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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20240628BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240628BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240628BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/34
A61K8/31
A61Q11/00
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/06
A61P1/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019117446
(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公開番号】P2020094029
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2018120082
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018224675
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 翔太
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/081877(WO,A1)
【文献】特開2016-153396(JP,A)
【文献】特開2002-020317(JP,A)
【文献】特開2017-214347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 6/00- 6/90
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪酸デキストリン、(B)カルボキシビニルポリマー、アルギン酸及びアルギン酸の塩からなる群より選択される少なくとも1種以上、並びに、(C)水、を含有する、口腔用組成物。
【請求項2】
(A)成分の総含有量1質量部に対する(B)成分の総含有量が、0.01~500質量部である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
(C)水を、30質量%以上含有する、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
(A)脂肪酸デキストリンが、パルミチン酸デキストリンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
さらに、殺菌剤、組織修復剤、抗炎症剤、及び血行促進剤からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
さらに、炭素数6以上の高級アルコールを含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
【請求項7】
さらに、界面活性剤を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
【請求項8】
さらに、炭化水素を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
【請求項9】
歯磨剤、塗布剤、又は含嗽剤である、請求項1~8のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
【請求項10】
(A)脂肪酸デキストリン、(B)カルボキシビニルポリマー、アルギン酸及びアルギン酸の塩からなる群より選択される少なくとも1種以上、並びに、(C)水、を含有させる工程を含む、口腔用組成物の歯茎への密着性を増強する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周炎(歯槽膿漏)や歯茎炎等、歯周病の予防や治療に用いるための、抗炎症剤や殺菌剤などの有効成分を配合した歯磨剤やゲル剤等の口腔用組成物が知られている。特許文献1には、水溶性のピリジニウム化合物、第四級アンモニウム化合物又はビグアニド系殺菌剤、特定の分子量とカチオン化度を有するカチオン化ヒドロキシエチルセルロース、特定の界面活性剤及び、特定量の非シリカ系研磨剤を含有する練歯磨組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-239725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述のような状況の中、歯茎又は口腔粘膜に対する密着性に優れる口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、(A)脂肪酸デキストリン、(B)高分子化合物及び/又は研磨剤、並びに、(C)水を含有することによって、歯茎表面への高い密着性を有する口腔用組成物を調製できることを見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の口腔用組成物を提供する。
項1.
(A)脂肪酸デキストリン、(B)高分子化合物及び/又は研磨剤、並びに、(C)水、を含有する、口腔用組成物。
項2.
(B)高分子化合物及び/又は研磨剤が、直鎖状高分子化合物である、項1に記載の口腔用組成物。
項3.
(B)高分子化合物及び/又は研磨剤が、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸又はその塩、プルラン、及びセルロース系高分子からなる群より選択される少なくとも1種以上である、項1又は2に記載の口腔用組成物。
項4.
(A)成分の総含有量1質量部に対する(B)成分の総含有量が、0.01~500質量部である、項1~3のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
項5.
(C)水を、30質量%以上含有する、項1~4のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
項6.
(A)脂肪酸デキストリンが、パルミチン酸デキストリンである、項1~5のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
項7.
さらに、殺菌剤、組織修復剤、抗炎症剤、及び血行促進剤からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、項1~6のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
項8.
さらに、高級アルコールを含有する、項1~7のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
項9.
さらに、界面活性剤を含有する、項1~8のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
項10.
さらに、炭化水素を含有する、項1~9のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
項11.
歯磨剤、塗布剤、又は含嗽剤である、項1~10のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
【0007】
さらに、本発明は、以下の方法を提供する。
項12.
