IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 森永乳業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-冷菓及びその製造方法 図1
  • 特許-冷菓及びその製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】冷菓及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/04 20060101AFI20240628BHJP
   A23G 9/46 20060101ALI20240628BHJP
   A23G 9/48 20060101ALI20240628BHJP
   A23G 9/32 20060101ALI20240628BHJP
   A23D 9/00 20060101ALN20240628BHJP
【FI】
A23G9/04
A23G9/46
A23G9/48
A23G9/32
A23D9/00 512
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020049296
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021145617
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】岩井 大
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慶一
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-132860(JP,A)
【文献】特開2013-081408(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01075794(EP,A1)
【文献】特開2015-128423(JP,A)
【文献】特開平07-184553(JP,A)
【文献】特開2019-039783(JP,A)
【文献】特開2006-280209(JP,A)
【文献】特開2017-118834(JP,A)
【文献】特開2011-036142(JP,A)
【文献】売上高2.5倍のヒットーー”おそろしくよくできた”アイスバー「PARM」人気の秘密,マイナビニュース [online],2010年02月03日,URL: https://news.mynavi.jp/article/20100203-morinagaparm/ [検索日 2023.12.7]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00 - 9/06
A23G 1/00 - 9/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷菓本体と、油脂組成物からなるコーティング層とを有し、
前記冷菓本体の外面の90~100%が前記コーティング層で覆われており、
前記冷菓本体と前記コーティング層の質量比を表す、冷菓本体:コーティング層が3:1~6:1であり、
前記冷菓本体のオーバーランが5~60%であり、
前記油脂組成物の、-10℃におけるSFC(固体脂含量)が20~60%であり、かつ-10℃におけるSFCから20℃におけるSFCを減じた差が20~55%である、冷菓。
【請求項2】
前記油脂組成物の、-10℃におけるSFCから10℃におけるSFCを減じた差が15%以上である、請求項1に記載の冷菓。
【請求項3】
原料ミックスを、空気を含有させつつ冷却して、オーバーランが5~60%である部分凍結物を得て、前記部分凍結物を成形し、冷却し固化して冷菓本体を得て、前記冷菓本体の外面の90~100%を、油脂組成物からなるコーティング液で被覆し、前記コーティング液を冷却し硬化してコーティング層を形成して冷菓を得る工程を有し、
前記油脂組成物として、-10℃におけるSFC(固体脂含量)が20~60%であり、かつ-10℃におけるSFCから20℃におけるSFCを減じた差が20~55%である油脂組成物を用い、
前記冷菓本体と前記コーティング層の質量比を表す、冷菓本体:コーティング層を3:1~6:1とする、冷菓の製造方法。
【請求項4】
前記コーティング液の温度がT℃(25≦T≦50)であり、前記T℃における前記コーティング液の粘度が250~550mPa・sである、請求項3に記載の冷菓の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷菓、及び冷菓の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷菓本体をチョコレートで被覆した冷菓に関して、特許文献1には、冷菓のコーティング層として好適なチョコレートの物性が提案されている。
また、特許文献2では、冷菓の外面上に均一なチョコレートコーティング層を形成するための方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-244920号公報
