(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】光コネクタと、光コネクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/26 20060101AFI20240628BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20240628BHJP
G02B 6/24 20060101ALI20240628BHJP
G02B 6/30 20060101ALI20240628BHJP
G02B 6/36 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
G02B6/26 301
G02B6/02 461
G02B6/24
G02B6/30
G02B6/36
(21)【出願番号】P 2021513717
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(86)【国際出願番号】 JP2020016140
(87)【国際公開番号】W WO2020209365
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2019075287
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】Orbray株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】行川 毅
(72)【発明者】
【氏名】藤原 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勝
(72)【発明者】
【氏名】岡本 勤
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/051656(WO,A1)
【文献】特開2007-178602(JP,A)
【文献】特表2017-507357(JP,A)
【文献】米国特許第10234644(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
6/26-6/27
6/30-6/34
6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバと、1つのマルチコアファイバと、複数の自己形成光導波路を備え、
複数の光ファイバのコアの総数とマルチコアファイバのコアの総数とが同一であり、
複数の光ファイバとマルチコアファイバは対向配置され、複数の光ファイバとマルチコアファイバ間に自己形成光導波路が備えられており、
自己形成光導波路の端部が、複数の光ファイバの各コア及びマルチコアファイバの各コアと光学的に接続されており、
自己形成光導波路の端部と接する複数の光ファイバ又はマルチコアファイバのどちら
か一方が、自己形成光導波路から取り外し可能であり、
前記マルチコアファイバの前記各コアは、前記マルチコアファイバの長手方向と平行な方向である第二の方向と直交する第一の方向において、前記マルチコアファイバの他のコアの1つ以上と部分的に重なり、かつ第一の方向および第二の方向と直交する第三の方向と第二の方向とにおいて、前記マルチコアファイバの他のコアのすべてと重ならないように、非一列状で配列されている、光コネクタ。
【請求項2】
前記複数の光ファイバが、アレイ基板の面上に形成されたアレイ溝内に一列状に配列されて光ファイバアレイが形成されている、請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記自己形成光導波路から取り外し可能である前記複数の光ファイバ又は前記マルチコアファイバに、離型剤が塗布されている請求項1または2に記載の光コネクタ。
【請求項4】
複数の光ファイバとマルチコアファイバと光硬化性樹脂を用意し、
複数の光ファイバのコアの総数とマルチコアファイバのコアの総数とが同一である事を確認し、
複数の光ファイバとマルチコアファイバを互いに対向配置すると共に、複数の光ファイバとマルチコアファイバ間に光硬化性樹脂を配置し、
