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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20240628BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240628BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20240628BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240628BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20240628BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240628BHJP
   F24H 15/375 20220101ALI20240628BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/38 120
H02J3/32
H02J3/14 130
H02J7/34 G
H02J9/06 120
H02J13/00 311T
F24H15/375
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020060989
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021164179
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】藤本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】村上 伸太郎
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-055477(JP,A)
【文献】特開2018-170949(JP,A)
【文献】特開2016-133267(JP,A)
【文献】特開2018-042320(JP,A)
【文献】特開2007-097310(JP,A)
【文献】特開2013-110951(JP,A)
【文献】特開2014-155344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-5/00
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J9/00-11/00
H02J13/00
F24D18/00
F24H1/00
F24H1/18-1/20
F24H4/00-4/06
F24H15/20-15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力負荷へ電力を供給する電力供給システムであって、
自然エネルギーを利用して発電可能な発電部と、
電力の供給を受けて稼働する給湯器と、
前記給湯器の動作を制御可能な制御部と、
を具備し、
前記電力負荷は、任意のタイミングで制御可能な複数の機器からなる第一の電力負荷、及び、一括して制御可能な複数の機器からなる第二の電力負荷を含み、
前記第一の電力負荷は、前記給湯器、及び、前記給湯器とは異なる機器を含み、
前記制御部は、
停電時における前記発電部の余剰電力の発生の有無を予測する余剰電力予測処理と、
前記発電部の余剰電力が発生することが予測された場合にのみ、前記給湯器を稼働させる稼働処理と、
を実行可能であり、
前記稼働処理において、
前記第一の電力負荷のうち前記給湯器とは異なる機器が稼働可能な範囲内で当該機器へ供給する電力を段階的に減少させる減少処理の間、又は、前記減少処理の終了後に前記第二の電力負荷への電力の供給を一括して停止させる一括停止処理の後に、前記発電部の余剰電力が発生するか判断される、
電力供給システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記稼働処理において、
前記発電部の余剰電力が、前記給湯器の消費電力よりも大きい場合にのみ、前記給湯器を稼働させる、
請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記発電部からの電力を充放電可能な蓄電池をさらに具備し、
前記制御部は、
前記発電部の発電電力から、前記電力負荷における消費電力及び前記蓄電池の充電電力を差し引くことで、前記発電部の余剰電力を算出する、
請求項1又は請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記制御部は、
停電時における前記蓄電池の蓄電残量が少なくとも電力負荷の消費電力量よりも大きい場合、電力負荷を使用することができる旨を報知する報知処理を実行可能である、
請求項3に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記報知処理において、
前記蓄電池の出力の余力を示す放電残出力と、前記発電部の余剰電力とを足し合わせた値が、電力負荷の消費電力よりも大きい場合にのみ、電力負荷を使用することができる旨を報知する、
請求項4に記載の電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器を有する電力供給システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給湯器を有する電力供給システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、自然エネルギーを利用して発電可能な太陽光発電部と、電力を充放電可能な蓄電装置と、電力を消費して熱を発生させ蓄える給湯器と、を具備する電力供給システムが記載されている。
【0004】
当該電力供給システムにおいては、余剰電力(太陽光発電部において発電された電力から蓄電装置に充電される電力及び電力負荷で消費される電力を除いた電力)が発生する場合には、給湯器を運転させることで前記余剰電力を給湯器で消費させるように構成されている。このように構成することにより、余剰電力の有効活用を図ることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、停電が発生していない場合(通常時)における電力供給システムの運用方法に関するものであり、停電時における運用方法を提案するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-41380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、停電時において給湯器を好適に稼働させることが可能な電力供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、電力負荷へ電力を供給する電力供給システムであって、自然エネルギーを利用して発電可能な発電部と、電力の供給を受けて稼働する給湯器と、前記給湯器の動作を制御可能な制御部と、を具備し、前記電力負荷は、任意のタイミングで制御可能な複数の機器からなる第一の電力負荷、及び、一括して制御可能な複数の機器からなる第二の電力負荷を含み、前記第一の電力負荷は、前記給湯器、及び、前記給湯器とは異なる機器を含み、前記制御部は、停電時における前記発電部の余剰電力の発生の有無を予測する余剰電力予測処理と、前記発電部の余剰電力が発生することが予測された場合にのみ、前記給湯器を稼働させる稼働処理と、を実行可能であり、前記稼働処理において、前記第一の電力負荷のうち前記給湯器とは異なる機器が稼働可能な範囲内で当該機器へ供給する電力を段階的に減少させる減少処理の間、又は、前記減少処理の終了後に前記第二の電力負荷への電力の供給を一括して停止させる一括停止処理の後に、前記発電部の余剰電力が発生するか判断されるものである。