【文献】特開2016-123297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者等の知見によれば、特許文献1、2に記載の方法では、冷菓本体とコーティング層を一緒に喫食した際の、口どけのバランス、味のバランス、味の濃厚さが必ずしも充分にならない。口どけのバランスが良いとは、冷菓本体とコーティング層が口の中での融ける速さの差が小さいことを意味し、味のバランスが良いとは、冷菓本体とコーティング層の両方の味が感じられる時間が長いことを意味する。味の濃厚さが良いとは、冷菓本体とコーティング層が口の中で融ける速さが速すぎず、両方の味が充分に感じられることを意味する。
また、冷菓本体の外面上にコーティング層を備える冷菓にあっては、店で購入して自宅まで持ち帰る際の温度変化や衝撃によって外観不良が発生する場合がある。
【0005】
本発明は、冷菓本体とコーティング層を一緒に喫食した際の口どけのバランス、味のバランス、及び味の濃厚さに優れるともに、温度変化及び衝撃に対する耐性にも優れた冷菓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1] 冷菓本体と、油脂組成物からなるコーティング層とを有し、前記冷菓本体の外面の90~100%が前記コーティング層で覆われており、前記冷菓本体と前記コーティング層の質量比を表す、冷菓本体:コーティング層が3:1~6:1であり、前記冷菓本体のオーバーランが5~60%であり、前記油脂組成物の、-10℃におけるSFC(固体脂含量)が20~60%であり、かつ-10℃におけるSFCから20℃におけるSFCを減じた差が20~55%である、冷菓。
[2] 前記油脂組成物の、-10℃におけるSFCから10℃におけるSFCを減じた差が15%以上である、[1]の冷菓。
[3] 原料ミックスを、空気を含有させつつ冷却して、オーバーランが5~60%である部分凍結物を得て、前記部分凍結物を成形し、冷却し固化して冷菓本体を得て、前記冷菓本体の外面の90~100%を、油脂組成物からなるコーティング液で被覆し、前記コーティング液を冷却し硬化してコーティング層を形成して冷菓を得る工程を有し、前記油脂組成物として、-10℃におけるSFC(固体脂含量)が20~60%であり、かつ-10℃におけるSFCから20℃におけるSFCを減じた差が20~55%である油脂組成物を用い、前記冷菓本体と前記コーティング層の質量比を表す、冷菓本体:コーティング層を3:1~6:1とする、冷菓の製造方法。
[4] 前記コーティング液の温度がT℃(25≦T≦50)であり、前記T℃における前記コーティング液の粘度が250~550mPa・sである、[3]の冷菓の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷菓本体とコーティング層を一緒に喫食した際の口どけのバランス、味のバランス、及び味の濃厚さに優れるともに、温度変化及び衝撃に対する耐性にも優れた冷菓が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の冷菓の製品形状の例を示す斜視図である。
図2】実施例で使用した油脂組成物のSFC測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「~」で表される数値範囲は、特に断りのない限り、~の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
本明細書において、油脂組成物のa℃におけるSFC(固体脂含量)を「SFC(a℃)」と表記することがある。
本明細書において、油脂組成物のb℃におけるSFCからc℃におけるSFCを減じた差を「SFC(b℃)-SFC(c℃)の差」と表記することがある。
【0010】
本発明における冷菓は、一般的な「冷菓」に分類されるもの、及びフローズンヨーグルトを含む。「冷菓」は、具体的には、アイスクリーム類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス)、氷菓を挙げることができる。
アイスクリーム類とは、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであって乳固形分3.0%以上を含むもの(はっ酵乳を除く)をいう。アイスクリーム類は、含まれる乳固形分と乳脂肪分の量によって、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスの3つに分類される。
一方、乳固形分3.0%未満のものは、前記アイスクリーム類ではなく、食品衛生法に基づく厚生省告示「食品、添加物等の規格基準」により、氷菓として規定されている。
また、フローズンヨーグルトは、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令により、種類別「発酵乳」に分類される。発酵乳は「乳又はこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させ、糊状または液状にしたもの又はこれらを凍結したものをいう」と定められ、成分規格は、「無脂乳固形分8.0%以上、乳酸菌数又は酵母数1000万/mL以上」と規定されている。フローズンヨーグルトは、凍結した発酵乳に該当する。
本発明における冷菓は、氷菓、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、フローズンヨーグルトのいずれであってもよい。
【0011】
