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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】管理装置、及び蓄電システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/396 20190101AFI20240628BHJP
   G01R 31/74 20200101ALI20240628BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240628BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
G01R31/396
G01R31/74
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021540680
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2020028182
(87)【国際公開番号】W WO2021033480
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2019152148
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】板倉 佑輔
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/033398(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/043222(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/130258(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0099799(US,A1)
【文献】国際公開第2012/132246(WO,A1)
【文献】特開2010-008067(JP,A)
【文献】特開2010-181262(JP,A)
【文献】特開2011-018482(JP,A)
【文献】特開2001-006750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
G01R 31/74
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルを並列接続したセルブロックを複数、直列接続した蓄電モジュールを管理する管理装置であって、
直列接続された複数のセルブロックの各電圧を検出する電圧検出部と、
前記複数のセルブロックの各電圧の一定時間ごとの変化値を算出し、算出した電圧変化値の絶対値を前記セルブロックごとに積算し、前記セルブロックごとの電圧変化の積算値をもとに、電気的に離脱している離脱セルを含むセルブロックの有無を判定する制御部と、を備えることを特徴とする管理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数のセルブロックの積算値のうち、最小値との差が閾値以上の積算値を有するセルブロックを、前記離脱セルを含むセルブロックと判定することを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数のセルブロックの積算値のうち、平均値または中央値との差が閾値以上の積算値を有するセルブロックを、前記離脱セルを含むセルブロックと判定することを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項4】
各セルブロックを構成する複数のセルと直列に複数のヒューズがそれぞれ接続されており、
前記ヒューズが溶断すると、当該ヒューズと直列に接続されているセルが前記離脱セルになることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項5】
複数のセルを並列接続したセルブロックを複数、直列接続した蓄電モジュールと、
前記蓄電モジュールを管理する請求項1から4のいずれか1項に記載の管理装置と、
を備えることを特徴とする蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多直多並の蓄電モジュールを管理する管理装置、及び蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池が様々な用途で使用されている。例えば、EV(Electric Vehicle)、HEV (Hybrid Electric Vehicle)、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)、電動バイク、または電動自転車の走行用モータに電力を供給することを目的とする車載用途、ピークシフト、バックアップを目的とした蓄電用途、系統の周波数安定化を目的としたFR(Frequency Regulation)用途等に使用されている。これらの用途に使用される蓄電モジュールとして、複数のセルを並列に接続したセルブロックを、複数直列に接続した多並多直の蓄電モジュールが普及している。