【0010】
請求項2においては、前記制御部は、前記稼働処理において、前記発電部の余剰電力が、前記給湯器の消費電力よりも大きい場合にのみ、前記給湯器を稼働させるものである。
【0011】
請求項3においては、前記発電部からの電力を充放電可能な蓄電池をさらに具備し、前記制御部は、前記発電部の発電電力から、前記電力負荷における消費電力及び前記蓄電池の充電電力を差し引くことで、前記発電部の余剰電力を算出するものである。
【0012】
請求項4においては、前記制御部は、停電時における前記蓄電池の蓄電残量が少なくとも電力負荷の消費電力量よりも大きい場合、電力負荷を使用することができる旨を報知する報知処理を実行可能なものである。
【0013】
請求項5においては、前記制御部は、前記報知処理において、前記蓄電池の出力の余力を示す放電残出力と、前記発電部の余剰電力とを足し合わせた値が、電力負荷の消費電力よりも大きい場合にのみ、電力負荷を使用することができる旨を報知するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、停電時において給湯器を好適に稼働させることができる。
【0016】
請求項2においては、余剰電力だけで給湯器を稼働させることができる。
【0017】
請求項3においては、適切な余剰電力の値を算出することができる。
【0018】
請求項4においては、停電時における利便性を向上させることができる。
【0019】
請求項5においては、電力負荷を確実に使用することができる場合にのみ、報知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る電力供給システムの構成を示したブロック図。
図2】EMSの接続関係を示した図。
図3】通常時(非停電時)の電力の供給態様の一例を示した図。
図4】停電時の電力の供給態様の一例を示した図。
図5】負荷の一覧を示した図。
図6】停電時制御のフローチャートを示した図。
図7図6のフローチャートの続きを示した図。
図8図7のフローチャートの続きを示した図。
図9】電力需要等を予測した段階の具体例を示した図。
図10】(a)消費電力の抑制が実施された段階の具体例を示した図。(b)消費電力を増加させた段階の具体例を示した図。
図11】(a)さらに消費電力を増加させた段階の具体例を示した図。(b)給湯器の運転を決定した段階の具体例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、図1を用いて、本発明の一実施形態に係る電力供給システム1について説明する。なお、本明細書においては、「上流側」及び「下流側」とは、系統電源Kからの電力供給方向を基準とするものとする。
【0022】
図1に示す電力供給システム1は、系統電源Kからの電力や、発電された電力を負荷(電力負荷)へと供給するものである。電力供給システム1は、住宅に設けられ、当該住宅の負荷(例えば、住宅の機器等)へと電力を供給する。電力供給システム1は、主として分電盤10、一般回路20、重要回路30、最重要回路40、蓄電システム50、特定回路60、リレー70及びEMS80を具備する。
【0023】
分電盤10は、電力の供給元(系統電源Kや後述する蓄電システム50)から供給される電力を負荷に分配するものである。分電盤10は、配電線L1を介して系統電源Kと接続される。分電盤10は、住宅に設けられた各種の負荷と接続される。具体的には、分電盤10は、後述する一般回路20を介して住宅の負荷(不図示)と接続される。また分電盤10は、後述するハイブリッドパワコン53、特定回路60及び重要回路30を介して住宅の負荷(本実施形態では、テレビ等)と接続される。また分電盤10は、後述するハイブリッドパワコン53、特定回路60及び最重要回路40を介して住宅の負荷(本実施形態では、冷蔵庫等)と接続される。
【0024】
一般回路20は、供給される電力を住宅に設けられた負荷へと供給するものである。一般回路20は、分電盤10と接続される。
【0025】
重要回路30は、供給される電力を住宅に設けられた負荷へと供給するものである。重要回路30は、ハイブリッドパワコン53及び特定回路60を介して分電盤10と接続される。
【0026】
最重要回路40は、供給される電力を住宅に設けられた負荷へと供給するものである。最重要回路40は、ハイブリッドパワコン53及び特定回路60を介して分電盤10と接続される。
【0027】
ここで、一般回路20、重要回路30及び最重要回路40は、互いに異なる負荷と接続されている。すなわち、一般回路20、重要回路30及び最重要回路40は、互いに異なる負荷へと電力を供給する。具体的には、重要回路30及び最重要回路40は、比較的重要な負荷(具体的には、停電時においても電力が供給されるのが好ましい負荷)と接続されている。また、最重要回路40は、重要回路30よりもさらに重要な負荷(具体的には、停電時においても電力を供給する必要がある負荷)と接続されている。また、一般回路20は、その他の負荷(具体的には、停電時に電力を供給する必要性が低い負荷)と接続されている。
【0028】
本実施形態においては、一例として、重要回路30は、テレビ31、充電器32、電子レンジ33、炊飯器34及び洗濯機35と接続されているものとする。また最重要回路40は、冷蔵庫41、照明42、エアコン43及び給湯器44(ヒートポンプ給湯器)と接続されているものとする。また一般回路20は、その他の負荷と接続されているものとする。
【0029】
なお、本実施形態では、便宜上、一般回路20、重要回路30及び最重要回路40に接続された負荷を、それぞれ「一般負荷」、「重要負荷」及び「最重要負荷」と称する場合がある。
【0030】
蓄電システム50は、電力を蓄電したり、負荷へと供給したりするものである。蓄電システム50は、太陽光発電部51、蓄電池52及びハイブリッドパワコン53を具備する。
【0031】
太陽光発電部51は、太陽光を利用して発電する装置である。太陽光発電部51は、太陽電池パネル等により構成される。太陽光発電部51は、例えば、住宅の屋根の上等の日当たりの良い場所に設置される。
【0032】
蓄電池52は、電力を充電可能に構成されるものである。蓄電池52は、例えば、リチウムイオン電池により構成される。蓄電池52は、後述するハイブリッドパワコン53を介して太陽光発電部51と接続される。
【0033】
