(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】対話装置および対話方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240628BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20240628BHJP
【FI】
G06T7/00 660A
G06T7/00 P
H04N23/60 500
(21)【出願番号】P 2023503370
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2021040000
(87)【国際公開番号】W WO2022185608
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2021033937
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】吉田 隆雅
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 元貴
(72)【発明者】
【氏名】今村 邦博
【審査官】千葉 久博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-113421(JP,A)
【文献】特開2016-34431(JP,A)
【文献】特開2014-174621(JP,A)
【文献】登録実用新案第3229711(JP,U)
【文献】国際公開第2020/075308(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
H04N 23/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像画像中に含まれる顔画像に基づいて所定の対話を行う対話装置であって、
前記対話のための制御を行う制御部を備え、
前記制御部は、
前記撮像画像から対象者の顔画像を特定し、
特定した前記顔画像から前記対象者の顔に対する装着物の有無を検出し、
前記装着物の種類を特定し、
前記装着物の種類と所定の参照情報に基づいて前記対象者の周辺環境を判定し、
前記周辺環境に基づいて前記装着物の離脱または装着を促す情報を出力部に出力させる、
ことを特徴とする対話装置。
【請求項2】
請求項1に記載の対話装置において、
前記参照情報は、前記撮像画像を含み、
前記制御部は、前記撮像画像に含まれる前記対象者以外の他の人の状況を前記周辺環境として判定して、前記装着物の離脱または装着を促す、
ことを特徴とする対話装置。
【請求項3】
請求項2に記載の対話装置において、
前記制御部は、前記他の人の顔の向きに基づいて、前記装着物の離脱または装着を促す、
ことを特徴とする対話装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の対話装置において、
前記参照情報は、前記対象者の周囲の音声を含み、
前記制御部は、前記音声から前記対象者以外の人の状況を前記周辺環境として判定して、前記装着物の離脱または装着を促す、
ことを特徴とする対話装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の対話装置において、
前記制御部は、前記参照情報に基づいて、前記対象者の周囲にいる他の人の密度合を判定して、前記装着物の離脱または装着を促す、
ことを特徴とする対話装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の対話装置において、
前記装着物は、マスクである、
ことを特徴とする対話装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載の対話装置において、
前記装着物は、サングラスであり、
前記参照情報は、現在時刻を含み、
前記制御部は、前記現在時刻に基づき、前記対象者の顔に日光が射し込み得る状況にあるか否かを前記周辺環境として判定して、前記サングラスの離脱または装着を促す、
ことを特徴とする対話装置。
【請求項8】
撮像画像中に含まれる顔画像に基づいて所定の対話を自動で行う対話方法であって、
前記撮像画像から対象者の顔画像を特定し、
特定した前記顔画像から前記対象者の顔に対する装着物の有無を検出し、
前記装着物の種類を特定し、
前記装着物の種類と所定の参照情報に基づいて前記対象者の周辺環境を判定し、
前記周辺環境に基づいて前記装着物の離脱または装着を促す情報を出力する、
ことを特徴とする対話方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像画像中に含まれる顔画像に基づいて所定の対話を行う対話装置および対話方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像画像中に含まれる顔画像に基づいて所定の対話を行う対話装置が、店舗等に配備された受付ロボットや車両等に搭載されつつある。たとえば、以下の特許文献1には、車両において、運転者と対話を行う構成が記載されている。
【0003】
この構成では、運転席に着座した人の容姿が、3Dカメラによって取得されて、個人認証装置に出力される。個人認証装置は、3Dカメラの撮像画像から顔画像を抽出し、抽出した顔画像と、予め登録されている登録顔画像とを照合する。抽出した顔画像と登録顔画像との照合レベルが所定値以上である場合、個人認証装置は、当該人が運転者本人であると判断し、セキュリティを解除する。
【0004】
他方、照合レベルが所定値未満である場合、個人認証装置は、抽出した顔画像において特徴量の類似度が極端に低い部分(特定部分)を抽出し、この特定部分に関する対話を行う。たとえば、特定部分が口元である場合、マスクの着用を示唆する音声が出力される。この音声に対する当該人の応答が肯定的である場合(マスクの着用を示唆する場合)、個人認証装置は、特定部分の照合結果は正しいと判定し、顔画像以外の認証手段(たとえば声紋照合)によって、本人認証を行う。この認証が適正である場合、個人認証装置は、当該人が運転者本人であると判断し、セキュリティを解除する処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の構成では、対象者がマスクやサングラス等の装着物を装着している場合、判定対象の顔画像から特定部分(類似度が極端に低い部分)が抽出され、さらに、この特定部分に関する対話が行われた後、他の認証手段による認証へと移行する処理が行われる。このため、本人認証のために、多くの処理が必要となり、また、特定部分ごとに種々の対話内容を予め保持しておく必要もある。対象者が装着物を装着しているような場合においても、なるべく撮像画像を用いながら、簡易に、本人認証が行われることが好ましい。
