(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】色素増感光電池
(51)【国際特許分類】
H01G 9/20 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
H01G9/20 107A
H01G9/20 113A
H01G9/20 107B
H01G9/20 107C
(21)【出願番号】P 2021513321
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 US2019051849
(87)【国際公開番号】W WO2020061266
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-31
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521013482
【氏名又は名称】アンビエント フォトニクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チティバブ, ケティンニ ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ワーナー, ジョン シー.
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-525158(JP,A)
【文献】特開2018-046100(JP,A)
【文献】特開2019-079972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/20
H10K30/15
H10K30/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- カソードと;
- 電解質と;
- 多孔質色素増感二酸化チタン膜層と;
- アノードと
を備える色素増感光電池であって、
前記電解質が、
(a)有機銅(I)塩および有機銅(II)塩を含むレドックス対
、および(b)スルホラン、ジアルキルスルホン、アルコキシプロピオニトリル、環式カーボネート、非環式カーボネート、ラクトン、イオン性液体、およびこれらの溶媒の二元、三元、および四元混合物からなる群から選択される2種またはそれより多くの溶媒を含
む、色素増感光電池。
【請求項2】
前記有機銅(I)塩および有機銅(II)塩が、対イオンを有する二座および多座有機配位子を含む銅錯体である、請求項1に記載の色素増感光電池。
【請求項3】
前記二座有機配位子が、6,6’-ジアルキル-2,2’-ビピリジン;4,4’,6,6’-テトラアルキル-2,2’-ビピリジン;2,9-ジアルキル-1,10-フェナ
ントロリン;1,10-フェナ
ントロ
リン;および2,2’-ビピリジンからなる群から選択される、請求項2に記載の色素増感光電池。
【請求項4】
前記対イオンが、ビス(トリフルオロスルホン)イミド、ヘキサフルオロホスフェート、またはテトラフルオロボレートである、請求項2に記載の色素増感光電池。
【請求項5】
有機銅(I)塩の有機銅(II)塩に対する比が、
6:1~
10:1である、請求項1に記載の色素増感光電池。
【請求項6】
前記レドックス対が、1つより多い配位子を有する銅錯体を含む、請求項1に記載の色素増感光電池。
【請求項7】
前記レドックス対が、6,6’-ジアルキル-2,2’-ビピリジンを有する銅(I)錯体、ならびに6,6’-ジアルキル-2,2’-ビピリジン;4,4’,6,6’-テトラアルキル-2,2’-ビピリジン;2,9-ジアルキル-1,10-フェナ
ントロリン;1,10-フェナ
ントロ
リン;および2,2’-ビピリジンからなる群から選択される二座有機配位子を有する銅(II)錯体を含む、請求項6に記載の色素増感光電池。
【請求項8】
前記レドックス対が、2,9-ジアルキル-1,10-フェナトロリンを有する銅(I)錯体、ならびに6,6’-ジアルキル-2,2’-ビピリジン;4,4’,6,6’-テトラアルキル-2,2’-ビピリジン;2,9-ジアルキル-1,10-フェナ
ントロリン;1,10-フェナ
ントロ
リン;および2,2’-ビピリジンからなる群から選択される二座有機配位子を有する銅(II)錯体を含む、請求項6に記載の色素増感光電池。
【請求項9】
前記電解質が、少なくとも50%のスルホランまたはジアルキルスルホンを含む、請求項1に記載の色素増感光電池。
【請求項10】
前記電解質が、50%までの3-アルコキシプロピオニトリル、環式および非環式ラクトン、環式および非環式カーボネート、低粘度イオン性液体、またはそれらの二元/三元/四元混合物を含む、請求項1に記載の色素増感光電池。
【請求項11】
前記電解質が、添加物として0.6MまでのN-メチルベンズイミダゾールおよび0.1Mまでのリチウムビス(トリフルオロスルホン)イミドを含む、請求項1に記載の色素増感光電池。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
画像化デバイス、メモリ、センサおよび光電池における金属酸化物等の半導体固体の増感は、エネルギー変換の効果的な手段として役立ち得る。これらのデバイスは、光に対して透明であるが、増感剤の使用により所望のスペクトルに対して増感され得る二酸化チタン等の金属酸化物を使用し、増感剤は、光エネルギーを吸収し、それを電力または電気信号に変換する。この増感は、励起状態の色素増感剤から金属酸化物への電荷注入を介して生じる。遷移金属錯体、無機コロイドおよび有機色素分子等の増感剤が使用される。
【0002】
そのような技術のうち、色素増感金属酸化物光電池(DSPC)が際立っている。DSPCは、色素を使用して光を吸収し、TiO2等のナノ構造化酸化物への急速な電子移動を開始する。TiO2のメゾスコピック構造は、数ミクロンの活性層の厚さを有する厚いナノ多孔質膜の構築を可能にする。次いで、色素は、メソ多孔質TiO2の広い表面積上に吸着される。ヨウ化物/三ヨウ化物、Co(II)/Co(III)錯体、およびCu(I)/Cu(II)錯体等のレドックス対を有する層により、電荷平衡および輸送が達成される。
【0003】
遷移金属錯体をベースとする色素は、Gratzelら、米国特許第4,927,721号および米国特許第5,350,644号に開示されている。これらの色素材料は、吸収性の増感層が形成され得る高表面積を有するメソ多孔質金属酸化物上に配置される。これは、電池に高い光吸収性をもたらす。Ru(II)(2,2’-ビピリジル4,4’ジカルボキシレート)2(NCS)2等の色素は、効率的な増感剤であることが判明しており、化合物の外縁のカルボキシルまたはホスホネート基を介して金属酸化物固体に結合させることができる。しかしながら、遷移金属ルテニウム錯体が増感剤して使用される場合、それらは、十分な出力変換効率を達成するのに十分な放射線を吸収するために、10マイクロメートルもの厚さの、またはそれより厚い被膜としてメソ多孔質金属酸化物層に付与(apply)されなければならない。さらに、ルテニウム錯体は高価である。加えて、そのような色素は、水分散性ではないため、揮発性有機溶媒、共溶媒および希釈剤を使用して付与されなければならない。揮発性有機化合物(VOC)は、環境および人間の健康に影響し得る重大な汚染物質である。VOCは通常、急性毒性を有さないが、慢性的な健康および環境への影響を有し得る。このため、世界中の政府がVOCのレベルを低減しようとしている。
【0004】
色素増感光電池の1つの種類は、グレッツェル電池として公知である。Hamann et al. (2008), "Advancing beyond current generation dye-sensitized solar cells," Energy Environ. Sci.1:66-78(この開示は、参照によりその全体が組み込まれる)は、グレッツェル電池を説明している。グレッツェル電池は、光電池の光アノードとして機能する結晶性二酸化チタンナノ粒子を含む。二酸化チタンは、感光性色素でコーティングされる。二酸化チタン光アノードは、12μmの透明膜を形成する直径10~20nmの二酸化チタン粒子を含む。12μmの二酸化チタン膜は、直径10~20nmの二酸化チタン粒子を、それらが高表面積を有するように焼結することにより作製される。二酸化チタン光アノードはまた、約400nmの直径を有する二酸化チタン粒子の4μmの膜を含む。コーティングされた二酸化チタン膜は、2つの透明導電性酸化物(TCO)電極の間に位置する。また、2つのTCO電極の間には、レドックスシャトルを有する電解質が配置されている。
【0005】
グレッツェル電池は、まず上部分を構築することにより作製され得る。上部分は、通常はガラスである透明板上に、フッ素ドープ二酸化スズ(SnO2F)を堆積させることにより構築され得る。導電性コーティングを有する透明板上に、二酸化チタン(TiO2)の薄層が堆積される。次いで、TiO2でコーティングされた板を、溶液中のルテニウム-ポリピリジン色素等の光増感色素に浸漬する。色素の薄層は、二酸化チタンの表面に共有結合する。グレッツェル電池の下部分は、白金金属でコーティングされた導電性板から作製される。次いで、上部分および下部分が接合およびシールされる。次いで、ヨウ化物-三ヨウ化物等の電解質が、典型的にはグレッツェル電池の上部分と下部分との間に挿入される。
【0006】
典型的には、DSPC用の薄膜は、単一の金属酸化物、通常は二酸化チタンで構成され、これは、ナノ粒子に加えて、より大きい200~400nmスケールの粒子の形態で、またはチタンアルコキシド溶液からin situで形成される分散ナノ粒子として利用され得る。一実施形態では、本出願は、複数の形態の酸化チタンおよび他の金属酸化物の使用を開示しており、これらは、単一金属酸化物系に勝る効率の増強を提供する。用いられ得る追加的な金属酸化物は、これらに限定されないが、アルファ酸化アルミニウム、ガンマ酸化アルミニウム、フュームドシリカ、シリカ、珪藻土、チタン酸アルミニウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウムおよびチタン酸鉄、ならびにそれらの混合物を含む。これらの材料は、従来の酸化チタン薄膜、または薄膜色素増感光電池システムと併せて利用され得る。
【0007】
動作中、色素は日光を吸収し、これにより色素分子が励起されて電子を二酸化チタンに伝達する。二酸化チタンはエネルギーを得た電子を受容し、電子は第1のTCO電極に移動する。同時に、第2のTCO電極は対電極として機能し、これはヨウ化物-三ヨウ化物(I3-/I-)等のレドックス対を使用して色素を再生する。色素分子がその元の状態まで還元されない場合、酸化色素分子は分解する。色素増感光電池が動作寿命において多くの酸化-還元サイクルを受けると、経時的に次第に多くの色素分子が分解し、電池エネルギー変換効率が減少する。
