光する例を説明した。これに対して、例えば散乱光L3の信号強度が強い場合などは、出射光又は散乱光のエタロンによる干渉、及び、散乱光の集光はされなくてもよい。つまり、エアロゾル計測装置100では、光源20による出射光の出射と、受光器50によるエアロゾル90の散乱光の受光とを行うだけでもよい。
【0123】
浄化システム1では、エアロゾル計測装置100による対象空間内のスキャンを行い、分布図を生成した後に、浄化(S30)を行ってもよい。具体的には、浄化システム1は、生成された分布図に基づいてエアロゾル90を浄化してもよい。これにより、エアロゾル90の分布に基づいて適切な浄化方法を決定することができるので、より効果的な浄化を行うことができる。例えば、複数箇所にエアロゾル90が存在する場合に、複数箇所のエアロゾル90をまとめて気流112で浄化部120に導くことができる。また、複数箇所のエアロゾル90を個々に浄化部120に導く場合において、ある位置に位置するエアロゾル90に向けて気流112を生成する際に、別の位置に位置するエアロゾル90を散らさないようにすることができる。
【0124】
なお、浄化システム1では、一方向に照射光L2を出射する度に、閾値との比較(S20)及びエアロゾル90の浄化(S30)を行ってもよい。これにより、対象空間内に検出されたエアロゾル90を逐次浄化することができ、対象空間内を常に清浄な状態に保つことができる。
【0125】
[4.光学素子の機能]
続いて、エアロゾル90の検出を精度良く行うための光学素子10の具体的な機能について説明する。
【0126】
上述したように、光学素子10は、光源20から発せられたレーザ光である出射光L1を内部で干渉させて、互いに等しい周波数間隔で離れた複数本のピークを有する光からなるマルチレーザ光である照射光L2として出射する。以下ではまず、マルチレーザ光について図5を用いて説明する。
【0127】
図5は、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置100が出射するマルチレーザ光のスペクトルの一例を示す図である。図5の部分(a)及び部分(b)の各々において横軸は周波数を表し、縦軸は信号強度を表している。
【0128】
図5の部分(a)は、光学素子10を通過した後のマルチレーザ光である照射光L2のスペクトルを示している。スペクトルに含まれる複数のピークがそれぞれ、照射光L2に含まれる複数本のピークに対応している。複数本のピークの周波数間隔LW2が互いに等しく、例えば3GHzである。ここでは、複数本のピークの信号強度が互いに等しい例を示しているが、互いに異なっていてもよい。照射光L2の中心波長λは、例えば405nmである。
【0129】
図5の部分(b)は、図5の部分(a)の拡大図であり、スペクトルの1つのピーク、すなわち、照射光L2に含まれる1つの光のみを拡大して示している。1つの光の半値全幅LW1は、例えば360MHzである。LW1は、LW2の1/20以上1/5以下であるが、1/10以上1/8以下であってもよい。
【0130】
本実施の形態では、出射光L1が光学素子10を通過することで、光学素子10内で干渉されて、照射光L2として出射される。光学素子10であるエタロンは、入射する光と、エタロン内で反射を繰り返す光との干渉を利用する。入射する光の位相と、エタロン内の反射を繰り返す光の位相とが一致した場合、光を強め合う干渉が起こり、エタロン内で光が増強されて透過する。エタロンの多層膜12及び13は、光を透過したり、反射したりすることができる。多層膜12及び13の各々の透過率は、例えば75%であるが、これに限らない。
【0131】
ここで、図6及び図7はそれぞれ、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置100の光学素子10を通過する光を説明するための図である。具体的には、図6は、第0の透過光及び第1の透過光を模式的に表している。図7は、第0の透過光及び第2の透過光を模式的に表している。
【0132】
光学素子10は、入射する光の一部をそのまま透過させる。図6及び図7に示されるように、光学素子10の多層膜12及び13で反射されずにそのまま透過する光が第0の透過光である。
【0133】
第1の透過光は、図6に示されるように、入射した光が多層膜13で1回反射された後、多層膜12で1回反射された光である。第0の透過光と第1の透過光との位相が一致することによって干渉が起こり、第1の干渉フリンジに対応する光が出射される。干渉フリンジについては、図9及び図10を用いて後で説明する。
【0134】
第2の透過光は、図7に示されるように、入射した光が多層膜13及び多層膜12でそれぞれ2回ずつ反射された光である。第0の透過光と第2の透過光との位相が一致することによって干渉が起こり、第2の干渉フリンジに対応する光が出射される。
【0135】