(A)脂肪酸デキストリン、(B)高分子化合物及び/又は研磨剤、並びに、(C)水、を含有させる工程を含む、口腔用組成物の歯茎への密着性を増強する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の口腔用組成物は、歯茎、口腔粘膜などの口腔組織に対する密着性が増強される。その結果、水溶性及び油溶性の薬効成分などを基剤ごと口腔組織に密着させることができ、口腔内における剤の薬効作用などを高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[口腔用組成物]
本発明の口腔用組成物は、(A)脂肪酸デキストリン、(B)高分子化合物及び/又は研磨剤、並びに、(C)水、を含有する、口腔用組成物である。
【0010】
[(A)脂肪酸デキストリン]
脂肪酸デキストリンとは、デキストリンと脂肪酸とのエステル化合物をいう。
【0011】
脂肪酸デキストリンを構成する脂肪酸は、炭素数6~24のものが好ましく、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、オクタン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸等が挙げられる。中でも、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、脂肪酸デキストリンを構成する脂肪酸としては、パルミチン酸が好ましい。
【0012】
本発明の口腔用組成物に含まれる脂肪酸デキストリンは、1種以上の脂肪酸により構成され得る。
【0013】
脂肪酸デキストリンは、医薬品、医薬部外品又は化粧品分野において一般的に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、市販のものを利用でき、商品名「レオパールKL(表示名称:パルミチン酸デキストリン)」(千葉製粉株式会社製)、「レオパールKL2(表示名称:パルミチン酸デキストリン)」(千葉製粉株式会社製)、商品名「レオパールTL(表示名称:パルミチン酸デキストリン)」(千葉製粉株式会社製)、商品名「レオパールTL2(表示名称:パルミチン酸デキストリン)」(千葉製粉株式会社製)、商品名「レオパールTT(表示名称:(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリン)」(千葉製粉株式会社製)、商品名「レオパールTT2(表示名称:(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリン)」(千葉製粉株式会社製)等が挙げられる。
【0014】
(A)成分の含有量は、特に限定されないが、口腔組織に対する密着性を高める観点から、口腔用組成物の全量に対して、好ましくは、0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.25質量%以上である。
【0015】
(A)成分の含有量は、使用感を良好とする観点から、口腔用組成物の全量に対して、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.75質量%以下である。
【0016】
(A)成分の含有量は、口腔用組成物の全量に対して、好ましくは0.05~2質量%、より好ましくは0.1~1質量%、更に好ましくは0.25~0.75質量%である。
【0017】
[(B)高分子化合物又は研磨剤]
本発明の口腔用組成物に含まれる高分子化合物は、天然由来の物質であっても、化学合成によって得られる物質であってもよい。
【0018】
高分子化合物としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリエチレングリコール、マクロゴール、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー、ポリペプチド(ゼラチン等)、直鎖状多糖類(アルギン酸又はその塩、プルラン、セルロース系高分子、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、寒天、アルギン酸プロピレングリコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム等)などの直鎖状高分子化合物;グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アラビアガム、カラヤガム、増粘性無水ケイ酸、ベントナイトなどの分岐鎖状高分子化合物が挙げられる。
【0019】
本発明の口腔用組成物に含まれる研磨剤としては、限定はされないが、例えばリン酸水素カルシウム(第二リン酸カルシウム)・2水和物又は無水和物、ピロリン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、第四リン酸カルシウム等のリン酸カルシウム系研磨剤;無水ケイ酸、結晶性シリカ、非晶性シリカ、シリカゲル、沈降性シリカ、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤;ゼオライト;炭酸カルシウム系研磨剤;不溶性メタリン酸カリウム;酸化アルミニウム;水酸化アルミニウム;アルミナ;炭酸マグネシウム;第三リン酸マグネシウム;酸化亜鉛;合成樹脂系研磨剤などを用いることができる。中でも、リン酸カルシウム系研磨剤又はシリカ系研磨剤がより好ましく、リン酸カルシウム系研磨剤が更に好ましく、リン酸水素カルシウム・2水和物又は無水和物が特に好ましい。
【0020】
これらの(B)成分は、医薬品、医薬部外品又は化粧品分野において一般的に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、市販のものも使用することができる。
【0021】
