(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】情報処理装置、制御方法とプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240628BHJP
G06F 3/12 20060101ALI20240628BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06F3/12 329
G06F3/12 308
G06F3/12 375
G06F3/12 378
G06T1/00 310A
(21)【出願番号】P 2019221447
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 公生
(72)【発明者】
【氏名】金本 好司
(72)【発明者】
【氏名】飯田 利彦
【審査官】青柳 光代
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-246722(JP,A)
【文献】特開2002-092399(JP,A)
【文献】特開2005-205797(JP,A)
【文献】特開2016-206691(JP,A)
【文献】特開2018-116442(JP,A)
【文献】国際公開第2015/114833(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G06F 3/12
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物の品質を検査した検査結果を取得する取得手段と、
評価基準を含む品質要求データを受信する受信手段と、
前記品質要求データに含まれる評価基準と前記検査結果に基づいて、前記印刷物の品質レベルを特定する特定手段と、
前記検査結果と前記品質レベルを含む品質報告データを作成する作成手段と、
前記品質報告データを所定の外部装置へと送信する送信手段と
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記受信手段は、前記品質要求データを、前記所定の外部装置から受信することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の情報処理装置であって、
前記取得手段は、印刷物の複数の項目それぞれについて品質を検査する複数の検査手段から前記検査結果を取得し、
前記特定手段は、前記複数の項目それぞれについて前記検査結果を評価し、前記品質レベルを特定する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の情報処理装置であって、
前記複数の項目は、印刷物の色と、印刷物の位置ずれと、印刷されたバーコードの可読性とのうち少なくともいずれかを含む
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
請求項3
または4に記載の情報処理装置であって、
前記作成手段はさらに、前記複数の項目の少なくともいずれかについて、前記検査結果を評価して評価結果を得る評価方法と、当該評価結果とを前記品質報告データに含めることを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の情報処理装置であって、
前記所定の外部装置は、前記品質報告データを端末装置に対して提供するサーバであることを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の情報処理装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項8】
取得手段と受信手段と特定手段と作成手段と送信手段とを有する情報処理装置が実行する制御方法であって、
前記制御方法は
前記取得手段が、印刷物の品質を検査した検査結果を取得
する取得工程と、
前記受信手段が、評価基準を含む品質要求データを受信
する受信工程と、
前記特定手段が、前記品質要求データに含まれる評価基準と前記検査結果に基づいて、前記印刷物の品質レベルを特定
する特定工程と、
前記作成手段が、前記検査結果と前記品質レベルを含む品質報告データを作成
する作成工程と、
前記送信手段が、前記品質報告データを所定の外部装置へと送信する
送信工程と、を有する
ことを特徴とする
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、制御方法とプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
商業印刷分野において、発注者が印刷業者に依頼する成果物の品質に関する要求と報告に関する情報交換を電子化で行うことが求められることが想定される。実現するための仕様の一例としてPQX/PRX(Print Quality eXchange、Print Request eXchange)やJDF(Job Definition Format)等の標準規格があげられる。発注者が印刷業者に求める成果物の品質の要求をPRXによって伝達し、印刷業者が生産した成果物の品質をPQXによって発注者に報告する一連の処理を電子化する。
【0003】
すなわち第一に従来行われていた発注者が印刷業者に依頼する成果物の品質に関する要求事項を定量的に提示することで相互の成果物品質に関する誤認識の生ずる可能性を低減する効果を得ることが可能となる点である。
【0004】
また第二に印刷業者が生産した成果物の品質について電子的に可視化することが可能となるため、発注者は即時的に生産を依頼した成果物の品質を掌握することが可能となる点である。
【0005】
さらに第三に品質に関する要求と報告を電子化した効果として長期に及ぶ成果物の生産においても、時系列的な品質の揺らぎが生じうる場合であっても品質を均一化するための活動を発注者並びに印刷業者が実施することを容易化する点である。
【0006】
第四に発注者が複数の印刷業者に生産を依頼する場合であっても前記複数の印刷業者間の品質のばらつきを可視化すると同時に品質を均一化するための活動を発注者並びに印刷業者が実施することを容易化する点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
成果物品質要求/報告システムには、ユーザに利便性を提供するうえで更なる課題が存在する。具体的には次に示すような課題である。
【0009】
特許文献1の提案は、印刷物を読み取った判定画像と基準画像の画素を比較し、許容設定値と画素の数で印刷状態の質の程度をランク分けするものである。しかしながら、従来技術では許容設定値と画素の数を印刷業者が決定するので、発注者の要望に合わない場合がある。また従来技術は画像のみを対象として印刷状態の質を判定するため、画像は良くても、表裏のズレがひどい、バーコードが読めないといった問題が起きてしまい、印刷物としては発注者に受け入れられないことがある。
【0010】
本発明は上述のような状況を鑑みてなされたものである。すなわち、発注者が送ってきた判定方法の情報に基づいて、印刷物の質の判定結果を測定データと共に返すことで、上述の課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、以下のような構成が提案される。本発明の一側面によれば、 印刷物の品質を検査した検査結果を取得する取得手段と、
評価基準を含む品質要求データを受信する受信手段と、
前記品質要求データに含まれる評価基準と前記検査結果に基づいて、前記印刷物の品質レベルを特定する特定手段と、
前記検査結果と前記品質レベルを含む品質報告データを作成する作成手段と、
前記品質報告データを所定の外部装置へと送信する送信手段と
を有することを特徴とする情報処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発注者は自身が決めた品質の基準に照らし合わせて、印刷状態の質の程度を知ることができる。例えば、印刷物を仕分けするときに、印刷状態の質の程度が良いものを簡単に選り分けることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態における印刷処理システム全体を示すブロック図
【
図2】第1実施形態における画像形成装置のハード構成図
【
図3】第1実施形態における情報処理装置のハード構成図
【
図4】第1実施形態における画像形成装置のソフト構成図
【
図5】第1実施形態における、印刷業者システムの情報処理装置のソフト構成図
【
図6】第1実施形態における、発注者システムの情報処理装置のソフト構成図
【
図7A】第1実施形態における印刷処理システム全体の処理フローを説明するためのシステムフロー
【
図7B】第1実施形態における印刷処理システム全体の処理フローを説明するためのシステムフロー
【
図8A】第1実施形態における印刷処理システム全体のシステム構成詳細を説明する詳細ブロック図である。
【
図8B】第1実施形態における印刷処理システム全体のシステム構成詳細を説明する詳細ブロック図である。
【
図9A】第1実施形態における画像形成装置の検査装置の構成並びに動作機構を説明するための図である。
【
図9B】第1実施形態における画像形成装置の検査装置の構成並びに動作機構を説明するための図である。
【
図10A】第1実施形態における、発注者システムにおける情報処理装置で動作するアプリケーションシステムの操作部を説明するための第一の図である。
【
図10B】第1実施形態における、発注者システムにおける情報処理装置で動作するアプリケーションシステムの操作部を説明するための第一の図である。
【
図10C】第1実施形態における、発注者システムにおける情報処理装置で動作するアプリケーションシステムの操作部を説明するための第一の図である。
【
図11】第1実施形態における、発注者システムにおける情報処理装置で動作するアプリケーションシステムの操作部を説明するための第二の図である。
【
図12A】第1実施形態における、発注者システムと印刷業者システム間でやりとりされるデータの例である。
【
図12B】第1実施形態における、発注者システムと印刷業者システム間でやりとりされるデータの例である。
【
図12C】第1実施形態における、発注者システムと印刷業者システム間でやりとりされるデータの例である。
【
図12D】第1実施形態における、発注者システムと印刷業者システム間でやりとりされるデータの例である。
【
図12E】第1実施形態における、発注者システムと印刷業者システム間でやりとりされるデータの例である。
【
図12F】第1実施形態における、発注者システムと印刷業者システム間でやりとりされるデータの例である。
【
図12G】第1実施形態における、発注者システムと印刷業者システム間でやりとりされるデータの例である。
【
図12H】第1実施形態における、発注者システムと印刷業者システム間でやりとりされるデータの例である。
【
図12I】第1実施形態における、発注者システムと印刷業者システム間でやりとりされるデータの例である。
【
図12J】第1実施形態における、発注者システムと印刷業者システム間でやりとりされるデータの例である。
【
図12K】第1実施形態における、発注者システムと印刷業者システム間でやりとりされるデータの例である。
【
図12L】第1実施形態における、発注者システムと印刷業者システム間でやりとりされるデータの例である。
【
図12M】第1実施形態における、発注者システムと印刷業者システム間でやりとりされるデータの例である。
【
図12N】第1実施形態における、発注者システムと印刷業者システム間でやりとりされるデータの例である。
【
図13】第1実施形態における、印刷品質報告データ作成処理のフローチャート図である。
【
図14A】第1実施形態における、品質要求データや印刷品質報告データのフォーマット例である。
【
図14B】第1実施形態における、品質要求データや印刷品質報告データのフォーマット例である。
【
図14C】第1実施形態における、品質要求データや印刷品質報告データのフォーマット例である。
【
図15A】第5実施形態における、印刷品質報告データの例である。
【
図15B】第5実施形態における、印刷品質報告データの例である。
【
図16】第3実施形態における、印刷品質報告データ作成処理のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0015】
[第1の実施形態]
●システム構成
図1は、本実施形態に係る印刷物生産システムを示すブロック図である。本例では、印刷物生産システムは発注者システム109、印刷業者システム100、そして印刷業者の親会社システム111に大別され、それらは通信ネットワーク例えばインターネット108によって相互に接続されている。発注者システム109には少なくとも1以上の情報処理装置110が含まれる。同様に親会社システム111にも少なくとも1以上の情報処理装置112が含まれる。なお本実施形態においては、親会社システム111が印刷物生産システムに含まれなくともよい。 以下、印刷業者システム100の内部構成について詳細に説明する。
図1に示す通り複数の装置がネットワーク101によって相互に接続されている。本例では、情報処理装置102、画像形成装置103、画像形成装置104、ラミネータ105、無線綴じ機106、測色機107が接続されている。ラミネータ105はニスコータなどの他の後処理装置であってもよい。画像形成装置103は連帳シート(ロールシートとも呼ぶ)用であり、画像形成装置104はカットシート用の画像形成装置である。これら印刷機構の異なる装置を用いて印刷業者は発注者から依頼された成果物を最適な態様で生産することを可能としている。これらの装置は、画像形成装置と後処理装置と検査装置とに大別できる。画像形成装置はシートに画像を形成し、後処理装置は画像が形成されたシートに対して後処理加工を施す。検査装置は画像形成や後処理が要求通りに行われたかを検査する。ここでラミネータは、シートをフィルムにより包装する後処理装置である。透視画像検査装置115はシートなどの印刷媒体を透かして例えばレジマークの位置などを検査する検査装置である。
【0016】
各装置は情報処理装置102上で動作するワークフローソフトウェアの配下のもと制御され、発注者システム109より入稿されたジョブデータを処理し、成果物を生産する。すなわち印刷指示データや印刷データ、品質評価基準などを含むデータの入稿から印刷処理、後処理、検査を含むワークフローシステムを構成する。また、発注者システム109から入稿されるジョブデータは、画像データ、ジョブチケット、そして品質要求データである。ジョブチケットのフォーマットは例えばJDF形式であり、品質要求データのフォーマットは例えばPRX形式である。さらに、印刷業者システム100内の情報処理装置102は、上述した各装置の処理結果の通知を受信するとともに品質報告データに変換し発注者システム109に送信する機能も有する。品質報告データの形式は例えばPQX形式のフォーマットである。
