(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61D 37/00 20060101AFI20240628BHJP
B61D 17/06 20060101ALI20240628BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B61D37/00 G
B61D17/06
B61D37/00 Z
H04R1/00 310F
(21)【出願番号】P 2020057916
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】二村 有哉
(72)【発明者】
【氏名】福永 智行
(72)【発明者】
【氏名】福田 大輝
(72)【発明者】
【氏名】栗田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】石倉 啓行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聖
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-297418(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2085759(KR,B1)
【文献】特開2007-137179(JP,A)
【文献】特開平05-139305(JP,A)
【文献】特開2011-020474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 37/00
B61D 17/06
H04R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向の端部を形成する妻構体と、その妻構体の車内側を覆う妻パネルとを備えた鉄道車両において、
前記妻パネルに配設されるエキサイタを備え、
前記妻パネルが前記エキサイタにより振動されることで音が発生され、
前記エキサイタは、車両前後の前記妻パネルのそれぞれに配設され、
一方の前記エキサイタが前記妻パネルの車両幅方向の中央よりも一側に配設され、他方の前記エキサイタが前記妻パネルの車両幅方向の中央よりも他側に配設されることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
前記妻パネルには、乗客が通過可能な扉開口部が形成され、
前記扉開口部よりも上方となる位置において前記エキサイタが前記妻パネルに配設されることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関し、特に、エキサイタを好適に採用することができる鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
取付対象物を振動させて音を発生させるエキサイタ(励振器)が知られている。特許文献1には、車両の天井板に板振動スピーカ(エキサイタ)を設け、板振動スピーカにより天井板を振動させることで、音声情報を乗客へ提供する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-020474号公報(例えば、段落0014、
図2など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した従来の技術を鉄道車両に採用するには、未だ改良の余地がある。例えば、鉄道車両では、天井板が複数に分割して設けられているので、車内の全体に音声情報を行き渡らせるためには、各天井板に板振動スピーカを設ける必要があり、コストが嵩む。また、エキサイタにより天井板を振動させるためには、天井板にエキサイタをボルトにより締結固定することが考えられるが、ボルトが車内側から視認されると、車内側の美観が損なわれる。上述した従来技術には、天井板へのエキサイタの具体的な取り付け方法については開示されていない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、エキサイタを好適に採用することができる鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の鉄道車両は、車両前後方向の端部を形成する妻構体と、その妻構体の車内側を覆う妻パネルとを備えたものであり、前記妻パネルに配設されるエキサイタを備え、前記妻パネルが前記エキサイタにより振動されることで音が発生され、前記エキサイタは、車両前後の前記妻パネルのそれぞれに配設され、一方の前記エキサイタが前記妻パネルの車両幅方向の中央よりも一側に配設され、他方の前記エキサイタが前記妻パネルの車両幅方向の中央よりも他側に配設される。