【0003】
多並多直の蓄電モジュールにおいては、セルブロックを構成する1つのセルに接続されたヒューズが切れた場合でも、ヒューズ切れを直ぐに検出することが難しい。ヒューズが切れたセルと並列接続されている他のセルの容量により、セルブロックの電圧が直ぐに急低下することはない。
【0004】
多並多直の蓄電モジュールにおいてヒューズ切れを検出する方法として、以下の方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。放電電流の積算量に対する各セルブロックの電圧変化率を求め、判定対象セルブロックの電圧変化率とその他のセルブロック群の電圧変化率との差を求める。前回走行終了時の値よりその差が大きくなっている場合に、ヒューズ切れが発生したと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-166388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の方法では、有意な電圧変化率を求めるために、ある程度の放電電流の積算が必要となる。十分な放電がなされていない状態ではヒューズ切れの判定精度が低下する。誤判定を防止するために、十分な放電がされるまでヒューズ切れの判定を実施しない設定にした場合、放電深度が浅い放電が繰り返されると、ヒューズ切れの判定ができない状態が続くことになる。
【0007】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、ヒューズ切れ等によるセルブロックからのセルの離脱を早期に検出する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の管理装置は、複数のセルを並列接続したセルブロックを複数、直列接続した蓄電モジュールを管理する管理装置であって、直列接続された複数のセルブロックの各電圧を検出する電圧検出部と、前記複数のセルブロックの各電圧の一定時間ごとの変化値を算出し、算出した電圧変化値の絶対値を前記セルブロックごとに積算し、前記セルブロックごとの電圧変化の積算値をもとに、電気的に離脱している離脱セルを含むセルブロックの有無を判定する制御部と、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ヒューズ切れ等によるセルブロックからのセルの離脱を早期に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る蓄電システムを説明するための図である。
図2】実施の形態に係る離脱セルを含むセルブロックの有無を判定する処理の一例を示すフローチャートである。
図3】セルブロックの電圧推移の一例を示す図である。
図4図3のセルブロックの電圧推移の、3700秒-4500秒区間を拡大した図である。
図5】セルブロックの電圧変化の積算値の推移の一例を示す図である。
図6】セルブロックの各積算値と、最小積算値との差分の推移の一例を示す図である。
図7】第1セルブロックの電圧と、n個のセルブロックの平均電圧の推移の一例を示す図である。
図8図7の第1セルブロックの電圧と、n個のセルブロックの平均電圧の推移の、1700秒-2000秒区間を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、実施の形態に係る蓄電システム1を説明するための図である。蓄電システム1は蓄電モジュール20及び管理部10を備える。蓄電モジュール20は負荷2に接続される。例えば車載用途の場合、負荷2は走行用モータである。その場合、蓄電モジュール20と負荷2の間にインバータ(不図示)が接続される。力行時、蓄電モジュール20から放電される直流電力がインバータにより交流電力に変換されて走行用モータに供給される。回生時、走行用モータにより発電された交流電力がインバータにより直流電力に変換されて蓄電モジュール20に充電される。なお外部充電器からプラグインにより充電可能な構成であってもよい。
【0013】
また据置型のピークカット/バックアップ用途の蓄電モジュール20の場合、負荷2は商用電力系統および交流負荷である。この場合、蓄電モジュール20と負荷2の間にパワーコンディショナが接続される。蓄電モジュール20の充電時、商用電力系統から供給される交流電力がパワーコンディショナにより直流電力に変換されて蓄電モジュール20に充電される。蓄電モジュール20の放電時、蓄電モジュール20から放電される直流電力がパワーコンディショナにより交流電力に変換されて交流負荷に供給される。
【0014】
蓄電モジュール20は、m(mは2以上の整数)個のセルE11-1m、E21-2m、・・・、En1-nmを並列接続したセルブロックB1、B2、・・・、Bnをn(nは2以上の整数)個、直列接続して形成される。
【0015】
セルE11-1m、E21-2m、・・・、En1-nmは、リチウムイオン電池セル、ニッケル水素電池セル、鉛電池セル、電気二重層キャパシタセル、リチウムイオンキャパシタセル等である。以下、本実施の形態では、円筒型のリチウムイオン電池(公称電圧:3.6-3.7V)を20-50個を並列接続して1つのセルブロックを構成する例を想定する。
【0016】
