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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】表示システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/88 20060101AFI20240628BHJP
   G01V 3/12 20060101ALI20240628BHJP
   G01S 7/04 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
G01S13/88 200
G01V3/12 B
G01S7/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019228318
(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公開番号】P2021096184
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰之
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-229931(JP,A)
【文献】特開2012-103212(JP,A)
【文献】特開2016-099125(JP,A)
【文献】特開平01-280277(JP,A)
【文献】特開平04-232489(JP,A)
【文献】特開2016-057235(JP,A)
【文献】特開平09-288188(JP,A)
【文献】特開2012-184939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-7/42
G01S 13/00-13/95
G01V 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上の線上を移動する地中レーダ装置が測定したデータに基づき過去に生成した画像に現れた検知対象物に応じた領域から特定されるとともに、前記地中レーダ装置が過去に上を移動した線と現在上を移動中の線との位置関係と、前記過去に生成した画像の前記検知対象物に応じた領域とに基づき、前記地中レーダ装置が測定中のデータに基づき現在生成中の画像における前記検知対象物が現れると推定される領域を表示する表示システム。
【請求項2】
前記過去に生成した画像は、前記地中レーダ装置が移動した複数の位置において測定したデータに基づき複数生成され、当該複数の位置の位置関係と、当該複数の画像の各々における前記検知対象物に応じた領域の位置関係と、に基づき、現在生成中の画像における前記検知対象物が現れると推定される領域を特定する
請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記地中レーダ装置が過去に上を移動した線と現在上を移動中の線との位置関係に基づき、現在生成中の画像における前記検知対象物が現れると推定される領域の大きさを特定する
請求項1又は2に記載の表示システム。
【請求項4】
前記現在生成中の画像において、前記検知対象物が現れると推定される領域と、過去に生成した画像に現れた検知対象物に応じた領域とが、重なる領域と重ならない領域とを、異なる態様で表示する
請求項1乃至のいずれか1項に記載の表示システム。
【請求項5】
前記現在生成中の画像において、前記検知対象物が現れると推定される領域と、過去に生成した画像に現れた検知対象物に応じた領域とを、当該領域間の距離又は重なり部分の量に応じた態様で表示する
請求項1乃至のいずれか1項に記載の表示システム。
【請求項6】
前記地中レーダ装置が測定したデータに基づき生成した画像を認識して検知対象物に応じた領域を特定する
請求項1乃至のいずれか1項に記載の表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中探査に用いる表示システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地中レーダ(GPR:Ground Penetrating Radar)装置は、電波を地中へ送信し、地中に存在する対象物からの反射波を測定してその対象物を検知・計測する装置である。一般に地中レーダ装置は、電波の送信方向を制御せず、装置そのものが地上を決められた線(以下、測線という)に沿って直進移動することで、送受信アンテナと対象物との相対距離を変化させて、対象物からの反射波を測定する。
【0003】
これら地中レーダ装置では、測定された反射波等から対象物の有無を判断することが困難な場合があり、利用者の判断を補助する仕組みが検討されている。
【0004】
特許文献1には、地中におけるエコー画像と、地表の凹凸が数値で表された凹凸情報とを取得し、凹凸情報を元に地表の凹凸を視覚化した凹凸視覚化画像を生成して、エコー画像ととともに1画面の中に表示する地中表示装置が記載されている。
