(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】レーザ測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/497 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
G01S7/497
(21)【出願番号】P 2020010468
(22)【出願日】2020-01-27
【審査請求日】2022-11-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 政光
(72)【発明者】
【氏名】浜津 一信
(72)【発明者】
【氏名】曽根 裕希子
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-173319(JP,A)
【文献】特開2016-194639(JP,A)
【文献】特開2017-003541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
17/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を照射し、照射したレーザ光の測定対象物からの反射光を受光する光学機構を収容し、窓部を介してレーザ光の照射と反射光の受光を行う回転部と、
前記回転部を回転可能に支持する固定部と、
前記固定部に設けられ、前記固定部の前記回転部側の端部に気流の吹き出し口を有し、前記固定部の前記回転部とは反対側の端部に空気の取り
込み口を有
し、レーザ測距装置の移動によって生成された気流の流速を
、流路断面積の変化によって増大させて前記窓部に吹き付ける第2のダクト部と、を備えた
ことを特徴とするレーザ測距装置。
【請求項2】
レーザ光を照射し、照射したレーザ光の測定対象物からの反射光を受光する光学機構を収容し、窓部を介してレーザ光の照射と反射光の受光を行う回転部と、
前記回転部を回転可能に支持する固定部と、
前記回転部の外周に沿って設けられ、前記回転部の回転によって前記回転部外部の空気から生成された気流の流速を、流路断面積の変化によって増大させて前記窓部に吹き付ける第1のダクト部と、
前記固定部に設けられ、前記固定部の前記回転部側の端部に気流の吹き出し口を有し、前記固定部の前記回転部とは反対側の端部に空気の取り
込み口を有
し、レーザ測距装置の移動によって生成された気流の流速を
、流路断面積の変化によって増大させて前記窓部に吹き付ける第2のダクト部を備えた
ことを特徴とす
るレーザ測距装置。
【請求項3】
前記固定部は、外周部に互いに独立して設けられた複数の前記第2のダクト部を有する
ことを特徴とする請求項
1または請求項
2記載のレーザ測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ光を用いて測定対象物との距離を測定するレーザ測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ測距装置は、測定領域へレーザ光を照射し、測定領域へ照射されたレーザ光の測定対象物からの反射光を利用することにより、測定対象物までの距離を測定する。また、レーザ測距装置には、レーザ光の照射と反射光の受光を行う光学機構が収容された回転部と、回転部を回転可能に保持する固定部とを備えるものがある。回転部を回転させた状態でレーザ光の照射と反射光の受光を行うことにより、レーザ測距装置周辺の広範囲な測定が可能である。
【0003】
また、例えば、特許文献1には、レーザ光の照射と反射光の受光を行う光学機構が収容された透明なフードと、フードに付着した汚れを除去する汚れ自動除去装置を備えたレーザ測距装置が記載されている。特許文献1に記載されたレーザ測距装置では、光学機構を回転させる回転駆動部がフードの内側に収容されており、光学機構をフードの内側で回転させながら、レーザ光の照射とその反射光の受光が行われる。
【0004】