光硬化性樹脂の端部に、複数の光ファイバ及びマルチコアファイバから光を入射し、光硬化性樹脂の端部をコア間隔で硬化させて光硬化性樹脂にコア間隔を転写し、光硬化性樹脂に複数の自己形成光導波路を形成し、
クラッドが光硬化性樹脂の硬化により形成し、
複数の光ファイバ又はマルチコアファイバのどちら
か一方を自己形成光導波路から取り外し、
取り外した複数の光ファイバ又はマルチコアファイバとは別の複数の光ファイバ又はマルチコアファイバを自己形成光導波路に光学的に接続する光コネクタの製造方法であって、
前記マルチコアファイバの各コアを、前記マルチコアファイバの長手方向と平行な方向である第二の方向と直交する第一の方向において、前記マルチコアファイバの他のコアの1つ以上と部分的に重なり、かつ第一の方向および第二の方向と直交する第三の方向と第二の方向とにおいて、前記マルチコアファイバの他のコアのすべてと重ならないように、非一列状で配列する、前記光コネクタの製造方法。
【請求項5】
前記複数の光ファイバを、アレイ基板の面上に形成したアレイ溝内に一列状に配列して光ファイバアレイを形成する、請求項4に記載の光コネクタの製造方法。
【請求項6】
前記自己形成光導波路から取り外す前記複数の光ファイバ又は前記マルチコアファイバに、予め離型剤を塗布する請求項4または5に記載の光コネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタと、光コネクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバとして、下記特許文献1の
図6(a)に示すような、クラッドの中にコアを1つ有するものが用いられている。一方、特許文献1の
図6(b)に示すマルチコアファイバも提案されている。マルチコアファイバはクラッドに複数(4個以上、19個程度)のコアを有しており、一度に大量の情報をそれぞれのコア内に伝搬可能である。
【0003】
マルチコアファイバで一度に大量の情報を伝搬する為には、例えば特許文献1の
図7のように、7個のコアを持つマルチコアファイバのそれぞれのコアから出射される光を、別々に7本のシングルモード光ファイバ内のコア内に光学的に接続させる技術が必須となる。しかし、マルチコアファイバのそれぞれのコアに、シングルモード光ファイバを光学的に接続する事は難しい。その理由は、マルチコアファイバの外径が150μm~240μmで、コアの直径が10μm、コア間隔が40μm~50μmである一方、シングルモード光ファイバの外径が125μm、コアの直径が10μmと微小の為である。そこでこれら光ファイバを光学的に接続する技術として、特許文献1の発明が開示されている。
【0004】
特許文献1記載の光コネクタは、マルチコアファイバの各コアから出射される光を、このコアと同数のシングルモード光ファイバ内の各コアに1対1で光学的に接続させるマルチコアファイバ用の光コネクタである。この光コネクタでは、石英ガラス成形品の一方側に設けた挿入孔内にマルチコアファイバを挿入・固定すると共に、石英ガラス成形品の反対側に設けられた複数の挿入孔内にシングルモード光ファイバを、それぞれ挿入・固定している。更に、各シングルモード光ファイバ用の挿入孔の延長上に、マルチコアファイバの各コアまでガイドするガイド用孔を設け、ガイド用孔にポリマーを埋め込んで光導波路を形成し、マルチコアファイバの各コアとシングルモード光ファイバのそれぞれのコアとを光学的に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、実際に複数のシングルモード光ファイバを配列すると、各光ファイバのコアの軸方向には角度のバラツキが僅かながらも不可避で生じる。更に、各光ファイバのコア間隔にもバラツキが僅かでも不可避で生じる。
【0007】
一方、マルチコアファイバの各コアの軸方向にも角度のバラツキが僅かでも不可避で生じると共に、コア間隔にもバラツキが僅かでも不可避で生じる。
【0008】
従って、実際に特許文献1記載の光コネクタを実現しようとすると、複数のシングルモード光ファイバ側及びマルチコアファイバ側に、前記各バラツキが僅かながら不可避で発生する。よってシングルモード光ファイバとマルチコアファイバの各コアどうしを、前記ポリマー等の光導波路で接続しようとすると、前記各バラツキに起因して隣のコアに誤って光導波路が接続形成されてしまうおそれが有る。