これらの(B)成分は、すべて、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。限定はされないが、本発明の効果を顕著に奏する観点及び口腔組織との間の摩擦を低減する観点から、(B)成分は、高分子化合物が好ましく、直鎖状高分子がより好ましく、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸又はその塩、プルラン及びセルロース系高分子からなる群から選ばれる成分がさらに好ましい。また、(B)成分は、2種以上組み合わせることができる。(B)成分を2種以上組み合わせる場合、限定はされず、他の配合成分の種類及び含有量、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定されるが、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸又はその塩、プルラン及びセルロース系高分子からなる群から選ばれる2種以上を組み合わせることが好ましい。
【0022】
カルボキシビニルポリマーは、カルボキシル基を有するアクリル酸、メタアクリル酸等を主体とするビニルポリマーであり、そのモノマー構成や分子量等に特に制約はなく、市販されている種々のカルボキシビニルポリマーを特に制限無く使用することができる。これら市販品としては、例えば、ルーブリゾール(Lubrizol Advanced Materials)社から販売されているカーボポール940(Carbopol 940)、カーボポール941(Carbopol 941)、カーボポール980(Carbopol 980)、カーボポール981(Carbopol 981)、カーボポールUltrez10(Carbopol Ultrez10)、カーボポールETD2050(Carbopol ETD2050)や、和光純薬社から販売されているハイビスワコー103、ハイビスワコー104、ハイビスワコー105、3Vシグマ社から販売されているシンタレンK、シンタレンLや、住友精化社から販売されているアクペックHV-501(AQUPEC HV-501)、アクペックHV-504(AQUPEC HV-504)、アクペックHV-505(AQUPEC HV-505)、アクペックHV-501E(AQUPEC HV-501E)、アクペックHV-504E(AQUPEC HV-504E)、アクペックHV-505E(AQUPEC HV-505E)、アクペックHV-501ER(AQUPEC HV-501ER)、アクペックHV-505ED(AQUPEC HV-505ED)等が挙げられる。
【0023】
アルギン酸は、2種類のウロン酸、即ち、D-マンヌロン酸(M)とL-グルロン酸(G)から構成される直鎖状多糖類である。アルギン酸は市販品を使用することもできる。本発明におけるアルギン酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、アルギン酸ナトリウムである。アルギン酸又はその塩は、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。アルギン酸又はその塩は、本発明の口腔内組成物の物性を好適に調整する観点から、カルシウム塩と組み合わせて用いることがより好ましい。
【0024】
プルランは、グルコース3分子がそれぞれα-1,4結合したマルトトリオースが、規則正しくα-1,6-結合でつながれた構造を持つ水溶性多糖である。市販品として、例えば(株)林原から食品添加物として販売されているものなどを使用することができる。
【0025】
セルロース系高分子化合物は、セルロースのヒドロキシル基を他の官能基で置き換えることで得られるセルロース系高分子化合物である。セルロースのヒドロキシル基を置換する官能基としてはメトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシメトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、カルボキシメトキシ基、カルボキシエトキシ基等がある。セルロース系高分子化合物は、例えば、具体的には、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びその塩類(例えば、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースアンモニウム)、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。これらのセルロース系高分子は、1種又は2種類以上を組み合わせて使用することもできる。また、これらのセルロース系高分子化合物は、市販のものを用いることができ、これらの化合物の1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
(B)成分の総含有量は、特に限定されず、他の配合成分の種類及び含有量、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定されるが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、口腔用組成物の全量に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、さらにより好ましくは0.25重量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上である。
【0027】
(B)成分の総含有量は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、口腔用組成物の全量に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。
【0028】
(B)成分の総含有量は、口腔用組成物の全量に対して、好ましくは0.01~50質量%、より好ましくは0.05~30質量%、更に好ましくは0.1~20質量%、さらにより好ましくは0.25~20重量%、特に好ましくは0.5~15質量%である。
【0029】
(B)成分が高分子化合物である場合、高分子化合物の総含有量は、特に限定されず、他の配合成分の種類及び含有量、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定されるが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、口腔用組成物の全量に対して、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上である。
