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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】オーバーフロー管用カバー部材
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/04 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
E04D13/04 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020182717
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022072983
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 晋太郎
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-133348(JP,A)
【文献】特開2018-076712(JP,A)
【文献】特開2008-223294(JP,A)
【文献】特開2010-043410(JP,A)
【文献】国際公開第2010/063066(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋外露出部分の外側に配置される壁に設けられ、前記壁より内側からの雨水の排水に用いられるオーバーフロー管の出口端に装着されるオーバーフロー管用カバー部材であって、
外端壁部と、
前記外端壁部の上方、及び横方向両側から前記壁側に延びる延出壁部と、
前記オーバーフロー管の前記出口端を嵌合する嵌合部と、
前記延出壁部の内側で前記嵌合部より前記外端壁部側に形成され前記オーバーフロー管から排出される雨水を排出する排出部と、を備え、
前記嵌合部の入口側の上下方向に沿った断面形状は、上下方向が長い楕円形状である、
オーバーフロー管用カバー部材。
【請求項2】
請求項1に記載のオーバーフロー管用カバー部材において、
前記嵌合部は、前記嵌合部の奥側に形成され、前記オーバーフロー管と前記嵌合部とを嵌合させたときに、前記オーバーフロー管のガタツキを抑制する嵌合調整リブを含む、
オーバーフロー管用カバー部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のオーバーフロー管用カバー部材において、
前記嵌合部の奥端に隣り合う位置に形成され、前記オーバーフロー管の前記出口端と対向する突起を備える、
オーバーフロー管用カバー部材。
【請求項4】
請求項1に記載のオーバーフロー管用カバー部材において、
前記壁からの突出方向についての前記排出部の吐出口の長さは、8mm以上である、
オーバーフロー管用カバー部材。
【請求項5】
請求項1に記載のオーバーフロー管用カバー部材において、
前記嵌合部は、前記オーバーフロー管の外周面が嵌合する主嵌合部と、前記オーバーフロー管の内周面が嵌合する副嵌合部とを有する、
オーバーフロー管用カバー部材。
【請求項6】
請求項1に記載のオーバーフロー管用カバー部材において、
前記排出部における吐出口の下端は、前記嵌合部の下端より低い位置にある、
オーバーフロー管用カバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建物の屋外露出部分の外側に配置される壁に設けられ、壁より内側からの雨水の排水に用いられるオーバーフロー管の出口端に装着されるオーバーフロー管用カバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の屋上、バルコニー、ベランダなど、建物の外側に露出する屋外露出部分には、床面の高さに入口があるドレン管や、ドレン管よりも上方に入口があるオーバーフロー管が設けられる場合がある。オーバーフロー管は、屋外露出部分の外側に配置される壁に貫通するように設けられる。
【0003】