Hattoriら(Hattori, S., et al. (2005) "Blue copper model complexes with distorted tetragonal geometry acting as effective electron-transfer mediators in dye-sensitized photovoltaic cells. J. Am.Chem. Soc., 127: 9648-9654)は、ルテニウムベース色素を使用したDSPCに銅(I/II)レドックス対を使用したが、得られる効率は非常に低かった。Peng Wangらは、有機色素を使用して銅レドックスベース色素DSPCの性能を改善した(Bai, Y., et al. (2011) Chem. Commun., 47: 4376-4378)。そのような電池から生成された電圧は、いかなるヨウ化物/三ヨウ化物ベースレドックス対により生成された電圧をもはるかに超えていた。
一般に、色素増感光電池には、白金、グラフェンまたはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン(ethyelenedioxythiophene))(「PEDOT」)が使用される。白金は、400℃を超える温度でのヘキサクロロ白金酸の熱分解、またはスパッタリングにより堆積される。PEDOTは、一般に、3,4-エチレンジオキシチオフェン(「EDOT」)の電気化学重合により堆積されるが、これは、カソード材料として使用される高抵抗基板に起因して均一性の問題をもたらす。グラフェン材料は、一般に、グラフェン材料含有溶液または懸濁液からのスピンコーティングにより堆積される。グラフェン材料はPEDOTおよび白金より良好に機能するが、グラフェンを基板に結合することが困難であって、剥離問題を引き起こすことが多い。さらに、スピンコーティングからの堆積は、グラフェン分子間の凝集力の欠如に起因して不均一な膜をもたらすことが多い。PEDOTの電気化学堆積は、より小型のデバイスには適正となり得るが、より大型のデバイスには不適切である。基板サイズが増加すると、抵抗損による長さにわたる電流低下に起因して均一性問題が生じる(重合反応速度論は、所与の時間における電流に依存する)。これは、R2R製造に理想的な方法ではない。商業的供給源から入手可能な化学重合PEDOT/PSS溶液は、多くの場合、電子デバイス用途に使用される。この材料は極めて水溶性であって、その結果、この溶液を使用して製造されたデバイスは、カソードからの解離に起因して、またデバイスの透明導電性電極を劣化させる酸性度に起因して、有効寿命の減少が問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第4,927,721号明細書
【文献】米国特許第5,350,644号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】Hamann et al. (2008), "Advancing beyond current generation dye-sensitized solar cells," Energy Environ. Sci.1:66-78
【文献】Hattoriら(Hattori, S., et al. (2005) "Blue copper model complexes with distorted tetragonal geometry acting as effective electron-transfer mediators in dye-sensitized photovoltaic cells. J. Am.Chem. Soc., 127: 9648-9654
【文献】Bai, Y., et al. (2011) Chem. Commun., 47: 4376-4378
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
要旨
本明細書において、1sunおよび室内光照射条件下での色素増感光電池の性能を改善する、印刷可能で非腐食性の非多孔質正孔阻止層配合物が提供される。非多孔質正孔阻止層は、電極(アノード)とナノ多孔質TiO2膜との間に導入される。非多孔質正孔阻止層は、電解質中のレドックス種と電極との間の逆電子移動を低減/阻害する。また、無害な材料(チタンアルコキシド、ポリマーチタンアルコキシド、他の有機チタン化合物)を用いて、高速ロールでコーティングされ得る非多孔質正孔阻止層を導入するための方法が提供される。
【0011】
また、本明細書において、色素増感光電池における使用のための極めて安定な電解質配合物が提供される。これらの電解質は、高沸点溶媒を用いて、アセトニトリル等の低沸点ニトリル溶媒を使用する先行技術のアセトニトリルベース電解質と比較して予想外にも優れた結果を提供する。これらの電解質配合物は、安定な室内光捕集光電池の製造に重要である。これらの光電池の性能は、室内光曝露下(50~5000ルクス)において以前の最善の光電池(ヒ化ガリウムベース)の性能を超える。
【0012】
また、本明細書において、レドックス電解質ベース色素増感光電池用の複合触媒薄層を堆積させるための化学的に重合可能な配合物が提供される。配合物は、カソード上への複合触媒層のR2R印刷(コーティング、高速化学重合、触媒材料のメタノールによる洗浄を含む)を可能にする。in situ化学重合プロセスは、非常に均一な薄膜を形成し、これは、直列接続された光電池モジュールにおけるあらゆる電池からの均一な性能を達成するために不可欠である。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
- カソードと;
- 電解質と;
- 多孔質色素増感二酸化チタン膜層と;
- アノードと;
- 前記アノードと前記色素増感二酸化チタン膜層との間に挿入された非多孔質正孔阻止層と
を備える、色素増感光電池。
(項目2)
前記非多孔質正孔阻止層が、有機チタン化合物を含む、項目1に記載の色素増感光電池。
(項目3)
前記有機チタン化合物が、チタンアルコキシドである、項目2に記載の色素増感光電池。
(項目4)
前記チタンアルコキシドが、ポリマーチタンアルコキシドである、項目3に記載の色素増感光電池。
(項目5)
前記ポリマーチタンアルコキシドが、ポリ(n-ブチルチタネート)である、項目4に記載の色素増感光電池。
(項目6)
前記非多孔質正孔阻止層が、アナターゼを含む、項目1に記載の色素増感光電池。
(項目7)
前記非多孔質正孔阻止層の厚さが、20~100nmである、項目1に記載の色素増感光電池。
(項目8)
前記アノードが、透明導電性酸化物(TCO)コーティングガラス、TCOコーティング透明プラスチック基板、または薄い金属箔を含む、項目1に記載の色素増感光電池。
(項目9)
前記透明導電性酸化物が、フッ素ドープ酸化スズ、インジウムドープ酸化スズ、またはアルミニウムドープ酸化スズである、項目8に記載の色素増感光電池。
(項目10)
前記透明プラスチック基板が、PETまたはPENを含む、項目8に記載の色素増感光電池。
(項目11)
項目1に記載の色素増感光電池を調製する方法であって、非多孔質阻止層をアノードに付与するステップを含む、方法。
(項目12)
前記非多孔質阻止層が、ポリマーチタンアルコキシドを含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記ポリマーチタンアルコキシドが、ポリ(n-ブチルチタネート)である、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記非多孔質阻止層が、グラビア、シルクスクリーン、スロット、スピン、スプレーまたはブレードコーティングを使用して前記アノードに付与される、項目11に記載の方法。
(項目15)
前記カソード上に複合触媒層を形成するステップをさらに含む、項目11に記載の方法。
(項目16)
前記触媒層が、グラフェンと、ポリチオフェン、ポリピロール、およびポリアニリンからなる群から選択される1種または複数種のポリマーとの混合物を含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記ポリチオフェンが、PEDOTである、項目16に記載の方法。
(項目18)
グラフェンのPEDOTに対する比が、0.5:10~2:10である、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記PEDOTが、前記カソード上への堆積の前に形成される、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記グラフェン/PEDOTが、
電極上にグラフェンを堆積させてグラフェン層を形成するステップと;
前記グラフェン層上に前記ポリマーを電着するステップと
により形成される、項目18に記載の方法。
(項目21)
- カソードと;
- 電解質と;
- 多孔質色素増感二酸化チタン膜層と;
- アノードと
を備える色素増感光電池であって、
前記電解質が、有機銅(I)塩および有機銅(II)塩を含むレドックス対を含み、有機銅(I)塩の有機銅(II)塩に対する比が、約4:1~約12:1である、色素増感光電池。
(項目22)
前記有機銅(I)塩および有機銅(II)塩が、対イオンを有する二座および多座有機配位子を含む銅錯体である、項目21に記載の色素増感光電池。
(項目23)
前記二座有機配位子が、6,6’-ジアルキル-2,2’-ビピリジン;4,4’,6,6’-テトラアルキル-2,2’-ビピリジン;2,9-ジアルキル-1,10-フェナトロリン;1,10-フェナトロイン;および2,2’-ビピリジンからなる群から選択される、項目22に記載の色素増感光電池。
(項目24)
前記対イオンが、ビス(トリフルオロスルホン)イミド、ヘキサフルオロホスフェート、またはテトラフルオロボレートである、項目22に記載の色素増感光電池。
(項目25)
有機銅(I)塩の有機銅(II)塩に対する比が、約6:1~約10:1である、項目21に記載の色素増感光電池。
(項目26)
前記レドックス対が、1つより多い配位子を有する銅錯体を含む、項目21に記載の色素増感光電池。
(項目27)
前記レドックス対が、6,6’-ジアルキル-2,2’-ビピリジンを有する銅(I)錯体、ならびに6,6’-ジアルキル-2,2’-ビピリジン;4,4’,6,6’-テトラアルキル-2,2’-ビピリジン;2,9-ジアルキル-1,10-フェナトロリン;1,10-フェナトロイン;および2,2’-ビピリジンからなる群から選択される二座有機配位子を有する銅(II)錯体を含む、項目26に記載の色素増感光電池。
(項目28)