【0007】
その一方で、対象者の周りの状況によっては、対象者に装着物の離脱を促すことが適正でない場合も想定され得る。たとえば、対象者の周囲に他の人が接近して存在するような場合、装着物であるマスクの離脱を促すことは適正とは言い難い。また、運転者である対象者の顔に日光が射すような場合は、装着物であるサングラスの離脱を促すことは適正とは言い難い。
【0008】
また、本人認証以外の場面では、逆に、対象者に所定の装着物の装着を促すことが適正である場合も想定され得る。たとえば、車内や建物内等の密閉空間において、対象者の周囲に他の人が接近して存在する場合、対象者にマスクの装着を促すことが適正であると言える。
【0009】
かかる課題に鑑み、本発明は、撮像画像を用いながら、より適正に、対象者に装着物の離脱または装着を誘導することが可能な対話装置および対話方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、撮像画像中に含まれる顔画像に基づいて所定の対話を行う対話装置に関する。この態様に係る対話装置は、前記対話のための制御を行う制御部を備える。前記制御部は、前記撮像画像から対象者の顔画像を特定し、特定した前記顔画像から前記対象者の顔に対する装着物の有無を検出し、前記装着物の種類を特定し、前記装着物の種類と所定の参照情報に基づいて前記対象者の周辺環境を判定し、前記周辺環境に基づいて前記装着物の離脱または装着を促す情報を出力部に出力させる。
【0011】
本態様に係る対話装置によれば、対象者の顔画像における装着物の有無が検出されると、対象者の周辺環境の判定結果に基づいて、当該装着物の離脱または装着が対象者に誘導される。よって、撮像画像を用いながら、より適正に、対象者に装着物の離脱または装着を誘導することができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、撮像画像中に含まれる顔画像に基づいて所定の対話を自動で行う対話方法に関する。この態様に係る対話方法は、前記撮像画像から対象者の顔画像を特定し、特定した前記顔画像から前記対象者の顔に対する装着物の有無を検出し、前記装着物の種類を特定し、前記装着物の種類と所定の参照情報に基づいて前記対象者の周辺環境を判定し、前記周辺環境に基づいて前記装着物の離脱または装着を促す情報を出力する。
【0013】
本態様に係る対話装置によれば、上記第1の態様と同様、対象者の顔画像における装着物の有無が検出されると、対象者の周辺環境の判定結果に基づいて、当該装着物の離脱または装着が対象者に誘導される。よって、撮像画像を用いながら、より適正に、対象者に装着物の離脱または装着を誘導することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のとおり、本発明によれば、撮像画像を用いながら、より適正に、対象者に装着物の離脱または装着を誘導することが可能な対話装置および対話方法を提供できる。
【0015】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(a)は、実施形態1に係る対話装置の使用環境を模式的に示す図である。
図1(b)は、実施形態1に係る、撮像画像の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る対話装置の回路部の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る、制御部により行われる本人認証処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図4(a)および
図4(b)は、それぞれ、実施形態1に係る、離脱条件の判定処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る、撮像画像に含まれる対象顔画像を顔認識エンジンにより抽出した例を示す図である。
【
図6】
図6(a)は、実施形態1に係る、装着物認識エンジンによる検知結果として、マスクが装着されていた場合の検知結果の例を示す図である。
図6(b)および
図6(c)は、それぞれ、実施形態1に係る、眼鏡とサングラスが装着されていた場合の検知結果の例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る、周辺環境の領域取得の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態1に係る、他の人の抽出例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態2に係る対話装置の使用環境を模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態2に係る、制御部により行われる装着誘導処理を示すフローチャートである。
【
図11】
図11(a)および
図11(b)は、それぞれ、実施形態2に係る、装着条件の判定処理を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、実施形態2に係る、制御部により行われる表情判定処理を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、実施形態3に係る対話装置の構成を示すブロック図である。
【
図14】
図14は、実施形態3に係る、制御部により行われる年齢確認処理を示すフローチャートである。
【
図15】
図15(a)および
図15(b)は、それぞれ、実施形態3に係る、離脱条件の判定処理を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、実施形態3に係る、密度合の検出例を示す図である。
【
図17】
図17(a)および
図17(b)は、それぞれ、実施形態3の変更例に係る、装着条件の判定処理を示すフローチャートである。
【0017】
ただし、図面はもっぱら説明のためのものであって、この発明の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
以下の実施形態には、撮像画像中に含まれる顔画像に基づいて所定の対話を行う対話装置および対話方法の一例が示される。対話装置および対話方法は、対話を通じて所定の処理を行う。ここで、所定の処理は、顔画像に基づく本人認証の他、対象者の表情判定に基づく制御処理や、対象者の年齢判定に基づく所定品目(たとえば、酒類、タバコ等)の購買許可等、顔画像に基づく種々の処理を含み得る。また、対話装置および対話方法は、車両や年齢確認システム、受付ロボット、キャッシュディスペンサ等の種々の装置に適用され得る。
【0020】