【0017】
なお、発注者が印刷業者に求める成果物の品質の要求をPRXによって伝達し、印刷業者が生産した成果物の品質をPQXによって発注者に報告する一連の処理を電子化することによって次のメリットが得られる。
【0018】
第一に従来行われていた発注者が印刷業者に依頼する成果物の品質に関する要求事項を定量的に提示することで相互の成果物品質に関する誤認識の生ずる可能性を低減する効果を得ることが可能となる。第二に印刷業者が生産した成果物の品質について電子的に可視化することが可能となるため、発注者は即時的に生産を依頼した成果物の品質を掌握することが可能となる。第三に品質に関する要求と報告を電子化した効果として長期に及ぶ成果物の生産においても、時系列的な品質の揺らぎが生じうる場合であっても品質を均一化するための活動を発注者並びに印刷業者が実施することを容易化できる。第四に発注者が複数の印刷業者に生産を依頼する場合であっても前記複数の印刷業者間の品質のばらつきを可視化すると同時に品質を均一化するための活動を発注者並びに印刷業者が実施することを容易化できる。
【0019】
●ハードウェア
図2は、画像形成装置104のハードウェア構成について説明する図である。画像形成装置104は、シート上の画像を読み取る読取機能、シートに画像を印刷する印刷機能を有する。また、画像形成装置104は、画像が印刷された複数のシートを綴じたり、複数のシートを揃えたり、複数のシートの排出先を複数のトレイに分けたりする後処理機能を有する。なお、シートには、普通紙や厚紙などの用紙、フィルムシートなどが含まれる。同図に示す画像形成装置104は、複数の異なる役割を持つ装置が相互に連結され、複雑なシート処理が可能なよう構成されている。
【0020】
画像形成装置104は、展開されたイメージ画像データを給紙部212に格納されたメディアを搬送し、該メディア上にトナーを用いて画像形成するための装置である。
【0021】
画像形成装置104には、スキャナ部201、および操作部204が備え付けられている。操作部204は画像形成装置104の各種設定や操作などをオペレータが行う場合の各種インタフェースを提供する。本実施形態における画像形成装置104は、各種付随装置が装着可能なよう構成されている。本実施例では付随装置の一例としてシート処理装置210を示している。シート処理装置210は、プリンタ部203によって画像形成された後のメディアに対して各種加工を施した成果物を得るための装置である。
【0022】
出力トレイ213は、シート処理装置210によって処理された出力物を排出し、積載するためのトレイ部を形成する。
【0023】
ハードディスク209(以下、HDDとも呼ぶ)は、不揮発性メモリであって、複数の処理対象となるジョブのデータや、各種管理情報などを記憶する。画像形成装置104は、スキャナ部201から受付けたジョブデータを、該HDD209を介してプリンタ部203で印刷する。また画像形成装置104は、外部装置から通信部の一例に該当する外部I/F部202ユニットを介して受付けたジョブデータを、該HDD209を介してプリンタ部203で印刷する。外部I/F部202は、ファクシミリ、ネットワーク接続機器、外部専用装置と画像データなどを送受する。操作部204は、ユーザインタフェース部に相当し、ここでは、表示部を有する。
【0024】
コントローラ部205(制御部、或いは、CPUとも呼ぶ)は、画像形成装置104が具備する各種ユニットの処理や動作等を統括的に制御する。ROM207には、後述するフローチャートの各種処理等を実行する為のプログラムを含む本実施形態にて要する各種の制御プログラムが記憶されている。又、ROM207には、ユーザインタフェース画面(以下、UI画面と呼ぶ)を含む、操作部204の表示部に各種のUI画面を表示させる為の表示制御プログラムも記憶されている。
【0025】
コントローラ部205は、ROM207のプログラムを読出実行することで、本形態にて説明する各種の動作を本画像形成装置104により実行させる。PDFなどの印刷データ(ページ記述言語、画像データ)を形成するコードデータを解釈し、ラスターイメージデータ(ビットマップ画像データ)に展開する動作を実行する為のプログラム等もROM207に記憶されている。印刷データは、たとえば外部I/F202を介して図示しない外部装置から受信される。また外部I/F202を介して図示しない外部装置から受信した印刷ジョブを解釈し処理するためのプログラム等もROMに記憶されている。これらは、主にソフトウェアによって処理される。ROM207に格納される各種プログラムの詳細については後述する。
【0026】
また、HDD209(ハードディスク)は、圧縮展開部206によって圧縮された画像データを記憶する大容量の記憶装置である。当該HDD209に、処理対象となるジョブのプリントデータ等複数のデータを保持可能に構成されている。コントローラ部205は、スキャナ部201や外部I/F部202等の各種入力ユニットを介して入力された処理対象となるジョブのデータを、該HDD209を介して、プリンタ部203でプリント可能に制御する。又、外部I/F202を介して外部装置へ送信できるようにも制御する。このようにHDDに格納した処理対象ジョブのデータの各種出力処理を実行可能にコントローラ部205により制御する。さらに、HDD209内に構築されたファイルシステムを外部の装置に対してファイル共有や送受信等の機能を、コントローラ部205がROM207のプログラムを読出し、実行することによって実現可能な様、構成されている。
【0027】
圧縮展開部206は、JBIGやJPEG等といった各種圧縮方式によってRAM208、HDD209に記憶されている画像データ等を圧縮・伸張動作を行う。以上のような構成のもと、本印刷システムが具備する制御部の一例としてのコントローラ部205が、各シート処理装置210の動作も制御する。
【0028】
メディア管理部211は、メディア種に関する情報を管理するためのモジュールである。
【0029】
検査部214は、プリンタ部203によってシート上に形成された画像情報を検査するために設けられたモジュールである。検査する対象としては、CMYK各版の印字位置ずれの量(レジずれ量)、CMYKの版を合成して画像形成された色と印刷データで規定された色との差(色差)、形成された画像中に含まれるバーコード部の読み取り精度がある。そしてさらに画像上のこすれや傷等といった汎用的な画像欠陥等である。これら画像の欠陥を画像形成後のシートの画像を光学的に読み取り、検査結果データに変換する機能を同モジュールは有する。検査部214は、同図に示す画像形成装置104を構成する各モジュールをコントローラ部205の制御のもと、シート上に形成された画像情報を検査する。同モジュールで検査結果データに変換された検査結果情報は外部I/F202を介して情報処理装置102に送信される。
【0030】
図3は、情報処理装置102、110、112の構成を示すブロック図である。
【0031】
同図において、CPU301は、ROM303のプログラム用ROMに記憶された、或いはHDD311からRAM302にロードされたOSや一般アプリケーションのプログラムを実行する。ROM303はまたフォントROMやデータROMを有している。RAM302は、CPU301の主メモリ、ワークエリア等として機能する。キーボードコントローラ(KBC)305は、キーボードやポインティングデバイス(不図示)からの入力を制御する。表示コントローラCRTC306は、表示部CRT310への表示を制御する。なおCRTとは表示装置の一例であって、液晶等、他の表示装置であってもよいことはもちろんである。ディスクコントローラ(DKC)307は、ブートプログラム、種々のアプリケーション、フォントデータ等を記憶するHDD311等とのアクセスを制御する。ネットワークコントローラ(NIC)312は、ネットワークに接続されて、そのネットワークに接続された他の機器との通信制御処理を実行する。バス304は、CPU301とRAM302、ROM303及び各種コントローラ等を接続して、データ信号や制御信号を搬送している。
【0032】
なお、携帯端末の場合にはキーボードコントローラ(KBC)305の代わりにタッチパネルコントローラ等を構成に含む場合がある。また、HDD311の代わりとなる大容量記憶装置を備える場合もある。さらに、ネットワークコントローラ(NIC)312は、備える装置が有線LAN、無線LAN其々の場合、あるいは双方を備える場合とで、内部構成が異なる。ただし、これらの内部構成による差異は、ネットワークコントローラ(NIC)312内部に隠蔽され、同図に示す他のモジュールには等価なものとしてシステムを制御可能な様、構成される。
【0033】
●画像形成装置のソフトウェア
図4は、画像形成装置104のプログラムを説明する図である。これらプログラムはROM207に格納され、画像形成装置104のコントローラ部205により読み出されて実行される。ブートローダ401は、画像形成装置104の電源投入直後に実行されるプログラムである。このプログラムには、システムの起動に必要となる各種起動シーケンスを実行するためのプログラムが含まれる。オペレーティングシステム402は、画像形成装置104の機能を実現する各種プログラムの実行環境を提供することを目的としたプログラムである。これは、主に画像形成装置104のメモリ、即ちROM207やRAM208,HDD209等の資源管理、及び
図2に示すその他各部の基本的な入出力制御等の機能を提供する。ネットワーク制御プログラム403は、ネットワークを介して接続される機器に対してデータを送受信する際に実行されるプログラムである。このプログラムは、印刷するファイルの受信処理や、外部装置からのデータ送信、コマンドの送受信、検査部214によって検査された結果生成されるデジタルデータの送信等の各種処理実行時に利用される。ネットワーク制御プログラムには外部I/F202を制御するためのドライバプログラムも含まれる。
【0034】
第一の受信プログラム404は、情報処理装置102からの各種指示や情報を受け付けるためのプログラムである。当該プログラムが受信対象とする情報や指示のうちに、検査部214において検査される対象となる画像情報の指定が含まれる。
【0035】
第一の送信プログラム405は、情報処理装置102へ情報を送信するためのプログラムである。当該プログラムが送信対象とする情報のうちに、検査部214において検査された結果生成される検査結果データが含まれる。
【0036】
JDF機能プログラム406は、JDFジョブデータが外部I/F202経由で画像形成装置104に受信された場合に、外部I/F202の指示でコントローラ部205によって実行されるJDFプリント機能を実行するプログラムである。このJDFプリント機能では、このプログラムに記述された処理順序、処理条件に基づいてコントローラ部205が適切な順序で
図2記載の各デバイスの動作を順次指示する。その結果として最終的にJDFプリント処理が実行されるように制御される。各デバイスには、シート処理装置210、プリンタ部203、HDD209、圧縮伸張部206、RAM208等が含まれる。また、外部I/F202経由で受信されたJDFジョブデータの解析処理及び、解析処理の結果、JDFに正しくない設定が含まれるか否かの判別処理、及び正しくない設定を解消するための設定変更等を行うプログラム処理も含まれる。
【0037】
PDF機能プログラム407は、PDFデータ(印刷対象画像データ)が外部I/F202経由で画像形成装置104によって受信された場合に、コントローラ部205によって実行されるPDFデータの展開処理、並びに印刷機能を実行する。コントローラ部205によって行われるPDF機能では、このプログラムに記述された処理順序、処理条件に基づいてコントローラ部205によって適切な順序で
図2記載の各デバイスの動作を順次指示する。その結果として最終的にPDLプリント処理が実行されるように制御される。これら各デバイスには、シート処理装置210、プリンタ部203、HDD209、圧縮伸張部206、RAM208等が含まれる。また、印刷処理実行時の各種指定としてJDF機能プログラム406と共に動作するよう本実施形態におけるPDF機能プログラムは構成される
メディア管理プログラム408は、画像形成装置104が利用可能なシートに関連する管理機能を実行するためのプログラムである。このプログラムによって管理されるシート関連情報は、HDD209に格納される。
【0038】
シートカウントプログラム409は、画像形成装置104が備える給紙部212に格納されるシートをプリンタ部203によって画像形成した際の、印刷に使用したシート枚数をシートのサイズ情報と紐づけて積算し管理格納するためのプログラムである。
【0039】
検査プログラム410は、検査部214を制御し、出力結果の画像を検査し検査結果データを生成するためのプログラムである。同プログラムで生成された検査結果データが第一の送信プログラム406により情報処理装置102に送信される。
【0040】
●印刷業者システム100における情報処理装置のソフトウェア
図5は、印刷業者システム100における情報処理装置102が有するプログラムの構成を例示した図である。ブートローダ501は、情報処理装置102の電源投入直後に実行されるプログラムである。これらプログラムには、システムの起動に必要となる各種起動シーケンスを実行するためのプログラムが含まれる。オペレーティングシステム502は、情報処理装置102の機能を実現する各種プログラムの実行環境を提供することを目的としたプログラムである。これは、情報処理装置のメモリ、即ちROM303やRAM302,HDD311等の資源管理等の機能を提供する。
【0041】
ネットワーク制御プログラム503は、ネットワークを介して接続される機器に対してデータを送受信する際に実行されるプログラムである。すなわち、印刷ジョブデータを画像形成装置(103、104)に送信し、印刷処理を指示する際に用いられる。また印刷後の成果物に加飾処理を施すためラミネータ105に指示する際にも用いられる。さらに、成果物を後加工するために無線綴じ機106に対し指示する際にも用いられる。また画像形成装置(103,104)に対し第一の受信プログラムに対し検査部214に対する検査指示をする際にも用いられる。また、検査部214から第一の送信プログラム405を経由し、品質報告データを受信する際にも用いられる。
