(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06N 20/00 20190101AFI20240628BHJP
【FI】
G06N20/00
(21)【出願番号】P 2020078858
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】513040384
【氏名又は名称】株式会社マネーフォワード
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】村上 勝俊
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 大貴
【審査官】真木 健彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-079227(JP,A)
【文献】特開2017-117152(JP,A)
【文献】特開2019-159693(JP,A)
【文献】特開2015-001888(JP,A)
【文献】特開2018-169994(JP,A)
【文献】国際公開第2020/065808(WO,A1)
【文献】特開2019-191778(JP,A)
【文献】特開2019-159831(JP,A)
【文献】特開2019-125048(JP,A)
【文献】特開2018-152063(JP,A)
【文献】特開2016-152039(JP,A)
【文献】国際公開第2014/042147(WO,A1)
【文献】特開2007-109164(JP,A)
【文献】特開2000-003353(JP,A)
【文献】特開平08-095938(JP,A)
【文献】特許第6581281(JP,B1)
【文献】国際公開第2019/138670(WO,A1)
【文献】特開2018-136655(JP,A)
【文献】国際公開第2019/171586(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/022123(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 20/00
G06N 3/00
G06N 99/00
G06Q 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置であって、
取得部、学習部、実行制御部及び出力部を備え、
前記取得部は、機械学習に用いる、会計処理に又は税務処理に関する学習データを取得可能に構成され、
前記学習部は、前記学習データを用いて学習モデルに対して前記機械学習を実行可能に構成され、
前記学習モデルは、前記機械学習により生成され、
前記実行制御部は、前記機械学習の実行が停止している停止期間の後に前記機械学習を実行する場合、第1データセットを用いて前記機械学習を実行可能に構成され、
前記第1データセットは、前記停止期間において前記取得部により取得された学習データの少なくとも一部を含むデータセットであり、
前記出力部は、前記学習モデルに、会計処理に又は税務処理に関する入力データを入力することで、前記会計処理又は前記税務処理に関する情報を出力可能に構成される、
情報処理装置。
【請求項2】
情報処理装置であって、
取得部、学習部、実行制御部及び検出部を備え、
前記取得部は、機械学習に用いる学習データを取得可能に構成され、
前記学習部は、前記学習データを用いて学習モデルに対して前記機械学習を実行可能に構成され、
前記学習モデルは、前記機械学習により生成され、
前記実行制御部は、前記機械学習の実行が停止している停止期間の後に前記機械学習を実行する場合、第1データセットを用いて前記機械学習を実行可能に構成され、
前記第1データセットは、前記停止期間において前記取得部により取得された学習データの少なくとも一部を含むデータセットであり、
前記検出部は、前記第1データセットに関する規則が変更されたことを検出可能に構成され、
前記実行制御部は、前記検出部により前記規則が変更されたことを検出した場合、第3データセットを用いて前記機械学習を実行可能に構成され、
前記第3データセットは、前記規則が変更されてから現在までの期間において前記取得部により取得された学習データの少なくとも一部を含むデータセットである、
情報処理装置。
【請求項3】
情報処理装置であって、
取得部、学習部、指定部、及び実行制御部を備え、
前記取得部は、機械学習に用いる学習データを取得可能に構成され、
前記学習部は、前記学習データを用いて学習モデルに対して前記機械学習を実行可能に構成され、