ハイブリッドパワコン53は、電力を適宜変換するもの(ハイブリッドパワーコンディショナ)である。ハイブリッドパワコン53は、太陽光発電部51で発電された電力及び蓄電池52から放電された電力を分電盤10及び後述する特定回路60に出力可能であると共に、分電盤10からの電力を蓄電池52に出力可能に構成される。また、ハイブリッドパワコン53は、太陽光発電部51及び蓄電池52の性能や運転状態に関する情報を取得可能に構成される。ハイブリッドパワコン53は、配電線L2及び配電線L3を介して分電盤10と接続される。蓄電システム50のハイブリッドパワコン53は、図示せぬ電力センサの検出結果等に基づいて、負荷の消費電力に応じて放電(出力)する電力を調整可能な負荷追従運転を行うことができる。
【0034】
特定回路60は、供給される電力を重要回路30及び最重要回路40へと供給するものである。特定回路60は、配電線L4を介してハイブリッドパワコン53と接続される。また特定回路60は、配電線L5を介して重要回路30と接続される。また特定回路60は、配電線L6を介して最重要回路40と接続される。
【0035】
リレー70は、配電線L5を介した電力の流通の可否を切り換えるものである。リレー70は、配電線L5の中途部に設けられる。リレー70は、外部からの制御信号に基づいてON/OFF(開閉)を切り換えることができる。
【0036】
図2に示すEMS80は、電力供給システム1の動作を管理するエネルギーマネジメントシステム(Energy Management System)である。EMS80は、CPU等の演算処理部、RAMやROM等の記憶部や、タッチパネル等の入出力部等を具備する。EMS80の記憶部には、電力供給システム1の動作を制御する際に用いられる種々の情報やプログラム等が予め記憶される。EMS80の演算処理部は、前記プログラムを実行して前記種々の情報を用いた所定の演算処理等を行うことで、電力供給システム1を動作させることができる。
【0037】
EMS80は、ハイブリッドパワコン53と電気的に接続される。EMS80は、ハイブリッドパワコン53から所定の信号が入力可能に構成され、太陽光発電部51や蓄電池52に関する各種の情報を取得することができる。
【0038】
また、EMS80は、リレー70に電気的に接続され、当該リレー70の動作を制御することができる。
【0039】
また、EMS80は、最重要回路40の照明42、エアコン43及び給湯器44と電気的に接続され、当該照明42、エアコン43及び給湯器44の動作を制御することができる。
【0040】
次に、図3及び図4を用いて、電力供給システム1の電力の供給態様の概要について説明する。
【0041】
図3に示すように、ハイブリッドパワコン53は、通常時(非停電時)において、太陽光発電部51で発電された電力を、配電線L2を介して分電盤10へ供給する。当該電力は、一般負荷の要求に応じて一般回路20へと供給される。また当該電力は、重要負荷及び最重要負荷の要求に応じて、配電線L3、ハイブリッドパワコン53、配電線L4、特定回路60等を介して重要回路30及び最重要回路40へと供給される。このように、本実施形態では、通常時において、ハイブリッドパワコン53からの電力は、一旦分電盤10を介して(バイパスさせて)一般回路20及び特定回路60へと供給される。
【0042】
また、蓄電池52は、前記電力センサ(不図示)の検出結果に応じて負荷追従運転を行う。例えば、太陽光発電部51で発電された電力では負荷の消費電力を賄うことができない場合、蓄電池52から放電された電力が各負荷へと供給される。また、太陽光発電部51及び蓄電池52からの電力では負荷の消費電力を賄うことができない場合、系統電源Kからの電力が購入(買電)される。
【0043】
また、図3では、一例として、太陽光発電部51及び蓄電池52からの電力だけでは負荷の消費電力を賄うことができない場合の電力の流れを矢印で示しているが、例えば太陽光発電部51の電力が負荷の消費電力に対して余剰する場合(余剰電力が発生する場合)には、蓄電池52の負荷追従運転により、当該蓄電池52に余剰電力を充電させることができる。また、蓄電池52には、余剰電力だけでなく、深夜の時間帯における系統電源Kからの電力(比較的安価な電力)を充電させることもできる。
【0044】
また、図4に示すように、ハイブリッドパワコン53は、停電を検知すると、太陽光発電部51及び蓄電池52からの電力を、分電盤10ではなく、配電線L4を介して特定回路60へ出力する。具体的には、ハイブリッドパワコン53は、太陽光発電部51で発電された電力を、配電線L4を介して特定回路60へ供給する。当該電力は、配電線L5及び配電線L6を介して重要回路30及び最重要回路40(重要負荷及び最重要負荷)へとそれぞれ供給される。また、太陽光発電部51からの電力では重要負荷及び最重要負荷の消費電力を賄うことができない場合、蓄電池52が放電を行い、当該蓄電池52からの電力が配電線L4を介して特定回路60(ひいては、重要負荷及び最重要負荷)へと供給される。また、太陽光発電部51からの電力が重要負荷及び最重要負荷に対して余剰する場合には、当該余剰分の電力を蓄電池52に充電させることができる。
【0045】
このように、ハイブリッドパワコン53は、停電時には、太陽光発電部51及び蓄電池52からの電力をバイパスさせずに特定回路60(ひいては、重要回路30及び最重要回路40)へ供給する。これによって、電力供給システム1は、停電時に太陽光発電部51及び蓄電池52を非常用電源として機能させ、一般負荷を除く一部の負荷(重要負荷及び最重要負荷)へ電力を供給することができる。
【0046】
上述のように、停電時においては、一部の負荷(重要負荷及び最重要負荷)へのみ電力を供給可能とすることで、限られた電力(具体的には、太陽光発電部51及び蓄電池52からの電力)の消費を節約することができる。
【0047】
ここで、上述のように、停電時において電力の供給先を一部の負荷(重要負荷及び最重要負荷)に限定することで電力の消費を節約する構成としているものの、当該負荷において無制限に電力を消費してしまうと、限られた電力を短期間で消費してしまい、その後電力の供給が不能となる(電力を使用することができなくなる)ことが懸念される。
【0048】
そこで本実施形態では、EMS80によって、停電時における負荷への電力の供給の維持と、利便性の向上と、を両立させるための制御(以下、「停電時制御」と称する)が行われる。
【0049】
以下、図5から図8を用いて、停電時制御の内容について具体的に説明する。
【0050】
まず、図5を用いて、停電時制御において動作(ON/OFF等)が制御される負荷について、具体的に説明する。
【0051】
図5に示すように、停電時制御においては、停電時に電力が供給され得る最重要負荷及び重要負荷が制御対象となる。前述のように最重要負荷(冷蔵庫41、照明42、エアコン43及び給湯器44)は、最重要回路40に接続されている。また重要負荷(テレビ31、充電器32、電子レンジ33、炊飯器34及び洗濯機35)は重要回路30に接続されている(図1参照)。ここで、特定回路60と重要回路30とを接続する配電線L5にはリレー70が設けられている。このため、リレー70の動作を制御することで、重要回路30を任意のタイミングで解列することができる。すなわち、重要負荷への電力の供給を、任意のタイミングでまとめて遮断することができる。
【0052】
また、図5に示すように、最重要負荷の照明42、エアコン43及び給湯器44については、任意のタイミングでON/OFFの制御が可能となっている。
【0053】
