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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】身体温冷装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/00 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
A61F7/00 310J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019140696
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021023352
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-02-28
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】阿部 裕也
(72)【発明者】
【氏名】段 彦昭
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】小河 了一
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-82427(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0114502(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体を用いて利用者の体温を調節する温調部と、
空気と前記熱媒体とを熱交換するラジエータ部と、
前記温調部と前記ラジエータ部との間を繋ぎ、前記熱媒体を流通させるホース部と、
前記ホース部を通じて、前記温調部と前記ラジエータ部との間で前記熱媒体を循環させるポンプ部とを有し、前記利用者の背面に前記ラジエータ部が取り付けられた身体温冷装置であって、
前記利用者の背面に前記ラジエータ部を保持するための装着部に備えた背中側ポケットに収納されるラジエータ部は、
前記利用者が前記身体温冷装置を着用した際に前記利用者の人体側に配置される設置面を備えた筺体と、
前記筺体の内部に空気を吸気する送風機と、
前記筺体の内部に配置され、前記筺体の内部に吸気された前記空気と前記熱媒体との間で熱交換させる熱交換器と、
前記筺体の内部に吸気された前記空気が通過し、当該空気を前記熱交換器に当てる第1の通気路と、
前記筺体の内部に吸気された前記空気が通過し、当該空気を前記ポンプ部の一部に当てる第2の通気路と、
を有することを特徴とする身体温冷装置。
【請求項2】
前記ラジエータ部は、
前記筺体の設置面に対向する第1の面に形成され、前記送風機により、前記空気を前記筺体内に吸気する吸込口と、
前記筺体の設置面に直立する第2の面に形成され、前記送風機により、前記筺体内に吸気された空気を当該筺体から吹き出す吹出口と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の身体温冷装置。
【請求項3】
前記ラジエータ部は、
前記筺体の設置面に直立する第1の面に形成され、前記送風機により、前記空気を前記筺体内に吸気する吸込口と、
前記筺体の設置面に対向する第2の面に形成され、前記送風機により、前記筺体内に吸気された空気を当該筺体から吹き出す吹出口と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の身体温冷装置。
【請求項4】
前記筺体は、
前記設置面の外縁部が外周方向に延びる土台が形成されることを特徴とする請求項3に記載の身体温冷装置。
【請求項5】
前記土台は、
低伝熱性材料の遮熱材で形成されることを特徴とする請求項4に記載の身体温冷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、身体温冷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルティエ素子を用いて利用者の頸動脈を流れる血液を冷却又は加熱することにより、利用者の体温を調節する体温調整装置が知られている。体温調整装置としては、ペルティエ素子を有する温調部と、熱交換部と、温調部と熱交換部との間でホース部を介して水を循環させるポンプ部と、を備えたものがある(特許文献1、2)。
【0003】
また、身体の温度を調整する技術としては、ペルティエ素子と、放熱部材及び送風機を有する熱交換部とが一体化された熱電変換ユニットが衣服に組み込まれた電子冷暖房服が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-100489号公報
【文献】特開2011-83498号公報
【文献】特開2008-25052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、体温調整装置では、ホース部を介して温調部と熱交換部との間で水を循環させるポンプ部が稼働している間、ポンプ部内のモータが駆動によって発熱し、ポンプ部の表面の温度が上昇する。その結果、体温調整装置を利用者の衣服等に組み込んだ場合には、ポンプ部の表面の温度が利用者に不快感を与えるおそれがある。
【0006】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、ポンプ部を冷却できる身体温冷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の態様では、身体温冷装置は、熱媒体を用いて利用者の体温を調節する温調部と、空気と熱媒体とを熱交換するラジエータ部と、温調部とラジエータ部との間を繋ぎ、熱媒体を流通させるホース部と、ホース部を通じて、温調部とラジエータ部との間で熱媒体を循環させるポンプ部とを有する。ラジエータ部は、筺体と、筺体の内部に空気を吸気する送風機と、筺体の内部に配置され、筺体の内部に吸気された空気と熱媒体との間で熱交換させる熱交換器と、筺体の内部に吸気された空気が通過し、当該空気を熱交換器に当てる第1の通気路と、筺体の内部に吸気された空気が通過し、当該空気をポンプ部の一部に当てる第2の通気路とを有する。
【発明の効果】
【0008】
開示の身体温冷装置は、ポンプ部を冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例1の身体温冷装置の一例を示す斜視図である。
図2図2は、身体温冷装置の接続関係の一例を示す説明図である。
図3図3は、身体温冷装置が取り付けられた衣服の背面図である。
図4図4は、身体温冷装置が取り付けられた衣服の正面図である。
図5図5は、身体温冷装置の温調部の一例を示す斜視図である。
図6図6は、温調部内の冷却水の流通経路の一例を示す説明図である。
