(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】偏光スクランブル用光導波路光学素子
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240628BHJP
G02B 1/11 20150101ALI20240628BHJP
G02B 27/02 20060101ALN20240628BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/11
G02B27/02 Z
(21)【出願番号】P 2022526243
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(86)【国際出願番号】 IL2020051166
(87)【国際公開番号】W WO2021105978
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-11-07
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518010049
【氏名又は名称】ルムス エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】Lumus Ltd.
【住所又は居所原語表記】8 Pinchas Sapir Street, 7403631 Ness Ziona, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジロ,モトケ
(72)【発明者】
【氏名】アイゼンフェルト,ティシオン
(72)【発明者】
【氏名】ダンジガー,ヨチャイ
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0179057(US,A1)
【文献】特表2009-516862(JP,A)
【文献】特表2017-535825(JP,A)
【文献】特表2005-504412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 1/11
G02B 27/01-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光
解消用に構成された光導波路光学素子(LOE)であって、該光導波路光学素子(LOE)は、
第1の屈折率を有する透明基板であって、前記透明基板が、前記LOE内の光を、全内部反射(TIR)を通して伝播するように構成された一対の平行な外側表面と、複数の相互に平行な部分反射性内側表面と、を含み、前記複数の相互に平行な部分反射性内側表面が、前記一対の平行な外側表面に非平行であり、かつ前記光を観察者に結合するように構成されている、透明基板と、
前記透明基板の少なくとも1つの外側表面上に100nm~10ミクロンの厚さを有する第1のコーティングであって、前記第1の屈折率よりも高い第2の屈折率を有するコーティング材料を含む、第1のコーティングと、
前記第1のコーティング上の前記透明基板の少なくとも1つの外側表面上の反射防止(AR)コーティングと、を含み、
前記第1のコーティングが、400nm~1300nmの波長を有するTIRを超える角度での入射光のs偏光成分およびp偏光成分の間の位相シフトを増加させるように構成されている、光導波路光学素子(LOE)。
【請求項2】
前記ARコーティングが、0°~50°の入射角で前記LOEに入射する光の反射を低減または除去するように構成されている、請求項1に記載のLOE。
【請求項3】
前記ARコーティングが、所定の角度で前記LOEに入射する光の反射を0.3%~10%の反射光まで低減するように構成されている、請求項1に記載のLOE。
【請求項4】
前記第1のコーティングが、高屈折率誘電材料を含む、請求項1に記載のLOE。
【請求項5】
前記第1のコーティングが、TiO
2、Si
3N
4およびZnSからなる群から選択される材料を含む、請求項4に記載のLOE。
【請求項6】
前記ARコーティングが、SiO
2、HfO
2、TiO
2、MgF
2およびAl
2O
3からなる群から選択される少なくとも1つのコーティング材料の1つ以上の層を含む、請求項1に記載のLOE。
【請求項7】
前記ARコーティングが、1.35~2.5の範囲の屈折率を有する少なくとも1つの材料の1つ以上の層を含む、請求項1に記載のLOE。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題は、光導波路光学素子に関し、より具体的には、偏光スクランブル用に構成された光導波路光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、光導波路コンパクトコリメーティング光学デバイス(LCCD)およびこれらのデバイスのうちの1つ以上を含む光学システムに関する。「光導波路」という用語は、光学基体としても知られる任意の透光体、好ましくは光透過性固体を指す。