また、図5に示すように、照明42及びエアコン43については、サービスレベルを任意に調整することができる。具体的には、照明42は、照度を任意に調整することができる。本実施形態では、照明42の照度を1~5の5段階に調整可能なものとする。なお、本実施形態では、照明42を0(OFF)に制御することはないものとする。
【0054】
また、エアコン43は、設定温度を任意に調整することができる。本実施形態では、エアコン43の設定温度を0(=OFF)~5の6段階に調整可能なものとする。なお、エアコン43の設定温度が最大(=5)とは、本実施形態においては、予めエアコン43の利用者(住宅の居住者等)により設定されていた温度であることを意味している。すなわち本実施形態においては、エアコン43の設定温度は、利用者により設定された温度から、段階的に出力を下げ、最終的にOFFとなるまでの6段階に調整可能なものとする。
【0055】
また、図5に示すように、重要負荷(テレビ31、充電器32、電子レンジ33、炊飯器34及び洗濯機35)は、「お知らせ」の対象となっている。「お知らせ」とは、稼働が推奨される負荷(機器)を利用者(住宅の居住者等)に報知するものである。なお、当該「お知らせ」に関する処理については、後述のステップS35の処理と併せて説明する。
【0056】
次に、図6から図8を用いて、停電時制御の流れ(フローチャート)について説明する。なお、停電時制御は、停電が発生した際にEMS80によって繰り返し(例えば、数分ごとに)実行される。EMS80は、停電時制御を実行することで、電力需要や発電量を予測し、予測結果に基づいて特定回路60に接続された負荷の運転を制御する。以下、具体的に説明する。
【0057】
ステップS10において、EMS80は、任意の方法で(例えば各種の通信手段(インターネット等)を介して)外部情報を取得することができるか否かを判定する。ここで、外部情報とは、後述するステップS12で発電量等を予測する際に利用できる種々の情報である。外部情報には、例えば最新の天気予報等の情報が含まれる。EMS80は、外部情報を取得することができると判定した場合(ステップS10で「YES」)、ステップS11に移行する。一方、EMS80は、外部情報を取得することができないと判定した場合(ステップS10で「NO」)、ステップS13に移行する。
【0058】
ステップS11において、EMS80は、外部情報を取得する。この処理において、EMS80は、任意の方法で、後述するステップS12の予測を行うための情報(天気予報等)を取得する。例えば、天気予報に関する情報を取得する場合には、EMS80は、現時点から任意の時期までの天気予報を取得することができる。例えば、EMS80は、現時点から電力供給システム1の運転計画の対象となる期間(以下、「計画対象期間」と称する)が終了するまで(例えば、次の日の余剰電力の発生が終了する時間まで)の天気予報を取得する。また、EMS80はさらに長期間(可能な限り長期間)の天気予報を取得することも可能である。また外部情報には、天気予報の他、太陽光発電部51の過去の発電電力のデータや、過去の購入電力のデータ等を含むことができる。EMS80は、ステップS11の処理を行った後、ステップS12に移行する。
【0059】
ステップS12において、EMS80は、現在から計画対象期間終了までの電力需要及び発電量(発電電力)を予測する。この処理において、EMS80は、ステップS11で取得した天気予報等の情報、及び予め有していた各種の情報(過去の発電電力のデータや、過去の購入電力のデータ等)に基づいて当該予測を行う。またEMS80は、各時刻(1時間ごと)における電力需要等を予測する。
【0060】
ここで、EMS80は、重要回路30及び最重要回路40に分けて、電力需要を予測する。より具体的には、重要負荷(テレビ31等)及び最重要負荷(冷蔵庫41等)の電力需要を、個別に予測する。またこの際、詳しくは後述するが、給湯器44は特定の場合にのみ運転させるため、給湯器44の電力需要の予測は行わない(給湯器44は運転させないものとして電力需要を予測する)。
【0061】
EMS80は、ステップS12の処理を行った後、ステップS13に移行する。
【0062】
ステップS13において、EMS80は、ステップS12の予測結果に基づいて、各時刻における蓄電残量(蓄電池52の残量)を予測(算出)する。この際、EMS80は、電力需要に対して、太陽光発電部51からの発電電力、蓄電池52からの放電電力の順に電力を供給するものと想定して、蓄電残量を算出する。またEMS80は、太陽光発電部51により発電された電力の余剰分(余剰電力)は、蓄電池52に充電するものと想定して、蓄電残量を算出する。なお、EMS80は、蓄電残量としてSOC(充電率(%))を算出する。EMS80は、ステップS13の処理を行った後、ステップS14に移行する。
【0063】
ステップS14において、EMS80は、予測した蓄電残量の最小値が、所定の閾値α未満となるか否かを判定する。具体的には、EMS80は、予測した各時刻における蓄電残量のうちの最小値が、閾値α(例えば、10%)未満となるか否かを判定する。当該閾値αは、蓄電池52に最低限の電力を確保するために設定される値であり、任意に設定することが可能である。
【0064】
EMS80は、予測した蓄電残量の最小値が、閾値α未満となると判定した場合(ステップS14で「YES」)、ステップS15に移行する。EMS80は、移行後のステップS15~ステップS20の処理によって、蓄電池52の蓄電量を維持するために、電力需要の抑制を図る。一方、EMS80は、予測した蓄電残量の最小値が、閾値α未満とならないと判定した場合(ステップS14で「NO」)、ステップS21(図7参照)に移行する。EMS80は、移行後のステップS21~ステップS27の処理によって、居住者の利便性や快適性の向上を図る。
【0065】
ステップS15において、EMS80は、エアコン43の現在のサービスレベルが0より大きいか否かを判定する。EMS80は、エアコン43の現在のサービスレベルが0より大きいと判定した場合(ステップS15で「YES」)、ステップS16に移行する。一方、EMS80は、エアコン43の現在のサービスレベルが0であると判定した場合(ステップS15で「NO」)、ステップS17に移行する。
【0066】
ステップS16において、EMS80は、エアコン43のサービスレベルを1つ下げる。例えば、現在のエアコン43のサービスレベルが「3」である場合には、サービスレベルを「2」に下げる。これによって、エアコン43の消費電力が低減されることになる。EMS80は、当該ステップS16の処理を行った後、再度ステップS11の処理に戻る。
【0067】
一方、ステップS15から移行したステップS17において、EMS80は、照明42の現在のサービスレベルが1より大きいか否かを判定する。EMS80は、照明42の現在のサービスレベルが1より大きいと判定した場合(ステップS17で「YES」)、ステップS18に移行する。一方、EMS80は、照明42の現在のサービスレベルが1以下であると判定した場合(ステップS17で「NO」)、ステップS19に移行する。
【0068】
ステップS18において、EMS80は、照明42のサービスレベルを1つ下げる。例えば、現在の照明42のサービスレベルが「3」である場合には、サービスレベルを「2」に下げる。これによって、照明42の消費電力が低減されることになる。なお、ステップS17の判定を介してステップS18の処理を行うため、EMS80は、照明42のサービスレベルを「0」まで下げることはない。EMS80は、当該ステップS18の処理を行った後、再度ステップS11の処理に戻る。
