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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】皮膚刺激具、および皮膚刺激方法
(51)【国際特許分類】
   A61H 39/08 20060101AFI20240628BHJP
   A61H 15/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61H 15/02 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61H39/08 L
A61H15/00 390E
A61H15/02 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018079309
(22)【出願日】2018-04-17
(65)【公開番号】P2019181072
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-04-06
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】503361019
【氏名又は名称】有限会社東洋医学総合治療院
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】弁理士法人井上国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 優子
【合議体】
【審判長】井上 哲男
【審判官】近藤 利充
【審判官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-150895(JP,A)
【文献】特開2017-80341(JP,A)
【文献】実開平3-116836(JP,U)
【文献】実開平3-73137(JP,U)
【文献】特開2005-143826(JP,A)
【文献】特開平8-206232(JP,A)
【文献】特公平4-41617(JP,B2)
【文献】実公平6-27141(JP,Y2)
【文献】登録実用新案第3177333(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 15/00
A61H 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚を押圧して刺激を与える多数の刺激突起と、該刺激突起を周側面上に連続配列したローラーと、
該ローラーを回転可能に支持するローラー保持枠と、
該ローラー保持枠に固定された持ち手が握る柄とを備えた皮膚刺激具であって、
前記刺激突起のそれぞれは、前記ローラの周面上に回転方向及び軸方向に連続して配列された平行四辺形の底面と、各前記刺激突起の頂部に前記底面と平行に形成され、髪の毛一本分程度の断面幅0.12mm~0.15mmの平面で形成された先端刺激部と、前記皮膚を押圧する際、前記先端刺激部が前記皮膚に対して30度~60度の角度で刺激可能となる4つの傾斜側面とからなり、各前記底面から先端刺激部へ2mm以上3.5mm以内の高さを有し、前記先端刺激部を頂部とする四角錐形状であり、
前記先端刺激部は前記ローラーの回転方向又は回転方向に所定角度傾いた直線方向に配列されていることを特徴とする皮膚刺激具。
【請求項2】
前記刺激突起は、
前記刺激突起を温めるための温熱源、
を備えることを特徴とする請求項1記載の皮膚刺激具。
【請求項3】
前記温熱源は、
温水であること、
を特徴とする請求項2記載の皮膚刺激具。
【請求項4】
前記ローラー保持枠は、
それぞれ独立して回動するように複数の前記ローラーが保持されること、
を特長とする請求項記載の皮膚刺激具。
【請求項5】
記柄は、
長さを調節する長さ調節手段、
を備えることを特長とする請求項記載の皮膚刺激具。
【請求項6】
記柄は、
装身具が連結される連結孔、
を備えることを特徴とする請求項記載の皮膚刺激具。
【請求項7】
記柄は、
後端に前記刺激突起、
を備えることを特長とする請求項記載の皮膚刺激具。
【請求項8】
前記高さは、
2mm以上2.2mm以内であること、
を特徴とする請求項1記載の皮膚刺激具。
【請求項9】
前記高さは、
2.07mmであること、
を特徴とする請求項記載の皮膚刺激具。
【請求項10】
前記刺激突起は、
チタン合金で形成されていること、
を特徴とする請求項1記載の皮膚刺激具。
【請求項11】
