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  • 特許-半導体結晶ウェハの製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】半導体結晶ウェハの製造装置
(51)【国際特許分類】
   B28D 7/04 20060101AFI20240628BHJP
   B28D 5/04 20060101ALI20240628BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20240628BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B28D7/04
B28D5/04 C
B24B27/06 D
H01L21/304 611W
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2024027797
(22)【出願日】2024-02-27
【審査請求日】2024-02-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502330849
【氏名又は名称】有限会社サクセス
(74)【代理人】
【識別番号】240000693
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人滝田三良法律事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 愼介
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-297156(JP,A)
【文献】特開平10-337647(JP,A)
【文献】特開平10-128649(JP,A)
【文献】特開2019-048436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 7/04
B28D 5/00 - 5/04
B24B 27/06
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面の周方向全周に環状の溝がウェハの厚みに対応する間隔を存して複数形成された円柱状の半導体結晶インゴットを、前記溝に沿って輪切り状にスライスすることによりウェハを製造する半導体結晶ウェハの製造装置において、
前記半導体結晶インゴットを保持する保持装置と、前記保持装置に保持された半導体結晶インゴットに対してスラリーを供給すると共に複数のワイヤーソーを無端回動させつつ前記半導体結晶インゴットの軸線に直交する方向に進行させて半導体結晶インゴットを切断する切断装置とを備え、
前記保持装置は、スライス用ベースを介して前記半導体結晶インゴットを保持し、
前記スライス用ベースは、前記半導体結晶インゴットの軸線に沿って前記半導体結晶インゴットの外周面に接着して前記ワイヤーソーが前記半導体結晶インゴットと共に切り込み可能となる保持ブロックと、前記保持ブロックから前記半導体結晶インゴットの径方向に沿って延設されて、前記半導体結晶インゴットの軸線方向の両端面に接着する保持片とを備え、
前記保持ブロックは、前記半導体結晶インゴットに接触して接着する接触部と、前記接触部における前記半導体結晶インゴットの周方向の両側に形成された一対の側面部とを備え、
両側面部は、前記半導体結晶インゴット側で互いに交差する方向に傾斜しており、
両側面部の各傾斜に沿って仮想線を延長させたときの両仮想線は、互いに鋭角に交わり、且つ、両仮想線の交点は、前記半導体結晶インゴットの外周面に沿った円内に位置することを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円柱状の半導体結晶インゴットから輪切り状にスライスしてウェハを製造する半導体結晶ウェハの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体結晶ウェハであるSiCウェハは、結晶成長させた単結晶SiCの塊を円柱状のインゴットに加工した後、単結晶SiCのインゴットをスライスすることにより製造される(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
従来、インゴットのスライスは、ワイヤーソーを備える切断装置を用いることが知られている(例えば、下記特許文献2参照)。
【0004】
この種の切断装置によってスライスされるインゴットは、保持装置によって保持される。保持装置は、スライス用ベースを介してインゴットを保持する。スライス用ベースは、インゴットに分離可能に接着された状態で設けられる。
【0005】