【0030】
(B)成分が高分子化合物である場合、高分子化合物の総含有量は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、口腔用組成物の全量に対して、好ましくは7.5質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1.5重量%以下である。
【0031】
(B)成分が高分子化合物である場合、高分子化合物の総含有量は、口腔用組成物の全量に対して、好ましくは0.05~7.5質量%、より好ましくは0.1~5質量%、更に好ましくは0.5~3質量%、特に好ましくは1~2質量%である。
【0032】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、カルボキシビニルポリマーを(B)成分として含有する場合に、カルボキシビニルポリマーの単独の含有量は、口腔用組成物の全量に対して、好ましくは0.05~7.5質量%、より好ましく0.1~5質量%、更に好ましくは0.5~2質量%、特に好ましくは1~1.5質量%である。
【0033】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、アルギン酸又はその塩を(B)成分として含有する場合に、アルギン酸又はその塩の単独の含有量は、口腔用組成物の全量に対して、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~5質量%、更に好ましくは0.1~2質量%、特に好ましくは0.3~1質量%である。
【0034】
(B)成分が研磨剤である場合、(B)成分の総含有量は、特に限定されず、他の配合成分の種類及び含有量、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定されるが、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、口腔用組成物の全量に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。
【0035】
(B)成分が研磨剤である場合、(B)成分の総含有量は、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、口腔用組成物の全量に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0036】
(B)成分が研磨剤である場合、研磨剤の総含有量は、口腔用組成物の全量に対して、好ましくは0.5~50質量%、より好ましくは1~20質量%、更に好ましくは5~15質量%である。
【0037】
[各成分の比]
本発明の口腔用組成物における(A)成分の総含有量1質量部に対する(B)成分の総含有量((B)/(A))は、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、好ましくは0.01~500質量部、より好ましくは0.05~200質量部、更に好ましくは0.1~100質量部、特に好ましくは0.5~50質量部である。
【0038】
本発明の(B)成分が高分子化合物である場合、本発明の口腔用組成物における(A)成分の総含有量1質量部に対する(B)成分の総含有量((B)/(A))は、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、好ましくは0.1~50質量部、より好ましくは0.5~20質量部、更に好ましくは1~10質量部、特に好ましくは1.3~6質量部である。
【0039】
本発明の(B)成分が研磨剤である場合、本発明の口腔用組成物における(A)成分の総含有量1質量部に対する(B)成分の総含有量((B)/(A))は、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、好ましくは、0.1~500質量部、より好ましくは0.5~200質量部、更に好ましくは1~100質量部、特に好ましくは5~50質量部である。
【0040】
[(C)水]
本発明の口腔用組成物は、水を含む。水の含有量は、使用感を向上させる観点から、口腔用組成物の全量に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下、更に好ましくは70重量%以下である。
【0041】
[薬効成分]
本発明の口腔用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、薬効成分として、例えば、殺菌剤(カチオン性殺菌剤(塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジンなど)、両性殺菌剤(ドデシルアミノエチルグリシンなど)、非イオン性殺菌剤(イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール、トリクロサン、チモール、1,8-シネオールなど)、アニオン性殺菌剤(ラウロイルサルコシンナトリウム(LSS)など))、組織修復剤(アラントイン;アラントインβ-グリチルレチン酸、アラントインジヒドロキシアルミニウム(アルジオキサ)、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム(アルクロキサ)、アラントインポリガラクツロン酸、アラントインアスコルビン酸、アラントインアセチル-DL-メチオニン、アラントインDL-パントテニルアルコール、DL-ピロリドンカルボン酸ナトリウム・アラントイン等のアラントインの塩;パンテノールなど)、抗炎症剤(アラントイン又はその塩、トラネキサム酸、グリチルリチン酸又はその塩(グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム等)、β-グリチルレチン酸又はその誘導体(グリチルレチン酸ステアリル等)、サリチル酸メチル、l-メントール、トラネキサム酸、ε-アミノカプロン酸、オウバクエキスなど)、出血抑制剤(カルバゾクロム、トラネキサム酸、ε-アミノカプロン酸など)、知覚過敏抑制剤(硝酸カリウム、塩化ストロンチウム、乳酸アルミニウムなど)、血行促進剤(ビタミンE類(α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール;酢酸dl-α-トコフェロール等の酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール等)など)、収斂剤(塩化ナトリウムなど)、再石灰化剤(フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)、フッ化スズなど)、酵素(ラクトフェリン、ラクトパーオキシダーゼ、デキストラナーゼ、リゾチーム、プロテアーゼ、アミラーゼ、ムタナーゼなど)、銅クロロフィリンナトリウム、リン酸L-アスコルビルマグネシウム、塩化亜鉛、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムなどを組み合わせて用いることができる。