前記チタン合金は、
特定の色が発色される厚さの酸化皮膜が表面に形成されること、
を特長とする請求項10記載の皮膚刺激具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚刺激具、および皮膚刺激方法に関し、特に錐体形状の刺激突起で皮膚を押圧して刺激を与える皮膚刺激具、および皮膚刺激方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、東洋医学のひとつとして全身に点在するツボと呼ばれる経穴を鍼で刺激して身体の不調を改善する鍼治療が知られており、様々な研究機関や保健機構からも、その効果が期待できるとして注目を集めている。
【0003】
この鍼治療の中でも美容を目的とし、皮膚や筋肉に直接刺激を与えることで、ニキビやほうれい線、しわ、たるみ、しみ等の原因となる肌質などの体質を改善させ、健康的な美しさを手に入れる美容鍼が知られている(たとえば、特許文献1、2参照)。
【0004】
例えば、特許文献1では、鍼で身体に刺激を長期間与えることを可能とする鍼施術用の鍼が開示されている。
具体的には、身体に副作用を与えることが少ない美容形成・美容整形療法として、皮膚細胞を活性化させるために身体内に糸を植入し、その糸にコラーゲン溶液などの溶液剤を含浸させることで、刺激効果を向上させ、さらに糸の折り返し長さを調節するだけで、身体内に植入された糸を注射針から容易に抜き取ることができるものである。
【0005】
また、他にツボを刺激する方法として、特許文献2では、ローラーの転動によるマッサージ効果とローラーを介して発散させる他のエネルギー効果、およびツボを同時に刺激することによる新陳代謝の活性効果との相乗効果をより高く得られる美容健康装置が開示されている。
【0006】
具体的には、突部を円筒形の外周面に有したローラー、または非円筒形の外周面を有したローラーが把持部を有する本体の一端部に回転自在に支持され、ローラーの内部に設けられたエネルギー発生部により、ローラーにエネルギー発生部からのエネルギーが伝達されるものである。
このよに、鍼や美容健康装置などでツボを刺激することで、身体の新陳代謝を活性化させ、ニキビやほうれい線、しわ、たるみ、しみ等の原因となる肌質などの体質を改善させ、健康的な美しさを手に入れることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許5128715号
【文献】特開平11-192275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、鍼による施術は医師やはり師などの有資格者でないと施術できないため、一般のユーザーが気軽に施術を行えない問題があった。現在、日本において鍼を業として行えるのは、医師および国家資格であるはり師の免許を持つ人だけであり、上述の特許文献1のような鍼の刺通は、医師およびはり師しか行えない。つまり、一般のユーザーが個人で美容のために気軽に施術を行なうことはできなかった。
また、美容鍼は皮膚に直接鍼を刺すので、針のようなものを刺すという痛いイメージが
あり、患者に不安が残るため、美容鍼が普及しづらい問題もある。
【0009】
一方で、上述の特許文献2のような美容健康装置では、突部を円筒形の外周面に有したローラー、または非円筒形の外周面を有したローラーが肌やツボを刺激するので、呪術の鍼による施術のような有資格者でなくても施術を気軽に行える。
【0010】
しかし、円筒形の外周面に設けられた突部や、非円筒形の外周面による刺激では、刺激が皮膚の表面にしか刺激を与えることができないため刺激が弱く、効率よくツボに刺激を与えることができなかった。
【0011】
また弱い刺激を補助するために、エネルギー発生部がローラーの内部に設置されており、そのエネルギー発生部の例として超音波や低周波、高周波などの発生部が挙げられているが、超音波や低周波、高周波などを発生させるには電力を必要とするので、経済的ではなかった。また電源を確保するために、いつでも、どこでも、気軽に刺激を行えるものではなかった。
さらに、携帯用の場合には、必要な電源部を内蔵する必要があるため、美容健康装置全体の重量が増加し、装置を利用する度に疲労感が伴ってしまう問題があった。