コンパクト光学デバイスの重要な用途の1つは、光学モジュールが反射光学素子および結合器の両方として機能し、二次元画像が無限に撮像されて、観察者の眼に反射される、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の分野である。画像は、正極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、エルコス(LCOS)モジュール、有機発光ダイオードアレイ(OLED)、マイクロLED走査源もしくは同様のデバイスなどの空間光変調器(SLM)から直接的に取得され得るか、またはリレーレンズもしくは光ファイババンドルによって間接的に取得され得る。画像は、コリメーティングレンズによって無限に画像化され、それぞれ非シースルーアプリケーションおよびシースルーアプリケーションの結合器として機能する反射表面または部分的反射表面によって観察者の眼に伝達される、要素(画素)のアレイを含む。典型的には、これらの目的のために、従来の自由空間光学モジュールが使用される。この光学モジュールは、本明細書中で光導波路光学素子(「LOE」)と称される。
【0003】
典型的には、LOEは、観察者の眼の前に配置される。LOEに入る光線の平行光線は、全内部反射(「TIR」)によって平行表面間で反射される。コーティングされたファセットは、観察者の眼に向けて、光線を部分的に反射する。
【0004】
典型的には、LOEに入る光は、S偏光またはP偏光のいずれかである。ファセット上のコーティングは、同じ偏光状態を有する光を反射する。関与する偏光状態は1つのみであるため、TIR反射は、この偏光状態を維持するであろう。しかしながら、LOEに入る光が非偏光である用途では、すべてのTIR反射は位相シフトを引き起こし、これは、光線のうちのいくつかの偏光状態を変化させるであろう。これは、次に、ファセットによって反射される光の量の対応する変化をもたらし得るが、この変化は望ましくない。
【0005】
一般的な説明
本明細書に開示された主題の一態様によれば、偏光スクランブル用に構成された光導波路光学素子(LOE)が提供され、光導波路光学素子(LOE)は、第1の屈折率を有する透明基板であって、基板が、LOE内の光を、全内部反射(TIR)を通して伝播するように構成された一対の平行な外側表面と、複数の相互に平行な部分反射性内側表面とを含み、複数の相互に平行な部分反射性内側表面が、一対の平行な外側表面に非平行であり、かつ光を観察者に結合するように構成されている、基板と、基板の少なくとも1つの外側表面上に100nm~10ミクロンの厚さを有する第1のコーティングであって、第1の屈折率よりも高い第2の屈折率を有するコーティング材料を含む、第1のコーティングと、第1のコーティング上の基板の少なくとも1つの外側表面上の反射防止(AR)コーティングと、を含む、光導波路光学素子(LOE)が提供される。
【0006】
いくつかの実施形態では、第1のコーティングが、400nm~1300nmの波長を有する基板についてのTIRカットオフ角を超える角度での入射光のs偏光成分およびp偏光成分の間の位相シフトを増加させるように構成される。
【0007】
いくつかの実施形態では、ARコーティングが、0°~50°の入射角でLOEに入射する光の反射を低減または排除するように構成される。
【0008】
いくつかの実施形態では、ARコーティングが、所定の角度でLOEに入射する光の反射を、0.3%~10%の反射光まで低減するように構成される。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1のコーティングが、高屈折率誘電材料を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1のコーティングが、TiO2、Si3N4およびZnSからなる群から選択される材料を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、ARコーティングが、SiO2、HfO2、TiO2、MgF2およびAl2O3からなる群から選択される少なくとも1つのコーティング材料の1つ以上の層を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、ARコーティングが、1.35~2.5の範囲の屈折率を有する少なくとも1つの材料の1つ以上の層を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明を理解し、それが実際にどのように実施されることができるかを見るために、非限定的な例として、添付の図面を参照して実施形態を説明する。
【0014】
【
図1】従来技術によるLOEの一般化された概略図を図示する。
【
図2】本明細書に開示された主題の特定の実施形態によるLOEの一般化された概略図を図示する。
【
図3】偏光スクランブルコーティングを有しないLOEの1つの表面の位相シフト性能の一例を示すグラフを図示する。
【
図4A】RGB光の高スペクトルピークを示すグラフを図示する。
【
図4B】白色光の高スペクトルピークを示すグラフを図示する。
【
図5】基板に施される偏光スクランブルコーティングの分光差動位相シフト性能の一例を示すグラフを図示する。