汚れ自動除去装置は、周囲の空気を圧縮するエアコンプレッサ、圧縮空気を蓄えるためのタンクおよび圧縮空気をフードの表面へ吹き付ける複数のノズルを有する。レーザ測距装置によってフードに対する汚れの付着が検出されると、汚れ自動除去装置は、エアコンプレッサによって生成された圧縮空気をタンクに蓄え、タンクに蓄えられた高圧の圧縮空気をノズルによって一定のタイミングでフードの表面に吹き付ける。これにより、フードの汚れが除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のレーザ測距装置は、照射したレーザ光とその反射光とが通過する窓部(例えば、フード)に付着した、塵、埃または泥といった異物を除去するための専用の装置が必要であり、この装置を動かすための新たな動力源が必要であるという課題があった。
【0007】
本開示は上記課題を解決するものであり、新たな動力源を用いずに、照射したレーザ光とその反射光とが通過する窓部に異物が付着することを防止できるレーザ測距装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るレーザ測距装置は、レーザ光を照射し、照射したレーザ光の測定対象物からの反射光を受光する光学機構を収容し、窓部を介してレーザ光の照射と反射光の受光を行う回転部と、回転部を回転可能に支持する固定部と、固定部に設けられ、固定部の回転部側の端部に気流の吹出口を有し、固定部の回転部とは反対側の端部に空気の取り込み口を有し、レーザ測距装置の移動によって生成された気流の流速を、流路断面積の変化によって増大させて窓部に吹き付ける第2のダクト部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、第1のダクト部が、回転部の回転によって生成された気流の流速を流路断面積の変化によって増大させて窓部に吹き付けるので、窓部の近傍に存在する異物が除去される。これにより、本開示のレーザ測距装置は、新たな動力源を用いずに、照射したレーザ光とその反射光とが通過する窓部に異物が付着することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係るレーザ測距装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2Aは、実施の形態1に係るレーザ測距装置を示す正面図であり、
図2Bは、
図2Aのレーザ測距装置をX-X線で切った断面を示す断面矢示図であり、
図2Cは、
図2Aのレーザ測距装置をY1-Y1線で切った断面を示す断面矢示図であり、
図2Dは、
図2Aのレーザ測距装置をY2-Y2線で切った断面を示す断面矢示図である。
【
図3】ダクト部が破線で記載された回転部を示す斜視図である。
【
図4】仮想的に展開したダクト部の概要を示す概要図である。
【
図5】
図5Aは、実施の形態2に係るレーザ測距装置を示す斜視図であり、
図5Bは、実施の形態2におけるダクト部を破線で記載したレーザ測距装置を示す斜視図であり、
図5Cは、
図5Bのダクト部における空気の流れを示す平面図である。
【
図6】実施の形態2に係るレーザ測距装置を搭載した無人航空機を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るレーザ測距装置1を示す斜視図である。レーザ測距装置1は、レーザ光を用いて測定対象物までの距離を測定する装置であり、
図1に示すように、回転部2および固定部3を備える。回転部2は、回転軸部4を中心として、
図1に示す矢印方向に回転する。回転部2の筐体の一部には窓部5が設けられ、当該筐体の内部には光学機構6が収容されている。回転部2の筐体は、遮光性の材料によって構成され、外部の環境光を遮光する遮光フードとして機能する。また、回転部2の筐体には、ダクト部7が形成されている。
【0012】
固定部3は、回転部2を回転可能に支持する。固定部3の筐体には、例えば、回転部2を回転させる回転力を発生するモータを含む回転駆動部、回転駆動部を制御する駆動制御回路、光学機構6によるレーザ光の照射と反射光の受光を制御する測定制御回路、および遠隔操作装置などの外部装置との間で通信を行う通信回路が収容されている。レーザ測距装置1は、固定部3を介して取付箇所に取り付けられる。例えば、レーザ測距装置1が天吊り型である場合には、固定部3が、天井部分に取り付けられる。
【0013】