【0012】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、電力を使用せず気軽に適切な箇所に適度な刺激を与えることができる刺激具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では上記問題を解決するために、錐体形状の刺激突起で皮膚を押圧して刺激を与える皮膚刺激具において、前記刺激突起は、前記刺激突起の先端に、押圧時に皮膚に刺通しない程度に形成された先端刺激部と、押圧時に前記先端刺激部が皮下組織内に留まる高さとを備えることを特徴とする皮膚刺激具が提供される。これにより、刺激突起の先端が皮膚に刺通せずに皮下組織に留まる。
【0014】
また、本発明では、錐体形状の刺激突起で皮膚を押圧して刺激を与える皮膚刺激方法において、前記刺激突起の先端に皮膚に刺通しない程度に形成された先端刺激部が、皮膚に押圧される工程と、前記刺激突起の先端が、皮下組織に到達して留まる工程とを備えることを特徴とする皮膚刺激方法が提供される。これにより、刺激突起の先端が皮膚に刺通せずに皮下組織に留まる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の皮膚刺激具、および皮膚刺激方法によれば、刺激突起の先端が皮膚に刺通せずに皮下組織に留まるので、電力を使用せず気軽に、適切な皮下組織に刺激を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施の形態に係る美容鍼の正面図、上面図、および側面図である。
図2】刺激突起の詳細を示す正面図、上面図、および側面図である。
図3】ローラー部の進行方向と、刺激突起による刺激ポイントを示す図である。
図4】肌の構造および美容鍼の使用前、使用中、使用後を示す断面図である。
図5】温熱源の形成例を示す断面図である。
図6】第2の実施の形態に係る美容鍼の正面図である。
図7】伸縮自在に構成された柄の詳細を示す正面図である。
図8】第3の実施の形態に係る美容鍼の正面図である。
図9】第4の実施の形態に係る美容鍼の斜視図である。
図10】第5の実施の形態に係る美容鍼の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係る美容鍼の正面図、上面図、および側面図である。
図1に示すように美容鍼100は、円柱体形状をしたローラー部110、ローラー部110を回動自在に保持するローラー保持枠120、およびローラー保持枠120の一方に固定された柄130を備えており、ユーザーは柄130を持ちながら、刺激を与えたい所望の位置の肌にローラー部110をあて、ローラー部110の回転方向に合わせてローラー部110を回転移動させることで、ユーザーの肌やツボに刺激を与え、美容効果を高めるためのものである。
【0018】
ローラー部110は、例えばチタン合金などの金属で形成された円柱形状のローラーである。ローラー部110の周側面には、錐体形状をした刺激突起111がローラー部110の回転方向に沿って連続して配列されている。
【0019】
刺激突起111の先端には髪の毛1本分程度の断面幅の平面で先端刺激部112が形成される。これにより、刺激突起111がユーザーの肌と接触した際に、刺激突起111の先端が皮膚に刺通することがない。さらに、刺激突起111の先端には髪の毛1本分程度の断面幅の平面で形成することで、鍼治療なので用いられる鍼の刺激に近づけることができる。
【0020】
なお、ローラー部110を構成する刺激突起111および先端刺激部112は、硬度が高いチタン合金で形成されているため、先端刺激部112のように先端を細く形成しても、皮膚との摩擦により刺激突起111が摩耗してしまうことを低減させることができる。
【0021】
さらにチタン合金は、空気に触れるとすぐに酸化し、表面に強固な酸化皮膜を作ることが知られている。この酸化被膜が表面に形成されることで、刺激突起111および先端刺激部112がユーザーの汗やリンパ液などに触れたとしても、金属成分が溶け出すことがなく、金属アレルギーを起こしにくくすることができる。
【0022】
ローラー保持枠120は、ローラー部110を両側面側から挟持するように保持するU字型で形成された枠体である。ローラー保持枠120は、ローラー部110をボルト121によって回動自在に保持する。
【0023】
柄130は、ローラー保持枠120の底面側に、ローラー部110の保持側と反対方向に垂直に固定される棒体である。ユーザーは柄130を持ちながら、ローラー部110をユーザーの肌にあてながらローラー部110を回転移動させる。
【0024】
ローラー保持枠120および柄130は、直接ユーザーの肌と接する場面が少ないので、ステンレス鋼材で形成することで製造単価を低減することができる。なおステンレスも酸化しにくい性質の金属のため、チタン同様に金属成分が溶け出すことがなく、金属アレルギーを起こしにくくすることができる。