【0069】
一方、ステップS17から移行したステップS19において、EMS80は、重要回路30が特定回路60と接続されているか否かを判定する。具体的には、EMS80は、リレー70がON(閉)状態であり、特定回路60から重要回路30へと電力が供給可能な状態か否かを判定する。EMS80は、重要回路30が特定回路60と接続されていると判定した場合(ステップS19で「YES」)、ステップS20に移行する。一方、EMS80は、重要回路30が特定回路60と接続されていない(解列されている)と判定した場合(ステップS19で「NO」)、ステップS28(図8参照)に移行する。
【0070】
ステップS20において、EMS80は、重要回路30を解列させる。具体的には、EMS80は、リレー70をOFF(開)に切り換えて、特定回路60から重要回路30への電力の供給を遮断する。EMS80は、ステップS20の処理を行った後、再度ステップS11の処理に戻る。
【0071】
一方、ステップS14から移行したステップS21(図7参照)において、EMS80は、重要回路30が特定回路60と解列されているか否かを判定する。具体的には、EMS80は、リレー70がOFF(開)状態であり、特定回路60から重要回路30への電力の供給が遮断されている状態か否かを判定する。EMS80は、重要回路30が特定回路60と解列されていると判定した場合(ステップS21で「YES」)、ステップS22に移行する。一方、EMS80は、重要回路30が特定回路60と解列されていないと判定した場合(ステップS21で「NO」)、ステップS23に移行する。
【0072】
ステップS22において、EMS80は、重要回路30を接続させる。具体的には、EMS80は、リレー70をON(閉)に切り換えて、特定回路60から重要回路30へと電力が供給可能な状態とする。EMS80は、ステップS22の処理を行った後、再度ステップS11(図6参照)の処理に戻る。
【0073】
一方、ステップS21から移行したステップS23において、EMS80は、照明42の現在のサービスレベルが5(最大)未満か否かを判定する。EMS80は、照明42の現在のサービスレベルが5未満であると判定した場合(ステップS23で「YES」)、ステップS24に移行する。一方、EMS80は、照明42の現在のサービスレベルが5(最大)であると判定した場合(ステップS23で「NO」)、ステップS25に移行する。
【0074】
ステップS24において、EMS80は、照明42のサービスレベルを1つ上げる。例えば、現在の照明42のサービスレベルが「3」である場合には、サービスレベルを「4」に上げる。これによって、居住者の利便性や快適性を向上させることができる。EMS80は、当該ステップS24の処理を行った後、再度ステップS11(図6参照)の処理に戻る。
【0075】
一方、ステップS23から移行したステップS25において、EMS80は、予測した蓄電残量の最小値が、所定の閾値βより大きいか否かを判定する。具体的には、EMS80は、予測した各時刻における蓄電残量のうちの最小値が、閾値β(例えば、30%)より大きくなるか否かを判定する。当該閾値βは、蓄電池52の蓄電残量にある程度余裕があることを判定するために設定される値であり、閾値α(ステップS14等参照)よりも大きい値で、任意に設定することが可能である。
【0076】
EMS80は、予測した蓄電残量の最小値が、閾値βより大きいと判定した場合(ステップS25で「YES」)、ステップS26に移行する。一方、EMS80は、予測した蓄電残量の最小値が、閾値β以下であると判定した場合(ステップS25で「NO」)、ステップS28(図8参照)に移行する。
【0077】
ステップS26において、EMS80は、エアコン43の現在のサービスレベルが5(最大)未満か否かを判定する。EMS80は、エアコン43の現在のサービスレベルが5未満であると判定した場合(ステップS26で「YES」)、ステップS27に移行する。一方、EMS80は、エアコン43の現在のサービスレベルが5(最大)であると判定した場合(ステップS26で「NO」)、ステップS28(図8参照)に移行する。
【0078】
ステップS27において、EMS80は、エアコン43のサービスレベルを1つ上げる。例えば、現在のエアコン43のサービスレベルが「3」である場合には、サービスレベルを「4」に上げる。これによって、居住者の利便性や快適性を向上させることができる。EMS80は、当該ステップS27の処理を行った後、ステップS28(図8参照)に移行する。
【0079】
一方、ステップS19等から移行したステップS28(図8参照)において、EMS80は、計画対象期間全体で、余剰電力量が発生するか否かを判定する。具体的には、EMS80は、計画対象期間全体で、太陽光発電部51からの電力を負荷に供給し、蓄電池52に充電してもなお、余剰分が生じているか否かを判定する。EMS80は、計画対象期間全体で、余剰電力量が発生すると判定した場合(ステップS28で「YES」)、ステップS29に移行する。一方、EMS80は、計画対象期間全体で、余剰電力量が発生しないと判定した場合(ステップS28で「NO」)、ステップS32に移行する。
【0080】
ステップS29において、EMS80は、給湯器44がOFF(停止している)か否かを判定する。EMS80は、給湯器44がOFFであると判定した場合(ステップS29で「YES」)、ステップS30に移行する。一方、EMS80は、給湯器44がONであると判定した場合(ステップS29で「NO」)、ステップS33に移行する。
【0081】
ステップS30において、EMS80は、瞬時余剰電力が給湯消費電力よりも大きいか否かを判定する。ここで、「瞬時余剰電力」とは、現在の余剰電力の値である。また「給湯消費電力」とは、給湯器44を稼働させるのに必要な消費電力である。すなわちステップS30にいおいて、EMS80は、現在の余剰電力で給湯器44を稼働させることが可能か否かを判定している。
【0082】
ここで、一般的に、余剰電力が発生する場合、ハイブリッドパワコン53によって出力(余剰電力の出力)が抑制されるため、ハイブリッドパワコン53からの電力の出力を検出しても、実際の余剰電力を把握することは困難である。したがって、それ以外の方法によって余剰電力(瞬時余剰電力)を把握する必要がある。本実施形態では、蓄電池52の充電量が充電能力(最大値)と一致している場合において瞬時余剰電力が発生しているものとして、「瞬時余剰電力=予想発電量-消費電力-充電電力」の式を用いて瞬時余剰電力を算出するものとする。
【0083】
EMS80は、瞬時余剰電力が給湯消費電力よりも大きいと判定した場合(ステップS30で「YES」)、ステップS31に移行する。一方、EMS80は、瞬時余剰電力が給湯消費電力以下であると判定した場合(ステップS30で「NO」)、ステップS32に移行する。
【0084】
ステップS31において、EMS80は、給湯器44をONにする(稼働させる)。EMS80は、当該ステップS31の処理を行った後、ステップS33に移行する。
【0085】