【0042】
ウェブサーバ504は、ネットワーク経由で接続された外部機器に対しウェブサービスを利用させるためのサーバプログラムである。ウェブサーバ504が提供するサービスは様々なものが考えられる。しかしながら本実施形態においては、ウェブサーバ504は、発注者システム109から印刷業者システム100に対し注文対象であるデータを入稿するために用いられる。また、入稿時に発注者が印刷業者に対して設定した品質要求を達成しているか否かを確認するための品質レポートであるPQX情報を取得するためにも用いられる。
【0043】
ワークフロー制御プログラム505は印刷業者システム100内部のネットワーク101を介して接続された機器間の処理や制御、ジョブ実行等を集中的に管理するためのプログラムであり、印刷業者システム100の中核をなす。ワークフロー制御プログラム505は、複数工程、すなわち複数の装置を用いて成果物を製造する際に、その実行順序やジョブの実行制御等を行う。また、使用する装置の選択、切り替え、リカバリ生産等の制御もワークフロー制御プログラム505が実行する。また、印刷業者システム100内部で働くオペレータに対し各種の指示を出す処理もワークフロー制御プログラム505が実行する。さらに本例では、ワークフロー制御プログラム505は、画像形成装置104の検査部214から印刷画像の品質に関する測定データを受信しPQX形式のフォーマットに変換するPQX作成機能も提供する。
【0044】
入稿システムプログラム506は主に発注者システム109から生産の依頼を受けたデータを印刷業者システム100内で保持および管理するための役割を担うソフトウェアである。入稿システムプログラム506はまた、ウェブサーバ504と協調し受発注関連業務に必要な各種機能を発注者システム109、印刷業者システム100間で電子的に実行するために用いられる。受発注関連業務に必要な各種機能には、例えばデータの送信、請求書の発行等の一連の処理が含まれる。発注者システム109と印刷業者システム100との間の通信仕様は任意であるが、標準仕様としてPrintTalkをサポートしたシステムが広く知られている。
【0045】
第二の受信プログラム507は発注者システム109から入稿されたデータのうち、品質要求データであるPRXを受信することを目的として設けられたプログラムである。そのため品質要求受信プログラムとも呼ぶ。同プログラムがPRXすなわち品質要求データを受信したらその内容を解析する。そして解析結果に応じて、発注者が要求した品質の成果物を作成するための指示・条件等を、ワークフロー制御プログラム506を経由し印刷業者システム100内の装置に対し適宜必要な設定を行う。あるいは、印刷業者システム100を介してオペレータに必要な情報の提示を行う。
【0046】
なお、本実施形態においては、発注者システム109から印刷業者システム100が品質要求データを受信する際には、ウェブサーバ504を介する。そして、印刷業者システム100では、受信した品質要求データをさらに第二の受信プログラム507が受信する。しかしこれは一例であって、本形態にとどまる必要はない。すなわち、別の形態として第二の受信プログラム507自体が直接発注者システム109から品質要求データを受信してもかまわない。もしくは、第二の受信プログラム507がウェブコンテンツとしてウェブサーバ504上で動作する形態をとってもかまわない。
【0047】
第二の送信プログラム508は発注者システム109に対し、PQXを送信もしくは取得するためのプログラムである。PQXは、品質要求データであるPRXによって指定した品質条件を、印刷業者が生産時に実施しているか否かを判別するために品質報告データである。画像形成装置103,104もしくはその他印刷業者内の装置から検査結果データを受信して蓄積する。そして適宜のタイミングにおいて検査結果データからPQX形式のデータすなわち品質レポートを作成(あるいは変換)する。これを通信手段を介して発注者システム109に送信して、発注者システム109がPQXを受信可能なよう構成される。
【0048】
本実施形態においては、発注者システム109が印刷業者システム100から品質報告データを受信する際にはウェブサーバ504を介してリクエストを受信する。そして、該受信したリクエストのレスポンスとして品質報告データを第二の送信プログラムを経由して送信する。しかし、別の形態として第二の送信プログラム自体が直接発注者システム109に品質報告データを送信してもよい。もしくは、第二の送信プログラム507がウェブコンテンツとしてウェブサーバ504上で動作する形態をとってもよい。
【0049】
●発注者システム109における情報処理装置のソフトウェア
図6は、発注者システム109における情報処理装置110が有するプログラムの構成を例示した図である。ブートローダ601は、情報処理装置110の電源投入直後に実行されるプログラムである。これらプログラムには、システムの起動に必要となる各種起動シーケンスを実行するためのプログラムが含まれる。オペレーティングシステム602は、情報処理装置110の機能を実現する各種プログラムの実行環境を提供することを目的としたプログラムである。これは、情報処理装置のメモリ、即ちROM303やRAM302,HDD311等の資源管理等の機能を提供する。ネットワーク制御プログラム603は、ネットワークを介して接続される装置に対してデータを送受信する際に実行されるプログラムである。すなわちインターネット108を介して印刷業者システム100との間のデータの送受信の実行等を実行する際に用いられる。後述するウェブブラウザを使用した描画表示処理、データ送受信処理時にも用いられる。
【0050】
ウェブブラウザ604は、ネットワーク経由で接続された外部システムが提供するウェブサービスを利用する為のクライアントプログラムである。ウェブブラウザ604が利用するサービスは様々なものが考えられる。本実施形態においては、ウェブブラウザ604は、印刷業者システム100に対し発注対象であるデータ入稿依頼するために用いる。また、入稿時に発注者が印刷業者に対して設定した品質要求を達成しているか否かを確認するための品質レポート(PQX情報)をウェブブラウザ604により取得する。
【0051】
PDF作成プログラム605は、発注者システム109から印刷業者システム100に生産を依頼する対象である、画像データをPDF形式にて作成するプログラムである。なお、本実施形態においては画像データのフォーマットとしてPDF形式を用いた例を示しているが他のフォーマットの形態を用いてもよい。なお、PDFデータの作成にはすでに存在するPDF形式の画像データに対し、画像の追加等の処理も含まれる。
【0052】
PRX作成プログラム606は、発注者システム109から印刷業者システム100に生産を依頼する際に、生成される成果物の品質要求事項をPRX形式のフォーマットによって伝達するための情報を作成するためのプログラムである。同プログラムによって指定する品質要求の具体的な内容、その設定方法、作成されたデータフォーマットについては後述する。
【0053】
JDF(あるいはジョブ指示)作成プログラム607は、発注者システム109から印刷業者システム100に生産を依頼する際に、ジョブ指示を作成するためのプログラムである。ジョブ指示は、生産される成果物の形態や生産時のジョブ実行条件、ジョブ設定等をJDFフォーマットによって伝達するための情報を含む。同プログラムによって指定する設定情報等の具体的な内容、その設定方法、作成されたデータフォーマットについては後述する。
【0054】
第三の送信プログラム608は、発注者システム109からPRX作成プログラム606によって作成されたPRX形式のフォーマットによる品質要求データを印刷業者システム100に送信するために用いられるプログラムである。
【0055】
第三の受信プログラム608は、発注者システム109が、印刷業者システム100における第二の送信プログラム508によって作成された品質報告データを印刷業者システム100から受信するために用いられるプログラムである。品質報告データは、たとえばPQX形式のフォーマットを持つ。
【0056】
●印刷物の生産フロー
図7A、
図7Bは、発注者システム109ならびに印刷業者システム100、およびこれら操作者である発注者すなわちユーザが、システムが提供する機能を利用する際のシステムフロー図である。ユーザ701とは発注者システム109における情報処理装置110の利用者を示している。
図7Bは
図7Aの処理の続きを示しているため、以下の説明では
図7Aと
図7Bとをまとめて
図7と称することもある。
【0057】
●印刷物の生産フローを実行するシステム及びサブシステム
以下、ユーザ701、情報処理装置110、102、画像形成装置104の各々のシステム内で実行される処理、および、各システム内のモジュール間でのメッセージ(またはデータ)交換のフローを示す。ただし、各システム内において複数のサブシステムが相互に作用しながら処理する必要がある場合には、それらのサブシステムのレベルでフローを説明する。
【0058】
ユーザ701のサブシステムはユーザ操作702である。これはユーザが同図において示す一連のフローを実現するために、プログラムによって提供されるユーザインタフェースに対する入力およびプログラムからの出力に関連するサブシステムである。ユーザ操作サブシステム702には、操作部203であるウェブブラウザ604やPDF作成プログラム605、PRX作成プログラム606、JDF作成プログラム607などにより提供されるユーザインタフェースが含まれる。
【0059】
発注者システム109の情報処理装置110は2つのサブシステムに分解される。すなわち、データ作成アプリ部703とウェブブラウザ部704である。
【0060】
データ作成アプリ部703は、PDF作成プログラム605、PRX作成プログラム606、JDF作成プログラム607をCPU301が実行することで実現される。ウェブブラウザ部704はウェブブラウザ604をCPU301が実行することで実現される。
【0061】
印刷業者システム110の情報処理装置102は3つのサブシステムに分解される。すなわち、ウェブサーバ部705と入稿システム部706、ワークフロー制御部707である。
【0062】
ウェブサーバ部705は、ウェブサーバ504をCPU301が実行することで実現される。入稿システム部706は、入稿システムプログラム506をCPU301が実行することで実現される。ワークフロー制御部707はワークフロー制御プログラム505をCPU301が実行することで実現される。
【0063】
なお以下の説明では、加工工程または処理工程とは、印刷処理やその後処理といった加工に係る工程を指し、単に工程と呼ぶことがある。また検査工程とは、印刷物の中間成果物や最終成果物を対象として品質の検査を行う工程を指し、単に検査と呼ぶことがある。ワークフローとは、加工工程および検査工程を、前段の工程の成果物を作業または検査の対象とするよう配置した逐次的にあるいは並列に順序付けた処理の流れを指す。ワークフローのことを作業工程と呼ぶ場会うもある。ワークフローはワークフロー情報により定義される。ワークフロー情報は例えば、加工工程及び検査工程を実施する装置と、その加工工程および検査工程の順序を指定した情報であってよい。
【0064】
●印刷物の生産フローの詳細
<各種データの作成>
ユーザ701はステップS709において、印刷業者100に対して発注する対象となるデータの作成を指示する。ここから印刷物の生産の処理シーケンスが開始される。PDF作成プログラム605が同ステップの指示による操作を受け、所望のPDF画像データを作成するための各種処理を実行する(S710)。なお図中ではS710は矢印を指しているが、これはS710の処理に引き続いてS711へと処理が移行することを示している。これは他の工程についても同様である。
【0065】
ステップS710において所望のPDF画像データの作成が完了した後に、ユーザはさらにステップS711において印刷業者100に対して発注する成果物に対する品質要求データの作成を指示する。PRX作成プログラム606が同ステップの指示による操作を受け、所望のPRXデータ(品質要求データ)を作成するための各種処理を実行する(S712)。要求される品質には、たとえば色味の精度(色味)や位置の精度(レジずれ)、画像のゆがみ、バーコードの可読性やテキストの正確性などを含む。
【0066】
ステップS712において所望のPRXデータ作成作業が完了した後に、ユーザはさらにステップS713において印刷業者100に対して発注する成果物に対するジョブチケットの作成を指示する。JDF作成プログラム607が同ステップの指示による操作を受け、所望のJDFデータ(ジョブ指示データ)を作成するための各種処理を実行する(S714)。本例ではたとえば、ジョブ指示データには、印刷工程のほか、後処理で行われる工程の指示を含んでよい。たとえば綴じや断裁、製本、コーティング、ラミネートなどの加工工程の指示がジョブ指示に含まれていてよい。各加工工程の指示には、各工程に特有のパラメータを含んでいてよい。例えば断裁であれば、断裁する辺の指定やサイズ、製本であればシート枚数などを含んでよい。
【0067】
ステップS714において所望のJDFデータの作成が完了した段階で、印刷業者に入稿する全てのデータの作成が完了する。次ステップ以降は印刷業者に対するデータの入稿処理に移行する。
【0068】
<入稿処理>
ステップS715において、ユーザはウェブブラウザ部704を操作し、印刷業者に対してデータを入稿するための操作画面の表示に必要な操作を行う。すなわちウェブブラウザ部704がステップS715において入力されたURL情報をもとに印刷業者側の情報処理装置102にて稼働するウェブサーバ部705に対し描画処理に必要なhttpリクエストをステップS716において出力する。ウェブサーバ部705はリクエストを受けて該当するページ情報をレスポンスとしてステップS717にて返信する。図示は省略したが、レスポンスはブラウザアプリ部704により受信されて表示される。
【0069】
ユーザはステップS718にて表示された入稿用画面を操作しウェブブラウザ部704上で発注処理の実行を指示する。
【0070】
ステップS718の指示を受けてウェブブラウザ部704はウェブサーバ部705に対してPDF、PRX、JDFの各データ、すなわち入稿データをステップS719において送信する。ウェブサーバ部705は、入稿データを受信したら入稿システム部706に入稿データの各々をステップS720において格納する処理を実行する。
【0071】
<生産処理>