【0025】
なお、図1では、柄130の形状を棒体としたが、ユーザーが握りやすい形状であれば他の形状で構成することもできる。
またローラー保持枠120と柄130とは、垂直に固定する例で示したが、所定の角度を保った状態で固定することもできる。さらに角度の調節を自由自在に変更できるように構成することもできる。
【0026】
図2は、刺激突起の詳細を示す正面図、上面図、および側面図である。
図2に示すように、刺激突起111は、例えば四角錐形状をしており、刺激突起111の先端には髪の毛1本分程度の断面幅の平面状の先端刺激部112が形成される。
【0027】
具体的には、刺激突起111の底面は2.6mm×3.0mmの平行四辺形の形状で形成され、底面から先端刺激部112の平面までの高さは2.07mmの四角錐で形成される。
【0028】
また、刺激突起111の先端には、0.15m×0.12mmの平面状の先端刺激部112が、接触するユーザーの皮膚に対して平行に形成される。一般に日本人の髪の毛の断面幅は、0.05mm~0.15mm程度であり、髪の毛程度の断面幅の平面では、皮膚に刺通することはない。このようにユーザーの皮膚と接触する刺激突起111の先端に先端刺激部112を形成することで、刺激突起111は皮膚に刺通せずに適度な刺激を与えることができる。
【0029】
なお、美容鍼において一般的な針治療では、皮膚表面近くを刺激するために、刺入深度が浅い斜刺と呼ばれる鍼の刺し方が行なわれる。斜刺とは皮膚面に対し鍼を約30度~60度、好ましくは45度の角度で斜めに刺入する鍼の刺し方である。
【0030】
本実施の形態の美容鍼100では、刺激突起111の形状を上記の四角錐形状にすることで、皮膚に対して約30度~60度、好ましくは45度の角度で刺激することができる。
【0031】
図3は、ローラー部の進行方向と、刺激突起による刺激ポイントを示す図である。
図3(A)は、ローラー部110の周側面に底面が平行四辺形で形成された刺激突起111を配列した場合の、刺激ポイント122Aを示している。
【0032】
図3(A)に示すように、刺激突起111の底面を平行四辺形に形成し、ローラー部110の周側面に連続して刺激突起111を配列することで、刺激突起111はローラー部110の回転方向Mに対して所定の角度をなすような傾斜状の直線L-A方向に連続して配列される。
【0033】
また、刺激突起111の先端に形成された先端刺激部112も同様に、刺激突起111はローラー部110の回転方向Mに対して所定の角度をなすような傾斜状の直線L-A方向に連続して配列される。
【0034】
これにより、刺激ポイント122Aはローラー部110の回転方向Mに対して所定の角度をなすように傾斜状に刺激していくので、刺激ポイント122Aを分散させて刺激していくことができる。
【0035】
また、刺激ポイント122Aはローラー部110の回転方向Mに対して所定の角度をなすように傾斜状に刺激していくので、ローラー部110の進行方向から傾斜した方向に肌が刺激されて移動していくため、肌の引き締め効果を高めることができる。
【0036】
図3(A)では、ローラー部110の周側面に底面が平行四辺形で形成された刺激突起111を配列するようにしたが、図3(B)のように、ローラー部110の周側面に底面が長方形で形成された刺激突起111を配列するようにしてもよい。
【0037】
図3(B)は、ローラー部110の周側面に底面が長方形で形成された刺激突起111を配列した場合の、刺激ポイント122Bを示している。
【0038】
図3(B)に示すように、刺激突起111の底面を長方形で形成し、ローラー部110の周側面に連続して刺激突起111を配列することで、刺激突起111はローラー部110の回転方向Mに平行な直線L-B方向に連続して配列される。
【0039】
また、刺激突起111の先端に形成された先端刺激部112も同様に、刺激突起111はローラー部110の回転方向Mに平行な直線L-B方向に連続して配列される。
これにより、刺激ポイント122Bは、ローラー部110の回転方向に平行して刺激していくので、ユーザーはローラー部110をスムーズに移動させることができる。
【0040】
図4は、肌の構造および美容鍼の使用前、使用中、使用後を示す断面図である。
図4に示すように、肌は、表皮、真皮、および皮下組織の3層で構造されている。
