(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】マグネシウムと、カルシウムと、クロム、マンガン及びジルコニウムのうちの少なくとも1つとを添加したアルミニウム合金、並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 21/06 20060101AFI20240628BHJP
B22D 21/04 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C22C21/06
B22D21/04 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018076650
(22)【出願日】2018-04-12
【審査請求日】2021-04-08
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-06
(32)【優先日】2017-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(73)【特許権者】
【識別番号】511118595
【氏名又は名称】コリア インスティテュート オブ インダストリアル テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シー, ドナルド エス.
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン, ポール エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】キム, シェイ-グァン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ボン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】ユン, ヨン-オク
【合議体】
【審判長】井上 猛
【審判官】佐藤 陽一
【審判官】相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-61311号公報
【文献】特開平11-61312号公報
【文献】特開2010-180422号公報
【文献】特開2008-231565号公報
【文献】中国特許出願公開第104862539号明細書
【文献】特開平7-310153号公報
【文献】特開平7-18389号公報
【文献】特開平6-136496号公報
【文献】特開平3-287739号公報
【文献】特開2007-77486号公報
【文献】特開2007-100205号公報
【文献】特開2007-21533号公報
【文献】特開2006-206932号公報
【文献】特開2007-98407号公報
【文献】特開2008-25006号公報
【文献】特開2006-249481号公報
【文献】特開2014-125665号公報
【文献】特開平8-311625号公報
【文献】特開平8-199278号公報
【文献】特開平4-246148号公報
【文献】特開平4-308055号公報
【文献】特開平4-214834号公報
【文献】特開平5-345963号公報
【文献】特開2013-129909号公報
【文献】特開2011-104655号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22F 1/04- 1/057
C22C 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムと、
6重量パーセントから9重量パーセントのマグネシウムと、
50ppmから900ppmのカルシウムと、
0.01重量パーセントから0.2重量パーセントのクロム、
0.01重量パーセントから0.3重量パーセントのマンガン、
及び
0.01重量パーセントから0.2重量パーセントのジルコニウ
ムのうちの少なくとも1つと
からなり、
室温において少なくとも30パーセントの破断伸びを有する、航空機用アルミニウム合金。
【請求項2】
前記クロムが、0.01重量パーセントから0.1重量パーセントで存在する、請求項1に記載のアルミニウム合金。
【請求項3】
前記マンガンが、0.01重量パーセントから0.2重量パーセントで存在する、請求項1又は2に記載のアルミニウム合金。
【請求項4】
前記ジルコニウムが、0.01重量パーセントから0.1重量パーセントで存在する、請求項1から3の何れか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項5】
前記カルシウムが、500ppmから900ppmで存在する、請求項1から4の何れか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項6】
前記マグネシウムが、8重量パーセントから9重量パーセントで存在する、請求項1から5の何れか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項7】
