(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ペット用食器
(51)【国際特許分類】
A01K 5/01 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
A01K5/01 A
(21)【出願番号】P 2020195026
(22)【出願日】2020-11-25
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】516371922
【氏名又は名称】株式会社ペティオ
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 武史
(72)【発明者】
【氏名】永井 俊和
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0192619(US,A1)
【文献】特開2015-119662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 5/01
A01K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フードや水を収容する収容部を備えたペット用食器であって、
前記収容部は、前側が後側よりも低くなるように傾斜して形成されており、
前記収容部の前側の中央部分を除いた内周側面に、
単一の帯状の突部が周方向に形成されていることを特徴とするペット用食器。
【請求項2】
請求項1に記載のペット用食器において、
前記突部は、前記収容部の
内周壁面の高さ方向の寸法、及び、前記収容部の内周側面からの突出寸法が、それぞれ、前記収容部の両側で最小とされるとともに前記収容部の後側で最大となるように漸次変化してなる形状とされていることを特徴とするペット用食器。
【請求項3】
請求項1または2に記載のペット用食器において、
前記収容部の内周側面において、前記突部が形成された位置の上方が立ち上がり面部とされていることを特徴とするペット用食器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のペット用食器において、
前記収容部の下方に、前記収容部を支持する支持部が設けられていることを特徴とするペット用食器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットの給餌や給水に使用されるペット用食器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、犬や猫、小動物等のペットにフード(餌)や水を与える場合、ペット用のドライフードあるいはウェットフードや水を市販のペット用食器、例えば、皿状あるいは鉢状の食器に入れることで行っている。
【0003】
ところで、ペットがフードを食べたり水を飲んだりする場合に、上記した一般的な皿状や鉢状の食器を用いたのでは、食器中のフードや水がこぼれ易く、周囲を汚すことにもなる。
【0004】
このような問題を解決するために種々のペット用食器が提案されている。
【0005】
例えば特許文献1には、食器本体とスタンドを別体に備え、スタンドに対して食器本体の角度を調整して載置することができるようにしたペット用食器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載のペット用食器では、ペットの大きさに応じて食器本体の傾斜角度を細かく調整して、ペットの大きさや種類にかかわらず、食器本体内に収容したフードを良好かつ心地よく給餌することを可能にしている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたペット用食器の食器本体は、凹状に湾曲形成された皿状のものである。たとえペットの大きさに応じて食器本体の傾斜角度を調整したとしても、単なる皿状の食器本体にフードを収容したのでは、ペットが食器本体の周壁から外にフードを食べこぼしてしまうといった問題が依然として生じてしまう。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、ペットが食べやすく、かつ周囲にフードや水をこぼしにくいペット用食器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、フードや水を収容する収容部を備えたペット用食器であって、前記収容部は、前側が後側よりも低くなるように傾斜して形成されており、前記収容部の前側の中央部分を除いた内周側面に、単一の帯状の突部が周方向に形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明によれば、収容部の前側が後側よりも低くなるように傾斜して形成されているので、収容部に収容したフードや水が前側に集まる。したがって、ペットは、フードや水が集まっている前側からフードを食べたり水を飲んだりすることができるので、飲食しやすい。
【0012】
また、収容部の前側の中央部分を除いた内周側面に、単一の帯状の突部が周方向に形成されているので、ペットが収容部の前側から後側に向かって飲食すると、フードや水が突部に突き当たり、フードや水を突部と口(舌)との間で挟むように飲食することができる。したがって、ペットは、フードや水を飲食しやすく、かつ、周囲にフードや水をこぼすことを有効に防止できる。
【0013】