【
図6】法線入射でのARコーティングを有しない例示的な偏光スクランブルコーティングの反射特性を示すグラフを図示する。
【
図7A】TIRにおける光線についてのLOE表面によって反射される光の反射における差動位相シフトの一例を示すグラフを図示する。
【
図7B】TIR領域内の様々な異なる角度についての反射における差動位相シフトの例を示すグラフを図示する。
【
図8】偏光スクランブルコーティングおよびARコーティングを用いた、法線入射時の反射の一例を示すグラフを図示する。
【
図9】基板および金属コーティングの間に施された偏光スクランブルコーティングの反射の一例を示すグラフを図示する。
【
図10】2つの導波路を有するディスプレイシステムの一実施形態を図示する。
【
図11】本発明に係るLOEの別の実施形態を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、本明細書に開示された主題は、これらの特定の詳細なしに実施され得ることが、当業者によって理解されるであろう。他の例では、本明細書に開示された主題を曖昧にしないように、周知の方法、手順、および構成要素は詳細に説明さ
れていない。
【0016】
本明細書で使用される場合、「位相シフト」という用語は、S偏光線およびP偏光線の位相の差を指す。
【0017】
これを念頭に置いて、従来技術によるLOEの一般化された概略図を図示する
図1に注目する。LOEは、一対の平行な外側表面26、27、および相互に平行な部分反射性の内側表面(「ファセット」)22の非平行なセットを有する基板34を含む。ファセット22の部分反射特性は、ファセットに施されるコーティングを介して達成される。画像を表す光線18は、LOEに結合され、表面26、27の間のTIRを介してLOE内に伝播し、最終的に観察者の眼24に向かってファセット22によって反射される。
【0018】
図2は、本明細書に開示された主題の特定の実施形態によるLOEの一般化された概略図を示す。この場合、LOEは非偏光を受光して結合することを意図する。従来技術のLOEと同様に、本発明のLOEは、空気よりも高い屈折率(本明細書において「n」と表される)を有する透明基板34から構成される。基板は、LOE内の光を、TIRを通して伝搬するように構成された一対の平行な外側表面26、27を備える。基板34は、光を観察者に結合するように構成された複数の相互に平行な部分反射性内側表面(「ファセット」)22をさらに備える。ファセットは、外側表面26、27に対して非平行である。例えば、それらは、一対の外側表面に対して傾斜され得る。
【0019】
LOEは、表面26、27のうちの少なくとも1つに施される偏光スクランブルコーティング42をさらに含む。コーティング42は、基板34の第1の屈折率よりも高い屈折率を有するコーティング材料から構成される。偏光スクランブルコーティング42は、100nmを超え最大約10ミクロンまでの厚さで、外側表面26、27、またはそれらの一部のうちの少なくとも1つに施される。いくつかの場合では、偏光スクランブルコーティング42は、両方の平行な外側表面に施され得る。基板の外側表面に施される偏光スクランブルコーティング42は、基板に入射して外部コーティング面の内側を反射するS偏光線およびP偏光光線の間の位相差勾配を増加させる。これは、全内部反射(TIR)角を超える入射角のためのものである。位相差勾配は、波長の小さな変化に対する位相シフト差の変化量である。
【0020】
偏光スクランブルコーティング42は、LOEに入射する光の波長の予想される範囲および光が入射するであろう角度の予想される範囲、例えばBK7ガラスについて42°を超えるTIR領域の角度に基づいて、所定の設計要件に従って選択され得る。数回の反射の後、LOE内で伝播するS偏光およびP偏光は、互いに対して大きく位相シフトし、本質的に光線の非偏光状態を維持するであろう。本発明によれば、LOE内のファセット22はまた、非偏光用に設計された部分反射性コーティングでコーティングされる。これらのコーティングされたファセットは、設計されたように、非偏光を観察者に向けて反射する。
【0021】
例示的な実施形態では、偏光スクランブルコーティング42は、300nm~10000nm、より好ましくは300nm~5000nm、さらにより好ましくは300nm~1000nmの厚さで施される。
【0022】
好ましくは、偏光スクランブルコーティング42は、TiO2(n
【0023】
【0024】
【0025】
【化3】
2.2~2.4)または好適な等価物などの高屈折率誘電材料から構成される。「高屈折率」とは、基板よりも高い、好ましくは少なくとも2の屈折率を意味する。好ましくは、コーティング42は、基板の外側表面からの反射時に、400nm~1300nm、より好ましくは400nm~750nmの間の波長を有する光の位相シフト傾斜を増加させるように構成される。
【0026】