特許文献1には、オーバーフロー管の出口端に装着され、出口端からの異物の侵入を防止するためのキャップと、オーバーフロー管の出口端及びキャップの外側を覆うカバー部材とを設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-76712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された構成では、オーバーフロー管は、壁面パネル(壁)を貫通し、その出口端を覆うようにカバー部材が設けられる。このとき、オーバーフロー管が水平方向に対し傾斜するように施工された場合には、その傾斜に応じてカバー部材が傾くので、施工後の外観を損なう恐れがある。
【0006】
また、オーバーフロー管は、設置場所に応じて水平方向に対する傾斜角度が異なる場合がある。このとき、異なる傾斜角度に応じて異なるカバー部材を用いてカバー部材の傾きを防止することは、カバー部材の量産効果が低くなるので、カバー部材のコストを低減しにくくなる。
【0007】
本開示の目的は、オーバーフロー管用カバー部材において、オーバーフロー管が水平方向に対し傾斜して設置された場合でも、施工後の外観が悪化するのを抑制すると共に、カバー部材のコストを低減しやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様のオーバーフロー管用カバー部材は、建物の屋外露出部分の外側に配置される壁に設けられ、前記壁より内側からの雨水の排水に用いられるオーバーフロー管の出口端に装着されるオーバーフロー管用カバー部材であって、外端壁部と、前記外端壁部の上方、及び横方向両側から前記壁側に延びる延出壁部と、前記オーバーフロー管の前記出口端を嵌合する嵌合部と、前記延出壁部の内側で前記嵌合部より前記外端壁部側に形成され前記オーバーフロー管から排出される雨水を排出する排出部と、を備え、前記嵌合部の入口側の上下方向に沿った断面形状は、上下方向が長い楕円形状である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様のオーバーフロー管用カバー部材によれば、オーバーフロー管が水平方向に対し傾斜するように施工された場合でも、オーバーフロー管が嵌合部の入口側端部に突き当たるまでの傾斜角度の範囲でオーバーフロー管が傾斜した場合に、カバー部材の傾きを抑制できる。これにより、カバー部材の施工後の外観が悪化するのを抑制できる。さらに、オーバーフロー管が嵌合部の入口側端部に突き当たるまでの傾斜角度の範囲で、オーバーフロー管が任意の傾斜角度で傾斜することが許容されるので、オーバーフロー管について異なる傾斜角度が要求される複数の設置場所で共通のカバー部材を使用できる。これにより、カバー部材の量産効果を高くできるので、カバー部材のコストを低減しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態のオーバーフロー管用カバー部材が装着されたオーバーフロー管を含み、屋外露出部分に設置された雨水排水構造を示す概略断面図である。
図2A図1のA部拡大図である。
図2B図2Aにおいて、カバー部材を断面にして示す図である。
図3】カバー部材の建物外側であって上側から見た斜視図である。
図4】カバー部材の建物外側であって下側から見た斜視図である。
図5】カバー部材の屋外露出部分側から見た斜視図である。
図6】カバー部材の屋外露出部分側から見た図である。
図7図6のB-B線で切断したカバー部材の斜視図である。
図8図6のC-C断面図である。
図9図7のD部拡大図である。
図10】実施形態において、排出部の吐出口の幅の規制によって得られる排水能力向上の効果を確認するための実験結果を示す図である。
図11】実施形態の別例のオーバーフロー管用カバー部材を建物外側であって下側から見た斜視図である。
図12図11に示すオーバーフロー管用カバー部材を屋外露出部分側であって上側から見た斜視図である。
図13図12のE-E線で切断したカバー部材の斜視図である。
図14】実施形態の別例のオーバーフロー管用カバー部材を屋外露出部分側から見た図である。
図15図14に示すオーバーフロー管用カバー部材を下方から見た図である。
図16図14のF-F断面図である。