前記学習モデルは、前記機械学習により生成され、
前記指定部は、前記機械学習に用いる学習データの取得期間を指定可能に構成され、
前記実行制御部は、前記機械学習の実行が停止している停止期間の後に前記機械学習を実行する場合であって、前記指定部によって取得期間が指定されていないときには、第1データセットを用いて前記機械学習を実行可能に構成され、前記取得期間が指定されているときには、第2データセットのみを用いて前記機械学習を実行可能に構成され、
前記第1データセットは、前記停止期間において前記取得部により取得された学習データのデータセットであり、
前記第2データセットは、前記指定部により指定された取得期間において前記取得部により取得された学習データのデータセットであり、
前記停止期間は、前記取得期間と、前記取得期間を除いた除外期間(除外期間が0の場合を除く)とから成る、
情報処理装置。
【請求項4】
請求項1~
3の何れか1つに記載の情報処理装置において、
指定部を備え、
前記指定部は、前記機械学習の実行の停止時期を指定可能に構成される、
情報処理装置。
【請求項5】
請求項1
~4の何れか1つに記載の情報処理装置において、
選択部を備え、
前記学習モデルは、第1学習モデル及び第2学習モデルを含み、
前記第2学習モデルは、前記第1学習モデルに対する前記機械学習により生成された学習モデルであり、
前記選択部は、適用される学習モデルとして、前記第1学習モデル又は前記第2学習モデルを選択可能に構成される、
情報処理装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の情報処理装置において、
テスト部を備え、
前記テスト部は、前記第1学習モデル及び前記第2学習モデルの精度を確認するテスト処理を実行可能に構成され、
前記選択部は、前記テスト部によるテスト処理の結果、前記第2学習モデルの方が前記第1学習モデルより精度が高いと評価された場合、適用される学習モデルとして、前記第2学習モデルを選択可能に構成される、
情報処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記出力部は、前記学習モデルに前記入力データを入力し、前記入力データに対応する勘定科目、補助科目、摘要、及び税区分の少なくとも1つを出力可能に構成される、
情報処理装置。
【請求項8】
請求項1又は請求項
7に記載の情報処理装置において、
検出部を備え、
前記検出部は、前記会計処理又は前記税務処理に関する規則が変更されたことを検出可能に構成される、
情報処理装置。
【請求項9】
プログラムであって、
コンピュータを、請求項1~請求項
8の何れか1項に記載の情報処理装置の各部として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機械学習を利用した技術が普及している。
【0003】
特許文献1には、共通モデルから派生した個別モデルにおいて、個別モデルと新しい共通モデルを比較して再学習することで、新しいモデルに個別学習の結果を反映、統合することを実現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特定の組織に対してチューニングした学習モデルを利用する場合、機械学習を継続することにより一時的に学習モデルの精度が低下することがある。
【0006】
本発明では上記事情を鑑み、機械学習の実行を停止させた後、再度機械学習を実行するにあたり、過去に取得したデータを用いて機械学習を実行可能な情報処理装置及びプログラムを提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、情報処理装置であって、学習モデル、取得部、学習部、及び実行制御部を備え、前記学習モデルは、機械学習により生成され、前記取得部は、前記機械学習に用いる学習データを取得可能に構成され、前記学習部は、前記学習データを用いて前記学習モデルに対して機械学習を実行可能に構成され、前記実行制御部は、前記機械学習の実行が停止している停止期間の後に前記機械学習を実行する場合、第1データセットを用いて前記機械学習を実行可能に構成され、前記第1データセットは、前記停止期間において前記取得部により取得された学習データの少なくとも一部を含むデータセットである、情報処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置1を含むシステム100の概略図である。
【
図2】情報処理装置1のハードウェア構成を示す図である。
【