入射する光の位相と、反射を繰り返す光の位相とが一致しない場合、入射面側に反射され、エタロンを通過する光が弱くなる。この結果、透過光は、周期的なスペクトルを有する。つまり、光学素子10は、出射光L1が入射された場合に、等しい周波数間隔LW2を有する照射光L2を出射することができる。
【0136】
周波数間隔LW2を実現するためのエタロンの長さΔxは、以下の式(1)に基づいて定められる。なお、エタロンの長さΔxは、図6及び図7に示されるように、多層膜12と多層膜13との距離、すなわち、透光部11の厚さである。
【0137】
【数1】
【0138】
式(1)において、nは、真空中の屈折率であり、例えば1.0である。nは、エタロンの透光部11の屈折率であり、石英の場合1.47である。cは、光速であり、3×10m/sである。LW2=3GHzである場合、上記式(1)より、エタロンの長さΔxが34mmになる。また、エタロンの長さΔxは、製造上、80mm程度が限界である。このため、LW2の下限値は、1.3GHz程度になる。
【0139】
エタロンによって、ファブリペロー干渉を起こす場合の光路差dxは、以下の式(2)で表される。
【0140】
【数2】
【0141】
例えば、Δx=34mmの場合、光路差dxは100mmになる。
【0142】
次に、図5に示される照射光L2を散乱体が散乱させることで発生する散乱光L3について、図8を用いて説明する。
【0143】
図8は、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置100が出射したマルチレーザ光を散乱させることで発生する散乱光L3のスペクトルの一例を示す図である。図8の部分(a)及び部分(b)の各々において、横軸は周波数を表し、縦軸は信号強度を表している。
【0144】
図8の部分(a)は、散乱光L3のスペクトルを示している。散乱光L3は、照射光L2と同様に、互いに等しい周波数間隔MW2で離れた複数本のピークを有する光からなる。スペクトルに含まれる複数のピークがそれぞれ、照射光L2に含まれる複数本のピークに対応している。散乱光L3の周波数間隔MW2は、照射光L2の周波数間隔LW2に等しい。ここでは、複数本のピークの信号強度が互いに等しい例を示しているが、互いに異なっていてもよい。
【0145】
図8の部分(b)は、図8の部分(a)の拡大図であり、スペクトルの1つのピーク、すなわち、散乱光L3に含まれる1つの光のみを拡大して示している。
【0146】
上述したように、散乱光L3は、ミー散乱光とレイリー散乱光とを含んでいる。ミー散乱光のスペクトルは、散乱前の照射光L2のスペクトルと実質的に同じである。一方で、レイリー散乱光は、大気を構成する分子の熱運動によって周波数幅が広がる。また、レイリー散乱光の強度は、通常、ミー散乱光の強度よりも低い。
【0147】
このため、図8の部分(b)に示されるように、散乱光L3のスペクトルは、図5に示される照射光L2のスペクトルと比較して、ピークの裾野が広がった形状を有する。中心の高いピークがミー散乱光に相当し、裾野部分がレイリー散乱光に相当する。なお、図8の部分(b)では、大気を構成する分子によるレイリー散乱光の信号強度と、エアロゾルによるミー散乱光の信号強度とを3:1としている。なお、ここでの信号強度は、ピークの面積で表される。また、ミー散乱光を表すピークの半値全幅MW1は、照射光L2の半値全幅LW1に等しい。
【0148】
レイリー散乱光を表す裾野部分の半値全幅RWは、一般的な実測によれば、3.4GHzから3.9GHz程度であることが知られている。一例として、レイリー散乱光の半値全幅RWは、3.6GHz(Δλ=1.9pm)とすることができる。
【0149】
なお、Δλは、以下の式(3)に基づいて算出される。
【0150】
【数3】
【0151】
式(3)において、Δf=RWである。cは、光速であり、3×10m/sである。λは、中心波長であり、ここでは405nmである。
【0152】
本実施の形態では、光学素子10に散乱光L3を通過させることによって、3GHzの周波数間隔で現れる複数本のピークを有する光、すなわち、ミー散乱光を透過させ、他の周波数成分の光、すなわち、レイリー散乱光を除去することができる。
【0153】
図9は、エアロゾルによるミー散乱光と大気を構成する分子によるレイリー散乱光とを含む散乱光を、マイケルソン干渉計で干渉させた場合のインターフェログラムの計算結果を表す図である。図9において、横軸は干渉を起こす光路差dxを表し、縦軸は干渉光の強度を表している。図10は、図9の破線で囲まれた領域Xを拡大した図である。
【0154】
図9及び図10に示されるように、光路差dxがΔxの整数倍になる度に、干渉フリンジが現れる。dx=0の干渉フリンジを第0の干渉フリンジと定義し、dx=n×Δxの干渉フリンジを第nの干渉フリンジと定義する。nは自然数である。図10は、第0の干渉フリンジ、第1の干渉フリンジ、第2の干渉フリンジを表している。第1の干渉フリンジは、図6に示される第0の透過光と第1の透過光との干渉によって生じる光である。第2の干渉フリンジは、図7に示される第0の透過光と第2の透過光との干渉によって生じる光である。