図17】実施形態の別例のオーバーフロー管用カバー部材を、壁に設けられたオーバーフロー管に装着し、屋外露出部分側から雨水を排出する状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本開示に係るオーバーフロー管用カバー部材の実施形態を説明する。以下で説明する形状、数値、個数、材料等は、説明のための例示であって、オーバーフロー管の仕様により適宜変更することができる。以下では全ての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。
【0012】
図1図10を用いて実施形態を説明する。図1は、実施形態のオーバーフロー管用カバー部材20が組み付けられたカバー部材付オーバーフロー管14を含み、屋外露出部分に設置された雨水排水構造10を示す概略断面図である。図2Aは、図1のA部拡大図である。図2Bは、図2Aにおいて、オーバーフロー管用カバー部材20を断面にして示す図である。
【0013】
雨水排水構造10は、建物1の屋外露出部分としてのベランダ100の屋外床102の底部102aに上下方向に貫通して設けられたドレン管12と、ベランダ100の外側に配置される壁104に貫通するように設けられたオーバーフロー管13とを含んで構成される。ドレン管12は、屋外床102の底部102aの高さと同じ高さの位置に入口がある。また、屋外床102は、建物1の外壁のサッシ106位置よりも下側の位置から底部102aに向かって傾斜した傾斜面103を有する。これにより、屋外床102上に降った雨水が傾斜面103でドレン管12側に流れて、ドレン管12の下端の出口から排出される。ドレン管12の下端から排出された雨水は、例えば軒樋(図示せず)で受けられた後、竪樋(図示せず)を通じて地面側に排出される。ドレン管12の下端にエルボ等の他の部材を介して、または直接に竪樋が接続されてもよい。
【0014】
一方、図2A図2Bに示すように、オーバーフロー管13は、壁104に設けられた横孔等の貫通孔105内に、水平方向に対し、壁104の外側の出口開口105aに向かって下側に傾斜するように設けられる。オーバーフロー管13は、ステンレス合金等の金属または樹脂により、断面が真円である円筒状に形成される。壁104の貫通孔105の出口開口105a及び入口開口とオーバーフロー管13との間にはコーキング材107が設けられる。そして、オーバーフロー管13の壁104から突出した出口端13a(図2B)には、オーバーフロー管用カバー部材20が装着され、出口端13aを覆っている。オーバーフロー管用カバー部材20は、樹脂により形成され、外観の見栄えを向上すると共に、オーバーフロー管13の出口端13aから内側に異物が入り込むのを防止する。
【0015】
図2Bに示すように、オーバーフロー管13の出口端13aは、オーバーフロー管用カバー部材20の内側に差し込まれる。出口端13aから排出される雨水は、オーバーフロー管用カバー部材20の内側に形成される空間である後述の排出部21を通じて、オーバーフロー管用カバー部材20の下側から排出される。以下、オーバーフロー管用カバー部材20は、カバー部材20と記載する。
【0016】
カバー部材20の内側には、オーバーフロー管13の出口端13aが嵌合される嵌合部41が形成される。そして、嵌合部41の入口側の上下方向に沿った断面形状は、上下方向に長い楕円形状となっている。これにより、後述のように、オーバーフロー管13が水平方向に対し傾斜して設置された場合でも、カバー部材20が傾くことが防止されるので、施工後の外観が悪化することを抑制できる。さらに、オーバーフロー管13について異なる傾斜角度が要求される複数の設置場所で共通のカバー部材20を使用できるので、カバー部材20のコストを低減しやすくなる。
【0017】
これについて、図2A図2B図3図9を加えて、カバー部材20をさらに詳しく説明する。図3は、カバー部材20の建物1外側であって上側から見た斜視図である。図4は、カバー部材20の建物1外側であって下側から見た斜視図である。図5は、カバー部材20のベランダ100側から見た斜視図である。図6は、カバー部材20のベランダ100側から見た図である。図7は、図6のB-B線で切断したカバー部材20の斜視図である。図8は、図6のC-C断面図である。図9は、図7のD部拡大図である。図2A図8では、オーバーフロー管13が突出する壁104の外面に沿う水平方向を横方向Xで示し、壁104の外面からのカバー部材20の突出方向を幅方向Yで示し、X、Yに直交する上下方向Zで示す。