インゴットを切り進んだワイヤーソーは、スライス用ベースにも切り込んでいく。これにより、インゴットに切残りが生じることなく輪切りにされて、薄板状のウェハが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-15646号公報
【文献】特開2023-169626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、インゴットを切り進んでインゴットに接着されスライス用ベースに達したワイヤーソーは、スライス用ベースに接し、更にインゴットと共にスライス用ベースに切り込んでいく。
【0008】
このとき、ワイヤーソーによる切断位置に供給されるスラリーが、スライス用ベースの側面に弾かれるように流下してしまい、ワイヤーソーと一緒に切断部分に侵入するスラリー量が少なくなる。
【0009】
このため、ウェハの切断面は、スライス用ベースに達する前にインゴット単独で切断された部分の切断面に比べて、スライス用ベースと共に切断された部分の切断面が粗くなり、高精度なウェハが得られない不都合があった。
【0010】
上記の点に鑑み、本発明は、高精度なウェハが得られる半導体結晶ウェハの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために、本発明は、外周面の周方向全周に環状の溝がウェハの厚みに対応する間隔を存して複数形成された円柱状の半導体結晶インゴットを、前記溝に沿って輪切り状にスライスすることによりウェハを製造する半導体結晶ウェハの製造装置において、前記半導体結晶インゴットを保持する保持装置と、前記保持装置に保持された半導体結晶インゴットに対してスラリーを供給すると共に複数のワイヤーソーを無端回動させつつ前記半導体結晶インゴットの軸線に直交する方向に進行させて半導体結晶インゴットを切断する切断装置とを備え、前記保持装置は、スライス用ベースを介して前記半導体結晶インゴットを保持し、前記スライス用ベースは、前記半導体結晶インゴットの軸線に沿って前記半導体結晶インゴットの外周面に接着して前記ワイヤーソーが前記半導体結晶インゴットと共に切り込み可能となる保持ブロックと、前記保持ブロックから前記半導体結晶インゴットの径方向に沿って延設されて、前記半導体結晶インゴットの軸線方向の両端面に接着する保持片とを備え、前記保持ブロックは、前記半導体結晶インゴットに接触して接着する接触部と、前記接触部における前記半導体結晶インゴットの周方向の両側に形成された一対の側面部とを備え、両側面部は、前記半導体結晶インゴット側で互いに交差する方向に傾斜しており、両側面部の各傾斜に沿って仮想線を延長させたときの両仮想線は鋭角に交わり、且つ、両仮想線の交点は前記半導体結晶インゴットの外周面に沿った円内に位置することを特徴とする。
【0012】
保持ブロックは、半導体結晶インゴットとの接触面積(接着面積)が小さいほど、切断中の半導体結晶インゴットとワイヤーソーへ確実にスラリーを供給することができる。しかし、保持ブロックが半導体結晶インゴットに接する面積(接着面積)を小さくすると、保持ブロックと半導体結晶インゴットとの間に十分な接着力が得られず、半導体結晶インゴットが保持装置から脱落するおそれがある。
【0013】
そこで、本発明は、保持ブロックに保持片を設けた。保持片は、半導体結晶インゴットの軸線方向の両端面に接着する。このような保持片を設けたことにより、保持ブロックが半導体結晶インゴットに接する面積(接着面積)を小さくすることができる。例えば具体的には、半導体結晶インゴットの外周面の周方向に沿って接する保持ブロックの幅寸法を小さくすることができる。
【0014】
これにより、半導体結晶インゴットをワイヤーソーが切断しているとき、スラリーが保持ブロックに沿って半導体結晶インゴットへ向かうので、切断中の半導体結晶インゴットに対して確実にスラリーを供給することができる。
【0015】
しかも、保持ブロックと半導体結晶インゴットとが接する面積(接着面積)が小さいことにより、ワイヤーソーが保持ブロックに切り込むときには、半導体結晶インゴットのスライスがほぼ完了した状態(ほぼ半導体結晶ウェハが形成された状態)にあるので、極めて円滑に半導体結晶ウェハを形成することができる。
【0016】
このように、本発明によれば、高精度なウェハが得られる半導体結晶ウェハの製造装置を提供することができる。
【0018】
更に、本発明における保持ブロックの両側面部は、半導体結晶インゴットの内部側で互いに交差する方向に傾斜しているので、接触部と各側面部との境界の角部は何れも鈍角となる。これにより、接触部と各側面部との境界の角部が直角や鋭角である場合に比べ、各側面部を伝って流下するスラリーが半導体結晶インゴットに付着し易くなる。よって、切断面が平滑で精度の高い半導体結晶ウェハを一層円滑に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態による半導体結晶ウェハの製造装置の要部構成を正面視して示す説明図。