【0155】
受光器50では、第0の干渉フリンジから第nの干渉フリンジまでを合わせた干渉光がミー散乱光L4として受光される。本実施の形態では、光学素子10であるエタロンの長さΔxを調整することにより、大気散乱に起因するレイリー散乱光に基づく干渉フリンジを除去することができる。レイリー散乱光を除去するのに適した長さΔxの決定方法について説明する。
【0156】
図11は、エアロゾルによる散乱がなく、大気散乱だけを考慮した場合のマイケルソン干渉計による干渉フリンジの周波数間隔の依存性を説明するための図である。図11の部分(a)から部分(l)ではそれぞれ、横軸がdxを表し、縦軸が信号強度を表している。図11の部分(a)から部分(l)はそれぞれ、照射光L2の周波数間隔LW2が2.4GHz、3.0GHz、3.6GHz、3.7GHz、3.8GHz、3.9GHz、4GHz、5GHz、6GHz、10GHz、15GHz、30GHzの場合のインターフェログラムの計算結果を表している。
【0157】
図11に示されるように、周波数間隔LW2が大きくなるにつれて、出現する干渉フリンジの個数が増加し、かつ、出現する干渉フリンジの信号強度が大きくなっている。例えば、周波数間隔LW2が2.4GHzの場合は、実質的に第0の干渉フリンジのみが出現しており、第1以上の干渉フリンジが出現していない。周波数間隔LW2が3.0GHzから4GHzの範囲では、第0の干渉フリンジと第1の干渉フリンジとが出現しており、第2以上の干渉フリンジが出現していない。周波数間隔LW2が5GHzの場合には、第0の干渉フリンジ及び第1の干渉フリンジに加えて、第2の干渉フリンジが出現している。図11では、第1の干渉フリンジ以上が現れている範囲を破線の枠で表している。
【0158】
大気散乱だけを考慮に入れた場合に第2以上の干渉フリンジが現れているということは、レイリー散乱光のみによる干渉が起きていることを意味する。すなわち、光学素子10にレイリー散乱光を入射させた場合に、レイリー散乱光が透過することを意味する。したがって、周波数間隔LW2は3.9GHz以下であれば、第1の干渉フリンジが小さくなるので、レイリー散乱光の透過が抑制される。
【0159】
すなわち、周波数間隔LW2が3.9GHzの場合の第1の干渉フリンジの大きさは、周波数間隔LW2の第1の干渉フリンジの大きさの50%以下になっている。このため、第1の干渉フリンジが小さくなっているので、レイリー散乱光が光学素子10を透過するのを抑制することができる。
【0160】
以上のことから、周波数間隔LW2は3.9GHz以下であることで、散乱光L3からレイリー散乱光を効率良く除去することができる。周波数間隔LW2が3.9GHzである場合、式(1)により、石英で作られたエタロンの長さΔxは、約26mmとなる。つまり、長さΔxが26mm以上のエタロンを光学素子10として用いることで、レイリー散乱光を効率良く除去することができ、エアロゾルの計測精度を高めることができる。
【0161】
[5.変形例]
上記の実施の形態では、浄化部120が排出口121を有し、排出口121からエアロゾル90を外部に排出する例を説明したが、浄化処理は、エアロゾル90の排出に限られない。以下では、浄化処理の変形例について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0162】
[5-1.変形例1]
図12は、変形例1に係る浄化システム2による浄化の様子を模式的に示す図である。図12に示されるように、本変形例に係る浄化システム2は、図1及び図3に示される浄化システム1と比較して、浄化部220をさらに備える点が相違する。なお、浄化システム2は、浄化部120の代わりに浄化部220を備えてもよい。
【0163】
浄化部220は、対象空間に設けられた吸引口221を含む。浄化部220は、気流112によって導かれたエアロゾル90を吸引口221から吸い込む。浄化部220は、例えば、ファンを含む機器であり、具体的には、対象空間に配置された空気清浄機又は掃除機などである。
【0164】
浄化部220は、吸引口221から吸い込んだエアロゾル90を捕集又は無害化する。例えば、浄化部220は、ファンに加え、エアロゾル90を捕集するフィルタ(図示せず)を備えてもよい。フィルタは、吸引口221に設けられている。浄化部220は、容器に貯められた薬剤とエアロゾル90とを接触させることにより、エアロゾル90を無害化してもよい。薬剤は、アルコール製剤又は次亜塩素酸水などであるが、これらに限定されない。あるいは、浄化部220は、オゾンを生成するオゾン発生器を有してもよく、生成したオゾンと吸引したエアロゾル90とを接触させることによって、エアロゾル90を無害化してもよい。エアロゾル90の無害化は、フィルタに付着したエアロゾル90に薬剤又はオゾンと接触させることで行われることが多い。また、浄化部220は、例えば、浄化機能を有するイオン分子とエアロゾル90とを接触させることにより、エアロゾルを無害化してもよい。浄化機能を有するイオン分子は、例えば、ナノイー又はプラズマクラスターなどである。