カルシウムを含むマグネシウム母合金を調製することと、
前記マグネシウム母合金をアルミニウムに添加することと
を含む、請求項1に記載のアルミニウム合金を製造するための方法。
【請求項8】
前記マグネシウム母合金を前記調製することが、
溶融母材を生成するために、マグネシウムを含む母材を溶融することと、
カルシウム系化合物を前記溶融母材に添加することと
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記カルシウム系化合物が、カルシウムと、マグネシウム及びアルミニウムのうちの少なくとも1つとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カルシウム系化合物が、CaO、CaCN
2、CaC
2、Ca(OH)
2、CaCO
3、Mg
2Ca、Al
2Ca、Al
4Ca、(Mg、Al)
2Ca、及びこれらの組み合わせから成る群から選択されている、請求項
8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、アルミニウム合金及びアルミニウム合金を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金は、比較的高い強度対重量比を有している。したがって、金属外板で覆われた航空機が導入されて以来、アルミニウム合金は、航空宇宙製造において重要である。様々な種類のアルミニウム合金が開発されてきた。例えば、アメリカのアルミニウム協会は、マグネシウム含有アルミニウム合金を5000系アルミニウム合金として分類している。
【0003】
アルミニウム-マグネシウム合金は、他の従来のアルミニウム合金と比べ、ある利点(例えば、軽量)を提供する。マグネシウムの添加により、アルミニウム合金の強度が増し、合金を表面処理により好ましいものとし、耐食性が改善する。しかしながら、アルミニウム-マグネシウム合金のマグネシウム含有量が5重量パーセント以上など増加すると、そのような合金は、鋳造するのが難しくなる。更に、高マグネシウム含有量のアルミニウム-マグネシウム合金には大きな金属間介在物が見られたのであるが、これは、低延性をもたらし、疲労性能を低下させる傾向がある。
【0004】
したがって、当業者は、アルミニウム合金分野の研究開発の努力を継続している。
【発明の概要】
【0005】
1つの実施形態では、開示されたアルミニウム合金は、アルミニウムと、約6重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウムと、約0.2重量パーセントまでのクロムとを含む。
【0006】
別の実施形態では、開示されたアルミニウム合金は、アルミニウムと、約6重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウムと、約0.3重量パーセントまでのマンガンとを含む。
【0007】
別の実施形態では、開示されたアルミニウム合金は、アルミニウムと、約6重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウムと、約0.2重量パーセントまでのジルコニウムとを含む。
【0008】
別の実施形態では、開示されたアルミニウム合金は、アルミニウムと、約6重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウムと、約0.2重量パーセントまでのクロム、約0.3重量パーセントまでのマンガン及び約0.2重量パーセントまでのジルコニウムのうちの少なくとも1つとを含む。
【0009】
別の実施形態では、開示されたアルミニウム合金は、アルミニウムと、約2.5重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウムと、約50ppmから約3000ppmのカルシウムと、約0.2重量パーセントまでのクロムとを含む。
【0010】
別の実施形態では、開示されたアルミニウム合金は、アルミニウムと、約2.5重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウムと、約50ppmから約3000ppmのカルシウムと、約0.3重量パーセントまでのマンガンとを含む。
【0011】
別の実施形態では、開示されたアルミニウム合金は、アルミニウムと、約2.5重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウムと、約50ppmから約3000ppmのカルシウムと、約0.2重量パーセントまでのジルコニウムとを含む。
【0012】
更に別の実施形態では、開示されたアルミニウム合金は、アルミニウムと、約2.5重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウムと、約50ppmから約3000ppmのカルシウムと、約0.2重量パーセントまでのクロム、約0.3重量パーセントまでのマンガン及び約0.2重量パーセントまでのジルコニウムのうちの少なくとも1つとを含む。