前記レドックス対が、2,9-ジアルキル-1,10-フェナトロリンを有する銅(I)錯体、ならびに6,6’-ジアルキル-2,2’-ビピリジン;4,4’,6,6’-テトラアルキル-2,2’-ビピリジン;2,9-ジアルキル-1,10-フェナトロリン;1,10-フェナトロイン;および2,2’-ビピリジンからなる群から選択される二座有機配位子を有する銅(II)錯体を含む、項目26に記載の色素増感光電池。
(項目29)
- カソードと;
- 電解質と;
- 多孔質色素増感二酸化チタン膜層と;
- アノードと
を備える色素増感光電池であって、
前記電解質が、スルホラン、ジアルキルスルホン、アルコキシプロピオニトリル、環式カーボネート、非環式カーボネート、環式ラクトン、非環式ラクトン、低粘度イオン性液体、およびこれらの溶媒の二元/三元/四元混合物からなる群から選択される2種またはそれより多くの溶媒を含む、色素増感光電池。
(項目30)
前記電解質が、少なくとも50%のスルホランまたはジアルキルスルホンを含む、項目29に記載の色素増感光電池。
(項目31)
前記電解質が、50%までの3-アルコキシプロピオニトリル、環式および非環式ラクトン、環式および非環式カーボネート、低粘度イオン性液体、またはそれらの二元/三元/四元混合物を含む、項目29に記載の色素増感光電池。
(項目32)
前記電解質が、添加物として0.6MまでのN-メチルベンズイミダゾールおよび0.1Mまでのリチウムビス(トリフルオロスルホン)イミドを含む、項目29に記載の色素増感光電池。
(項目33)
- カソードと;
- 電解質と;
- 多孔質色素増感二酸化チタン膜層と;
- アノードと;
- 前記カソード上に配置されたカソード触媒であって、2D導体および電子伝導性ポリマーを含むカソード触媒と
を備える色素増感光電池。
(項目34)
前記2D導体が、グラフェンまたは硫化モリブデンを含む、項目33に記載の色素増感光電池。
(項目35)
前記グラフェンが、分子層またはナノ/マイクロ結晶を含む、項目34に記載の色素増感光電池。
(項目36)
前記グラフェンが、還元された酸化グラフェンから得られる、項目34に記載の色素増感光電池。
(項目37)
前記伝導性ポリマーが、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、およびそれらの誘導体を含む、項目33に記載の色素増感光電池。
(項目38)
前記ポリチオフェンが、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(「PEDOT」)である、項目37に記載の色素増感光電池。
(項目39)
項目38に記載の色素増感光電池を製造する方法であって、モノマーの3,4-エチレンジオキシチオフェン(「EDOT」)からカソード上でPEDOTを重合させるステップを含む、方法。
(項目40)
前記PEDOTが、化学重合または電気化学重合により前記カソード上で重合される、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記PEDOTが、触媒としてトシル酸第二鉄または塩化第二鉄を使用して前記カソード上で重合される、項目40に記載の方法。
(項目42)
EDOTの塩化第二鉄に対する比が、約1:3~約1:4である、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記EDOTが、化学重合の前にグラフェンと混合される、項目39に記載の方法。
(項目44)
前記EDOT/グラフェン/第二鉄触媒が、スピン、グラビア、ブレードまたはスロットコーティング技術を使用してn-ブタノールから前記カソード上に堆積され、基板上で重合される、項目43に記載の方法。
(項目45)
色素増感光電池のカソード上に複合触媒層を形成するための方法であって、ポリチオフェン、ポリピロール、およびポリアニリンからなる群から選択される1種または複数種の伝導性ポリマーとの複合グラフェン材料を形成するステップを含む、方法。
(項目46)
グラフェンの伝導性ポリマーに対する比が、0.5:10~2:10である、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記ポリチオフェンが、PEDOTである、項目45に記載の方法。
(項目48)
前記ポリマーおよびグラフェンが、前記カソード上への堆積の前に重合される、項目45に記載の方法。
(項目49)
複合材料が、
前記カソード上にグラフェンを堆積させてグラフェン層を形成するステップと;
前記グラフェン層上に前記ポリマーを電着するステップと
により形成される、項目45に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本明細書に記載の色素増感光電池の全体構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義
本明細書において別段に指定されない限り、使用される用語の定義は、有機化学の分野において使用される標準的な定義である。例示的な実施形態、態様および変形が図および図面において示されており、本明細書において開示される実施形態、態様および変形、ならびに図および図面は例示的であって、限定的ではないと解釈されるべきであることが意図される。
【0015】
本明細書において特定の実施形態が示され説明されているが、そのような実施形態は例示のみを目的として提供されることが当業者には明らかである。ここで、当業者は、多くの変形、変更、および置換を思い付くだろう。本明細書に記載の実施形態の様々な代替が、本明細書に記載の方法の実践において用いられ得ることが理解されるべきである。添付の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義し、またこれらの特許請求の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの均等物がそれにより包含されることが意図される。
【0016】
別段に定義されていない限り、本明細書において使用されているすべての技術的および科学的用語は、当業者により一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書において言及されるすべての特許および出版物は、参照により組み込まれる。
【0017】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、文脈上異なる定義が明示されていない限り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は複数の指示対象も含む。
【0018】
本明細書において使用される略語および頭字語:
ACN - アセトニトリル。
DSPC - 色素増感光電池。
DI - 脱イオン。
EDOT - 3,4-エチレンジオキシチオフェン。
FF - 曲線因子。
FTO - フッ化物ドープ酸化スズ。
GBL - ガンマ-ブチロラクトン。
JSC - 短絡電流密度。
MPN - 3-メトキシプロピオニトリル
PEDOT - ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)
PEN - ポリエチレンナフタレート
PET - ポリエチレンテレフタレート
PSS - ポリ(4-スチレンスルホン酸)
SDS - ドデシル硫酸ナトリウム。
TBHFP - テトラ-n-ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート。
VOC - 開路電圧。
VOC - 揮発性有機化合物。
【0019】
「グラフェン」は、六方格子で配列した炭素原子の単一層からなる炭素の同素体である。
【0020】
光電池における「正孔阻止」層は、カソードとアノードとの間に配置された非多孔質層であって、電解質からアノードへの電子の逆移動を低減および/または阻害する。
【0021】
本明細書に記載の色素増感光電池は、
- カソードと;
- 電解質と;
- 多孔質色素増感二酸化チタン膜と;
- アノードと
を備える。
【0022】
また、本明細書において、アノードと色素増感二酸化チタン膜との間に挿入された非多孔質正孔阻止層を備える色素増感光電池が提供される。非多孔質「正孔阻止」層は、チタンアルコキシド等の有機チタン化合物を含み得る。有機チタン化合物は、ポリマーであってもよく、例えばポリマーチタンアルコキシドであってもよい。例示的なポリマーチタンアルコキシドは、ポリ(n-ブチルチタネート)である。非多孔質または圧密正孔阻止層はまた、酸化物の形態のチタン、例えば圧密アナターゼまたはルチル膜を含み得る。正孔阻止層の厚さは、約20nm~約100nmであってもよい。
【0023】
アノードは、透明導電性酸化物(TCO)コーティングガラス、TCOコーティング透明プラスチック基板、または薄い金属箔を含み得る。例示的な透明導電性酸化物は、フッ素ドープ酸化スズ、インジウムドープ酸化スズ、およびアルミニウムドープ酸化スズを含む。例示的な透明プラスチック基板は、PETまたはPENを含み得る。
【0024】
また、本明細書において、上述の色素増感光電池を調製する方法であって、非多孔質阻止層をアノード上に付与するステップを含む、方法が提供される。非多孔質阻止層は、当技術分野において公知の技術、例えばグラビア、シルクスクリーン、スロット、スピンまたはブレードコーティングを使用してアノードに付与され得る。
【0025】
本明細書に記載の色素増感光電池は、電解質を備える。一部の実施形態では、電解質は、レドックス対を含み得る。一部の実施形態では、レドックス対は、有機銅(I)塩および有機銅(II)塩を含む。好適な有機銅塩は、対イオンを有する二座および多座有機配位子を含む銅錯体を含む。好適な二座有機配位子は、これらに限定されないが、6,6’-ジアルキル-2,2’-ビピリジン;4,4’,6,6’-テトラアルキル(tetralkyl)-2,2’-ビピリジン;2,9-ジアルキル-1,10-フェナトロリン(phenathroline);1,10-フェナトロイン(phenathroine);および2,2’-ビピリジンを含む。好適な対イオンは、これらに限定されないが、ビス(トリフルオロスルホン)イミド、ヘキサフルオロホスフェート、およびテトラフルオロボレートを含む。有機銅(I)塩の有機銅(II)塩に対する比は、約4:1~約12:1であってもよい。代替として、有機銅(I)塩の有機銅(II)塩に対する比は、約6:1~約10:1であってもよい。
【0026】