【0165】
本実施の形態では、浄化部220は、いわゆるロボット掃除機のように移動可能である。浄化部220は、エアロゾル90の検出結果に基づいて、エアロゾル90の吸引を行いやすい場所に移動することができる。
【0166】
また、本変形例では、気流生成装置110は、吸い込む気流112を生成する。つまり、気流生成装置110は、押し出す気流だけでなく、吸い込む気流を生成してもよい。
【0167】
図12の部分(a)に示されるように、エアロゾル90の検出を行う処理は実施の形態1と同様である。次に、図12の部分(b)に示されるように、気流生成装置110は、吸い込む気流112を生成することで、気流生成装置110にエアロゾル90を近づける。さらに、浄化部220は、気流生成装置110の近傍に移動し、気流112によって導かれたエアロゾル90を吸引口221から吸い込む。浄化部220は、吸い込んだエアロゾル90を捕集又は無害化する。
【0168】
なお、吸引方向への気流は、通常、押出方向への気流よりも弱い。このため、エアロゾル90が気流生成装置110の近くに存在する場合に特に有用である。また、浄化部220が移動可能であることで、エアロゾル90を吸引可能な位置に浄化部220が移動することができる。例えば、エアロゾル90と浄化部120との距離が遠い、又は、途中に障害物がある場合などのエアロゾル90を浄化部120に導くことができない場合であっても、浄化部220にエアロゾル90を吸引させることで浄化を実現することができる。
【0169】
[5-2.変形例2]
図13は、変形例2に係る浄化システム3による浄化の様子を模式的に示す図である。図13に示されるように、本変形例に係る浄化システム3は、図1及び図3に示される浄化システム1と比較して、気流生成装置110の代わりに浄化装置310を備える点が相違する。
【0170】
浄化装置310は、図13の部分(b)に示されるように、エアロゾル90を無害化する薬剤91を放出する。薬剤91は、例えば、アルコール製剤、次亜塩素酸水又はオゾン水などである。浄化装置310は、薬剤91を霧状にして噴霧する。あるいは、浄化装置310は、渦輪などの気流に乗せて薬剤91を噴出してもよい。
【0171】
浄化装置310は、気流生成装置の一例であり、押し出す気流又は吸い込む気流を生成してもよい。浄化装置310は、吸い込む気流を生成することで、エアロゾル90を引き寄せた後、薬剤91を噴霧してもよい。これにより、薬剤91を遠くまで放出しなくてもよくなるので、薬剤91とエアロゾル90との接触確率も高めることができる。薬剤91の無駄が減らすことができ、薬剤91を有効に利用することができるので、効率良くエアロゾル90を浄化することができる。
【0172】
[5-3.変形例3]
図14は、変形例3に係る浄化システム4による浄化の様子を模式的に示す図である。図14に示されるように、本変形例に係る浄化システム4は、図1及び図3に示される浄化システム1と比較して、排出口121を有する浄化部120を備えない点が相違する。具体的には、浄化システム4が備える気流生成装置110が、浄化部の機能も有する。つまり、本変形例では、エアロゾル90の浄化を行う浄化部と、エアロゾル90の位置に気流を放出する気流生成装置110とは、一体化された1つの装置で実現されている。
【0173】
本変形例に係る気流生成装置110は、図14に示されるように、気流92を発生させる。気流92は、エアロゾル90を散らして拡散させ、エアロゾル90の濃度を希釈させるための気流である。気流生成装置110は、エアロゾル計測装置100によって検出されたエアロゾル90に向けて、強く、拡散性の高い気流92を放出する。気流生成装置110は、エアロゾル90の位置を含む所定の範囲内で気流92の放出方向を変更しながら気流92を放出してもよい。
【0174】
これにより、エアロゾル90を散らして拡散させることで、対象空間内で局所的にエアロゾル90の濃度が高い空間が形成されないようにすることができる。すなわち、エアロゾル90の濃度を対象空間内で希釈させることができる。これにより、エアロゾル90の危険度が低下するので、健康被害の発生を抑制することができる。このように、希釈によってエアロゾル90の濃度を低下させることも、エアロゾル90の浄化として有効である。
【0175】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。
【0176】
実施の形態2では、対象空間内に存在する物体を検出し、検出結果に基づいてエアロゾル90と物体との接触を避ける回避経路を決定し、決定した回避経路に沿ってエアロゾル90を浄化部に導く。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0177】
[1.構成]