以下には、これらの実施形態のうち一例が示される。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら制限されるものではない。
【0021】
<実施形態1>
実施形態1では、対話装置がキャッシュディスペンサに搭載される場合の構成が示される。
【0022】
図1(a)は、対話装置100の使用環境を模式的に示す図である。
【0023】
図1(a)には、キャッシュディスペンサ10と操作者の利用環境を想定した図が示されており、
図1(b)には、キャッシュディスペンサ10に搭載されたカメラ21からの撮像画像P10の例が示されている。
【0024】
実施形態1では、周辺環境を判定するための参照情報として、カメラ21からの撮像画像、マイク22からの音声情報が用いられる。但し、参照情報は、これらに限られるものではなく、これらのいずれかが省略されてもよく、あるいは、他の情報がさらに追加されてもよい。
【0025】
対話装置100は、たとえば、キャッシュディスペンサ10の内部に収納および設置される。このほか、キャッシュディスペンサ10には、所定の音声を出力するためのスピーカ23、情報を表示するためのディスプレイ24および情報を入力するためのタッチパネル25が設置される。ディスプレイ24およびタッチパネル25は、重ねて配置されて、操作表示部を構成する。
【0026】
図2は、対話装置100の回路部の構成を示すブロック図である。
【0027】
対話装置100は、回路部の構成として、制御部101と、記憶部102と、インタフェース103と、通信部104とを備える。
【0028】
制御部101は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理回路を備え、記憶部102に記憶されているプログラムに従って各部を制御する。制御部101は、FPGA(Field Programmable Gate Array)を含んでもよい。制御部101は、記憶部102に記憶されている顔認識エンジン102aにより、カメラ21からの撮像画像中の顔画像を抽出する。また、制御部101は、抽出した顔画像にマスクやサングラス等の装着物が含まれているか否かを、記憶部102に記憶されている装着物認識エンジン102bにより判定する。顔画像に装着物が含まれている場合、制御部101は、さらに、その装着物の種類(マスク、サングラス等)を、装着物認識エンジン102bにより特定する。
【0029】
さらに、制御部101は、時計回路101aを備える、制御部101は、当該時計回路101aによって、随時、現在時刻を取得する。
【0030】
記憶部102は、ROM(Read only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶媒体を備え、制御部101が実行するプログラムを記憶する。上記のように、記憶部102は、顔認識エンジン102aおよび装着物認識エンジン102bを記憶する。また、記憶部102は、顔画像から表情判定を行うアルゴリズムを記憶する。さらに、記憶部102は、後述の本人認証に用いる顔画像や声紋情報、パスワード等を利用者のカードの識別情報に対応付けて記憶する。この他、記憶部102は、制御部101が上記プログラムを実行する際のワーク領域として用いられる。
【0031】
インタフェース103は、上述のカメラ21、マイク22およびスピーカ23と制御部101とを接続する。この他、インタフェース103は、ディスプレイ24およびタッチパネル25を、制御部101に接続する。通信部104は、制御部101からの制御のもと、キャッシュディスペンサ側の制御部と通信を行う。制御部101は、通信部104を介してキャッシュディスペンサ側の通信部から受信する指令に応じて、操作者の本人認証等の種々の制御処理を行う。
【0032】
<本人認証処理>
図3は、制御部101により行われる本人認証処理を示すフローチャートである。
【0033】
図3の処理は、たとえば、本人認証の指令(操作者から受け付けたカードの識別情報を含む)を、制御部101が、キャッシュディスペンサ側の制御部から受信したことに応じて開始される。
【0034】
制御部101は、カメラ21から撮像画像を取得し(S101)、さらに、撮像画像に含まれる顔画像を顔認識エンジン102aにより抽出する(S102)。次に、制御部101は、抽出した顔画像のうち、キャッシュディスペンサの前に立っている認証対象者の顔画像(以下、「対象顔画像」という)を特定する(S103)。ここでは、ステップS102で抽出された顔画像のうち、カメラ21の正面方向にあり、且つ、最も大きな顔画像が、対象顔画像として特定される。
図5は、撮像画像P10に含まれる対象顔画像P11を顔認識エンジン102aにより抽出した例を示している。そして、制御部101は、対象顔画像に装着物が含まれるか否かを、装着物認識エンジン102bにより判定する(S104)。ここでは、認識対象の装着物として、マスクやサングラス、眼鏡等が含まれる。
【0035】
図6(a)は、装着物認識エンジン102bによる検知結果として、マスクP12aが装着されていた場合の検知結果の例を示している。また、
図6(b)、(c)は、それぞれ、眼鏡P12bとサングラスP12cが装着されていた場合の検知結果の例を示している。
【0036】
対象顔画像に装着物が含まれない場合(S105:NO)、制御部101は、対象顔画像と、記憶部102に予め登録されている操作者の登録顔画像とを照合し、両者の整合率が所定の閾値(たとえば70%)を超えるか否かを判定する(S110)。このとき、記憶部102に登録顔画像が複数記憶されている場合、制御部101は、各登録顔画像と対象顔画像との整合率をそれぞれ求め、このうち最も高い整合率が閾値を超えるか否かを判定する(S110)。
【0037】
なお、登録顔画像が、たとえば眼鏡等の所定の装着物を装着した状態の顔画像である場合、記憶部102には、予め、登録顔画像に紐づけて、当該登録顔画像に含まれる装着物の種類が記憶される。ステップS104で判定された装着物が登録顔画像に紐づけられている装着物のみである場合、ステップS105の判定はNOとされる。
【0038】
上述の整合率が閾値を超える場合(S110:YES)、制御部101は、操作者は本人であるとして、本人認証が適正に行われたことを示す通知をキャッシュディスペンサ側の制御部に送信する(S111)。これにより、キャッシュディスペンサ側の制御部は、操作に応じた取引を実行する。
【0039】
他方、上述の整合率が閾値を超えない場合(S110:NO)、制御部101は、顔画像に基づく本人認証に失敗したとして、声紋やパスワード等、他の手法による本人認証処理を実行する(S112)。この認証処理により本人認証に成功すると、制御部101は、ステップS111と同様、本人認証が適正に行われたことを示す通知をキャッシュディスペンサ側の制御部に送信する。他方、この認証処理によっても本人認証を適正に行えなかった場合、制御部101は、本人認証が不適正であったことを示す通知を、キャッシュディスペンサ側の制御部に送信する。これにより、キャッシュディスペンサ側の制御部は、所定の報知を行って、当該取引を中止する。