【0007】
また、本発明の鉄道車両は、妻構体、側構体、及び、屋根構体の車内側を覆う内装パネルを備えたものであり、前記内装パネルの車外側の面に接着により固定される固定部材と、その固定部材に着脱可能に連結される連結部材と、その連結部材に支持されるエキサイタと、を備え、前記内装パネルが前記エキサイタにより直接または前記連結部材のみを介して振動されることで音が発生される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の鉄道車両によれば、妻パネルに配設されるエキサイタを備え、妻パネルがエキサイタにより振動されることで音が発生されるので、車両前後方向へ向けて音を出力することができ、車内全体へ音声情報を行き渡らせることができる。これにより、エキサイタの数を抑制して、コストを低減できる。
エキサイタは、車両前後の妻パネルのそれぞれに配設され、一方のエキサイタが妻パネルの車両幅方向の中央よりも一側に配設され、他方のエキサイタが妻パネルの車両幅方向の中央よりも他側に配設されるので、一方のエキサイタ(一方の妻パネル)から出力される音と他方のエキサイタ(他方の妻パネル)から出力される音とを重なり難くでき、車内全体へ音声情報を行き渡らせることができる。
【0009】
請求項2記載の鉄道車両によれば、請求項1記載の鉄道車両の奏する効果に加え、妻パネルには、乗客が通過可能な扉開口部が形成され、扉開口部よりも上方となる位置においてエキサイタが妻パネルに配設されるので、出力された音を座席や乗客に遮られ難くでき、車内全体へ音声情報を行き渡らせることができる。
【0010】
【0011】
【0012】
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)は、本発明の第1実施形態における鉄道車両の車内の正面模式図であり、(b)は、鉄道車両の車内の上面模式図である。
【
図2】(a)は、
図1(a)のIIa-IIa線における上部パネルの断面図であり、(b)は、
図2(a)の矢印IIb方向視における上部パネルの部分拡大上面図であり、(c)は、
図2(b)の矢印IIc方向視における上部パネルの背面図である。
【
図3】(a)は、第2実施形態における鉄道車両の上部パネルの断面図であり、(b)は、
図3(a)の矢印IIIb方向視における上部パネルの部分拡大上面図であり、(c)は、
図3(b)の矢印IIIc方向視における上部パネルの背面図である。
【
図4】(a)は、第3実施形態における鉄道車両の上部パネルの部分拡大上面図であり、(b)は、
図4(a)の矢印IVb方向視における上部パネルの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、第1実施形態における鉄道車両1の概略構成について説明する。
図1(a)は、第1実施形態における鉄道車両1の車内の正面模式図であり、
図1(b)は、鉄道車両1の車内の上面模式図である。
【0015】
なお、
図1中の矢印F-B,矢印U-D及び矢印L-Rは、鉄道車両1の前後方向(車両前後方向)、上下方向(車両上下方向)及び左右方向(車両幅方向)をそれぞれ表している。
図2から
図4においても同様であるので、その説明は省略する。
【0016】
図1に示すように、鉄道車両1は、下面を構成する台枠10と、側面を構成する側構体20と、上面を構成する屋根構体30と、前後の端面を構成する妻構体40とを備え、車内には、複数の座席50が列設される。
【0017】
側構体20、屋根構体30及び妻構体40の車内側は、それぞれ内装パネル21,31,41により覆われている。妻構体40の内装パネル41は、乗客が通過可能な扉開口部60aが車幅方向(矢印L-R方向)の略中央に形成される下部パネル41aと、その下部パネル41aの上側(矢印U方向側)に配設される上部パネル41bとから構成される。なお、扉開口部60aには、扉60が配設される。
【0018】
鉄道車両1には、取付対象物を振動させて音を発生させる励振器(以下「エキサイタ70」と称す)が配設される。本実施形態では、エキサイタ70の取付対象物が妻構体40の内装パネル41(上部パネル41b)とされる。ここで、エキサイタ70の上部パネル41bへの配設構造について