図15は、本実施の形態に係る浄化システム5の構成と、浄化システム5による浄化の様子の一例を示す図である。図15に示されるように、浄化システム5は、エアロゾル計測装置100と、気流生成装置110及び410と、浄化部120及び220と、センサ430とを備える。
【0178】
また、図15には、対象空間490と、対象空間490内の物体及び装置のレイアウトを模式的に示している。対象空間490には、机491と、机491を囲むように配置された椅子492a、492b、492c及び492dと、机491の側方に配置された棚493とが配置されている。机491の上には、気流生成装置110が配置されている。棚493の上には、気流生成装置410が配置されている。エアロゾル計測装置100及び浄化部220は並んで対象空間490の隅に配置されている。また、浄化部120は、対象空間490の別の隅に配置されている。センサ430は、例えば対象空間490のほぼ全体が検知範囲になるように対象空間490の壁面又は天井などに設けられている。なお、これらの配置及び個数は一例に過ぎない。
【0179】
気流生成装置410は、気流生成装置110と同じ機能を有する。
【0180】
センサ430は、対象空間490における物体の位置を検出するセンサである。センサ430は、例えば、対象空間490を撮像するイメージセンサである。あるいは、センサ430は、赤外線センサ又は音センサなどであってもよい。
【0181】
センサ430による検出対象である物体は、人物又は動物である。センサ430は、検出した物体が人物又は動物であるか否かを識別する。例えば、図15には、物体の一例として2人の人物495a及び495bが対象空間490内に存在している。人物495aは椅子492dに座って静止している。人物495bは椅子492bに座って静止している。なお、静止の意味は、椅子492bから離れないなどの大きな移動がないことを意味する。また、センサ430による検出対象である物体は、ロボット掃除機などの自律移動型ロボットであってもよい。
【0182】
本実施の形態では、気流生成装置110及び410の少なくとも一方が回避経路を決定する。例えば、センサ430による検出対象である物体が、人物又は動物である場合に、人物又は動物を回避するような気流を生成してもよい。例えば、気流生成装置110は、エアロゾル計測装置100、気流生成装置410及びセンサ430の各々と通信可能に接続されている。気流生成装置110は、エアロゾル計測装置100からエアロゾル90の検出結果を取得し、センサ430から物体の検出結果を取得し、2つの検出結果に基づいて回避経路を決定する。気流生成装置110は、決定した回避経路に基づいて適切な気流を生成するための制御信号を気流生成装置410に送信する。なお、回避経路の決定は、エアロゾル計測装置100が行ってもよく、気流生成装置410が行ってもよく、センサ430が行ってもよい。あるいは、回避経路の決定は、浄化システム5の全体を制御する制御装置(図示せず)が行ってもよい。回避経路の決定を行う装置は、対象空間内に存在する全ての浄化部及び全ての気流生成装置の位置、並びに、全ての気流生成装置の気流の生成に関わる機能の情報をメモリなどに記憶している。
【0183】
回避経路は、エアロゾル90が物体との接触を避けて浄化部120又は220まで至ることができる経路である。気流生成装置110及び410の少なくとも一方は、エアロゾル90の量が閾値を超えた場合に、回避経路に沿ってエアロゾル90を導く気流を生成する。あるいは、気流生成装置110及び410の両方が同時に又は所定の順序で所定の気流を生成することで、エアロゾル90を回避経路に沿って浄化部120又は220まで導いてもよい。センサ430により検出された物体が、人物又は動物ではなかった場合、その物体を回避することなく、最短経路で気流を生成してもよい。これにより、エアロゾルを確実に浄化することができる。
【0184】
[2.動作]
続いて、本実施の形態に係る浄化システム5の動作について、図16及び図17を用いて説明する。
【0185】
図16は、本実施の形態に係る浄化システム5の動作を示すフローチャートである。図16に示されるように、実施の形態1に係る浄化システム1の動作と比較して、エアロゾル90の量が閾値より大きい場合(S20で“閾値より大きい”)、回避処理を行う(S40)点が相違する。なお、回避処理(S40)は、閾値との比較(S20)を行う前に行われてもよい。
【0186】
図17は、本実施の形態に係る浄化システム5による動作のうち、回避処理(S40)を示すフローチャートである。図17に示されるように、センサ430が物体を検出する(S41)。物体が検出されなかった場合は、回避処理は終了され、図16に示されるように、浄化処理(S30)が行われる。検出結果は、気流生成装置110に送信される。
【0187】
次に、気流生成装置110は、検出された物体が移動しているか静止しているかを判定する(S42)。例えば、気流生成装置110は、一定期間の検出結果に基づいて物体がその間移動していない場合には、静止していると判定する。ここでの一定期間は、例えば、1秒以上数十秒以下であるが、これに限らない。