図7図7は、身体温冷装置のラジエータ部の一例を示す斜視図である。
図8図8は、ラジエータ部の一例を示す上面図である。
図9図9は、ラジエータ部の筺体を外した状態の一例を示す斜視図である。
図10図10は、ラジエータ部の筺体内部の熱交換器及びポンプ部の配置関係の一例を示す説明図である。
図11図11は、ラジエータ部の筺体内部の熱交換器とポンプ部との間の冷却水の流通経路の一例を示す説明図である。
図12図12は、身体温冷装置のタンク部の一例を示す斜視図である。
図13図13は、身体温冷装置の一例を示すブロック図である。
図14図14は、温調部、タンク部及びラジエータ部の冷却水の流通経路の一例を示す説明図である。
図15図15は、実施例2の身体温冷装置の温調部、タンク部及びラジエータ部の冷却水の流通経路の一例を示す説明図である。
図16図16は、実施例3の身体温冷装置の温調部及びラジエータ部の冷却水の流通経路の一例を示す説明図である。
図17図17は、実施例4の身体温冷装置のラジエータ部の一例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願が開示する実施形態にかかる身体温冷装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の記載により本開示の技術が限定されるものではない。また、以下の記載においては、同一の構成要素に同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1の身体温冷装置10を示す斜視図、図2は、身体温冷装置10の接続関係の一例を示す説明図である。身体温冷装置10は、温調部11と、ラジエータ部12と、タンク部13と、コントローラ部14と、バッテリ部15と、ホース部16とを備えている。温調部11は、冷却水を用いて利用者の左右の頸動脈を流れる血液の温度を調節する。ラジエータ部12は、空気と冷却水との間で熱交換させる熱交換部である。タンク部13は、温調部11とラジエータ部12との間を繋ぐホース部16内を流通する冷却水を一時的に蓄えるタンクである。このタンク部13は、外部から冷却水を注入できるようになっている。コントローラ部14は、ラジエータ部12を制御する。バッテリ部15は、コントローラ部14に電力を供給する。ホース部16は、曲げることができるホースから形成され一端が温調部11に接続され、他端がラジエータ部12に接続されている。ホース部16は、第1のホース部17と、第2のホース部18と、電力線19とを有する。
【0012】
第1のホース部17は、ラジエータ部12から温調部11に冷却水を流す流路を形成している。第2のホース部18は、温調部11からタンク部13を経由してラジエータ部12に冷却水を流す流路を形成している。第2のホース部18は、第1の連結ホース部18Aと、第2の連結ホース部18Bとを有する。第1の連結ホース部18Aは、温調部11とタンク部13との間を繋ぎ、温調部11からタンク部13に冷却水を流す流路を形成している。第2の連結ホース部18Bは、タンク部13とラジエータ部12との間を繋ぎ、タンク部13からラジエータ部12に冷却水を流す流路を形成している。電力線19は、ラジエータ部12から温調部11に電力を供給する電路を形成している。また、身体温冷装置10は、電力供給線19Aと、制御線19Bとを有する。電力供給線19Aは、コントローラ部14とバッテリ部15との間を電気的に繋ぎ、バッテリ部15からコントローラ部14に電力を供給する。制御線19Bは、コントローラ部14とラジエータ部12との間を電気的に繋ぎ、コントローラ部14からラジエータ部12に電力を供給すると共に、コントローラ部14からラジエータ部12に制御信号を出力する。
【0013】
図3は、身体温冷装置10が取り付けられた衣服Xの背面図、図4は、身体温冷装置10が取り付けられた衣服Xの正面図である。衣服Xは、利用者が着用した際に背中部分に備えた背中側ポケット1Xと、腹部の右側に備えた右側ポケット2Xとを有する。身体温冷装置10の温調部11は、衣服Xの首回り部分3Xに取り付けられ、ラジエータ部12は、背中側ポケット1Xに収納され、コントローラ部14及びバッテリ部15は、右側ポケット2Xに収納される。
【0014】
図5は、実施例1の身体温冷装置10の温調部11を示す斜視図である。温調部11は、帯状部材20を備えている。帯状部材20は、屈曲した帯状に形成されている。帯状部材20は、右側固定部材22-1と、左側固定部材22-2と、連結部23とを備えている。右側固定部材22-1は、帯状部材20の一端を形成している。左側固定部材22-2は、帯状部材20の他端を形成している。右側固定部材22-1と左側固定部材22-2とは、右側固定部材22-1に形成される右側内側面21-1と、左側固定部材22-2に形成される左側内側面21-2とが互いに概ね対向するように、配置されている。
【0015】
連結部23は、曲げることができる材料から形成され、右側固定部材22-1と左側固定部材22-2とを繋いでいる。連結部23は、板バネ(図示されていない)を備えている。板バネは、連結部23の内部に配置されている。板バネは、右側固定部材22-1と左側固定部材22-2とが開く方向に離されたときに、弾性変形し、右側固定部材22-1と左側固定部材22-2とが閉じる方向に接近するように、右側固定部材22-1と左側固定部材22-2とに弾性力を与える。
【0016】
温調部11は、右側温調部材25-1と、左側温調部材25-2と、後側温調部材25-3とを備えている。右側温調部材25-1は、右側接触面26-1が形成されている。右側温調部材25-1は、右側接触面26-1が右側内側面21-1から露出するように、右側固定部材22-1の内部に配置され、右側固定部材22-1に固定されている。左側温調部材25-2は、左側接触面26-2が形成されている。左側温調部材25-2は、左側接触面26-2が左側内側面21-2から露出するように、左側固定部材22-2の内部に配置され、左側固定部材22-2に固定されている。後側温調部材25-3は、後側接触面26-3が形成されている。後側温調部材25-3は、連結部23の後側内側面21-3から後側接触面26-3が露出するように、連結部23の内部に配置され、連結部23に固定されている。
【0017】
温調部11は、右側温調部材25-1に対応する右側ペルティエ素子27-1と、左側温調部材25-2に対応する左側ペルティエ素子27-2と、後側温調部材25-3に対応する後側ペルティエ素子27-3とを備えている。3つのペルティエ素子27-1~27-3の各々は、板状に形成され、ホース部16の電力線19を介して電流が供給されることにより、一方の面が吸熱し、他方の面が発熱する。3つのペルティエ素子27-1~27-3の各々は、その供給される電流の極性が逆転すると、その一方の面が発熱し、他方の面が吸熱する。右側温調部材25-1に対応する右側ペルティエ素子27-1は、右側温調部材25-1の内部に配置されている。左側温調部材25-2に対応する左側ペルティエ素子27-2は、左側温調部材25-2の内部に配置されている。後側温調部材25-3に対応する後側ペルティエ素子27-3は、後側温調部材25-3の内部に配置されている。