図2を参照して説明する。
【0019】
図2(a)は、
図1(a)のIIa-IIa線における上部パネル41bの断面図であり、
図2(b)は、
図2(a)の矢印IIb方向視における上部パネル41bの部分拡大上面図であり、
図2(c)は、
図2(b)の矢印IIc方向視における上部パネル41bの背面図である。
【0020】
図2に示すように、上部パネル41bは、ポリカーボネートから板状に形成される部材であり、上縁側(矢印U側の縁部)が下縁側(矢印D側の縁部)よりも車内側(
図2(a)では矢印F側)に突き出された前傾姿勢で配設される。
【0021】
上部パネル41bの背面側(車外側の面)には、アルミニウムから板状に形成される背面板42がシール接着剤(図示せず)により接着される。
【0022】
なお、上部パネル41bと背面板42との間には、CRゴムから断面矩形に形成されるパッキン43が挟み込まれる。パッキン43によって背面板42が上部パネル41bから嵩上げされ、上部パネル41bと背面板42との間にシール接着剤が充填される。また、パッキン43によってシール接着剤の充填される領域が区画され、取付板80の一部(配設部81)が上部パネル41bに直接当接可能とされる。
【0023】
背面板42の背面側には、複数(本実施形態では2個)のねじ座44が接着により固定される。ねじ座44は、鉄鋼材料から直方体形状に形成される基部44aの外面側を、アルミニウムから形成される枠部44bが取り囲むことで、直方体形状に形成される部材であり、複数箇所(本実施形態では2箇所)にめねじが螺刻される。
【0024】
ねじ座44には、取付板80が連結され、その取付板80には、エキサイタ70が固定される。これにより、エキサイタ70が上部パネル41bの背面側(車外側)に配設される。
【0025】
エキサイタ70は、円柱形状に形成される本体部71と、その本体部71から張り出すフランジ部72とを備える。本実施形態のエキサイタ70は、軸方向一側の端面が、その端面に当接された対象物へ振動を伝達する伝達面に設定される。
【0026】
取付板80は、エキサイタ70が配設される配設部81と、その配設部81に一端が接続される一対の連設部82と、それら連設部82の他端から延設される一対の延設部83とを備え、アルミニウムから板状に形成される素材の4箇所を略90度に折り曲げて略ハット形状に形成される。
【0027】
配設部81は、エキサイタ70を支持すると共に、そのエキサイタ70から受けた振動を上部パネル41bへ伝達する部位である。配設部81には、エキサイタ70を固定するための皿穴が穿設される。
【0028】
よって、皿頭ねじS(ねじの頭部の端面が平らで、ねじの頭部の座面が円錐形状のねじ)及びナットNを使用して、エキサイタ70を配設部81に締結固定することで、皿頭ねじSの頭部を皿穴に収納して、配設部81を上部パネル41bに面接触させることができる。従って、配設部81と上部パネル41bとの間の当接面積を確保して、エキサイタ70の振動を上部パネル41bへ伝達し易くできる。
【0029】
延設部83には、ねじ座44のめねじに対応する位置に挿通穴が穿設され、その挿通穴に挿通されたボルトBにより、延設部83(取付板80)がねじ座44(上部パネル41b)に締結固定(連結)される。
【0030】
なお、延設部83とねじ座44との間には、ワッシャWが介設される。
【0031】
第1実施形態では、取付板80が板状の素材からハット形状に形成される。そのため、製造誤差により、配設部81と上部パネル41bとが密着させられないことがある。この場合、ワッシャWを適切な厚みとすることで、配設部81と上部パネル41bとを密着させることができる。
【0032】
このように、本実施形態の配設構造によれば、内装パネル41(上部パネル41b)の背面(車外側の面)に背面板42及びねじ座44を接着により固定し、ねじ座44に連結される取付板80にエキサイタ70を固定させるので、エキサイタ70を内装パネル41にボルトで締結固定する必要がない。即ち、内装パネル41の正面(車内側の面)にボルトが飛び出すことを回避できる。これにより、内装パネル41にエキサイタ70を配設しても、車内側の美観が損なわれることを抑制できる。
【0033】