【0040】
ステップS105において、対象顔画像に装着物が含まれていると判定した場合(S105:YES)、制御部101は、参照情報から対象者の周辺環境を判定する(S106)。
【0041】
具体的には、制御部101は、参照情報として、カメラ21からの撮像画像とマイク22からの音声を用いて、操作者以外の他の人が周囲に居るか否かを判定する。たとえば、制御部101は、撮像画像から対象者以外の顔を抽出した場合、対象者以外の他の人が周囲に居ると判定する。
【0042】
図7は、周辺環境の領域取得の例を示し、
図8は、他の人の抽出例を示している。
図7に示すように、制御部101は、撮像画像P10から対象者の顔の範囲を含むマスク領域M10を除いた領域を、周辺環境の取得領域に設定する。そして、
図8に示すように、制御部101は、周辺環境の取得領域に存在する他の人P13の顔を、顔認識エンジン102aを用いて特定する。
【0043】
また、制御部101は、撮像画像から対象者以外の顔を抽出しなかった場合においても、マイク22からの音声により、周囲のざわつき等を検出した場合、対象者以外の他の人が周囲に居ると判定する。
【0044】
また、制御部101は、参照情報として、時計回路101aからの現在時刻を用いて、当該現在時刻が、操作者の顔に日光が射し込む時間帯に含まれるか否かを判定する。
【0045】
こうして、周辺環境を判定した後、制御部101は、この周辺環境が、装着物の離脱条件を充足するか否かを判定する(S107)。
【0046】
図4(a)、(b)は、離脱条件の判定処理を示すフローチャートである。
【0047】
本実施形態では、離脱条件が、マスクとサングラスに対してのみ設定されている。マスクおよびサングラス以外の装着物については、制御部101において、一律、離脱条件を充足すると判定される。また、上記のように、登録顔画像に装着物が含まれている場合、登録顔画像に紐づけられている装着物は、離脱条件の判定対象外とされる。
【0048】
図4(a)を参照して、判定対象の装着物がマスクである場合、制御部101は、ステップS104における周辺環境の判定結果が、他の人が周囲にいることを含むか否かを判定する(S201)。周囲に他の人がいる場合(S201:YES)、制御部101は、離脱条件が充足されないと判定する(S202)。他方、周囲に他の人がいない場合(S201:NO)、制御部101は、離脱条件が充足されると判定する(S203)。
【0049】
図4(b)を参照して、判定対象の装着物がサングラスである場合、制御部101は、ステップS104における周辺環境の判定結果が、操作者の顔に日光が射し込む時間帯に現在時刻が含まれるとの判定結果を含むか否かを判定する(S211:YES)。現在時刻が当該時間帯に含まれる場合、制御部101は、離脱条件が充足されないと判定する(S212)。他方、現在時刻が当該時間帯に含まれない場合(S211:NO)、制御部101は、離脱条件が充足されると判定する(S213)。
【0050】
なお、離脱条件の判定ステップは、
図4(a)、(b)に示されたステップに限られるものではない。たとえば、装着物がサングラスの場合、季節や年月日に応じて、現在時刻と比較される時間帯が変更されてもよく、さらに、キャッシュディスペンサ10の向きが操作者の顔に日光の射し込む方位の範囲に含まれるか否かがさらに判定されてもよい。この場合、制御部101は、管理者により予め設定されたキャッシュディスペンサ10の方位に基づいて、この判定を行えばよい。制御部101は、現在時刻が時間帯に含まれても、キャッシュディスペンサ10の向きが操作者の顔に日光の射し込む方位の範囲に含まれなければ、離脱条件が充足すると判定し得る。
【0051】
また、マスクおよびサングラス以外の所定の装着物が、所定の周辺環境との関係から、離脱の制限を行うことが好ましい場合、当該装着物についても、当該周辺環境の状況に基づく離脱条件が設定されてもよい。
【0052】
図3に戻り、判定対象の全ての装着物について離脱条件が充足されると(S107:YES)、制御部101は、当該装着物の離脱を誘導するための離脱誘導情報を出力させる。
【0053】
ここで、離脱誘導情報は、
図2のスピーカ23から音声として出力される。たとえば、離脱対象の装着物がマスクおよびサングラスである場合、制御部101は、スピーカ23に、「本人認証のため、マスクとサングラスを外してください」との音声を出力させる。離脱誘導情報は、ディスプレイ24にメッセージとして表示されてもよい。この場合、たとえば、チャイム音とともに、ディスプレイ24にメッセージが表示される。あるいは、ディスプレイ24がフラッシュ制御されてもよい。スピーカ23とディスプレイ24の両方から、メッセージが出力されてもよい。
【0054】
離脱誘導情報の出力を行った後、制御部101は、対象者が装着物を離脱するための所定時間が経過するのを待つ(S109)。所定時間が経過すると(S109:YES)、制御部101は、処理をステップS101に戻して、上記と同様の処理を実行する。離脱誘導情報の出力に応じて、対象者が指定の装着物を離脱した場合、再度行われるステップS105の判定がNOとなる。これにより、上記と同様、ステップS110以降の処理が実行される。
【0055】
他方、ステップS107の判定がNOの場合、すなわち、何れかの装着物について離脱条件が充足されない場合、制御部101は、対象顔画像に基づく本人認証は不可能であるとして、声紋情報やパスワード等の他の認証手段による認証処理を実行する(S112)。以上の処理により、対象顔画像またはその他の認証手段による認証処理が完了すると、制御部101は、
図3の処理を終了する。
【0056】
<実施形態1の効果>
図3に示したように、対象者の顔画像における装着物の有無が検出されると(S105)、対象者の周辺環境の判定結果に基づいて(S106)、当該装着物の離脱が誘導される(S108)。よって、撮像画像を用いながら、より適正に装着物の離脱を誘導することができる。
【0057】
上記のように、参照情報は、撮像画像を含み(S106)、制御部101は、
図4(a)の処理において、撮像画像に含まれる対象者以外の他の人の状況を周辺環境として判定して(S201)、装着物(マスク)の離脱を促す。これにより、マスク非装着による罹患の可能性を抑制しつつ、マスクの離脱を適正に誘導することができる。
【0058】
上記のように、参照情報は、対象者の周囲の音声を含み(S106)、制御部101は、
