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  • 特許-耐火性を有する木質壁 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】耐火性を有する木質壁
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20240628BHJP
   E04C 2/20 20060101ALI20240628BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
E04B1/94 W
E04C2/20 L
E04B2/56 645F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024028421
(22)【出願日】2024-02-28
【審査請求日】2024-02-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517242751
【氏名又は名称】合同会社良品店
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】芳賀沼 養一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 洋一
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-317052(JP,A)
【文献】実開昭54-005910(JP,U)
【文献】特開2007-046335(JP,A)
【文献】特開2019-015127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E04C 2/00 - 2/54
E04B 2/56 - 2/70
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
準耐火60分以上の耐火性能を備える耐火壁パネルであって、
複数の同一断面形の矩形状の木軸材が互いに軸平行に緊結された木質面材を備え、
該木質面材同士が空間を形成し、
複数の断熱材が該空間において各木質面材に接合され、該断熱材同士が接合されていることを特徴とする耐火壁パネル。
【請求項2】
前記断熱材はポリイソシアヌレート発泡体を含むことを特徴とする請求項1に記載の耐火壁パネル。
【請求項3】
厚さ12mmの前記木質面材が箱型の前記断熱材の両面に配されている断熱壁パネルの、一方の前記木質面材が850℃で燃焼されたときの、前記断熱材の1mm当たりの耐火時間が1.2分以上であることを特徴とする請求項2に記載の耐火壁パネル。
【請求項4】
前記断熱材の吸水率が10%以下であることを特徴とする請求項2に記載の耐火壁パネル。
【請求項5】
前記木質面材と前記断熱材との接合面に、透湿防水シートもしくは気密シートが密着されていることを特徴とする請求項4に記載の耐火壁パネル。
【請求項6】
前記木質面材の木裏あるいは木表にスリットが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の耐火壁パネル。
【請求項7】
前記空間には、所定の間隔を空けて平行に設置された柱材を備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の耐火壁パネル。
【請求項8】
前記空間には、所定の間隔を空けて平行に設置された柱材を備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の耐火壁パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い断熱等級に応じる木質の耐火壁パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート建築と比べた木造建築は、低く建築費用を抑えることができるが耐火性は劣っているといわれている。木造建築においては耐火性を高めるためにツーバイフォー工法又は木造軸組み工法によって、火災の延焼を抑えることができるものとなっている。さらに、外内面材間に断熱層を加え、断熱材によって火災の延焼を防ぐことができる。
【0003】
そこで、木製部材に耐火能力を持たせる技術が提案されているが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021―38655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
住宅の品質確保の促進等に関する法律にて規定された省エネ性能を満たすために、断熱等級に応じた断熱性が求められ、断熱材の厚みを所定以上に保つ必要があるが、断熱材を厚くするほど、断熱性および耐火性は高くなるが建築費用も高くなる。
例示した特許文献1などにおいては、被覆層を厚くすることによって耐火能力を高める一方で重量が大きくなり、施工までの工程及び手間が増え、建築費用も高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高い断熱等級に応じる木質の耐火壁パネルを提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1は準耐火60分以上の耐火性能を備える耐火壁パネルであって、