【0018】
カバー部材20は、箱状部23と、箱状部23の内側に形成された仕切り部30と、仕切り部30に形成された嵌合筒部40とを含んで形成される。箱状部23は、カバー部材20の使用状態で最も壁104から離れた外端に位置する略矩形板状の外端壁部24と、外端壁部24の上方、及び横方向両側から壁側に延びる延出壁部25と、延出壁部25の横方向X両端の下端を接続する下端板部28とを有する。延出壁部25は、外端壁部24の横方向X両端の上下方向Zに延びる2辺から最も壁に近い位置の内端に向かって延びる2つの側壁部26と、外端壁部24の上端の横方向Xに延びる1辺から内端に向かって延びる上端板部27とを有する。下端板部28は、2つの側壁部26の下端の内端側部分を接続する。
【0019】
外端壁部24の外側面は、カバー部材20の使用状態で、上下方向Zに略沿っている。図2Aに示すように、各側壁部26は、略矩形板状であり、上辺と下辺とが、水平方向に対し外端に向かって下側に若干傾斜している。上端板部27は、2つの側壁部26の上端縁を接続するように形成される略矩形板状である。これにより、上端板部27も、側壁部26の上辺と同様に、水平方向に対し外端に向かって下側に、若干傾斜している。このため、カバー部材20の上端に落ちた雨水を外端に流して外端壁部24の外面に沿って流すことができる。したがって、カバー部材20の内端と壁104との間の隙間に雨水が入りにくくなる。
【0020】
さらに、下端板部28は、略矩形板状である。外端壁部24の下端と下端板部28との間には、雨水排出用の略矩形状の吐出口22が形成される。下端板部28は、後述の嵌合筒部40の下側に配置されるので、カバー部材20及びオーバーフロー管13が組み付けられて建物1に設置された状態で、カバー部材20を下から見た場合に、嵌合筒部40を下端板部28により遮ることができる。これにより、カバー部材20の見栄えの悪化を抑制できる。
【0021】
図5図8に示すように、仕切り部30は、外端壁部24の内側面の上側部分から幅方向Yに延びる略平板状の第1中間板部31と、第1中間板部31の内端から略直角に折れ曲がって下方向に延びる第2中間板部32とを有する。第1中間板部31の幅方向Y長さは、箱状部23の幅方向Y長さの略1/2である。仕切り部30は、箱状部23の内側の空間を、オーバーフロー管13の出口から排出された雨水を受け入れて下端の吐出口22から排出する排出部21と、オーバーフロー管13から排出された雨水を受け入れない非排出部35とに分ける。第1中間板部31及び第2中間板部32の横方向X両端は、2つの側壁部26の内側面に接続される。これにより、排出部21は、延出壁部25の内側で後述の嵌合部41より外端壁部24側に形成される。
【0022】
さらに、第2中間板部32の上部には、幅方向Yに沿って入口側である内端側に向かって延びる略円筒状の嵌合筒部40が形成される。嵌合筒部40の内周面は、内側にオーバーフロー管13の出口端が嵌合状態で挿入されて接続される嵌合部41である。図8に示すように、嵌合筒部40は、全体が延出壁部25の内側に配置される。さらに、嵌合部41の入口側端には、断面直線状の面取り42が形成される。さらに、嵌合部41の入口側端開口である面取り42の先端及び奥端は、上下方向Zが長い楕円形状である。これにより、嵌合部41の面取り42奥端の上下方向長さD1(図6)は、横方向長さD2(図6)より大きい(D1>D2)。
【0023】
さらに、嵌合部41の内周面は、面取り42の奥端から、嵌合部41の奥端P(出口端)に向かって、上下方向Zに沿った断面形状が、徐々に真円形状に近づくように形成され、後述の突起45の入口側面に接続される位置で真円となっている。そして、嵌合部41の入口側の上下方向Zに沿った断面形状は、上下方向Zに長い楕円形状となっている。
【0024】