【0009】
そこでポリマー等の光導波路を用いる際にも、複数のシングルモード光ファイバの配列や、マルチコアファイバの各コアの形成に高い精度が求められる為、光コネクタの製造に高精度が要求され、製造コストの高騰と歩留まりの低下を招いてしまう。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、製造コストの低減と歩留まりの向上が可能な、マルチコアファイバを備えた光コネクタと、その光コネクタの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は、以下の本発明により解決される。即ち、本発明の光コネクタは複数の光ファイバと、1つのマルチコアファイバと、複数の自己形成光導波路を備え、複数の光ファイバのコアの総数とマルチコアファイバのコアの総数とが同一であり、複数の光ファイバとマルチコアファイバは対向配置され、複数の光ファイバとマルチコアファイバ間に自己形成光導波路が備えられており、自己形成光導波路の端部が、複数の光ファイバの各コア及びマルチコアファイバの各コアと光学的に接続されており、自己形成光導波路の端部と接する複数の光ファイバ又はマルチコアファイバのどちらか一方が、自己形成光導波路から取り外し可能であることを特徴とする。
【0012】
本発明の光コネクタの製造方法は、複数の光ファイバとマルチコアファイバと光硬化性樹脂を用意し、複数の光ファイバのコアの総数とマルチコアファイバのコアの総数とが同一である事を確認し、複数の光ファイバとマルチコアファイバを互いに対向配置すると共に、複数の光ファイバとマルチコアファイバ間に光硬化性樹脂を配置し、光硬化性樹脂の端部に、複数の光ファイバ及びマルチコアファイバから光を入射し、光硬化性樹脂の端部をコア間隔で硬化させて光硬化性樹脂にコア間隔を転写し、光硬化性樹脂に複数の自己形成光導波路を形成し、クラッドが光硬化性樹脂の硬化により形成し、複数の光ファイバ又はマルチコアファイバのどちらか一方を自己形成光導波路から取り外し、取り外した複数の光ファイバ又はマルチコアファイバとは別の複数の光ファイバ又はマルチコアファイバを自己形成光導波路に光学的に接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る光コネクタ及びその製造方法に依れば、複数の光ファイバ又はマルチコアファイバのどちらか一方を、自己形成光導波路から取り外し可能とする事で、光コネクタの用途の拡大が可能となる。
【0014】
更に、取り外した複数の光ファイバ又はマルチコアファイバをマスター部品として別の光コネクタの製造工程へと繰り返し使用して行く事が出来る。各種バラツキの小さい高精度な複数の光ファイバ又はマルチコアファイバを取り外し繰り返し使用する事で、自己形成光導波路の端部を取り外した複数の光ファイバ又はマルチコアファイバが有する高精度な一定のコア間隔で製造する事が可能になり、光コネクタの接続損失を容易に低減可能となり、光コネクタの製造コストの低減と歩留まりが向上可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る光コネクタを模式的に示す説明図である。
【
図4】本発明に係る実施形態の変更例である光コネクタを、模式的に示す説明図である。
【
図7】
図1の光コネクタの製造方法を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施の形態の第一の特徴は、複数の光ファイバと、1つのマルチコアファイバと、複数の自己形成光導波路を備え、複数の光ファイバのコアの総数とマルチコアファイバのコアの総数とが同一であり、複数の光ファイバとマルチコアファイバは対向配置され、複数の光ファイバとマルチコアファイバ間に自己形成光導波路が備えられており、自己形成光導波路の端部が、複数の光ファイバの各コア及びマルチコアファイバの各コアと光学的に接続されており、自己形成光導波路の端部と接する複数の光ファイバ又はマルチコアファイバのどちらか一方が、自己形成光導波路から取り外し可能である光コネクタである。
【0017】
この構成に依れば、複数の光ファイバ又はマルチコアファイバのどちらか一方を、自己形成光導波路から取り外し可能とする事で、光コネクタの用途の拡大が可能となる。