図2図1の側面説明図。
図3】インゴットの切断時の状態を示す説明図。
図4】保持ブロックの形状を示す説明図。
図5】半導体結晶インゴットの切断時における保持ブロックの作用を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の装置は、円柱状の半導体結晶インゴットW(以下、インゴットWという)を輪切り状にスライスして、円形薄板状の導体結晶ウェハを形成するもののであり、図1及び図2に示すように、保持装置1と切断装置2とを備えている。
【0021】
保持装置1は、後述するスライス用ベース3を介してインゴットWを保持する。保持装置1によって保持するインゴットWは、図2に示すように、予め外周面に複数の溝が形成されている。
【0022】
各溝は、インゴットWの周方向全周に環状に形成されており、インゴットWの軸線方向に沿って所定間隔を存して設けられている。溝間隔は、図2においては説明の便宜上模式的に大きく示しているが、実際には、製造されるウェハの厚みに対応するため、極めて小さい間隔に形成されている。
【0023】
切断装置2は、図1に示すように、複数の(本実施形態においては3つの)ボビン4,5,6と、ボビン4,5,6に掛け渡されて無端回動するワイヤーソー7とを備えている。
【0024】
図2に示すように、各ボビン4,5,6には、インゴットWの各溝に対応するプーリ溝が形成されている。プーリ溝にワイヤーソー7を掛け渡すことにより、回動するワイヤーソー7の高い位置精度を維持している。
【0025】
切断装置2によってインゴットWを切断するときには、回動させた状態のワイヤーソー7に対して、保持装置1に保持されたインゴットWを、図3に示すように、相対的に下降させる。このとき、ワイヤーソー7によるインゴットWの切断位置にスラリーが供給されて、切断作業が円滑に進められる。
【0026】
ここで、本発明の要旨となるスライス用ベース3について詳説する。図1及び図2に示すように、スライス用ベース3は、保持ブロック8と保持片9とを備えている。
【0027】
保持ブロック8は、インゴットWの軸線に沿って長手となる細長形状とされ、インゴットWの外周面に接着されている。保持片9は、インゴットWの径方向に沿って延設されており、インゴットWの軸線方向の両端面に接着されている。保持片9は、保持ブロック8の両端に一体に連設されている。
【0028】
保持ブロック8は、図4に示すように断面視したとき、上底が下底よりも大きい倒立した台形状であり、下底に相当する接着面10(接触部)がインゴットWの外周面に接着されている。
【0029】
また、保持ブロック8の両側(インゴットWの周方向の両側)となる一対の側面部11,12は、図4に示した仮想延長線a,bのように、インゴットW側で互いに交差する方向に傾斜している。
【0030】
スライス用ベース3は、保持片9を備えることにより、確実にインゴットWを保持することができる。これによって、インゴットWの周方向を保持ブロック8の幅方向としたとき、保持ブロック8の接着面10の幅寸法を比較的小さくして、良好に側面部11,12に傾斜をつけることができる。
【0031】
このような形状のスライス用ベース3を設けることにより、図5に示すように、ワイヤーソー7の切断時に供給するスラリーの流れは、側面部11,12の傾斜により、矢印sで示すようにインゴットWに付着する方向に案内される。これによれば、特に、インゴットWの切断が終盤となるときでも、スラリーがインゴットWの溝内へ確実に供給される。よって、インゴットWは、円滑に精度よく輪切り状にスライスされ、高精度なウェハを得ることができる。
【符号の説明】
【0032】
W…半導体結晶インゴット、1…保持装置、2…切断装置、3…スライス用ベース、7…ワイヤーソー、8…保持ブロック、9…保持片、10…接着面(接触部)、11,12…側面部。

【要約】
【課題】高精度なウェハが得られる半導体結晶ウェハの製造装置を提供する。
【解決手段】半導体結晶インゴットWを保持する保持装置1と、半導体結晶インゴットWに対してスラリーを供給すると共に複数のワイヤーソー7を無端回動させつつ半導体結晶インゴットWの軸線に直交する方向に進行させて半導体結晶インゴットWを切断する切断装置2とを備える。保持装置1は、スライス用ベース3を介して半導体結晶インゴットWを保持する。スライス用ベース3は、半導体結晶インゴットWの軸線に沿って半導体結晶インゴットWの外周面に接着してワイヤーソーが半導体結晶インゴットWと共に切り込み可能となる保持ブロック8と、保持ブロック8から半導体結晶インゴットWの径方向に沿って延設されて、半導体結晶インゴットWの軸線方向の両端面に接着する保持片9とを備える。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5