回転部2は、例えば、1rps(rotations per second)程度の高速で回転しながら、レーザ光の照射と反射光の受光を行う。窓部5は、レーザ光を透過し環境光を遮断する硬質な材料によって構成された平板状の部材である。光学機構6は、窓部5を介してレーザ光の照射および反射光の受光を行う。光学機構6は、回転部2の外部へレーザ光を照射し、照射したレーザ光の測定対象物からの反射光を受光する。光学機構6には、レーザ光を発光する発光素子、反射光を受光する受光素子、反射ミラーおよびレンズを含む光学部材、発光素子および受光素子を動作させる回路基板が含まれる。
【0014】
図2Aは、レーザ測距装置1を示す正面図である。また、
図2Bは、レーザ測距装置1を、
図2AのX-X線で切った断面を示す断面矢示図であり、回転部2に収容された光学機構6の記載が省略されている。
図2Cは、レーザ測距装置1を、
図2AのY1-Y1線で切った断面を示す断面矢示図であり、
図2Dは、レーザ測距装置1を、
図2AのY2-Y2線で切った断面を示す断面矢示図である。
図3は、ダクト部7が破線で記載された回転部2を示す斜視図である。
図4は、仮想的に展開したダクト部7の概要を示す概要図である。
【0015】
図2Aおよび
図2Bに示すように、ダクト部7は、回転部2における窓部5のY方向に沿った一方側に空気の取り込み口7aを有し、窓部5のY方向に沿った他方側に気流の吹き出し口7bを有した空気流路を形成する第1のダクト部である。この空気流路は、
図2Bおよび
図3に示すように、回転部2の筐体における、回転軸部4周りの外周に沿って形成されている。これにより、回転軸部4を中心に回転部2が高速回転すると、取り込み口7aから取り込まれた空気によって上記空気流路に気流が生成される。
【0016】
図2Cに示すように、ダクト部7における、取り込み口7a、内壁部7cおよび内壁部7dを含む流路部は、X方向に沿った流路幅が徐々に狭まっている。当該流路部は、X方向に沿った流路幅が最も狭まった部分で流路部7eに繋がっている。流路部7eは、
図2Bに示すように、回転部2の筐体における窓部5とは反対側の外周面側に設けられた流路部である。流路部7eは、
図2Dに示すように、内壁部7f、内壁部7gおよび吹き出し口7bを含む流路部に繋がっている。当該流路部におけるX方向に沿った流路幅は、吹き出し口7bに向かうに連れて徐々に狭まっている。
【0017】
ダクト部7は、
図2B、
図2Cおよび
図2Dに示すように流路幅が狭まるので、
図4に示すように、空気の取り込み口7aの流路断面積をS1とし、流路部7eの流路断面積をS2とし、吹き出し口7bの流路断面積をS3とした場合に、流路断面積S1からS3へ徐々に減少する。
図4においては、気流の流速が矢印の長さで示されている。例えば、取り込み口7aにおける矢印の長さは最も短く、流路部7eから吹き出し口7bへ向かうにつれて長くなっている。ダクト部7における流路断面積の変化に伴い、回転部2の回転によって生成された気流の流速は増加し、流速が最も増加した気流が窓部5に吹き付けられる。これにより、レーザ測距装置1は、新たな動力源を用いることなく、窓部5に異物が付着することを防止できる。
【0018】
なお、レーザ測距装置1は、ダクト部7における取り込み口7aと吹き出し口7bとに開閉式のカバーを備えてもよい。例えば、雨天に水滴がダクト部7に浸入しないように、取り込み口7aおよび吹き出し口7bにおけるカバーを閉める。カバーは、メッシュ状の部材を使用してもよい。この場合、水滴の浸入がメッシュによって防がれるので、取り込み口7aおよび吹き出し口7bに常にカバーが設けられた構造であってもよい。
【0019】
以上のように、実施の形態1に係るレーザ測距装置1は、窓部5を介してレーザ光の照射と反射光の受光を行う回転部2と、回転部2を回転可能に支持する固定部3と、回転部2の回転によって生成された気流の流速を流路断面積の変化によって増大させて窓部5に吹き付けるダクト部7を備える。ダクト部7が、回転部2の回転によって生成された気流の流速を流路断面積の変化によって増大させて窓部5に吹き付けるので、窓部5に存在する異物が除去される。これにより、レーザ測距装置1は、新たな動力源を用いず、窓部5に異物が付着することを防止できる。
【0020】
実施の形態2.