【0018】
本実施の形態の第二の特徴は、複数の光ファイバとマルチコアファイバと光硬化性樹脂を用意し、複数の光ファイバのコアの総数とマルチコアファイバのコアの総数とが同一である事を確認し、複数の光ファイバとマルチコアファイバを互いに対向配置すると共に、複数の光ファイバとマルチコアファイバ間に光硬化性樹脂を配置し、光硬化性樹脂の端部に、複数の光ファイバ及びマルチコアファイバから光を入射し、光硬化性樹脂の端部をコア間隔で硬化させて光硬化性樹脂にコア間隔を転写し、光硬化性樹脂に複数の自己形成光導波路を形成し、クラッドが光硬化性樹脂の硬化により形成し、複数の光ファイバ又はマルチコアファイバのどちらか一方を自己形成光導波路から取り外し、取り外した複数の光ファイバ又はマルチコアファイバとは別の複数の光ファイバ又はマルチコアファイバを自己形成光導波路に光学的に接続する光コネクタの製造方法である。
【0019】
この製造方法に依れば、前記効果に加えて、取り外した複数の光ファイバ又はマルチコアファイバをマスター部品として別の光コネクタの製造工程へと繰り返し使用して行く事が出来る。各種バラツキの小さい高精度な複数の光ファイバ又はマルチコアファイバを取り外し繰り返し使用する事で、自己形成光導波路の端部を取り外した複数の光ファイバ又はマルチコアファイバが有する高精度な一定のコア間隔で製造する事が可能になり、光コネクタの接続損失を容易に低減可能となり、光コネクタの製造コストの低減と歩留まりが向上可能となる。
【0020】
本実施の形態の第三の特徴は、複数の光ファイバが、アレイ基板の面上に形成されたアレイ溝内に一列状に配列されて光ファイバアレイが形成されていると共に、マルチコアファイバの各コアが、非一列状で任意に配列されている光コネクタである。
【0021】
本実施の形態の第四の特徴は、複数の光ファイバを、アレイ基板の面上に形成したアレイ溝内に一列状に配列して光ファイバアレイを形成すると共に、マルチコアファイバの各コアを、非一列状で任意に配列する光コネクタの製造方法である。
【0022】
これらの構成及び製造方法に依れば、光ファイバアレイは複数の光ファイバが一列状に配列しており、マルチコアファイバは各コアが非一列状で任意に配列している。従ってどちらも製造が容易となり、光コネクタの製造も容易となる。
【0023】
本実施の形態の第五の特徴は、複数の光ファイバの各コアの配置が、マルチコアファイバの各コアの配置と同一な光コネクタである。
【0024】
本実施の形態の第六の特徴は、複数の光ファイバの各コアの配置を、マルチコアファイバの各コアの配置と同一とする光コネクタの製造方法である。
【0025】
これらの構成及び製造方法に依れば、自己形成光導波路の形成の際に、隣り合う自己形成光導波路どうしの交差を防止する事が出来る。従って、隣り合う自己形成光導波路どうしの光学的な接続を防止出来る為、光コネクタの接続損失を容易に低減することが出来る。
【0026】
本実施の形態の第七の特徴は、自己形成光導波路から取り外し可能である複数の光ファイバ又はマルチコアファイバに、離型剤が塗布されている光コネクタである。
【0027】
本実施の形態の第八の特徴は、自己形成光導波路から取り外す複数の光ファイバ又はマルチコアファイバに、予め離型剤を塗布する光コネクタの製造方法である。
【0028】
これらの構成及び製造方法に依れば、離型剤の塗布により、複数の光ファイバ又はマルチコアファイバの取り外しの際に自己形成光導波路の端部を欠損させること無く、複数の光ファイバ又はマルチコアファイバを、自己形成光導波路から円滑に取り外すことが可能となる。
【0029】
以下、本発明に係る実施形態を、
図1~
図3及び
図7を参照しながら説明する。なお各図のX軸、Y軸及びZ軸方向は、各図で共通方向である。
【0030】
本実施形態の光コネクタ1は、複数(7本)の光ファイバ4a~4gと、1つのマルチコアファイバ2と、複数の自己形成光導波路(以下、光導波路5a~5gと記載)を備える。光ファイバ4a~4gは、1つのアレイ基板3aの面上に形成された各アレイ溝3b内に一列状に配列され、光ファイバアレイ3が形成されている。なお各図のZ軸がマルチコアファイバ2の長手方向及び各光ファイバ4a~4gの長手方向と平行な方向である。X軸及びY軸方向は、Z軸方向にそれぞれ直交する方向である。