レドックス対は、1つより多い配位子を有する銅錯体を含み得る。例えば、レドックス対は、6,6’-ジアルキル-2,2’-ビピリジンを有する銅(I)錯体、ならびに6,6’-ジアルキル-2,2’-ビピリジン;4,4’,6,6’-テトラアルキル-2,2’-ビピリジン;2,9-ジアルキル-1,10-フェナトロリン;1,10-フェナトロイン;および2,2’-ビピリジンからなる群から選択される二座有機配位子を有する銅(II)錯体を含み得る。代替として、レドックス対は、2,9-ジアルキル-1,10-フェナトロリンを有する銅(I)錯体、ならびに6,6’-ジアルキル-2,2’-ビピリジン;4,4’,6,6’-テトラアルキル-2,2’-ビピリジン;2,9-ジアルキル-1,10-フェナトロリン;1,10-フェナトロイン;および2,2’-ビピリジンからなる群から選択される二座有機配位子を有する銅(II)錯体を含み得る。
【0027】
本明細書に記載の色素増感光電池は、2種またはそれより多くの溶媒を含み得る電解質を備える。好適な溶媒は、これらに限定されないが、スルホラン、ジアルキルスルホン、アルコキシプロピオニトリル、環式カーボネート、非環式カーボネート、環式ラクトン、非環式ラクトン、低粘度イオン性液体およびこれらの溶媒の二元/三元/四元混合物を含む。例示的な実施形態では、電解質は、少なくとも50%のスルホランまたはジアルキルスルホンを含む。代替として、電解質は、約50%までの3-アルコキシプロピオニトリル、環式および非環式ラクトン、環式および非環式カーボネート、低粘度イオン性液体、またはそれらの二元/三元/四元混合物を含み得る。電解質はまた、添加物として約0.6MまでのN-メチルベンズイミダゾールおよび約0.2Mまでのリチウムビス(トリフルオロスルホン)イミドを含み得る。
【0028】
一部の実施形態では、本明細書に記載の色素増感光電池は、カソード上に配置されたカソード触媒をさらに備える。好適なカソード触媒は、2D導体および電子伝導性ポリマーの混合物を含み得る。「2D導体」は、原子スケールの厚さを有する分子半導体である。例示的な2D導体は、グラフェン、遷移金属ジカルコゲニド(例えば二硫化もしくは二セレン化モリブデン)、または六方晶窒化ホウ素を含む。本明細書に記載のカソード触媒における使用のために、グラフェンは、分子層またはナノ/マイクロ結晶を含み得る。グラフェンは、還元された酸化グラフェンから得ることができる。好適な伝導性ポリマーは、これらに限定されないが、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、およびそれらの誘導体を含む。本明細書に記載の光電池における使用のための例示的なポリチオフェンは、PEDOTである。
【0029】
一代替的実施形態では、本出願は、カソードと;電解質と;多孔質色素増感二酸化チタン膜層と;アノードと;アノードと色素増感二酸化チタン膜層との間に挿入された非多孔質正孔阻止層とを備える色素増感光電池であって、電解質が、有機銅(I)塩および有機銅(II)塩を含むレドックス対を含み、有機銅(I)塩の有機銅(II)塩に対する比が、約4:1~約12:1である、色素増感光電池を提供する。
【0030】
別の代替的実施形態では、本出願は、カソードと;電解質と;多孔質色素増感二酸化チタン膜層と;アノードと;アノードと色素増感二酸化チタン膜層との間に挿入された非多孔質正孔阻止層とを備える色素増感光電池であって、電解質が、スルホラン、ジアルキルスルホン、アルコキシプロピオニトリル、環式カーボネート、非環式カーボネート、環式ラクトン、非環式ラクトン、低粘度イオン性液体、およびこれらの溶媒の二元/三元/四元混合物からなる群から選択される2種またはそれより多くの溶媒を含む、色素増感光電池を提供する。
【0031】
別の代替的実施形態では、本出願は、カソードと;カソード上に配置されたカソード触媒であって、2D導体および電子伝導性ポリマーを含むカソード触媒と;電解質と;多孔質色素増感二酸化チタン膜層と;アノードと;アノードと色素増感二酸化チタン膜層との間に挿入された非多孔質正孔阻止層とを備える色素増感光電池を提供する。
【0032】
別の代替的実施形態では、本出願は、カソードと;電解質と;多孔質色素増感二酸化チタン膜層と;アノードとを備える色素増感光電池であって、電解質が、有機銅(I)塩および有機銅(II)塩を含むレドックス対を含み、有機銅(I)塩の有機銅(II)塩に対する比が、約4:1~約12:1であり;電解質が、スルホラン、ジアルキルスルホン、アルコキシプロピオニトリル、環式カーボネート、非環式カーボネート、環式ラクトン、非環式ラクトン、低粘度イオン性液体、およびこれらの溶媒の二元/三元/四元混合物からなる群から選択される2種またはそれより多くの溶媒を含む、色素増感光電池を提供する。
【0033】
別の代替的実施形態では、本出願は、カソードと;カソード上に配置されたカソード触媒であって、2D導体および電子伝導性ポリマーを含むカソード触媒と;電解質と;多孔質色素増感二酸化チタン膜層と;アノードとを備える色素増感光電池であって、電解質が、有機銅(I)塩および有機銅(II)塩を含むレドックス対を含み、有機銅(I)塩の有機銅(II)塩に対する比が、約4:1~約12:1である、色素増感光電池を提供する。
【0034】
別の代替的実施形態では、本出願は、カソードと;カソード上に配置されたカソード触媒であって、2D導体および電子伝導性ポリマーを含むカソード触媒と;電解質と;多孔質色素増感二酸化チタン膜層と;アノードとを備える色素増感光電池であって、電解質が、スルホラン、ジアルキルスルホン、アルコキシプロピオニトリル、環式カーボネート、非環式カーボネート、環式ラクトン、非環式ラクトン、低粘度イオン性液体、およびこれらの溶媒の二元/三元/四元混合物からなる群から選択される2種またはそれより多くの溶媒を含む、色素増感光電池を提供する。
【0035】
別の代替的実施形態では、本出願は、カソードと;電解質と;多孔質色素増感二酸化チタン膜層と;アノードと;アノードと色素増感二酸化チタン膜層との間に挿入された非多孔質正孔阻止層とを備える色素増感光電池であって、電解質が、有機銅(I)塩および有機銅(II)塩を含むレドックス対を含み、有機銅(I)塩の有機銅(II)塩に対する比が、約4:1~約12:1であり;電解質が、スルホラン、ジアルキルスルホン、アルコキシプロピオニトリル、環式カーボネート、非環式カーボネート、環式ラクトン、非環式ラクトン、低粘度イオン性液体、およびこれらの溶媒の二元/三元/四元混合物からなる群から選択される2種またはそれより多くの溶媒を含む、色素増感光電池を提供する。
【0036】
別の代替的実施形態では、本出願は、カソードと;カソード上に配置されたカソード触媒であって、2D導体および電子伝導性ポリマーを含むカソード触媒と;電解質と;多孔質色素増感二酸化チタン膜層と;アノードと;アノードと色素増感二酸化チタン膜層との間に挿入された非多孔質正孔阻止層とを備える色素増感光電池であって、電解質が、有機銅(I)塩および有機銅(II)塩を含むレドックス対を含み、有機銅(I)塩の有機銅(II)塩に対する比が、約4:1~約12:1である、色素増感光電池を提供する。
【0037】
別の代替的実施形態では、本出願は、カソードと;カソード上に配置されたカソード触媒であって、2D導体および電子伝導性ポリマーを含むカソード触媒と;電解質と;多孔質色素増感二酸化チタン膜層と;アノードと;アノードと色素増感二酸化チタン膜層との間に挿入された非多孔質正孔阻止層とを備える色素増感光電池であって、電解質が、スルホラン、ジアルキルスルホン、アルコキシプロピオニトリル、環式カーボネート、非環式カーボネート、環式ラクトン、非環式ラクトン、低粘度イオン性液体、およびこれらの溶媒の二元/三元/四元混合物からなる群から選択される2種またはそれより多くの溶媒を含む、色素増感光電池を提供する。
【0038】
別の代替的実施形態では、本出願は、カソードと;カソード上に配置されたカソード触媒であって、2D導体および電子伝導性ポリマーを含むカソード触媒と;電解質と;多孔質色素増感二酸化チタン膜層と;アノードとを備える色素増感光電池であって、電解質が、有機銅(I)塩および有機銅(II)塩を含むレドックス対を含み、有機銅(I)塩の有機銅(II)塩に対する比が、約4:1~約12:1であり;電解質が、スルホラン、ジアルキルスルホン、アルコキシプロピオニトリル、環式カーボネート、非環式カーボネート、環式ラクトン、非環式ラクトン、低粘度イオン性液体、およびこれらの溶媒の二元/三元/四元混合物からなる群から選択される2種またはそれより多くの溶媒を含む、色素増感光電池を提供する。
【0039】
別の代替的実施形態では、本出願は、カソードと;カソード上に配置されたカソード触媒であって、2D導体および電子伝導性ポリマーを含むカソード触媒と;電解質と;多孔質色素増感二酸化チタン膜層と;アノードと;アノードと色素増感二酸化チタン膜層との間に挿入された非多孔質正孔阻止層とを備える色素増感光電池であって、電解質が、有機銅(I)塩および有機銅(II)塩を含むレドックス対を含み、有機銅(I)塩の有機銅(II)塩に対する比が、約4:1~約12:1であり;電解質が、スルホラン、ジアルキルスルホン、アルコキシプロピオニトリル、環式カーボネート、非環式カーボネート、環式ラクトン、非環式ラクトン、低粘度イオン性液体、およびこれらの溶媒の二元/三元/四元混合物からなる群から選択される2種またはそれより多くの溶媒を含む、色素増感光電池を提供する。
【0040】
また、本明細書において、請求項に記載の光電池を製造する方法であって、モノマーのEDOTからカソード上でPEDOTを重合させるステップを含む、方法が提供される。PEDOTは、化学重合または電気化学重合によりカソード上で重合され得る。PEDOTは、触媒としてトシル酸第二鉄または塩化第二鉄を使用してカソード上で重合され得る。EDOTの塩化第二鉄に対する比は、約1:3~約1:4であってもよい。一実施形態では、EDOTは、化学重合の前にグラフェンと混合される。EDOT/グラフェン/第二鉄触媒は、スピン、グラビア、ブレードまたはスロットコーティング技術を使用してn-ブタノールからカソード上に堆積され、基板上で重合され得る。
【0041】
また、本明細書において、色素増感光電池のカソード上に複合触媒層を形成するための方法であって、1種または複数種の伝導性ポリマーとの複合グラフェン材料を形成するステップを含む、方法が提供される。好適な伝導性ポリマーは、これらに限定されないが、ポリチオフェン、ポリピロール、およびポリアニリンを含む。グラフェンの伝導性ポリマーに対する比は、約0.5:10~約2:10であってもよい。この方法における使用に好適なポリチオフェンは、PEDOTである。この方法の一代替的実施形態では、ポリマーおよびグラフェンは、カソード上への堆積の前に重合される。複合材料は、電極上にグラフェンを堆積させてグラフェン層を形成するステップと;グラフェン層上にポリマーを電着するステップとにより形成され得る。
【実施例】
【0042】
(実施例1)
阻止層