さらに、嵌合部41の面取り42を除く部分である嵌合部本体43の下端縁は水平方向に延びている。また、嵌合部本体43の上端縁は、水平方向に対し出口側に向かって下側に傾斜している。これにより、嵌合部本体43の上下方向長さは、出口側端に向かって徐々に小さくなって横方向長さD2に近づいている。横方向長さD2は、嵌合部本体43の長手方向の全長にわたる範囲で略同一である。これにより、後述のように、オーバーフロー管13が水平方向に対し傾斜して設置された場合でも、施工後の外観が悪化するのを抑制できると共に、カバー部材20のコストを低減しやすくなる。
【0025】
さらに、第1中間板部31の下側面の入口端で、嵌合部41の奥端Pに隣り合う位置には、下方に突出する突起45が形成される。突起45は、嵌合部41に挿入されたオーバーフロー管13の出口端13aと対向し、この出口端13aを突き当て可能である。さらに、嵌合部41の奥端Pからの突起45の突出長さは、オーバーフロー管13の径方向の厚み以下である。これにより、後述のように、カバー部材20の内部へのオーバーフロー管13の差し込み過ぎを防止できる。
【0026】
さらに、図7図9に示すように、嵌合部41の奥側で、横方向X両端の2つの位置には、突部である嵌合調整リブ46が形成される。図7図9では、嵌合調整リブ46を1つのみ示している。残りの嵌合調整リブは、図7図9に示す嵌合調整リブ46と位相が180度異なる位置に形成される。各嵌合調整リブ46は、オーバーフロー管13と嵌合部41とを嵌合させたときに、オーバーフロー管13の外周面が押し付けられることにより、オーバーフロー管13を径方向に小さくする方向に若干圧縮する。これにより、嵌合調整リブ46は、オーバーフロー管13のガタツキを抑制する。
【0027】
図9に示すように、嵌合調整リブ46は、水平方向に延びており、水平方向に対し直交する平面についての断面形状が台形状である。嵌合調整リブ46の入口側端面には、奥側に向かって径方向内側に例えば45度の傾斜角度で傾斜するテーパ面47が形成される。これにより、オーバーフロー管13の出口端13aが嵌合調整リブ46の奥端側に入りやすくなっている。
【0028】
さらに、カバー部材20の壁104からの突出方向である幅方向Yについての、排出部21の吐出口22の長さである幅W(図8)は、8mm以上である。これにより、後述のように、ベランダ100で溜まった雨水の水位が高くなった場合の排水能力をより高くできる。
【0029】
さらに、排出部21における吐出口22の下端は、嵌合部41の下端より低い位置にある。これにより、後述のように雨水の排出能力をより高くできる。
【0030】
カバー部材20の施工時には、図2A図2Bに示すように、壁104の貫通孔105に貫通するようにオーバーフロー管13が設けられた後、壁104の外面から突出するオーバーフロー管13の出口端13aにカバー部材20が装着される。このとき、オーバーフロー管13の出口端13aの外周面、またはカバー部材20の嵌合部41には、例えば1条の環状に接着剤を塗布しておく。そして、嵌合部41にオーバーフロー管13を挿入し、嵌合調整リブ46を押しながらさらに挿入して突起45に近接対向、または接触させ、その状態で接着剤を硬化させることにより、オーバーフロー管13にカバー部材20を固定する。また、カバー部材20と壁104の外面との間には隙間G(図2A)が形成されることが好ましいが、カバー部材20と壁104の外面とが隙間を開けず直接に接触していてもよい。図2A図2Bでは、オーバーフロー管13が水平方向に対し傾斜している場合を示しているが、オーバーフロー管13は水平方向に沿って延びるように壁104に貫通して設けられてもよい。
【0031】
上記のカバー部材20によれば、オーバーフロー管13が水平方向に対し傾斜するように施工された場合でも、図2Bに示すような、オーバーフロー管13が嵌合部41の入口側端部に突き当たるまでの傾斜角度の範囲でオーバーフロー管13が傾斜した場合に、カバー部材20の傾きを抑制できる。例えば、カバー部材20は、外端壁部24の外面が壁104の外面に沿うように上下方向Zに沿って配置することができる。これにより、カバー部材20の施工後の外観が悪化するのを抑制できる。
【0032】
さらに、オーバーフロー管13が嵌合部41の入口側端部に突き当たるまでの傾斜角度の範囲で、オーバーフロー管13が任意の傾斜角度で傾斜することが許容されるので、オーバーフロー管13について異なる傾斜角度が要求される複数の設置場所で共通のカバー部材20を使用できる。例えば、オーバーフロー管13の水平方向に対する傾斜角度は、0度~5度とすることができる。これにより、カバー部材20の量産効果を高くできるので、カバー部材20のコストを低減しやすくなる。