本発明において、前記突部を、前記収容部の内周壁面の高さ方向の寸法、及び、前記収容部の内周側面からの突出寸法が、それぞれ、前記収容部の両側で最小とされるとともに前記収容部の後側で最大となるように漸次変化してなる形状に形成した場合は、後側の突部の肉厚が厚く(内周壁面の高さ方向の寸法、及び、前記収容部の内周側面からの突出寸法が大きく)なっている。収容部の前側からペットが飲食しはじめると、後側に向かって多くのフードや水が押し出され、それらのフードや水は、肉厚の厚い後側の突部に突き当たることになる。したがって、ペットがフードや水を突部と口(舌)との間で挟むように飲食する際、突部の肉厚が厚いので挟みやすく、より一層飲食しやすい。
【0014】
一方、前側の中央部分の近傍の突部はその肉厚が薄い(内周壁面の高さ方向の寸法、及び、前記収容部の内周側面からの突出寸法が小さい)ので、突部が形成されていない収容部の前側の中央部分とその近傍の突部との高低差は微少となっている。したがって、例えば収容部に収容したフードや水の分量が多い場合に、前側の中央部分の近傍の突部の上にもフードや水が入ったとしても、ペットが収容部の前側から後側に向かって飲食するに際して、スムーズに飲食できる。
【0015】
また、前記収容部の内周側面において、前記突部が形成された位置の上方が立ち上がり面部とされている場合は、突部を乗り越えたフードや水は、この立ち上がり面部が障壁となってそれらのフードや水が内方に戻される。したがって、周囲にフードや水がこぼれるのをさらに有効に防止することができる。
【0016】
前記収容部の下方に前記収容部を支持する支持部を設けた場合は、食器を安定して支持することができる。したがって、ペットが飲食する場合に食器が安定するため飲食しやすく、また食器内のフードや水がこぼれにくい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ペットが容易に飲食することができ、かつ周囲にフードや水をこぼすことを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のペット用食器の一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】本発明のペット用食器の他の実施形態を示す断面図である。
【
図4】本発明のペット用食器にフードを入れた状態の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1および
図2には、本発明のペット用食器1の一実施形態が示されている。
【0021】
図1は本実施形態の食器1を斜め上方から見た斜視図、
図2は
図1のA-A線断面図である。
【0022】
本発明の食器1を使用するペットとしては、犬、猫の他、小動物など、種々の動物が対象となる。
【0023】
この食器1は、陶器製であって、フードや水(以下、「フード等」という。)を収容する収容部2を備え、収容部2の下方に収容部2を支持する支持部4が設けられたものである。
【0024】
本発明において、食器1の材質としては、陶器に限るものではなく、陶器や磁器の他、プラスチックなどの非金属材料、アルミニウムやステンレスなどの金属材料を用いることができる。
【0025】
収容部2は、全体として滑らかに湾曲した平面視で円形の皿状に形成されている。
【0026】
なお、収容部2の形状としては、円形の他、楕円形など、任意の形状を採用することができる。
【0027】
収容部2は、その前側21が後側22よりも低くなるように傾斜して形成されている。この傾斜角度は、飲食するペットの種類や大きさによって適宜設定され得るが、通常は水平面から5度程度前傾させるのが好ましい。
【0028】
このように収容部2が前傾して形成されているので、収容部2にフード等を入れたとき、収容部2の前側21にフード等が集まる。したがって、ペットが収容部2の前側21からフード等を飲食すれば、低い位置から飲食を開始できるとともに、集まっているフード等から飲食を開始できる。したがって、ペットは飲食しやすい。
【0029】
なお、本明細書において、「前側」とは、食器1を正面視した場合の手前側を意味し、「後側」とは食器1を正面視した場合の奥側のことを意味する。
【0030】
また、収容部2の前側21の中央部分21cを除いた内周側面23には、帯状の突部3が周方向に形成されている。
【0031】
突部3が形成される位置は、収容部2の内周側面23の高さ方向の中央部から若干上側が好ましい。こうすると、突部3の形成位置の下側にフード等を収容する空間を十分に確保できるからである。
【0032】
突部3は、収容部2の前側21から後側22に向かうにしたがって次第に肉厚が厚くなるような三日月状に形成されている。つまり、収容部2の前側21の中央部分21cの近傍の突部31、31の肉厚が最も薄く、収容部2の後側22に向かうにしたがって次第に肉厚が厚くなり、後側22の中央部分22cに位置する突部32の肉厚が、最も厚くなっている。
【0033】
また、突部3は、収容部2の内周側面23に滑らかに連続して形成されている。このように滑らかに連続して形成することにより、フード等が残存することが防止できるとともに、食器1を容易に洗浄することができる。
【0034】
収容部2の前側21の中央部分21cからペットが飲食しはじめると、前側21の中央部分21cに対向する後側22の中央部分22cに向かって多くのフード等が押し出される。そして、この押し出されたフード等は、最大肉厚の突部32およびその近傍の肉厚の突部3に突き当たることになる。
【0035】
一方、前側21の中央部分21cの近傍の突部31,31は、その肉厚が薄いので、