図4(a)の処理において、音声から対象者以外の人の状況を周辺環境として判定して、装着物(マスク)の離脱を促す。これにより、撮像画像では検出できない周辺環境(他の人の有無)を音声により検出できる。よって、周辺環境に基づく装着物(マスク)の離脱を、より適正に誘導することができる。
【0059】
図4(a)に示したように、離脱誘導の対象とされる装着物は、マスクを含む。これにより、他の人の有無に応じて、マスクの離脱を誘導できる。よって、マスク非装着による罹患の可能性を抑制しつつ、本人認証の処理を適正に行うことができる。
【0060】
着脱誘導の対象とされる装着物は、サングラスを含んでいる。また、参照情報は、現在時刻を含み(S106)、制御部101は、
図4(b)の処理において、現在時刻に基づき、操作者の顔に日光が射し込み得る状況にあるか否かを周辺環境として判定して、サングラスの離脱を促す。これにより、眩しさ低減による快適性に配慮しつつ、サングラスの離脱を適正に誘導することができる。
【0061】
<実施形態2>
実施形態2では、対話装置が車両に搭載される場合の構成が示される。対話装置100の構成は、上記実施形態1で示した
図2の構成と同様である。実施形態2では、通信部104を介して、制御部101と車両側の制御部との間で通信が行われる。便宜上、実施形態2では、カメラ21、マイク22、スピーカ23、ディスプレイ24およびタッチパネル25と同様の付番が用いられる。
【0062】
図9は、対話装置100の使用環境を模式的に示す図である。図
9には、乗用車30(車両)の内部から走行方向前方を見たときの図が示されている。
【0063】
実施形態2では、周囲環境を判定するための参照情報として、カメラ21からの撮像画像、マイク22からの音声情報、および時計回路101aからの現在時刻が用いられる。但し、参照情報は、これに限られるものではなく、これらの何れかが省略されてもよく、あるいは、他の情報がさらに追加されてもよい。
【0064】
図9に示すように、乗用車30は、ハンドル31、ウインドシールド32、ダッシュボード33、操作表示部34、空調の吹き出し口35およびバックミラー36を備える。操作表示部34は、カーナビゲーションシステムのユーザインタフェースである。操作表示部34は、ディスプレイ24およびタッチパネル25から構成される。バックミラー36の上部に、カメラ21とマイク22が設置される。カメラ21は、運転席および他の全ての乗車席を含み得るアングルを有する。また、マイク22は、車内の音声を収音して取得する。
【0065】
<本人認証処理>
本人認証処理は、
図3と同様の処理により行われる。本人認証処理は、たとえば、車両のイグニッションスイッチがオン操作されたこと、あるいは、車両に配置された本人認証用のボタンが操作されたことを示す通知を、制御部101が、車両側の制御部から受信したことに応じて開始される。これらの操作に応じて、カメラ21、マイク22、スピーカ23、ディスプレイ24およびタッチパネル25が動作を開始する。
【0066】
この処理において、運転席に着座した対象者がマスクまたはサングラスを装着している場合、離脱条件が充足されていると、これらの装着物を離脱することを促す情報が出力される。他方、離脱条件が充足されていなければ、顔認証以外の他の認証処理が行われる。この場合、マイク22を用いた声紋認証や、操作表示部34を用いたパスワード認証が行われる。
【0067】
離脱条件の判定処理は、
図4(a)、(b)と同様である。
図4(a)では、他の人として、同乗者が居るかいなかが判定され、
図4(b)では、現在時刻が運転者の顔に日光が差し込む時間帯に含まれるか否かが判定される。
【0068】
上記実施形態1と同様、装着物がサングラスの場合、季節や年月日に応じて、現在時刻と比較される時間帯が変更されてもよく、さらに、乗用車30の向きが日光の射し込む方位の範囲に含まれるか否かがさらに判定されてもよい。この場合、制御部101は、GPS(Global Positioning System)等により取得された車の向きを、車両側の制御部から受信すればよい。
【0069】
本人認証の結果は、制御部101から車両側の制御部に送信される。本人認証が成功した場合、車両側の制御部は、セキュリティを解除して、エンジンを起動し、通常の運転動作を実行可能な状態に車両を設定する。他方、本人認証が失敗した場合、車両側の制御部は、セキュリティを維持したまま、警報出力や、予め登録されているメールアドレスへの異常通知の送信等の処理を行う。
【0070】
実施形態2では、本人認証処理の他、運転者に所定の装着物の装着を促すための装着誘導処理と、運転者の表情に基づき所定の制御を行うための表情判定処理が行われる。以下、これらの処理について説明する。
【0071】
<装着誘導処理>
図10は、制御部101により行われる装着誘導処理を示すフローチャートである。
【0072】
図10の処理は、エンジン起動後からエンジン停止までの間の所定のタイミングで実行される。便宜上、
図10のフローチャートにおいて、
図3のフローチャートと同様のステップについては、
図3と同じステップ番号が付されている。
【0073】
制御部101は、ステップS101~ステップS104の処理により、撮像画像から対象顔画像(運転席に着座する運転者の顔画像)を特定し、さらに、対象顔画像が装着物を含むか否かを判定する。そして、制御部101は、対象顔画像が、周辺環境に応じて運転者に装着を促すことが好ましいと想定され得る装着物(以下、「対象装着物」という)を含むか否かを判定する(S121)。ここでは、マスクおよびサングラスが対象装着物に設定されている。但し、対象装着物はこれに限られるものではない。
【0074】
対象顔画像が対象装着物を全て含む場合(S121:YES)、制御部101は、処理を終了する。他方、対象顔画像が対象装着物の何れかを含まない場合(S121:NO)、制御部101は、参照情報から対象者の周辺環境を判定する(S122)。
【0075】
ステップS122における処理は、
図3のステップS106における処理と同様である。すなわち、制御部101は、参照情報として、カメラ21からの撮像画像とマイク22からの音声を用いて、運転席に着座している対象者以外の他の人(同乗者)が車内に居るか否かを判定する。また、制御部101は、参照情報として、時計回路101aからの現在時刻を用いて、当該現在時刻が、運転席に着座する運転者の顔に日光が射し込む時間帯に含まれるか否かを判定する。
【0076】
こうして、周辺環境を判定した後、制御部101は、この周辺環境が、装着物の装着条件を充足するか否かを判定する(S123)。
【0077】
図11(a)、(b)は、装着条件の判定処理を示すフローチャートである。
【0078】