【0033】
さらに、嵌合部41は、面取り42奥端から嵌合部41の奥端Pに向かって、上下方向に沿った断面形状が、徐々に真円形状に近づくように形成されるので、嵌合部41の長手方向の全部を同じ楕円形状とする場合に比べて、嵌合部41とオーバーフロー管13との嵌合におけるがたつきをより抑制できる。
【0034】
さらに、嵌合部41に嵌合調整リブ46が形成されるので、オーバーフロー管13の大きな公差を許容する嵌合寸法を採用した場合に、施工時に、公差が小さくなるときのオーバーフロー管13と嵌合部41との嵌合が緩くなることによる不都合を防止できる。すなわち、この場合には、嵌合が緩くなることで、接着剤が硬化するまでの間にカバー部材20が落下したり、風で位置ずれすることを防止するために、作業者が手でカバー部材20を抑えておく等の手間が生じることが考えられる。実施形態では、これについて、嵌合部41に嵌合調整リブ46が形成されるので、作業者の手間を抑制しながら、接着剤が硬化するまでの間、カバー部材20の落下及び位置ずれを防止できる。なお、嵌合調整リブの位置及び数は、本例の構成に限定するものではなく、例えば、嵌合部41の1つの位置のみに、または周方向に離れた3つ以上の位置に、嵌合調整リブが形成されてもよい。
【0035】
さらに、嵌合部41の奥端Pに隣り合う位置には、オーバーフロー管13の出口端13aと対向する突起45が形成される。これにより、カバー部材20の内部でカバー部材20の奥端に突き当たる、またはカバー部材20の排出部21内に大きく突出するように、オーバーフロー管13がカバー部材20に差し込み過ぎとなることを防止できる。このため、カバー部材20の内部での雨水の流路が塞がれたり、大きく制限されることを防止できるので、雨水をカバー部材20からよりスムーズに排出しやすくなる。さらに、嵌合部41の奥端Pからの突起45の突出長さは、オーバーフロー管13の径方向の厚み以下であるので、これによっても、オーバーフロー管13からの雨水の排出が妨げられることを防止できる。なお、突起45の位置は、嵌合部41の奥端Pの上端で隣り合う位置に限定するものではない。例えば、突起は、嵌合部41の奥端Pの下端で隣り合う位置や、嵌合部41の奥端Pの内周縁に隣り合うように環状に形成されてもよく、また、その内周縁に隣り合う位置の周方向複数位置に形成されてもよい。一方、オーバーフロー管13の出口端13aからは、下側部分で雨水が排出されやすいので、本例のように嵌合部41の奥端Pの上端で隣り合う位置に形成することが、雨水の排水性を高くする面からより好ましい。
【0036】
さらに、カバー部材20の幅方向Yについての、排出部21の吐出口22の長さである幅W(図8)は、8mm以上であるので、ベランダ100で溜まった雨水の水位が高くなった場合の排水能力をより高くできる。また、吐出口22の幅Wが8mm以上であるので、カバー部材20内でのごみ詰まりを生じにくくできる。これについて、図10を用いて、本例の効果を確認するために行った実験を説明する。実験は、吐出口22の幅Wを、6mm~10mmの範囲で1mmずつ異ならせた、5種類のカバー部材20を取り付けたオーバーフロー管13である実施例1~5と、カバー部材20を装着しない比較例とで行った。また、実験では、略直方体で上端が開口した排水槽の長手方向端部にオーバーフロー管13を接続し、カバー部材20を装着したオーバーフロー管13、またはカバー部材20を装着しないオーバーフロー管13からの排水量(L/s)を評価した。実験では、オーバーフロー管13の入口端の径方向における中心位置に水面がある場合を水位0とし、水位を10mm~80mmの範囲で変更した。
【0037】
図10は、その実験結果を示している。図10では、一点鎖線aが比較例を示し、実線bが吐出口22の幅Wが10mmである実施例1、実線cが幅Wが9mmである実施例2、実線dが幅Wが8mmである実施例3、破線eが幅Wが7mmである実施例4、破線fが幅Wが6mmである実施例5を、それぞれ示している。
【0038】