n-ブタノール中0.1~1%のTyzor(商標)ポリ(n-ブチルチタネート)溶液を使用して、スピンまたはブレードコーティング技術によりフッ素ドープ酸化スズ(FTO)コーティングガラス上に阻止層を付与した。20重量%のTiO2(21±5nmの粒径を有するDegussa P25)および5重量%のポリ(4-ビニルピリジン)を含有する水性分散液を調製し、ブレードコーティング技術を使用して、阻止層を有する、および有さない調製された電極上に付与した。TiO2層の厚さは、約6ミクロンであった。TiO2コーティングを500℃で30分間焼結し、80℃に冷却し、0.3mMのD35色素(Dyenamo、Stockholm、スウェーデン)(実施例の最後にある構造を参照されたい)および0.3mMのデオキシコール酸を含有する1:1のアセトニトリル/t-ブタノール色素溶液に含浸した。アノードを色素溶液中に一晩維持し、アセトニトリルで洗浄し、暗所で空気乾燥した。厚さ60μmのホットメルトシール膜(スイス、Solaronix製Meltonix 1170-60PF)ウィンドウを使用して、125℃で45秒間ホットプレスすることにより、色素増感アノードをFTOコーティングスライドガラス上の熱分解堆積白金触媒で挟み込んだ。アセトニトリル中200mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(I)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、50mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(II)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、100mMのリチウムビス(トリフルオロスルホン)イミドおよび0.5Mの4-(tert-ブチル)ピリジンからなる銅レドックス電解質溶液を、カソード上のピンホールを使用してアノードとカソードとの間に注入した。Meltonix/カバーガラスを使用し、ヒートシールプロセスを使用してピンホールをシールした。アノードおよびカソードの接触領域に導電性銀塗料を付与し、乾燥させて電気接点を形成した。
【0043】
製造した電池の光発電性能を、AM1.5条件下、97mW/cm
2の光強度で測定した。各組に対し2つの電池を製造した(電池1および電池2と呼ぶ)。製造した光電池の光発電性能は、開路電圧(V
oc、mV単位)、短絡電流密度(J
sc、ミリアンペア/平方センチメートル単位)、曲線因子および全体的変換効率(%単位)を使用して特性評価し、表1に示した。曲線因子(FF)は、光電池の最大電力の、V
ocおよびJ
scの積に対する比率として定義される。
表1.阻止層あり、およびなしで作製されたP25ベース光電池の、1sun照射条件下での光発電特性
【表1-1】
【表1-2】
(実施例2)
阻止層
【0044】
n-ブタノール中0.1~1%のTyzor(商標)ポリ(n-ブチルチタネート)溶液を使用して、スピンまたはブレードコーティング技術によりフッ素ドープ酸化スズ(FTO)コーティングガラス上に阻止層を付与した。水性コロイド状TiO2(粒径18nm)を使用して、FTOコーティングガラス上の阻止層あり、またはなしで光電極を作製した。TiO2層の厚さは、約6ミクロンであった。TiO2コーティングを500℃で30分間焼結し、80℃に冷却し、0.3mMのD35色素(Dyenamo、スウェーデン)および0.3mMのデオキシコール酸を含有する1:1のアセトニトリル/t-ブタノール色素溶液に含浸した。アノードを色素溶液中に一晩維持し、アセトニトリルで洗浄し、暗所で空気乾燥した。厚さ60μmのホットメルトシール膜(スイス、Solaronix製Meltonix 1170-60PF)ウィンドウを使用して、125℃で45秒間ホットプレスすることにより、色素増感アノードをFTOコーティングスライドガラス上の熱分解堆積白金触媒で挟み込んだ。アセトニトリル中200mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(I)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、50mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(II)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、100mMのリチウムビス(トリフルオロスルホン)イミドおよび0.5Mの4-(tert-ブチル)ピリジンからなる銅レドックス電解質溶液を、カソード上のピンホールを使用してアノードとカソードとの間に注入した。Meltonix/カバーガラスを使用し、ヒートシールプロセスを使用してピンホールをシールした。アノードおよびカソードの接触領域に導電性銀塗料を付与し、乾燥させて電気接点を形成した。各組に対し2つの電池を製造した(電池1および電池2と呼ぶ)。
【0045】
製造した電池の光発電性能を、AM1.5条件下、97mW/cm
2の光強度で測定した。製造した光電池の性能は、開路電圧(V
oc、mV単位)、短絡電流密度(J
sc、ミリアンペア/平方センチメートル単位)、曲線因子および全体的光発電変換効率(%単位)を使用して特性評価し、表2に示した。曲線因子(FF)は、光電池の最大電力の、V
ocおよびJ
scの積に対する比率として定義される。
表2.阻止層あり、およびなしで作製された18nm TiO2ベース光電池の、1sun照射条件下での光発電特性
【表2】
(実施例3)
阻止層
【0046】
n-ブタノール中0.1~1%のTyzor(商標)ポリ(n-ブチルチタネート)からスピンもしくはブレードコーティング技術により、またはFTOコーティングスライドガラスをTiCl4の40mM水溶液中で70℃で30分間加熱することにより(学術的対照)、阻止層を付与した。スクリーン印刷可能なコロイド状TiO2(粒径30nm)を使用して、FTOコーティングガラス上の阻止層あり、およびなしで光電極を作製した。TiO2層の厚さは、約6ミクロンであった。TiO2コーティングを500℃で30分間焼結し、80℃に冷却し、0.3mMのD35色素(Dyenamo、スウェーデン)および0.3mMのデオキシコール酸を含有する1:1のアセトニトリル/t-ブタノール色素溶液に含浸した。アノードを色素溶液中に一晩維持し、アセトニトリルで洗浄し、暗所で空気乾燥した。厚さ60μmのホットメルトシール膜(スイス、Solaronix製Meltonix 1170-60PF)ウィンドウを使用して、125℃で45秒間ホットプレスすることにより、色素増感アノードをFTOコーティングスライドガラス上の熱分解堆積白金触媒で挟み込んだ。アセトニトリル中200mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(I)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、50mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(II)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、100mMのリチウムビス(トリフルオロスルホン)イミドおよび0.5Mの4-(tert-ブチル)ピリジンからなる銅レドックス電解質溶液を、カソード上のピンホールを使用してアノードとカソードとの間に注入した。Meltonix/カバーガラスを使用し、ヒートシールプロセスを使用してピンホールをシールした。アノードおよびカソードの接触領域に導電性銀塗料を付与し、乾燥させて電気接点を形成した。各組に対し3つの電池を製造した(電池1、2および3と呼ぶ)。
【0047】
製造した電池の光発電性能を、AM1.5条件下、97mW/cm
2の光強度で測定した。製造した光電池の性能は、開路電圧(V
oc、mV単位)、短絡電流密度(J
sc、ミリアンペア/平方センチメートル単位)、曲線因子および全体的光発電変換効率(%単位)を使用して特性評価し、表3に示した。曲線因子(FF)は、光電池の最大電力の、V
ocおよびJ
scの積に対する比率として定義される。
表3.阻止層あり、およびなしで作製された30nm TiO2ベース光電池の、1sun照射条件下での光発電特性
【表3】
(実施例4)
阻止層
【0048】
n-ブタノール中0.1~1%のTyzor(商標)ポリ(n-ブチルチタネート)からスピンまたはブレードコーティング技術により阻止層を付与した(阻止層-1. 阻止層なし;2. 0.3%のTyzor(商標)からコーティング;3. 0.6%のTyzor(商標)からコーティング;4. 1%のTyzor(商標)からコーティング)。20重量%のTiO2(21±5nmの粒径を有するDegussa P25)および5重量%のポリ(4-ビニルピリジン)を含有する水性分散液を調製し、ブレードコーティング技術を使用して、阻止層を有する、および有さない調製された電極上に付与した。TiO2層の厚さは、約6ミクロンであった。TiO2コーティングを500℃で30分間焼結し、80℃に冷却し、0.1mMのD35色素(Dyenamo、スウェーデン)および0.1mMのデオキシコール酸を含有する1:1のアセトニトリル/t-ブタノール色素溶液に含浸した。アノードを色素溶液中に一晩維持し、アセトニトリルで洗浄し、暗所で空気乾燥した。厚さ60μmのホットメルトシール膜(スイス、Solaronix製Meltonix 1170-60PF)ウィンドウを使用して、125℃で45秒間ホットプレスすることにより、色素増感アノードをFTOコーティングスライドガラス上の熱分解堆積白金触媒で挟み込んだ。3-メトキシプロピオニトリル中200mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(I)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、50mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(II)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、100mMのリチウムビス(トリフルオロスルホン)イミドおよび0.5Mの4-(tert-ブチル)ピリジンからなる銅レドックス電解質溶液を、カソード上のピンホールを使用してアノードとカソードとの間に注入した。Meltonix/カバーガラスを使用し、ヒートシールプロセスを使用してピンホールをシールした。アノードおよびカソードの接触領域に導電性銀塗料を付与し、乾燥させて電気接点を形成した。
【0049】
製造した電池の光発電性能を、室内光照射条件下、3つの光レベルで測定した。製造した光電池の性能は、開路電圧(V
oc、mV単位)、短絡電流密度(J