各セルブロックB1、B2、・・・、Bnの高圧側ノードと、各セルブロックB1、B2、・・・、Bnに含まれるセルE11-1m、E21-2m、・・・、En1-nmの正極端子との間にそれぞれ直列にヒューズF11-1m、F21-2m、・・・、Fn1-nmが接続される。なお、各セルブロックB1、B2、・・・、Bnの低圧側ノードと、各セルブロックB1、B2、・・・、Bnに含まれるセルE11-1m、E21-2m、・・・、En1-nmの負極端子との間にそれぞれ直列にヒューズF11-1m、F21-2m、・・・、Fn1-nmが接続されてもよい。
【0017】
直列接続されたn個のセルブロックB1-Bnと直列にシャント抵抗Rsが接続される。シャント抵抗Rsは電流検出素子として機能する。なおシャント抵抗Rsの代わりにホール素子を用いてもよい。
【0018】
管理部10は、電圧検出部11、電流検出部12及び制御部13を備える。直列接続されたn個のセルブロックB1-Bnの各ノードと、電圧検出部11との間は複数の電圧線で接続される。電圧検出部11は、隣接する2本の電圧線間の電圧をそれぞれ検出することにより、n個のセルブロックB1-Bnの各電圧を検出する。電圧検出部11は、検出した各セルブロックB1-Bnの電圧を制御部13に送信する。
【0019】
電圧検出部11は制御部13に対して高圧であるため、電圧検出部11と制御部13間は絶縁された状態で、通信線で接続される。電圧検出部11は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)または汎用のアナログフロントエンドICで構成することができる。電圧検出部11はマルチプレクサ及びA/D変換器を含む。マルチプレクサは、隣接する2本の電圧線間の電圧を上から順番にA/D変換器に出力する。A/D変換器は、マルチプレクサから入力されるアナログ電圧をデジタル値に変換する。
【0020】
電流検出部12は差動アンプ及びA/D変換器を含む。差動アンプはシャント抵抗Rsの両端電圧を増幅してA/D変換器に出力する。A/D変換器は、差動アンプから入力される電圧をデジタル値に変換して制御部13に出力する。制御部13は当該デジタル値をもとにn個のセルブロックB1-Bnに流れる電流を推定する。
【0021】
なお制御部13内にA/D変換器が搭載されており、制御部13にアナログ入力ポートが設置されている場合、電流検出部12はアナログ電圧を制御部13に出力し、制御部13内のA/D変換器でデジタル値に変換してもよい。
【0022】
制御部13は、電圧検出部11及び電流検出部12により検出されたn個のセルブロックB1-Bnの電圧及び電流をもとにn個のセルブロックB1-Bnの状態を管理する。制御部13はマイクロコンピュータ及び不揮発メモリ(例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ)により構成することができる。
【0023】
制御部13はセルブロックB1-Bnの状態管理の1つとして、セルブロックを構成する複数のセルから電気的に離脱しているセル(以下、離脱セルという)を含むセルブロックの有無を判定する。離脱セルは典型的には、セルに直列に接続されているヒューズが、過電流等により溶断することによって発生する。また、スポット溶接の剥がれ等により、特定のセルの配線が断線したことによっても発生する。離脱セルが発生したセルブロックは、他の正常なセルブロックと比較して容量が低下する。
【0024】
制御部13は、n個のセルブロックB1-Bnの各電圧の一定時間ごとの変化値を算出し、算出した電圧変化値の絶対値をセルブロックB1-Bnごとに積算し、セルブロックB1-Bnごとの電圧変化の積算値をもとに、離脱セルを含むセルブロックの有無を判定する。以下、具体的に説明する。
【0025】
図2は、実施の形態に係る離脱セルを含むセルブロックの有無を判定する処理の一例を示すフローチャートである。本処理例では、6個のセルブロックB1-B6が直列接続されている蓄電モジュール20を例に説明する。
【0026】
電圧検出部11は、直列接続された6個のセルブロックB1-B6の各電圧V1-V6を検出して制御部13に送信する(S10)。制御部13は、各セルブロックB1-B6の電圧V1-V6の前回の検出値からの変化値ΔV1-ΔV6をそれぞれ検出する(S11)。
【0027】
図3は、セルブロックB1-B6の電圧推移の一例を示す図である。図4は、図3のセルブロックB1-B6の電圧推移の、3700秒-4500秒区間を拡大した図である。セルブロックB1-B6の電圧が上昇している期間は蓄電モジュール20が充電されている期間であり、セルブロックB1-B6の電圧が低下している期間は蓄電モジュール20から放電されている期間である。
【0028】
図3及び図4では、第1セルブロックB1で離脱セルが発生し、第2セルブロックB2-第6セルブロックB6で離脱セルが発生していない例を示している。離脱セルを含む第1セルブロックB1では、セルの並列数が減少し、最大容量が小さくなる。それに伴い、離脱セルを含む第1セルブロックB1では、離脱セルを含まない第2セルブロックB2-第6セルブロックB6と比較して、残容量が変化したときの電圧変動が大きくなる。
【0029】