凍結点は、液状にした試料を雰囲気温度-25℃で冷却しながら品温を経時的に測定し、液体が固体になる際の発熱反応により温度が下降しないポイント(凝固点)における温度である。
コーティング液の粘度は、B型粘度計にて、ローターNo.2を使用し、回転数12rpmで測定した、30秒後の値である。
【0012】
成分等の含有量の測定方法は以下の方法を用いる。
(1)水分
常圧加熱乾燥法(乾燥助剤添加法)により測定する。
(2)固形分
固形分(質量%)=100-水分(質量%)で算出する。
【0013】
(3)冷菓本体の脂肪分・乳脂肪
「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」に記載の、アイスクリーム類の乳脂肪分の定量法に準拠する方法で測定する。
具体的には、試料4gを小型ビーカーに採り、水3mLを加えてよく混ぜ合わせ、レーリッヒ管に移す。前記ビーカーは、水3mLでよく洗い、その洗液を前記レーリッヒ管に加え、振り混ぜる。次に、アンモニア水(アンモニアの25~30%水溶液、無色透明なもの)2mLを加え、静かに混合する。次に、前記レーリッヒ管を60℃の水浴中につけ、時々振り混ぜながら20分間加温する。さらに2mLエタノール(95~96%水溶液)10mLを加えてよく混ぜ合わせる。
次いで、前記レーリッヒ管にエーテル25mLを加え静かに回転し、均一の色調となったときエーテルガスを抜き、管を水平にして30秒間激しく振り混ぜる。次に石油エーテル(沸点60℃以下)25mLを加え、同様に30秒間振り混ぜて栓を緩め、上澄液が透明になるまで直立して2時間以上静置する。上澄液を、予め恒量を求めたビーカーに入れる。
前記レーリッヒ管に、上記と同様の手順で、エーテル25mL及び石油エーテル25mLを加えて混ぜ、上澄液を前記ビーカーに入れる。側管の先端を、エーテルと石油エーテルの等量混合液で洗浄して前記ビーカーに加える。
前記ビーカーを、約75℃に加熱して溶剤を揮発させ、雰囲気温度100~105℃の乾燥器中で1時間乾燥した後、秤量する。ビーカーの恒量からの増加分を脂肪分とする。
試料が乳脂肪以外の他の脂肪分を含まない場合は、上記で求めた脂肪分を乳脂肪の含有量とする。
試料が乳脂肪以外の他の脂肪分を含む場合は、上記で求めた脂肪分から他の脂肪分を差し引いた値を乳脂肪の含有量とする。
【0014】
(4)無脂乳固形分
「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」に記載の、発酵乳及び乳酸菌飲料の無脂乳固形分の定量法に準拠する方法で測定する。
具体的には、試料(凍結状のものにあっては、40℃以下の温度でなるべく短時間に全部融解させたもの)約50gを精密に量り、フェノールフタレイン溶液数滴を加える。これをかき混ぜながら10%水酸化ナトリウム溶液を徐々に加えて微アルカリ性とし、メスフラスコに採る。水を加えて100mLとし、その5mLを正確に150mLのケルダール分解フラスコに採る。これに硫酸カリ9gと硫酸銅1gの混合粉末0.2gを加え、更にフラスコの内壁を伝わらせて硫酸10mLを加える。次に、このフラスコを徐々に加熱し、亜硫酸ガスの白煙が生じたとき少し加熱を強める。泡末の大部分が消失した後、強熱し、中の液が透明な淡青色を呈し、かつ、フラスコの内壁に炭化物を認めなくなったとき加熱を止める。放冷後、注意しながら水30mLを加え、再び冷却した後フラスコを蒸留装置に連結する。この場合、200mLの吸収フラスコ中には0.05mol/L硫酸30mL及びメチルレッド溶液数滴を入れ、冷却器の下端が液中につかるようにする。
次に、ケルダール蒸留装置の漏斗から30%水酸化ナトリウム溶液40mLを入れ、水10mLで洗い込み、ピンチコツクを閉じ、直ちに蒸留をはじめる。留出液が80mL~100mLの量に達したとき冷却器の下端を液面から離し、更に留出液の数mLを採る。蒸留終了後、冷却器の液に浸った部分を少量の水で洗い、その洗液を吸収フラスコ中の液に合し、これを0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液で滴定する。
無脂乳固形分(単位:質量%)は、次式によって計算する。
無脂乳固形分={0.0014×(A-B)}/試料の採取量(単位:g)×6.38×2.82×100
A:0.05mol/Lの硫酸30mLを中和するのに要する0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液の量(単位:mL)
B:滴定に要した0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液の量(単位:mL)
標示薬:メチルレッド溶液(メチルレッド1gをエタノール50mLに溶かし、これに水を加えて100mLとし、必要があればろ過する。
(5)乳固形分
前記(3)の方法で求めた乳脂肪分と、前記(4)の方法で求めた無脂乳固形分との合計を乳固形分とする。
【0015】
(6)油脂組成物の油脂含有量
脂質の測定方法は、「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」(平成11年4月26日衛新第13号)に開示されている、エーテル抽出法に基づいて行う。