sc、マイクロアンペア/平方センチメートル単位)、曲線因子および全体的光発電変換効率(%単位)を使用して特性評価し、表4に示した。曲線因子(FF)は、光電池の最大電力の、V
ocおよびJ
scの積に対する比率として定義される。
表4.阻止層あり、およびなしでD35を使用して作製された光電池の、室内光条件下の様々な光強度での光発電特性
【表4-1】
【表4-2】
(実施例5)
阻止層
【0050】
n-ブタノール中0.1~1%のTyzor(商標)[ポリ(n-ブチルチタネート)]からスピンまたはブレードコーティング技術により阻止層を付与した(阻止層-1. 阻止層なし;2. 0.3%のTyzor(商標)からコーティング;3. 0.6%のTyzor(商標)からコーティング;4. 1%のTyzor(商標)からコーティング)。5%ポリビニルピリジン結合剤を含む水性P25 TiO2(粒径21nm)を使用して、FTOコーティングガラス上の阻止層あり、およびなしで光電極を作製した。TiO2層の厚さは、約6ミクロンであった。TiO2コーティングを500℃で30分間焼結し、80℃に冷却し、0.3mMのBOD4色素(WBI合成、実施例の最後にある構造を参照されたい)および0.3mMのデオキシコール酸を含有する1:1のアセトニトリル/t-ブタノール色素溶液に含浸した。アノードを色素溶液中に一晩維持し、アセトニトリルで洗浄し、暗所で空気乾燥した。厚さ60μmのホットメルトシール膜(スイス、Solaronix製Meltonix 1170-60PF)ウィンドウを使用して、125℃で45秒間ホットプレスすることにより、色素増感アノードをFTOコーティングスライドガラス上の熱分解堆積白金触媒で挟み込んだ。3-メトキシプロピオニトリル中200mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(I)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、50mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(II)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、100mMのリチウムビス(トリフルオロスルホン)イミドおよび0.5Mの4-(tert-ブチル)ピリジンからなる銅レドックス電解質溶液を、カソード上のピンホールを使用してアノードとカソードとの間に注入した。Meltonix/カバーガラスを使用し、ヒートシールプロセスを使用してピンホールをシールした。アノードおよびカソードの接触領域に導電性銀塗料を付与し、乾燥させて電気接点を形成した。
【0051】
製造した電池の光発電性能を、室内光照射条件下、3つの光レベルで測定した。製造した光電池の性能は、開路電圧(V
oc、mV単位)、短絡電流密度(J
sc、マイクロアンペア/平方センチメートル単位)、曲線因子および全体的光発電変換効率(%単位)を使用して特性評価し、表5に示した。曲線因子(FF)は、光電池の最大電力の、V
ocおよびJ
scの積に対する比率として定義される。
表5.阻止層あり、およびなしでBOD4を使用して作製された光電池の、室内光条件下での光発電特性
【表5】
(実施例6)
D35色素を用いた銅レドックスベースDSPCの室内光性能に対する溶媒の効果
【0052】
FTOコーティングガラスを2cm×2cmのサイズに切断し、1%のTriton(商標)X-100水溶液、DI水、およびイソプロパノールで連続して洗浄することにより清浄化した。室温で乾燥させた後、清浄化したFTOガラスを導電側でコロナ放電(約13000V)により約20秒間処理した。20%のP25水分散液をFTO側にブレードコーティングした(厚さ8ミクロン)。コーティング領域を1.0cm
2に切り出した。TiO
2コーティングされたアノードを450℃で30分間焼結し、約80℃に冷却し、1:1のアセトニトリル/t-ブタノール中0.1mMのD35色素(Dyenamo、スウェーデン)および0.1mMのケノデオキシコール酸を含有する色素溶液に入れた。アノードを色素溶液中に一晩維持し、アセトニトリルで洗浄し、暗所で空気乾燥した。厚さ60μmのホットメルトシール膜(スイス、Solaronix製Meltonix 1170-60PF)ウィンドウを使用して、125℃で45秒間ホットプレスすることにより、色素増感アノードをFTOコーティングスライドガラス上の電気化学的に堆積させたPEDOT触媒または熱分解白金触媒で挟み込んだ。選択された溶媒中200mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(I)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、50mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(II)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、100mMのリチウムビス(トリフルオロスルホン)イミドおよび0.5Mの4-(tert-ブチル)ピリジンからなる銅レドックス電解質溶液を、カソード上のピンホールを使用してアノードとカソードとの間に注入した。Meltonix/ガラスカバーを使用し、ヒートシールプロセスを使用してピンホールをシールした。アノードおよびカソードの接触領域に導電性銀塗料を付与し、乾燥させて電気接点を形成した。製造した電池の性能を室内光曝露条件下で測定したが、これを表6に示す。
表6.720ルクス室内光曝露下での銅光電池の光発電特性
【表6】
(実施例7)
銅レドックスベースDSPCの室内光性能に対するレドックス対の効果
【0053】
FTOコーティングガラスを2cm×2cmのサイズに切断し、1%のTriton(商標)X-100水溶液、DI水、およびイソプロパノールで連続して洗浄することにより清浄化した。室温で乾燥させた後、清浄化したFTOガラスを導電側でコロナ放電(約13000V)により約20秒間処理した。20%のP25水分散液をFTO側にブレードコーティングした(厚さ8ミクロン)。コーティング領域を1.0cm
2に切り出した。TiO
2コーティングされたアノードを450℃で30分間焼結し、約80℃に冷却し、1:1のアセトニトリル/t-ブタノール中0.1mMのD35色素(Dyenamo、スウェーデン)および0.1mMのデオキシコール酸を含有する色素溶液に入れた。アノードを色素溶液中に一晩維持し、アセトニトリルで洗浄し、暗所で空気乾燥した。厚さ60μmのホットメルトシール膜(スイス、Solaronix製Meltonix 1170-60PF)ウィンドウを使用して、125℃で45秒間ホットプレスすることにより、色素増感アノードをFTOコーティングスライドガラス上の電気化学的に堆積させたPEDOT触媒または熱分解白金触媒で挟み込んだ。選択された溶媒中200mMのビス(2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン)銅(I)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、50mMのビス(2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン)銅(II)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、100mMのリチウムビス(トリフルオロスルホン)イミドおよび0.5Mの4-(tert-ブチル)ピリジンからなる銅レドックス電解質溶液を、カソード上のピンホールを使用してアノードとカソードとの間に注入した。Meltonix/ガラスカバーを使用し、ヒートシールプロセスを使用してピンホールをシールした。アノードおよびカソードの接触領域に導電性銀塗料を付与し、乾燥させて電気接点を形成した。製造した電池の性能を室内光曝露条件下で測定したが、これを表7に示す。
表7.720ルクス室内光曝露下での銅光電池の光発電特性
【表7】
(実施例8)
BOD4色素を用いた銅レドックスベースDSPCの室内光性能に対する溶媒の効果
【0054】
FTOコーティングガラスを2cm×2cmのサイズに切断し、1%のTriton(商標)X-100水溶液、DI水、およびイソプロパノールで連続して洗浄することにより清浄化した。室温で乾燥させた後、清浄化したFTOガラスを導電側でコロナ放電(約13000V)により約20秒間処理した。20%のP25水分散液をFTO側にブレードコーティングした(厚さ8ミクロン)。コーティング領域を1.0cm
2に切り出した。TiO
2コーティングされたアノードを450℃で30分間焼結し、約80℃に冷却し、1:1のアセトニトリル/t-ブタノール中0.3mMのBOD4色素および0.3mMのケノデオキシコール酸を含有する色素溶液に入れた。アノードを色素溶液中に一晩維持し、アセトニトリルで洗浄し、暗所で空気乾燥した。厚さ60μmのホットメルトシール膜(スイス、Solaronix製Meltonix 1170-60PF)ウィンドウを使用して、125℃で45秒間ホットプレスすることにより、色素増感アノードをFTOコーティングスライドガラス上の電気化学的に堆積させたPEDOT触媒または熱分解白金触媒で挟み込んだ。選択された溶媒中200mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(I)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、50mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(II)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、100mMのリチウムビス(トリフルオロスルホン)イミドおよび0.5Mの4-(tert-ブチル)ピリジンからなる銅レドックス電解質溶液を、カソード上のピンホールを使用してアノードとカソードとの間に注入した。Meltonix/ガラスカバーを使用し、ヒートシールプロセスを使用してピンホールをシールした。アノードおよびカソードの接触領域に導電性銀塗料を付与し、乾燥させて電気接点を形成した。製造した電池の性能を、室内光曝露条件下で測定したが、これを表8に示す。
表8.720ルクス室内光曝露下での銅光電池の光発電特性
【表8】
(実施例9)
80%のD13および20%のXY1b色素混合物を用いた銅レドックスベースDSPCの室内光性能に対する溶媒/溶媒混合物の効果
【0055】
FTOコーティングガラスを2cm×2cmのサイズに切断し、1%のTriton(商標)X-100水溶液、DI水、およびイソプロパノールで連続して洗浄することにより清浄化した。室温で乾燥させた後、清浄化したFTOガラスを導電側でコロナ放電(約13000V)により約20秒間処理した。20%のP25水分散液をFTO側にブレードコーティングした(厚さ8ミクロン)。コーティング領域を1.0cm