この場合、取付板80のねじ座44に対する連結は、ボルトBの締結により行われ、取付板80がねじ座44に対して着脱自在とされるので、車内側の美観が損なわれることを抑制しつつ、エキサイタ70を内装パネル41(上部パネル41b)の背面(車外側の面)に直接接着する場合と比較して、エキサイタ70の取り外し(交換)を容易に行うことができる。よって、エキサイタ70の故障時や定期点検時の作業性を向上できる。
【0034】
エキサイタ70は配設部81に、配設部81は内装パネル41(上部パネル41b)に、それぞれ直接当接される。即ち、これら各部材の当接部分の間には、接着剤が介在されないので、エキサイタ70の振動を上部パネル41bに効率的に伝達できる。その結果、音量の低下を抑制できる。
【0035】
図1に戻って説明する。このように、本実施形態では、エキサイタ70が妻構体40における内装パネル41に配設されるので、その内装パネル41がエキサイタ70により振動されることで発生する音を、車両前後方向(矢印F-B方向)へ向けて出力することができ、車内全体へ音声情報を行き渡らせることができる。
【0036】
即ち、妻構体40の内装パネル41をエキサイタ70の取付対象物とすることは、車両前後方向に長い鉄道車両1において特に有効であり、これにより、エキサイタ70の数を抑制して、コストを低減できる。
【0037】
更に、エキサイタ70は、扉60よりも上側に位置する上部パネル41bに配設され、比較的高い位置から音を出力できるので、出力された音を座席50や乗客に遮られ難くでき、車内全体へ音声情報を行き渡らせることができる。
【0038】
ここで、本実施形態では、車両前側(矢印F方向側)の妻構体40と車両後側(矢印B方向側)の妻構体40とのそれぞれの内装パネル41(上部パネル41b)にエキサイタ70が配設されるところ、一方のエキサイタ70は、車両幅方向(矢印L-R方向)の中央よりも一側(例えば、矢印L方向側)に配設され、他方のエキサイタ70は、車両幅方向の中央よりも他側(矢印R方向側)に配設される。
【0039】
即ち、一方のエキサイタ70と他方のエキサイタ70とが斜向かいとなる位置に配設されるので、一方のエキサイタ70(一方の内装パネル41)から出力される音と他方のエキサイタ70(他方の内装パネル41)から出力される音とを重なり難くでき、車内全体へ音声情報を行き渡らせることができる。
【0040】
なお、本実施形態では、車両幅方向(矢印L-R方向)において、中央から一方のエキサイタ70までの距離と中央から他方のエキサイタ70までの距離とが同一とされる。これにより、音声情報が車内の幅方向の一部に偏ることを抑制できる。
【0041】
次いで、
図3を参照して、第2実施形態における鉄道車両201について説明する。上述した第1実施形態における鉄道車両1では、上部パネル41bがポリカーボネートから形成される場合を説明したが、第2実施形態における鉄道車両201の上部パネル241bは、アルミニウムから形成される。なお、上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0042】
図3(a)は、第2実施形態における鉄道車両201の上部パネル241bの断面図であり、
図3(b)は、
図3(a)の矢印IIIb方向視における上部パネル241bの部分拡大上面図であり、
図3(c)は、
図3(b)の矢印IIIc方向視における上部パネル241bの背面図である。なお、
図3(a)は、
図1(a)のIIa-IIa線における断面に対応する。
【0043】
図3に示すように、上部パネル241bは、アルミニウムから板状に形成され、第1実施形態における上部パネル41bと同様に、前傾姿勢で配設される。上部パネル241bの背面側(車外側)の面には、一対の固定部材291と、それら固定部材291に連結される連結部材292とが配設される。エキサイタ70は、連結部材292に固定されることで、上部パネル241bの背面側(車外側)に配設される。
【0044】
固定部材291は、上部パネル41bの背面側に接着により固定される接着部291aと、その接着部291aの一端から延設される延設部291bとを備え、板状の素材を略90度に折り曲げて上面視(矢印IIIb方向視)L字形状に形成される。固定部材291は、延設部291bを向かい合わせた姿勢で、一対が配設される。延設部291bには、複数箇所(本実施形態では2箇所)に挿通穴が穿設される。
【0045】