突部3が形成されていない収容部2の前側21の中央部分21cと、この中央部分21cの近傍の突部31、31との高低差は微少となっている。しかも、突部31、31と収容部2の内周側面23とは滑らかに連続している。
【0036】
したがって、例えば収容部2に収容したフード等の分量が多い場合に、前側21の中央部分21cの近傍の突部31、31の上にもフード等が入ったとしても、ペットが収容部2の前側21から後側22に向かって飲食するに際して、スムーズに飲食できる。
【0037】
さらに、収容部2の内周側面23における突部3が形成された位置の上方は、立ち上がり面部24とされている。突部3を乗り越えたフード等は、この立ち上がり面部24が障壁となってそれらのフード等が内方に戻される。したがって、周囲にフード等がこぼれるのをさらに有効に防止することができる。
【0038】
なお、本実施形態の立ち上がり面部24は、収容部2の縁部を構成しており、滑らかに連続して立ち上がるように形成されているが、立ち上がり面部24を内方に立ち上げるように形成してもよい。
【0039】
収容部2の下方には、収容部2を支持する支持部4が形成されている。本実施形態では、支持部4は、環状の支持脚41で形成されている。
【0040】
支持部4には、切欠部(図示せず)を形成してもよい。この場合、切欠部を通して指先を支持部4の裏面側に差し込むことができ、持ち運びが容易となる。
【0041】
さらに、支持部4の下面に、周方向に間隔をおいてゴムなどからなる複数個の滑り止め部材を設けてもよい。この場合、ペットが飲食しているときに食器1が容易に移動することがない。
【0042】
本実施形態では、支持部4は収容部2と一体成形されているが、支持部4と収容部2とを別体としてもよい。また、収容部2の外周側面を被覆するような形状の支持部4であってもよい。
【0043】
このように支持部4を設けることにより、食器1を安定して支持することができる。
【0044】
なお、収容部2の形状・大きさや支持部4の高さは、ペットの種類や大きさ、あるいはフードの種類に応じて、種々の形状や大きさ・高さを採用することができる。例えば、ウェットフード用、ドライフード用、大型の犬猫、小型の犬猫、小動物などに対応して、種々の食器1を提供することができる。
【0045】
さらに、食器1の外周壁にエンボス模様や縞模様、麻の葉模様などの種々の模様を彫刻してもよい。このように模様を彫刻することにより、食事のセッティングの際や食器1を洗浄するときに、食器1が滑って落としてしまうことを防止できる。また、模様を彫刻することに加えて、外周壁を着色あるいは塗り分けてもよく、このようにすることにより、滑りにくくデザイン性に優れた食器1を提供することができる。
【0046】
【0047】
上記で説明した
図2に記載された食器1は、ドライフードに適したタイプの食器1である。一方、
図3に記載された食器1は、ウェットフードに適したタイプの食器1である。
【0048】
図2に記載のドライフード用の食器1は、収容部2の深さが深く、支持部4の高さが低いものとなっている。
【0049】
ドライフードは粒状であり、ウェットフードと比べて体積が大きいため、必要量のドライフードを収容部2に収容した際に、ドライフードが外部にこぼれないようにするため、収容部2を深く設定したものである。
【0050】
図3に記載のウェットフード用の食器1は、収容部2の深さが浅く、支持部4の高さが高いものとなっている。
【0051】
ウェットフードには粘度の低いスープ状のものがあり、ペットは食器1の内部に顔を入れて、そのようなウェットフードを舐めとるようにして食べるため、収容部2の深さが浅いほうが食べやすく、ペットの顔が汚れにくいからである。
【0052】
次に、このように構成された食器1を使用してペットが飲食する場合を
図4および
図5を参照しながら説明する。
【0053】
図4は、食器1にフードFを収容した例を示す斜視図であり、
図5は、
図4の平面図である。
【0054】
まず、食器1を構成する収容部2にフードFを入れ、収容部2の前側21からペットの前に食器1を差し出す。
【0055】
図4、
図5に示すように、食器1にフードFを収容すると、収容部2が前傾しているために、フードFは収容部2の前側21に集まる。したがって、ペットは、フードFが集まっている収容部2の前側21からフードFを食べはじめることができるので、食べやすい。
【0056】
また、収容部2の前側21の中央部分21cを除いた内周側面23に、三日月状の突部3が形成されているので、ペットが収容部2の前側21から後側22に向かってフードFを食べると、フードFが突部3に突き当たる。ペットは、フードFを突部3と口(舌)との間で挟むように食べることができるので、食べやすい。
【0057】
さらに、突部3を乗り越えたフードFは、立ち上がり面部24によって内方に戻されるため、ペットは食べ逃したフードFを再び食べることができる。外にこぼれるフードFは、突部3および立ち上がり面部24でも防ぎきれなかったもののみであるので、外にこぼれるフードFの量は極めて減少することになる。
【0058】
したがって、周囲にフードFがこぼれるのを有効に防止することができる。
【0059】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、前記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって。明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0060】
1 食器
2 収容部
21 収容部の前側
22 収容部の後側
23 内周側面
24 立ち上がり面部
3 突部
4 支持部