2に切り出した。TiO
2コーティングされたアノードを450℃で30分間焼結し、約80℃に冷却し、1:1のアセトニトリル/t-ブタノール中0.24mMのD13色素、0.06mMのXY1b色素(Dyenamo、Stockholm、スウェーデン)(実施例の最後にある構造を参照されたい)および0.3mMのケノデオキシコール酸を含有する色素溶液に入れた。アノードを色素溶液中に一晩維持し、アセトニトリルで洗浄し、暗所で空気乾燥した。厚さ60μmのホットメルトシール膜(スイス、Solaronix製Meltonix 1170-60PF)ウィンドウを使用して、125℃で45秒間ホットプレスすることにより、色素増感アノードをFTOコーティングスライドガラス上の電気化学的に堆積させたPEDOT触媒または熱分解白金触媒で挟み込んだ。選択された溶媒中250mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(I)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、50mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(II)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、100mMのリチウムビス(トリフルオロスルホン)イミドおよび0.5Mの4-(tert-ブチル)ピリジンからなる銅レドックス電解質溶液を、カソード上のピンホールを使用してアノードとカソードとの間に注入した。Meltonix/カバーガラスを使用し、ヒートシールプロセスを使用してピンホールをシールした。アノードおよびカソードの接触領域に導電性銀塗料を付与し、乾燥させて電気接点を形成した。製造した電池の性能を、室内光曝露条件下で測定したが、光発電特性を表9Aおよび9Bに要約する。
表9A.様々な溶媒ベース電解質を有する室内用光電池の、374ルクス室内光曝露での光発電特性
【表9A-1】
【表9A-2】
表9B.様々な溶媒ベース電解質を有する室内用光電池の、1120ルクス室内光曝露での光発電特性
【表9B】
(実施例10)
80%のD13および20%のXY1b色素混合物を用いたDSPCの室内光性能に対する、GBL/スルホランベース銅レドックス電解質における溶媒比の効果
【0056】
FTOコーティングガラスを2cm×2cmのサイズに切断し、1%のTriton(商標)X-100水溶液、DI水、およびイソプロパノールで連続して洗浄することにより清浄化した。室温で乾燥させた後、清浄化したFTOガラスを導電側でコロナ放電(約13000V)により約20秒間処理した。20%のP25水分散液をFTO側にブレードコーティングした(厚さ8ミクロン)。コーティング領域を1.0cm
2に切り出した。TiO
2コーティングされたアノードを450℃で30分間焼結し、約80℃に冷却し、1:1のアセトニトリル/t-ブタノール中0.24mMのD13色素、0.06mMのXY1b色素(Dyenamo、スウェーデン)および0.3mMのケノデオキシコール酸を含有する色素溶液に入れた。アノードを色素溶液中に一晩維持し、アセトニトリルで洗浄し、暗所で空気乾燥した。厚さ60μmのホットメルトシール膜(スイス、Solaronix製Meltonix 1170-60PF)ウィンドウを使用して、125℃で45秒間ホットプレスすることにより、色素増感アノードをFTOコーティングスライドガラス上の電気化学的に堆積させたPEDOT触媒または熱分解白金触媒で挟み込んだ。選択された溶媒中250mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(I)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、50mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(II)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、100mMのリチウムビス(トリフルオロスルホン)イミドおよび0.5Mの4-(tert-ブチル)ピリジンからなる銅レドックス電解質溶液を、カソード上のピンホールを使用してアノードとカソードとの間に注入した。Meltonix/カバーガラスを使用し、ヒートシールプロセスを使用してピンホールをシールした。アノードおよびカソードの接触領域に導電性銀塗料を付与し、乾燥させて電気接点を形成した。製造した電池の性能を、室内光曝露条件下で測定したが、光発電特性を表10に要約する。
表10.様々な電解質を有する9/1 E3,7z/XY1b光電池の、2つの室内光条件下でのI-V特性
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
(実施例11)
様々な色素および色素カクテルを用いた銅レドックスベースDSPCの室内光性能に対する溶媒混合物の効果
【0057】
FTOコーティングガラスを2cm×2cmのサイズに切断し、1%のTriton(商標)X-100水溶液、DI水、およびイソプロパノールで連続して洗浄することにより清浄化した。室温で乾燥させた後、清浄化したFTOガラスを導電側でコロナ放電(約13000V)により約20秒間処理した。20%のP25水分散液をFTO側にブレードコーティングした(厚さ8ミクロン)。コーティング領域を1.0cm
2に切り出した。TiO
2コーティングされたアノードを450℃で30分間焼結し、約80℃に冷却し、1:1のアセトニトリル/t-ブタノール中0.3mMのD35/0.3mMのケノデオキシコール酸または0.24mMのD35色素、0.06mMのXY1b色素(Dyenamo、スウェーデン)および0.3mMのケノデオキシコール酸または0.24mMのD13色素、0.06mMのXY1b色素(Dyenamo、スウェーデン)および0.3mMのケノデオキシコール酸を含有する色素溶液に入れた。アノードを色素溶液中に一晩維持し、アセトニトリルで洗浄し、暗所で空気乾燥した。厚さ60μmのホットメルトシール膜(スイス、Solaronix製Meltonix 1170-60PF)ウィンドウを使用して、125℃で45秒間ホットプレスすることにより、色素増感アノードをFTOコーティングスライドガラス上の電気化学的に堆積させたPEDOT触媒または熱分解白金触媒で挟み込んだ。選択された溶媒混合物中250mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(I)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、50mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(II)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、100mMのリチウムビス(トリフルオロスルホン)イミドおよび0.5Mの4-(tert-ブチル)ピリジンからなる銅レドックス電解質溶液を、カソード上のピンホールを使用してアノードとカソードとの間に注入した。Meltonix/カバーガラスを使用し、ヒートシールプロセスを使用してピンホールをシールした。アノードおよびカソードの接触領域に導電性銀塗料を付与し、乾燥させて電気接点を形成した。製造した電池の性能を、室内光曝露条件下で測定したが、光発電特性を表11Aおよび11Bに要約する。それぞれの場合において、電解質溶媒は1:1v/v混合物である。
表11A.様々な電解質およびカソード触媒を有する室内用光電池の、365ルクス光曝露での光発電特性
【表11A-1】
【表11A-2】
表11B.様々な電解質およびカソード触媒を有する室内用光電池の、1100ルクス室内光曝露での光発電特性
【表11B-1】
【表11B-2】
(実施例12)
銅レドックスベースDSPCの室内光性能に対する混合レドックス対の効果
【0058】
FTOコーティングガラスを2cm×2cmのサイズに切断し、1%のTriton(商標)X-100水溶液、DI水、およびイソプロパノールで連続して洗浄することにより清浄化する。室温で乾燥させた後、清浄化したFTOガラスを導電側でコロナ(約13000V)により約20秒間処理する。20%のP25水分散液をFTO側にブレードコーティングする(厚さ8ミクロン)。コーティング領域を1.0cm
2に切り出す。TiO
2コーティングされたアノードを450℃で30分間焼結し、約80℃に冷却し、1:1のアセトニトリル/t-ブタノール中0.24mMのD13色素、0.06mMのXY1b色素(Dyenamo、スウェーデン)および0.3mMのケノデオキシコール酸を含有する色素溶液に入れる。アノードを色素溶液中に一晩維持し、アセトニトリルで洗浄し、暗所で空気乾燥する。厚さ60μmのホットメルトシール膜(スイス、Solaronix製Meltonix 1170-60PF)ウィンドウを使用して、125℃で45秒間ホットプレスすることにより、色素増感アノードをFTOコーティングスライドガラス上の電気化学的に堆積させたPEDOT触媒または熱分解白金触媒で挟み込む。1:1(v/v)のγ-ブチロラクトン/3-メトキシプロピオニトリル溶媒混合物中の、
1. 250mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(I)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、50mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(II)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、100mMのリチウムビス(トリフルオロスルホン)イミドおよび0.5Mの4-(tert-ブチル)ピリジン;
2. 250mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(I)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、50mMのビス(2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン)銅(II)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、100mMのリチウムビス(トリフルオロスルホン)イミドおよび0.5Mの4-(tert-ブチル)ピリジン;