一方、ステップS28等から移行したステップS32において、EMS80は、給湯器44をOFFにする(停止させる)。EMS80は、当該ステップS32の処理を行った後、ステップS33に移行する。
【0086】
ステップS33において、EMS80は、予測した蓄電残量の最小値が、「各機器消費電力量+閾値α」より大きいか否かを判定する。ここで、「各機器消費電力量」とは、重要負荷に該当する機器(すなわち、本実施形態では、テレビ31、充電器32、電子レンジ33、炊飯器34及び洗濯機35)の1回の運転あたり、若しくは1時間あたりの消費電力量である。例えば、居住者の任意の時間だけ連続して稼働することが想定される機器(本実施形態では、テレビ31又は充電器32)については、1時間あたりの消費電力量を意味する。また、1回の稼働時間が限られていることが想定される機器(本実施形態では、電子レンジ33、炊飯器34及び洗濯機35)については、1回あたりの消費電力量を意味する。
【0087】
ここで、予測した蓄電残量の最小値が「各機器消費電力量+閾値α」より大きいということは、重要負荷(テレビ31等)を稼働させたとしても、蓄電池52の蓄電残量の最小値が極端に小さくならない(閾値α以上となる)ことが期待できることを意味している。なお、閾値αを用いずに(例えば、閾値α=0として)ステップS33の判定を行うこともできる。すなわち、ステップS33において、蓄電残量の最小値が、少なくとも各機器消費電力量よりも大きいか否かを判定することもできる。しかし、蓄電残量確保の観点からは、閾値α>0の値とすることが望ましい。
【0088】
EMS80は、本ステップS33及び後述するステップS34において、各機器ごと(すなわち、テレビ31等のそれぞれについて)判定を行う。EMS80は、予測した蓄電残量の最小値が、「各機器消費電力量+閾値α」より大きいと判定した場合(ステップS33で「YES」)、ステップS34に移行する。一方、EMS80は、予測した蓄電残量の最小値が、「各機器消費電力量+閾値α」以下であると判定した場合(ステップS33で「NO」)、本制御(停電時制御)を終了する。
【0089】
ステップS34において、EMS80は、現在時刻において「放電残出力+余剰電力」が各機器消費電力よりも大きいか否か判定する。ここで、「放電残出力」とは、蓄電池52の出力をあとどの程度増加させることができるか(「最大出力-現在の出力」、すなわち、蓄電池52の出力の余力)を意味している。ここで、現在時刻において「放電残出力+余剰電力」が各機器消費電力よりも大きいということは、今、重要負荷(テレビ31等)を稼働させるだけの電力が確保できることを意味している。
【0090】
EMS80は、現在時刻において「放電残出力+余剰電力」が各機器消費電力よりも大きいと判定した場合(ステップS34で「YES」)、ステップS35に移行する。一方、EMS80は、現在時刻において「放電残出力+余剰電力」が各機器消費電力以下であると判定した場合(ステップS34で「NO」)、本制御(停電時制御)を終了する。
【0091】
ステップS35において、EMS80は、該当する機器(稼働させることができる重要負荷)の稼働を推奨するお知らせを報知する。具体的には、EMS80は、ステップS33及びステップS34でYESと判定された重要負荷については、稼働させるだけの電力の余裕があるため、当該重要負荷(機器)の稼働を推奨するお知らせを居住者に報知する。当該報知を受けた居住者は、該当する機器を稼働させて利用することができる。
【0092】
なお、EMS80による報知の方法としては、EMS80自身(タッチパネル)に所定の画像や文字を表示させることや、別途報知するための機器(液晶パネル、スピーカー等)を用いて報知することも可能である。
【0093】
EMS80は、ステップS35の処理を行った後、本制御(停電時制御)を終了する。
【0094】
以上のように、EMS80は、蓄電残量を予測し(図6のステップS10~ステップS13)、蓄電残量に余裕がないと判定した場合には(ステップS14でYES)、エアコン43や照明42のサービスレベルを下げて消費電力を抑制する(ステップS15~ステップS18)。それでも消費電力の抑制が不十分である場合には、重要回路30全体を解列させ、消費電力を抑制する(ステップS19、ステップS20)。
【0095】
また、EMS80は、蓄電残量にある程度余裕があると判定した場合には(ステップS14でNO)、重要回路30の接続、照明42及びエアコン43のサービスレベルの向上を可能な限り行う(図7のステップS21~ステップS27)。
【0096】
また、EMS80は、余剰電力によって給湯器44を稼働させることができる場合には、当該給湯器44を稼働させる(図8のステップS28~ステップS32)。さらに、EMS80は、重要負荷を稼働させることができる場合には、その旨を居住者に報知する(図8のステップS33~ステップS35)。
【0097】
以下、実際に停電時制御を行った場合の具体例を示す。なお、図9から図11においては、所定の計画対象期間の各時刻における、各負荷の消費電力、太陽光発電部51の発電電力(PV)、及び蓄電池52の蓄電残量(SOC)を示している。また、図9から図11においては、現時刻(停電時制御の処理を実行している時点での時刻)を三角の記号で示している。
【0098】
まず、図9に示すように、電力需要、発電量、蓄電残量等を予測する(ステップS10~ステップS13)。図例では、蓄電残量の最小値は0であるため、所定の閾値α未満となると判断し(ステップS14で「YES」)、消費電力の抑制を実施する(ステップS15~ステップS20)。
【0099】
図10(a)には、消費電力の抑制が実施された状態を示している。具体的には、図例では、エアコン43のサービスレベルを「0」まで下げ(ステップS15、ステップS16)、照明42のサービスレベルを「1」まで下げ(ステップS17、ステップS18)、重要回路30を解列(ステップS19、ステップS20)させた状態を示している。このように消費電力を抑制することによって、蓄電残量の最小値が増加している。図例では、蓄電残量の最小値が閾値α以上に増加したものとする(ステップS14で「NO」)。
【0100】
図10(b)には、蓄電残量の最小値が閾値α以上に増加したことに伴い、消費電力を増加させた状態を示している。具体的には、重要回路30を接続し(ステップS21、ステップS22)、照明42のサービスレベルを上昇させた状態(ステップS23、ステップS24)を示している。図11(a)には、さらにエアコン43のサービスレベルを上昇させた状態(ステップS26、ステップS27)を示している。
【0101】
図11(b)には、余剰電力が発生することに伴って、給湯器44の運転を実施する状態(ステップS28~ステップS31)を示している。また図例では、8時以降、十分に蓄電残量が確保できるため、各機器の利用を推奨するお知らせを報知する(ステップS33~ステップS35)。
【0102】
以上のように、本実施形態に係る電力供給システム1では、停電が発生した場合に上述の停電時制御を行うことで、蓄電残量等の予測に基づいて、消費電力を抑えながらも、可能な限り負荷への電力の供給を行うことができる。これによって、停電時における負荷への電力の供給の維持(蓄電残量の確保)と、利便性の向上と、を両立させることができる。
【0103】
以上の如く、本実施形態に係る電力供給システム1は、
電力を充放電可能な蓄電池52と、