【0018】
図6は、温調部11を後側調整部28-3側から見た図であり、温調部11内の冷却水の流通経路の一例を示す説明図である。尚、温調部11内を流通する熱媒体は冷却水として説明する。温調部11の帯状部材20は、右側調整部28-1と、左側調整部28-2と、後側調整部28-3とを有する。右側調整部28-1は、帯状部材20内の右側温調部材25-1の背面である右側放熱面25-10に配置し、右側温調部材25-1内の右側ペルティエ素子27-1の放熱面の熱を冷却水へ移動させ、放熱面の温度を調節する。左側調整部28-2は、帯状部材20内の左側温調部材25-2の背面である左側放熱面25-20に配置し、左側温調部材25-2内の左側ペルティエ素子27-2の放熱面の熱を冷却水へ移動させ、放熱面の温度を調節する。後側調整部28-3は、帯状部材20内の後側温調部材25-3の背面である後側放熱面25-30に配置し、後側温調部材25-3内の後側ペルティエ素子27-3の放熱面の熱を冷却水へ移動させ、放熱面の温度を調節する。
【0019】
帯状部材20は、第1の流路29-1と、第2の流路29-2と、第3の流路29-3とを有する。第1の流路29-1は、第1のホース部17と連結される後側調整部28-3と左側調整部28-2との間を繋ぎ、後側調整部28-3を通過した冷却水を左側調整部28-2に流入させる。第2の流路29-2は、左側調整部28-2と右側調整部28-1との間を繋ぎ、左側調整部28-2を通過した冷却水を右側調整部28-1に流入させる。第3の流路29-3は、第2のホース部18と連結される後側調整部28-3と右側調整部28-1との間を繋ぎ、右側調整部28-1を通過した冷却水を後側調整部28-3に流入させる。
【0020】
後側調整部28-3は、第1のホース部17からの冷却水と、後側温調部材25-3の後側接触面26-3の反対側の後側放熱面25-30とを熱的に接触させている。左側調整部28-2は、第1の流路29-1から流入した冷却水と、左側温調部材25-2の左側接触面26-2の反対側の左側放熱面25-20とを熱的に接触させている。右側調整部28-1は、第2の流路29-2から流入した冷却水と、右側温調部材25-1の右側接触面26-1の反対側の右側放熱面25-10とを熱的に接触させている。つまり、後側調整部28-3→左側調整部28-2→右側調整部28-1→後側調整部28-3の順に循環した後の冷却水は、第2のホース部18を介してラジエータ部12に送出されることになる。
【0021】
図7は、実施例1の身体温冷装置10のラジエータ部12を示す斜視図、図8は、ラジエータ部12の一例を示す上面図である。ラジエータ部12は、筺体31を備えている。筺体31は、略四角柱状に形成されている。筺体31は、背面部33と、正面部34と、右側面部35と、左側面部36と、上面部37と、下面部38とを備えている。背面部33は、ラジエータ部12が背中側ポケット1Xに収納された時に人体側となる面である。正面部34は、略四角柱のうちの背面部33と対向する面である。右側面部35は、略四角柱の4つの側面のうちの1つの側面となっている。左側面部36は、略四角柱のうちの右側面部35に対向する側面である。上面部37は、ラジエータ部12が背中側ポケット1Xに収納された時に上側となる面である。下面部38は、上面部37と対向する面である。
【0022】
上面部37は、上側吹出口41Aと、接続口42とが形成されている。上側吹出口41Aは、上面部37のうちの背面部33に隣接する領域に形成され、筺体31内部に吸気された空気を吹き出す。接続口42は、ホース部16の端が接続され、ホース部16の第1のホース部17、第2のホース部18及び電力線19が貫通している。
【0023】
右側面部35は、右側吹出口41B(図10参照)が形成されている。右側吹出口41Bは、右側面部35のうちの背面部33に隣接する領域に形成され、筺体31内部に吸気された空気を吹き出す。左側面部36は、左側吹出口41Cが形成されている。左側吹出口41Cは、左側面部36のうちの背面部33に隣接する領域に形成され、筺体31内部に吸気された空気を吹き出す。下面部38は、下側吹出口41D(図10参照)が形成されている。下側吹出口41Dは、下面部38のうちの背面部33に隣接する領域に形成され、筺体31内部に吸気された空気を吹き出す。正面部34は、吸込口43が形成されている。吸込口43は、正面部34のうちの後述する送風機51に対向する部分に形成され、筺体31内部に空気を吸気する。
【0024】
図9は、ラジエータ部12の筺体31を外した状態の一例を示す斜視図である。図9に示すラジエータ部12は、送風機51と、ポンプ部52と、熱交換器53とをさらに備えている。送風機51は、筺体31の内部のうちの上面部37に近い側の上部領域に配置されている。送風機51は、ファン51Aと、モータ51Bと、支持枠51Cとを備えている。ファン51Aは、背面部33に沿う平面に垂直である回転軸を中心に回転可能に支持されている。モータ51Bは、バッテリ部15から供給される電力を用いてファン51Aを回転させる。尚、ポンプ部52は、モータ51Bが駆動によって発熱し、ポンプ部52の表面の温度が上昇する。また、送風機51は、ファン51Aが回転することにより、筺体31の内部に空気の流れを生成する。送風機51は、筺体31の内部に空気の流れを生成することにより、吸込口43から筺体31の外部の空気を筺体31の内部に吸い込む。支持枠51Cは、例えば、底面が正方形状に形成され、ファン51Aを回転可能に支持し、その側面部に複数の通気孔55が形成されている。各通気孔55は、ファン51Aで吸気された空気を吸込口43に対して垂直方向に吹き出すことになる。その結果、送風機51は、筺体31の内部に空気の流れを生成することにより、さらに、その吸い込まれた空気を上側吹出口41A、下側吹出口41D、右側吹出口41B及び左側吹出口41Cから筺体31の外部に吹き出す。つまり、複数の通気孔55は、ファン51Aで吸気された空気を後述する熱交換器53の複数のフィンに当て、その空気が吸込口43に対して垂直方向に吹き出す第1の通気路55Aを成し、第1の通気路55A内を流れる空気で熱交換器53全体を冷却する。更に、複数の通気孔55の内、ポンプ部52側に隣接する通気孔55は、ファン51Aで吸気された空気を吹き出す第2の通気路55Bを成し、第2の通気路55B内を流れる空気をポンプ部52の一部に当てることで、ポンプ部52を冷却する。
【0025】