図11(a)を参照して、対象装着物がマスクである場合、制御部101は、ステップS104における周辺環境の判定結果が、同乗者が車内に居ることを含むか否かを判定する(S231)。車内に同乗者がいる場合(S231:YES)、制御部101は、装着条件が充足されると判定する(S232)。他方、車内に同乗者がいない場合(S231:NO)、制御部101は、装着条件が充足されないと判定する(S233)。
【0079】
図11(b)を参照して、対象装着物がサングラスである場合、制御部101は、ステップS104における周辺環境の判定結果が、運転席に着座する運転者の顔に日光が射し込む時間帯に現在時刻が含まれるとの判定結果を含むか否かを判定する(S241:YES)。現在時刻が当該時間帯に含まれる場合、制御部101は、装着条件が充足されると判定する(S242)。他方、現在時刻が当該時間帯に含まれない場合(S241:NO)、制御部101は、装着条件が充足されないと判定する(S243)。
【0080】
なお、
図4(a)、(b)の場合と同様、装着条件の判定ステップは、
図11(a)、(b)に示されたステップに限られるものではない。たとえば、装着物がサングラスの場合、季節や年月日に応じて、現在時刻と比較される時間帯が変更されてもよく、また、車の向きが日光の射し込む方位の範囲に含まれるか否かがさらに判定されてもよい。また、マスクおよびサングラス以外の所定の装着物が、所定の周辺環境との関係から、装着の誘導を行うことが好ましい場合、当該装着物についても、当該周辺環境の状況に基づく装着条件が設定されてもよい。
【0081】
図10に戻り、何れかの対象装着物について装着条件が充足されると(S123:YES)、制御部101は、当該装着物の装着を誘導するための装着誘導情報を出力させる。
【0082】
ここで、装着誘導情報は、
図2のスピーカ23から音声として出力される。たとえば、対象装着物がマスクである場合、制御部101は、スピーカ23に、「マスクの装着をお勧めします」との音声を出力させる。また、対象装着物がサングラスである場合、制御部101は、スピーカ23に、「顔に日が射し込む時間帯のためサングラスの装着をお勧めします」との音声を出力させる。装着誘導情報は、ディスプレイ24にメッセージとして表示されてもよい。この場合、たとえば、チャイム音とともに、ディスプレイ24にメッセージが表示される。スピーカ23とディスプレイ24の両方から、メッセージが出力されてもよい。こうして、装着誘導情報を出力した後、制御部101は、
図10の処理を終了する。
【0083】
<表情判定処理>
図12は、制御部101により行われる表情判定処理を示すフローチャートである。
【0084】
図12の処理は、エンジン起動後からエンジン停止までの間の所定のタイミングで実行される。便宜上、
図12のフローチャートにおいて、
図3のフローチャートと同様のステップについては、
図3と同じステップ番号が付されている。
【0085】
制御部101は、ステップS101~ステップS109の処理により、運転者の顔から装着物を離脱することを誘導する。ここで、ステップS105の判定は、たとえば、マスクやサングラス等、顔の表情の判定に支障がある装着物のみに制限されてもよい。
【0086】
この誘導により、運転者の対象顔画像が装着物を含まなくなると(S105:NO)、制御部101は、表情判定アルゴリズムにより、対象顔画像の表情を判定する(S131)。たとえば、制御部101は、対象顔画像から、快適、眠い、疲れた、熱い、寒い等の表情を判定する。そして、制御部101は、表情の判定結果を、車両側の制御部に送信する(S132)。
【0087】
車両側の制御部は、受信した判定結果に応じた制御を行う。たとえば、判定結果が「眠い」の場合、車両側の制御部は、眠気を抑制するために、空調機の設定温度を所定温度だけ低下させる。また、判定結果が「疲れた」の場合、車両側の制御部は、休憩を促すメッセージをスピーカ23から出力させる。こうして、制御部101は、
図12の処理を終了する。
【0088】
<実施形態2の効果>
実施形態2によれば、実施形態1と同様の効果が奏され得る。
【0089】
加えて、実施形態2では、
図10の処理により、周辺環境に基づいて、装着物(マスク、サングラス)の装着が誘導される。よって、同乗者および運転者の安全性を高めることができる。
【0090】
また、
図12の処理により、周辺環境に基づいて装着物(マスク、サングラス)の離脱を促しながら、表情判定に基づく制御が行われる。これにより、車内を含む周辺環境に配慮しつつ、運転の安全性を高めることができる。
【0091】
なお、
図10の処理は、上記実施形態1においても、本人認証が終了した後の取引処理時に実行されてもよい。
【0092】
<実施形態3>
上記実施形態2では、対話装置100が乗用車30(車両)に搭載された。これに対し、実施形態3では、酒類およびタバコの購買を許可する購買許可システムに対話装置が用いられる。購買許可システムは、店舗の支払いカウンタ等に設置される。
【0093】
図13は、実施形態3に係る対話装置110の構成を示すブロック図である。
【0094】
実施形態3では、周囲環境を判定するための参照情報として、カメラ113の撮像画像、およびマイク114で取得される音声が用いられる。但し、参照情報は、これに限られるものではなく、これらの何れかが省略されてもよく、あるいは、他の情報がさらに追加されてもよい。たとえば、店内を監視するための監視カメラの撮像画像が、周囲環境を判定するための参照情報として、さらに用いられてもよい。
【0095】
図13に示すように、対話装置110は、制御部111と、記憶部112と、カメラ113と、マイク114と、スピーカ115と、ディスプレイ116と、タッチパネル117と、通信部118と、を備える。
【0096】
制御部111は、CPU等の演算処理回路を備え、記憶部112に記憶されているプログラムに従って各部を制御する。制御部111は、FPGAを含んでもよい。制御部111は、記憶部112に記憶されている顔認識エンジン112aにより、カメラ113からの撮像画像中の顔画像を抽出する。また、制御部111は、抽出した顔画像にマスクやサングラス等の装着物が含まれているか否かを、記憶部112に記憶されている装着物認識エンジン112bにより判定する。顔画像に装着物が含まれている場合、制御部111は、さらに、その装着物の種類(マスク、サングラス等)を装着物認識エンジン112bにより特定する。
【0097】
記憶部112は、ROMやRAM等の記憶媒体を備え、制御部111が実行するプログラムを記憶する。上記のように、記憶部112は、顔認識エンジン112aおよび装着物認識エンジン112bを記憶する。また、記憶部112は、顔画像から年齢判定を行うアルゴリズムを記憶する。この他、記憶部112は、制御部111が上記プログラムを実行する際のワーク領域として用いられる。
【0098】