表皮は、表面側から皮膚膜、角質層、顆粒層、有棘層、および基底層で構造されており、約0.2mmの厚さがある。真皮は、コラーゲン、エラスチン、繊維芽細胞、基質などで構造されおり、約2mmの厚さがある。
【0041】
皮下組織は、主に皮下脂肪で構造され、毛細血管やリンパ管などが通っており、栄養を送り出したり、老廃物を排泄したりする役目をしている。また、これら肌の下には、筋膜を介して筋肉が構造されている。
【0042】
一般に美容の敵とされる「しわ」や「たるみ」の原因は、表皮または真皮にあるとされている。例えば、真皮を構造するコラーゲンやエラスチンは、真皮をさせる繊維成分であり、これらの成分が緩んでしまうことが主な「たるみ」の原因とされている。
【0043】
つまり美容を目的とした場合、鍼治療は鍼を深くまで刺す必要はなく、表皮および真皮付近を刺激することで改善されることが多い。
このため本実施の形態の美容鍼100では、刺激突起111の高さを押圧時に先端刺激部112が皮下組織内に留まる高さである2mm~2.2mmで形成、好ましくは先端刺激部112の平面まで2.07mmの高さで形成するので、ユーザーがローラー部110を皮膚方向に押し込んだ距離と合わせて、刺激が必要な表皮および真皮までの2.2mmを十分に刺激することができる。
【0044】
また刺激突起111の先端には、先端刺激部112が形成されているため、皮膚を刺通することがない。また皮下組織、筋膜、筋肉などの組織を傷つけることなく、適切な部位に刺激を与えることができる。
【0045】
なお、本実施の形態の美容鍼100は、人の肌を刺激するだけでなく、頭髪が生えた頭皮や、表面が体毛で覆われた動物の皮膚の上から刺激を与えることもできる。例えば人の頭皮に刺激を与える場合、刺激突起111の高さが2mm~2.2mmだと、毛のボリュームによって先端刺激部112が皮下組織内に到達しない場合がある。
【0046】
この場合は、刺激突起111の高さを2mm~3.5mmで形成、好ましくは2.58mmや3.45mmで形成することで、表皮が毛で覆われていたとしても、先端刺激部112を皮下組織内に到達させて、刺激が必要な表皮および真皮までの2.2mmを十分に刺激することができる。
【0047】
また、本実施の形態の美容鍼100が有する刺激突起111の高さは、人の肌を刺激することを前提に形成しているが、人間以外の動物の肌に使用する場合は、人間以外の動物の肌の構造に合わせて、適宜先端刺激部112が皮下組織内に留まる高さで刺激突起111の高さを形成することができる。
【0048】
また、皮膚の表面が毛で覆われた場合だけでなく、刺激突起111の高さが2mm~2.2mmで刺激が足りない部位で使用する場合は、刺激突起111の高さを任意に変更するようにしてもよい。
【0049】
図5は、温熱源の形成例を示す断面図である。
図5に示すように、美容鍼100は、温熱源140を備えることができる。
美容鍼100のローラー部110は、チタン合金で形成されているため、冬場など気温が低い場合に、ローラー部110をユーザーの肌に直接当てるとユーザーが冷たく不快に感じてしまうことがある。
【0050】
この場合、美容鍼100は温熱源140を備えているため、ローラー部110が適温に温まり、ローラー部110をユーザーの肌に直接当てても、冷たく不快に感じることがない。
【0051】
具体的な例として、図5(A)の様に、温熱源140はローラー部110の内部に空間を設け、ローラー部110の側面に設けられた注水口141よりお湯を内部に入れる。これによりローラー部110は、温熱源140に注水されたお湯により温められるので、ユーザーは快適に美容鍼100を利用することができる。
【0052】
また別の例として、図5(B)の様に、温熱源140は柄130の内部に空間を設け、柄130の端部に設けられた注水口141よりお湯を内部に入れる。これによりステンレス製の柄130は温熱源140によって温められ、ステンレス製のローラー保持枠120およびチタン合金製のローラー部110に温熱源140の熱が伝導するので、ユーザーは快適に美容鍼100を利用することができる。
【0053】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態の美容鍼は、ローラー部の形状が異なる以外は、第1の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0054】
図6は、第2の実施の形態に係る美容鍼の正面図である。