ステップS721以降は入稿されたデータを印刷業者システム100において実行される生産処理のステップとなる。すなわちワークフロー制御部707に入稿データに基づきジョブデータを登録し、印刷業者システム100にて印刷ジョブを生成する。また、本実施形態におけるシステムにおいては、製品の品質を評価し、指定されたPRXを満足しているかを示す品質報告であるPQXを作成および送信する必要がある。そのためにステップS722でジョブの登録処理が終了した後にPQX作成指示を入稿システム部706がワークフロー制御部707に対して指示する(S723)。
【0072】
ステップが終了した段階で生産開始の準備が全て整ったことになる(ステップS724)。従ってステップS724においてワークフロー制御部707が、品質要求の設定が完了した旨を入稿システム706に通知する。それに応じて入稿システム706はワークフロー制御部707に対して生産開始、すなわちジョブの実行処理を指示する(S725)。ワークフロー制御部707は画像形成装置104の構成要素を為すプリント制御部708に対して印刷ジョブを生成する(ステップS726)。印刷ジョブには、印刷データ、印刷に際してプリント制御部708が使用するパラメータ、測色位置などの品質測定に使用するパラメータが含まれる。
【0073】
ステップS726の生産指示を受け、プリント制御部708は印刷処理を開始する。そして生産された成果物を対象として、ステップS727において、画像形成装置104が有する検査部214によって検査を実行する。そして、その検査結果をステップS728において検査部214からワークフロー制御部707に応答する。ワークフロー制御部707は応答された検査結果をPQX形式に変換しウェブサーバ部705に格納する(ステップS729)。
【0074】
以上が印刷業者システム100によって発注者システム109から入稿されたデータの生産並びに要求された品質報告情報であるPQXの作成処理に関する一連の動作フローである。
【0075】
<品質レポート処理>
ステップS730において、ユーザは入稿したデータの生産時における品質状況を確認するために、PQXデータの取得処理を実行する。すなわち、ウェブブラウザ部704にアクセスし、PQXの情報を取得するために必要なURL等の情報を入力する。ステップS731においてhttpリクエストがウェブブラウザ部704からウェブサーバ部705に送信され、ステップS732にて、対応するレスポンス情報をステップS732において応答する。ステップS732で返却されるウェブ画面をユーザはステップS733において操作し、品質報告情報すなわちPQXを取得するためにウェブブラウザ部704に指示する。指示に応じてhttpリクエストがウェブサーバ部705に対し送信され(ステップS734)、ステップのレスポンスとしてPQX情報がユーザに送信される(ステップS735)。
【0076】
●機能モジュール構成図
図8A、
図8Bは、システムを構成する発注者システム109および印刷業者システム100ならびにその操作者であるユーザから構成される、機能モジュールの担当処理並びに機能間の関連を図示したシステム構成図である。以下、各部の詳細を説明する。なお
図8Aと
図8Bとは連続した図であり、これらをまとめて
図8と称することがある。
【0077】
図8Aにおいて、ユーザインタフェース(UI)部816は、画像情報の表示ならびにデータの入出力指示、操作指示を受け付ける手段を提供するために設けられた機能部である。UI部816からはデータ作成アプリ部703およびブラウザアプリ部704に対して指示を行う。
【0078】
データ作成アプリ部703はJDF、PDF、PRXの各データを作成する機能をユーザに提供するためのものである。
【0079】
ブラウザアプリ部704は、UI部816上に表示される、ウィンドウ画面にウェブコンテンツを表示することによって画面情報を提示する処理を司る機能部である。ブラウザアプリ部704は、後述するウェブサーバ部705と情報の送受信処理をすることで、各種画面情報の提示並びに印刷対象データ転送含む、各種データ処理を実行する。そのようにすることで、ブラウザアプリ部704は、発注者システム109と印刷業者システム100との間の入稿並びに品質要求・報告の一連の機能をユーザに提供することを可能としている。
【0080】
ウェブサーバ部705は印刷業者システム100における情報処理装置102が有する、ウェブサービスを外部装置に対して提供する機能部である。ウェブサーバ部705は、外部装置からの各種要求、すなわちリクエストを受信かつその内容に応じた処理を実行した結果をページ情報という形で外部に返却する一連の処理を実行する。ページ生成部801がページ情報をリクエストの内容に応じて生成する役割を担う。また、入稿システム部706の制御部807に対し入稿処理の実行指示を出すことも可能としている。
【0081】
PDF転送部802、印刷設定転送部803、PRX転送部804はブラウザアプリ部704から送信されてきた入稿データであるPDF,JDF、PRXをそれぞれ入稿システム部706が備える格納手段(808、809、810)に転送する。また、PRX受信部805は後述する品質レポート作成部508によって作成されたPRXデータ(811)を受信する処理を実行する。
【0082】
図8Bにおいて、入稿システム部706は、印刷業者システム100における情報処理装置102が有する、入稿処理に関するサービスを外部装置に対して提供する機能部である。制御部807は入稿された各データ(PDF808、JDF809、PRX810)をワークフロー制御部707が有するジョブ登録依頼部806に依頼し、画像形成装置104に対して印刷ジョブの実行を指示する。入稿システム部706は、PDF転送部802、印刷設定転送部803、PRX転送部804から受信したPDF(印刷データ)808、JDF(ジョブ指示)809、PRX(品質要求)810それぞれを格納する。さらに品質レポート作成部817で作成されたPQX(品質レポート)811を格納する。
【0083】
ワークフロー制御部707は、印刷業者システム100における情報処理装置102が有する、ワークフロー機能を提供するための機能部である。ワークフロー制御部707の配下には
図1において示した各種装置がネットワーク101を介して接続され、ワークフロー制御部707の配下のもと、各装置の動作やジョブの実行指示等が行われ、印刷業者システム100が総体として稼働する。ワークフロー制御部707は、印刷業者システム100内の各装置で動作するジョブを管理するジョブ登録依頼部806と品質レポート作成部508とを含む。品質レポート作成部508は、印刷業者システム内の各装置で動作したジョブの実行結果のうち、生産した成果物の品質に関する情報から、品質レポート情報であるPQXデータを生成する。
【0084】
画像形成装置104は、プリント制御部708、シート管理部409、印刷部815、検査部214に大別される。
【0085】
プリント制御部708はさらにジョブ実行部812およびPDFインタプリンタ部407を備える。ジョブ実行部812は、画像生成部813と印刷設定部814とを含む。印刷設定部814はジョブ登録依頼部806から送信されるジョブデータ、すなわちJDF809、PDF808、PRX810を受信し、画像生成部813に対し画像生成処理を指示する。印刷設定部814は、あわせて、PDFインタプリタ407に対し、受信したPDF809の解析処理を指示する。また、印刷設定部814は検査部214に対し、生成される成果物に対して要求されたPRX810の品質要求項目に対する検査を実施するよう、指示する。PDFインタプリタ407は解析後生成される中間データ(不図示)を画像生成部813に送信し以後の画像形成処理を実行する。すなわち、シート管理部409にて印刷処理に用いるシートのサイズ、種別のカウントを指示し、印刷部815に対し解析後に生成される中間データ(不図示)の画像をシート上に画像形成する処理を実施する。さらに検査部214において印刷部815が生成したシート状の画像の検査処理を実施し、その結果を品質レポート作成部508に対して登録する。
【0086】
●画像形成装置の構成
図9Aおよび
図9Bは、画像形成装置104の構成のうち、検査装置の構成、検査装置によってなされる検査の方法、仕組みについて説明をするための図である。
【0087】
図9A(A)は、画像形成装置104を為す各モジュールの配置並びにその接続状態、およびシートの搬送経路の順序関係を説明するための構成図である。画像形成部902に隣接する形態で給紙部901が装着される。また、給紙部901と反対の側に隣接する形で中間処理部903が接続される。中間処理部903は、例えば挿入紙を生産中の成果物の特定箇所に挿入するために用いるインサータや、画像形成部にて定着処理が行われた際に発生したシート上の熱を冷却するための冷却装置等が相当する。中間処理部903の後段に検査部904が装着される。検査部904の構成の詳細については後述する。
【0088】
検査部904の後端にはさらに後加工部905が装着される。後加工部905において、ステープルなどの綴じ処理やパンチ等の穿孔処理等、印刷後のシートに対する加工処理が行われる。
【0089】
なお、同図に示す画像形成装置104を為す各構成装置の種類、数ならびに接続順序は一例を示したものであり、同図に示した例に限定されるわけではない。
図9A(B)は検査部904の内部構成を示すための構成図である。検査部904の前段に相当する装置から印刷済のシートが搬送路906に対して搬送される。搬送されたシート上に形成された画像情報を検査するための第一の検査部907および第二の検査部908がそれぞれシートの上方および下方に配置される。これはシートの表面、および裏面の形成画像を同時に検査するための構成である。本実施形態における第一の検査部907および第二の検査部908は、搬送路906に搬送されるシートに対し、主走査方向に対して並行に配置されるコンタクトイメージセンサによって構成される。すなわちコンタクトイメージセンサによる第一の検査部907、第二の検査部908が搬送路906に搬送されるシート上の画像をシートの搬送速度に合わせて主走査方向に連続的に読み取る。もれによりシート状に形成された平面の画像情報を高精度に取得することが可能である。すなわち、シート上に形成された画像情報の、画像の位置ずれやシミ等の画像の欠陥の検出、バーコードの読み取り制度等の画像の検査を第一の検査部907、第二の検査部908は可能としている。
【0090】
また、搬送路906には、さらに第一の検査部907、第二の検査部908の後段に第三の検査部912、第四の検査部913が配置される。第三の検査部912および第四の検査部913は分光測色装置である。第一の検査部907および第二の検査部908と同様、シートの表面、裏面を同時に検査可能とするよう、搬送路906の上下にそれぞれ配置されている。第三の検査部912および第四の検査部913は搬送路906に搬送されたシート状の特定箇所の画像の色情報を正確に検査することを目的としている。
【0091】
第一から第四の検査部907、908、912、913を通過したシートはフラッパ909の配置状態によって次に示す二通りの方向にさらに搬送される。すなわち搬送路910を経由し、検査部904のさらに後端に相当する後加工部905にシートが搬送される。もしくは、搬送されたシートが成果物の一部ではなく、色味や画像状態を確認することを目的とした付随的なテスト印刷のシートである場合には成果物に混在させることは得策ではない。故にフラッパ909の配置状態をシートが搬送路911に搬送し、排出トレイ914に導くよう制御することも検査部904は可能としている。
【0092】
図9B(C)は、検査部906が備える第一から第四の検査(907、908、912、913)によって行われる検査に用いられるシート上の画像情報の一例を説明するためのものである。シート914上に構成される各画像要素の用途並びに目的について以下、説明する。
【0093】
レジマーク917は、シート上の指定された位置に画像が正しく形成されているかを検査するためのマーカである。第一の検査部907および第二の検査部908によってこの画像情報は読み取られる。レジマーク917はPRXによって画像形成装置104が入稿されたPDFデータの画像情報915として含まれていない場合であっても、画像形成装置104がPDFデータに重畳して画像形成を行うことが可能である。もしくは第二のレジマーク918のように、入稿されたPDFデータにあらかじめ画像情報として含まれる場合もあり、その場合にはPDFデータに含まれるレジマーク918を第一の検査手段907、第二の検査手段908が読み取ることも可能である。
【0094】
カラーパッチ916は、シート上の指定された位置の画像に対して、その箇所の色情報を第三の検査部912、第三の検査部913によって高精度に読み取るためのパッチ画像部である。レジマーク907同様、PRXによって画像形成装置104が入稿されたPDFデータの画像情報915としてカラーパッチ916が含まれていない場合であっても、画像形成装置104がPDFデータに重畳して画像形成を行うことが可能である。もしくは第二のカラーパッチ919のように、入稿されたPDFデータにあらかじめ画像情報として含まれる場合もあり、その場合にはPDFデータに含まれるカラーパッチ919を第三の検査部912、第四の検査部913が読み取ることも可能である。
【0095】
バーコード920は成果物の画像の一部を為すバーコード画像が印刷された領域を示す。図示の通り、シートの原点座標921から指定された相対的な座標(X2(925)、Y2(926))、および画像のサイズ927によってバーコードの位置が指定される。そのため、第一の検査部907もしくは第二の検査部908がバーコード920の画像情報をコンタクトイメージセンサによって読み取り検査することが可能である。
【0096】
画像欠陥922は、入稿されたPDFデータの画像情報915には含まれておらず、画像形成装置104もしくはシートの欠陥によって生成される欠陥画像部を示す。画像欠陥922も、第一の検査部907、第二の検査部908によって検出可能であり、検出された欠陥の位置を原点921からの相対的な座標(X1(923)、Y1(924))として取得可能である。
【0097】
●入稿データ作成用ユーザインタフェース
図10A,
図10Bは発注者システム109における情報処理装置110で、発注者が使用する入稿データを作成するための画面の構成を説明するための図である。
【0098】