図10は、ラジエータ部12の筺体31内部の熱交換器53及びポンプ部52の配置関係の一例を示す説明図である。ポンプ部52は、筺体31の内部のうちの下面部38に近い下部領域に配置されている。ポンプ部52は、バッテリ部15から供給される電力を用いて、冷却水を温調部11とラジエータ部12との間で循環させる。ポンプ部52は、ポンプ流入口52Aと、ポンプ流出口52Bとを有する。ポンプ流入口52Aは、熱交換器53の流出口54Bとの間をチューブで連結し、熱交換器53内の水管で熱交換後の冷却水をポンプ部52内に流入させる。ポンプ流出口52Bは、第1のホース部17との間をチューブで連結し、ポンプ流入口52Aから流入した冷却水を第1のホース部17に送出する。すなわち、ポンプ部52は、バッテリ部15から供給される電力を用いて、第2のホース部18を介して冷却水を温調部11からラジエータ部12に吸引し、第1のホース部17を介して冷却水をラジエータ部12から温調部11に送出する。その結果、ホース部16内を冷却水が循環する。
【0026】
熱交換器53は、送風機51により筺体31の内部を流れる空気が当たるように、筺体31の内部の上部領域のうちの送風機51と背面部33との間に配置されている。熱交換器53は、冷却水が通過する水管と、吸気された空気が当たる複数のフィンとを備えている。水管は、一端の流入口54Aと、他端の流出口54Bとを有する。流入口54Aは、第2の連結ホース部18Bと連結し、第2の連結ホース部18Bからの冷却水を水管内に流入させる。流出口54Bは、ポンプ部52のポンプ流入口52Aと連結し、熱交換後の冷却水をポンプ部52に送出する。複数のフィンは、送風機51により熱交換器53を通過する空気と、ポンプ部52により循環される冷却水が流れる水管とに熱的に接触させている。熱交換器53は、送風機51により熱交換器53を通過する空気と、ポンプ部52により熱交換器53を通過する冷却水との間の熱交換を行う。また、送風機51は、吸い込んだ空気を熱交換器53のフィンに当てると共に、吸い込んだ空気を、通気孔55(第2の通気路55B)を通じてポンプ部52の側面に当てる。
【0027】
図11は、ラジエータ部12の筺体31内部の熱交換器53とポンプ部52との間の冷却水の流通経路の一例を示す説明図である。流入口54Aは、第2の連結ホース部18Bが連結され、第2の連結ホース部18Bからの冷却水を熱交換器53内部の水管に流入させる。流出口54Bは、ポンプ部52と熱交換器53内の水管との間を連結し、熱交換器54の水管を通過した冷却水をポンプ部52のポンプ流入口52Aに送出する。ポンプ部52は、ポンプ流出口52Bと第1のホース部17との間を連結し、ポンプ流出口52Bからの冷却水を第1のホース部17に送出する。
【0028】
図12は、身体温冷装置10のタンク部13の一例を示す斜視図である。タンク部13は、貯水部13Aと、タンク流入口13Bと、タンク流出口13Cと、給水口13Dと、第1のホース固定部13Eと、第2のホース固定部13Fとを有する。貯水部13Aは、冷却水を一時的に貯水する。タンク流入口13Bは、温調部11側の第1の連結ホース部18Aが連結され、第1の連結ホース部18Aからの冷却水を貯水部13Aに流入させる。タンク流出口13Cは、ラジエータ部12側の第2の連結ホース部18Bが連結され、貯水部13Aに貯水された冷却水をラジエータ部12側の第2の連結ホース部18Bに送出する。給水口13Dは、貯水部13A内に冷却水を給水するための口である。第1のホース固定部13Eは、ラジエータ部12と温調部11との間を連結する第1のホース部17を固定する固定部である。第2のホース固定部13Fは、温調部11とタンク流入口13Bとの間を連結する第1の連結ホース部18Aを固定する固定部である。
【0029】
図13は、実施例1の身体温冷装置10の一例を示すブロック図である。身体温冷装置10は、温調部11と、ラジエータ部12と、コントローラ部14と、バッテリ部15とを有する。温調部11は、右側温調部材25-1と、左側温調部材25-2と、後側温調部材25-3とを有する。ラジエータ部12は、送風機51と、ポンプ部52とを有する。コントローラ部14は、コンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)14Aと、記憶装置14Bと、入出力インタフェース14Cと、電力供給部14Dと、操作部14Eとを備えている。CPU14Aは、コントローラ部14にインストールされるコンピュータプログラムを実行することにより、情報処理し、温調部11及びラジエータ部12を制御する。記憶装置14Bは、コントローラ部14にインストールされるコンピュータプログラムを記憶し、CPU14Aにより利用される情報を記憶する。入出力インタフェース14Cは、身体温冷装置10に設けられる複数のデバイスに接続されている。CPU14Aは、入出力インタフェース14Cを介して、例えば、右側温調部材25-1、左側温調部材25-2、後側温調部材25-3、送風機51及びポンプ52等の複数のデバイスを制御する。操作部14Eは、身体温冷装置10のON/OFFのスイッチや、温調部11の温度を調整する調整つまみ等の入力インタフェースである。
【0030】
図14は、温調部11、タンク部13及びラジエータ部12の冷却水の流通経路の一例を示す説明図である。温調部11は、ラジエータ部12との間を第1のホース部17を通じて連結されると共に、タンク部13との間を第1の連結ホース部18Aを通じて連結される。更に、ラジエータ部12は、タンク部13との間を第2の連結ホース部18Bを通じて連結される。
【0031】
ラジエータ部12は、第1のホース部17を通じて温調部11内の後側調整部28-3に冷却水を送出する。後側調整部28-3は、第1の流路29-1を通じて左側調整部28-2に冷却水が流れる。更に、左側調整部28-2は、第2の流路29-2を通じて右側調整部28-1に冷却水が流れる。更に、右側調整部28-1は、第3の流路29-3を通じて後側調整部28-3に冷却水が流れる。更に、後側調整部28-3は、第1の連結ホース部18Aを通じてタンク部13に冷却水が流れる。タンク部13は、第1の連結ホース部18Aが連結されるタンク流入口13Bから冷却水を流入させ、第2の連結ホース部18Bが連結されるタンク流出口13Cから冷却水を第2の連結ホース部18Bに流入させる。
【0032】
タンク部13は、第2の連結ホース部18Bを通じて冷却水がラジエータ部12内の熱交換器53内の流入口54Aに流れる。ラジエータ部12内の熱交換器53は、流入口54Aから流入した冷却水が水管内を通過することで、流入口54Aから流入した冷却水と空気を熱交換する。その結果、冷却水は空気で冷却されることになる。更に、熱交換器53は、熱交換後の冷却水が流出口54Bからポンプ部52内に流れる。ポンプ部52は、流出口54Bから流出した冷却水をポンプ流入口52Aから流入させ、流入後の冷却水をポンプ流出口52Bから第1のホース部17に送出する。
【0033】
つまり、ラジエータ部12で熱交換後の冷却水は、第1のホース部17、温調部11内の第1の流路29-1、第2の流路29-2、第3の流路29-3、温調部11側の第1の連結ホース部18A、タンク部13、ラジエータ部12側の第2の連結ホース部18B、熱交換器53、ポンプ部52、第1のホース部17の順に循環することになる。
