(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】熱分解機
(51)【国際特許分類】
C10B 47/02 20060101AFI20240628BHJP
C10B 53/00 20060101ALI20240628BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C10B47/02
C10B53/00 A
F27D17/00 104G
(21)【出願番号】P 2023150722
(22)【出願日】2023-09-19
【審査請求日】2024-01-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523355894
【氏名又は名称】株式会社正朋
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 安秀
(72)【発明者】
【氏名】藤村 寿也
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6534762(JP,B1)
【文献】特開2007-002184(JP,A)
【文献】特開2005-320507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 47/02
C10B 53/00
F27D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を投入する投入口を設けた円筒体の熱分解の一次処理室を備え、この一次処理室には下方に加熱装置を有し、前記投入口より投入の有機物を加熱して炭化処理をし、
前記一次処理室と独立した二次処理室へ排気ガスを導き、この二次処理室内で排気ガスを加熱処理して有害物質を除去し、
さらに、前記二次処理室の後流側に送風機に至る排気通路を設け、この排気通路に白金触媒をその下流にフィルタを配したことにより、このフィルタによって排気通路の流速が1.8(m/s)から0.6(m/s)に制御されて、排気ガスを二次処理室内に最適時間滞留させることで有害物質が取り除かれた安全な状態で排出されることを特徴とする熱分解機。
【請求項2】
前記加熱装置は、電気式ヒータで径方向に且つ放射状に複数本設けられ、その下方に回転棒が設けられ、その回転棒が外部からの回転棒モータにて回転され、しかも前記電気式ヒータと前記回転棒の周囲にハイアルミナボールが配されたことを特徴とする請求項1記載の熱分解機。
【請求項3】
前記二次処理室は、多数の電気式ヒータが交互に配されたことを特徴とする請求項1記載の熱分解機。
【請求項4】
前記フィルタは排気通路の最も後端に設けられ、このフィルタを通った二次処理後の排気ガスと一次処理後の灰からは有害物質が取り除かれ、法で定められた基準となる値5(ng-TEQ/m
3)以下に対し排ガス2.9、灰1.7の安全な状態で排出される、請求項1に記載の熱分解機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は有機物を炭化処理させることにより、発生した有害物質であるダイオキシンや、煙、臭い、一酸化炭素の排出を無くした熱分解機に関する。
【背景技術】
【0002】
有機物(特に使用済みおむつ)を処理する手段として炭化炉が存在するが、この炭化炉は800℃以上の高温で有機物を熱分解してダイオキシンなどの有害物質や、煙、臭い、一酸化炭素の発生を抑え、しかも炭化処理することで、炭化物の量も非常に少なくでき、廃棄物処理の負担を軽減できる利点を持っている。
【0003】
炭化炉において、有機物を熱分解処理するため、炉内には排気ガスにタール、煤塵が発生し、排気管内、排気ファンに付着することで、処理性能の低下を招いていた。
このため、メンテナンス費用増となる欠点を持っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、炭化処理と排気ガス処理を確実に行うことができることを目的とするため、有機物の炭化処理と排気ガスの処理を分割し、有機物の炭化処理を一次処理とし、排気ガスの処理を二次処理としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、この発明は、有機物を投入する投入口を設けた円筒体の熱分解機に一次処理室を備え、この一次処理室には、加熱装置を有し、前記投入口より投入した有機物を加熱して炭化処理をし、
前記一次処理室にて炭化処理時に発生する排気ガスを前記一次処理室と独立した二次処理室へ導き、この二次処理室内で排気ガスを加熱処理し有害物質を除去して、
さらに前記二次処理室の下流側に送風機に至る排気通路を設け、この排気通路に白金触媒を、その下流にフィルタを配したことにある。
【0007】
これにより、一次処理室にあっては、投入の有機物を加熱装置により、8時間程高温(400℃前後)でしかも希薄酸素状態下で加熱して水分蒸発、炭化処理をさせる。
前記一次処理室にて炭化処理時に発生する排気ガス中には、有毒のダイオキシンの発生があり、煙、臭いも生じ、それらを二次処理室に導き700℃から800℃程で加熱させて、無害、無臭、無煙に処理される。
さらに排気通路内に白金触媒があり、一酸化炭素が無害に処理される。
排気通路の下流には送風機を備え、排気ガスを吸引しているが送風機の前部にはフィルタが配され、フィルタにて煤塵を取り除く作用を行うと同時に排気通路の流速が1.8(m/s)から0.6(m/s)程に制御され、もって滞留時間の適正化から二次処理室内での燃焼が順調に行われる。
【0008】