図4】複数のバージョンを含む学習モデルMの概念図である。
【
図6】ユーザー端末2に表示される画像の一例である。
【
図7】情報処理装置1による処理の一例を表すアクティビティ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0011】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0012】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0013】
1.システム100の概要
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るシステム100は、情報処理装置1を含む。情報処理装置1の機能は特に限定されないが、例えば、クラウド型又はアプリケーションとしての会計サービス又は家計簿サービスを提供するものであってもよい。情報処理装置1は、ユーザーが利用するユーザー端末2と、連携システム3と通信可能に構成される。本実施形態では、システム100はさらに、ユーザー端末2及び連携システム3を備える。ユーザー端末2は、情報処理装置1が提供するサービスを利用可能に構成される。
【0014】
連携システム3は、組織の運営に利用されるシステムである。例えば、連携システム3は、勤怠管理システム、人事管理システム、経費精算システム、スケジュール管理システムであってもよい。
【0015】
そして、情報処理装置1、ユーザー端末2及び連携システム3がネットワークNWを介して互いに接続されている。情報処理装置1は、例えばサーバにより構成される。ユーザー端末2は、任意のコンピュータにより構成され、例えば、スマートフォン、タブレット端末、スマートウォッチ、ノートPC、デスクトップPCにより構成される
【0016】
2.情報処理装置1のハードウェア構成
図2に示すように、情報処理装置1は、制御部10、通信部20、記憶部30、入力部40及び表示部50を備える。
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)等であって、情報処理装置1の全体を制御する。
通信部20は、NIC(Network Interface Card)等であって、他の情報処理装置又は構成要素と有線又は無線によりデータ通信可能に構成される。
記憶部30は、種々のプログラム及びデータを記憶するものであり、例えばメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。また、記憶部30は、プログラムや種々のデータ等を記憶する。そして、記憶部30に記憶されているプログラムに基いて制御部10が種々の処理を実行することにより、種々の機能が実現する。
【0017】
本実施形態では、記憶部30は、
図4に示される学習モデルMを記憶してもよい。学習モデルMは、機械学習により生成される。学習モデルMは、第1学習モデルM1及び第2学習モデルM2を含んでもよい。
図4の例では、学習モデルMは、第1学習モデルM1~第N学習モデルMNを含んでいる。ここで、第2学習モデルM2は、第1学習モデルM1に対する機械学習により生成された学習モデルである。すなわち、本実施形態では、ある学習モデルに対して追加の機械学習を実行し、新たな学習モデルを生成するときに、学習の前後の学習モデルを異なるバージョンとして管理する。
【0018】
入力部40は、情報処理装置1に種々の情報を入力するものであり、マウス、キーボード、ポインティングデバイス等により構成される。
表示部50は、テキストや画像(静止画及び動画を含む)を表示するものであり、任意のディスプレイにより構成される。表示部50は、情報処理装置1がサーバである場合、情報処理装置1に接続されたディスプレイにより構成される。
【0019】
3.情報処理装置1の機能
図3に示すように、情報処理装置1の制御部10は、取得部11、学習部12、実行制御部13を備える。本実施形態では、制御部10はさらに、指定部14、選択部15、テスト部16、出力部17、検出部18を備える。
【0020】
(取得部11)
取得部11は、機械学習に用いる学習データを取得可能に構成される。ここで、機械学習に用いて学習データの種別は問わず、学習モデルMの適用先に応じて種々のデータを用いることができる。具体的には、情報処理装置1をクラウド型又はアプリケーションとしての会計サービスとして適用する場合には、入力された金額、品目、勘定科目、日付、部署名等に加え、設定された勘定科目等を学習データとして取得する。換言すると、取得部11は、会計処理又は税務処理に関する入力データを取得してもよい。さらに、取得部11は、プロジェクト、製品、部門、支店、地域、取引先等に関する入力データを取得してもよい。
