(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】個室
(51)【国際特許分類】
A47C 19/22 20060101AFI20240628BHJP
E04H 1/02 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A47C19/22 B
E04H1/02
(21)【出願番号】P 2019226227
(22)【出願日】2019-12-16
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】野口 伸
(72)【発明者】
【氏名】大平 滋彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祐紀
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0070224(US,A1)
【文献】特開2014-195486(JP,A)
【文献】特開平06-093741(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102960981(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 19/22
E04H 1/02, 1/12
A47B 87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝台部の下方に該寝台部の長手方向に通過可能な通路部を形成し、前記寝台部の下方に該寝台部とは別の寝台部を形成していない個室であって、
平面視において前記寝台部に連なる位置に、該寝台部より一段下がった踊り場を有し、前記通路部又は前記通路部に連なるスペースから前記踊り場にアクセス可能とし、前記踊り場の下方に収納部を設けてあり、
前記踊り場は、前記寝台部の平面視における長辺に連なり、
前記寝台部の平面視における二つの長辺のうちの前記踊り場が連ならない方の辺と、前記踊り場の平面視における前記寝台部に連なる側と反対側の辺とは、それぞれ個室を囲む壁に沿うように構成してある個室。
【請求項2】
前記収納部は、前記通路部側からの利用が可能である請求項1に記載の個室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、企業の独身寮やシェアハウスの他、個人住宅等に設けても好適な個室に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ベッド(寝台部)はその占有面積が比較的広いため、単体で個室に設置すると、他の家具の設置スペースを大きく圧迫することになる。そこで従来、ベッドと机等とを上下二段に組み合わせた家具(システムベッド)が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の家具では、少なくともその脇に、好ましくは人ひとりが普通に歩ける程度の幅を持った通路部を設けておく必要があるため、この家具を配する個室の平面視におけるミニマム化には限度がある。また、このことは、上記家具に限らず、寝台部の下方に机等を配するようにした個室についても同様に当てはまる。
【0005】
本発明は、寝台部を配する個室の平面視におけるミニマム化に資する個室を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
【0007】
【0008】
一方、上記目的を達成するために、本発明に係る個室は、寝台部の下方に該寝台部の長手方向に通過可能な通路部を形成し、前記寝台部の下方に該寝台部とは別の寝台部を形成していない個室であって、平面視において前記寝台部に連なる位置に、該寝台部より一段下がった踊り場を有し、前記通路部又は前記通路部に連なるスペースから前記踊り場にアクセス可能とし、前記踊り場の下方に収納部を設けてあり、前記踊り場は、前記寝台部の平面視における長辺に連なり、前記寝台部の平面視における二つの長辺のうちの前記踊り場が連ならない方の辺と、前記踊り場の平面視における前記寝台部に連なる側と反対側の辺とは、それぞれ個室を囲む壁に沿うように構成してある(請求項1)。
【0009】