【0034】
特に、温調部11は、第1のホース部17から流入した冷却水が後側調整部28-3、左側調整部28-2、右側調整部28-1の順に通過するので、後側温調部材25-3、左側温調部材25-2及び右側温調部材25-1を利用者の首回りを効率良く冷却できる。
【0035】
[身体温冷装置10の動作]
温調部11は、身体温冷装置10を用いて利用者の体温を調節する際、利用者の首回りとなる首回り部分3Xに装着されることになる。このとき温調部11の帯状部材20は、右側固定部材22-1の内側と左側固定部材22-2の内側との間の距離が利用者の首の太さより大きくなるように連結部23が変形した状態で、首の周囲を囲むように、配置される。帯状部材20は、さらに、利用者の首の後部、例えば、うなじ付近に後側温調部材25-3の後側接触面26-3が接触するように、配置される。帯状部材20は、さらに、利用者の首の皮膚のうちの右頸動脈を覆う右頸動脈部分に右側温調部材25-1の右側接触面26-1が接触し、皮膚のうちの左頸動脈を覆う左頸動脈部分に左側温調部材25-2の左側接触面26-2が接触するように、配置される。このとき、連結部23の板バネは、右側温調部材25-1と左側温調部材25-2とが首を挟むように、右側温調部材25-1と左側温調部材25-2とに弾性力を与える。帯状部材20は、連結部23の板バネの弾性力により、右側温調部材25-1の右側接触面26-1を右頸動脈部分に適切に接触させ、左側温調部材25-2の左側接触面26-2を左頸動脈部分に適切に接触させることができる。
【0036】
ラジエータ部12は、身体温冷装置10を用いて利用者の体温を調節する際、図3に示されているように、利用者が着用する衣服Xの背中側ポケット1Xに収納して保持される。ラジエータ部12は、筺体31の背面部33が衣服Xに対向するように、配置される。
【0037】
身体温冷装置10は、コントローラ部14の操作部14Eが操作されることにより起動する。コントローラ部14は、身体温冷装置10が起動された後に、操作部14Eが操作されることにより、ペルティエ素子27-1、27-2、27-3の設定温度を設定し、その設定温度を記憶装置14Bに記録する。コントローラ部14は、操作部14Eが操作されることにより、身体温冷装置10の動作を開始する。コントローラ部14は、身体温冷装置10の動作が開始されると、送風機51を制御することにより、筺体31の内部に空気の流れを生成する。ラジエータ部12は、筺体31の内部に空気の流れが生成されることにより、吸込口43を介して、筺体31の外部の空気を筺体31の内部に吸い込む。ラジエータ部12は、筺体31の内部に空気の流れが生成されることにより、さらに、上側吹出口41A、下側吹出口41D、右側吹出口41B及び左側吹出口41Cを介して、筺体31の内部の空気を筺体31の外部に吹き出す。コントローラ部14は、身体温冷装置10の動作が開始されると、さらに、ポンプ部52を制御することにより、ホース部16を介して温調部11とラジエータ部12との間で冷却水を循環させる。ペルティエ素子27-1~27-3の人体への接触面の温度は、供給する電流の大きさから推定するようにしても良いし、ペルティエ素子27-1~27-3の接触面に設けられた温度センサによって検出してもよい。
【0038】
コントローラ部14は、送風機51及びポンプ部52が運転しているときに、入出力インタフェース14Cを介して、右側温調部材25-1の右側接触面26-1の温度が設定温度に等しくなるように、右側ペルティエ素子27-1に所定の電流を供給する。コントローラ部14は、右側温調部材25-1と同様に、入出力インタフェース14Cを介して、左側温調部材25-2の左側接触面26-2の温度が設定温度に等しくなるように、左側ペルティエ素子27-2に所定の電流を供給する。コントローラ部14は、右側温調部材25-1と同様に、入出力インタフェース14Cを介して、後側温調部材25-3の後側接触面26-3の温度が設定温度に等しくなるように、後側ペルティエ素子27-3に所定の電流を供給する。
【0039】
たとえば、コントローラ部14は、右側温調部材25-1の右側接触面26-1の温度が設定温度より高い場合、右側ペルティエ素子27-1のうちの右側接触面26-1に近い側の面が吸熱するように、右側ペルティエ素子27-1に電流を供給する。右側温調部材25-1の右側接触面26-1は、右側ペルティエ素子27-1のうちの右側接触面26-1に近い側の面が吸熱することにより、冷却される。コントローラ部14は、左側接触面26-2の温度と後側接触面26-3の温度とが設定温度より高い場合、左側ペルティエ素子27-2と後側ペルティエ素子27-3とに電流を供給することにより、左側接触面26-2と後側接触面26-3とを冷却する。身体温冷装置10は、右側接触面26-1と左側接触面26-2とが冷却されることにより、利用者の頸動脈を設定温度に応じて冷却することができる。利用者は、頸動脈が冷却されることにより、頸動脈を流れる血液が適切に冷却され、体温が低下する。
【0040】
右側ペルティエ素子27-1は、右側接触面26-1に近い側の面が吸熱するときに、右側接触面26-1から遠い側の面が発熱する。右側温調部材25-1のうちの右側接触面26-1の反対側の右側放熱面25-10は、右側ペルティエ素子27-1のうちの右側接触面26-1から遠い側の面が発熱することにより、身体温冷装置10が配置される環境の空気の温度より高い温度になる。身体温冷装置10が配置される環境の空気の温度は、温調部11あるいはラジエータ部12に外気温センサを設けることで検出するようにすればよい。右側温調部材25-1の右側放熱面25-10は、ラジエータ部12から温調部11内の右側調整部28-1供給された冷却水に熱的に接触していることにより、冷却水により冷却される。右側ペルティエ素子37-1は、一方の面が吸熱しているときに、他方の面の放熱が十分行われないと、一方の面を冷却する効率が低下する。右側ペルティエ素子37-1は、右側温調部材25-1の右側放熱面25-10が冷却されることによりペルティエ素子の他方の面の放熱が促進されて、冷却効率の低下を防止することができる。
【0041】
ラジエータ部12から温調部11に供給された冷却水は、右側接触面26-1の右側放熱面25-10により、身体温冷装置10が配置される環境の空気の温度より高い温度に加熱される。その加熱された高温の冷却水は、ホース部16を介してラジエータ部12に供給される。温調部11からラジエータ部12に供給された高温の冷却水は、吸込口43から筺体31の内部に吸い込まれた空気により、冷却される。その冷却された冷却水は、ホース部16を介して温調部11に供給される。筺体31の内部に吸い込まれた空気は、温調部11からラジエータ部12に供給された高温の冷却水により、加熱される。その加熱された空気は、例えば、上側吹出口41A、下側吹出口41D、右側吹出口41B及び左側吹出口41Cから筺体31の外部に吹き出される。