【0021】
(学習部12)
学習部12は、学習データを用いて学習モデルMに対して機械学習を実行可能に構成される。ここで、機械学習の手法は適宜選択することができる。例えば、ニューラルネットワークを用いる場合には、種々のパラメータに基づく入力値がニューラルネットワークに入力される。ニューラルネットワークは、ソフト又はハードとして実装することができ、例えば、情報処理装置1のファームウェア上に実装することができる。ここで、計算ノードN毎に予め定められた重みwは、情報処理装置1又は他の情報処理装置により予め機械学習されることにより設定される。
【0022】
(実行制御部13)
実行制御部13は、学習部12による機械学習に用いる学習データの種類及び量、学習データとして利用する期間、機械学習の実行タイミング又は頻度等を制御する。本実施形態では、実行制御部13は、機械学習の実行が停止している停止期間の後に機械学習を実行する場合、第1データセットを用いて機械学習を実行可能に構成される。ここで、第1データセットは、停止期間において取得部11により取得された学習データの少なくとも一部を含むデータセットである。
【0023】
図5に示されるように、例えば、1月1日より前から1月1日までの期間T0に取得されたデータを用いて機械学習を実行して学習モデルMを学習させた後、1月2日から6月30日(現在)までの期間Tsにおいて機械学習の実行が停止している場合には、期間Tsが停止期間となる。そして、期間Tsにおいて取得された学習データLD1~学習データLDNが、情報処理装置1の記憶部30又は他の情報処理装置に記憶される。ここで、学習データLD1は5月1日に取得された学習データであり、学習データLD2は5月2日に取得された学習データである。このとき、第1データセットは、停止期間(期間Ts)において取得された学習データLD1~学習データLDNの少なくとも一部を含むデータである。
【0024】
また、実行制御部13は、第2データセットを用いて機械学習を実行可能に構成されてもよい。ここで、第2データセットは、指定部14により指定された取得期間において取得部11により取得された学習データの少なくとも一部を含むデータセットである。
図5に示されるように、停止期間(期間Ts)において機械学習が実行されていなかったが、6月30日(現在)に機械学習を実行する場合に、期間T2において取得された学習データの少なくとも一部を含む第2データセットを用いて機械学習を実行することができる。このとき、期間T2が取得期間となる。また、取得期間(期間T2)において取得された学習データLD3~学習データLDNの少なくとも一部を含むデータが第2データセットとなる。ここで、学習データLD1及び学習データLD2については、取得期間(期間T2)より前に取得されたデータであるため、第2データセットには含まれない。すなわち、停止期間(期間Ts)のうち、取得期間(期間T2)を除いた除外期間(期間T1)に取得されたデータについては、機械学習に用いない。
【0025】
また、実行制御部13は、手動モード及び自動モードを切替可能に構成されてもよい。本実施形態では、手動モードでは、機械学習、後述の適用される学習モデルMの選択、又は後述のテスト処理をユーザーからの指示に基づいて実行する。一方、自動モードでは、機械学習、適用される学習モデルMの選択、又はテスト処理を自動的に実行する。すなわち、自動モードによれば、例えば、予め定められたタイミングで機械学習を実行し、学習モデルMをアップデートすることができる。なお、手動モードと自動モードは適宜切り替えることができる。また、、機械学習については手動モードを適用し、テスト処理又は適用される学習モデルMの選択については自動モードを適用するなど、複数の処理に対して異なるモードを適用することもできる。
【0026】
(指定部14)
指定部14は、機械学習に用いる学習データの取得期間を指定可能に構成される。例えば、
図6に示されるように、ユーザー端末2に学習モデルMを表すアイコンIと、取得期間を指定可能なスライダをまとめて表示してもよい。そして、ユーザーがユーザー端末2を操作することで、取得期間の開始日と終了日を指定することができる。ここで、取得期間の指定方法はこれに限定されず、テキスト形式、プルダウン形式、ドラムロール形式等の形式で取得期間の開始日及び終了日を入力してもよい。また、所定期間単位(例:現在から1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月前までの期間)で取得期間を指定させてもよい。さらに、日単位でなく、時間、分、秒単位で取得期間を指定させてもよい。