上記個室において、前記収納部は、前記通路部側からの利用が可能であってもよい(請求項2)。
【発明の効果】
【0010】
本願発明では、寝台部を配する個室の平面視におけるミニマム化に資する個室が得られる。
【0011】
すなわち、本願の各請求項に係る発明の個室では、寝台部の下方空間を通路部として利用するので、こうした利用が不可能な場合に比べ、寝台部を配する個室の平面視におけるミニマム化を図る点で、有利となる。
【0012】
請求項1に係る発明の個室では、踊り場を経由して寝台部に昇降するようにしたことにより、この昇降の安全性や安心感を大いに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る個室を設けた共同住宅の要部の構成を概略的に示す平面図である。
【
図2】(A)及び(B)は、前記個室の構成を示す床上2500mm及び1500mmの高さでの平面図である。
【
図3】
図2(A)におけるF3矢視図(展開図)である。
【
図4】
図2(A)におけるF4矢視図(展開図)である。
【
図5】
図2(A)におけるF5矢視図(展開図)である。
【
図7】(A)は
図2(A)を簡略化した平面図、(B)~(E)はそれぞれ前記個室の変形例の構成を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら以下に説明する。
【0015】
図1は、本発明の個室を設けた共同住宅の一例の要部の平面図であり、本例の共同住宅では、隔壁方向に連結されて縦列1を構成する複数の個室Rと、隔壁方向に連結されて横列2を構成する複数の個室Rとを、廊下3を挟んで平面視略L型となるように配し、かつ、前記略L型の内側にできるスペースをリビング4としてある。なお、リビング4には、例えばソファやテーブルといった適宜の家具(据え置き型か可動型かは問わない)等を配することが考えられる。
【0016】
そして、
図1に示す本例の共同住宅は、上述したように、略L型に配する複数の個室Rを一つの群Gとして、単数階において、あるいは複数階にわたって複数の群Gを設けるものである。なお、
図1には、複数の群Gとして、群G1~G8を示してある。
【0017】
ここで、
図1に示す例では、各群Gにおける縦列1及び横列2の向きは敢えて統一しておらず、例えば、
図1において、群G1における縦列1及び横列2の向きを基準とした場合、群G2ではこれを上下に反転させてあり、群G3ではこれを左右に反転させてあり、群G6では180度回転させてあるとみることができる。加えて、各群Gの縦列1及び横列2を構成する個室Rの数も適宜に変更可能である。このように、各群Gにおける縦列1及び横列2の向き及び個室Rの数は適宜に変更可能であるので、設計プランの自由度を高めることも可能である。
【0018】
なお、群Gを構成する個室Rの数は、人的交流の促進の面から、例えば6~15室が好ましく、8~12室とするのがより好ましい。
【0019】
また、
図1には、本例の共同住宅(建物)において平面視長方形状を呈する部分を示してあり、本例の共同住宅はこの部分に、長手方向に延びる群Gの列を二つ(2列)設けてあり、群G1、G3、G5、G7からなる列と、群G2、G4、G6、G8からなる列とで、縦列1及び横列2の並べ方を対称とはせず、リビング4がいわばジグザグ状に繋がるようにしてある。こうした並べ方を採用することにより、各リビング4に対して満遍なく通風及び採光を確保することが容易となる。なお、上記のように平面視長方形状を呈する部分を有する共同住宅(建物)は、その全体の平面視が長方形状になっているものに限らず、例えば、その全体の平面視がL型になっているものや、中庭を有する額縁型になっているもの等を挙げることができる。
【0020】
一方、
図2~
図6に示すように、本例の個室Rは、個室Rの入口(建物内側の出入り口)5から室内側に向かって延びる通路部6と、通路部6の上方に配された寝台部7と、入口5からみて通路部6の左右の何れか一方に位置し、通路部6に連なるスペースS(にある床面)から寝台部7にアクセスするための昇降部8と、昇降部8の少なくとも一部の下方に設けられた収納部9とを有する。
【0021】
仮に、例えば寝台部7を低い位置に配してあり寝台部7の下方空間が通路部6として利用不可能な場合、寝台部7の横に通路部6となる空間を確保する必要が生じ、それだけ個室Rの間口(入口5からみたときの左右方向の幅)を、例えば寝台部7の短手方向の幅の約2倍以上となるように、大きくしなければならなくなる。