【0013】
1つの実施形態では、開示されたアルミニウム合金を製造するための方法は、カルシウムを含有するマグネシウム母合金を調製するステップと、カルシウムを含有するマグネシウム母合金をアルミニウムに添加するステップとを含む。カルシウムを含有するマグネシウム母合金は、母材を溶融することにより溶融母材を形成するステップと、カルシウム系化合物を溶融母材に添加するステップとによって、調製することができる。カルシウム系化合物は、カルシウムと、マグネシウム、クロム、ジルコニウム、チタニウム及びアルミニウムのうちの少なくとも1つとを含むことができるだろう。代替的には、カルシウム系化合物は、カルシウムと、酸素、シアン化物、炭化物、水酸化物及び炭酸塩のうちの少なくとも1つとを含むことができるだろう。添加されるカルシウムの量は、マグネシウム含有量に比例しうる。
【0014】
別の実施形態では、開示されたアルミニウム合金を製造するための方法は、ベリリウム及びマグネシウム合金を形成するためにベリリウムとマグネシウムとを一緒に合金化するステップと、続いてベリリウム及びマグネシウム合金をアルミニウムに添加するステップとを含む。
【0015】
更に別の実施形態では、開示されたアルミニウム合金を製造するための方法は、溶融物(molten mass)を生成するために、アルミニウムと、マグネシウムと、クロム、マンガン及びジルコニウムのうちの少なくとも1つとを溶融するステップであって、真空及び表面フラックスのうちの少なくとも1つの下で溶融が行われる、溶融するステップと、固体の塊(solid mass)を生成するために溶融物を冷却するステップとを含む。
【0016】
開示されたアルミニウム合金及びその製造方法の他の実施形態は、以下の詳細な説明、添付の図面及び別記の特許請求の範囲により、明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】開示されたアルミニウム合金を製造するための方法の1つの実施形態を示すフロー図である。
【
図2】開示されたアルミニウム合金を製造するための方法の別の実施形態を示すフロー図である。
【
図3】開示されたアルミニウム合金を製造するための方法の更に別の実施形態を示すフロー図である。
【
図4】航空機の製造及び保守方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
クロム、マンガン及びジルコニウムのうちの少なくとも1つ、並びに任意選択的にカルシウムの添加を伴う、アルミニウム合金、特にアルミニウム-マグネシウム合金が開示される。アルミニウム合金において従来使用されてきた様々な他の成分もまた、開示されたアルミニウム合金内に存在しうる。
【0019】
開示されたアルミニウム合金は、約6重量パーセントから約17.4重量パーセントといった、約2.5重量パーセントから約17.4重量パーセントのレベルでマグネシウムを含みうる。典型的には市販製品のマグネシウムの重量パーセントが5.0パーセント以下である、従来の5000系合金と比べて、比較的高いマグネシウムは、延性及び強度の増加などの強化された特性をもたらすことがある。クロム及び/又はマンガン及び/又はジルコニウムの添加は、開示されたアルミニウム合金での粒成長及び再結晶を抑制しうる。
【0020】
開示されたアルミニウム合金において、クロム、マンガン及びジルコニウムの量は、アルミニウム合金のマグネシウム含有量に対して、特に調整されうる。クロム、マンガン及びジルコニウムに加え、カルシウムがまた、ある実施例において存在してもよく、カルシウムがまた、粒成長及び再結晶の抑制に貢献しうる。用いられるカルシウムの量は、特に、マグネシウム含有量に対して調整されうる。
【0021】
開示されたアルミニウム合金は、改善した引張伸びといった強化された特性を提示しうる。例えば、開示されたアルミニウム合金の引張伸びは、形成性、ひずみ硬化及び損傷耐性に関するアルミニウム-マグネシウム合金の性能の著しい改善でありうる、従来の5000系アルミニウム合金より少なくとも約10パーセント大きくてもよい。
【0022】
第1の一般例として、開示されたアルミニウム合金は、表1に示す組成を有しうる。
【0023】
したがって、表1のアルミニウム合金は、アルミニウム、約2.5重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウム、約50ppmから約3000ppmのカルシウム、及び約0.2重量パーセントまでのゼロではない量のクロムを含みうる。加えて、表1のアルミニウム合金は、約1.4重量パーセントまでのケイ素;約1.2重量パーセントまでの鉄;約0.8重量パーセントまでの銅;約0.1重量パーセントまでのニッケル;約2.8重量パーセントまでの亜鉛;約0.05重量パーセントまでのガリウム;約0.05重量パーセントまでのバナジウム;約0.05重量パーセントまでのスカンジウム;及び/又は約0.20重量パーセントまでのチタニウムを含みうる。