図5Aは、実施の形態2に係るレーザ測距装置1Aを示す斜視図であり、
図5Bは、ダクト部8を破線で記載したレーザ測距装置1Aを示す斜視図であり、
図5Cは、ダクト部8における空気の流れを示す平面図である。
図6は、レーザ測距装置1Aを搭載した無人航空機(UAV)9を示す斜視図である。レーザ測距装置1Aは、レーザ光を用いて測定対象物までの距離を測定する装置であり、
図5Aに示すように回転部2および固定部3Aを備えている。
【0021】
回転部2は、回転軸部4を中心として回転する。回転部2の筐体の一部には、窓部5が設けられ、当該筐体の内部には光学機構6が収容されている。回転部2の筐体は、遮光性の材料によって構成され、外部の環境光を遮光する遮光フードとして機能する。
【0022】
固定部3Aは、回転部2を回転可能に支持する。固定部3Aの筐体には、例えば、回転部2を回転させる回転力を発生するモータを含む回転駆動部、回転駆動部を制御する駆動制御回路、光学機構6によるレーザ光の照射と反射光の受光とを制御する測定制御回路、および遠隔操作装置などの外部装置との間で通信を行う通信回路が収容されている。
【0023】
レーザ測距装置1Aは、固定部3Aを介して移動体に取り付けられる。測定領域が地表面である場合、固定部3Aは、例えば、
図6に示すように、UAV9に取り付けられる。回転部2は、例えば、1rps程度で高速回転しながら、レーザ光の照射と反射光の受光を行う。
【0024】
固定部3Aにはダクト部8が設けられる。
図5A、
図5Bおよび
図5Cに示すように、ダクト部8は、固定部3Aにおける、回転部2側の端部に気流の吹き出し口8aを有し、回転部2とは反対側の端部に空気の取り込み口8bを有した空気流路を形成する、第2のダクト部である。例えば、レーザ測距装置1AがUAV9に取り付けられた場合、
図6に示すように、矢印A方向にUAV9とともにレーザ測距装置1Aが移動することにより、取り込み口8bから取り込まれた空気によって上記空気流路に気流が生成される。
【0025】
ダクト部8は、
図5Cに示すように、流路幅が狭まるので、空気の取り込み口8bから吹き出し口8aに向かうにつれて流路断面積が徐々に減少する。ダクト部8における流路断面積の変化に伴い、レーザ測距装置1Aの移動によって生成された気流の流速は増加していき、流速が最も増加した気流が窓部5に吹き付けられる。これにより、レーザ測距装置1Aは、新たな動力源を用いることなく、窓部5に異物が付着することを防止できる。
【0026】
なお、レーザ測距装置1Aが搭載される移動体がUAV9である場合を示したが、レーザ測距装置1Aを移動させる移動体であれば、例えば、自動車、自動二輪車、自転車、船舶、有人の航空機であってもよい。
【0027】
また、レーザ測距装置1Aは、回転部がダクト部を備えていなくてもよい。すなわち、レーザ測距装置1Aは、回転部がダクト部7を備えず、固定部3Aのみにダクト部8を備えた構成であってもよい。さらに、レーザ測距装置1Aは、固定部3Aの外周面における二面以上にダクト部8を有した構成であってもよい。例えば、
図5Bにおいて、固定部3Aにおける外周面の四面にダクト部8が設けられてもよい。
【0028】
なお、レーザ測距装置1Aは、ダクト部8における吹き出し口8aおよび取り込み口8bに開閉式のカバーを備えてもよい。例えば、雨天に水滴がダクト部8に浸入しないように、吹き出し口8aおよび取り込み口8bにおけるカバーを閉める。カバーは、メッシュ状の部材を使用してもよい。この場合、水滴の浸入がメッシュによって防がれるので、吹き出し口8aおよび取り込み口8bに常にカバーが設けられた構造であってもよい。
【0029】
以上のように、実施の形態2に係るレーザ測距装置1Aは、窓部5を介してレーザ光の照射と反射光の受光を行う回転部2と、回転部2を回転可能に支持する固定部と、レーザ測距装置1Aの移動によって生成された気流の流速を流路断面積の変化によって増大させて窓部5に吹き付けるダクト部8を備える。ダクト部8が、レーザ測距装置1Aの移動によって生成された気流の流速を流路断面積の変化によって増大させて窓部5に吹き付けるので、窓部5の近傍に存在する異物が除去される。これにより、レーザ測距装置1Aは、新たな動力源を用いずに、窓部5に異物が付着することを防止できる。
【0030】
なお、各実施の形態の組み合わせまたは実施の形態のそれぞれの任意の構成要素の変形もしくは実施の形態のそれぞれにおいて任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1,1A レーザ測距装置、2 回転部、3,3A 固定部、4 回転軸部、5 窓部、6 光学機構、7,8 ダクト部、7a,8b 取り込み口、7b,8a 吹き出し口、7c,7d,7f,7g 内壁部、7e 流路部。