これらの薬効成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上の組み合わせで用いてもよい。
【0042】
本発明の口腔用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、アスナロエキス、オウバクエキス、トウキエキス、オウゴンエキス、カミツレエキス、ラタニアエキス、ミルラエキス、マヌカハニー抽出物、ポリフェノール類、カテキン類、フラボン類、プロアントシアニン類などの植物由来の薬効成分を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
本発明の口腔用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の薬効成分として、クエン酸亜鉛、サンギナリン、デルモピノール、ナイシン、キトサン、クロロフィルなどを、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
本発明の口腔用組成物は、本願発明の効果をより顕著に奏する観点から、薬効成分としては、殺菌剤、組織修復剤、抗炎症剤、及び血行促進剤からなる群より選択される少なくとも一種を含有することが好ましく、カチオン性殺菌剤、アラントイン、グリチルリチン酸又はその塩、β-グリチルレチン酸又はその誘導体、及びビタミンE類からなる群より選択される少なくとも一種を含有することが好ましく、塩化セチルピリジニウム、アラントイン、グリチルリチン酸二カリウム、β―グリチルレチン酸、及び酢酸トコフェロールからなる群より選択される少なくとも一種を含有することが更に好ましい。
【0045】
本発明の口腔用組成物に用いられる薬効成分は、水溶性であっても非水溶性であっても本発明の効果を抑制せず、また本発明の効果により歯茎への密着性増強作用が期待できる。中でも、水溶性の薬効成分がより好ましい。
【0046】
[界面活性剤]
本発明の口腔用組成物は、界面活性剤を更に含有してもよい。界面活性剤を含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。
【0047】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤などを用いることができる。中でも、本発明の効果を顕著に奏する観点から、非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種以上を含むことが好ましい。
【0048】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類;モノラウリル酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、イソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類;モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(HCO-40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(HCO-50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO-60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80等の硬化ヒマシ油誘導体;ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド;グリセリンアルキルエーテル;ラウリルグルコシド、デシルグルコシド等のアルキルグルコシド;ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、モノステアリン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル;マルチトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルアルコールエーテルなどが挙げられる。
【0049】
両性界面活性剤としては、例えば、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチル-N-イミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリニウムベタイン;ラウリルスルホベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のアルキルスルホベタイン;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のヤシ油脂肪酸アミドアルキルベタイン;N-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等の長鎖アルキルイミダゾリンベタイン塩などが挙げられる。