【0005】
特許文献2には、プローブ波を一または複数の出力点から対象系に対して入射し、その反射波を複数の入力点のそれぞれにおいて検出し、検出された反射波の態様を表わす実測データを生成し、作業者が、生成された実測データに基づき、対象系における一または複数の物体及びこれを取り囲む媒質のそれぞれの空間占有態様及びプローブ波に対する応答特性を少なくとも含む複数の因子により定義される対象系の状態を推定して、その作業者による推定結果に基づき、複数の因子により定義される解析モデルを構築し、解析モデルにおいて、一または複数の出力点から対象系に対してプローブ波を仮想的に入射した際に、複数の入力点のそれぞれにおいて対象系から仮想的に検出される反射波の態様を表わす計算データを生成し、これを作業者が認識可能な形態で出力する状態推定支援方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-159686号公報
【文献】特開2018-84515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、例えば、地中に存在する埋設管等の対象物は、上述した測線に対し、必ずしも直交しているとは限らない。また、地中の土質は均一ではないため、対象物から反射波が得られない箇所が存在することや、本来一定であるはずの反射信号の大きさが一定にならないことがある。
【0008】
本発明の目的の一つは、地中レーダ装置が過去に測定したデータに基づき生成した画像の検知対象物に応じた領域を用いて、現在生成中の画像にその検知対象物が現れると推定される位置を利用者に示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、地上の線上を移動する地中レーダ装置が測定したデータに基づき過去に生成した画像に現れた検知対象物に応じた領域から特定されるとともに、前記地中レーダ装置が過去に上を移動した線と現在上を移動中の線との位置関係と、前記過去に生成した画像の前記検知対象物に応じた領域とに基づき、前記地中レーダ装置が測定中のデータに基づき現在生成中の画像における前記検知対象物が現れると推定される領域を表示する表示システムを、第1の態様として提供する。
【0010】
第1の態様の表示システムによれば、地中レーダ装置が過去に測定したデータに基づき生成した画像の検知対象物に応じた領域を用いて、現在生成中の画像にその検知対象物が現れると推定される位置を利用者に示すことができる。
また、第1の態様の表示システムによれば、測線どうしの間隔が狭い場合と広い場合とで、現在生成中の画像に表示する領域が変化する。
【0011】
第1の態様の表示システムにおいて、前記過去に生成した画像は、前記地中レーダ装置が移動した複数の位置において測定したデータに基づき複数生成され、当該複数の位置の位置関係と当該複数の画像の各々における前記検知対象物に応じた領域の位置関係と、に基づき、現在生成中の画像における前記検知対象物が現れると推定される領域を特定する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0012】
第2の態様の表示システムによれば、過去に上を移動した複数の線(測線)の位置関係と、そのそれぞれで特定した検知対象物の位置関係とを用いて、検知対象物が現れると推定される位置を、現在生成中の画像を見る利用者に示すことができる。
【0015】
第1乃至第のいずれかの態様の表示システムにおいて、前記地中レーダ装置が過去に上を移動した線と現在上を移動中の線との位置関係に基づき、現在生成中の画像における前記検知対象物が現れると推定される領域の大きさを特定する、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0016】
の態様の表示システムによれば、測線どうし間隔が広い程、現在生成中の画像に表示する領域が広くなる。
【0017】
第1乃至第のいずれかの態様の表示システムにおいて、前記現在生成中の画像において、前記検知対象物が現れると推定される領域と、過去に生成した画像に現れた検知対象物に応じた領域とが、重なる領域と重ならない領域とを、異なる態様で表示する、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0018】
の態様の表示システムによれば、過去に特定した領域が重なる部分が強調される。
【0019】
第1乃至第のいずれかの態様の表示システムにおいて、前記現在生成中の画像において、前記検知対象物が現れると推定される領域と、過去に生成した画像に現れた検知対象物に応じた領域とを、当該領域間の距離又は重なり部分の量に応じた態様で表示する、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0020】