連結部材292は、エキサイタ70が配設される配設部292aと、その配設部292aの両端からから延設される一対の延設部292bとを備え、アルミニウムから板状に形成される素材の2箇所を略90度に折り曲げて上面視(矢印IIIb方向視)コの字形状に形成される。連結部材292は、一対の固定部材291(延設部291b)の対向間に配設される。
【0046】
配設部292aは、エキサイタ70を支持すると共に、そのエキサイタ70から受けた振動を上部パネル241bへ伝達する部位である。配設部292aには、第1実施形態における配設部81と同様に、エキサイタ70を固定するための皿穴が穿設される。
【0047】
延設部292bには、固定部材291の延設部291bにおける挿通穴に対応する位置に挿通穴が穿設されると共に、その挿通穴に対応する位置にクリップナットCが取り付けられ、延設部291b,292bに挿通されたボルトBがクリップナットCに締結されることで、連結部材292が固定部材291に締結固定(連結)される。
【0048】
なお、連結部材292の延設部292bにおける挿通穴は、配設部292aの板厚方向に長い長穴として形成される。長孔に沿ってボルトBの締結位置を調整することで、配設部292aと上部パネル241bとの当接状態の調整を容易に行える。
【0049】
このように、本実施形態の配設構造によれば、上部パネル241bの背面(車外側の面)に固定部材291を接着により固定し、その固定部材291に連結される連結部材292にエキサイタ70を固定させるので、エキサイタ70を上部パネル241bにボルトで締結固定する必要がない。即ち、上部パネル241bの正面(車内側の面)にボルトが飛び出すことを回避できる。これにより、上部パネル241bにエキサイタ70を配設しても、車内側の美観が損なわれることを抑制できる。
【0050】
この場合、連結部材292の固定部材291に対する連結は、ボルトBによる締結により行われ、連結部材292が固定部材291に対して着脱自在とされるので、車内側の美観が損なわれることを抑制しつつ、エキサイタ70を上部パネル241bの背面(車外側の面)に直接接着する場合と比較して、エキサイタ70の取り外し(交換)を容易に行うことができる。よって、エキサイタ70の故障時や定期点検時の作業性を向上できる。
【0051】
エキサイタ70は配設部292aに、配設部292aは上部パネル241bに、それぞれ直接当接される。即ち、これら各部材の当接部分の間には、接着剤が介在されないので、エキサイタ70の振動を上部パネル241bに効率的に伝達できる。その結果、音量の低下を抑制できる。
【0052】
次いで、
図4を参照して、第3実施形態における鉄道車両301について説明する。上述した第1実施形態における鉄道車両1では、上部パネル41bとエキサイタ70との間に取付板80(配設部81)が介在される場合を説明したが、第3実施形態における鉄道車両301のエキサイタ370は、上部パネル41bに直接当接される。なお、上述した各実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0053】
図4(a)は、第3実施形態における鉄道車両301の上部パネル241bの部分拡大上面図であり、
図4(b)は、
図4(a)の矢印IVb方向視における上部パネル41bの背面図である。なお、
図4(a)は、
図2(a)の矢印IIIb方向視に対応する。
【0054】
図4(a)に示すように、エキサイタ370は、本体部71と、フランジ部372とを備え、本体部71の軸方向一側(
図4(a)下側)の端面が、その端面に当接された対象物へ振動を伝達する伝達面とされる。フランジ部372は、伝達面から軸方向他側に離間した位置において、本体部71の外周面から張り出される。フランジ部372には、複数箇所(本実施形態では4箇所)にめねじが螺刻される。
【0055】
取付板380は、アルミニウムから板状に形成される。取付板380には、ねじ座44のめねじと、エキサイタ370のフランジ部372のねめじとのそれぞれに対応する位置に、挿通穴が穿設される。また、取付板380には、エキサイタ370の本体部71(フランジ部372よりも軸方向他側の部分)が挿通可能な開口380aが開口形成される。
【0056】
エキサイタ370は、取付板380の開口380aに本体部71が挿通された状態で、フランジ部372がボルトBにより締結されることで、取付板380に支持される。取付板380は、ボルトBによりねじ座44に締結固定(連結)される。これにより、エキサイタ370が上部パネル41bの背面(車外側の面)に直接当接される。
【0057】