【0050】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩(ラウリル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸モノカルボン酸塩(ラウリン酸塩、パルミチン酸塩等)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルサルコシン塩、N-アシルアミノ酸塩(N-アシルグルタミン酸塩等)、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩(アルキルスルホン酸塩)、α-オレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル(分岐鎖)ベンゼンスルホン酸塩、N-メチル-N-アシルタウリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩などが挙げられる。
【0051】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、モノアルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、トリアルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化アルキルベンザルコニウムなどが挙げられる。
【0052】
その他の界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等のシリコーン系界面活性剤などが挙げられる。
【0053】
界面活性剤としては、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤が好ましく、非イオン性界面活性剤がより好ましく、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類が更に好ましい。
界面活性剤の総含有量は、特に限定されず、界面活性剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定されるが、本発明の効果をより顕著に奏し、かつ、洗浄力を十分に奏する観点から、口腔用組成物の全量に対して、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.5~10質量%、更に好ましくは1~7.5質量%、特に好ましくは2~5質量%である。
界面活性剤が非イオン界面活性剤である場合、非イオン界面活性剤の総含有量は、口腔用組成物の全量に対して、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.5~10質量%、更に好ましくは1~7.5質量%、特に好ましくは2~5質量%である。
【0054】
[炭化水素]
本発明の口腔用組成物は、炭化水素を更に含有してもよい。炭化水素を含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。
【0055】
炭化水素としては、パラフィン系炭化水素やオレフィン系炭化水素が用いられ、例えば、流動パラフィン、ワセリン、スクワラン、スクワレン、セレシン、軽質流動パラフィン、パラフィンワックス、蜜蝋、カルナバワックス、プリスタン、マイクロクリスタリンワックスなどが挙げられる。本発明の効果をさらに高める観点から、流動パラフィン又はワセリンがより好ましく、流動パラフィンが更に好ましい。
【0056】
炭化水素の総含有量は、特に限定されず、炭化水素の種類、他の配合成分の種類及び含有量、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定されるが、本発明の効果を顕著に奏する観点、及び使用感をさらに高める観点から、口腔用組成物の全量に対して、好ましくは0.5~30質量%、より好ましく1~25質量%、更に好ましくは3~20質量%、特に好ましくは5.1~15質量%である。
【0057】
[その他添加剤]
本発明の口腔用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品等として用いられ得る、公知の高級アルコール、溶解補助剤、湿潤剤、保存剤、キレート剤、pH調整剤、甘味料、香料、着色剤などの添加剤を配合することができる。これらの添加剤は、いずれも1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
本発明の口腔用組成物は、高級アルコールを用いることができる。高級アルコールは、炭素数6以上のアルコールを指し、直鎖状又は分枝状の構造のいずれでも良い。高級アルコールとしては、限定はされないが、C~C24脂肪族アルコールが好ましい。このようなアルコールには、セタノール(セチルアルコール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、カプリルアルコール、リノリルアルコール、又はベヘニルアルコールが含まれる。本発明の口腔用組成物の効果をさらに高める観点から、好ましくはセタノール、ステアリルアルコール、及びセトステアリルアルコールから選ばれる1種以上、より好ましくはセタノール又はステアリルアルコールから選ばれる1種以上、更に好ましくはセタノールが用いられる。
【0059】
湿潤剤としては、例えば、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ソルビトール、ラクチトール、トレハロース、マンニトール等の糖アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールが挙げられる。
【0060】
溶解補助剤の好適な例としては、例えば、エタノール、プロパノールなどの低級アルコールなどが挙げられる。
【0061】
保存剤としては、例えば、パラベン類(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等)、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。
【0062】
キレート剤としては、例えば、EDTA・2ナトリウム塩、EDTA・カルシウム・2ナトリウム塩などが挙げられる。
【0063】