具体的には、試料を円筒ろ紙に入れ、その上に脱脂綿を軽く詰め、抽出管に入れる。受器のフラスコは、予め100~105℃の電気定温乾燥器で1~2時間乾燥し、デシケーターに移し、1時間放冷した後、0.1mgまで量って恒量(W0g)を求める。これにエーテルを約2/3容入れ、冷却管を連結して電気恒温水槽上で8~16時間抽出を行う。抽出終了後、手早く抽出管を取りはずして、円筒ろ紙をピンセットで抜き出し、再び冷却管に連結して、電気恒温水槽上で加温する。フラスコ中のエーテルがほとんど全部抽出管に移ったら、フラスコを取り外してさらに加温し、フラスコ中のエーテルを完全に蒸発させる。フラスコの外側をガーゼでふき、100~105℃の電気定温乾燥器に入れ、1時間乾燥し、デシケーターに移して放冷後秤量し、恒量(W1g)を求める。試料中の油脂の含有量(g/100g)を、次式によって計算する。
試料中の油脂の含有量(g/100g)=(W1-W0)/W×100
W:試料採取量(g)
(7)油脂組成物のSFC(固体脂含量)
「SFC」(Solid Fat Content(固体脂含量))とは、一定の温度下で油脂中に存在する固体脂の含量(%)を意味する。測定する試料を核磁気共鳴(NMR)測定用の試験管に採取し、60℃30分保持して油脂を完全に融解し、0℃に60分保持して固化させる。これを、所定の測定温度に30分保持した後、NMR法によりSFCを測定する。
【0016】
本実施形態の冷菓は、冷菓本体と、油脂組成物からなるコーティング層とを有する。
冷菓本体は原料ミックスの凍結物からなる。冷菓本体の組成と、凍結前の原料ミックスの組成とは同じである。冷菓本体を構成する原料ミックスは1種でもよく、2種以上でもよい。
【0017】
[原料ミックス]
原料ミックスの原料は、冷菓の原料として公知の原料を適宜選択して用いることができる。例えば、水、乳製品、炭水化物、甘味料、油脂、乳化剤、安定剤、酸味料、植物蛋白質、卵、香料、着色料、果汁、果肉、食物繊維、各種食材(酒類、抹茶、ジャム、チョコレート)、その他の食品添加剤等が挙げられる。
甘味料としては、砂糖(上白糖、グラニュー糖、三温糖、黒砂糖、甜菜糖)、水あめ、粉あめ、砂糖混合異性化糖、異性化糖、乳糖、ぶどう糖、麦芽糖、果糖、転化糖、還元麦芽水あめ、蜂蜜、トレハロース、パラチノース、D-キシロース等の糖類;キシリトール、ソルビトール、マルチロール、エリスリトール等の糖アルコール類;サッカリンナトリウム、サイクラメート及びその塩、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、ステビア抽出物に含まれるステビオサイドなどの高甘味度甘味料;等が挙げられる。甘味料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
乳製品としては、生乳、牛乳、クリーム、バター、脱脂粉乳、脱脂濃縮乳、練乳、チーズ、ホエイ、ホエイ蛋白濃縮物等が挙げられる。乳製品は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
原料ミックスの総質量に対して、固形分は20~50質量%が好ましく、30~40質量%がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると冷菓本体のなめらかな食感が得られ、上限値以下であると冷菓本体が過度に融けやすくなることを防ぐことができる。
原料ミックスの総質量に対して、脂肪の含有量(脂肪分)は0.5~15.0質量%が好ましく、5.0~13.0質量%がより好ましい。上記範囲の下限値以上であるとアイス部分の氷晶感を抑えられるため、油脂組成物との食感差を得やすくなる。上限値以下であると冷菓部分の油性感が抑えられるため、油脂組成物との冷菓部分の風味差を感じやすくなる。
原料ミックスが甘味料を含む場合、原料ミックスの総質量に対して、甘味料の含有量は0超、30質量%以下が好ましく、10~20質量%がより好ましい。上限値以下であると冷菓本体が過度に融けやすくなることを防ぐことができる。
原料ミックスが乳製品を含む場合、原料ミックスの総質量に対して、乳固形分は3.0~30.0質量%が好ましく、10.0~25.0質量%がより好ましい。上記範囲の下限値以上であるとアイス部分に適度なオーバーラン性を与えやすい。上限値以下であると良好な冷菓本体の組織が得られやすい。
また、原料ミックスの総質量に対して、乳脂肪の含有量は0超、15.0質量%以下が好ましく、3.0~13.0質量%がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると乳脂肪由来の良好な風味が得られやすく、上限値以下であると良好な冷菓本体の組織が得られやすい。
【0019】
原料ミックスの好ましい態様として、例えば、水分と甘味料を含む態様、水分と甘味料と脂肪分を含む態様等が挙げられる。
原料ミックスの凍結点は-7.0~-0.5℃が好ましく、-4.0~-2.0℃がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると充填時の保形性が得られやすい。また、冷菓本体が過度に融けやすくなることを防ぐことができる。上限値以下であると冷菓本体の適度な柔らかさが得られやすい。
【0020】
[油脂組成物]
油脂組成物に含まれる油脂は、特に限定されない。冷菓のコーティング層の成分として用いられる油脂であればよい。油脂組成物は、例えばチョコレートである。