【0042】
例えば、コントローラ部14は、右側温調部材25-1の右側接触面26-1の温度が設定温度より低い場合、右側ペルティエ素子27-1のうちの右側接触面26-1に近い側の面が発熱するように、右側ペルティエ素子27-1に電流を供給する。すなわち、コントローラ部14は、右側接触面26-1の温度が設定温度より低い場合、右側ペルティエ素子27-1が右側接触面26-1を冷却するときと逆の電流が右側ペルティエ素子27-1に流れるように、右側ペルティエ素子27-1に電流を供給する。右側温調部材25-1の右側接触面26-1は、右側ペルティエ素子27-1のうちの右側接触面26-1に近い側の面が発熱することにより、加熱される。コントローラ部14は、左側接触面26-2の温度と後側接触面26-3の温度とが設定温度より低い場合、左側ペルティエ素子27-2と後側ペルティエ素子27-3とに電流を供給することにより、左側接触面26-2と後側接触面26-3とを加熱する。身体温冷装置10は、右側接触面26-1と左側接触面26-2とが加熱されることにより、利用者の頸動脈を設定温度に応じて加熱することができる。利用者は、頸動脈が加熱されることにより、頸動脈を流れる血液が適切に加熱され、体温が上昇する。
【0043】
右側ペルティエ素子27-1は、右側接触面26-1に近い側の面が発熱するときに、右側接触面26-1から遠い側の面が吸熱する。右側温調部材25-1のうちの右側接触面26-1の反対側の右側放熱面25-10は、右側ペルティエ素子27-1のうちの右側接触面26-1から遠い側の面が吸熱する。身体温冷装置10が配置される環境の空気の温度が右側接触面26-1から遠い側の面より低い場合、右側温調部材25-1の右側放熱面25-10は、ラジエータ部12から右側調整部28-2に供給された冷却水に熱的に接触していることにより、冷却水により加熱される。身体温冷装置10が配置される環境の空気の温度が右側接触面26-1から遠い側の面より高い場合は、冷却水を循環させる必要はない。
【0044】
[実施例1の身体温冷装置10の効果]
実施例1の身体温冷装置10内のラジエータ部12は、筺体31内部に吸気された空気を流入させ、当該空気をポンプ部52の一部に当てることで当該空気でポンプ部52を冷却する第2の通気路55Bを有する。その結果、ラジエータ部12は、第2の通気路55Bを通じて吸気された空気をポンプ部52の一部に当てることで、稼働中のポンプ部52の温度を下げることができる。更に、身体温冷装置10を利用者が装着した場合でも、利用者に対するポンプ部52のモータ51Bの熱の影響による不快感を低減できる。
【0045】
ラジエータ部12は、筺体31の設置面(背面部33)に対向する第1の面である正面部34に配置され、空気を筺体31内に吸気する吸込口43を有する。ラジエータ部12は、筺体31の設置面に直立する、例えば、上面部37、下面部38、右側面部35及び左側面部36等の第2の面に形成され、筺体31内に吸気された空気を当該筺体31から吹き出す吹出口41を有する。その結果、吸込口43から吸気された空気を各吹出口41から吹き出すことで、筺体31内部に空気を通過させることができる。更に、利用者が身体温冷装置10を装着した場合、ラジエータ部12の設置面が利用者の背中に位置し、ラジエータ部12の正面の吸込口43の空間を十分に確保することで多くの空気をラジエータ部12内に取り込むことができる。また、ラジエータ12部の側面から空気を吐き出すことで、利用者の背面側にいる人への吹出風の影響による不快感を低減できる。
【0046】
温調部11は、左側調整部28-2と後側調整部28-3との間を繋ぎ、後側調整部28-3からの冷却水を左側調整部28-2に流入させる第1の流路29-1を有する。更に、温調部11は、左側調整部28-2と右側調整部28-1との間を繋ぎ、左側調整部28-2からの冷却水を右側調整部28-1に流入させる第2の流路29-2を有する。更に、温調部11は、右側調整部28-1と後側調整部28-3との間を繋ぎ、右側調整部28-1からの冷却水を後側調整部28-3に流入させる第3の流路29-3を有する。温調部11は、冷却水が第1の流路29-1→第2の流路29-2→第3の流路29-3を流れる、つまり、冷却水が後側調整部28-3、左側調整部28-2、右側調整部28-1、後側調整部28-3の順に通過する。その結果、後側調整部材25-3、左側調整部材25-2、右側調整部材25-1、後側調整部28-3を単一経路で冷却できる。ラジエータ部12から第1のホース部17、第1の流路29-1、第2の流路29-2、第3の流路29-3及び第2のホース部18を経由してラジエータ部12に冷却水が循環する。従って、流路が重なることなく、背中側にラジエータ部12を設置した場合に首回り部分3Xからのホースの引き回しを最短経路とすることが可能であり、利用者の邪魔とならない。
【0047】
温調部11内の後側調整部28-3は、第1の流路29-1と第1のホース部17との間又は、第3の流路29-3と第1の連結ホース部18Aとの間に配置されれば良い。その結果、後側調整部28-3は、後側温調部材25-3の後側ペルティエ素子27-3の温度を右側調整部28-1又は左側調整部28-2を冷却した冷却水により調整できる。
【0048】
身体温冷装置10は、ラジエータ部12と電気的に接続し、当該ラジエータ部12を制御するコントローラ部14をさらに有する。その結果、コントローラ部14は、身体温冷装置10内のラジエータ部12を制御できる。
【0049】
身体温冷装置10は、コントローラ部14と電気的に接続し、当該コントローラ部14に電力を供給するバッテリ部15をさらに有する。その結果、身体温冷装置10は、コントローラ部14を通じてバッテリ部15から電力を受けられる。
【0050】
身体温冷装置10は、温調部11とラジエータ部12との間を連結するホース部16に、当該ホース部16内を流通する冷却水を一時的に蓄えると共に、当該冷却水を給水可能にするタンク部13を備えた。その結果、給水可能なタンク部13によって、ホース部16内を通過する冷却水の補充を容易にした。
【0051】
ホース部16は、ラジエータ部12と温調部11との間を繋ぎ、ラジエータ部12からの冷却水が温調部11に流入する第1のホース部17を有する。更に、ホース部16は、タンク部13と温調部11との間を繋ぎ、温調部11からの冷却水がタンク部13に流入する第1の連結ホース部18Aを有する。更に、ホース部16は、ラジエータ部12とタンク部13との間を繋ぎ、タンク部13からの冷却水がラジエータ部12に流入する第2の連結ホース部18Bを有する。第1のホース部17を経由してラジエータ部12から温調部11に冷却水を流通すると共に、第2のホース部18を経由して温調部11からタンク部13経由でラジエータ部12に冷却水を流通する。その結果、ホース部16内に空気が混入した場合でも、第1の連結ホース部18Aから混入した空気がタンク部13に溜まるため、タンク部13で空気を逃がすことができる。冷却水に空気が混入することで生じる異音を減少させることができる。