【0024】
表1のアルミニウム合金に対する1つの変形例では、開示されたアルミニウム合金は、アルミニウム、約6重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウム、約50ppmから約3000ppmのカルシウム、及び約0.2重量パーセントまでのゼロではない量のクロムを含みうる。加えて、開示されたアルミニウム合金は、約1.4重量パーセントまでのケイ素;約1.2重量パーセントまでの鉄;約0.8重量パーセントまでの銅;約0.1重量パーセントまでのニッケル;約2.8重量パーセントまでの亜鉛;約0.05重量パーセントまでのガリウム;約0.05重量パーセントまでのバナジウム;約0.05重量パーセントまでのスカンジウム;及び/又は約0.20重量パーセントまでのチタニウムを含みうる。
【0025】
第2の一般例として、開示されたアルミニウム合金は、表2に示す組成を有しうる。
【0026】
したがって、表2のアルミニウム合金は、アルミニウム、約2.5重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウム、約50ppmから約3000ppmのカルシウム、及び約0.3重量パーセントまでのゼロではない量のマンガンを含みうる。加えて、表2のアルミニウム合金は、約1.4重量パーセントまでのケイ素;約1.2重量パーセントまでの鉄;約0.8重量パーセントまでの銅;約0.1重量パーセントまでのニッケル;約2.8重量パーセントまでの亜鉛;約0.05重量パーセントまでのガリウム;約0.05重量パーセントまでのバナジウム;約0.05重量パーセントまでのスカンジウム;及び/又は約0.20重量パーセントまでのチタニウムを含みうる。
【0027】
表2のアルミニウム合金の1つの変形例では、開示されたアルミニウム合金は、アルミニウム、約6重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウム、約50ppmから約3000ppmのカルシウム、及び約0.3重量パーセントまでのゼロではない量のマンガンを含みうる。加えて、開示されたアルミニウム合金は、約1.4重量パーセントまでのケイ素;約1.2重量パーセントまでの鉄;約0.8重量パーセントまでの銅;約0.1重量パーセントまでのニッケル;約2.8重量パーセントまでの亜鉛;約0.05重量パーセントまでのガリウム;約0.05重量パーセントまでのバナジウム;約0.05重量パーセントまでのスカンジウム;及び/又は約0.20重量パーセントまでのチタニウムを含みうる。
【0028】
第3の一般例として、開示されたアルミニウム合金は、表3に示す組成を有しうる。
【0029】
したがって、表3のアルミニウム合金は、アルミニウム、約2.5重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウム、約50ppmから約3000ppmのカルシウム、及び約0.2重量パーセントまでのゼロではない量のジルコニウムを含みうる。加えて、表3のアルミニウム合金は、約1.4重量パーセントまでのケイ素;約1.2重量パーセントまでの鉄;約0.8重量パーセントまでの銅;約0.1重量パーセントまでのニッケル;約2.8重量パーセントまでの亜鉛;約0.05重量パーセントまでのガリウム;約0.05重量パーセントまでのバナジウム;約0.05重量パーセントまでのスカンジウム;及び/又は約0.20重量パーセントまでのチタニウムを含みうる。
【0030】
表3のアルミニウム合金の1つの変形例では、開示されたアルミニウム合金は、アルミニウム、約6重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウム、約50ppmから約3000ppmのカルシウム、及び約0.2重量パーセントまでのゼロではない量のジルコニウムを含みうる。加えて、開示されたアルミニウム合金は、約1.4重量パーセントまでのケイ素;約1.2重量パーセントまでの鉄;約0.8重量パーセントまでの銅;約0.1重量パーセントまでのニッケル;約2.8重量パーセントまでの亜鉛;約0.05重量パーセントまでのガリウム;約0.05重量パーセントまでのバナジウム;約0.05重量パーセントまでのスカンジウム;及び/又は約0.20重量パーセントまでのチタニウムを含みうる。
【0031】
第4の一般例として、開示されたアルミニウム合金は、表4に示す組成を有しうる。
【0032】