【0188】
物体が静止していると判定した場合(S42で“静止”)、気流生成装置110は、物体が検出された位置を通過しない経路を回避経路として決定する(S44)。例えば、図15に示される例では、人物495a及び495bが静止している状態を示している。浄化部220がエアロゾル90から最も近い位置に位置しているが、エアロゾル90と浄化部220との間に人物495aが静止している。このため、気流生成装置110がエアロゾル90を浄化部220に導く気流を生成した場合、エアロゾル90が人物495aと接触する。
【0189】
そこで、気流生成装置110は、エアロゾル90を浄化部120に導く経路を回避経路として決定する。例えば、図15に示されるように、まず、気流生成装置110が気流112を放出することで、エアロゾル90を気流生成装置410と浄化部120との間に導く。その後、気流生成装置410が気流412を放出することにより、エアロゾル90を浄化部120に導く。これにより、浄化部120は、排出口121からエアロゾル90を外部に排出することができる。なお、図15に示される回避経路は一例に過ぎず、人物495a及び495bとの接触を回避できる経路であれば、特に限定されない。
【0190】
図17に戻り、気流生成装置110は、一定期間の検出結果に基づいて、物体の位置が移動している場合には(S42で“移動”)、移動経路を予測する(S43)。具体的には、気流生成装置110は、一定期間の検出結果に基づいて物体の移動方向及び移動速度を算出し、算出結果に基づいて移動経路を予測する。例えば、予測される移動経路は、算出した移動方向及び移動速度を維持して物体が移動した場合の経路である。
【0191】
次に、気流生成装置110は、予測した移動経路に沿って移動する物体との接触を避けて浄化部まで至ることができる経路を回避経路として決定する(S44)。例えば、図18に示される例では、人物495bが静止している一方で、人物495aが移動している状態を示している。人物495aは、気流生成装置410の近くから浄化部120に向かう方向に移動している。このため、気流生成装置110がエアロゾル90を浄化部120に導く気流を生成した場合、エアロゾル90は、移動している人物495aと接触する可能性がある。
【0192】
そこで、気流生成装置110は、エアロゾル90を浄化部220に導く経路を回避経路として決定する。例えば、図18に示されるように、気流生成装置110及び410がそれぞれ気流112及び412を放出することで、エアロゾル90を浄化部220に導く。これにより、浄化部220は、吸引口221からエアロゾル90を吸い込んで捕集又は無害化する。なお、図18に示される回避経路は一例に過ぎず、人物495a及び495bとの接触を回避できる経路であれば、特に限定されない。
【0193】
以上のように、本実施の形態によれば、人物などの物体とエアロゾル90との接触を回避できる可能性を高めることができる。これにより、エアロゾル90が人物への健康被害を与えるのを抑制することができる。
【0194】
なお、センサ430は、エアロゾル計測装置100とは異なるセンサであるが、エアロゾル計測装置100を利用して物体を検出してもよい。例えば、エアロゾル計測装置100が出射した出射光L1が物体で反射された場合には、エアロゾル90による散乱光L3よりも強い光が検出される。このため、強い光に基づいて物体を検出することができる。例えば、強い光が検出される位置が移動する場合には、強い光の発生源の移動に沿って物体が移動していると判定することができる。
【0195】
また、図16及び図17に示される例では、エアロゾル90の量が閾値を超えた場合に、物体の検出を行う例を示したが、物体の検出は、常に行われていてもよい。
【0196】
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3について説明する。
【0197】
実施の形態1では、出射光L1及び散乱光L3の各々をエタロンによって干渉させる例について示したが、実施の形態3では、エタロンとは異なる干渉計を用いて散乱光L3を干渉させる。以下では、実施の形態1又は2との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0198】
図19は、本実施の形態に係る浄化システム6の構成を示す図である。図19に示されるように、浄化システム6は、実施の形態1に係る浄化システム1と比較して、エアロゾル計測装置100の代わりにエアロゾル計測装置500を備える点が相違する。エアロゾル計測装置500は、光源20及び分析部60の代わりに、光源520及び分析部560を備える点が相違する。また、エアロゾル計測装置500は、光学素子10の代わりに干渉部510を備える。
【0199】