図10Aは、発注者システム109における情報処理装置110において入稿対象の画像データであるPDFを作成もしくは編集するためのアプリケーション画面の一例を示す。なお、本実施形態のアプリケーションは同一のアプリケーションが複数の目的のアプリケーションの機能を並列に提供し機能タブによって選択的に使用する形態のアプリケーションの一例を示している。従って、汎用機能設定部1001、PDF編集部1002、PRX設定部1003、JDF設定部1004、ヘルプ機能提供部1005を切り替えて利用する。これら各手段は対応するタブを選択することによって操作可能なよう構成される。
【0099】
図10AはPDF編集設定部1002が選択された状態の画面の一例を示したものである。ページ選択部1006は、印刷対象成果物が複数ページによって構成される場合であって、ページ毎に異なる品質要求を設定する際に、設定対象とするページを選択する領域である。同図においては1ページ目(1007)が選択された状態を示している。すなわち、印刷対象画像データの1ページ目に対する品質要求を設定する場合の一例を示している。
【0100】
サムネイル表示領域1008はページ選択部1006で選択したページの画像情報を同図に示すアプリケーションのユーザが視覚的に確認しながら各種設定を実施するための参照用画像表示領域である。
図9Cにおいて示したレジマーク917、カラーパッチ916、バーコード920等、後述するPRXで要求する品質条件を印刷業者システム100において検査し、その結果としてPQXを生成するために必要となる付加的画像情報に相当する。
【0101】
レジマーク917はレジマーク設定部1013によって設定する。レジマーク設定部1013でレジマークを画像に負荷する旨指示した場合にレジマーク917がPDFファイルの設定対象ページに対して付加される。カラーパッチ設定部1012によってカラーパッチ916をPDFファイルの設定対象ページに対して付加することが可能である。
【0102】
レジマーク詳細設定部1015、カラーパッチ詳細設定部1014は、カラーパッチ916やレジマーク917を画像に付加する際の位置等の詳細情報を設定する設定部である。例えば、これらレジマーク917、カラーパッチ916はPDFの画像情報915の領域に重畳されると本来の画像が得られることが無いため不都合が生じる。従ってカラーパッチ916やレジマーク917の位置がPDFの画像情報915の領域と重ならないよう、その画像位置の座標をこれら手段によって調整可能なよう、本実施形態におけるアプリケーションは可能としている。
【0103】
バーコード情報指定部1016はPDF画像情報915に含まれる、バーコード画像相当部の位置を指定する指定部である。すなわちバーコードが配置される原点921からの位置を示すX座標入力部1017、Y座標入力部1018、並びにバーコード画像部のサイズ情報入力部1019から構成される。
【0104】
出力インテント設定部1009はPDF編集機能によって実現する、出力インテント情報の設定部である。生産時に適用する画像形成手段が使用する画像形成プロセス情報設定部1010、ならびに生産する画像に対し適用するカラーインテント設定部1011から構成される。これら出力インテント情報はページ選択部1006と組み合わせることにより、ページ毎に個別の設定を可能なよう構成される。
【0105】
図10Bは、発注者システム109における情報処理装置110において入稿対象の品質要求データであるPRXを作成もしくは編集するためのアプリケーション画面の一例を示したものである。PRX設定部1003を選択することによって同図に示す画面の表示制御が行われる。
図10Aにおいて示したPDF作成部1002と同様、印刷対象であるページの各々についてPRXを設定可能とするために、ページ選択部1006が設けられている。同図に示す例においては1ページ目(1007)が選択された状態の画面の一例を示したものである。
【0106】
マスタ情報設定部1020はPRXを作成する際に必要となる各種マスタ情報を入力する設定部である。マスタ情報とは、PRXの仕様が要求する日付、会社情報、PRXが規定する要求仕様に対し付与される名称等の各種情報を含む。これら情報はマスタ情報編集部1021を押下することによって編集可能である。
【0107】
総合品質目標設定部1022は、PRXによって指定する少なくとも1以上の異なる種類の品質要求事項を統合し、総合的な品質レベル(総合品質レベル)を定義するための設定部である。総合品質レベルとは次に示すようなラベル1023、ランク1024、バリュー1025の組み合わせで定義される。ラベル1023とは、品質レベルに対し付与される可読的情報である。本例ではExcellent、Good、Acceptable、Poorなどがある。ランク(あるいはランク付け)1025とは、ラベル1023に対応する定量的な数値情報である。評価値あるいは総合評価値と呼んでもよい。バリュー1025とは、ランク1024を決定するためのパラメータ並びに数式を規定する。
【0108】
具体的に、最上位品質1031を例に用い以下、詳細を説明する。最上位品質1031のラベルは"Excellent"と規定される。これらラベル1023に適用する文字列は発注者システム109における、情報処理装置110上で稼働する同図に示すアプリケーションを使用するユーザ、すなわち発注者が任意に設定可能である。換言すれば、定義する品質レベルの意味を操作者が容易に判別可能とするために設けられた情報であり、制御等に用いられる情報とは異なる性質を有する。
【0109】
一方で、最上位品質1031のランク1024の値は10と規定されている。これら発注者が印刷業者に依頼した成果物の品質を定量敵に判別並びに管理するために発注者が規定する数値であり、制御等に用いられることを目的とした情報である。ただし、ランク1024の数値自体は発注者が自らの成果物の品質の定量的数値として任意に規定することが可能である。
【0110】
最上位品質1031のランク1024を規定するためのバリュー1025は"GT 8"である例を同図は示している。すなわち、後述する数式設定部1035によって計算される定量的品質指標の数値が8以上であれば、最上位品質1031のランク1025は10であると計算され、かつ該成果物の品質が最上位品質であると判別される。
【0111】
その他の品質レベルについても、同様の数値並びに数式で計算されるバリューによって、ランクおよびラベル"Good"1032、"Acceptable"1033、"Poor"1034が一位に決まるように規定されている。なお、各品質レベルは品質レベル編集部1026によって規定された情報の編集が可能な構成を本実施形態においては採用している。
【0112】
品質レベルの数は任意に設定可能である。すなわち、必要に応じて細かいレベルを指定する際にはレベル追加部1028を押下し、新規の品質レベルを総合品質目標設定部1022に追加することが可能である。またレベル削除部1027によって、チェックマーク1046のついたレベルを削除することも可能な構成となっている。
【0113】
発注者が印刷業者に対して品質要求をする際に、生産された成果物の品質について品質レベルで規定されるランク1024の数値によって、受け入れ条件を規定する。最低受け入れ品質設定部1029、要望品質設定部1030で、受け入れ条件が規定される。
【0114】
最低受け入れ品質設定部1029は、発注者が印刷業者に対し、成果物の納品に際し、受け入れ可能な品質、すなわちランク1024の最低値を規定するためのものである。換言すれば最低受け入れ品質設定部1029に規定された数値、同図の例においては8を下回るランク1024の数値の成果物は受け入れ品質を満たしていない旨、品質要求事項を印刷業者に伝達することができる。
【0115】
要望品質設定部1030によって、発注者が印刷業者に対し成果物の納品に際し、要望する品質条件、すなわちランク1024の要望値を規定するためのものである。換言すれば要望品質設定部1030に規定された数値、同図の例においては9以上のランク1024の数値の成果物を、品質要求事項を満たしているとして印刷業者に伝達することができる。
【0116】
色品質設定部1036は、PRXを作成する際に、成果物の色に関する品質要求情報を入力する設定部である。総合品質目標設定手段1022と同様、ラベル1023、ランク1024を設定する手段によって色に関する品質要求のレベルを指定可能なよう構成される。
【0117】
色品質バリュー1037は要求する色に対する成果物の測色結果である色値の色差(ΔE、デルタEとも呼称)を基準に規定する。すなわち色品質における最上位品質1041は色差が1.0以下である例を示している。すなわち、最上位品質1041の場合のラベル1023は"Excellent"、ランクが10である場合の例を同図は示している。同様、に色品質における"良品"1042、"受け入れ可能"1043、"不合格品質"1044についても同様に定義された例を同図は示している。ランクの追加並びに削除機能については総合品質目標設定部1022と同様の仕組みによって実現されているため説明は割愛する。
【0118】
総合品質目標設定部1022と同様に、色品質設定部1036においても、発注者が印刷業者に対して色に関する品質要求をする際に、受け入れ条件を規定する。受け入れ条件は、生産された成果物の色品質について上述した品質レベルで規定されるランク1024の数値によって規定される。色品質に関する最低受け入れ色品質設定部1038、要望色品質設定部1039で、受け入れ条件が規定される。
【0119】
最低受け入れ色品質設定部1038は、発注者が印刷業者に対し、成果物の納品に際し、受け入れ可能な色品質、すなわちランク1024の最低値を規定するためのものである。換言すれば最低受け入れ色品質設定部1038に規定された数値、同図の例においては8を下回るランク1024の数値の成果物は受け入れ色品質を満たしていない旨、色品質要求事項として印刷業者に伝達することができる。
【0120】
要望色品質設定部1039によって、発注者が印刷業者に対し成果物の納品に際し、要望する色品質条件、すなわちランク1024の要望値を規定するためのものである。換言すれば要望色品質設定部1039に規定された数値(同図の例においては10)以上のランク1024の数値の成果物を、要望色品質要求事項を満たしているとして印刷業者に伝達することができる。
【0121】
色品質変数設定部1040は、総合品質目標設定部1022におけるバリュー1026を計算するための数式設定部1035から色品質に関するランクを引用するための変数を規定する設定部である。数式設定部1035については後述する。本実施形態においては、色品質変数設定部1040によって、色品質に関するランク1024の値を変数"cs"により参照可能とする。
【0122】
画像位置ずれ品質設定部1047は、PRXを作成する際に、成果物の画像位置ずれに関する品質要求情報を入力する設定部である。総合品質目標設定部1022と同様、ラベル1023、ランク1024を設定する手段によって画像位置ずれに関する品質要求のレベルを指定可能なよう構成される。
【0123】
画像位置ずれ品質バリュー1048は要求する画像位置ずれに対する成果物の測定結果である基準位置からのずれ量(長さもしくは参照画像と成果物の画像の距離)を基準に規定する。すなわち画像位置ずれ品質における最上位品質1053はずれ量0.002mm以下である例を示している。すなわち、最上位品質1053の場合のラベル1023は"Excellent"、ランクが10である場合の例を同図は示している。同様、画像位置ずれ品質における"良品"1054、"、"不合格品質"1055についても同様に定義された例を同図は示している。ランクの追加並びに削除機能については総合品質目標設定部1022と同様の仕組みによって実現されているため説明は割愛する。
【0124】
総合品質目標設定部1022と同様に、画像位置ずれ品質設定部1047においても、発注者が印刷業者に対して画像位置ずれに関する品質要求をする際に、受け入れ条件を規定する。この受け入れ条件は、生産された成果物の画像位置ずれ品質について上述した品質レベルで規定されるランク1024の数値によって規定される。画像位置ずれ品質に関する最低受け入れ画像位置ずれ品質設定部1050、要望画像位置ずれ品質設定部1051で、受け入れ条件が規定される。
【0125】
最低受け入れ画像位置ずれ品質設定部1050は、発注者が印刷業者に対し、成果物の納品に際し、受け入れ可能な画像位置ずれ品質、すなわちランク1024の最低値を規定する設定部である。最低受け入れ画像位置ずれ品質設定部1050に規定された数値、同図の例においては5を下回るランク1024の数値の成果物は受け入れ画像位置ずれ品質を満たしていない旨、画像位置ずれ品質要求事項を印刷業者に伝達することができる。
【0126】
要望画像位置ずれ品質設定部1051によって、発注者が印刷業者に対し成果物の納品に際し、要望する画像位置ずれ品質条件、すなわちランク1024の要望値を規定する設定部である。要望画像位置ずれ品質設定部1051に規定された数値(同図の例においては10)以上のランク1024の数値の成果物を、画像位置ずれ品質要求事項を満たしているとして印刷業者に伝達することができる。
【0127】
画像位置ずれ品質変数設定部1052は画像位置ずれ品質に関するランク1024の値を総合品質目標設定部1022におけるバリュー1026を計算するための数式設定部1035から引用するための変数を規定するために設けられた設定部である。数式設定部1035については後述する。本実施形態においては、画像位置ずれ品質変数設定部1052によって、画像位置ずれ品質に関するランク1024の値を変数"rg"により参照可能とする一例を示している。
【0128】
バーコード読み取り品質設定部1056は、PRXを作成する際に、印刷対象画像中に含まれるバーコード画像の読み取り精度に関する品質要求情報を入力する設定部である。ここでは、総合品質目標設定部1022とは異なる情報を設定する。バーコードの読み取り品質については、色品質や画像位置ずれ品質とは異なり、品質を表現する指標となる情報が物理量ではなく、バーコード情報の読み取り可能、もしくは不可能であるかが評価基準となる。ランク1024による指定ではなく、バーコード品質読み取り指示設定部1057により、バーコード品質の検査の実行可否を制御する。バーコード位置情報設定部1059は、検査対象となるバーコードの、画像中の位置を座標により指定する設定部である。
【0129】
バーコード読み取り品質変数設定部1056は、総合品質目標設定部1022におけるバリュー1026を計算するための数式設定部1035からバーコード読み取り品質に関する評価値を引用するための変数を規定する設定部である。バーコード読み取り品質設定部1056によって、バーコード読み取り品質に関する評価値を変数"bc"により参照可能とする。ここでは、バーコード読み取り品質の評価値はバーコードの読み取りが可能な場合は1、読み取りができなかった場合の評価値を0として計算する。