の態様の表示システムによれば、過去に特定した領域の距離が近い程、又は、それらの領域の重なり部分が大きい程、それらの領域が強調される。
【0021】
第1乃至第のいずれかの態様の表示システムにおいて、前記地中レーダ装置が測定したデータに基づき生成した画像を認識して検知対象物に応じた領域を特定する、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0022】
の態様の表示システムによれば、検知対象物に応じた領域が画像から自動的に特定される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る表示システム9の構成の例を示す図。
図2】表示システム9の表示装置1及び地中レーダ装置2の各構成を示す図。
図3】測定DB121の例を示す図。
図4】測線位置表122の例を示す図。
図5】測線を説明するための概略図。
図6】領域データ123及び画像データ124の例を示す図。
図7】表示装置1が有するプロセッサ11の機能的構成の例を示す図。
図8】表示装置1の動作の流れの例を示すフロー図。
図9】表示態様が変更される領域を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<実施形態>
<表示システムの構成>
図1は、本発明の実施形態に係る表示システム9の構成の例を示す図である。表示システム9は、表示装置1と地中レーダ装置2とを有する。表示システム9は、地中レーダ装置2により検知された検知対象物、及び検知対象物が現れると推定される位置等をそれぞれ示す画像を生成し、表示装置1により表示するシステムである。図1に示す表示システム9は、表示装置1及び地中レーダ装置2をそれぞれ1つずつ有するが、これらの数はそれぞれ2以上であってもよい。
【0025】
<表示装置及び地中レーダ装置の構成>
図2は、表示システム9の表示装置1及び地中レーダ装置2の各構成を示す図である。
【0026】
表示システム9が有する地中レーダ装置2は、地中へ送信した電波の反射波を測定して、これに基づき地中に存在する対象物(以下、検知対象物ともいう)を検知する装置である。図2に示す地中レーダ装置2は、コントローラ21、送信部22、送信アンテナ23、受信アンテナ24、受信部25、距離計26、及び送受信ユニット27を有する。
【0027】
コントローラ21は、地中レーダ装置2の各構成を制御する制御装置である。送信部22は、例えば、インパルス信号やチャープ信号、ステップ周波数信号、符号化パルス信号、疑似雑音信号等、電波に乗せる信号を発生させる機器である。図2に示す送信部22は、チャープ信号を発生させる。送信アンテナ23は、送信部22により発生した信号を乗せた電波を地中に向けて送信するアンテナである。
【0028】
受信アンテナ24は、送信アンテナ23から送信された電波を対象物が反射した反射波を受信するアンテナである。受信部25は、受信アンテナ24が受信した反射波をデジタル信号に変換してコントローラ21に供給する機器である。
【0029】
コントローラ21は、受信部25から供給されるデジタル信号に基づいて、地中に存在する対象物を検知し、この対象物の深度を特定する。図2に示すコントローラ21は、反射波と送信波とのビート周波数(差周波数)から、反射波までの距離を検出する。このコントローラ21は、例えば、高速フーリエ変換(FFT:fast Fourier transform)や、ウェーブレット変換等の信号処理を行う。
【0030】
距離計26は、地中レーダ装置2が直進した距離(以下、直進距離ともいう)を計測する機器である。図2に示す距離計26は、いわゆるロータリエンコーダであり、地中レーダ装置2のタイヤを支えるシャフトの回転数を測定して、直進距離を計測する。なお、距離計26は、例えば光学式、超音波式、レーザ光線式等、各種の距離計を用いてもよい。
【0031】
距離計26は、計測した直進距離を示すデータをコントローラ21に供給する。コントローラ21は、距離計26から供給されるデータに基づいて、検知した検知対象物の地中における位置を特定する。
【0032】
送受信ユニット27は、表示装置1と情報のやり取りをする機器である。送受信ユニット27は、例えば、表示装置1から制御信号を受信して、これをコントローラ21に供給する。
【0033】
また、例えば、送受信ユニット27は、受信部25から供給されたデジタル信号に基づいてコントローラ21が特定した対象物の深度等の情報と、距離計26が計測した直進距離の情報と、の組を含む「測定データ」を表示装置1に送信する。
【0034】
図2に示すコントローラ21は、距離計26が計測した直進距離を横軸に、受信部25から供給されたデジタル信号に基づいて計測された深度とその深度における振幅の強さを縦軸にした画像を生成する。図2に示す送受信ユニット27は、コントローラ21が生成した画像を示す画像データを、上述した測定データとともに表示装置1に送信する。