図2に戻る。制御部13は、各セルブロックB1-B6の電圧変化値ΔV1-ΔV6の絶対値の積算値S1-S6をそれぞれ算出する(S12)。制御部13は、各セルブロックB1-B6の電圧変化の積算値S1-S6の内、最小値を特定する(S13)。本フローチャートに示す例では、最小積算値が、第6セルブロックB6の積算値S6であるとする。制御部13は、各セルブロックB1-B6の積算値S1-S6と、最小積算値S6との差分ΔS1-ΔS6をそれぞれ算出する(S14)。なお、第6セルブロックB6の積算値S6と、最小積算値S6との差分ΔS6の算出は省略してもよい。
【0030】
図5は、セルブロックB1-B6の電圧変化の積算値S1-S6の推移の一例を示す図である。蓄電モジュール20の累積充放電期間が増加するにしたがって、離脱セルを含む第1セルブロックB1の電圧変化の積算値S1は、離脱セルを含まない他の第2セルブロックB2-第6セルブロックB6の電圧変化の積算値S2-S6に対して、上方に徐々に乖離していく。
【0031】
図6は、セルブロックB1-B6の各積算値S1-S6と、最小積算値S6との差分ΔS1-ΔS6の推移の一例を示す図である。蓄電モジュール20の累積充放電期間が増加するにしたがって、離脱セルを含む第1セルブロックB1の積算値S1と最小積算値S6との差分ΔS1は、他の第2セルブロックB2-第6セルブロックB6の積算値S2-S6と最小積算値S6との差分ΔS2-ΔS6に対して、上方に徐々に乖離していく。
【0032】
図2に戻る。制御部13は、各セルブロックB1-B6の積算値S1-S6の最小積算値S6との差分ΔSi(i=1から直列数)と、判定閾値をそれぞれ比較する(S15)。判定閾値は、離脱セルを含むセルブロックであるか否かを判定するための閾値である。判定閾値の適切値は、セルの仕様、セルの並列数、セルブロックの直列数、使用条件に依存する。設計者は、これらのパラメータをもとに実験やシミュレーションに基づき、使用する判定閾値を導出する。
【0033】
制御部13は、最小積算値S6との差分ΔSiが判定閾値以上のセルブロック(S15のY)を、離脱セルを含むセルブロックと判定する(S16)。制御部13は、最小積算値S6との差分ΔSiが判定閾値未満のセルブロック(S15のN)を、離脱セルを含まないセルブロックと判定する(S16をスキップ)。
【0034】
制御部13は、セルブロックB1-B6の積算値S1-S6のリセット条件を満足したか否か判定する(S17)。リセット条件を満足している場合(S17のY)、制御部13はセルブロックB1-B6の積算値S1-S6をリセットする(S18)。リセット条件を満足していない場合(S17のN)、ステップS18をスキップする。
【0035】
リセット条件は、時間的な条件であってもよいし、容量的な条件であってもよい。例えば、1日に1回または数日に1回、決められた時刻にセルブロックB1-B6の積算値S1-S6がリセットされる設定を用いてもよい。また例えば、電流検出部12により検出される電流の積算値が、蓄電モジュール20のSOC(State Of Charge)使用範囲(例えば、20-80%)に対応する容量に到達した時点で、リセットされる設定を用いてもよい。
【0036】
制御部13は、蓄電システム1の運転が終了した場合(S19のY)、離脱セルを含むセルブロックの判定処理を終了する。蓄電システム1の運転が終了しない場合(S19のN)、一定時間Δtが経過すると(S110のY)、ステップS10に遷移し、ステップS10-ステップS18の処理を繰り返す。一定時間Δtは例えば、1分から5分の間に設定される。一定時間Δtが百ミリ秒未満と短いと、複数のセルブロックの各電圧の一定時間Δtごとに算出される変化値の誤差の影響が大きくなる。一定時間Δtが1時間以上と長いと、所定時間当たりの各セルブロックの電圧変化値の積算回数が少なくなることにより、セルの離脱を検出するのに必要な各セルブロックの電圧変化の積算値を得るのに必要な時間が長くなる。そのため、一定時間Δtは、数百ミリ秒から1時間未満の間に設定することが好ましい。
【0037】
以上説明したように本実施の形態によれば、ヒューズ切れ等によるセルブロックからのセルの離脱を早期に検出することができる。即ち、セルブロックごとに一定時間ごとの電圧変化値を積算することによって、離脱セルを含むセルブロックの電圧と、離脱セルを含まないセルブロックの電圧変化のわずかな違いを強調させることができる。制御部13は、1周期前の各セルブロックの電圧値と、各セルブロックの電圧変化の積算値を保持するだけでよく、システムへの負担が軽微で、導入が容易である。
【0038】
上記特許文献1に開示された方法では、充電による電圧変化はヒューズ切れの判定において考慮されていない。そのため、ヒューズが放電終了の直前に溶断した場合には、次の充電を経た次の放電の終了後に検出されることになり、ヒューズ切れの検出が遅れていた。これに対して本実施の形態によれば、一定時間ごとの電圧変化を絶対値で積算するため、充電と放電を区別することなく、早期に離脱セルの発生を検出することができる。
【0039】