複数の同一断面形の矩形状の木軸材が互いに軸平行に緊結された木質面材を備え、
該木質面材同士が空間を形成し、
複数の断熱材が該空間において各木質面材に接合され、該断熱材同士が接合されていることを構成としている。
【0008】
(作用効果)
上記第1発明によれば、木材同士を緊結させた木質面材に断熱材を張り合わせたパネルとし、パネル同士を接合させた耐火壁パネルによって、耐火壁パネル毎に工場で事前に組み立てることができ、現場に持ち込むことができる。施工するときに耐火壁パネルの各部材を現場で組み立てることなく、現場にて施工することができるので工期の短縮につなぐことができる。
【0009】
また、前記断熱材はポリイソシアヌレート発泡体を含む構成としてもよい。
【0010】
(作用効果)
上記態様によれば、耐火壁パネルの耐火性を向上させることが可能となる。
【0011】
また、厚さ12mmの前記木質面材が箱型の前記断熱材の両面に配されている断熱壁パネルの、一方の前記木質面材が850℃で燃焼されたときの、前記断熱材の1mm当たりの耐火時間が1.2分以上である構成としてもよい。
【0012】
(作用効果)
上記態様によれば、耐火壁パネルは、60分以上の準耐火構造にすることができる。
【0013】
また、前記断熱材の吸水率は10%以下である構成としてもいい。
【0014】
(作用効果)
上記態様によれば、吸水率を低くし、断熱材の腐食やカビの発生を防ぐことが可能となる。
【0015】
また、前記木質面材と前記断熱材との接合面に、透湿防水シートもしくは気密シートが密着されている構成としてもよい。
【0016】
(作用効果)
上記態様によれば、透湿防水シートにより断熱材から湿気を通し、気密シートによって湿気を断熱材に通さないようにすることにより、断熱材を腐食及びカビの発生を防ぐことができる。
【0017】
また、前記木質面材の木裏あるいは木表にスリットが設けられている構成としてもよい。
【0018】
(作用効果)
上記態様によれば、スリットを設けることによって、木材が木裏或いは木表にそって反らないようにすることができる。
【0019】
また、前記空間には、所定の間隔を空けて平行に設置された柱材を備えている構成としてもよい。
【0020】
(作用効果)
柱材を断熱層に盛り込むことにより、耐火壁パネルを耐力壁として、強度を持たせることができるようにするとともに、断熱材と柱によって縁切りすることができるので延焼の防止が可能となる。
【0021】
また、前記断熱材が箱型であり、接合された前記断熱材同士の接合面の面積は、前記断熱材の前記接合面に平行な面の面積よりも小さい構成としてもよい。
【0022】
(作用効果)
上記態様によれば、断熱材同士が接合されていない断熱材の面があることにより、耐火壁パネル同士を接合するときの接触する面積が増え、その分の面積を防火処理によって耐火壁パネル間での延焼を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態における耐火壁パネル同士が断熱材どうして接合された斜視図である。
図2図1における耐火壁パネル同士がずれて接合された斜視図である。
図3】木質面材同士で形成した空間に柱材を備えた耐火壁パネルの斜視図である。
図4】燃焼試験にて耐火壁パネルを燃焼した際のモデル図である。
図5図1において木軸材にスリットを切れ込んだ斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明における耐火壁パネル1について説明する。図1に示すように、耐火壁パネル1は、複数の木軸材3、3を緊結した木質面材2と、断熱材4とによってなるものである。なお、図1における室内に面する耐火壁パネル1を室内側とし、室外に面し水切り11を有する耐火壁パネル1を室外側と、耐火壁パネル1において天井側を上方向、床側を下方向、天井高さを高さ方向と呼称する。本実施の形態では、壁材として用いられる耐火壁パネルを例に挙げて説明する。
【0025】
(実施例1)
本発明の実施例1における植物形状の耐火壁パネル1について説明する。図1に示すように、集成材などである木軸材3が複数、その軸方向に沿ってビスなどの締結具によって貫入して緊結させた木質面材2が構成される。
【0026】
木軸材3は略矩形状で、棒状のものである。木質面材2の、木軸材3同士の接合した面と垂直な面における長さは、各通柱の内法の範囲に収容される大きさとなっており、略600mmまでが好ましい。また、木質面材2は施工現場にて施工せず、工場にて製作することができる。
【0027】
木質面材2同士を互いに立設させることによって、空間が形成される。この空間は、断熱材4等を設け耐火壁パネル1を介して火災が伝搬しないような構成としている。
【0028】
そして、空間側において木質面材2の高さ方向(図1参照)の面には、断熱材4が木質面材2とタッカーで留めるようにてして貫入され、一方の木質面材2と他方の木質面材2へと座彫りしてダボ埋め加工を行うことによって耐火壁パネル1が形成される。木質面材2は断熱材4の面を覆うほどであり、断熱材4はボード状のものであり木質面材2の大きさに合わせて事前に製作することが可能である。
【0029】