したがって、表4のアルミニウム合金は、アルミニウム、約2.5重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウム、約50ppmから約3000ppmのカルシウム、並びに約0.2重量パーセントまでのゼロではない量のクロム、約0.2重量パーセントまでのゼロではない量のジルコニウム、及び約0.3重量パーセントまでのゼロではない量のマンガンのうちの少なくとも1つを含みうる。加えて、表4のアルミニウム合金は、約1.4重量パーセントまでのケイ素;約1.2重量パーセントまでの鉄;約0.8重量パーセントまでの銅;約0.1重量パーセントまでのニッケル;約2.8重量パーセントまでの亜鉛;約0.05重量パーセントまでのガリウム;約0.05重量パーセントまでのバナジウム;約0.05重量パーセントまでのスカンジウム;及び/又は約0.20重量パーセントまでのチタニウムを含みうる。
【0033】
表3のアルミニウム合金の1つの変形例では、開示されたアルミニウム合金は、アルミニウム、約6重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウム、約50ppmから約3000ppmのカルシウム、並びに約0.2重量パーセントまでのゼロではない量のクロム、約0.2重量パーセントまでのゼロではない量のジルコニウム、及び約0.3重量パーセントまでのゼロではない量のマンガンのうちの少なくとも1つを含みうる。加えて、開示されたアルミニウム合金は、約1.4重量パーセントまでのケイ素;約1.2重量パーセントまでの鉄;約0.8重量パーセントまでの銅;約0.1重量パーセントまでのニッケル;約2.8重量パーセントまでの亜鉛;約0.05重量パーセントまでのガリウム;約0.05重量パーセントまでのバナジウム;約0.05重量パーセントまでのスカンジウム;及び/又は約0.20重量パーセントまでのチタニウムを含みうる。
【0034】
第5の一般例として、開示されたアルミニウム合金は、表5に示す組成を有しうる。
【0035】
したがって、表5のアルミニウム合金は、アルミニウム、約6重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウム、約0.2重量パーセントまでのゼロではない量のクロム、及び任意選択的にベリリウムを含みうる。加えて、表5のアルミニウム合金は、約1.4重量パーセントまでのケイ素;約1.2重量パーセントまでの鉄;約0.8重量パーセントまでの銅;約0.1重量パーセントまでのニッケル;約2.8重量パーセントまでの亜鉛;約0.05重量パーセントまでのガリウム;約0.05重量パーセントまでのバナジウム;約0.05重量パーセントまでのスカンジウム;及び/又は約0.20重量パーセントまでのチタニウムを含みうる。
【0036】
第6の一般例として、開示されたアルミニウム合金は、表6に示す組成を有しうる。
【0037】
したがって、表6のアルミニウム合金は、アルミニウム、約6重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウム、約0.3重量パーセントまでのゼロではない量のマンガン、及び任意選択的にベリリウムを含みうる。加えて、表6のアルミニウム合金は、約1.4重量パーセントまでのケイ素;約1.2重量パーセントまでの鉄;約0.8重量パーセントまでの銅;約0.1重量パーセントまでのニッケル;約2.8重量パーセントまでの亜鉛;約0.05重量パーセントまでのガリウム;約0.05重量パーセントまでのバナジウム;約0.05重量パーセントまでのスカンジウム;及び/又は約0.20重量パーセントまでのチタニウムを含みうる。
【0038】
第7の一般例として、開示されたアルミニウム合金は、表7に示す組成を有しうる。
【0039】
したがって、表7のアルミニウム合金7は、アルミニウム、約6重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウム、約0.2重量パーセントまでのゼロではない量のジルコニウム、及び任意選択的にベリリウムを含みうる。加えて、表7のアルミニウム合金は、約1.4重量パーセントまでのケイ素;約1.2重量パーセントまでの鉄;約0.8重量パーセントまでの銅;約0.1重量パーセントまでのニッケル;約2.8重量パーセントまでの亜鉛;約0.05重量パーセントまでのガリウム;約0.05重量パーセントまでのバナジウム;約0.05重量パーセントまでのスカンジウム;及び/又は約0.20重量パーセントまでのチタニウムを含みうる。
【0040】
第8の一般例として、開示されたアルミニウム合金は、表8に示す組成を有しうる。
【0041】
したがって、表8のアルミニウム合金は、アルミニウムと、約6重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウムと、約0.2重量パーセントまでのゼロではない量のクロム、約0.2重量パーセントまでのゼロではない量のジルコニウム、及び約0.3重量パーセントまでのゼロではない量のマンガンのうちの少なくとも1つと、任意選択的にベリリウムとを含みうる。加えて、表8のアルミニウム合金は、約1.4重量パーセントまでのケイ素;約1.2重量パーセントまでの鉄;約0.8重量パーセントまでの銅;約0.1重量パーセントまでのニッケル;約2.8重量パーセントまでの亜鉛;約0.05重量パーセントまでのガリウム;約0.05重量パーセントまでのバナジウム;約0.05重量パーセントまでのスカンジウム;及び/又は約0.20重量パーセントまでのチタニウムを含みうる。