カメラ113は、物品購入者およびその周囲の領域を含み得るアングルで撮像を行う。マイク114は、物品購入者およびその周囲の領域における音声を収音して取得する。ディスプレイ116およびタッチパネル117は、対話装置110の前面パネルに配置される操作表示部を構成する。通信部118は、制御部111からの制御のもと、購買許可システムの上位装置(たとえば、清算機)と通信を行う。制御部111は、通信部118を介して上位装置の通信部から受信する指令に応じて、物品購入者の年齢確認のための処理を行う。
【0099】
<年齢確認処理>
図14は、制御部111により行われる年齢確認処理を示すフローチャートである。
【0100】
図14の処理は、上位装置から制御部111が年齢確認指令を受信したことに応じて実行される。便宜上、
図14のフローチャートにおいて、
図3のフローチャートと同様のステップについては、
図3と同じステップ番号が付されている。
【0101】
制御部111は、ステップS101~ステップS105の処理により、物品購入者の顔に装着物が装着されているか否かを判定する。ステップS103では、抽出された顔画像のうち最も大きな顔画像が、物品購入者の顔画像(対象顔画像)に特定される。なお、ステップS105の判定は、たとえば、マスクやサングラス等、年齢判定に支障がある装着物に制限されてよい。
【0102】
ステップS105の判定がNOの場合、制御部111は、年齢判定アルゴリズムにより、対象顔画像から、物品購入者の年齢を判定する(S141)。そして、制御部111は、判定した年齢が、所定の閾値を超えるか否かを判定する(S142)。ここでは、未成年者に酒類およびタバコの購入が確実に許可されないよう、ステップS142に設定される閾値は、法令の年齢よりも高い年齢(たとえば、30歳以上の所定の年齢)に設定される。
【0103】
ステップS142の判定がYESの場合、制御部111は、年齢確認が適正であったことを示す通知を上位装置に送信する(S143)。これにより、上位装置において、当該物品の購入手続きが進められる。他方、ステップS142の判定がNOの場合、制御部111は、他の年齢確認処理を実行する(S144)。たとえば、制御部111は、ディスプレイ116に、物品購入者の年齢が当該物品を購入可能な年齢であることの確認を受け付けるための画面を表示させる。この画面において、物品購入者が、当該物品を購入可能な年齢であることの応答を入力すると、制御部111は、年齢確認が適正であったことを示す通知を上位装置に送信する。
【0104】
ステップS105の判定がYESである場合、制御部111は、ステップS106以降の処理により、年齢判定に支障がある装着物を物品購入者の顔から離脱することを誘導する。
【0105】
まず、制御部111は、ステップS106において、カメラ113の撮像画像およびマイク114で取得される音声を用いて、物品購入者の周囲の状況(周辺環境)を判定する。ここでは、物品購入者の周囲に他の人がいるか否かの他、他の人の密度合が判定される。他の人の密度合として、物品購入者から所定の距離範囲に含まれる他の人の人数や、物品購入者と他の人の間の距離が判定される。上記のように、これらの周辺環境の判定において、カメラ113の撮像画像の他、監視カメラの撮像画像がさらに用いられてもよく、あるいは、カメラ113の撮像画像に代えて、監視カメラの撮像画像が用いられてもよい。
【0106】
図15(a)は、
図14のステップS107における離脱条件の判定処理を示すフローチャートである。
【0107】
なお、ここでは、周辺環境に基づく離脱条件の判定が、マスクに対してのみ行われる。サングラス等のマスク以外の装着物(年齢判定に支障がある装着物)については、特別な処理を行うことなく、離脱条件が充足されると判定される。
【0108】
制御部111は、ステップS106の判定結果が、物品購入者の周囲に他の人がいないことを示す場合(S251:NO)、離脱条件が充足されると判定する(S254)。他方、物品購入者の周囲に他の人がいる場合(S251:YES)、制御部111は、ステップS106の判定結果から、物品購入者の周囲における他の人の密度合が所定のレベルよりも高いか否かを判定する(S252)。具体的には、制御部111は、他の人の人数(密度)が所定の閾値を超えるか否かを判定し、さらに、物品購入者と他の人との距離が所定の閾値よりも短いか否かを判定する。
【0109】
図16は、密度合の検出例を示している。この場合も、
図7および
図8の場合と同様、制御部111は、撮像画像P10の領域のうち、マスク領域M10以外の領域を、周辺環境の取得領域に設定する。そして、制御部111は、設定した周辺環境の取得領域に存在する他の人P13の顔画像を顔認識エンジン112aで抽出し、さらに、抽出した顔画像の大きさに基づき各顔画像の他の人P13までの距離を取得する。
【0110】
制御部111は、こうして取得した他の人の顔画像および距離に基づき、
図15(a)のステップS252の判定を行う。具体的には、制御部111は、周辺環境の取得領域から抽出した他の人の人数が所定の閾値を超えること、および、これら他の人までの距離が所定の閾値よりも短いことの少なくとも一方が充足された場合に、密度合が高いとして、ステップS252の判定をYESとする。
【0111】
制御部111は、他の人の密度合が高くないと判定した場合(S252:NO)、離脱条件が充足されると判定する(S254)。他方、他の人の密度合が高いと判定した場合(S252:YES)、制御部111は、離脱条件が充足されないと判定する(S253)。
【0112】
なお、離脱条件の判定処理は、
図15(b)のように、さらに、他の人の顔の向きが加味されてもよい。すなわち、制御部111は、他の人の密度合が高くないと判定した場合であっても(S252:NO)、物品購入者付近にいる何れかの他の人の顔が物品購入者の方を向いている場合は(S261:NO)、離脱条件が充足されないと判定し(S253)、物品購入者付近にいる何れの他の人の顔も物品購入者の方を向いていない場合に(S261:YES)、離脱条件が充足されると判定してもよい(S254)。
【0113】
図14に戻り、何れかの装着物について離脱条件が充足されない場合(S107:NO)、制御部111は、他の年齢確認処理を実行する(S144)。ステップS144における処理は、上記と同様である。他方、全ての装着物について離脱条件が充足された場合(S107:YES)、制御部111は、装着物を顔から離脱することを促すための離脱誘導情報の出力を行う(S108)。ステップS108では、上記実施形態1、2と同様、マイク114等を用いて、離脱誘導情報の出力が行われる。
【0114】
この誘導により、物品購入者の対象顔画像が年齢確認に支障のある装着物を含まなくなると(S105:
NO)、制御部101は、上記と同様、年齢判定アルゴリズムにより、対象顔画像から物品購入者の年齢を判定する(S141)。ステップS141以降の処理は、上記と同様である。こうして、制御部111は、ステップS143またはステップS144において、年齢確認が適正であったことを示す通知を上位装置に送信する。これにより、制御部111は、
図14の処理を終了する。
【0115】
<実施形態3の効果>
上記実施形態1、2と同様、実施形態3によれば、対象者(物品購入者)の顔画像における装着物の有無が検出されると(S105)、対象者の周辺環境の判定結果に基づいて(S106)、当該装着物の離脱が誘導される(S108)。よって、撮像画像を用いながら、より適正に装着物の離脱を誘導することができる。
【0116】
また、
図15(a)に示したように、制御部111は、参照情報に基づいて、対象者(物品購入者)の周囲にいる他の人の密度合を判定して(S252)、装着物(マスク)の離脱を促す。これにより、マスク離脱による他の人への罹患の可能性を、より確実に回避しつつ、対象者(物品購入者)の年齢確認を行うことができる。
【0117】
また、
図15(b)の処理では、制御部111は、他の人の顔の向きに基づいて(S261)、装着物(マスク)の離脱を促す。これにより、年齢確認の際に、マスク離脱による他の人への罹患の可能性を、より一層確実に回避することができる。
【0118】
なお、実施形態3においても、制御部111は、
図10と同様の処理により、物品購入者に対するマスクの装着を促してもよい。この場合、
図10のステップS123における処理は、
図17(a)または
図17(b)に示す装着条件の判定処理に変更される。ここでは、
図15(a)、(b)のステップS25
3、S25
4が、ステップS271、S272に置き換えられる。
図17(a)、(b)のその他のステップの処理は、
図15(a)、(b)の対応するステップと同様である。
【0119】
ステップS271では、他の人の密度合が高い場合または他の人の顔が対象者(物品購入者)の方を向いている場合に、マスクの装着条件が充足されると判定される。ステップS272では、他の人の密度合が高くない場合または他の人の顔が対象者(物品購入者)の方を向いていない場合に、マスクの装着条件が充足されないと判定される。
【0120】
この装着誘導処理により、年齢確認の際にマスクを装着していなかった物品購入者に対し、年齢確認後に、マスクの着用を適切に促すことができる。よって、店舗内におけるマスク非着用による罹患をより一層確実に防ぐことができる。
【0121】
なお、
図15(a)、(b)および
図17(a)、(b)における密度合の判定は、撮像画像および音声の何れか一方のみを用いて行ってもよい。但し、物品購入者と他の人との距離の判定や他の人の顔の向きの判定は、音声からは判定が困難であるため、少なくとも撮像画像を用いて行うことが好ましい。また、
図15(a)、(b)の処理から、ステップS252、S261が省略されて、周囲に他の人がいる場合は、一律、離脱条件が充足されないと判定されてもよい。この点は、
図17(a)、(b)の処理においても同様である。
【0122】
また、
図15(a)、(b)に示した処理は、上記実施形態1における
図4(a)の処理に代えて、
図3のステップS107に適用されてもよい。
【0123】
<変更例>
上記実施形態では、
図3、
図10、
図12および
図14の処理が1つの制御部で行われたが、これらの処理を、複数の制御部が分担して行ってもよい。
【0124】
たとえば、上記実施形態3に示した
図13の構成において、
図14のステップS106、S107の処理を上位装置側の制御部が行ってもよい。この場合、上位装置側の制御部は、
図14のステップS105の判定結果がYESである場合に、そのことを示す通知を、
図13の対話装置110の制御部111から受信する。そして、上位装置側の制御部は、たとえば、監視カメラから取得した撮像画像および音声情報に基づいて、
図14のステップS106、S107の処理を実行し、その判定結果を対話装置110に送信する。対話装置110の制御部111は、上位装置側の制御部から受信した判定結果に基づいて、
図14のステップS108の処理またはステップS144の処理を実行する。すなわち、受信した判定結果が条件充足を示す場合、制御部111は、ステップS108の処理を実行し、受信した判定結果が条件非充足を示す場合、制御部111は、ステップS144の処理を実行する。
【0125】
この場合、
図13に示した対話装置110および上位端末から構成される購買許可システムが、特許請求の範囲に記載の対話装置に対応する。これによっても、上記実施形態3と同様の効果が奏され得る。実施形態2においても、一部の制御を、車両側の制御部が分担してもよい。
【0126】
また、複数の端末装置がLAN(Local Area Network)により中央制御装置に接続されているような場合も、顔画像を用いた装着物の離脱または装着の誘導制御が、端末装置と中央制御装置とで分担して行われてもよい。また、この構成において、顔画像を用いた装着物の離脱または装着の誘導制御の全てが、各端末装置で行われてもよく、あるいは、中央制御装置で行われてもよい。後者の場合、必要な情報が適宜、LANを介して、端末装置と中央制御装置との間で送受信されればよい。
【0127】
また、対話装置の構成は、上記実施形態1~3に記載された構成に制限されるものではなく、適宜、変更可能である。たとえば、カメラ、マイク、スピーカは、対話装置に配置されていてもよく、あるいは、対話装置が実装されるシステムに予め配備されたものを用いてもよい。また、対話装置は、必ずしも、ディスプレイやタッチパネルを備えていなくてもよく、対話が音声のみで行われる場合は、これらが省略されてもよい。
【0128】
また、本発明の適用対象は、上記実施形態に示した装置またはシステムに限られるものではなく、他の様々な装置およびシステムとされ得る。
【0129】
たとえば、実施形態3に示した年齢確認の構成および処理が、年齢制限付きの他の物品の自動販売機等に適用されてもよい。また、大型店舗等に配備された顧客受付ロボットや顧客誘導ロボットに、上述の装着誘導処理や表情判定処理の構成が配備され、これらのロボットが対話装置を構成してもよい。また、病院等の施設の入口や旅客機等の搭乗ゲートに、上述の装着誘導処理の構成を備える対話装置が配置されてもよい。本発明は、この他にも、本人認証処理、装着誘導処理、表情判定処理および年齢確認処理等の、撮像画像中に含まれる顔画像に基づいて顔に対する装着物の離脱または装着を促す処理を含む装置またはシステムに広く適用可能である。
【0130】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0131】
10 車両
100、110 対話装置
101、111 制御部
102、112 記憶部
101a 時計回路
102a、112a 顔認識エンジン
102b、112n 装着物認識エンジン