光源520は、互いに等しい周波数間隔LW2で離れた複数本のピークを有するレーザ光を含むマルチレーザ光を、照射光L2として出射する。照射光L2の中心波長λは、例えば400nmである。複数本のピークの周波数間隔LW2は、例えば10GHz以下であり、一例として6GHzである。複数本のピークの各々の半値全幅LW1は、例えば、周波数間隔LW2の1/10以下の値であり、一例として360MHzである。
【0200】
上述したマルチレーザ光のモード間隔である周波数間隔は、例えば、5GHz以下とすることができる。これにより、効率良く大気散乱信号を除去することができる。
【0201】
照射光L2がエアロゾル90に照射されることで発生する散乱光L3は、互いに等しい周波数間隔MW2で離れた複数本のピークを有するミー散乱光を含む。周波数間隔MW2は、照射光L2の周波数間隔LW2に等しい。複数本のピークの各々の半値全幅MW1は、照射光L2の各ピークの半値全幅LW1に等しい。
【0202】
また、散乱光L3は、空気中を通過するので、空気を構成する分子によるレイリー散乱光を含む。レイリー散乱光の半値全幅RWは、分子の熱運動により広がる。実測でのレイリー散乱光の半値全幅RWは、3.4GHzから3.9GHz程度である。一例として、レイリー散乱光の半値全幅RWは、3.6GHzである。
【0203】
干渉部510は、光路差を変更可能な干渉計である。干渉部510は、散乱光L3の光路上に設けられており、散乱光L3が入射する。干渉部510を通過した後の散乱光L3が受光器50に受光される。
【0204】
干渉部510は、互いに光路長が異なる複数の散乱光に散乱光L3を分離し、複数の散乱光を干渉させる。干渉光を受光することで、インターフェログラムを形成することができる。インターフェログラムは、干渉によって生じる干渉フリンジのことである。干渉部510は、例えば、マイケルソン干渉計、マッハツェンダー干渉計、ファブリペロー干渉計などである。
【0205】
ここで、散乱光L3に干渉部510を通過させた場合に生成されるインターフェログラムにおける干渉フリンジの間隔をΔxとする。Δxは、光速c(=3×10m/s)を周波数間隔MW2で割った値である。例えば、周波数間隔MW2が6GHzであり、波長λが400nmである場合、Δxは50mmになる。
【0206】
本実施の形態では、干渉部510は、出射光L1の中心波長の1/4より大きく、かつ、干渉フリンジの間隔Δxの1/2より小さい範囲で光路差を掃引する。干渉部510によって生成される光路差をdxとし、dx=0での干渉フリンジを第0の干渉フリンジ、dx=Δxでの干渉フリンジを第1の干渉フリンジ、dx=n×Δxでの干渉フリンジを第nの干渉フリンジと定義する。本実施の形態では、干渉部510における光路差dxを調整することで、周波数間隔に対応した第1の干渉フリンジの近傍の信号を取得し、取得した信号からレイリー散乱光成分を除去することで、ミー散乱光を選択的に取得する。第1の干渉フリンジでは、空気を構成する分子によるレイリー散乱の影響が極めて小さく、エアロゾル90からのミー散乱光の強度に対する依存性が高い。具体的には、エアロゾル90からのミー散乱光の強度に応じて、第1の干渉フリンジの信号強度が単調に増加する。このため、第1の干渉フリンジの信号強度を測定することにより、エアロゾル90からのミー散乱光の強度を精度良く取得することができる。
【0207】
分析部560は、光路差dxを掃引させて得られる散乱光L3のインターフェログラムから、第1の干渉フリンジに対応する信号成分を抽出し、抽出した信号成分に基づいて速度を算出する。具体的には、分析部560は、干渉部510を通過した散乱光L3に基づいてインターフェログラムを生成する。分析部560は、生成したインターフェログラムに基づいて第1の干渉フリンジの信号強度を取得し、当該信号強度に基づいてエアロゾル90からのミー散乱光の受光強度を取得することができる。これにより、分析部560は、エアロゾル90の速度を精度良く算出することができる。
【0208】
なお、分析部560は、第1の干渉フリンジの近傍の信号に基づいてフーリエ変換を行ってもよい。分析部560は、フーリエ変換によって波長スペクトルデータを生成し、その最大値をミー散乱光の強度として取得することができる。
【0209】
以上のように、本実施の形態に係る浄化システム6によれば、散乱光L3からレイリー散乱光を除去することができる。したがって、実施の形態1又は2と同様に、エアロゾル90の検出精度を高めることができる。
【0210】
なお、エアロゾル計測装置500は、散乱光L3の経路上に設けられた、散乱光L3を集光する集光部30を備えてもよい。例えば、散乱光L3を透過させる開口(図示せず)とミラー22との間、ミラー22と干渉部510との間、干渉部510と受光器50との間の少なくとも1ヶ所に、1つ以上の集光部30が設けられていてもよい。
【0211】