図6に示すように、美容鍼100は、円柱体形状をした2つのローラー部110Aおよび110B、ローラー部110Aおよび110Bを回動自在に保持するローラー保持枠120、およびローラー保持枠120の一方に固定された柄130を備えている。
【0055】
ローラー部110Aおよびローラー部110Bは、それぞれ独立して回転するようにローラー保持枠120によって保持されている。
ローラー部110Aおよびローラー部110Bが独立して回転するので、例えばローラー部110Aを回転させずに、ローラー部110Bだけを回転させることで、ローラー部110Aを中心とした円をユーザーの肌に描くことができる。
【0056】
上記に様に、ローラー部110Aおよびローラー部110Bが独立して回転させることで、美容鍼100の移動性が向上し、ユーザーは顎部や頬部などの複雑な形状の部位でもスムーズに刺激を肌に与えることができる。
【0057】
また、ローラー部110Aおよびローラー部110Bが、それぞれ独立してユーザーの肌付近の細かい筋肉をとらえて刺激するので、各部位に合わせた刺激を与えることができる。またユーザーに快適な刺激を与えることができる。
【0058】
なお本実施の形態の美容鍼100は、2つのローラー部110Aおよびローラー部110Bで構成したが、3以上のローラー部110を用いて構成することもできる。
また、本実施の形態の美容鍼100は、2つのローラー部110Aおよびローラー部110Bを回転軸方向に並べて構成したが、複数のローラー部110を回転方向、または回転方向および回転軸方向に並べて構成することもできる。
【0059】
また、図6の例では、ローラー部110の周側面に底面が平行四辺形で形成された刺激突起111を配列した場合の例で示しており、ローラー部110Aおよびローラー部110Bにおける刺激突起111の配列方向は同方向であるが、これを互いに内側または互いに外側に向けた方向で配列するようにしてもよい。
【0060】
図7は、伸縮自在に構成された柄の詳細を示す正面図である。
図7に示すように、柄130は、長さを調節可能に構成された柄130Aおよび柄130Bを備えている。
【0061】
美容鍼100は、携帯用に小型のサイズで形成されるが、必要に応じて手の届かない部位に刺激を与えたい場合も生じる。このとき図7のように柄130を延長することで、手が届かなかった部分も刺激することができるようになる。
【0062】
具体的には、柄130Aの一端にはローラー保持枠120が固定されており、多端にはオスネジ131Aが形成されている。また柄130Bの一端にはメスネジ131Bが形成されており、オスネジ131Aとメスネジ131Bとを連結して緊結することで、柄130Aの長さに柄130Bの長さが延長される。
【0063】
なお、本実施の形態の美容鍼100では、柄130Aおよび柄130Bの連結に、オスネジ131Aとメスネジ131Bとを用いたが、このほか、筒状の柄130Aの内部に柄130Aの径よりも小さい柄130Bを入れ込み、スライドさせて延長させてもよい。
【0064】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態の美容鍼は、刺激突起の配列形状が異なる以外は、第1の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0065】
図8は、第3の実施の形態に係る美容鍼の正面図である。
図8に示すように、美容鍼100は、平面状に配列された刺激突起111を備えている。
刺激突起111を平面状に配列する場合には、刺激突起111の底面同士を連結してもよいし、板材などに刺激突起111を貼り付けることもできる。
【0066】
第3の実施の形態に係る美容鍼100は、平面状に刺激突起111が配列されているので、例えばユーザーが寝るベッドの上に設置して寝たり、第3の実施の形態に係る美容鍼100を配置した床の上にユーザーが寝たり、壁に設置した美容鍼100に寄りかかったりすることでユーザーの肌に刺激を与えることができる。
この場合でも、平面状に刺激突起111の先端には先端刺激部112が形成されているので、美容鍼100が刺激を与える肌に刺激突起111が刺通することがない。
【0067】
〔第4の実施の形態〕
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態の美容鍼は、刺激突起の配列形状が異なる以外は、第1の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0068】
図9は、第4の実施の形態に係る美容鍼の斜視図である。