【0130】
数式設定部1035は、以上述べた色品質設定部1036は、画像位置ずれ品質設定部1047、バーコード読み取り品質設定部1056の検査結果を統合し、総合品質目標設定部1022を導くための数式を規定する設定部である。具体的には、色品質変数設定部1040、画像位置ずれ品質変数設定部1052、バーコード読み取り品質設変数定部1056、これらの変数に格納された値から、総合品質目標設定部1022のバリュー1025を導くための数式を格納する。
【0131】
数式を表現する方法としては様々な手段が適用される。ここではラムダ式によって計算式を表現する。別の形態としては無名関数を任意のプログラミング言語もしくはスクリプト言語のフォーマットによって表現する。もしくは関数に限定する必要性もなく、プログラミング言語もしくはスクリプト言語を直接記載し、当該アプリケーションプログラムが該プログラミング言語もしくはスクリプト言語を実行した結果の値を得る形態をとってもよい。更に、数式は別手段によって規定し、数式に名称を与え該名称を数式設定部1035に設定する方法もある。
【0132】
以下、数式設定部1035によって総合品質目標設定部1022におけるバリュー1025を導く場合の処理内容について、具体的な例を用いて説明する。例えば、PRXに設定した基準に基づき、画像形成装置104、ワークフロー制御プログラム505が作成したPQXに含まれる品質データが以下の通りであった場合を想定する。ただしPQXの作成処理については後述する。なおPRXは、色品質設定部1036、画像位置ずれ品質設定部1047、バーコード読み取り品質設定部1056の検査結果によって設定される。
【0133】
<例>
色品質測定値(デルタE):1.5(変数cs=9)
画像位置ずれ品質測定値(mm):0.002(変数rg=10)
バーコード読み取り品質測定値(読み取り成功・失敗):成功(変数bc=1)
上記を本発明における本実施形態に示す数式設定部1035に設定された数式に適用すると評価値は以下のように算出される。
bc*(cs+rg*4)/5
=1*(9+10*4)/5
=9.8
すなわち、総合品質目標設定部1022におけるバリュー1025は9.8となり、ランク1024は10、すなわちラベルが"Excellent"である最上位品質のランク1031が導出される。
【0134】
<ジョブチケット作成用アプリケーションのUI>
図10Cは、発注者システム109における情報処理装置110において入稿対象の印刷設定情報であるジョブチケット、すなわちJDFデータを作成もしくは編集するためのアプリケーション画面の一例を示したものである。JDF設定部1004を選択することによって同図に示す画面の表示制御が行われる。JDF設定部1004は同図に示す如くさらに詳細な設定項目を選択可能な様、本実施形態におけるシステムは構成される。すなわち設定対象の機能ごとに、一般設定部1060、メディア設定部1061、面付け設定部1062、挿入紙設定部1063、画像処理設定部1064、後加工処理設定部1065等である。同図に示した画面例はメディア設定部1061を選択した場合の画面の表示状態の一例を示したものである。
【0135】
同図に示す通り、JDF設定部1004は、ジョブ全体メディア設定部1066と、ジョブ部分メディア設定部1068を含む。ジョブ全体メディア設定部1066はジョブで使用するメディアを選択する為に供されたものである。すなわち同図に示した例においては、ジョブ全体メディア種選択部1066において"Media1"が選択された状態を示している。換言すれば、本JDFによる印刷処理の実行において、印刷時に使用されるメディアは"Media1"であることを設定していることを意味する。一方で、ジョブ部分メディア設定部1068においては、ジョブ全体メディア設定部1066で設定したメディアとは異なるメディアを特定のページもしくはページ範囲に対して設定する場合に使用する設定手段である。同図に示して例においては、設定対象とするページ範囲追加部1069および、チェックボックス1046およびページ範囲消去部1070により、ジョブ部分メディア設定部1068が設定対象とするページ範囲の作成、消去手段を提供する。
【0136】
同図においては2つのページ範囲が作成された状態を示している。すなわち第一ページ範囲設定1071においては第一のページ範囲1073が設定される。第一のページ範囲973には、5ページ、200ページから210ページ、および250ページを設定対象とし、設定対象のページに使用するメディアとして第一の部分メディア選択部1074にて"Media2(coated)"を使用する例を示している。
【0137】
第二ページ範囲設定部1072においては第二のページ範囲1075が設定される。第二のページ範囲975には、1ページを設定対象とし、設定対象のページに使用するメディアとして第二の部分メディア選択部1076にて"Media3(cardboard)"を使用する例を示している。
【0138】
●入稿アプリケーション画面の一例
図11は発注者システム109における情報処理装置110において入稿対象の品質要求データであるPRX,JDF、PDFを印刷業者システム100に対し入稿する処理を実行する際のアプリケーション画面の一例を示したものである。
【0139】
図11(A)は
図10A-
図10Cにおいて示したアプリケーションの機能の一部として入稿データの印刷業者システム100への送信機能を供する形態の場合の画面1000の一例を示したものである。すなわち、汎用機能設定部1001を選択した際に同図に示す画面の表示がなされるよう本発明における本実施形態のシステムは構成される。
【0140】
送信先情報設定部1101は印刷業者システム100における情報処理装置102上で稼働するウェブサーバ504が入稿手段として提供しているウェブサービスのアドレスを指定する指定部である。
【0141】
第一のPDFファイル選択部1102、第一のPDFファイル選択指示部1103は共に入稿対象の画像データであるPDFファイルを発注者システム109における情報処理装置110が備えるファイルシステムから選択する選択部である。
【0142】
第一のJDFファイル選択部1104、第一のJDFファイル選択指示部1105は入稿対象のジョブ設定データであるJDFファイルを発注者システム109における情報処理装置110が備えるファイルシステムから選択する選択部である。
【0143】
第一のPRXファイル選択部1106、第一のPRXファイル選択指示部1107は入稿対象の品質要求データであるPRXファイルを発注者システム109における情報処理装置110が備えるファイルシステムから選択する選択部。
【0144】
上述した各選択部によって入稿に必要なデータセットを選択し適切な送信先情報を設定した状態で第一の送信指示部1108を選択すると入稿データセットが印刷業者システム100に対して送信される。第一の処理中止指示部1109は入稿処理自体を中止するための指示部である。
図11(B)は
図11(A)において示したアプリケーションによる入稿指示部と等価な機能をウェブブラウザによる操作で提供する場合の画面の表示状態を説明するためのものである。
【0145】
すなわち、オペレータが、ウェブブラウザのアドレス入力部1101に送信先情報を入力する。それにより印刷業者システム100における情報処理装置102上で稼働するウェブサーバ504が入稿手段として提供するウェブサービスのアドレスにアクセスした結果として同図に示すような入稿用ウェブ画面の状態に遷移する(1110、1112)。
【0146】
同図に示す通り、
図11(A)に示した各ファイル選択部と等価な機能を有する選択部がウェブブラウザの画面として提供されている。すなわち、第二のPDFファイル選択部1113、第二のPDFファイル選択指示部1114が第一のPDFファイル選択部1102、第一のPDFファイル選択指示部1103の機能に相当する。
【0147】
第二のJDFファイル選択部1115、第二のJDFファイル選択指示部1116が第一のJDFファイル選択部1104、第一のJDFファイル選択指示部1105の機能に相当する。
【0148】
第二のPRXファイル選択部1117、第二のPRXファイル選択指示部1118が第一のPRXファイル選択部1106、第一のPRXファイル選択指示部1107の機能に相当する。
【0149】
第二の送信指示部1119が第一の送信指示部1108に、第二の処理中止指示部1120が第一の処理中止指示部1109の機能に相当する。
【0150】
図11(B)に示した各手段と等価な機能の説明は
図11(A)においてなされているため、機能の説明は割愛する。
【0151】
●入稿データの例
図12A-
図12Nは、発注者が
図10に示す各操作手段を操作した結果、生成される各種入稿対象データの例を示すためのものである。以下、データ種別ごとに詳細を説明する。
【0152】
<ジョブチケットの例(
図12A)>
図12Aは、
図10Cすなわち、発注者システム109における情報処理装置110において入稿対象の印刷設定情報であるジョブチケットであるJDFデータを作成もしくは編集する手段によって生成されたJDF形式のジョブチケットの一例である。
【0153】
ジョブチケットには以下に示すような情報が含まれる。すなわち、部に含まれるページ数1201、ジョブ全体印刷パラメータ1202、およびジョブ部分印刷パラメータ1206、1208である。
【0154】
ジョブ全体印刷パラメータ1202には、トータル印刷部数1203や、ジョブ全体で使用するメディア設定1204が含まれる。ジョブ部分印刷パラメータ1206、1208には、部分として指定するページ範囲情報1205、1209や、部分で使用するメディア設定1207、1210が含まれる。
【0155】
前記ジョブ全体で使用するメディア設定1204や、ジョブの部分で使用するメディア設定1207、1210の実際の設定内容はメディアタグ1211、1214、1217内で規定される。メディアタグ1211、1214、1217は、メディアの種別1213、1216、1219やメディアサイズ1212、1215、1218等の設定情報をさらに含む。
【0156】
<PRXデータの例(
図12B-
図12D)>
図12B-
図12Dは、
図10B、すなわち発注者システム109における情報処理装置110において入稿対象の品質要求データであるPRXを作成もしくは編集する手段によって生成されたPRXデータの一例である。
【0157】
PRXデータには以下に示すような情報が含まれる。すなわちマスタ情報1220、総合品質目標設定情報1221である。
【0158】
総合品質目標設定情報1221はさらに品質レベルごとの規定部1222、1223、1224、1225、数式規定部1226、最低受け入れ品質設定情報1227、要望品質設定情報1228等を含む。これらと等価な情報の意味に関しては
図10Bの説明においてなされているため割愛する。
【0159】
色品質情報規定部1229は、成果物の色品質に関する各種設定情報を格納する情報から成る。すなわち、色品質である色差を規定するための単位情報規定部1231、リファレンスとなる色情報である参照色情報規定部1232、そして色品質レベルごとの規定部1233、1234、1235、1236等を含む。なお、参照色情報規定部1232は、CXF情報規定部1258のIDを参照している。色品質の程度を計算するときは、基準値として分光スペクトル情報格納部1259を使う。
【0160】
また、最低受け入れ色品質設定情報1237、要望色品質設定情報1238、色品質変数設定情報1239、色品質測定座標情報1240等も含まれる。これらと等価な情報の意味に関しては
図10Bの説明においてなされているため割愛する。
【0161】
画像位置ずれ品質情報規定部1241は、成果物の表裏の画像位置ずれに関する品質要求情報を格納するためにもうけられたものである。具体的には、単位情報規定部1242、品質レベルごとの規定部1243、1244、1245、最低受け入れ品質設定情報1246、要望品質設定情報1247、品質変数設定情報1248、品質測定座標情報1249が含まれる。ここで単位情報規定部1242は、画像位置ずれの計量に用いられる単位量を規定する。また
バーコード読み取り品質規定部1250は、成果物に含まれるバーコード画像の読み取り精度に関する品質要求情報を格納するために設けられたものである。具体的には、バーコード読み取り品質情報規定部1251、1252、バーコード読み取り品質変数規定部1255、バーコード読み取り最低品質規定部1253が含まれる。さらに、バーコード読み取り要望品質規定部1254、そしてバーコード読み取り対象座標規定部1256等が含まれる。これらと等価な情報の意味に関しては
図10Bの説明においてなされているため割愛する。
【0162】
参照色詳細情報規定部1257は、色品質として要望する参照データ(正解値、リファレンス値)を規定するために設けられたものである。本実施形態における具体例として、CXF情報規定部1258、ならびにそれが含む色情報の表現手段の一つである分光スペクトル情報格納部1259を含む。
【0163】
拡張情報格納部1260にはPRXに付加的な情報を格納する領域として任意に用いることが可能である。本実施形態においては、発注者が印刷業者に生産を依頼する際、その成果物の納品形態を指定および指示している。同図に示す例においては納品形態指定部1261に、カットシートとして納品する旨の情報が格納されている。換言すれば該PRXを受理した印刷業者は入稿されたデータを用いて生産、さらに納品する際に最終的にカットシートの形態で成果物を納品することを指示されている。
【0164】
また、数式規定部1262、1263,1264はそれぞれ、色、画像位置ずれ、バーコード読取りの品質の程度を計算するための計算式が定義される。数式に関する解説は
図10Bの数式設定部1035においてなされているため割愛する。
【0165】
ここでは、PRXに記載された要求と品質レベルに対して、測定データからどのように特定の品質レベルを決定するかについて、例を用いて説明する。
【0166】
色の基準値は、
図12B-
図12Dに示すPRXにおいて、参照色情報規定部1232が指し示すCXF情報規定部1258である。具体的な基準値は、分光スペクトル情報格納部1259にて定義されている。色の測定値は、
図12F-
図12Hに示すPQXにおいて、分光スペクトルデータ格納部1285である。
【0167】