【0031】
各光ファイバ4a~4gは、コアの周りをクラッドが包囲する型式であり、シングルモード又はマルチモードで、ステップインデックス又はグレーデッドインデックスファイバの何れかである。コアは
図1と
図7では破線、
図2では実線で表している。更に、各光ファイバ4a~4gはガラス又はプラスチック製である。クラッドの外径はシングルモード光ファイバの場合0.125mm(125μm)である。なお、1550nm帯シングルモードファイバのモードフィールド径は10.5μmである。
【0032】
マルチコアファイバ2は、コア径が約9μm程、クラッド径が125μm、コア数が複数(
図3では2a~2gの7つ)である。更に一例として、カットオフ波長が1190nm~1500nm、モードフィールド径が4.8μm~5.6μm(伝搬光波長1310nm)、5.7μm~8.5μm(伝搬光波長1550nm)である。また各コアは任意に配列可能であり、例えば、一列、又は非一列状として正方形、二列、又は
図3に示すように中央に1つ及び正六角形の各頂部に6つ等角度且つ等間隔で配列された種類が挙げられる。各コア間隔は35μm~50μmとする。
【0033】
マルチコアファイバ2は、形成される光導波路5a~5gがX軸Y軸Z軸の三軸のうち、少なくとも一軸方向では重ならないように、各コア2a~2gを位置決め配置する事が、光ファイバ4a~4gとマルチコアファイバ2間での所望以外のコアどうしの接続防止の点で望ましい。
図3ではY軸方向においてコア2cと2f、2aと2dと2g、2bと2eがそれぞれ部分的に重なるように配置されているが、X軸及びZ軸方向では重ならないように各コア2a~2gを回転位置決めしている。
【0034】
光導波路5a~5gは容器10内に形成されており、光導波路5a~5gの周囲にはクラッド9が形成され、クラッド9も容器10内に収納されている。クラッド9は容器10の内面形状に応じて、例えば円柱状や角柱状、その他の立体形状に形成することが可能である。なお本実施形態では、容器10のZ軸方向の寸法は3.1mmとしている。
【0035】
容器10は、クラッド9の外面形状を形作る中空立体状に形成される。また容器10の材料は、例えば金属や硬質合成樹脂、セラミック、ガラス等の硬質材料とすれば良く、必要に応じて、紫外線光(UV)を透過させる窓や開口等が設けられる。
【0036】
容器10の一端側には、光ファイバ4a~4gの端部を配置する。また容器10の他端側には、マルチコアファイバ2の端部を配置する。更に容器10には、各光導波路5a~5gとクラッド9を構成する光硬化性樹脂を充填するための、図示しない開口部が設けられる。
【0037】
光ファイバ4a~4gのコアの総数と、マルチコアファイバ2のコア2a~2gの総数は同一に構成されており、各光ファイバ4a~4gとマルチコアファイバ2は対向配置される。その各光ファイバ4a~4gとマルチコアファイバ2の間に光導波路5a~5gが、各コアの間で直線状に備えられる。従って、光導波路5a~5gのZ軸方向に於ける両端部は、光ファイバの各コア及びマルチコアファイバ2の各コア2a~2gと、それぞれ光学的に接続されている。
【0038】
なお、各光ファイバ4a~4gとマルチコアファイバ2との間でX軸方向に高低差があったとしても、各コアの間で光導波路5a~5gが形成されている場合、各光ファイバ4a~4gとマルチコアファイバ2は対向配置されているものと本発明では見なす。
【0039】
図1~
図3に示すように、光ファイバ4a~4gが一列のアレイ状に配列され、もう一方のマルチコアファイバ2の各コア2a~2gがX軸方向に高低差を有する様に放射状に形成される。従って直線状に形成される各光導波路5a~5gもX軸方向に高低差を有しながら、各光ファイバ4a~4gとマルチコアファイバ2の各コア2a~2g間で光学的に接続されている。具体的には、光ファイバ4aがコア2aと、4bが2bと、4cが2cと、4dが2dと、4eが2eと、4fが2fと、4gが2gと、それぞれ接続されている。
【0040】
更に接続後、光ファイバ4a~4g又はマルチコアファイバ2のどちらか一方を、光導波路5a~5gから取り外す事で光コネクタ1から取り外し可能とする。
【0041】
次に、