【0027】
また、指定部14は、機械学習の実行の停止時期を指定可能に構成されてもよい。
図5の例では、指定部14により、停止期間(期間Ts)の始期が指定される。
【0028】
(選択部15)
選択部15は、適用される学習モデルとして、第1学習モデルM1又は第2学習モデルM2を選択可能に構成される。本実施形態では、
図4に示されるように、学習モデルMとして異なるバージョンである第1学習モデルM1及び第2学習モデルM2を記憶しており、選択部15により選択された学習モデルを用いて種々の処理を実行する。
【0029】
(テスト部16)
テスト部16は、第1学習モデルM1及び第2学習モデルM2の精度を確認するテスト処理を実行可能に構成される。例えば、学習モデルMに学習データを入力することにより学習モデルMから出力される出力信号と、予め定められた閾値を比較することにより、複数の学習モデルMの精度を確認する。このとき、選択部15は、テスト部16によるテスト処理の結果、第2学習モデルM2の方が第1学習モデルM1より精度が高いと評価された場合、適用される学習モデルとして、第2学習モデルM2を選択可能に構成される。これは、複数のバージョンとして管理された学習モデルMのうち、精度の高い学習モデルMを利用して種々の処理を実行するためである。
【0030】
(出力部17)
情報処理装置1が会計処理又は税務処理の機能を提供する場合、出力部17は、学習モデルMに入力データを入力し、会計処理又は税務処理に関する情報を出力可能に構成してもよい。具体的には、学習データにより学習された学習モデルMに対して入力データを入力することにより、会計処理又は税務処理に関する情報を出力する。ここで、入力データとしては、購入又は立替の金額、品目、勘定科目、日付、部署名等が挙げられる。
【0031】
また、出力部17は、学習モデルMに入力データを入力し、入力データに対応する勘定科目、補助科目、摘要、及び税区分の少なくとも1つを出力可能に構成されてもよい。具体的には、購入又は立替の金額、品目、日付、部署名を入力データとして学習モデルMに入力することにより、入力データに対応する勘定科目、補助科目、摘要、及び税区分の少なくとも1つが出力される。また、ユーザーが手動で入力した勘定科目、補助科目、摘要、及び税区分の少なくとも1つが、学習モデルMにより推定された勘定科目と異なる場合、その旨提示してもよい。
【0032】
さらに、出力部17は、学習モデルMに入力データを入力し、入力データに対応するタグ、借方及び貸方の消込の少なくとも1つを出力可能に構成されてもよい。ここで、学習モデルMにより出力される会計処理又は税務処理に関する情報の一例である仕訳データに、学習モデルMにより推定されたプロジェクト、製品、部門、支店、地域、取引先等を含めてもよい。このとき、カレンダーアプリケーションと連動し、プロジェクト単位で日時を含めた工数若しくは工程管、又は予算管理を実現してもよい。
【0033】
(検出部18)
検出部18は、会計処理又は税務処理に関する規則が変更されたことを検出可能に構成される。規則の種類及び内容は特に限定されない。規則が変更されたこととは、例えば、以下の通りである。
<規則の変更例1>
会計責任者Aは特定の費用を「勘定科目X」として処理していたが、後任の会計責任者Bに変わってから、同じ費用を「勘定科目Y」として処理するようになった場合
<規則の変更例2>
ビジネスモデルAのときは特定の費用を「勘定科目X」として処理していたが、業態変更後などに別のビジネスモデルBを採用してから、同じ費用を「勘定科目Y」として処理するようになった場合
<規則の変更例3>
来客用のお茶の勘定科目を「会議費」として処理していた企業が、ある時期を境に来客用のお茶の提供を停止するとともに、防災時の非常食としてペットボトルのお茶を全従業員分購入して会社に備蓄するようになり、ペットボトルのお茶の勘定科目を「消耗品費」として処理するようになった場合
<規則の変更例4>
法律等で定められた会計基準の変更により、「勘定科目X」が廃止されて新たに「勘定科目Y」が用いられるようになる等、外部環境の変化に起因して規則が変更された場合
【0034】