一次処理室に設置された加熱装置は、電気式ヒータで400℃程に発熱され、径方向に且つ放射状に複数本例えば4本設けられている。それから、その下方に回転棒が外部のモータにて回転され、周囲に配されたハイアルミナボールを攪拌して上下動させこれにより一次処理室内炭化物の落下が促進される。それから攪拌効果として一次処理室内の温度が均一化され有機物が熱分解処理される。
【0009】
二次処理室には、多数の電気式ヒータが設けられ、二次処理室の温度は700℃から800℃に保たれているため、有毒物質のダイオキシン、タール等が除去される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、熱分解機に有機物を投入そして炭化する一次処理室と、一次処理室から排出される排気ガスを処理する二次処理室とに分けることから、有機物の炭化処理と、有機物の炭化処理時に発生する排気ガスを確実に処理することができる。
【0011】
処理の分割として一次処理室の内温を100℃から400℃とするため、電気式ヒータの電気量を抑えることができた。
二次処理室の加熱温度を800℃前後にすることで、処理開始が速やか、確実にできて、且つ有害物質を燃焼することができた。
【0012】
送風機上流側に設けられたフィルタは、排気通路の最下流に設けられていることから、排気通路中の排気流速(0.6m/s程)を制御出来て、もって排気ガスを二次処理室内に最適時間滞留させることができ、燃焼効率を上げ排気ガス、排気通路18内の有害物を取り除くことができた。このフィルタを通った二次処理後の排気ガスと一時処理後の灰から有害物質(ダイオキシン)が取り除かれ、法で定められた基準となる値5(ng-TEQ/m3)以下に対し排ガス2.9、灰1.7の安全な状態で排出された。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】は、この発明の熱分解機の概略の説明図である。
【実施例】
【0014】
以下、この発明に係る熱分解機の実施例を図面に基づいて説明する。
図1乃至
図4にあって、熱分解機1は一次処理室2と二次処理室15とに分けられ、一次処理室2は、直径780mm,高さ750mm程の円筒体3であって、この円筒体3の内部は中空で上方に有機物が投入される投入口4が設けられ、主に使用済み紙おむつが投入される。紙おむつは尿など水分が多く含まれている。投入口4には気密性のある蓋5が設けられている。6は蓋5を開けるハンドルである。
【0015】
電気式ヒータ8は合金製の電気式ヒータで、円筒体3の下方に設けられ、水平方向であって放射状に4本が取り付けられている。これらの電気式ヒータの上方及び下方の周辺に配されたハイアルミナボール9は前記電気式ヒータの熱を蓄える作用をし、投入される有機物に均等に熱を伝える作用をしている。
それから、ハイアルミナボール9の下部に設けられた回転棒11は、回転棒モータ12により設定された間隔、時間に回転され、炭化物を動かし熱分解処理を促進させる。13は灰の取り出し口である。
【0016】
上述の構成の一次処理室2は、電気式ヒータ8をもって規定温度に熱せられ、投入口4より有機物が投入され、蓋5が閉じられる。それと同時に処理が開始される。ハイアルミナボール9の下方に設けられた回転棒11は設定した間隔で数秒間回転されハイアルミナボールを動かし、有機物を動かし、熱分解処理が促進される。その処理時間は8時間ほどで、有機物は希薄酸素状態下で炭化される。炭化されると容積が300分の1ほどになる。一次処理室2での炭化処理時に発生する排気ガスは二次処理室15へ送られる。
【0017】
前記二次処理室15は前記一次処理室2に連通され、排気ガスが導入される。二次処理室15は中空の円筒体となっていて、加熱の為の電気式ヒータ16が配されている。25本程で700℃から800℃に二次処理室15内の温度が保たれる。この二次処理室15にあっては、電気式ヒータ16間を通過する際に有害物質が燃焼する。
【0018】
二次処理室15の後流側に送風機17に至る排気通路18が接続されている。この排気通路18の最も後端にフィルタ20が設けられ、煤塵が取り除かれると共に、このフィルタ20にて排気通路18中の排気ガスの流速が制御される。ここで流速が制御されることから、排気ガスの滞留時間の適正化が図られ、二次処理室15の燃焼が順調に行われる。
【0019】
さらに、排気通路18にあっては、白金触媒21を設けているため、この白金触媒21により一酸化炭素を取り除く作用が行われる。23は前記一次処理室2と二次処理室15を包む外箱である。
【符号の説明】
【0020】
1 熱分解機
2 一次処理室
3 円筒体
4 投入口
5 蓋
6 ハンドル
8 電気式ヒータ
9 ハイアルミナボール
11 回転棒
12 回転棒モータ
13 灰取り出し口
15 二次処理室
16 電気式ヒータ
17 送風機
18 排気通路
20 フィルタ
21 白金触媒
23 外箱
【要約】 (修正有)
【課題】炭化処理も排気ガス処理も確実に行うことができる熱分解機を提供する。
【解決手段】有機物を投入する投入口4を設けた円筒体3の熱分解の一次処理室2を備え、この一次処理室2には、加熱装置を有し、前記投入口4より投入口の有機物を加熱して炭化処理をする。そして、前記一次処理室2にて炭化処理時に発生する排気ガスを前記一次処理室2と独立した二次処理室15へ導き、この二次処理室15内で排気ガスを加熱処理し有害物質を無くして、さらに前記二次処理室の後流側に送風機に至る排気通路18を設け、この排気通路18に白金触媒21を、その下流にフィルタを配したことにある。
【選択図】
図1