【0052】
尚、実施例1の身体温冷装置10では、温調部11とラジエータ部12との間を繋ぐ第2のホース部18にタンク部13を配置する場合を例示したが、第2のホース部18の代わりに、第1のホース部17にタンク部13を配置しても良く、適宜変更可能である。
【0053】
実施例1の身体温冷装置10は、第1のホース部17からの冷却水が、後側調整部28-3を通過し、後側調整部28-3から第1の流路29-1を経て左側調整部28-2を通過し、左側調整部28-2から第2の流路29-2を経て右側調整部28-1を通過し、右側調整部28-1から第3の流路29-3を経て後側調整部28-3を通過し、後側調整部28-3から第1の連結ホース部18Aに流出する場合を例示した。しかしながら、温調部11内の冷却水の流路はこれに限定されるものではなく、適宜変更可能である。従って、その実施の形態につき、実施例2として以下に説明する。尚、実施例1の身体温冷装置10と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
【実施例2】
【0054】
図15は、実施例2の身体温冷装置10の温調部11、タンク部13及びラジエータ部12の冷却水の流通経路の一例を示す説明図である。図15に示す温調部11Aは、第1の流路30-1と、第2の流路30-2とを有する。第1の流路30-1は、左側調整部28-2と後側調整部28-3Aとの間を繋ぐと共に、右側調整部28-1と後側調整部28-3Aとの間を繋ぐ。更に、第1の流路30-1は、第1のホース部17からの冷却水が分岐して、分岐された冷却水が左側調整部28-2及び右側調整部28-1に流れる流路である。第2の流路30-2は、右側調整部28-1と後側調整部28-3Aとの間を繋ぐと共に、左側調整部28-2と後側調整部28-3Aとの間を繋ぐ。更に、第2の流路30-2は、左側調整部28-2からの冷却水と右側調整部28-1からの冷却水とが合流し、合流した冷却水が第1の連結ホース部18Aに流れる流路である。
【0055】
ラジエータ部12は、第1のホース部17と温調部11A内の第1の流路30-1との間が連結しているので、空気と熱交換された冷却水を温調部11Aに供給する。温調部11Aは、第1のホース部17と後側調整部28-3Aとの間を連結し、ラジエータ部12からの冷却水が後側調整部28-3Aを通過する。温調部11Aは、第1のホース部17から後側調整部28-3Aを通過した冷却水が第1の流路30-1を経て左側調整部28-2及び右側調整部28-1を通過する。更に、温調部11Aは、第1の連結ホース部18Aと連結する後側調整部28-3Aと、右側調整部28-1及び左側調整部28-2との間を第2の流路30-2で連結する。第2の流路30-2は、右側調整部28-1からの冷却水と左側調整部28-2からの冷却水とが合流し、合流後の冷却水が第1の連結ホース部18Aに流入する。温調部11Aは、第1の連結ホース部18Aを通じて第2の流路30-2からの冷却水をタンク部13に供給する。タンク部13は、第1の連結ホース部18Aと連結されるタンク流入口13Bから冷却水を流入させ、第2の連結ホース部18Bと連結されるタンク流出口13Cから冷却水を第2の連結ホース部18Bに供給する。
【0056】
タンク部13は、第2の連結ホース部18Bを通じて冷却水をラジエータ部12内の熱交換器53内の流入口54Aに供給する。ラジエータ部12内の熱交換器53は、流入口54Aから流入した冷却水が水管内を通過することで、空気と流入口54Aから流入した冷却水を熱交換し、温度の下がった冷却水を流出口54Bからポンプ部52内に供給する。ポンプ部52は、流出口54Bから流出した冷却水をポンプ流入口52Aから流入させ、流入後の冷却水をポンプ流出口52Bから第1のホース部17に送出する。
【0057】
つまり、ラジエータ部12で熱交換後の冷却水は、第1のホース部17、温調部11A内の第1の流路30-1、第2の流路30-2、温調部11A側の第1の連結ホース部18A、タンク部13、ラジエータ部12側の第2の連結ホース部18B、熱交換器53、ポンプ部52、第1のホース部17の順に循環することになる。
【0058】
特に、温調部11Aは、第1のホース部17から流入した冷却水が後側調整部28-3から分岐して左側調整部28-2及び右側調整部28-1を通過する。更に、温調部11Aは、左側調整部28-2からの冷却水と右側調整部28-1からの冷却水とが合流し、合流後の冷却水が第1の連結ホース部18Aに流出する。その結果、左側温調部材25-2及び右側温調部材25-1に同じ温度の冷却水を分配できる。
【0059】
また、実施例1の身体温冷装置10では、温調部11からラジエータ部12に冷却水が流れる第2のホース部18にタンク部13を配置する場合を例示した。しかしながら、ラジエータ部12から温調部11に冷却水が流れる第1のホース部17にタンク部13を配置しても良く、適宜変更可能である。
【0060】
実施例2の温調部11Aは、左側調整部28-2と第1のホース部17との間を繋ぐと共に、右側調整部28-1と第1のホース部17との間を繋ぐ第1の流路30-1を有する。第1の流路30-1は、第1のホース部17からの冷却水を分岐し、分岐された冷却水を左側調整部28-2及び右側調整部28-1に流出する。温調部11Aは、左側調整部28-2と第1の連結ホース部18Aとの間を繋ぐと共に、右側調整部28-1と第1の連結ホース部18Aとの間を繋ぐ第2の流路30-2を有する。第2の流路30-2は、左側調整部28-2からの冷却水と右側調整部28-1からの冷却水とを合流させ、合流させた冷却水を第1の連結ホース部18Aに流出する。その結果、ラジエータ部12から第1のホース部17、温調部11A及び第2のホース部18を経由してラジエータ部12に冷却水が循環する。つまり、背中側にラジエータ部12を設置した場合に首回り部分3Xからのホース類の引き回しを最短経路とすることが可能であり、利用者の邪魔とならない。
【0061】
また、実施例1及び2の身体温冷装置10では、温調部11からラジエータ部12に冷却水が流れる第2のホース部18にタンク部13を配置する場合を例示したが、タンク部13を配置しなくても良く、その場合の実施の形態につき、実施例1をもとに、実施例3として以下に説明する。尚、実施例1の身体温冷装置10と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。また、実施例3は、実施例2の身体温冷装置10にも適用可能である。
【実施例3】
【0062】
図16は、温調部11及びラジエータ部12の冷却水の流通経路の一例を示す説明図である。温調部11は、ラジエータ部12との間を第1のホース部17及び第2のホース部18を通じて連結される。ラジエータ部12は、第1のホース部17を通じて温調部11内の後側調整部28-3に冷却水を送出する。温調部11内の後側調整部28-3は、第2のホース部18を通じてラジエータ部12に冷却水を供給する。