【0042】
第9の一般例として、開示されたアルミニウム合金は、表9に示す組成を有しうる。
【0043】
表9の一般例では、Cr、Zr及びMnのうちの少なくとも1つが、特定の限度までのゼロではない量で存在する。
【0044】
物理的特性に実質的に影響しない様々な不純物もまた、開示されたアルミニウム合金の中に存在しうる。当業者は、そのような不純物の存在が、結果的に本開示の範囲から逸脱しないことを理解するだろう。
【0045】
開示されたアルミニウム合金を製造する方法もまた開示される。製造されるアルミニウム合金の最終組成は、使用される製造方法に依存しうる。
【0046】
第1の実施形態では、開示されたアルミニウム合金を製造するための方法は、アルミニウムと、約2.5重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウムと、約50ppmから約3000ppmのカルシウムと、約0.2重量パーセントまでのクロム、約0.2重量パーセントまでのジルコニウム及び約0.3重量パーセントまでのマンガンのうちの少なくとも1つとを含むアルミニウム合金を生成する。開示された方法は、(1)カルシウムを含むマグネシウム母合金を調製するステップと、(2)当該マグネシウム母合金をアルミニウム(純アルミニウムか合金化されたアルミニウムかのどちらか)に添加するステップとを含む。
【0047】
図1を参照すると、一般に10で示されている、第1の実施形態によるアルミニウム合金を製造するための方法は、ブロック12において溶融したマグネシウムを調製するステップで開始しうる。マグネシウム(純マグネシウムか合金化されたマグネシウムかのどちらか)がるつぼ内に置かれ、約400℃から約800℃の範囲の温度まで加熱されうる。溶融温度は、組成に応じて変化しうる。
【0048】
ブロック14では、溶融したマグネシウムをカルシウム系化合物と組み合わせる。様々なカルシウム系化合物が使用されうる。1つの一般的かつ非限定的例として、カルシウム系化合物は、カルシウム及びアルミニウムを含みうる。別の一般的かつ非限定的例として、カルシウム系化合物は、カルシウム及びマグネシウムを含みうる。適切なカルシウム系化合物の特定の非限定的実施例は、CaO、CaCN2、CaC2、Ca(OH)2、CaCO3、Mg2Ca、Al2Ca、Al4Ca、(Mg、Al)2Ca、及びこれらの組み合わせを含む。
【0049】
ブロック16では、溶融したマグネシウム及びカルシウム系化合物の混合物が、マグネシウムとカルシウム系化合物との間の反応を促進し、最終的にマグネシウム母合金18を生成するために、撹拌されうる。撹拌すること(ブロック16)は、溶融したマグネシウムを保持する炉周囲に電磁場を印加し、溶融したマグネシウムの対流を誘導することができるデバイスを使用して電磁場を生成することによって実行されうる。また、人工撹拌(機械撹拌)が、外側から溶融したマグネシウムの上で実行されてもよい。
【0050】
ブロック20では、開示されたアルミニウム合金22を生成するために、マグネシウム母合金がアルミニウム(純アルミニウムか合金化されたアルミニウムかのどちらか)に添加される。ブロック24では、アルミニウム合金22を室温で又は予熱状態で型に注ぐことによって、鋳造が実行されうる。型は、金属型、セラミック型、黒鉛型又はそのようなものを含みうる。また、鋳造は、重力鋳造、継続鋳造及びこれらに同等の方法を含みうる。凝固させるステップでは、ブロック26で、型が室温まで冷却され、その後、凝固したアルミニウム合金が型から除去されうる。続いて、任意選択的にだが、凝固したアルミニウム合金は、加熱処理及び/又は成形(例えば、熱間成形/温間成形)などの更なる処理を受けてもよい。
【0051】
第2の実施形態では、開示されたアルミニウム合金を製造するための方法は、アルミニウムと、約6重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウムと、ベリリウムと、約0.2重量パーセントまでのクロム、約0.2重量パーセントまでのジルコニウム及び約0.3重量パーセントまでのマンガンのうちの少なくとも1つとを含むアルミニウム合金を生成する。開示された方法は、(1)ベリリウム及びマグネシウム合金を形成するために、ベリリウム及びマグネシウムを一緒に合金化するステップ、及び(2)ベリリウム及びマグネシウム合金をアルミニウムに添加するステップを含む。ベリリウムは、5ppmから100ppmで存在しうる。
【0052】
図2を参照すると、一般に40で示されている、第2の実施形態によるアルミニウム合金を製造するための方法は、ブロック42で、マグネシウム(例えば、純マグネシウム)をベリリウム(例えば、純ベリリウム)と合金化するステップで開始し、ベリリウム及びマグネシウム合金44を生成する。例えば、合金化するステップ(ブロック42)は、マグネシウム及びベリリウムを約400℃から約800℃の範囲の温度で溶融解させることを含みうる。