油脂の例としては菜種油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米ぬか油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、シア脂、サル脂、カカオ脂が挙げられる。
【0021】
油脂組成物に含まれる油脂は1種でもよく、2種以上でもよい。
油脂組成物の総質量に対する、油脂の含有量は35~75質量%が好ましく、40~70質量%がより好ましく、45~65質量%がさらに好まししい。上記範囲の下限値以上であると粘度が過度に高くなることによる口残りや食感の悪化を防ぎ、冷菓を摂食した後に油脂組成物だけが残ることがなく、冷菓本体と油脂組成物の両方の味を楽しむことができる。上限値以下であると油っぽい風味になりにくく、またコーティング層が薄くなって割れやすくなることを防ぎやすい。
【0022】
油脂組成物は、油脂以外の他の成分を含んでもよい。
他の成分の例としては、カカオマス、ココアパウダー等のカカオ原料;甘味料:乳製品;水;乳化剤;増粘安定剤;食塩、塩化カリウム等の塩味剤;酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料;β-カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料;トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤;小麦蛋白、大豆蛋白等の植物蛋白;卵、各種卵加工品等の卵製品;香料;香辛料;調味料;pH調整剤;食品保存料;日持ち向上剤;果実、果汁、コーヒー原料、種実類原料等の各種食品素材;が挙げられる。
甘味料、乳製品の具体例としては、前記原料ミックスに用いられる甘味料、乳製品と同様のものが挙げられる。
【0023】
油脂組成物のSFC(-10℃)は、20~60%であり、25~55%が好ましく、30~50%がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると油脂組成物が過度に融けやすくなることを防ぐことができ、冷菓を摂食した瞬間から油脂組成物だけが融けることがなく、冷菓本体と油脂組成物の両方の味を楽しむことができる。上限値以下であると油脂組成物が過度に融けにくく、冷菓を摂食した後に油脂組成物だけが融け残ることがなく、冷菓本体と油脂組成物の両方の味を楽しむことができる。
油脂組成物のSFC(-10℃)-SFC(20℃)の差は20~55%であり、25~50%がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると口に入れてから融けはじめ、食べ終わるまで過度に時間がかからないため、冷菓本体と口どけの速度が揃い、冷菓本体と油脂組成物の口どけのバランスが良くなり、上限値以下であると口に入れてから食べ終わりまで油脂組成物の風味を感じられ、冷菓本体と口どけの速度が揃うため、冷菓本体と油脂組成物の口どけのバランスが良くなる。
油脂組成物のSFC(-10℃)-SFC(10℃)の差は15%以上が好ましく、15~40%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると冷菓摂食時に油脂組成物の風味が冷菓本体と比較して口の中に長く残ることがなく、上限値以下であると冷菓摂食時に油脂組成物の風味が冷菓本体よりも先に無くなってしまうことはない。
油脂組成物のSFCは、油脂組成物に含まれる油脂の融点及び組成によって調整できる。
【0024】
油脂組成物の好ましい態様として、下記態様(1)~(3)が挙げられる。
態様(1):SFC(-10℃)が20~60%、SFC(0℃)が10~50%、SFC(10℃)が0~25%、SFC(20℃)が0~5%、SFC(25℃)が0%であり、SFC(-10℃)-SFC(20℃)の差が20~55%、かつSFC(-10℃)-SFC(10℃)の差が15~50%である油脂組成物。
態様(2):SFC(-10℃)が25~55%、SFC(0℃)が10~45%、SFC(10℃)が0~20%、SFC(20℃)が0~5%、SFC(25℃)が0%であり、SFC(-10℃)-SFC(20℃)の差が25~50%、かつSFC(-10℃)-SFC(10℃)の差が15~45%である油脂組成物。
態様(3):SFC(-10℃)が30~50%、SFC(0℃)が15~40%、SFC(10℃)が0~15%、SFC(20℃)が0~2%、SFC(25℃)が0%であり、SFC(-10℃)-SFC(20℃)の差が30~50%、かつSFC(-10℃)-SFC(10℃)の差が25~35%である油脂組成物。
【0025】
<冷菓>
本実施形態の冷菓の大きさ及び形状は特に限定されない。例えば、1個の全部が口に入る大きさが好ましい。具体的には、冷菓本体の体積が5~15mLであることが好ましく、7~13mLがより好ましい。形状は、略柱状、粒状、板状、棒状等が例示できる。製品形状の例を図1に示す。
【0026】
冷菓本体のオーバーラン(以下、ORと記載することもある。)は5~60%であり、10~50%が好ましい。上記範囲の下限値以上であると冷菓本体の適度な保形性、口どけが得られ、上限値以下であると濃厚な味わいを得られる。