【0022】
しかし、寝台部7の下方空間を通路部6として利用可能とする本例の個室Rでは、斯かる利用が不可能な場合に比べ、個室Rの間口が狭くてもよく(例えば寝台部7の短手方向の幅の1.5倍以下であってもよく)、平面視における個室Rのミニマム化、ひいては略L型に配した複数の個室Rからなる群Gのミニマム化を図ることができ、配置プランの自由度の向上に資するとともに、1フロアに設置可能な個室Rの数を最大化し、階数の低減をも図ることが可能となる。
【0023】
そして、本例では、個室Rの内部に一台のロフトベッド(家具の一例)10を配することにより、上記通路部6、寝台部7、昇降部8及び収納部9を個室Rが有する状態となるようにしてある。
【0024】
すなわち、ロフトベッド10は、
図2(A)、
図3、
図4及び
図6に示すように、寝台部7の平面視における長辺に連なる位置に、この寝台部7より一段下がった踊り場11を有し、この踊り場11の長手方向の一端から下方に向かって梯子12が延びている。そして、この踊り場11と梯子12とが、通路部6に連なるスペースSから寝台部7にアクセスするための昇降部8を構成している。
【0025】
本例では、寝台部7の下方空間を通路部6として利用可能とするものであるため、寝台部7の高さ位置は一般的なロフトベッドの寝台部のそれよりも高くなり、この寝台部7に対して床から直接昇降しようとすると、人によってはその高さに起因する強い不安感を覚えることも懸念される。しかし、本例では、踊り場11の長手方向の幅を、寝台部7の長手方向の幅と略同一とし、また、踊り場11の短手方向の幅を、寝台部7の短手方向の幅の3分の1~2分の1程度とするのであって、このように踊り場11の面積がある分、踊り場11と寝台部7との高低差を比較的大きくしても(例えば梯子12の各段(踏ざん)の高さより大きくしても)使用者は両者11,7間の昇降を安心して行うことができる。そして、このことを利用して、踊り場11をなるべく低い位置(例えば一般的なロフトベッドの寝台部の高さと同等かそれより低い位置)に設けることにより、梯子12を用いたこの踊り場11への昇降も安心して行うことができる。すなわち、踊り場11は、寝台部7への昇降の安全性や安心感を大いに高めるものとなっている。
【0026】
そして、踊り場11の下方には、
図3、
図4及び
図6に示すように、収納部9としてのクローゼットと、机13とが設けられており、机13の上方には、照明用開口13aを介して下方に照明可能なデスクライト13bが配されている(
図2(B)、
図4参照)
【0027】
また、ロフトベッド10は、
図2(B)に示すように、複数の支柱14を有する。ここで、例えば平面視において踊り場11の無い長辺の両端に設けられる二本の支柱14A,14Bは、
図6に示すようにその下端どうしを繋いでもよいが、寝台部7において踊り場11側に設けられる支柱14と、その反対側に設けられる支柱14(図示例では支柱14A,14B)との下端どうしは繋がないようにする。なぜなら、このようにして繋ぐと、その繋いだ部分が通路部6の通行の邪魔になり、ひいては通路部6が形成されなくなるからであり、こうした通行の邪魔になるような部分を設けないのが好ましい。
【0028】
なお、本例では、複数の支柱14のうち、二本の支柱14Cは、梯子12を構成するものとなっている。また、複数の支柱14のうち、二本の支柱14Eはケーシング15によって隠蔽されており(
図2(B)参照)、このケーシング15内には分電盤16も設けられている。
【0029】
以上のように構成された個室Rは、平面視長方形状を呈し(
図1参照)、
図2(A)及び(B)に示すように、その長手方向の一端側には屋内(リビング4)側へと向かう扉(本例では引き戸)17が設けられ、他端側には屋外(ベランダ、バルコニー又はテラス)側へと向かう扉(本例では開き戸)18が設けられている。すなわち、各個室Rは、屋外側へと向かう扉18を入口(建物外側の出入り口)19に備え、各個室Rの外側にベランダ、バルコニー又はテラスといった屋外スペースが連なるようにしてあり、洗濯物の天日乾燥の行い易さ等の点で利便性を高めてある。