図7を参照して光コネクタ1の製造方法を説明する。最初に
図7(a)に示すように光ファイバ4a~4gが配列された光ファイバアレイ3と、マルチコアファイバ2と、光硬化性樹脂を用意する。光硬化性樹脂は容器10内に前記開口部から充填される事で用意される。光硬化性樹脂は容器10内に充填される事で、光ファイバ4a~4gとマルチコアファイバ2の間に配置される。
【0042】
光硬化性樹脂はクラッド選択重合型であり、材料は2種類以上のモノマーから成る混合液に光重合開始剤を添加した溶液である。光重合開始剤が感度を有する波長帯の光を入射させて、光硬化性樹脂を重合硬化させ、ポリマーとする。
【0043】
次に光ファイバ4a~4gのコアの総数とマルチコアファイバ2のコア2a~2gの総数とが同一である事を確認(
図7ではそれぞれ7つずつで同一である事を確認)する。更に光ファイバ4a~4gとマルチコアファイバ2を互いに対向配置すると共に、光ファイバ4a~4gとマルチコアファイバ2間に光硬化性樹脂を配置する。なお容器10内に光硬化性樹脂を充填後に、容器10の両端に光ファイバ4a~4gとマルチコアファイバ2を互いに対向配置させても良い。
【0044】
次に
図7(b)より、光硬化性樹脂の端部に各光ファイバ4a~4g及びマルチコア2から光を入射し、光硬化性樹脂の端部を、複数の光ファイバ4a~4gの各コア間隔3c及びマルチコアファイバ2の各コア間隔で重合硬化させる。この重合硬化により光硬化性樹脂の端部に、前記各コア間隔が転写される。
【0045】
光硬化性樹脂を重合硬化させる光の波長λwは、光重合開始剤に応じて任意に設定可能であるが、一例として365nm~1675nmで入射可能である。
【0046】
転写後、更に光ファイバ4a~4g及びマルチコアファイバ2から光硬化性樹脂に光を入射継続する事で、光硬化性樹脂に複数の光導波路5a~5gを形成する。光導波路5a~5gのコア径は、各光ファイバ4a~4gのコア径と同一とする事が望ましく、且つ、各光導波路5a~5gの光軸方向で一様な直径が望ましい。光導波路5a~5gのモードフィールド径はシングルモードファイバと同一(10.5μm)とする。
【0047】
次に、クラッド9を形成する。クラッド9は、クラッド選択重合型により形成される。光導波路5a~5gでは、波長λwに対して少なくとも1種類のモノマーが重合反応する。この結果、硬化したコア領域中には混合液中と同程度の濃度で重合反応しなかったモノマー成分が未反応モノマーとして分散する。同時に、コア領域中では一方のモノマーのみが消費されて重合するので、コアとクラッドとの境界面ではモノマーの濃度勾配が生じ、相互拡散が進行し、クラッドの機能を果たす。最後に、光硬化性樹脂全体を紫外線照射(UV照射)することで、コア及びクラッド9全体が硬化形成されて、光導波路5a~5gが得られる。
【0048】
次に、光ファイバ4a~4g又はマルチコアファイバ2のどちらか一方を、光導波路5a~5gから取り外す事で光コネクタ1から取り外す。光ファイバアレイ3とマルチコアファイバ2のうち、どちらを取り外すかは、光コネクタ1の用途に応じて決める。
【0049】
更に取り外した光ファイバ4a~4g又はマルチコアファイバ2とは別の、図示しない光ファイバ又はマルチコアファイバを、光導波路5a~5gに光学的に再度接続する。別の光ファイバ又はマルチコアファイバは、光コネクタ1の仕様の位置精度を満足するものとする。
【0050】
この様に光コネクタ1では、光ファイバ4a~4g又はマルチコアファイバ2が光導波路5a~5gから取り外し可能である。従って、複数の光ファイバ4a~4g又はマルチコアファイバ2のどちらか一方を、光導波路5a~5gから取り外し可能とする事で、光コネクタ1の用途の拡大が可能となる。
【0051】
光ファイバ4a~4g又はマルチコアファイバ2を光導波路5a~5gから取り外す際は、光導波路5a~5gの端部と接する各光ファイバ4a~4gの外形部分又はマルチコアファイバ2の外形部分に、予め離型剤を塗布しておく事で実現可能となる。
図7の場合光ファイバアレイ3及び各光ファイバ4a~4gの端部に予め離型剤を塗布しておく。マルチコアファイバ2を取り外す場合は、マルチコアファイバ2の端部に予め離型剤を塗布しておく。離型剤の塗布により、光ファイバ4a~4g又はマルチコアファイバ2の取り外しの際に光導波路5a~5gの端部を欠損させること無く、光ファイバ4a~4g又はマルチコアファイバ2を光導波路5a~5gから円滑に取り外すことが可能となる。