【0053】
ブロック46では、開示されたアルミニウム合金48を生成するために、ベリリウム及びマグネシウム合金44がアルミニウム(純アルミニウム又は合金化されたアルミニウム)に添加される。ブロック50では、アルミニウム合金48を室温で又は予熱状態で型に注ぐことによって、鋳造が実行されうる。型は、金属型、セラミック型、黒鉛型又はそのようなものを含みうる。また、鋳造は、重力鋳造、継続鋳造及びこれらに同等の方法を含みうる。凝固させるステップでは、ブロック52で、型が室温まで冷却され、その後、凝固したアルミニウム合金が型から除去されうる。続いて、任意選択的にだが、凝固したアルミニウム合金は、均質化などといった、熱間/温間成形(ブロック54)及び/又は加熱処理(ブロック56)などの更なる処理を受けてもよい。任意選択の成形するステップ(ブロック54)及び加熱処理のステップ(ブロック56)は、SO2ガスの保護ブランケット下で実行されうる。
【0054】
第3の実施形態では、開示されたアルミニウム合金を製造するための方法は、アルミニウムと、約6重量パーセントから約17.4重量パーセントのマグネシウムと、約0.2重量パーセントまでのクロム、約0.2重量パーセントまでのジルコニウム及び約0.3重量パーセントまでのマンガンのうちの少なくとも1つとを含むアルミニウム合金を生成する。開示された方法は、(1)溶融物を生成するために、アルミニウムと、マグネシウムと、クロム、ジルコニウム及びマンガンのうちの少なくとも1つを溶融解させるステップ、及び(2)固体の塊を生成するために、溶融物を冷却するステップを含む。
【0055】
図3を参照すると、第3の実施形態によるアルミニウム合金を製造するための方法は、一般に70で示されているが、ブロック72で、アルミニウムと、クロム、ジルコニウム及びマンガンのうちの少なくとも1つとを含む溶融物を調製するステップで開始しうる。溶融物は、約400℃から約800℃の範囲の温度まで加熱されうる。
【0056】
ブロック74では、マグネシウム(例えば、純マグネシウム)が、開示されたアルミニウム合金76を生成するために、アルミニウムと、クロム、ジルコニウム及びマンガンのうちの少なくとも1つとの溶融物に添加されうる。1つの実施態様では、マグネシウムの溶融物への添加(ブロック74)が、真空下で実行されてもよい。別の実施態様では、マグネシウムの溶融物への添加(ブロック74)の前に、表面フラックスが使用されてもよい。
【0057】
ブロック78では、アルミニウム合金76を室温で又は予熱状態で型に注ぐことによって、鋳造が実行されうる。型は、金属型、セラミック型、黒鉛型又はそのようなものを含みうる。また、鋳造は、重力鋳造、継続鋳造及びこれらに同等の方法を含みうる。凝固させるステップでは、ブロック80で、型が室温まで冷却され、その後、凝固したアルミニウム合金が型から除去されうる。続いて、任意選択的にだが、凝固したアルミニウム合金は、均質化などといった、熱間/温間成形(ブロック82)及び/又は加熱処理(ブロック84)などの更なる処理を受けてもよい。任意選択の成形するステップ(ブロック82)及び加熱処理のステップ(ブロック84)は、SO2ガスの保護ブランケット下で実行されうる。
【実施例】
【0058】
実施例1-13
開示されたアルミニウム合金、特に、Al-Mg-Cr-Ca合金の10の特定の非限定的実施例が表10に提示される。
【0059】
実施例14-26
開示されたアルミニウム合金、特に、Al-Mg-Mn-Ca合金の10の特定の非限定的実施例が表11に提示される。
【0060】
実施例27-39
開示されたアルミニウム合金、特に、Al-Mg-Cr-Mn-Ca合金の10の特定の非限定的実施例が表12に提示される。
【0061】
実施例40-52
開示されたアルミニウム合金、特に、Al-Mg-Zr-Ca合金の10の特定の非限定的実施例が表13に提示される。
【0062】
以下の表14は、表12からのあるAl-Mg-Cr-Mn-Ca合金の機械的特性を示す。最適化されていない合金よりも延性及び伸びが改善された合金を生成するために、Cr及びMnのレベルは、Mgに対して最適化され、最適化されたCaの存在下で組み合わされる。
【0063】
比較例C1-C3
表15は、5重量%のマグネシウム(実施例C1)、7重量%のマグネシウム(実施例C2)及び9重量%のマグネシウム(実施例C3)を含む、Al-Mg-Ca合金組成物の実施例を示す。実施例C1-C3は、表10の実施例と同じ一般的プロセス(
図1を参照)を用いて生成されたが、開示された量のクロム、マンガン及び/又はジルコニウムは含んでいない。
【0064】
表14及び表15を見れば、最適化されていない合金から最適化された合金の特性の改善が引張伸びの改善された値において例証されていることが明らかである。この点で、引張伸びは、表15の最適化されていない合金と比較して、表14に示す最適化された合金では少なくとも約10%大きい。表14の開示されたアルミニウム合金では、伸びは少なくとも35%であるのに対して、表15の最適化されていない合金の伸びは28%未満である。