3. 250mMのビス(2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン)銅(I)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、50mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(II)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、100mMのリチウムビス(トリフルオロスルホン)イミドおよび0.5Mの4-(tert-ブチル)ピリジン;または
4. 250mMのビス(2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン)銅(I)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、50mMのビス(2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン)銅(II)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、100mMのリチウムビス(トリフルオロスルホン)イミドおよび0.5Mの4-(tert-ブチル)ピリジン
からなる銅レドックス電解質溶液を、カソード上のピンホールを使用してアノードとカソードとの間に注入する。Meltonix/カバーガラスを使用し、ヒートシールプロセスを使用してピンホールをシールする。アノードおよびカソードの接触領域に導電性銀塗料を付与し、乾燥させて電気接点を形成する。製造した電池の性能を、室内光曝露条件下(740ルクス)で測定し、光発電特性を表12Aおよび12Bに要約する。
表12A.様々なレドックス銅錯体の組合せを有するPtベース光電池の、740ルクス室内光での光発電特性
【表12A】
表12B.様々なレドックス銅錯体の組合せを有する電気化学PEDOTベース光電池の、740ルクス室内光での光発電特性
【表12B】
(実施例13)
【0059】
フッ素ドープ酸化スズ(FTO)コーティングガラスを2cm×2cmのサイズに切断し、1%のTriton(商標)X-100水溶液、脱イオン(DI)水、およびイソプロパノールで連続して洗浄することにより清浄化した。室温で乾燥させた後、清浄化したFTOガラスを導電側でコロナ放電(約13000V)により約20秒間処理した。20重量%のTiO2(21+5nmの粒径を有するDegussa P25)および5重量%のポリ(4-ビニルピリジン)を含有する水性分散液を調製し、ガラスのFTOコーティング側にブレードコーティングした(厚さ6~8ミクロン)。コーティング領域を1.0cm2に切り出した。TiO2コーティングされたアノードを450℃で30分間焼結し、約80℃に冷却し、1:1のアセトニトリル/t-ブタノール中0.3mMのD35色素および0.3mMのケノデオキシコール酸を含有する色素カクテル溶液に入れた。アノードを色素溶液中に一晩維持し、アセトニトリルで洗浄し、暗所で空気乾燥した。
カソード調製
【0060】
0.04gのEDOT(3,4-ジオキシエチレンチオフェン)を2mLのn-ブタノールに溶解することにより、溶液1を調製した。1gのn-ブタノール中40%トシル酸第二鉄溶液(0.6gのBuOH中の0.4gのFe塩)、0.033gの37%HClを、0.5mlのBuOHに溶解することにより、溶液2を調製した。溶液2の溶液を、0%、5%および10%(EDOTモノマーに対する重量)等の様々な量のグラフェンと混合した。
【0061】
溶液1および2(様々な量のグラフェンを含む)を十分に混合し、清浄なフッ素-酸化スズコーティングガラス基板上にスピンコーティングした(基板は1%Triton(商標)X100/水/IPA/コロナ処理により清浄化し、ヘアドライヤーで5秒間加熱してからコーティングした)。1分間1000rpmのスピン速度を使用した。得られた膜を空気乾燥し、コーティングをMeOHで洗浄し、乾燥させ、100℃で30分間熱処理した。
電池製造
【0062】
厚さ60μmのホットメルトシール膜(スイス、Solaronix製Meltonix 1170-60PF)ウィンドウを使用して、125℃で45秒間ホットプレスすることにより、調製したカソードを色素増感アノードで挟み込んだ。アセトニトリル中200mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(I)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、50mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(II)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、100mMのリチウムビス(トリフルオロスルホン)イミドおよび0.5Mの4-(tert-ブチル)ピリジンからなる銅レドックス電解質溶液を、カソード上のピンホールを使用してアノードとカソードとの間に注入した。Meltonix/カバーガラスを使用し、ヒートシールプロセスを使用してピンホールをシールした。アノードおよびカソードの接触領域に導電性銀塗料を付与し、乾燥させて電気接点を形成した。各カソード触媒材料に対して2つの電池を製造した。電気化学重合PEDOT含有カソードおよび熱分解堆積白金含有カソードを、外部対照として使用した。
【0063】
製造した電池の性能を、AM1.5条件下、97mW/cm
2の光強度で測定した。製造した光電池の性能は、開路電圧(V
oc、mV単位)、短絡電流密度(J
sc、ミリアンペア/平方センチメートル単位)、曲線因子および全体的光発電変換効率(%単位)を使用して特性評価し、表13に示した。曲線因子(FF)は、光電池の最大電力の、V
ocおよびJ
scの積に対する比率として定義される。
表13.様々なグラフェン含量に基づく化学重合PEDOTカソードを有する銅レドックスベース色素増感光電池の、1sun照射条件下での光発電特性
【表13】
(実施例14)
グラフェンを含む電解重合PEDOT
【0064】
フッ素ドープ酸化スズ(FTO)コーティングガラスを2cm×2cmのサイズに切断し、1%のTriton(商標)X-100水溶液、脱イオン(DI)水、およびイソプロパノールで連続して洗浄することにより清浄化した。室温で乾燥させた後、清浄化したFTOガラスを導電側でコロナ放電(約13000V)により約20秒間処理した。20重量%のTiO2(21+5nmの粒径を有するDegussa P25)および5重量%のポリ(4-ビニルピリジン)を含有する水性分散液を調製し、ガラスのFTOコーティング側にブレードコーティングした(厚さ6~8ミクロン)。コーティング領域を1.0cm2に切り出した。TiO2コーティングされたアノードを450℃で30分間焼結し、約80℃に冷却し、1:1のアセトニトリル/t-ブタノール中0.3mMのD35色素および0.3mMのケノデオキシコール酸を含有する色素カクテル溶液に入れた。アノードを色素溶液中に一晩維持し、アセトニトリルで洗浄し、暗所で空気乾燥した。
カソード調製:
【0065】
872mgのテトラ-n-ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(TBHFP)を2.25mLのアセトニトリル(ACN)に溶解し、続いて240μLの3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)を添加した。得られた溶液を225mLのドデシル硫酸ナトリウム水溶液に添加し、得られた懸濁液を1時間超音波照射して透明エマルジョンを得た。
【0066】
得られたエマルジョンを、定電流(一定電流)モードでのPEDOTの電着に使用した。電流を200μAに設定し、時間を150秒に設定した。作用電極は2cm×2cmのFTOコーティングスライドガラスであって、対電極は2cm×2.5cmのFTOコーティングスライドガラスであった。電極間の距離を2cmにしてFTOコーティング面を互いに対向させて両電極をEDOT溶液に部分的に浸した。PEDOTコーティングスライドをイソプロパノールで洗浄し、周囲条件下で乾燥させ、ACN下で保存した。
【0067】
また、様々な量のグラフェン(EDOTの量に対する濃度)を含むEDOTエマルジョンを調製し、PEDOT/グラフェン複合触媒の電着に使用した。また、事前に堆積されたグラフェン含有電極上にもPEDOTを電着した。
電池製造
【0068】
厚さ60μmのホットメルトシール膜(スイス、Solaronix製Meltonix 1170-60PF)ウィンドウを使用して、125℃で45秒間ホットプレスすることにより、調製したカソードを色素増感アノードで挟み込んだ。スルホラン中250mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(I)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、50mMのビス(6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)銅(II)ビス(トリフルオロスルホン)イミド、100mMのリチウムビス(トリフルオロスルホン)イミドおよび0.5Mの4-(tert-ブチル)ピリジンからなる銅レドックス電解質溶液を、カソード上のピンホールを使用してアノードとカソードとの間に注入した。Meltonix/カバーガラスを使用し、ヒートシールプロセスを使用してピンホールをシールした。アノードおよびカソードの接触領域に導電性銀塗料を付与し、乾燥させて電気接点を形成した。各カソード触媒材料に対して2つの電池を製造した。電気化学重合PEDOT含有カソードおよび熱分解堆積白金含有カソードを、外部対照として使用した。
【0069】
製造した電池の性能を、室内光照射条件下、740ルクスで測定した。製造した光電池の性能は、開路電圧(V
oc、mV単位)、短絡電流密度(J
sc、ミリアンペア/平方センチメートル単位)、曲線因子および全体的光発電変換効率(%単位)を使用して特性評価し、表14Aおよび14Bに示した。曲線因子(FF)は、光電池の最大電力の、V
ocおよびJ
scの積に対する比率として定義される。
表14A.混合EDOT/グラフェンエマルジョンを使用した様々なグラフェン含量に基づく電解重合PEDOTカソードを有する銅レドックスベース色素増感光電池の光発電特性
【表14A-1】
【表14A-2】
表14B.グラフェンコーティングカソード上に電解重合されたPEDOTを有する銅レドックスベース色素増感光電池の光発電特性
【表14B】
市販の色素の構造(Dyenamo、Stockholm、スウェーデン)
【化1】
非商用の色素の構造
【化2】