【0035】
表示システム9が有する表示装置1は、ノートパソコンや、スマートフォン、タブレットPC等であり、表示システム9の利用者が操作するコンピュータ端末装置である。図2に示す表示装置1は、プロセッサ11、メモリ12、通信部13、操作部14、及び表示部15を有する。これらの構成は、例えばバスで、互いに通信可能に接続されている。
【0036】
プロセッサ11は、メモリ12に記憶されているコンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)を読出して実行することにより表示装置1の各部を制御する。プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。
【0037】
通信部13は、有線又は無線により表示装置1を、地中レーダ装置2に通信可能に接続する通信回路である。
【0038】
操作部14は、各種の指示をするための操作ボタン、キーボード、タッチパネル、マウス等の操作子を備えており、操作を受付けてその操作内容に応じた信号をプロセッサ11に送る。
【0039】
表示部15は、液晶ディスプレイ等の表示画面を有しており、プロセッサ11の制御の下、地中レーダ装置2から送信された画像を表示する。表示画面の上には、操作部14の透明のタッチパネルが重ねて配置されてもよい。
【0040】
メモリ12は、プロセッサ11に読み込まれるオペレーティングシステム、各種のプログラム、データ等を記憶する記憶手段である。メモリ12は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を有する。なお、メモリ12は、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有してもよい。
【0041】
また、メモリ12は、測定DB121、測線位置表122、領域データ123、及び画像データ124を記憶する。
【0042】
<測定データの構成>
図3は、測定DB121の例を示す図である。測定DB121は、地中レーダ装置2が測定したデータを、その測定回ごとに記憶するデータベースである。図3に示す測定DB121は、測定回リスト1211と、測定データ表1212と、を有する。
【0043】
地中レーダ装置2は、複数の測線のそれぞれについて、その始点から終点までを直進移動して、その各測線の下に存在する対象物を検知する。測定回リスト1211は、地中レーダ装置2の複数回にわたって測定する回ごとの識別情報を記憶するリストである。
【0044】
測定データ表1212は、地中レーダ装置2が測定した直進距離と、その直進距離を進んだときに測定した反射波に基づく信号(反射波信号という)と、を対応付けて記憶する表である。図3に示す測定データ表1212は、測定回リスト1211に含まれる測定回の識別情報ごとに、それぞれ対応付けられる。この測定データ表1212は、対応する測定回で測定された直進距離及び反射波信号を記憶する。
【0045】
<測線位置表の構成>
図4は、測線位置表122の例を示す図である。測線位置表122は、地中レーダ装置2が測定する測定回ごとに、直進移動する測線どうしの基準線からの間隔を記憶する表である。図4に示す測線位置表122は、測定回の識別情報と、その測定回における測線と基準線との間隔とを対応付けて記憶する。基準線は、例えば、1回目の測線である。
【0046】
例えば、図4に示す測線位置表122において、1回目の測定回「M1」の測線は、基準線と一致するから、間隔は「0」である。また、この測線位置表122において、2回目の測定回「M2」の測線は、基準線から500ミリメートルだけ、この基準線と直交する方向に平行移動した位置にある。そのため、測定回「M2」の測線に対応する間隔は「500」である。
【0047】
なお、図4に示す測線位置表122は、測線位置表122の一例に過ぎない。測線位置表122は、例えば、各測線の基準線に対する間隔のほか、前回の測線に対する間隔を記憶してもよい。また、測線位置表122は、これら間隔のほか、今回の測線の開始位置や終了位置の、前回のそれとの差異を記憶してもよい。また、測線位置表122は、各測線の開始位置や終了位置を示す、緯度、経度等の絶対座標をそれぞれ記憶してもよい。すなわち、測線位置表122は、地中レーダ装置が過去に上を移動した線と現在上を移動中の線との位置関係を記憶する。
【0048】
図5は、測線を説明するための概略図である。図5には、地表Gの上(すなわち、地上)の複数の線上を順次移動する地中レーダ装置2が示されている。図5において、地中レーダ装置2等は、xyz右手系座標空間で示されている。
【0049】