前記蓄電池52からの電力の供給を受けて稼働する複数の電力負荷の動作を制御可能なEMS80(制御部)と、
を具備し、
前記EMS80は、
停電時における前記蓄電池52の蓄電残量を予測する蓄電残量予測処理(ステップS10~ステップS13)と、
前記蓄電池52の蓄電残量が第一閾値(閾値α)未満となることが予測された場合、複数の前記電力負荷のうち、第一のグループに属する第一電力負荷(最重要回路40の最重要負荷)の消費電力を抑制する抑制処理(ステップS14~ステップS18)と、
を実行可能なものである。
【0104】
このように構成することにより、電力負荷への電力の供給の維持と、利便性の向上と、を両立させることができる。すなわち、蓄電池52の蓄電残量が閾値α未満となることが予測された場合にのみ、最重要負荷の消費電力を抑制することで、極力利便性を向上させながら、電力負荷への電力の供給の維持を図ることができる。
【0105】
また、特に本実施形態においては、サービスレベルを0(OFF)まで下げることができる負荷(エアコン43)と、サービスレベルを0(OFF)まで下げない負荷(照明42)と、を設定している。このように、消費電力を抑制したとしても、サービスレベルを0(OFF)までは下げない負荷を設定することで、より利便性の向上を図ることができる。
【0106】
また、前記EMS80は、
前記第一のグループに属する複数の前記第一電力負荷(特に、照明42及びエアコン43)の消費電力を個別に予測し(ステップS12)、
前記抑制処理において、複数の前記第一電力負荷の消費電力を個別に抑制する(ステップS14~ステップS18)ものである。
【0107】
このように構成することにより、電力負荷への電力の供給の維持と、利便性の向上と、をより適切に両立させることができる。すなわち、最重要負荷を個別に抑制することで、電力負荷への電力の供給の維持を図りながらも、最重要負荷の利用を極力継続させることができる。
【0108】
さらに、個別に予測された第一電力負荷の消費電力に応じて、抑制する対象となる第一電力負荷を選択するようにすることもできる。例えば、第一電力負荷の消費電力を個別に予測し、最も消費電力が大きい第一電力負荷の消費電力を優先的に抑制することもできる。これによって、消費電力を効果的に抑制することができる。また、最も消費電力が小さい第一電力負荷の消費電力を優先的に抑制することもできる。これによって、あまり使用されていないと思われる第一電力負荷(消費電力が小さい第一電力負荷)の消費電力を抑制すると共に、よく使用されていると思われる第一電力負荷(消費電力が大きい第一電力負荷)の消費電力を維持することができ、利便性を向上させることができる。
【0109】
また、前記EMS80は、
前記蓄電池52の蓄電残量が前記第一閾値未満となることが予測された場合、複数の前記電力負荷のうち、前記第一のグループとは異なる第二のグループに属する第二電力負荷(重要回路30の重要負荷)の稼働を停止させる停止処理(ステップS19、ステップS20)を実行可能なものである。
【0110】
このように構成することにより、電力負荷への電力の供給の維持と、利便性の向上と、を両立させることができる。すなわち、重要回路30に接続された重要負荷のみ停止させることで、最重要負荷の利用を継続させて利便性を向上させながらも、電力負荷への電力の供給の維持を図ることができる。
【0111】
また、前記EMS80は、
前記停止処理において、前記第二電力負荷に電力を供給する配電線L5の中途部に設けられたリレー70を用いて前記第二電力負荷を解列させることにより、前記第二電力負荷の稼働を停止させるものである。
【0112】
このように構成することにより、第二電力負荷(重要負荷)を個別に制御する必要がないため、処理の容易化を図ることができる。
【0113】
また、前記EMS80は、
前記停止処理よりも前記抑制処理を優先して実行するものである。
【0114】
このように構成することにより、利便性の向上を図ることができる。すなわち、重要負荷を極力停止させないように制御することで、居住者が重要負荷を利用することができるようになるため、利便性を向上させることができる。
【0115】
また、前記EMS80は、
前記蓄電残量予測処理、前記抑制処理及び前記停止処理を複数回繰り返し実行するものである。
【0116】
このように構成することにより、適切な処理を行うことができる。すなわち、電力負荷の動作を制御した状態で、再度予測を行うことで、現在の実情に即した処理が可能となる。
【0117】
また、前記EMS80は、
前記蓄電池52の蓄電残量が前記第一閾値以上の値に設定された第二閾値(閾値α)以上となることが予測された場合、停止された前記第二電力負荷を稼働させる稼働処理(ステップS21、ステップS22)を実行可能なものである。
【0118】
このように構成することにより、電力負荷への電力の供給の維持と、利便性の向上と、を両立させることができる。すなわち、電力負荷への電力の供給が維持できると判断した場合には、重要負荷を稼働させることで、利便性の向上も図ることができる。
【0119】
また、前記EMS80は、
前記蓄電池52の蓄電残量が前記第二閾値以上となることが予測された場合、前記第一電力負荷の消費電力を上昇させる上昇処理(ステップS23~ステップS27)を実行可能なものである。
【0120】
このように構成することにより、電力負荷への電力の供給の維持と、利便性の向上と、を両立させることができる。すなわち、電力負荷への電力の供給が維持できると判断した場合には、最重要負荷の消費電力を上昇させ、例えば照明42やエアコン43の利便性(快適性)を向上させることができる。
【0121】
また、前記EMS80は、
前記上昇処理よりも前記稼働処理を優先して実行するものである。
【0122】
このように構成することにより、利便性の向上を図ることができる。すなわち、停止している重要負荷の再稼働を優先するように制御することで、居住者が重要負荷を利用することができるようになるため、利便性を向上させることができる。
【0123】
また、電力供給システム1は、
自然エネルギーを利用して発電可能な太陽光発電部51(発電部)をさらに具備し、
前記EMS80は、
前記太陽光発電部51の余剰電力の発生の有無を予測する余剰電力予測処理(ステップS28~ステップS30)と、
余剰電力が発生することが予測された場合にのみ、前記第一電力負荷のうち、特定の電力負荷(給湯器44)を稼働させる特定稼働処理(ステップS31)と、
を実行可能なものである。
【0124】
このように構成することにより、より効果的に電力負荷への電力の供給の維持を図ることができる。すなわち、余剰電力が発生する場合にのみ特定の電力負荷を稼働させることで、蓄電池52の蓄電残量を確保し易くすることができる。
【0125】
また、以上の如く、本実施形態に係る電力供給システム1は、
自然エネルギーを利用して発電可能な太陽光発電部51(発電部)と、
電力の供給を受けて稼働する給湯器44と、
前記給湯器44の動作を制御可能なEMS80(制御部)と、
を具備し、
前記EMS80は、
停電時における前記太陽光発電部51の余剰電力の発生の有無を予測する余剰電力予測処理(ステップS28~ステップS30)と、
前記太陽光発電部51の余剰電力が発生することが予測された場合にのみ、前記給湯器44を稼働させる稼働処理(ステップS31)と、