色の品質レベルを計算するには、数式規定部1262にて定義されている以下の数式を使う。この計算式は、基準値である分光スペクトル情報格納部1259と、測定値である分光スペクトルデータ格納部1285とを比較し、差分を算出する。
【0168】
Compare('CxFReference', 'PQX measurement set')
計算の結果が1.5の場合、品質レベル規定部1233、1234、1235、1236に規定されているValueRangeを見ると、次のようになっている。
規定部1233は、計算結果が1.0以下。
規定部1234は、計算結果が1.0より上で、2.0以下。
規定部1235は、計算結果が2.0より上で、4.0以下。
規定部1236は、計算結果が4.0より上で、5.0以下。
【0169】
規定部1233~1236の中で、計算結果1.5に当てはまるのは、品質レベル規定部1234(計算結果が1.0以上、2.0以下)である。よって、色の品質レベルは規定部1234となる。すなわち、ランクは9、ラベルが"Good"が導出される。
【0170】
このようにして検査対象項目それぞれについて、検査結果を所定の数式により評価値を算出し、ランクを決定する。評価は色の品質に限らず、すべての対象項目について同様に行われる。
【0171】
<検査結果の一例(
図12E)>
図12Eは、画像形成装置103、104が備える検査部214によって、成果物であるシート上に形成される画像情報の検査を実施した際の、検査結果の一例を説明するためのものである。同図に示す情報は画像形成装置103、104が備える検査プログラム410をコントローラ部205が実行することで作成され、情報処理装置102上で動作するワークフロー制御プログラム505に送信される。以下、検査結果データに含まれる情報について説明する。
【0172】
検査実施シート情報12651はカットシート用画像形成装置104の検査部214が検査を実施した際のジョブの先頭からのシート枚数に関する情報を格納することを目的に設けられたものである。
図12Dの納品形態指定部1261にカットシート仕上がりの納品指示をされた場合であって、かつカットシート用画像形成装置104を用いて生産が行われた際に指定されることを目的とした情報である。
【0173】
一方でシート検査位置指定部12652は、連帳シート用画像形成装置103の検査部214が検査を実施した際のロール紙の先頭からのシートの位置を長さによって格納することを目的に設けられたものである。納品形態指定部1261にロールシート仕上がりの納品指示をされた場合であって、かつ連帳シート用画像形成装置103を用いて生産が行われた際に指定されることを目的として情報である。
【0174】
なお、同図における例では説明の都合上、検査実施シート情報12651とシート検査位置指定部12652が同時に含まれる状態を示しているが、実際には指定された納品形態に応じて両者は排他的に利用されることを前提としている。
【0175】
また、納品形態が生産時に用いられる画像形成装置の種別と合致するとは必ずしも限らず、そうでない場合をも本発明本実施形態は想定している。すなわち、連帳シート用画像形成装置103で印刷処理を実行し、後加工工程でカットシート仕上がりに加工した上で納品する場合である。この場合には検査実施シート情報12651とシート検査位置指定部12652のいずれかもしくは双方を格納することも想定しうる。その場合にはステップS728およびS729でPQXを作成する段階で納品形態に応じた適宜の態様により検査位置を示す情報がPQXに格納されるよう、ワークフロー制御部707が制御することによって為される。
【0176】
分光スペクトルデータ12653は検査部214における、
図9Aにて示した第三の検査部912、および第四の検査部913によってシート上の画像の色情報である分光スペクトルの数値データである。後述するPQXデータに格納され、色品質に関する検査結果を発注者に提供するために用いられる。
【0177】
画像位置ずれ検査結果データ12654は、検査部214における、
図9において示した第一の検査部907および第二の検査部908によってシート上の画像の位置ずれに関するずれ量の数値データである。後述するPQXデータに格納され、画像位置ずれ品質に関する検査結果を発注者に提供するために用いられる。
【0178】
バーコード読み取り検査結果データ12655は、検査部214における、
図9において示した第一の検査手段907および第二の検査手段908によってシート上のバーコード画像の読み取り検査の結果に関するデータである。後述するPQXデータに格納され、バーコードの読み取り品質に関する検査結果を発注者に提供するために用いられる。
【0179】
<PQXデータの一例(
図12F-
図12H)>
図12F-
図12Hは、画像形成装置103、104が備える検査部214によって作成された検査情報を、ワークフロー制御プログラム505が受信し、作成する印刷品質報告データ、すなわちPQXデータの一例を示したものである。検査情報を
図12F-
図12Hに示した。以下、PQXに含まれる情報のうち、主要なものについて説明する。
【0180】
PQXヘッダ情報1267はPQXデータが保持すべき主となる情報の格納領域である。
【0181】
作業報告格納部1268は、画像形成装置103、104が処理を実行した際になされる品質検査結果および品質検査結果に対応付ける汎用的な情報を格納するために用いられるものである。本実施形態においては、品質検査を実施する際の生産条件を格納する場合の例を示している。より具体的には納品形態がロール仕上げの際には、ロール納品用トータルシート情報1269、もしくは納品形態がカットシート仕上げの際には、カットシート納品用トータルシート情報1270が作業報告格納部1268に格納される。
【0182】
検査結果格納領域1272は、検査部214によって実施された成果物作成品質に関する各種検査結果を検査の種別毎に識別し、格納することを目的に供される格納部である。以下、同領域に格納される品質検査結果の内容について説明する。
【0183】
検査結果格納領域1272には、画像形成装置103、104が備える検査部214により実施された、品質検査結果の位置情報が格納される。より具体的には納品形態がロール仕上げの際には、ロール納品用シート情報1273、もしくは納品形態がカットシート仕上げの際には、カットシート納品用シート情報1274が格納される。
【0184】
ロール納品用シート情報1273およびカットシート納品用シート情報1274は各種品質検査を実施した際のシート上の座標を特定するための、基準となる位置情報を提供することを目的としている。具体的には、ロール仕上げで納品する場合には、品質検査を実施した箇所を指定する際に、ロール紙の先頭からの長さによる位置情報およびロール番号をロール納品用シート情報1273に格納する。また、カットシート仕上げで納品する場合には、品質検査を実施した箇所を指定するための、ジョブ中の画像形成が行われたジョブ先頭からのシート枚数情報、および納品時のロット番号に関する情報を格納する。
【0185】
色品質報告格納部1275は、PQXに含めて発注者に印刷業者が行う品質報告情報のうち、色情報に関する報告情報を格納するための領域である。
図12Eにて示した、分光スペクトルデータ12653に基づき当該領域の情報は作成される。すなわち、分光スペクトルデータ12653の参照リンク1276、前記参照リンク1276が参照する実施の分光スペクトルデータ格納部1285、および分光スペクトルデータ1286、測定位置指定部1277がこれに相当する。
【0186】
測定位置指定部1277は、前記ロール納品用シート情報1273もしくはカットシート納品用シート情報1274と組み合わせて使用される。具体的には、PRXで指定された納品形態がロール仕上がりの場合には、第三の検査部912および第四の検査部913で読み取り検査を実施したカラーパッチ916、919の原点からの相対座標位置を示している。座標位置は、本例では、ロール先頭からの積算の長さ情報を示すロール納品用シート情報1273の数値で示されるシートの先頭からの位置情報を起点として、測定位置指定部1277に格納された主副座標で示される。
【0187】
若しくは測定位置指定部1277は、PRXで指定された納品形態がカット仕上がりの場合には、第三の検査部912および第四の検査部913で読み取り検査を実施したカラーパッチ916、919の原点からの相対座標位置を示している。座標位置は、本例では、カットシート納品用シート情報1274の数値で示されるジョブの先頭からのシート枚数と、該枚数目のシートにおける、測定位置指定部1277に格納された主副座標で示される。
【0188】
画像位置ずれ品質報告格納部1278は、PQXに含めて発注者に印刷業者が行う品質報告情報のうち、画像位置ずれ情報に関する報告情報を格納するための領域である。
図12Eにて示した、画像位置ずれ検査結果データ1265に基づき当該領域の情報は作成される。
【0189】
測定位置指定部1281は、ロール納品用シート情報1273もしくはカットシート納品用シート情報1274と組み合わせて使用される。具体的には、PRXで指定された納品形態がロール仕上がりの場合には、第一の検査部907および第二の検査部908で読み取り検査を実施したレジマーク917、918の原点からの相対座標位置を示している。座標位置は、本例では、ロール先頭からの積算の長さ情報を示すロール納品用シート情報1273の数値で示されるシートの先頭からの位置情報を起点として、測定位置指定部1281に格納された主副座標で示される。
【0190】
若しくは測定位置指定部1281は、PRXで指定された納品形態がカット仕上がりの場合には、第一の検査部907および第二の検査部908で読み取り検査を実施したレジマーク916、919の原点からの相対座標位置を示している。座標位置は、カットシート納品用シート情報1274の数値で示されるジョブの先頭からのシート枚数と、該枚数目のシートにおける、測定位置指定部1281に格納された主副座標で示される。
【0191】
バーコード読み取り品質格納部1282は、PQXに含めて発注者に印刷業者が行う品質報告情報のうち、バーコード読み取り品質情報に関する報告情報を格納するための領域である。
図12Eにて示した、バーコード読み取り検査結果データ1266に基づき当該領域の情報は作成される。
【0192】
測定位置指定部1284は、ロール納品用シート情報1273もしくはカットシート納品用シート情報1274と組み合わせて使用される。具体的には、PRXで指定された納品形態がロール仕上がりの場合には、第一の検査部907および第二の検査部908で読み取り検査を実施したバーコード920の原点からの相対座標位置を示している。座標位置は、ロール先頭からの積算の長さ情報を示すロール納品用シート情報1273の数値で示されるシートの先頭からの位置情報を起点とし、測定位置指定部1284に格納された主副座標で示される。
【0193】
若しくは測定位置指定部1284は、PRXで指定された納品形態がカット仕上がりの場合には、第一の検査部907および第二の検査部908で読み取り検査を実施したバーコード920の原点からの相対座標位置を示している。座標位置は、カットシート納品用シート情報1274の数値で示されるジョブの先頭からのシート枚数と、該枚数目のシートにおける、測定位置指定部1284に格納された主副座標で示される。
【0194】
●PQXの作成(
図13)
PQXは、印刷業者システム100における情報処理装置102のワークフロー制御プログラム505が作成する。PQX作成時に、ワークフロー制御プログラム505はPRXを用いて検査結果の判定を行い、判定結果1288~1290(
図12Hに示す)を判定結果格納部1287にまとめて、PQXに挿入する。以下、判定結果格納部1287をPQXに挿入する処理を説明する。
【0195】
図7Bに示したステップS728およびS729でワークフロー制御部707がPQXを作成する処理の流れについて、
図13を用いて説明する。ワークフロー制御部707による
図13の処理は、ワークフロー制御プログラム505をCPU301により実行することで実現される。
【0196】
ステップS1300で、ワークフロー制御プログラム505は検査結果を取得する。ステップS1301でPRXデータを用いた検査結果の評価を行うか否かを判断する。評価を行わない場合は、ステップS1302に進み、評価を行う場合はステップS1303に進む。なお、評価を行う、あるいは行わないといった判断基準については、PRXデータがある場合は評価を行うとしてもよいし、
図10B、すなわち発注者システム109で発注者が指示をしてもよい。あるいは、PRXデータの中にあるBuyerInfoに特定の顧客情報が記載の場合にのみ評価を行うとしてもよい。
【0197】
ステップS1302で、ワークフロー制御プログラム505は検査結果を基にPQXを作成する。この場合にはPQXには評価結果は含まれず、各検査項目の測定値が含まれていてよい。ステップS729は、
図7にて説明済みなので割愛する。
【0198】
一方検査結果の評価が必要と判定した場合には、ステップS1303で、ワークフロー制御プログラム505は、検査結果に関連するPRXデータを取得する。
【0199】
ステップS1304で、ワークフロー制御プログラム505は、検査結果とPRXに記載された基準値を基に、検査対象項目それぞれの数式規定部1262、1263,1264に記載された数式を用いて、検査対象項目ごとの検査結果を評価する。評価結果は、本例ではランクの値として示される。たとえば、色や文字、位置ずれ、バーコードなどが評価対象項目に含まれるが、もちろんその一部を含んでもよいし、これら以外の項目を含めてもよい。
【0200】
ステップS1305で、ワークフロー制御プログラム505は、評価結果を基に、品質レベル規定部を特定する。すなわち、評価結果に該当する品質レベル規定部で規定されているラベルとランクとを特定する。例えば、
図12F-
図12HのPQXの例においては、ワークフロー制御プログラム505は、PRXから特定された品質レベル規定部それぞれを判定結果1288~1290として記録する。すなわち、ステップS1304で評価した検査対象項目それぞれのラベルおよびランクを、判定結果1288~1290の値としてPQXに記録する。ワークフロー制御プログラム505は判定結果格納部1287を作成し、判定結果1288~1290を子要素として入れる。ワークフロー制御プログラム505は、
図12F-
図12Hに示すように、判定結果格納部1287をPQXの中に追加する。
【0201】
これにより、PQXは検査結果(すなわち測定値)だけではなく、検査結果と基準とから計算した判定結果(あるいは評価結果)も有することができる。
【0202】