LOEは、コーティング42の上部の基板の少なくとも1つの外側表面に施される反射防止(AR)コーティング44をさらに含む。偏光スクランブルコーティング42の上部に施されるARコーティング44は、所与の角度でLOEに入射する光の反射を減少または除去し、それにより、これらの光線の高透過率を提供し、LOEを通して観察者が外界を見ることを可能にする。例示的な実施形態では、ARコーティングは、実質的に「法線」の入射角、例えば0°~50°の範囲の角度で表面に当たる光線の反射を減少または除去するように構成される。好ましくは、ARコーティングは、LOEに所定の角度で入射する光の反射を、0.3%~10%の反射光に低減する。
【0027】
偏光スクランブルコーティング42は、法線入射での基板の反射を、可視スペクトル(430nm~660nm)において平均で約5%(n=1.6の基板の場合)~約18%増加させることに留意すべきである。したがって、ARコーティング44は、反射を低減するために、および偏光スクランブルコーティング42によって誘発される脱偏光特性を維持するためにも必要とされる。これらの要件は、ARコーティング44の設計複雑性を増加させる。
【0028】
好ましくは、ARコーティング44は、1.35~2.5の範囲の屈折率を有するコーティング材料の層から構成される。好ましくは、コーティングは、1つ以上の高屈折率材料、1つ以上の低屈折率材料、および1つ以上の媒体(すなわち、高屈折率材料および低屈折率材料の間)屈折率材料を含む。例示的な実施形態では、ARコーティング44は、SiO2(n
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【化7】
1.35~1.37)および/またはAl
2O
3(n
【0033】
【化8】
1.63~1.68)のうちの1つ以上の層から構成され得る。
【0034】
図2は、縮尺どおりに描かれておらず、実際には、基板34の厚さは、典型的には、コーティング42、44の厚さよりも数桁大きいことに留意すべきである。
【0035】
図3は、偏光スクランブルコーティングを有しないLOEの位相シフト性能を示すグラフを図示する。この場合、LOEは、外側表面に施されたコーティング42を有しないS-TIM8ガラス(n
【0036】
【化9】
1.596)から作製される。示されるように、位相シフトは、可視スペクトル内のすべての波長でほぼ一定である。このことは、以下で説明するように、望ましくない。
【0037】
典型的には、LOEに入る光は、RGB LEDまたは白色LEDのいずれかからのものである。
図4aは、位相シフト勾配増強が好ましく発生するはずである、RGB光の高スペクトルピークを示すグラフを図示する。
図4bは、位相シフト傾斜強化が好ましく発生するはずである、白色光の高スペクトルピークを示すグラフを図示する。
【0038】
図5は、RGB LED光のスペクトルピークを参照して基板に施された偏光スクランブルコーティング42による位相シフトの一例を示すグラフを図示する。この場合、コーティング42はTiO
2から構成され、S-TIM8ガラスで作製された基板34に施された。
図5は、コーティング42の2つの異なる厚さ、すなわち、それぞれ300nmおよび1000nmの結果を示す。
図5に示すように、層の厚さが増大するにつれて、可視波長における位相変化の傾きがより大きくなる。最も高い脱偏光および勾配が起こるはずであるスペクトル領域は、破線の四角形で示され、RGB LEDのスペクトルピークに対応する。
【0039】
図5に示されるように、LOEに入射する光の波長の小さな変化は、位相シフトの大きな変化を生じさせる。これは、システムを照らすLED発光のスペクトル範囲と比較される。偏光スクランブルコーティング42は、狭いスペクトルピークの一部に対して、異なる程度(RGB LEDについては
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【化13】
443nmで)の位相シフトを引き起こす。人間の眼は近い波長の光の強度を統合するため、この効果は、非偏光を見ることに匹敵する。反射後の脱偏光は、部分的である。ファセット22によって反射される前に、光は外側表面によって複数回反射されるため、光線の累積脱偏光は比較的大きい。
【0044】
図6は、ARコーティング44を有しない例示的な偏光スクランブルコーティング42の反射特性を示すグラフを図示する。この場合、コーティング42は、それぞれ300nmおよび1000nmの2つの異なる層厚さで施された。示されるように、コーティング42は、高反射性(可視波長における1辺当たり、平均約20%)である傾向があり、LOEを通じた外界の視界の望ましくない減衰を引き起こす。
【0045】
図7aは、本発明のLOEに入射する光の反射における差動位相シフトの一例を示すグラフを図示する。この場合、基板は、厚いTiO
2層から構成される偏光スクランブルコーティング42、および偏光スクランブルコーティングの上部のARコーティング44でコーティングされる。このグラフは、2つの異なる厚さのコーティング42、すなわち、それぞれ300nmおよび1000nmについて、可視波長において、55度の入射角でLOEに入射する光の反射における差動位相シフトを示す。
【0046】
図7bは、TIR領域内の様々な異なる角度について、1000nmの厚さでコーティング42が施された、