上記特許文献1に開示された方法では、走行終了時に判定対象のセルブロックの電圧変化率と、正常なセルブロック群の電圧変化率との差を求める。前回の走行終了時の差と今回の走行終了時の差の変化をもとに、ヒューズ切れを判定する。この方法では、有意な電圧変化率を求めるために、ある程度の放電電流の積算が必要となる。十分な放電がされていない状態ではヒューズ切れの判定精度が低下する。誤判定を防止するために、十分な放電がされるまでヒューズ切れの判定を実施しない設定にした場合、放電深度が浅い放電が繰り返されると、ヒューズ切れの判定ができない状態が続くことになる。
【0040】
これに対して本実施の形態によれば、一定時間ごとに常時、離脱セルを含むセルブロックの判定を実施しているため、離脱セルが発生してから、早期に離脱セルの発生を検出することができる。また、放電深度が浅い放電が繰り返された場合でも、充放電量の積算値が一定値に到達すると、離脱セルの発生を検出することができる。
【0041】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0042】
上記実施の形態では、n個のセルブロックB1-Bnの電圧変化の積算値S1-Snと比較する参照値として、n個の積算値S1-Snの内の最小値を使用する例を説明した。この点、参照値として、n個の積算値S1-Snの平均値または中央値を使用してもよい。n個の積算値S1-Snの平均値または中央値を算出する際、n個の積算値S1-Snから、最大値と最小値をそれぞれ除いてもよい。
【0043】
図7は、第1セルブロックB1の電圧と、n個のセルブロックB1-Bnの平均電圧の推移の一例を示す図である。図8は、図7の第1セルブロックB1の電圧と、n個のセルブロックB1-Bnの平均電圧の推移の、1700秒-2000秒区間を拡大した図である。
【0044】
図7及び図8では、第1セルブロックB1で離脱セルが発生し、他のセルブロックでは離脱セルが発生していない例を示している。正常なセルブロックでは、充放電により残容量が変化しても、n個のセルブロックB1-Bnの平均電圧との電圧差が大きく変化しない。一方、離脱セルを含むセルブロックでは残容量が変化すると当該平均電圧との電圧差が大きく変化する。
【0045】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0046】
[項目1]
複数のセル(E11-1m、E21-2m、・・・、En1-nm)を並列接続したセルブロック(B1、B2、・・・、Bn)を複数、直列接続した蓄電モジュール(20)を管理する管理装置(10)であって、
直列接続された複数のセルブロック(B1、B2、・・・、Bn)の各電圧を検出する電圧検出部(11)と、
前記複数のセルブロック(B1、B2、・・・、Bn)の各電圧の一定時間ごとの変化値を算出し、算出した電圧変化値の絶対値を前記セルブロック(B1、B2、・・・、Bn)ごとに積算し、前記セルブロック(B1、B2、・・・、Bn)ごとの電圧変化の積算値をもとに、電気的に離脱している離脱セルを含むセルブロック(B1)の有無を判定する制御部(13)と、を備えることを特徴とする管理装置(10)。
これによれば、離脱セルを含むセルブロック(B1)を早期に検出することができる。
[項目2]
前記制御部(13)は、前記複数のセルブロック(B1、B2、・・・、Bn)の積算値のうち、最小値との差が閾値以上の積算値を有するセルブロック(B1)を、前記離脱セルを含むセルブロックと判定することを特徴とする項目1に記載の管理装置(10)。
これによれば、離脱セルを含むセルブロックを、セルブロック間の電圧挙動の違いから特定することができる。
[項目3]
前記制御部(13)は、前記複数のセルブロック(B1、B2、・・・、Bn)の積算値のうち、平均値または中央値との差が閾値以上の積算値を有するセルブロック(B1)を、前記離脱セルを含むセルブロックと判定することを特徴とする項目1に記載の管理装置(10)。
これによれば、離脱セルを含むセルブロックを、セルブロック間の電圧挙動の違いから特定することができる。
[項目4]
各セルブロック(B1、B2、・・・、Bn)を構成する複数のセル(E11-1m、E21-2m、・・・、En1-nm)と直列に複数のヒューズ(F11-1m、F21-2m、・・・、Fn1-nm)がそれぞれ接続されており、
前記ヒューズが溶断すると、当該ヒューズと直列に接続されているセルが前記離脱セルになることを特徴とする項目1から3のいずれか1項に記載の管理装置(10)。
これによれば、ヒューズ切れを早期に検出することができる。
[項目5]
複数のセル(E11-1m、E21-2m、・・・、En1-nm)を並列接続したセルブロック(B1、B2、・・・、Bn)を複数、直列接続した蓄電モジュール(20)と、
前記蓄電モジュール(20)を管理する項目1から4のいずれか1項に記載の管理装置(10)と、
を備えることを特徴とする蓄電システム(1)。
これによれば、離脱セルを含むセルブロック(B1)を早期に検出することができる蓄電システム(1)を構築することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 蓄電システム、 2 負荷、 10 管理部、 11 電圧検出部、 12 電流検出部、 13 制御部、 20 蓄電モジュール、 B1-Bn セルブロック、 E11-Enm セル、 F11-Fnm ヒューズ、 Rs シャント抵抗。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8