断熱材2はイソシアヌレート発泡体、ポリスチレン発泡体、フェノール発泡体、ロックウール、グラスウールなどから選択され、特に耐火壁パネル1の断熱材4はポリイソシアヌレート発泡体を含むことが好ましい。また、断熱材4は空間を充足するように配されており、本実施例では、木質面材2同士の対する面に、断熱材4同士が接する。
【0030】
本実施例の耐火壁パネル1は、基礎梁又は地中梁に用いて建材のように使用される。実際には複数の耐火壁パネル1、1を土台10の上面に当接させるようにして取り付ける。具体的には、基礎12の立ち上がりに設けられた土台10に、室外側の耐火壁パネル1は木質面材4が覆うようにして水切り11の一端を挟持して接合している。室内側の耐火壁パネル1は木質面材4が床パネルに接するまで延設されている。なお、後述するほかの実施例における水切り11及び基礎12は共通する。
【0031】
通柱間に設置された耐火壁パネル1、1は、天井梁によって圧設され、気密性を保ちながら建物の外部と内部を隔てることが可能となる。また、耐火壁パネル1は、木質面材2と断熱材4との面の間に、気密シート7もしくは透湿防水シート8を封入することが可能である。透湿防水シート8により断熱材4から湿気を通し、気密シート7によって湿気を断熱材4に通さないようにすることにより、断熱材4を腐食及びカビの発生を防ぐことができる。なお、室内側もしくは室外側に封入する両シートの選択は任意である。またシートは後述する実施例に選択して封入することができる。
【0032】
すなわち、木質面材2同士によって土台10上に空間を形成し、その空間内において断熱材4がお互いの木質面材2に接合するようにして位置している。さらに、柱間が事前に把握できていれば工場で事前に耐火壁パネル1を準備でき、施工現場に運搬し、施工することによって施工時期および人工の短縮になる。
【0033】
(実施例2)
別の、実施形態の耐火壁パネル1について説明する。上記の耐火壁パネル1と異なり、図2に示すように各々の耐火壁パネル1、1が異なる方向に所定の位置だけずれているものになっている。
【0034】
また、断熱材4を箱型のように立体形状にすることによって、ある程度の強度を保たせることができ、空間を成す木質面材2によらずとも自立して立設することができる。さらに、耐火壁パネル1同士を接合する際、耐火壁パネル1、1をずらすことによって、断熱材4同士が接合されていない断熱材4の面があることにより、耐火壁パネル1同士を接合するときの接触する面積が増え、その分の面積を防火処理によって耐火壁パネル1間での延焼を防止できる。
【0035】
(実施例3)
本実施例は、図3に示すように空間において断熱材4同士を縁切りするように、柱材5を立設させる。柱材5の周面には不燃塗料を塗布し、耐火壁パネル1の耐火性に寄与している。柱材5、5同士は、略1000メートルまでの間隔で配置される。すると、柱材5を通柱又は間柱として用いた耐火壁パネル1、1は強度をもたせることができ、加えて、柱材5を用いない耐火壁パネル1、1とを組み合わせて壁を構成することも可能である。さらに断熱材4と柱材5によって縁切りすることにより延焼防止となる。すなわち断熱材4同士が接合されていない断熱材4の面があることにより、耐火壁パネル1同士を接合するときの接触する面積が増え、その分の面積を防火処理によって耐火壁パネル1間での延焼を防止できる。
【0036】
(耐火実験)
耐火壁パネル1の耐火実験を行い、準耐火の指標を計測した。図4に示す通り厚さ12mmの木質面材2同士によって断熱材を挟持した耐火壁パネル1を、レンガの炉に投入し、一方の木質面材2を850℃のバーナーで加熱したときの、木質面材2の非加熱面の表面温度が100℃になるまでの倒壊、亀裂及び損傷を観察した。ポリイソシアヌレート発泡体とほかの比較例としてフェノールフォーム、グラスウールを使用した。
【0037】
各々の断熱材の厚み1mmごとに非加熱面が100℃に達するまでの時間を計算したところグラスウールが0.4分以上であり、フェノールフォームは1.0分以上であり、その他は1.2分以上を示した。
【0038】
上記の実験から、断熱材4としてポリイソシアヌレート発泡体を使用することによって準耐火60分以上の耐火壁パネル1とすることが可能となる。
【0039】
(吸水試験)
さらに、断熱材の吸水試験を行ったところ、どれも吸水率が10%以下であることを示した。これにより、断熱材4の腐食及びカビの発生を防ぐことが可能となる。
【0040】
上述した実施例に加え、耐火壁パネル1は、図5に示すように、木質面材2の木裏また木表には片面からスリット6が切り込まれており、スリットによって、木材が木表にそってそらないようにすることができる。
【符号の説明】
【0041】
1…耐火壁パネル、
2…木質面材、3…木軸材、4…断熱材、
5…柱材、6…スリット、7、8‥シート、
10…土台、11…水切り、12…基礎、
【要約】
【課題】高い断熱等級に応じる木質の耐火壁パネルを提供する。
【解決手段】
準耐火60分以上の耐火性能を備える耐火壁パネル1であって、
複数の同一断面形の矩形状の木軸材3が互いに軸平行に緊結された木質面材2を備え、
この木質面材同士2が空間を形成し、
複数の断熱材4が該空間において各木質面材2に接合され、この断熱材4同士が接合されていることを特徴とする耐火壁パネル。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5