図5に示す地中レーダ装置2は、+y方向に伸びる複数の測線上を直進移動しながら地中、すなわち、地表Gよりも-z方向に向けて電波を送信し、反射波を測定する。そして図5に示す地中レーダ装置2は、1つの測線で測定を終えたら、+x方向に決められた間隔だけ平行移動して、次の測線上を+y方向に直進移動しながら地中を測定する。図5に示す地中レーダ装置2は、測定回M1→M2→M3→M4→M5の順に、それぞれの測線に沿って直進移動して、地中を測定する。
【0050】
図5に示す通り、地中には、例えば検知対象物J1、J2が存在する。検知対象物J1、J2は、例えば、いわゆる埋設管である。図5に示す検知対象物J1は、x軸方向に沿った配置で埋設されている。なお、地中に埋設されている対象物は必ずしもx軸方向に沿った配置で埋設されているとは限らない。例えば図5に示す検知対象物J2は、x軸方向に対して斜めの方向に伸びている。
【0051】
<領域データ及び画像データの例>
図6は、領域データ123及び画像データ124の例を示す図である。図6には、1回の測定回で地中レーダ装置2が測定した測定データに基づいて生成される画像が示されている。この画像は、横軸が地中レーダ装置2の直進距離に対応しており、縦軸が地中レーダ装置2からの深さ方向(-z方向)の距離、すなわち深度に対応している。深度は、反射波に含まれる信号の、送信からの経過時間に応じて求められる。そして、この画像における濃淡は、反射波の振幅の強弱を示している。
【0052】
地中レーダ装置2から送信された電波は、地中に存在する各種の対象物により反射される。埋設管等の対象物は、周囲の土質とは異なる組成であって、ほぼ均一の組成の材質で形成されている。こういった対象物により電波が反射すると、その反射波は、その輪郭に沿って反射する。そのため、地中に埋設管等の検知対象物が存在していると、表示装置1は、図6に示す画像のように、受信した測定データから、電波の送信された側の輪郭に沿った形状の濃淡を示す画像を生成する。この濃淡のパターンは、埋設管等が存在しない領域と異なったパターンである。
【0053】
図6に示す領域データ123は、上述した画像において他と異なるパターンを示した領域を矩形で囲んだマーク(以下、矩形マークともいう)として表現される。この矩形マークの位置は、利用者による画像の目視によって特定されてもよい。例えば、利用者は、画像を目視して他と異なるパターンを示すパターンが現れた位置を特定し、特定したその位置を、操作部14を介して表示装置1に指定する。このとき表示装置1は、利用者から指定された位置に矩形マークを表示すればよい。
【0054】
また、この矩形マークは、プロセッサ11が上述した画像を認識することにより、特定されてもよい。この場合、プロセッサ11は、地中レーダ装置が測定したデータに基づき生成した画像を認識して検知対象物に応じた領域を特定する。
【0055】
表示装置1のプロセッサ11は、特定された領域データ123が示す領域を、上述の、地中レーダ装置2が生成した画像に重ね合わせ、得られた画像(すなわち、合成画像)を示す画像データ124を生成する。この画像データ124は、表示部15に供給される。そして、この画像データ124により示される合成画像は、液晶ディスプレイ等に表示される。利用者は、表示部15に表示された合成画像を確認して、反射波が示す濃淡と、その濃淡のうち検知対象物が存在すると推定された領域と、を認識する。
【0056】
<表示装置の機能的構成>
図7は、表示装置1が有するプロセッサ11の機能的構成の例を示す図である。プロセッサ11は、メモリ12からプログラムを読出して実行することにより、取得部111、特定部112、判定部113、変更部114、及び表示制御部115として機能する。
【0057】
取得部111は、地中レーダ装置2から、測定データと、その測定データに基づいてコントローラ21において生成された画像を示す画像データと、を受信した通信部13から、これらを取得する。取得部111は、メモリ12の測定DB121に測定データを記憶する。
【0058】
特定部112は、取得部111が取得した画像データにより示される画像のうち、他と異なるパターンを検出する。この検出は、例えば、利用者が目視により特定した位置を入力することにより、行われてもよい。また、この検出は、プロセッサ11が、画像データに対して画像認識処理を実行することにより、行われてもよい。
【0059】
そして、特定部112は、検出されたこのパターンを囲む領域を、検知対象物に応じた領域として特定して、領域データ123に記憶する。
【0060】
特定部112は、前回の測定回で特定され、記憶された領域データ123が存在する場合に、その測定回の測線と、現在の測線との間隔を、測線位置表122から読出した間隔に基づいて算出する。そして、特定部112は、算出したこの間隔を用いて、前回の領域から今回の領域を推定する。
【0061】
特定部112は、例えば、算出した間隔が大きいほど、領域の大きさが大きくなるように、今回の領域を推定(特定)する。つまり、この特定部112は、地中レーダ装置が過去に上を移動した線と現在上を移動中の線との位置関係に基づき、現在生成中の画像の検知対象物に応じた領域の大きさを特定する。