【0065】
例えば、表14の実施例30は、6重量%のマグネシウム及びカルシウム(600ppm)、及び最適化された量のクロム(0.06重量%)及びマンガン(0.125重量%)を含み、伸びが36.2パーセントであるのに対して、表15の実施例C1は、6重量%のマグネシウム及びカルシウムを含むが、最適化された量のクロム及びマンガンを含んでおらず、25パーセントの伸びがもたらされる。これは、11パーセント以上の差である。表14の実施例31は、7重量%のマグネシウム及びカルシウム(700ppm)、及び最適化された量のクロム(0.05重量%)及びマンガン(0.125重量%)を含み、伸びが35.7パーセントであるのに対して、表15の実施例C2は、7重量%のマグネシウム及びカルシウムを含むが、最適化された量のクロム及びマンガンを含んでおらず、23パーセントの伸びがもたらされる。これは、12パーセント以上の差である。表14の実施例33は、9重量%のマグネシウム及びカルシウム(900ppm)、及び最適化された量のクロム(0.03重量%)及びマンガン(0.1重量%)を含み、伸びが36.9パーセントであるのに対して、表15の実施例C3は、9重量%のマグネシウム及びカルシウムを含むが、最適化された量のクロム及びマンガンを含んでおらず、27.3パーセントの伸びがもたらされる。これは、ほぼ10パーセントの差である。これらの伸びの差は、特に成形性、ひずみ硬化及び損傷耐性に関して、開示されたアルミニウム合金の性能における改善を示す。
【0066】
本開示の実施例は、
図4に示す航空機の製造及び保守方法100と、
図5に示す航空機102に照らして説明されうる。製造前の段階では、航空機の製造及び保守方法100は、例えば、航空機102の仕様及び設計104と、材料の調達106とを含む。製造段階では、航空機102の構成要素/サブアセンブリの製造108と、システムインテグレーション110とが行われる。その後、航空機102は認可及び納品112を経て運航114に供されうる。顧客により運航される期間に、航空機102には、改造、再構成、改修なども含みうる定期的な整備及び保守116が予定される。
【0067】
方法100のプロセスの各々は、システムインテグレータ、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客)によって実行若しくは実施されうる。本明細書の目的のために、システムインテグレータは、限定しないが、任意の数の航空機製造者及び主要システムの下請業者を含み、第三者は、限定しないが、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含み、オペレータは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などでありうる。
【0068】
図5に示すように、例示的方法100によって製造された航空機102は、例えば、複数のシステム120及び内装122を備えた機体118を含む。複数のシステム120の実施例には、推進システム124、電気システム126、油圧システム128、及び環境システム130の一又は複数が含まれる。任意の数の他のシステムが含まれていてもよい。
【0069】
開示されたアルミニウム合金は、航空機の製造及び保守方法100の任意の一又は複数の段階中に採用されうる。1つの例として、構成要素/サブアセンブリの製造108、システムインテグレーション110、及び/又は整備及び保守116に対応する構成要素又はサブアセンブリは、開示されているアルミニウム合金を使用して製作又は製造されうる。別の例として、機体118は、開示されたアルミニウム合金を使用して構築されうる。また、一又は複数の装置の例、方法の例、又はこれらの組み合わせは、例えば、機体118及び/又は内装122のような航空機102の組立てを実質的に効率化するか、又は航空機102のコストを削減することにより、構成要素/サブアセンブリの製造108及び/又はシステムインテグレーション110中に利用されうる。同様に、システムの実施例、方法の実施例、或いはこれらの組み合わせのうちの1つ又は複数は、例えば、航空機102の運航期間中に、且つ限定しないが、整備及び保守116に対して、利用され得る。
【0070】
開示されたアルミニウム合金が航空機に照らして説明されているが、当業者は、開示されたアルミニウム合金が様々な用途に利用される可能性があることを容易に認識するだろう。例えば、開示されたアルミニウム合金は、例えば、ヘリコプター、客船、自動車、海洋製品(ボート、モーターなど)といったものを含む様々な種類の輸送体で実施されうる。
【0071】
開示されるアルミニウム合金及びそれを製造するための方法の様々な実施形態が図示され説明されてきたが、当業者は、本明細書を読むことで、変形例を想起することがあろう。本出願は、このような変更例を含み、特許請求の範囲によってのみ限定される。