以上のように本実施形態で示される情報処理装置は、PRXに記載された色、バーコード読取り精度、画像位置ずれ精度といった各対象項目それぞれの品質レベル規定部をPQXに追加する。こうすることで、発注者は自身が決めた品質の基準に照らし合わせて、印刷状態の質の程度を知ることができる。
【0203】
[変形例]
なお、実施形態1では品質要求データと印刷品質報告データそれぞれの例としてPRXとPQXを使っているが、品質要求データや印刷品質報告データは特定のフォーマットによらず表現可能である。よって、データフォーマットによって本発明が変わることはない。またPQXには総合品質評価の項目が含まれないが、異なるフォーマットを用いた場合には、品質要求データに定義された方法で総合品質評価を行って決定したランクを報告データに含めてもよい。
【0204】
一例として、印刷工程の国際標準化団体であるCIP4が策定しているXJDFおよびXJMFで品質要求データや印刷品質報告データを表現することが可能である。品質要求データの例を
図14A、印刷品質報告データの例を
図14B、
図14Cに示す。
【0205】
例えば、
図14Aの品質要求データにおいて、1400は
図12Bの総合品質目標設定情報1221に相当する。1401、1403、1405、1407は
図12Cの品質レベル規定部1233、1234、1235、1236に相当する。1402、1404、1406、1408は、
図12Dにおいて色の品質レベルを規定する参照色詳細情報規定部1257に相当する。また、
図14Bの印刷品質報告データにおいて、1409は
図12Gの1275に相当し、1410は
図12Hの1288に相当する。
【0206】
このように、品質要求データや品質方向データはPRX、PQXに限らず他の形式であってもよい。
【0207】
[第2の実施形態]
実施形態1では、色、バーコード読取り精度、画像位置ずれ精度の品質の程度をPQXに追加する例を説明した。一方、実施形態1のように品質項目が複数ある場合は、印刷物全体の品質の程度を一目で知りたい場合がある。実施形態2では、印刷物全体の品質の程度をPQXに追加する例を説明する。なお、前述の実施形態と共通の部分は省略して説明をする。
【0208】
ステップS728およびS729でPQXを作成する段階で、まずワークフロー制御プログラム505は
図12B-
図12Dに示すPRXを用いて検査結果の判定を行う。そして、色やバーコード読取り精度、画像位置ずれ精度といった軸ごとに品質レベル規定部を特定する。これは実施形態1にて説明したので割愛する。
【0209】
その後、PRXに記載されている総合品質目標設定情報1221内の品質レベル規定部1222~1225のうち1つを特定する。総合品質目標設定情報の品質レベルの特定方法は実施形態1に記載のとおりなので、ここでは割愛する。
【0210】
次に、ワークフロー制御プログラム505は、
図12I-
図12Kに示すように、PRXから特定された総合品質目標設定情報の品質レベル規定部1291を判定結果格納部1287の子要素として入れる。これは例えば
図13のステップS1305において、検査対象項目それぞれの評価結果(品質レベル)を、PRXの総合品質目標設定情報1221の数式規定部1226に規定された評価式に適用して総合評価の結果を得る。その評価結果であるラベル及びランクを品質レベル規定部1291に記録する。
【0211】
これにより、PQXは検査結果だけではなく、印刷物全体の品質の程度を有することができる。
【0212】
以上のように本実施形態で示される情報処理装置は、PRX記載された総合品質目標設定情報の追加をPQXに可能とすることで、発注者は自身が決めた品質の基準に照らし合わせて、印刷状態の質の程度を知ることができる。
【0213】
[第3の実施形態]
発注者が印刷業者に印刷物の依頼をするとき、印刷物の品質の程度について最低値と期待値の基準を明示する場合がある。PRXにおける受け入れ基準は、最低受け入れ品質基準(あるいは最低基準)、要望品質基準(あるいは要望基準)の2種類ある。
【0214】
最低値は、PRXにおいて最低受け入れ品質設定情報(MinimumAcceptableRank)で表現することができる。
図12B-
図12Dでは、最低受け入れ品質設定情報1227、1237,1246,1253がその最低値に該当する。期待値は、PRXにおいて要望品質設定情報1228、1238,1247、1254が該当する。PRXの仕様では、最低受け入れ品質設定情報は必須要素で、要望品質設定情報は任意である。
【0215】
PRXにおいて、最低受け入れ設定情報と要望品質設定情報の組み合わせは、最低受け入れ設定情報のみが指定されている場合と、最低受け入れ設定情報と要望品質設定情報が両方指定されている場合の2通りが考えられる。最低受け入れ設定情報のみがPRXに指定されている場合、発注者としては、印刷物の品質が最低限の基準を満たしていれば良いことが多い。例えば、
図12L-
図12Mに示すように、最低受け入れ設定情報1237のみがPRX中にある場合、発注者の期待する印刷物の品質は、最低受け入れ設定情報1237が指し示す品質レベル規定部1235以上であればよい。つまり、受け入れ可能な品質を示す品質レベル規定部1233、品質レベル規定部1234、品質レベル規定部1235のどれをPQX中に記載してもよい。品質レベル規定部1235だけをPRXに入れても良い。
【0216】
一方、最低受け入れ設定情報と要望品質設定情報の両方が指定されている場合は、発注者は、印刷物の品質はなるべく要望品質設定情報に合わせることを希望している。発注者は、最低受け入れ設定情報をしかたなく設定しているのであって、最低受け入れ設定情報の品質の印刷物ばかりが納品されることを期待していないからである。発注者としては、むしろ要望品質設定情報に記載された品質レベル以下の印刷物はなるべく少ない状態での納品を希望している。しかし、生産の過程で印刷物の品質にバラツキはでてしまうので、発注者はそのバラツキがどの程度なのかをしっかりと把握したい。
【0217】
例えば、
図12B-
図12Dに示すように、最低受け入れ設定情報1237と要望品質設定情報1238がPRX中にある場合、発注者の期待する印刷物の品質は、要望品質設定情報1238が指し示す品質レベル規定部1233である。発注者にとって、品質レベル規定部1233より下の品質レベルは、なるべく少ない状態で印刷物が納品されて欲しいので、品質レベル規定部1233~1236をPQXに正確に記載したいという要求もある。
【0218】
上記を踏まえ、最低受け入れ設定情報と要望品質設定情報を含むPRXを受けたPQXの作成フローを以下に説明する。このフローを
図16に示す。
図16ではステップS1301~S1305,S729については
図13と共通している。そこで相違点であるステップS1306、S1307について説明する。
【0219】
最低受け入れ設定情報のみがPRXに指定されている場合を説明する。ステップS1305までの処理が終了し、検査対象項目の評価結果がPQXに記録される。その後、ワークフロー制御プログラム505は
図12L-
図12Mに示すPRXを参照して検査結果の判定を行い、品質レベル規定部を特定する。品質レベル規定部の特定処理は実施形態1にて説明したので割愛する。なお、実施形態1では、品質レベル規定部1234(
図12M参照)が特定された。
【0220】
ステップS1306で、要望品質設定情報が指定されているか判定する。最低受け入れ設定情報1237(
図12L参照)のみがPRXに指定されている場合(
図13のステップS1306-No)、ステップS1307に分岐する。ステップS1307で、ワークフロー制御プログラム505は品質レベル規定部1234ではなく、最低受け入れ設定情報1237を指し示す品質レベル規定部1235をPQXに記載する候補とする。この結果、ステップS1302では、PQXには、実際の評価結果である品質レベル(およびラベル)の代わりに、最低受け入れ設定情報で示された品質レベル(およびラベル)が、評価結果として記録される。
【0221】
最低受け入れ設定情報と要望品質設定情報の両方が指定されている場合は、実施形態1に記載の処理と同じとなる。すなわち、PQXには、実際の評価結果である品質レベル(およびラベル)が記録される。
【0222】
以上のように本実施形態で示される情報処理装置は、品質要求データに記載された最低受け入れ設定情報と要望品質設定情報に合わせた品質レベルの追加を印刷品質報告データに可能とする。こうすることで、発注者は自身が決めた品質の基準に照らし合わせて、印刷状態の質の程度を知ることができる。例えば、最低受け入れ設定情報のみが品質要求データに指定されている場合は、最低受け入れ設定情報が達成できたことだけを発注者は知ることができる。それ以外の品質レベルの話を通知されることはないので、発注者に対する通知の煩わしさを軽減できる。
【0223】
[第4の実施形態]
印刷物の発注時、発注者が品質のバラツキを許容しない場合がある。その場合、発注者はPRXに要望する品質レベルを1つだけ指定し、それ以外の品質レベルを記載しないことがある。例えば、
図12Nのように、品質レベル規定部1233が1つしかないPRXデータである。
【0224】
このようなユースケースの場合、納品される印刷物の品質は常に一定であり、バラツキは存在しない。つまり、発注者は常に同じ結果のPQXを受け取ることになる。
【0225】
この場合、印刷業者から発注者にPQXを返す方法として3通り考えられる。
【0226】
1つ目は、PQXに品質レベルをいれずに検査結果のみを入れて、PQXを発注者に返す方法である。これは従来のPQXと同じとなる。
【0227】
2つ目は、PQXに品質レベルと検査結果をいれて、PQXを発注者に返す方法である。これは実施形態1と同じであるが、品質レベルは1つしかないので、検査結果だけが誤差の範囲で変化する。
【0228】
3つ目は、常に同じ品質レベルなので、PQXを発注者に返さない方法である。発注者は常に同じ品質レベルであると分かっているので、PQXによる情報交換が不要であればこの方法となる。
【0229】
上記3つの方法の切替えについては、本実施形態では以下のように変えることで実現している。すなわち、
図13のステップS1301において、1つ目の方法と2つ目の方法の切替えが行われる。具体的には
図10に示す発注者アプリ画面で報告必要と指示があれば、印刷品質報告データの作成は行い、報告不要との指示があれば印刷品質報告データの作成を行わない。これは実施形態1と同様である。3つ目の方法については、ステップS729でPQX作成処理を始める前に、PQXを作成するか、或いはしないかの判断を行う。この判断は検査対象の項目ごとに行ってよい。また判断の基準は、たとえば、PRXで指定された最低基準が最高レベル(例えば10)であるか判定すればよい。指定された最低基準が最高品質レベルであれば、品質のばらつきは許されず、納品される印刷物は必ず最高品質レベルにあると判定できる。したがってこの場合には作成するPQXに当該項目の評価結果(ラベルおよびランク)を含めなくともよい。
【0230】
以上のように本実施形態で示される情報処理装置は、品質報告データに品質レベルが1つしか記載されない場合に、発注者の要望に適した印刷品質報告データの作成および配信を行うことができる。
【0231】
[第5の実施形態]
発注者と印刷業者は印刷品質報告データに記載された情報と印刷物のサンプルを見比べながら、印刷品質の仕上がり具合を議論することがある。この議論の際、ヤレ紙としてはじかれたものも、NGの程度によっては正紙として使用できるため発注者と印刷事業者がチェックして使用できそうなものは戻している。検査結果と品質レベルの判定結果だけでは、このチェック作業に手間がかかるため、印刷品質報告データに記載された情報、特に印刷品質レベルの判定結果がなぜこのような結果になったのかの理由を知りたいことがある。その理由次第で、ヤレ紙を正紙として戻すことができるからである。
【0232】
そこで本実施形態では、印刷品質報告データに判定結果の理由を入れて、印刷品質報告データを作成する処理を説明する。一例として、色の品質レベルの計算を例にとる。
【0233】
第1の実施形態において、色の品質レベルを計算する際、数式規定部1262にて定義されている数式を使い、分光スペクトル情報格納部1259と分光スペクトルデータ格納部1285を比較し、差分を算出した。例えば計算の結果が1.5の場合、品質レベル規定部1234が特定される。一方、品質レベル規定部1234に記載されている数値は2.0なので、実際の計算結果である1.5が2.0に丸められてしまう。
【0234】
そこで、
図15A-
図15Bに示すPQXの理由蘭1500に示すように、品質レベルの項目に対して、検査結果の判定に使用した数式1502、数式1502に測定値を適用した計算結果1501をPQXに記述する。ことにより、印刷品質報告データに記載された判定結果の計算理由を特定しやすくなる。なお、数式1502は品質要求データ(PRX)から取得するもので、
図12Bの例では数式規定部1262から取得している。
【0235】
また、総合的な品質を表す総合検査結果1503~1505も同様に、数式1505と計算結果1504を含む。数式1505は総合品質目標設定情報1221に記載された数式1226から取得される。計算結果1504は、総合品質レベルを評価する際に、各項目の評価結果を数式1505に適用して得られた値でよい。上述の処理は、
図13においてはそのステップS1302にて行われる。
【0236】
なお、本実施形態では、印刷品質報告データに入れる判定結果の理由として、数式と計算結果すなわち評価方法と評価結果とを追加したが、判定結果の理由がわかる情報であればよい。すなわち理由は数式と計算結果に限定されるものではない。またすべての検査対象ではなく選択された検査対象について理由を付加してもよく、あるいは所定の検査対象について理由を付加するようにしてもよい。
【0237】
以上のように本実施形態で示される情報処理装置は、印刷品質報告データに判定結果の理由を追加可能とする。こうすることで、発注者と印刷業者は印刷品質報告データに記載された判定結果とその理由、印刷物のサンプルを見比べながら、印刷品質の仕上がり具合を議論することができる。
【0238】
[その他の実施例]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0239】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0240】
100:印刷システム、102:情報処理装置、103、104:画像形成装置、105,106,109;後処理装置、112,114,115,116:検査装置