【0063】
温調部11内の後側調整部28-3は、第1の流路29-1を通じて左側調整部28-2に冷却水を供給する。更に、左側調整部28-2は、第2の流路29-2を通じて後側調整部28-3を経由して右側調整部28-1に冷却水を供給する。更に、右側調整部28-1は、第3の流路29-3を通じて後側調整部28-3に冷却水を供給する。更に、後側調整部28-3は、第2のホース部18を通じて冷却水をラジエータ部12内の流入口54Aに供給する。
【0064】
ラジエータ部12内の熱交換器53は、流入口54Aから流入した冷却水が水管内を通過することで、空気と流入口54Aから流入された冷却水を熱交換し、熱交換後の冷却水を流出口54Bからポンプ部52内に供給する。ポンプ部52は、流出口54Bから流出した冷却水をポンプ流入口52Aから流入させ、流入後の冷却水をポンプ流出口52Bから第1のホース部17に送出する。
【0065】
つまり、熱交換後の冷却水は、第1のホース部17、温調部11内の第1の流路29-1、第2の流路29-2、第3の流路29-3、温調部11側の第2のホース部18、熱交換器53、ポンプ部52、第1のホース部17の順に循環することになる。
【0066】
特に、温調部11は、第1のホース部17から流入した冷却水が後側調整部28-3、左側調整部28-2、後側調整部28-3、右側調整部28-1の順に通過するので、後側温調部材25-3、左側温調部材25-2、右側温調部材25-1を単一の経路で冷却できる。
【0067】
温調部11は、左側調整部28-2と第1のホース部17との間を繋ぎ、第1のホース部17からの冷却水が左側調整部28-2に流入する第1の流路29-1を有する。更に、温調部11は、左側調整部28-2と右側調整部28-1との間を繋ぎ、左側調整部28-2からの冷却水が右側調整部28-1に流入する第2の流路29-2を有する。更に、温調部11は、右側調整部28-1と第1の連結ホース部18Aとの間を繋ぎ、右側調整部28-1からの冷却水が後側調整部28-3を経由して第1の連結ホース部18Aに流入する第3の流路29-3を有する。温調部11は、冷却水が第1の流路29-1→第2の流路29-2→第3の流路29-3を流れる、つまり、冷却水が後側調整部28-3、左側調整部28-2、後側調整部28-3、右側調整部28-1の順に通過する。その結果、後側温調部材25-3の冷却能力が高められる。ラジエータ部12から第1のホース部17、第1の流路29-1、第2の流路29-2、第3の流路29-3、第2のホース部18を経由してラジエータ部12に冷却水が循環する。つまり、流路が重なることなく、背中側にラジエータ部12を設置した場合に首回り部分3Xからのホースの引き回しを最短経路とすることが可能であり、利用者の邪魔とならない。
【0068】
実施例1乃至3の身体温冷装置10のラジエータ部12は、正面部34に吸込口43、上面部37、下面部38、右側面部35及び左側面部36に吹出口41を配置する場合を例示した。正面部34に吹出口、上面部37、下面部38、右側面部35及び左側面部36に吸込口を配置しても良い。しかしながら、ラジエータ部12の背面部33を利用者が着用した衣服Xに装着した場合、上面部37、下面部38、右側面部35及び左側面部36に形成された吸込口が衣服Xのたるんだ部分により塞がれてしまうことが考えられる。そこで、このような事態に対処する実施の形態につき、実施例4として以下に説明する。尚、実施例1の身体温冷装置10と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図17は、実施例4のラジエータ部12Aの上面図の一例を示す説明図である。
【実施例4】
【0069】
ラジエータ部12Aは、筺体31の設置面(背面部33)に直立する第1の面である側面部に形成され、空気を筺体31内に吸気する吸込口43Aと、筺体31の設置面に対向する第2の面である正面部34に形成され、筺体31内に吸気された空気を当該筺体31から吹き出す吹出口とを有する。吸込口43Aから吸気された空気を各吹出口から吹き出すことで、筺体31内部に空気を通過できる。
【0070】
図17に示すラジエータ部12Aの筺体31の背面部33には、筺体31を正面部34側から見たときに外縁部が正面部34よりも外周方向に延びる土台39が形成されている。土台39は、筺体31の背面部33が衣服Xに接触して装着された場合に、正面部34の端部と土台39の端部とで衣服Xを押さえることができるため、筺体31の上側吸込口、左側吸込口、右側吸込口及び下側吸込口等の吸込口43Aと衣服Xとの間に空間を形成する。土台39は、低伝熱性材料の遮熱材で形成されても良い。吸込口43Aと衣服Xとの間に形成される空間で吸込口43Aが衣服Xで塞がれないようにできる。
【0071】
その結果、吸込口43Aと衣服Xとの間の空間で吸込口43Aが塞がれることがないため、吸込口43Aから吸気された空気を筺体31内部に取り込み、吹出口から空気が吹き出す。その結果、ポンプ部52により循環される冷却水との間の熱交換が適切に行われ、温調部11により利用者の頸動脈を流れる血液の温度を適切に調節できる。
【0072】
[実施例4の身体温冷装置10の効果]
ラジエータ部12Aの筺体31には、背面部33の外縁部が正面部34よりも外周方向に延びる土台39が形成される。土台39は、筺体31の背面部33が衣服Xに装着された場合に、筺体31の吸込口43Aと衣服Xとの間に空間を形成する。その結果、ラジエータ部12Aが柔らかい布等の衣服Xに装着された場合でも、空間を確保することで衣服Xが吸込口43Aを塞がないようにできる。ラジエータ部12Aの側面の吸込口43Aの空間を十分に確保することで多くの空気をラジエータ部12A内に取り込むことができる。また、ラジエータ部12Aの正面の吹出口から空気を吐き出すことで、利用者への吹出風の影響を軽減できる。
【0073】
土台39は、低導電性材料の遮熱材で形成される。その結果、利用者が身体温冷装置10を装着した場合、利用者の背中にラジエータ部12Aの土台39が位置するため、利用者の背中に対するラジエータ部12Aの熱を遮断できる。
【0074】
以上、実施例を説明したが、前述した内容により実施例が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【符号の説明】
【0075】
10 身体温冷装置
11 温調部
12 ラジエータ部
14 コントローラ部
15 バッテリ部
16 ホース部
28-1 右側調整部
28-2 左側調整部
28-3 後側調整部
31 筺体
39 土台
41 吹出口
43 吸込口
51 送風機
52 ポンプ部
53 熱交換器
55A 第1の通気路
55B 第2の通気路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17