【0030】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0031】
本例の共同住宅内に、リビング4以外の共用スペース(バスルーム、トイレ、ランドリー、キッチン等)を設けてもよいのはもちろんである。
【0032】
図2(A)及び(B)、
図3の例の昇降部8は、入口5からみて通路部6の奥側に連なるスペースS(にある床面)から寝台部7にアクセス可能に構成してあるが、これに限らず、例えば
図3の梯子12を左側に寄せ(机13を無くすか幅狭とし)、通路部6(にある床面)から梯子12に直接アクセス可能となるように構成してもよい。この場合、入口5からみて通路部6の奥側に連なるスペースSを、他の家具の配置などに利用し易くなる。
【0033】
また、
図3に示す梯子12の代わりに階段を設けるようにしてもよく、この場合、階段をスペースS側に突出するように設けてもよいし、踊り場11の長手方向の長さを短くし、階段がスペースS側に突出しないように設けてもよい。
【0034】
図2(A)に示す個室Rにおける寝台部7、踊り場11、梯子12、入口(建物内側の出入り口)5及び入口(建物外側の出入り口)19の平面上の位置関係は、
図7(A)のように簡略化して示すことができる。そして、この
図7(A)の例では、ロフトベッド10を入口5に寄せて配置してあり、これにより、他人が入口5の扉17を開けたときに寝台部7に横たわっていても、その寝姿が入口5を通して室外に晒されにくくなっている。しかし、例えば、
図7(B)に示すように、ロフトベッド10を入口5から離して配してもよい。そして、この場合、例えば、踊り場11の長手方向の一端に梯子12、他端に滑落用のスロープ20を設け(梯子12、踊り場11及びスロープ20からなる昇降部8がすべり台となるように構成し)、踊り場11からスロープ20を介して素早く床面に降りることができるようにするといったことも可能である。
【0035】
また、
図7(A)の例では、寝台部7の平面視における長辺に連なる位置に踊り場11を設けてあるが、
図7(C)に示すように、寝台部7の平面視における短辺に連なる位置に踊り場11を設けてもよい。ただし、この場合、通路部6の通行を阻害しないように踊り場11及びこれにアクセスするための梯子12等を設けるのが好ましい。
【0036】
また、
図7(A)の例では、寝台部7の下方に寝台部7の長手方向に通過可能な通路部6を形成し、寝台部7の長手方向の一端側が入口5に向くようにロフトベッド10を配置してあるが、
図7(D)に示すように、この向きを平面視において90度回転し、寝台部7の短手方向の一端側が入口5に向くようにロフトベッド10を配置してもよい。この場合、寝台部7の下方に寝台部7の短手方向に通過可能な通路部6を形成すればよく、また、この通路部6の通行を阻害しないように踊り場11及びこれにアクセスするための梯子12等を設けるのが好ましい。
【0037】
図7(D)の例では、寝台部7の平面視における長辺に連なる位置に踊り場11を設けてあるが、
図7(E)に示すように、寝台部7の平面視における短辺に連なる位置に踊り場11を設けてもよく、この場合も、通路部6の通行を阻害しないように踊り場11及びこれにアクセスするための梯子12等を設けるのが好ましい。
【0038】
上記実施の形態では、個室Rの内部に一台のロフトベッド10を配することにより、通路部6、寝台部7、昇降部8及び収納部9を個室Rが有する状態となるようにしてあるが、これに限らず、例えば昇降部8の一部または全部を、個室Rの壁から突出した跳ね出し階段(片持ち階段)によって構成したり、寝台部7を跳ね出し部によって構成したりすることも考えられ、この場合、支柱14の本数を減らしたり小径化を図ったりすることも可能である。
【0039】
なお、本明細書で説明した変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1 縦列
2 横列
3 廊下
4 リビング
5 入口
6 通路部
7 寝台部
8 昇降部
9 収納部
10 ロフトベッド
11 踊り場
12 梯子
13 机
13a 照明用開口
13b デスクライト
14 支柱(14A~14E)
15 ケーシング
16 分電盤
17 扉
18 扉
19 入口
20 スロープ
G 群
R 個室
S スペース