このように、本実施形態の配設構造によっても、上部パネル41bの正面(車内側の面)にボルトが飛び出すことを回避でき、車内側の美観が損なわれることを抑制できる。また、取付板380がねじ座44に対して着脱自在とされるので、エキサイタ70の取り外し(交換)を容易に行うことができる。更に、上部パネル41bにエキサイタ370が直接当接され、接着剤が介在されないので、エキサイタ370の振動を上部パネル41bに効率的に伝達できる。
【0058】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0059】
上記各実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、各構成(例えば、エキサイタ70,370、ボルトBや皿頭ねじS)の配設数は任意である。
【0060】
上記各実施形態のうちの一の実施形態における一部を他の実施形態における一部と入れ替える又は組み合わせても良い。
【0061】
例えば、上記第2実施形態におけるエキサイタ70を上記第3実施形態におけるエキサイタ370と入れ替えても良い(エキサイタ370を連結部材292に支持させても良い)。なお、この場合には、固定部材291の延設部291bの延設長さを延長すると共に、連結部材292の配設部292aに開口380aを開口形成すれば良い。
【0062】
また、例えば、車両前後(矢印F-B方向)方向において、一方の妻構体40には、上記第1実施形態における上部パネル41bが、他方の妻構体40には、上記第2実施形態における上部パネル241bが、それぞれ配設されていても良い。
【0063】
上記各実施形態では、エキサイタ70,370の取付対象物が妻構体40の内装パネル41とされる場合を説明したが、これに代えて、又は、これに追加して、エキサイタ70,370の取付対象物を側構体20又は(及び)屋根構体30の内装パネル21,31としても良い。
【0064】
上記各実施形態では、妻構体40の内装パネル41において、エキサイタ70,370の取付対象物を上部パネル41b,241bとする場合を説明したが、これに代えて、又は、これに追加して、エキサイタ70,370の取付対象物を下部パネル241aとしても良い。この場合には、エキサイタ70,370の配設位置を、座席50よりも上方(矢印U方向側)となる高さ位置とすることが好ましい。出力された音が座席50に遮られ難くでき、車内全体へ音声情報を行き渡らせ易くできるからである。
【0065】
上記各実施形態では、上部パネル41b,241bが前傾姿勢で配設される場合を説明した。これにより、上述した車両前後のエキサイタ70,370が斜向かいに配設される構成との相乗効果により、音声情報を車内全体へ行き渡らせることができる。但し、上部パネル41b,241bが後傾姿勢または鉛直姿勢で配設されていても良い。
【0066】
上記各実施形態では、妻構体40の内装パネル41が下部パネル41aと上部パネル41b,241bとに分割される場合を説明したが、非分割の1枚のパネルとして内装パネル41が形成されていても良い。
【0067】
上記各実施形態では、エキサイタ70,370の取付対象物(上部パネル41b,241b)がポリカーボネート又はアルミニウムから形成される場合を説明したが、他の材質を採用しても良い。他の材質としては、例えば、鉄鋼やステンレスなどの金属材料、銅や真鍮などの非鉄金属、アクリル樹脂やエポキシ樹脂などの合成樹脂、CFRPなどの繊維強化樹脂などが例示される。
【0068】
エキサイタ70,370の取付対象物(上部パネル41b,241b)の材質を変更した場合、材質の剛性によって音の振動伝播(取り付け対象の振動態様)を異ならせ、音の放射(音響特性、音の強度や広がり方など)をコントロールすることができる。即ち、エキサイタ70,370の取付対象物の材質は、鉄道車両1,201,301に適した音の放射を考慮して適宜設定しても良い。
【符号の説明】
【0069】
1,201,301 鉄道車両
20 側構体
21 内装パネル
30 屋根構体
31 内装パネル
40 妻構体
41 内装パネル(妻パネル)
41b 上部パネル(妻パネル)
42 背面板(取付部材、固定部材)
43 パッキン(取付部材、固定部材)
44 ねじ座(取付部材、固定部材)
60a 扉開口部
70,370 エキサイタ
80,380 取付板(取付部材、連結部材)
291 固定部材(取付部材)
292 連結部材(取付部材)
B ボルト(ねじ)