【0052】
取り外した光ファイバ4a~4g又はマルチコアファイバ2は、マスター部品として別の光コネクタの製造工程へと繰り返し使用して行く。取り外した光ファイバ4a~4g又はマルチコアファイバ2をマスター部品として別の光コネクタの製造工程へと繰り返し使用して行く事が出来る。各種バラツキの小さい高精度な光ファイバ4a~4g又はマルチコアファイバ2を取り外し繰り返し使用する事で、光導波路5a~5gの端部を取り外した光ファイバ4a~4g又はマルチコアファイバ2が有する高精度な一定のコア間隔で製造する事が可能になり、光コネクタ1の接続損失を容易に低減可能となり、光コネクタ1の製造コストの低減と歩留まりが向上可能となる。
【0053】
更に光コネクタ1に依れば、光ファイバアレイ3は7本の光ファイバ4a~4gが一列状に配列しているのに対し、マルチコアファイバ2は非一列状で任意の配列として各コア2a~2gが中央に1つ及びその周りに等角度且つ等間隔で配列されているので配列空間に無駄が無い。従って光ファイバアレイ3及びマルチコアファイバ2のどちらも製造が容易となり、光コネクタ1の製造も容易となる。
【0054】
なお光ファイバ4a~4gは、アレイ基板3aに換わって図示しない多芯フェルールを配置しても良い。
【0055】
光導波路5a~5gを形成する際は、光ファイバ4aがコア2aと、4bが2bと、4cが2cと、4dが2dと、4eが2eと、4fが2fと、4gが2gと、それぞれ接続させる為に、光ファイバは4a→4b→4c→4d→4e→4f→4gの順に、マルチコアファイバ2の各コアは2a→2b→2c→2d→2e→2f→2gの順に、光硬化性樹脂に光を入射させる。よって各光導波路を5a→5b→5c→5d→5e→5f→5gの順に形成して行くので、意図しない各光ファイバとマルチコアファイバ2の各コア間での光導波路の形成が防止出来る。
【0056】
次に
図4~
図6を参照して、本発明に係る実施形態の変更例を説明する。各図のX軸Y軸及びZ軸方向は、各図で共通方向である。変更例の光コネクタ11が前記光コネクタ1と異なる点は、複数の光ファイバ4a~4dの各コアの配置が、マルチコアファイバ6の各コア6a~6dの配置と同一という点である。
【0057】
光コネクタ11は、光ファイバ4a~4dと、マルチコアファイバ6と、自己形成光導波路8a~8dを備える。光ファイバ4a~4dは、アレイ基板7aの面上の各アレイ溝7b内に配列され、Y軸方向に一列状に光ファイバアレイ7が形成されている。なお各図のZ軸がマルチコアファイバ6の長手方向及び各光ファイバ4a~4dの長手方向と平行な方向である。X軸及びY軸方向は、Z軸方向にそれぞれ直交する方向である。
【0058】
マルチコアファイバ6がマルチコアファイバ2と異なる点は、コア数が6a~6dの4つであり、コア配置状態が
図6に示すようにY軸方向に一列状に配列されている点である。光ファイバ4aはコア6aと、4bは6bと、4cは6cと、4dは6dと、それぞれ接続される。従って光ファイバは4a→4b→4c→4dの順に、マルチコアファイバ6の各コアは6a→6b→6c→6dの順に、光硬化性樹脂に光を入射させる。よって各光導波路は8a→8b→8c→8dの順に形成して行く
【0059】
図5及び
図6に示すように、光ファイバ4a~4d及びマルチコアファイバ6共にコア数が4つで同一であると共に、各コアの配置がY軸方向に一列状に配列されている。よって、光ファイバ4a~4dの各コアの配置が、マルチコアファイバ6の各コア6a~6dの配置と同一なので、光導波路5a~5dの形成の際に、隣り合う光導波路どうしの交差を防止する事が出来る。従って、隣り合う光導波路どうしの光学的な接続を防止出来る為、光コネクタ11の接続損失を容易に低減することが出来る。
【符号の説明】
【0060】
1、11 光コネクタ
2、6 マルチコアファイバ
2a~2g、6a~6d マルチコアファイバのコア
3、7 光ファイバアレイ
3a、7a アレイ基板
3b、7b アレイ溝
3c、7c コア間隔
4a~4g 光ファイバ
5a~5g、8a~8d 自己形成光導波路
9 クラッド
10 容器