図9に示すように、美容鍼100は、平面状に配列された刺激突起111および絆創膏150を備えている。
【0069】
第4の実施の形態に係る美容鍼100は、第1~第3の実施の形態に係る美容鍼100とのようにユーザーが行なう刺激行為によって刺激が一時的に与えられるものとは異なり、絆創膏150によってユーザーの肌の所望の位置に刺激突起111を貼り付けることで、常に刺激を与え続けることができるものである。
【0070】
具体的には、絆創膏150の一面には粘着面151が積層されており、その粘着面151に刺激突起111の底面が接着されている。
ユーザーは刺激突起111の先端に形成された先端刺激部112を肌に向けて所望の位置に配置し、刺激突起111を底面から覆うように絆創膏150でユーザーの肌に刺激突起111を接着する。
【0071】
これにより、刺激突起111は、ユーザーの肌の所望の位置に固定されるので、絆創膏150を剥がすまで常に刺激を与え続けることができる。
この場合でも、平面状に刺激突起111の先端には先端刺激部112が形成されているので、美容鍼100が刺激を与える肌に刺激突起111が刺通することがない。
【0072】
〔第5の実施の形態〕
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。本実施の形態の美容鍼は、柄の形状が異なる以外は、第1の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0073】
図10は、第5の実施の形態に係る美容鍼の正面図である。
図10に示すように、美容鍼100は、柄130の端部周側面に装身具200と連結するための連結孔132を備えている。
【0074】
連結孔132は、柄130の端部周側面を径方向に貫通して設けられる貫通孔である。例えばネックレスチェーンのような装身具200を連結孔132に通すことで、美容鍼100と装身具200とを連結することができる。
【0075】
これにより、装身具200に美容鍼100を連結してユーザーの身につけることができるので、美容鍼100の携帯性が向上する。
また、チタン合金およびステンレス鋼材で構成された美容鍼100をユーザーの首から装身具200を介して前方に吊り下げることで、美容鍼100の重量により、ユーザーが歩行する際のバランスが向上する効果を得ることができる。
【0076】
また、柄130の後端に刺激突起111またはツボ刺激用の突起を設けることもできる。これにより、ユーザーは、ローラー部110による平面的な皮膚刺激だけでなく、柄130の後端に刺激突起111またはツボ刺激用の突起による部分的なツボ刺激も与えることができる。
【0077】
以上のように、美容鍼100は、刺激突起111の先端に先端刺激部112が髪の毛1本程度の断面幅を備えた平面で形成されるので、皮膚を刺通せずに刺激することができる。また刺激突起111は皮下組織に到達する十分な長さがあるので、肌を構成する表皮および真皮の次に構造される皮下組織まで刺激突起111によって肌を刺通せずに刺激することができる。
【0078】
なお美容鍼100が備えるローラー部110や刺激突起111を形成するチタン合金は、表面に形成される酸化皮膜の厚さを変化させることで、100種類以上の発色できることが知られている。
【0079】
具体的には、チタンに進む光のうち一部は酸化皮膜の表面で反射し、残りは酸化皮膜に入射しチタン合金の表面で反射して出て行く。この酸化皮膜の表面で反射する光と、チタン合金の表面で反射する光との位相が干渉することで、その光が強調されて色に見えるものである。
この表面に形成される酸化皮膜の厚さによる発色の変化を利用して、ローラー部110や刺激突起111の色を変化させることができる。
【0080】
このように、刺激突起111の高さに応じてローラー部110や刺激突起111の色を変化させて識別させたり、様々なカラーバリエーションのローラー部110や刺激突起111を製造したりしてもよい。
【符号の説明】
【0081】
100 美容鍼
110、110A、110B ローラー部
111 刺激突起
112 先端刺激部
120 ローラー保持枠
121 ボルト
122A、122B 刺激ポイント
130、130A、130B 柄
131A オスネジ
131B メスネジ
132 連結孔
140 温熱源
141 注水口
150 絆創膏
151 粘着面
200 装身具
L-A、L-B 直線
M 回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10