オーバーランは、空気を含有させる前の原料ミックスの容量に対する、原料ミックスの凍結物(冷菓本体)の含有空気容量の百分率の値である。例えばオーバーラン値が100%の場合、原料ミックスの凍結物は、原料ミックスと同容量の空気を含むことを意味する。
【0027】
冷菓本体の外面全体に対して、コーティング層で覆われている部分の面積の割合(以下、被覆率ともいう。)は90~100%である。製品の見栄えがより向上する点からは95~100%がより好ましく、99~100%がさらに好ましい。
【0028】
本実施形態の冷菓において、冷菓本体とコーティング層の質量比を表す、冷菓本体:コーティング層は3:1~6:1であり、3:1~5:1が好ましく、4:1~5:1がより好ましい。コーティング層の比率が上記範囲の下限値以上であると冷菓本体に対して十分に外面全体を覆うことができ、上限値以下であると冷菓本体に対して過度にコーティングが覆うことはない。
冷菓における冷菓本体とコーティング層の質量比は、以下の方法で測定できる。
冷凍状態の冷菓からコーティング層を剥がし、その後、本体とコーティング層の質量を測り、質量比を算出する。
【0029】
<冷菓の製造方法>
(原料ミックス調製工程)
まず、原料ミックスを調製する。好ましくは、原料ミックスの全原料を混合して混合液とし、加熱殺菌して原料ミックスを得る。香料等の加熱殺菌時の熱によって変性しやすい原料は、加熱殺菌後に添加してもよい。
混合時に、成分が変質しない温度範囲、例えば60~80℃程度に加温してもよい。必要に応じて混合液を、加熱殺菌の前又は後に、ろ過又は均質化してもよい。
加熱殺菌装置は、プレート式殺菌機、チューブラー式殺菌機、インフュージョン式殺菌機、インジェクション式殺菌機、バッチ式殺菌機等を使用できる。
【0030】
(フリージング工程)
次に、原料ミックスを、空気を含有させつつ凍結点付近まで冷却して、流動性を有する部分凍結物を得る。この工程は、冷菓の製造において公知のフリーザーを用いて行うことができる。
原料ミックスの部分凍結物のオーバーランと、部分凍結物を凍結させた凍結物(冷菓本体)のオーバーランは同じである。
【0031】
(成形工程)
次に、部分凍結物を成形し、冷却し固化して冷菓本体を得る。この工程は、冷菓の製造において公知の成形方法を用いて行うことができる。成形方法は、例えば、下記の方法(1)(2)を用いることができる。
方法(1):部分凍結物を、所望の形状の成形型(モールド)に充填し、冷却して固化させた後、成形型から冷菓本体を取り出す方法。成形型から取り出した後に切断してもよい。
方法(2):部分凍結物を、所望の形状の排出口を有する押出ノズルから排出しながら切断して成形し、得られた成形物を冷却して固化させる方法。
【0032】
方法(1)において、成形型に充填する直前の部分凍結組成物の温度は、凍結点±1℃の範囲内が好ましく、凍結点±0.5℃の範囲内がより好ましく、(凍結点-0.2)℃~(凍結点-0.1)℃の範囲内がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると部分凍結組成物の流動性が充分に高く、成形型に充填しやすく、形状不良が生じ難い。上限値以下であると、冷菓本体の氷結晶が小さくなりやすく、なめらかな食感が得られやすく、コーティング層の食感と冷菓本体の食感との良好な調和が得られやすい。
【0033】
方法(2)において、押出ノズルに供給する直前の部分凍結組成物の温度は、(凍結点-10)℃~凍結点の範囲内が好ましく、(凍結点-7)℃~(凍結点-1)℃の範囲内がより好ましく、(凍結点-4)℃~(凍結点-2)℃の範囲内がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると良好な組織が得られやすい。上限値以下であると、成形物の形状安定性に優れる。
【0034】
方法(1)において成形型内の部分凍結物を固化させる際、及び方法(2)において成形物を固化させる際の温度条件は、表面温度が(凍結点-2)℃以下、かつ中心温度が(凍結点-5)℃以下となるように冷却することが好ましい。
冷菓本体からコーティング層への水分の移行を、より抑制しやすい点で、表面温度が(凍結点-5)℃以下、かつ中心温度が(凍結点-7)℃以下となるように冷却することがより好ましい。
【0035】
(コーティング工程)
次に、冷菓本体の外面を覆うように、コーティング層を形成して冷菓を得る。
具体的には、冷菓本体の外面を、油脂組成物からなるコーティング液で被覆した後、コーティング液を冷却し硬化してコーティング層を形成する。
コーティング法は冷菓の製造において公知の方法を用いることができる。例えばディッピング法、エンロービング法が挙げられる。
ディッピング法では、冷菓本体をコーティング液に漬けて引き上げ、冷却してコーティング液を硬化させてコーティング層を形成する。
エンロービング法では、冷菓本体にコーティング液をかけ流して被覆し、冷却してコーティング液を硬化させてコーティング層を形成する。
【0036】
コーティング液の液温(T℃)は25~50℃が好ましく、30~40℃がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると、コーティング液の適度な粘度が安定して得られやすい。上限値以下であると、冷菓本体からコーティング層への水分の移行が抑制されやすい、また冷菓本体の融解による氷結晶の増大が抑制されやすい。
【0037】