図10に示した実験結果からオーバーフロー管13にカバー部材20を装着した実施例1~5において、吐出口22の幅Wが8mm以上である実施例1~3の場合には、幅Wが8mm未満の実施例4、5に比べて、特に水位が25mm以上と高くなる場合に、排水量の上昇割合を大きくできることを確認できた。これにより、実施形態の効果を確認できた。
【0039】
さらに、図1図9に示した構成では、カバー部材20の排出部21における吐出口22の下端は、嵌合部41の下端より低い位置にある。これにより、オーバーフロー管13の入口端の開口上端と吐出口22との上下方向の長さを大きくできる。このため、吐出口の下端と嵌合部の下端とが同じ高さ位置にある場合に比べて、ベランダ100に溜まった雨水の水面がこの開口上端以上の高さにあるときの水面と、カバー部材20の吐出口22との高低差を大きくできる。したがって、カバー部材20を流れる水の水圧を高くできるので、雨水の排出能力をより高くできる。
【0040】
図11は、実施形態の別例のカバー部材20aを建物外側であって下側から見た斜視図である。図12は、図11に示すカバー部材20aをベランダ側であって上側から見た斜視図である。図13は、図12のE-E線で切断したカバー部材20aの斜視図である。
【0041】
本例のカバー部材20aは、2つの側壁部50の下端で吐出口22の横方向X両端から上側に入り込んだ部分に、切り欠き状の凹部51が形成される。さらに、仕切り部54は、上端板部52の下面の幅方向Y中間部から下方に延びる第1中間板部55と、第1中間板部55の上下方向中間部で入口端側に延びる段差部56を介して第1中間板部55より入口端側に形成され下方に延びる第2中間板部57とを含む。
【0042】
さらに、嵌合部60は、嵌合筒部61の内周面であり、オーバーフロー管13(図2B)の外周面が嵌合する主嵌合部62と、オーバーフロー管13の内周面が嵌合する副嵌合部64とを有する。主嵌合部62の構成は、図1図9に示した構成の嵌合部41と同様である。主嵌合部62の奥端Qは、第1中間板部55と第2中間板部57とに接続される。
【0043】
副嵌合部64は、第1中間板部55のうち、主嵌合部62の上端部が接続された部分が下方に延びた下側突出板部65と、下側突出板部65から入口端に向かって幅方向Yに延びる幅方向延出部66とを有する。幅方向延出部66は上下方向Z及び横方向Xを含む平面に沿った断面形状が下側に開口したU字形である。幅方向延出部66の上側面は、オーバーフロー管13の出口端13aの内周面上部と嵌合する断面円弧形の曲面である。
【0044】
上記の構成によれば、オーバーフロー管13の大きな公差を許容する嵌合寸法を採用した場合に、施工時に、公差が小さくなるときのオーバーフロー管13と嵌合部60との嵌合が緩くなることによる不都合を、より効果的に防止できる。すなわち、本例の構成によれば、主嵌合部62と副嵌合部64とで、オーバーフロー管13の出口側端部を径方向に挟むことができる。これにより、作業者の手間を抑制しながら、接着剤が硬化するまでの間、カバー部材20の落下及び位置ずれを、より効果的に防止できる。
【0045】
さらに、副嵌合部64が下側突出板部65を有することで、下側突出板部65にオーバーフロー管13の出口端13a(図2B)を対向させることができる。これにより、カバー部材20へのオーバーフロー管13の差し込み過ぎを防止できる。さらに、副嵌合部64の幅方向延出部66が径方向に弾性変形しやすくなるので、副嵌合部64にバネ性を持たせやすくなる。これにより、オーバーフロー管13と主嵌合部62との寸法ばらつきが大きくなった場合に、主嵌合部62と副嵌合部64とで、より追従性を高くしてオーバーフロー管13の出口側端部を挟むことができる。なお、副嵌合部64の位置及び数は、本例の構成に限定するものではないが、オーバーフロー管13の出口端13aからは、下側部分で雨水が排出されやすいので、本例のように主嵌合部62の上端に接続するように形成することが、雨水の排出性を高くする面から好ましい。本例において、その他の構成及び作用は、図1図9の構成と同様である。
【0046】