【0062】
また、過去に複数回にわたって測定が行われている場合、特定部112は、それら複数の測定回における測線の位置関係と、各測定回で生成された画像の各々における検知対象物に応じた領域との位置関係に基づいて、今回の領域を推定してもよい。
【0063】
例えば、図5に示す測定回「M3」の測線を地中レーダ装置2が直進移動しているとき、メモリ12の測定DB121には、測定回「M1」と測定回「M2」とで、それぞれ測定された測定データが記憶されている。また、このとき、メモリ12には、測定回「M1」と測定回「M2」とで、それぞれ特定されたの領域データ123が記憶されている。
【0064】
ここで、図4及び図5に示す通り、測定回「M2」における測線が、測定回「M1」における測線から、+x方向に500ミリメートル平行移動したものであり、さらに、測定回「M3」における測線が、測定回「M1」における測線から、+x方向に1000ミリメートル平行移動したものであるとする。この場合、測定回「M1」で特定された領域と、測定回「M2」で特定された領域との、yz平面における位置が移動していなければ、測定回「M3」で特定されるはずの領域も、これらの領域から移動していない、と推定される。
【0065】
この場合、特定部112は、測定回「M2」で特定された領域を、そのまま加工せずに、測定回「M3」で特定されるはずの領域として推定する。
【0066】
一方、yz座標平面において、測定回「M2」で特定された領域が、測定回「M1」で特定された領域から、或る方向に或る距離だけ移動している場合、測定回「M3」で特定されるはずの領域は、測定回「M2」で特定された領域から、同じ方向に同じ距離だけ移動している、と推定される。なぜなら、図5に示す検知対象物J1,J2は、直線状に伸びる埋設管等であり、1回目と2回目とで特定される領域が移動したということは、対応する検知対象物が、xyz座標空間において、検知対象物J2のようにx軸に対して傾いて配置されていると考えられるからである。
【0067】
この場合、特定部112は、測定回「M2」で特定された領域を、上述した方向に、上述した距離だけ移動させる加工をして、加工後の領域を、測定回「M3」で特定されるはずの領域として推定する。
【0068】
つまり、この特定部112は、地中レーダ装置が過去に上を移動した複数の線の位置関係と、これらの複数の線の上を移動して地中レーダ装置が測定したデータに基づき生成した画像の各々における検知対象物に応じた領域の位置関係と、に基づき、現在生成中の画像の検知対象物に応じた領域を特定する。
【0069】
また、例えば、測定回「M3」における測線が、測定回「M1」における測線から、+x方向に750ミリメートル平行移動したものであるとする。つまり、この場合、測定回「M3」における測線は、測定回「M2」における測線から、+x方向に250ミリメートル平行移動したものである。この場合、測定回「M2」で特定された領域が、測定回「M1」で特定された領域から、或る方向に或る距離だけ移動していると、測定回「M3」で特定されるはずの領域は、測定回「M2」で特定された領域から、同じ方向に上述した距離の半分の距離だけ移動している、と推定される。なぜなら、測定回「M3」、及び測定回「M2」の各測線の間隔である250ミリメートルは、測定回「M2」、及び測定回「M1」の各測線の間隔である500ミリメートルの半分だからであり、これらの測線で特定される領域どうしの間隔も、半分になると考えられるからである。
【0070】
この場合、特定部112は、測定回「M2」で特定された領域を、上述した方向に、上述した距離の半分の距離だけ移動させる加工をして、加工後の領域を、測定回「M3」で特定されるはずの領域として推定する。
【0071】
つまり、この特定部112は、地中レーダ装置が過去に上を移動した線と現在上を移動中の線との位置関係と、地中レーダ装置が過去に測定したデータに基づき生成した画像の検知対象物に応じた領域とに基づき、現在生成中の画像の検知対象物に応じた領域を特定する。
【0072】
判定部113は、特定部112が、現在生成している画像から特定した領域と、過去に生成した画像から特定した領域と、を比較する。そして、それらの領域が決められた条件を満たすか否か判定する。判定部113は、それらの領域が上述した条件を満たす、と判定するとき、これらの領域が、共通の検知対象物に応じたものであると判定する。
【0073】
変更部114は、判定部113が、現在の領域と過去の領域とが、共通の検知対象物に応じたものでない、と判定した場合に、特定部112で特定された現在の領域を、そのまま画像データ124に合成する。
【0074】
また、変更部114は、判定部113が、現在の領域と過去の領域とが、共通の検知対象物に応じたものである、と判定した場合に、それらの領域の表示態様を、それ以外の領域と異なるように変更して、画像データ124に記憶する。