コーティング液のT℃における粘度は、250~550mPa・sが好ましく、300~500mPa・sがより好ましく、350~450mPa・sがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると冷菓本体に対して充分量のコーティングが可能であり、上限値以下であると過度にコーティングされることを防げる。
【0038】
コーティング工程では、被覆率が90~100%となるように、コーティング条件を調整する。例えば、被覆率が不足する場合はコーティング層の付着量を増加する。
また、冷菓本体:コーティング層の質量比が前記範囲となるように、コーティング条件を調整する。例えば、コーティング層の質量はコーティング時間、コーティング液の温度によって調整できる。
冷菓における被覆率は、以下の方法で測定できる。
冷菓本体の外面がコーティング層で覆われた冷菓において、冷菓本体が露出している領域を目視で確認し、その面積を画像解析ソフト(Image J)を用いて解析する。
具体的には各冷菓を撮影し、撮影画像を白黒の16bit画像に変換する。その後、Threshold処理を行ってBlack & Whiteモードで適切なバイナリ画像(白:冷菓本体、黒:コーティング層)とする。バイナリ画像をヒストグラム機能で白(0)と黒(255)のドット数をカウントし、白面積割合(=白のカウント数÷(黒のカウント数+白のカウント数)×100)を計算する。冷菓全体の表面積に占める冷菓本体が露出していない領域の割合を被覆率と定義する。
なお、冷菓本体とコーティング層の色が近い場合は、画像中の冷菓本体が露出している領域をあらかじめ白く塗りつぶすことで、適切なバイナリ画像を得られる。
【実施例
【0039】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0040】
<官能評価方法>
冷菓本体(以下、アイスともいう。)を油脂組成物(以下、チョコレートともいう)で被覆した冷菓について、以下の方法で官能評価した。
冷菓の開発歴1年以上の経験者である7名のパネリストが、冷菓のサンプル(表面温度-15℃、中心温度-20℃)を試食し、咀嚼しながら(1)口どけのバランス、(2)味のバランス、(3)味の濃厚さの3項目について、下記の採点基準で採点した。
各項目について、7名のパネリストの平均点を求め、下記の評価基準に基づいて四段階評価した。
パネリストは、冷菓のサンプル1個を口に入れ、口腔内が冷えてから咀嚼を開始して、評価を実施した。また、評価前に基準サンプルを試食して評価者間の尺度合わせを実施した。
「(1)口どけのバランス」は、「口内で融けるチョコレートとアイスの口どけの速さの偏りの程度」と定義した。
「(2)味のバランス」は、「食べ始めから飲み込むまでのチョコレートとアイスの味の強さの偏りの程度」と定義した。
「(3)味の濃厚さ」は、「食べ始めから飲み込むまでのチョコレートとアイスの味の濃厚感の程度」と定義した。
[採点基準]
(1)口どけのバランス
1点:バランスが極めて悪い(アイスまたはチョコレートのどちらかだけすぐに融ける、またはどちらかが口の中に長く残る)。
2点:バランスが悪い(アイスまたはチョコレートのどちらかだけ先に融ける、またはどちらかが口の中に残る)。
3点:バランスは良くないが、許容範囲。
4点:バランスが良い(同時ではないが、アイスとチョコレートが近いスピードで融け、どちらかが長く残ることがない)。
5点:バランスが極めて良い(アイスとチョコレートが同時に融けていく)。
(2)味のバランス
1点:バランスが極めて悪い(どちらかの味がすぐに無くなる、または長く残る)。
2点:バランスが悪い(どちらかの味が先に無くなる、または残る)。
3点:バランスは良くないが、許容範囲。
4点:バランスが良い(同時ではないが、アイスとチョコレートの味が同じように残り、どちらかが長く残ることがない)。
5点:バランスが極めて良い(アイスとチョコレートの味を同時に感じられ、同時に消えていく)。
(3)味の濃厚さ
1点:アイスもチョコレートも口どけが早すぎて味の濃厚感が極めて弱い。
2点:アイスまたはチョコレートの口どけが早すぎて味の濃厚感が弱い。
3点:アイスまたはチョコレートのどちらかが強く口の中に残り、濃厚感を感じられる。
4点:アイスもチョコレートも口の中に比較的長く残り、味の濃厚感が強い。
5点:アイスもチョコレートも口の中にしっかり残り、味の濃厚感が極めて強い。
[採点基準]
◎:平均点が3.5点以上。
〇:平均点が3.0点以上、3.5点未満。
△:平均点が2.5点以上、3.0点未満。
×:平均点が2.5点未満。
【0041】
<温度変化に対する耐性>
冷菓を-25℃の冷凍庫内に48~72時間保管して温度調節したサンプルを、室温(25~26℃)雰囲気中に移送して静置した。冷凍庫室から出した時点を開始時とし、コーティング層(チョコレート)から、アイスが漏れ始めるまでの時間(保持時間)を計測した。
保持時間の計測は3回行い、平均値を求めた。下記の評価基準に基づいて四段階評価した。保持時間が長いほど、常温下で持ち帰る場合など、環境温度の変化に対する外観保持性が良好であることを意味する。
[評価基準]
◎:保持時間の平均値が25分以上。
〇:保持時間の平均値が20分以上25分未満。
△:保持時間の平均値が15分以上20分未満。
×:保持時間の平均値が15分未満。
【0042】
<振動に対する耐性>