図14は、実施形態の別例のカバー部材20bをベランダ側から見た図である。図15は、カバー部材20bを下方から見た図である。図16は、図14のF-F断面図である。図17は、カバー部材20bを、壁104に設けられたオーバーフロー管13に装着し、ベランダ側から雨水を排出する状態を示す断面図である。
【0047】
本例のカバー部材20bは、外端壁部70と、外端壁部70の上方、及び横方向X両側から壁104側に延びる延出壁部71と、オーバーフロー管13の出口端13aを嵌合する嵌合部81と、排出部82とを含んで形成される。延出壁部71は、外端壁部70の横方向X両端に接続された2つの側壁部72と、2つの側壁部72の上下方向Z中間部の内側面に接続された2つの上側板部73とを有する。2つの上側板部73の互いに対向する横方向X内端には、略円筒状の嵌合筒部80が接続される。嵌合筒部80の奥端の下側には、曲面部85を介して下方に延びる下方延出板部86が形成される。延出壁部71の内側で、嵌合筒部80より外端壁部70側には、空間である排出部82が形成される。外端壁部70、2つの側壁部72、嵌合筒部80、及び下方延出板部86は、第1部材A1に形成される。第1部材A1において、嵌合筒部80の奥端の上側と、外端壁部70の上端部との間には、第2部材A2が差し込まれて固定される。この状態で、第2部材A2は、排出部82の上端で、嵌合筒部80の奥端上側部分と外端壁部70との間を塞いでいる。
【0048】
嵌合部81は、嵌合筒部80の内周面に形成される。嵌合部81の入口側の上下方向に沿った断面形状は、上下方向が長い楕円形状であり、嵌合部81の出口端である奥端に向かって、断面形状が真円に近づいている。排出部82は、下端に形成された略矩形の吐出口83から雨水を排出する。排出部82における吐出口83の下端は、嵌合部81の下端より低い位置にある。
【0049】
図17では、壁104に水平方向に設けられたオーバーフロー管13の出口端13aにカバー部材20bを装着した状態を示している。
【0050】
上記の構成によれば、オーバーフロー管13の入口端の開口上端S(図17)と吐出口83との上下方向の長さHを大きくすることにより、ベランダに溜まった雨水の水面がこの開口上端S以上の高さにあるときの水面と、カバー部材20の吐出口83との高低差を大きくできる。これにより、カバー部材20を流れる水の水圧を高くできるので、排出能力をより高くできる。さらに、高低差が大きくなることにより、排出部82において水で満たされた部分の長さを大きくできるので、サイホン効果を発揮しやすくなり、それによって、排出能力をより高くできる。例えば、オーバーフロー管13の入口端の開口上端Sと吐出口83との上下方向の長さを、嵌合部81の内径の2倍以上とすることができる。本例において、その他の構成及び作用は、図1図9の構成と同様である。
【0051】
なお、上記では、屋外露出部分がベランダである場合を説明したが、屋外露出部分は、バルコニーまたは屋上部であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 建物、10 雨水排水構造、12 ドレン管、13 オーバーフロー管、13a 出口端、14 カバー部材付オーバーフロー管、20,20a,20b オーバーフロー管用カバー部材(カバー部材)、21 排出部、22 吐出口、23 箱状部、24 外端壁部、25 延出壁部、26 側壁部、27 上端板部、28 下端板部、30 仕切り部、31 第1中間板部、32 第2中間板部、35 非排出部、40 嵌合筒部、41 嵌合部、42 面取り、43 嵌合部本体、45 突起、46 嵌合調整リブ、47 テーパ面、50 側壁部、51 凹部、52 上端板部、54 仕切り部、55 第1中間板部、56 段差部、57 第2中間板部、60 嵌合部、61 嵌合筒部、62 主嵌合部、64 副嵌合部、65 下側突出板部、66 幅方向延出部、70 外端壁部、71 延出壁部、72 側壁部、73 上側板部、80 嵌合筒部、81 嵌合部、82 排出部、83 吐出口、85 曲面部、86 下方延出板部、100 ベランダ、102 屋外床、102a 底部、103 傾斜面、104 壁、105 貫通孔、105a 出口開口、106 サッシ、107 コーキング材。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17