pH調整剤としては、例えば、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸など)、有機酸(乳酸、クエン酸、コハク酸、グルコン酸、マレイン酸、アジピン酸、コハク酸など)、無機塩基(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなど)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなど)、塩(乳酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム(二炭酸一水素三ナトリウム)など)、塩基性アミノ酸(リジン、アルギニンなど)などが挙げられる。
【0064】
甘味料としては、例えば、糖類又は糖アルコール(キシリトール、パラチノース、エリスリトール、マルチトール、アラビトール)、ステビオサイド、ステビアエキス、ソーマチン、グリチルリチン、スクラロース、アセスルファムカリウム、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチンなどが挙げられる。
【0065】
[pH]
本発明の口腔用組成物のpHは、(A)及び(B)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、製材形態、使用方法等に応じて適宜設定され、生理学的又は薬学的に許容できる範囲であれば制限されないが、使用感を良好にする観点から、好ましくはpH3.5~9、より好ましくは4~8、更に好ましくは4.5~7である。
【0066】
[用途]
本発明の口腔用組成物は、歯周組織などの口腔内の組織と接触して密着し、残存することで、口腔内の組織に薬理成分などを持続的に作用させることができる。そのため、歯肉炎や歯槽膿漏などの歯周病の改善又は予防、むし歯や知覚過敏などの歯の疾患の改善又は予防、口腔内の組織の状態の改善などに用いることができるが、歯周病の改善又は予防に用いられることが好ましい。
【0067】
本発明の口腔用組成物は、研磨剤を含まない態様とすることもできる。その場合は、口腔組織との間に発生する摩擦を低減させる作用が期待できる。より具体的には、歯ブラシ等に本実施形態にかかる組成物を塗布して、歯茎をブラッシングした際に歯茎と歯ブラシの間等で発生する摩擦を低減させることができ、そのため、歯茎等の口腔組織を傷つけずにブラッシングすることが可能となるため、上記の用途にとって好ましい。
【0068】
歯周病は、その病状の進行によって、大きく歯茎炎(歯肉炎)と歯槽膿漏(歯周炎)の2つに分けられる。本発明の口腔用組成物は、これらいずれの改善又は予防にも用いることができる。
【0069】
本明細書において、口腔内の組織と密着する、とは、口腔内の組織に付着してとどまることを指す。そのため、「密着」若しくは「密着性」は、「滞留」若しくは「滞留性」、又は「付着」若しくは「付着性」と置き換えて解釈することができる。
【0070】
本明細書において「予防」とは、疾病若しくは症状の発症の防止若しくは遅延、又は疾病若しくは症状の発症の危険性を低下させることをいう。
【0071】
また、本明細書において「改善」とは、疾病、症状若しくは健康状態の好転若しくは緩和、疾患、症状若しくは健康状態の悪化の防止若しくは遅延、又は疾患若しくは症状の進行の逆転、防止若しくは遅延をいう。
【0072】
[剤形]
本発明の口腔用組成物の性状は、医薬品、医薬部外品、化粧品として公知の形態であれば、特に限定されず、液体状、流動状、又は半固形状とすることができる。また製剤形態としては、例えば、ペースト剤、クリーム剤、液剤、乳剤、軟膏剤、ゲル剤、懸濁剤、乳液、ローション剤等の製剤とすることができる。中でも、ペースト剤、クリーム剤、液剤、乳剤、又は軟膏剤がより好適であり、ペースト剤又はクリーム剤がさらにより好適であり、クリーム剤が特に好適である。なお、ペースト剤、クリーム剤、液剤、乳剤、軟膏剤等が、油性基剤と水性基剤とを含む場合は、O/W型でもW/O型でもよい。但し、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、好ましくはO/W型エマルジョンである。
【0073】
本発明の口腔用組成物の形態は医薬品、医薬部外品、化粧品、又は食品として公知の形態であれば、特に限定されないが、例えば、歯磨剤、塗布剤、含嗽剤、歯茎に適用する美容液、洗口剤などに用いることができる。中でも、口腔内の組織にまんべんなく行きわたらせ、薬効成分や栄養成分を組織に持続的に接触・浸透させる観点から、歯磨剤、塗布剤、又は含嗽剤が好ましく、歯磨剤であることがさらに好ましい。
【0074】
[製造方法]
本発明の口腔用組成物は、公知の方法により製造することができる。必要に応じて、滅菌工程を含めることができる。
【0075】
[歯茎への密着性を増強する方法]
本発明の歯茎への密着性を増強する方法とは、以下の方法である。
(A)脂肪酸デキストリン、(B)高分子化合物及び/又は研磨剤、並びに、(C)水、を含有させる工程を含む、口腔用組成物の歯茎への密着性を増強する方法。
【0076】
当該方法における、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の種類及び含有量等、その他の成分の種類及び含有量等、口腔用組成物の製剤形態及び用途等については、[口腔用組成物]で説明したとおりである。
【実施例
【0077】
次に、実施例や試験例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例や試験例に限定されるものではない。
【0078】
[試験例1.密着力試験]
下記表1に示す組成の歯磨剤を、常法により調製し、これらを用いて、密着力を評価した。
表1に示される歯磨剤(比較例1-1、1-2、実施例1-1、1-2)を調製した。
次いで、200mLビーカーに精製水200mL、直径3cmの十字型撹拌子を入れ、スライドガラス(長辺7.6cm、幅2.6cm)の中央に0.2gの製剤を、厚さ約1.4mmで塗布し、このビーカーに、製剤塗布面が下向きになるように立て掛けて浸した。このとき、塗布部は、撹拌子の約1.5cm上部に設置される。
スターラー(KPI、MIGHTY STIRRER、HE・16GX6)のツマミを5に合わせ、塗布した製剤が、全てスライドガラスから浮上するまでの時間(付着時間)(秒)を測定した。なお、電源は100V交流、周波数60Hzを使用した。
次に、下記式にて、対応する比較例に対する各実施例の付着力向上率(%)を算出した。なお、実施例1-1に対応する比較例は比較例1-1、実施例1-2に対応する比較例は比較例1-2である。