【0075】
表示制御部115は、画像データ124が示す画像を表示部15に表示する。変更部114によって、現在の領域の表示態様が変更されている場合、表示制御部115は、表示態様が変更されたその領域を含む画像を表示部15に表示する。つまり、表示制御部115は、地上の複数の線上を順次移動する地中レーダ装置が過去に測定したデータに基づき生成した画像の検知対象物に応じた領域から特定される、現在生成中の画像の検知対象物に応じた領域を表示する。
【0076】
例えば、判定部113は、地中レーダ装置2が現在生成している画像から特定した領域と、過去に生成した画像から特定した領域とが重なっているか否かを判定する。そして、判定部113は、これらの領域が重なっている(すなわち、2つの領域に重複部分が存在するという条件を満たす)と判定する場合、これらの領域が、共通の検知対象物に応じたものであると判定する。
【0077】
この場合、変更部114は、例えば、現在の領域と過去の領域とが重なる部分を強調するように、その表示態様を変更する。そして、表示制御部115は、変更後の画像データ124により示される画像を表示部15に表示させる。
【0078】
すなわち、この場合のプロセッサ11は、地中レーダ装置が過去に複数の線の上を移動して測定したデータに基づき生成した画像の各々における検知対象物に応じた領域が重なる領域と重ならない領域とを、現在生成中の画像において異なる態様で表示する。
【0079】
<表示システムの動作>
図8は、表示システム9の動作の流れの例を示すフロー図である。表示装置1のプロセッサ11は、地中レーダ装置2から通信部13を介して、測定回の識別情報を含む、測定の開始を示す信号を取得し、今回の測定が初回の測定であるか否かを判定する(ステップS101)。
【0080】
今回の測定が初回の測定である、と判定する場合(ステップS101;YES)、プロセッサ11は、処理をステップS105に進める。一方、今回が初回の測定ではない、と判定する場合(ステップS101;NO)、プロセッサ11は、測線位置表122を参照して、前回の測線と、今回の測線との位置関係を特定し(ステップS102)、特定した位置関係に応じて前回の領域を加工する(ステップS103)。
【0081】
そして、プロセッサ11は、ステップS103で加工した後の、前回の領域を表示部15に表示させ(ステップS104)、その後にステップS105に進む。
【0082】
次に、プロセッサ11は、地中レーダ装置2から通信部13を介して、測定データと画像データとを取得し(ステップS105)、画像データが示す画像の検知対象物に応じた領域を特定する(ステップS106)。
【0083】
そして、プロセッサ11は、ここでまた、今回の測定が初回の測定であるか否かを判定する(ステップS107)。今回の測定が初回の測定ではない、と判定する場合(ステップS107;NO)、プロセッサ11は、前回と今回の領域を比較して、それらの内容に応じて、今回の領域の表示態様を変更する(ステップS108)。一方、今回の測定が初回の測定である、と判定する場合(ステップS107;YES)、プロセッサ11は、ステップS108の処理を行わずに処理を終了する。
【0084】
図9は、表示態様が変更される領域を説明するための図である。図9(a)に示す画像は、図6に示した画像の一部を拡大した図である。表示装置1のプロセッサ11は、前回の測定で生成された画像から、検知対象物に応じた領域を特定し、図9(a)に破線で示す通り、表示部15に表示させる。そして、プロセッサ11は、この領域が示す領域データ123aをメモリ12に記憶する。
【0085】
また、プロセッサ11は、今回の測定で生成された画像から、検知対象物に応じた領域を特定し、図9(a)に実線で示す通り、表示部15に表示させる。そして、プロセッサ11は、この領域が示す領域データ123bを、メモリ12に記憶された領域データ123aと比較する。
【0086】
プロセッサ11は、過去の領域データ123aが示す領域と、現在の領域データ123bが示す領域と、が重複する部分が存在しているか否かを判定する。そして、プロセッサ11は、重複している部分があると判定する場合、この部分を他の部分よりも強調するように表示部15に表示させる。
【0087】
図9(b)に示す強調領域Rは、過去の領域データ123aが示す領域と、現在の領域データ123bが示す領域と、が重複する部分であり、その内部は、例えば、他の領域と異なる色や、ハッチング等によって塗りつぶされる。強調領域Rは、測定データから生成された画像を利用者が透過して見られるように、所定の透過率で、その画像と合成されることが望ましい。
【0088】
なお、プロセッサ11は、図9(c)に示す通り、過去の領域データ123aが示す領域、及び、現在の領域データ123bが示す領域、のいずれかに属する領域を、強調領域Rとしてもよい。すなわち、表示装置1は、過去の領域データ123aが示す領域と、現在の領域データ123bが示す領域と、が重複する部分を有している場合に、それらの積集合に相当する領域のほか、それらの和集合に相当する領域を、他の領域と異なる態様で表示してもよい。