図7aと同じコーティングを使用した反射における位相シフトを示すグラフを図示する。
【0047】
図8は、可視スペクトル内の異なる波長で、
図7aのようなコーティング42(300nmおよび1000nmのTiO2層厚さ)の層およびコーティング44からなるコーティングの法線入射時の反射を図示する。
図8に示されるように、このコーティングは、小角度でARコーティングとして働き、反射が
図6と比較して大幅に低減される(可視スペクトルにおける平均約18%から約4%)ことが明らかである。異なるデザインおよび層材料を用いて、この反射はさらに低減され得る。
【0048】
コーティング42の厚さは、両方の外側表面について同一である必要はないことに留意すべきである。むしろ、LOEの各側面に任意のスペクトル領域についての位相変化の異なる勾配を与えるために、異なる厚さのコーティング42が異なる表面に施され得るであろう。例えば、片方の側面においてLOEがある波長についての位相変化の小さな傾斜を有するならば、他方の側面のコーティングは位相変化の大きな傾斜にランダムに行き当たり得、ここで、蓄積された位相シフトは大きいであろう。
【0049】
言うまでもなく、入射光線がファセット22に対して平行または垂直に偏光されている場合、コーティング42は光線の位相に影響を及ぼさないであろう。
【0050】
上述のように、偏光スクランブルコーティング42は、表面全体の代わりに、一方または両方の外側表面の一部のみに施され得る。
【0051】
いくつかの場合は、LOEは、一方の外側表面、またはその一部を金属コーティングでコーティングされることが望ましくあり得る。その場合、基板および金属層の間に偏光スクランブルコーティング42を追加し得、これは、スペクトル領域上の位相シフト変化を増加させるであろう。
【0052】
図9は、基板および金属コーティングの間に施される偏光スクランブルコーティング42の反射の一例を示すグラフを図示する。このグラフは、可視スペクトル内の異なる波長における入射角55°での光の反射を示す。このグラフは、偏光スクランブルコーティング42を有しない場合の、ならびに異なる厚さ300nmおよび1000nmで層42を有する場合の、位相シフト傾斜を示す。
【0053】
いくつかの場合では、LOEに入る光線は、図面の同じ平面内にない場合があること、すなわち、別の三次元角度でLOEに入ることに留意すべきである。この場合、たとえ光線が偏光されていても、TIR平面を参照して偏光されることはないであろう。したがって、反射光線の偏光状態を変化させ、非偏光として扱われ得る。
【0054】
図10は、光線が1つのLOEから第2のLOEに対して任意の角度で反射される、2つのLOEを有する表示システムを図示する。この反射は位相シフトを導入するので、光線の偏光状態を、ファセットからの反射時に偏光されないように変化させるであろう。ここでも、LOE表面に施されるコーティング42は、ファセットからの反射が光線の偏光状態に依存しないことを保証する。
【0055】
図11は、本発明によるLOEの別の実施形態を示す。本実施形態では、LOEは、光線が導波路の中心に入射し、各反対側の端部に向かって伝播するように設計される。この場合、入射光線は、収束レンズ6を通って移動する。光64Lおよび64Rは、LOEを通過する。眼への光線は、中心ファセットを介して伝達されるか、または中心ファセットによって反射され、側面に移動し、他のファセットによって眼に向けて反射されるであろう。中心のファセットから側面ファセットへと移動する際に、光線は、表面1および2からのTIRに遭遇する。したがって、次の反射ファセットは非偏光用に設計されるので、表面1および2は、光線を非偏光化するための偏光スクランブルコーティング42(および任意選択で1つ以上のARコーティング44の層)でもコーティングされるべきである。ここでも、AR層の追加は、表面1および2の透過率を増加させるであろう。
【0056】
本明細書に記載されるLOEの実施形態は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)およびヘッドアップディスプレイ(HUD)、携帯電話、コンパクトディスプレイ、3Dディスプレイ、コンパクト光線エキスパンダなどの多数の画像形成用途、ならびにフラットパネルインジケータ、コンパクトイルミネータおよびスキャナなどの非画像形成用途で実施され得ることが理解されるべきである。
【0057】
本発明は、その適用において、本明細書に含まれる説明に記載されるかまたは図面に図示される詳細に限定されるものではないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態を実施し得、様々な方法で実践および実施され得る。したがって、本明細書で使用される表現および用語は、説明の目的のためのものであり、限定するものとみなされるべきではないことが理解されるべきである。したがって、当業者は、本開示の基礎となる概念が、本明細書に開示された主題のいくつかの目的を実行するための他の構造、方法、およびシステムを設計するための基礎として容易に利用され得ることを理解するであろう。