<付着率向上率(%)>
付着力向上率(%)
=(実施例の付着時間-対応する比較例の付着時間)/対応する比較例の付着時間×100
算出された付着力向上率(%)の値を基に、下記の基準で評価した。
0%未満 :×
1%以上10%未満 :△
10%以上~20%未満 :〇
20%以上 :◎
【0079】
【表1】
【0080】
表1のように、カルボキシビニルポリマー及び精製水を含有する比較例1-1、アルギン酸ナトリウム及び精製水を含有する比較例1-2に対して、更にパルミチン酸デキストリンを含有する実施例1-1、実施例1-2では、顕著に付着率が向上していることが確認された。
【0081】
また、スターラーのツマミを10に合わせる以外は上記と同じ方法を用いて比較例1-1、2に対する実施例1-1、2の付着力向上率をそれぞれ求めた。その結果、実施例1-1及び実施例1-2の付着力向上率はともに10%以上であった。
【0082】
パルミチン酸デキストリンは、脂溶性成分のゲル化剤であるため、W/O系組成物に用いられるが、O/W系組成物には通常用いられない。しかし、実施例1-1及び1-2の組成物は、付着率の向上と合わせて、チューブからの押し出し、使用時の製剤の切れ、及び歯磨き時の使用感等においても優れた性質を有していた。
【0083】
[試験例2.使用感試験(1)]
上記試験例1の表1に示す組成の歯磨剤を、常法により調製し、これらを用いて、使用感を評価した。
表1に示される歯磨剤(比較例1-1、実施例1-1)を調製した。
歯磨剤開発者を含む3名のパネラーに、各歯磨剤を0.5gずつ歯ブラシに乗せ、歯を磨いてもらい、磨き始めから1分経過後に感じる、歯茎への密着感、及び不快な酸味の程度について、下記の基準に基づいて評価させた。
結果を表2に示す。
<歯茎への密着感 評価基準>
強い密着感を感じる :5
密着感を感じる :4
やや密着感を感じる :3
殆ど密着感を感じない :2
全く密着感を感じない :1
<不快な酸味 評価基準>
耐え難いほど不快な酸味を感じる :5
強く不快な酸味を感じる :4
はっきりと認識できる程度に不快な酸味を感じる :3
わずかに不快な酸味を感じる :2
殆ど不快な酸味を感じない :1
【0084】
【表2】
【0085】
実施例1-1では、比較例1-1に比べて明らかに、歯茎への密着力の向上を実感することができた。また、比較例1-1では、不快な酸味が感じられたが、(B)成分に加えて(A)成分としてパルミチン酸デキストリンを含有する実施例2では、不快な酸味が感じられず、快適に使用することができた。
【0086】
[試験例3.使用感試験(2)]
下記表3に示す組成の歯磨剤を、常法により調製し、これらを用いて、使用感を評価した。
表3に示される歯磨剤(比較例2、実施例2)を調製した。
歯磨剤開発者を含む3名のパネラーに、各歯磨剤を0.5gずつ歯ブラシに乗せ、歯を磨いてもらい、磨き始めから1分経過後に感じる、歯茎への密着感、及び不快な酸味の程度について、いずれの歯磨剤を使用したときに、より感じたかを評価させた。
結果を表4に示す。
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
実施例2のように、表1の処方例に替えて、カルボキシビニルポリマー等、各成分の濃度を変更した場合にも、パルミチン酸デキストリンを含有しない場合と比較して、歯茎への密着感向上効果、不快な酸味の抑制効果が得られることが確認された。また、比較例2に比ベ、実施例2の方が、使用時に感じる刺激が低減している傾向が得られた。
【0090】
従って、試験例2及び3から、(B)成分として高分子化合物を含む場合には、(A)成分であるパルミチン酸デキストリンを組み合わせることによって、歯茎への密着感を向上させるとともに、不快な酸味を抑制する効果が奏されることが明らかとなった。
【0091】
[製剤例]
以下、本発明に係る口腔組成物を用いたいくつかの製剤例について説明する。以下の製剤例は、次に記載する処方において常法により調製することができる。各成分の含有量の単位は全てw/w%である。
【0092】
(製剤例1)歯磨剤
アラントイン 0.1
トコフェロール酢酸エステル 0.04
セチルピリジニウム塩化物水和物 0.02
グリチルリチン酸二カリウム 0.2
ハッカ油 0.3
ユリエキス 0.1
加水分解コンキオリン液 0.1
流動パラフィン 10
白色ワセリン 1
パルミチン酸デキストリン 0.5
モノステアリン酸ソルビタン 1.5
カルボキシビニルポリマー 1.1
プルラン 0.1
ポリソルベート60 1.5
ラウリル硫酸Na 1
濃グリセリン 5
パラベン 0.1
香料 0.2
L-アルギニン 適量
精製水 残量
全量 100
【0093】
(製剤例2)歯磨剤
トコフェロール酢酸エステル 0.04
イソプロピルメチルフェノール 0.05
ヒノキチオール 0.1
硝酸カリウム 5
塩化ナトリウム 5
ハッカ油 1
ユリエキス 0.05
流動パラフィン 6
パルミチン酸デキストリン 0.5
モノステアリン酸グリセリン 1.5
カルボキシビニルポリマー 0.5
アルギン酸ナトリウム 0.5
ポリオキシエチレンセチルエーテル 1.5
ラウロイルメチルタウリンNa 1
プロピレングリコール 5
フェノキシエタノール 0.3
香料 0.1
L-アルギニン 適量
精製水 残量
全量 100
【0094】
(製剤例3)歯磨剤
塩化ベンザルコニウム 0.01
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.07
ラウロイルサルコシンNa 0.2
ポリエチレングリコールa 5
メントール 0.3
加水分解コンキオリン液 1
流動パラフィン 5
白色ワセリン 0.1
パルミチン酸デキストリン 0.5
モノステアリン酸ソルビタン 1.5
リン酸水素カルシウム 10
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.5
2-アルキル-N-カルボキシメチル-
N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン 1
1,3-ブチレングリコール 5
フェノキシエタノール 0.5
香料 0.05
L-アルギニン 適量
精製水 残量
全量 100