を実行可能なものである。
【0126】
このように構成することにより、停電時において給湯器を好適に稼働させることができる。すなわち、停電時に発生した余剰電力を活用して、給湯器44の稼働が可能となる。
【0127】
また、前記EMS80は、
前記稼働処理において、
前記太陽光発電部51の余剰電力が、前記給湯器44の消費電力よりも大きい場合にのみ、前記給湯器44を稼働させるものである。
【0128】
このように構成することにより、余剰電力だけで給湯器44を稼働させることができる。これによって、その他の電力(例えば蓄電池52に充電された電力)は他の電力負荷で利用することができるため、停電時における利便性を向上させることができる。
【0129】
また、電力供給システム1は、
前記太陽光発電部51からの電力を充放電可能な蓄電池52をさらに具備し、
前記EMS80は、
前記太陽光発電部51の発電電力から、電力負荷における消費電力及び前記蓄電池52の充電電力を差し引くことで、前記太陽光発電部51の余剰電力を算出するものである。
【0130】
このように構成することにより、適切な余剰電力の値を算出することができる。すなわち、一般的に、停電時における余剰電力の出力はハイブリッドパワコン53によって抑制されるため、電力センサを用いて余剰電力の値を検出することが困難である。そこで、上記算出方法によって算出することで、妥当な余剰電力の値を算出することができる。
【0131】
また、前記EMS80は、
停電時における前記蓄電池52の蓄電残量が少なくとも電力負荷の消費電力量よりも大きい場合、電力負荷を使用することができる旨を報知する報知処理(ステップS33~ステップS35)を実行可能なものである。
【0132】
このように構成することにより、停電時における利便性を向上させることができる。すなわち、停電時に余剰電力が発生する場合に、利用者(居住者等)に電力負荷の使用を促すことができる。これによって、停電時における利用者の利便性を向上させることができる。
【0133】
また、前記EMS80は、
前記報知処理において、
前記蓄電池52の出力の余力を示す放電残出力と、前記太陽光発電部51の余剰電力とを足し合わせた値が、電力負荷の消費電力よりも大きい場合にのみ、電力負荷を使用することができる旨を報知するものである。
【0134】
このように構成することにより、電力負荷を確実に使用することができる場合にのみ、報知を行うことができる。これによって、電力負荷を使用した際に電力不足になるのを未然に防止することができる。
【0135】
なお、本実施形態に係る太陽光発電部51は、本発明に係る発電部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るEMS80は、本発明に係る制御部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る閾値αは、本発明に係る第一閾値及び第二閾値の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る最重要回路40の最重要負荷は、本発明に係る第一のグループに属する第一電力負荷の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る重要回路30の重要負荷は、本発明に係る第二のグループに属する第二電力負荷の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る給湯器44は、本発明に係る特定の電力負荷の実施の一形態である。
【0136】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0137】
本実施形態において用いた閾値(閾値α、閾値β)は一例であり、任意の値に設定することが可能である。例えば本実施形態では、ステップS14において、蓄電残量の最小値が閾値α未満か否かを判定して、消費電力を抑制する(ステップS15以降)か、消費電力を上昇させる(ステップS21)か分岐する例を示した。しかし、蓄電残量の最小値が閾値α以上である場合には、蓄電残量の最小値が、別途設定した閾値(閾値α以上の値に設定された閾値)以上であるかをさらに判定し、消費電力を上昇させる(ステップS21)ことも可能である。このように、消費電力を抑制する場合(ステップS15以降)と、消費電力を上昇させる場合(ステップS21)とで閾値に差を設けることで、電力負荷の制御が煩雑になるのを抑制することができる。
【0138】
また、本実施形態で例示した重要負荷及び最重要負荷は一例であり、どのような電力負荷(機器)を重要負荷及び最重要負荷に設定するかは、任意に選択することができる。例えば、居住者の希望に応じて、停電時でも優先的に電力を供給可能とすべき機器を最重要負荷に設定することで、停電時に極力継続して電力の供給を受けることができる。
【0139】
また、本実施形態で例示した停電時制御のフローチャートは一例であり、その処理内容や順序は任意に変更することができる。例えば本実施形態では、消費電力を抑制する場合、EMS80は、エアコン43のサービスレベルの低下、照明42のサービスレベルの低下、及び重要回路30の解列の順に処理を行うものとしたが、当該処理の順番は適宜入れ替えることも可能である。例えば、重要回路30(重要負荷)の利用よりも最重要負荷(エアコン43等)の快適性を重視したい場合には、重要回路30の解列を優先的に行うことも可能である。また本実施形態では、ステップS19でNOの場合、ステップS28に移行する例を示したが、例えば再度予測をやり直すために、ステップS11に戻るようにしてもよい。
【0140】
また、本実施形態においては、ステップS12において、重要負荷(テレビ31等)及び最重要負荷(冷蔵庫41等)の電力需要を個別に予測するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、重要負荷及び最重要負荷それぞれの電力需要をまとめて予測することも可能である。特に本実施形態では、重要負荷については、各機器(テレビ31等)の動作を個別に制御することはない(一括して解列する制御しか行わない)ため、重要負荷の電力需要をまとめて予測することが可能である。
【0141】
また、本実施形態において発電部は、太陽光を利用して発電する太陽光発電部51であるものとしたが、他の自然エネルギー(例えば、水力や風力)を利用して発電するものであってもよい。
【0142】
また、本実施形態において例示した電力供給システム1の構成(各機器の有無や接続関係)は一例であり、任意に変更することが可能である。例えば、電力供給システム1は、必ずしも発電部(太陽光発電部51)を有するものでなくてもよい。
【0143】
また、本実施形態においては、電力供給システム1は住宅に設けられるものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、オフィス等に設けられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0144】
1 電力供給システム
30 重要回路
40 最重要回路
44 給湯器
51 太陽光発電部
52 蓄電池
80 EMS
図1
図2
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図11