冷菓を-25℃の冷凍庫内に48~72時間保管して温度調節したサンプル(表面温度-20℃、中心温度-25℃)を、室温(25~26℃)雰囲気中に移送して直ちにプラスチック製の遠心管(内径33mm、長さ100mm)に入れた。遠心管の底部をボルテックスミキサー(アズワン社製品名TUBE MIXER TRIO HM-1F)に接触させ、目盛りを10(2500rpm)に設定し、30秒間振とうした後、サンプルを取り出した。コーティング層(チョコ)の割れの状態を目視で観察し、下記の基準で評価した。3個の冷菓についての評価を行い、その結果に基づき下記の基準で総合評価をした。
[評価基準]
◎:ひび割れが無い。
△:目立たないひび割れがある。
×:明らかなひび割れがある。ひび割れは角の部分のみに発生しており、面の部分には無い。
××:明らかなひび割れがある。面の部分にひび割れがある。
[総合評価の評価]
◎:3個の試験結果が◎。
○:2個の試験結果が◎。
△:2個以上の試験結果が△。
×:2個以上の試験結果が×。
××:2個以上の試験結果が××。
【0043】
<冷菓本体の原料>
無塩バター:森永乳業社製、乳脂肪分83.0質量%、無脂乳固形分1.4質量%、固形分84.4質量%。
脱脂粉乳:森永乳業社製、乳脂肪分1.0質量%、無脂乳固形分95.2質量%、固形分96.2質量%。
甜菜糖:北海道糖業社製品名、ビートグラニュー糖、固形分100質量%。
粉あめ:昭和産業社製品名、K-SPD、固形分96質量%。
安定剤:太陽化学社製、ローカストビーンガム45.0質量%、グアーガム45.0質量%、カラギナン10.0%質量%。
乳化剤:理研ビタミン社製、グリセリン脂肪酸エステル99.99質量%、リン酸0.01質量%。
【0044】
(調製例1:冷菓本体の調製)
表1に示す全原料を混合し、70℃で20分間撹拌して溶解した後、均質化処理した。次いで、90℃、15秒間の条件で加熱殺菌し、5℃に冷却して原料ミックスを得た。
得られた原料ミックスを連続式フリーザーに供給し、連続式フリーザーから排出される部分凍結品を、厚さ18mmの板状の成形型に充填した。これを-35℃で24時間冷却して固化した。成形型から板状の硬化物を取り出し、縦23mm、横23mm、高さ18mmの直方体状に切断して冷菓本体を得た。
連続式フリーザーから排出される部分凍結品のオーバーラン(設定値)を0%、10%、30%、50%、80%に変更し、冷菓本体を調製した。
【0045】
【表1】
【0046】
(調製例2:油脂組成物の調製)
チョコレートに含まれる油脂の組成が異なり、風味は同等である下記のチョコレートA~Dを用意し、SFCを測定した。測定結果を表2及び図2に示す。図2のグラフにおいて、横軸は温度、縦軸はSFC(単位:%)である。
チョコレートA:大豆油100質量%。
チョコレートB:パームスーパーオレイン68質量%、大豆油23質量%、パームオレイン9質量%。
チョコレートC:パームスーパーオレイン58質量%、ヤシ由27質量%、大豆油15質量%。
チョコレートD:パームオレイン53質量%、ヤシ由36質量%、大豆油11質量%。
【0047】
【表2】
【0048】
(製造例1:冷菓の製造)
調製例1で調製した、オーバーランが異なる5種の冷菓本体について、チョコレートA~Dからなるコーティング層をそれぞれ形成して20種の冷菓を製造した。
具体的には、チョコレートを加温して溶融し、串状のピックを挿した冷菓本体を溶融したチョコレート槽にくぐらせて冷菓本体の外面全面を被覆した。溶融したチョコレート(コーティング液)は、液温30~40℃、かつ粘度(B型粘度計、ローターNo.2使用、回転数12rpm)が250~550mPa・sを満たすように液温を設定した。
チョコレートの付着量は、冷菓本体1個に対して2gとした。オーバーランを加味した冷菓本体:コーティング層の質量比を表3に示す。
冷菓本体をチョコレートで被覆した後、-25℃で48時間冷却してコーティング層を固化し、冷菓を得た。被覆率は99%以上であった。
【0049】
【表3】
【0050】
(評価)
得られた冷菓の(1)口どけのバランス、(2)味のバランス、(3)味の濃厚さについて、上記の方法で官能評価を行った。7名のパネリストの採点結果を表4に示す。
各評価項目について、7名のパネリストの平均点を表5に示し、平均点に基づいて四段階評価した結果を表8に示す。
【0051】
得られた冷菓について、上記の方法で、温度変化に対する耐性を評価した。保持時間の平均値を表6に示し、平均値に基づいて四段階評価した結果を表8に示す。
【0052】
得られた冷菓について、上記の方法で、振動に対する耐性を評価した。試験は3回ずつ行った。3回の試験結果を表7に示し、総合評価の結果を表8に示す。
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
【表7】
【0057】
【表8】
【0058】
表2、表8の結果に示されるように、コーティング層を構成する油脂組成物(チョコレート)として、SFC(-10℃)が20~60%、SFC(-10℃)-SFC(20℃)の差が20~55%であるチョコレートB又はCを用い、冷菓本体(アイス)のオーバーランを5~60%とすると、冷菓本体とコーティング層を一緒に喫食した際の口どけのバランス、味のバランス、及び味の濃厚さに優れるとともに、温度変化及び振動に対する耐性に優れる冷菓が得られた。
図1
図2