【0089】
以上、説明した動作により、表示システム9は、地中レーダ装置2が過去に測定したデータに基づき生成した画像の検知対象物に応じた領域を用いて、現在生成中の画像にその検知対象物が現れると推定される領域を利用者に表示する。利用者は、推定された領域の位置を測定中に確認することができ、測定データから生成される画像と見比べて、例えば、再測定の要否を判断することができる。
【0090】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例は組み合わされてもよい。
【0091】
<1>
上述した実施形態において、表示装置1のプロセッサ11は、過去の領域データ123aが示す領域、及び、現在の領域データ123bが示す領域に、「重複部分が存在する」という条件を満たす、と判定する場合、これら2つの領域が、共通の検知対象物に応じたものであると判定していたが、条件はこれに限られない。例えば、2つの領域の距離が閾値未満である、という条件を満たすと判定する場合に、プロセッサ11は、これら2つの領域が、共通の検知対象物に応じたものであると判定してもよい。
【0092】
<2>
上述した実施形態において、強調領域Rの表示態様は、他の領域と異なる色やハッチング等で塗りつぶされる、という態様であったが、これに限られない。また、強調領域Rの表示態様は、予め定められたものに限られない。
【0093】
例えば、プロセッサ11は、過去の領域データ123aが示す領域と、現在の領域データ123bが示す領域と、が重複する部分が大きい程、他の領域との色差の大きい色で、強調領域Rを塗りつぶしてもよい。また、過去の領域データ123aが示す領域と、現在の領域データ123bが示す領域と、が近い程、これらの領域を塗りつぶす色の輝度を上げてもよい。
【0094】
また、強調領域Rは、3つ以上の領域に基づいて決められてもよい。例えば、プロセッサ11は、過去の2以上の測定回で特定された領域と、現在の測定回で特定された領域と、が重複する部分を強調領域Rとして決定し、この強調領域Rを他の領域と異なる態様で表示部15に表示させてもよい。
【0095】
すなわち、この場合、表示装置1は、地中レーダ装置が過去に複数の線の上を移動して測定したデータに基づき生成した画像の各々における検知対象物に応じた領域を、現在生成中の画像において、これらの領域間の距離又は重なり部分の量に応じた態様で表示する。
【0096】
<3>
上述した実施形態において、プロセッサ11は、地中レーダ装置2から通信部13を介して、測定データと、その測定データに基づいてコントローラ21において生成された画像を示す画像データと、を取得する取得部111として機能していたが、取得部111の機能はこれに限られない。例えば、取得部111は、地中レーダ装置2から画像データを取得する場合、測定データを取得しなくてもよい。
【0097】
また、プロセッサ11は、地中レーダ装置2から測定データを取得する場合、この測定データに基づいて、直進距離を横軸に、反射波信号が示す深度とその深度における振幅の強さを縦軸にした画像を生成し、この画像を示す画像データを生成してもよい。この場合、取得部111は、地中レーダ装置2から画像データを取得しなくてもよい。
【0098】
<4>
表示装置1のプロセッサ11によって実行されるプログラムは、磁気テープ及び磁気ディスク等の磁気記録媒体、光ディスク等の光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリ等の、コンピュータ装置が読取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供し得る。また、このプログラムは、インターネット等の通信回線経由でダウンロードされてもよい。なお、上述したプロセッサ11によって例示した制御手段としてはCPU以外にも種々の装置が適用される場合があり、例えば、専用のプロセッサ等が用いられる。
【符号の説明】
【0099】
1…表示装置、11…プロセッサ、111…取得部、112…特定部、113…判定部、114…変更部、115…表示制御部、12…メモリ、121…測定DB、1211…測定回リスト、1212…測定データ表、122…測線位置表、123、123a、123b…領域データ、124…画像データ、13…通信部、14…操作部、15…表示部、2…地中レーダ装置、21…コントローラ、22…送信部、23…送信アンテナ、24…受信アンテナ、25…受信部、26…距離計、27…送受信ユニット、9…表示システム、J1…検知対象物、J2…検知対象物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9