集光部30は、例えば、集光レンズ及びコリメートレンズの少なくとも1つを含むレンズ群である。集光部30は、エアロゾル90からの散乱光L3を集光し、平行光に変換して出射する。集光部30が設けられていることにより、散乱光L3の検出精度を高めることができる。また、干渉部510による干渉効果を高めることができる。
【0212】
(他の実施の形態)
以上、1つ又は複数の態様に係るエアロゾル計測装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、及び、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0213】
例えば、上記の実施の形態では、エタロン又はマイケルソン干渉計などの干渉部を用いてレイリー散乱光を除去する例を示したが、これに限らない。エアロゾル計測装置は、エタロン又はマイケルソン干渉計などの干渉部を備えなくてもよい。干渉部を用いない場合であっても、エアロゾル90による散乱光を受光することで、エアロゾル90を検出することができる。
【0214】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよく、あるいは、複数の処理が並行して実行されてもよい。また、浄化システムが備える構成要素の複数の装置への振り分けは、一例である。例えば、一の装置が備える構成要素を他の装置が備えてもよい。
【0215】
例えば、上記実施の形態において説明した処理は、単一の装置(システム)を用いて集中処理することによって実現してもよく、又は、複数の装置を用いて分散処理することによって実現してもよい。また、上記プログラムを実行するプロセッサは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、又は分散処理を行ってもよい。
【0216】
また、上記実施の形態において、分析部などの構成要素の全部又は一部は、専用のハードウェアで構成されてもよく、あるいは、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)又はプロセッサなどのプログラム実行部が、HDD(Hard Disk Drive)又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0217】
また、分析部などの構成要素は、1つ又は複数の電子回路で構成されてもよい。1つ又は複数の電子回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0218】
1つ又は複数の電子回路には、例えば、半導体装置、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)などが含まれてもよい。IC又はLSIは、1つのチップに集積されてもよく、複数のチップに集積されてもよい。ここでは、IC又はLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又は、ULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるかもしれない。また、LSIの製造後にプログラムされるFPGA(Field Programmable Gate Array)も同じ目的で使うことができる。
【0219】
また、本開示の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路又はコンピュータプログラムで実現されてもよい。あるいは、当該コンピュータプログラムが記憶された光学ディスク、HDD若しくは半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0220】
また、上記の各実施の形態は、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0221】
本開示は、空気中に浮遊するエアロゾルを効率良く浄化することができる浄化方法及び浄化システムなどとして利用でき、例えば、一般家庭、オフィス、介護施設又は病院などの浄化設備などに利用することができる。
【符号の説明】
【0222】
1、2、3、4、5、6 浄化システム
10 光学素子
10a 第1部分
10b 第2部分
11 透光部
12、13 多層膜
12a 第1面
13a 第2面
20、520 光源
22 ミラー
30 集光部
30a、40 集光レンズ
50 受光器
60、560 分析部
90 エアロゾル
91 薬剤
92、112、412 気流
100、500 エアロゾル計測装置
110、410 気流生成装置
120、220 浄化部
121 排出口
221 吸引口
310 浄化装置
430 センサ
490 対象空間
491 机
492a、492b、492c、492d 椅子
493 棚
495a、495b 人物
510 干渉部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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