ここで、検出部18は、連携システム3から取得した種々のデータに基づいて、規則の変更を検出してもよい。例えば、連携システム3が人事管理システムである場合には、人事管理データベースに登録された人事情報を取得することにより、会計責任者が変更したことを把握できる。そして、会計責任者が変更された場合、会計規則が変更したと判断してもよい。
【0035】
また、実行制御部13は、検出部18により規則が変更されたことを検出した場合、第3データセットを用いて機械学習を実行可能に構成されてもよい。ここで、第3データセットは、規則が変更されてから現在までの期間において取得部11により取得された学習データの少なくとも一部を含むデータセットである。これにより、機械学習の実行停止が解除され、新たな規則に対応する学習データを利用して学習モデルMを学習させることができる。
【0036】
さらに、検出部18により規則が変更されたことを検出した場合、規則が変更された可能性があることについてユーザーに提示してもよい。かかる提示手法は特に限定されず、ユーザー端末2への表示、音声出力、その他の手法により実現される。
【0037】
4.処理の概要
次に、
図7を用いて、情報処理装置1による処理の概要について説明する。
【0038】
まず、取得部11により、学習データを取得する(A1)。そして、学習モデルMに対する機械学習の停止期間であって、指定部14により停止期間が解除された場合に、指定部14により取得期間が指定されているときには、第2データセット(図中では第2DS)を取得する(A2a)。具体的には、
図5に示されるように、6月30日(現在)の時点において、5月3日に規則が変更されていたことに気づいた場合には、停止期間(期間Ts)のうち、期間T2において取得した学習データLD3~学習データLDNの少なくとも一部を含む第2データセットを機械学習に用いることができる。なお、この場合、第2データセットと第3データセットは同じデータセットとなる。
【0039】
一方、学習モデルMに対する機械学習の停止期間であって、指定部14により停止期間が解除された場合に、指定部14により取得期間が指定されていないときには、第1データセット(図中では第1DS)を取得する(A2b)。具体的には、
図5に示されるように、6月30日(現在)の時点において、1月2日以降のいずれかの時点で規則が変更されていたことに気づいた場合には、停止期間(期間Ts)において取得した学習データLD1~学習データLDNの少なくとも一部を含む第1データセットを機械学習に用いることができる。
【0040】
一方、学習モデルMに対する機械学習の停止期間であって、指定部14により停止期間が解除されず、停止期間が継続する場合には、処理をA1に戻す。
【0041】
そして、A3において、第2データセット又は第1データセットを用いて、機械学習を実行する。
【0042】
他方、A1において学習データを取得した後、学習モデルMに対する機械学習の学習期間である場合には、処理をA3に進め、学習期間に取得した学習データの少なくとも一部を含むデータセットを用いて、機械学習を実行する。ここで、A3における機械学習の対象が、学習モデルMに含まれる第1学習モデルM1である場合には、機械学習の結果として第2学習モデルM2が生成される。
【0043】
その後、A4において、テスト部16により、第1学習モデルM1(機械学習の実行前の学習モデル)と、第2学習モデルM2(機械学習の実行後の学習モデル)に対するテスト処理が実行される。そして、テスト処理の結果、精度が高いと評価された学習モデルを採用する。
【0044】
学習モデルMの利用が継続される場合、処理をA1に戻す。一方、学習モデルMの利用を終了する場合、処理を終了する。
【0045】
ここで、機械学習、適用される学習モデルMの選択、又はテスト処理の実行について、実行制御部13により適用されるモードが手動モードであるか自動モードであるかを考慮してもよい。
【0046】
5.まとめ
以上説明した処理により、本実施形態に係る情報処理装置1によれば、学習結果に満足な場合は学習モデルMの学習を停止させることができる。一方、規則が変化した場合は、学習モデルMの学習を再開させることができる。特に、停止期間中はバックグラウンドで学習データを取得ておき、学習を再開させる場合には、停止期間中に取得した学習データを用いることにより、過去に遡って学習モデルMを再学習させることが可能になる。
【0047】
6.その他
上述の説明では、情報処理装置1が種々の機能を備える構成としたが、これらの機能を複数の情報処理装置に分散させて実現してもよい。例えば、ユーザーが利用するサービスに学習モデルMが実装される場合には、学習モデルMと情報処理装置1を別の筺体に分散させてもよい。
【0048】
また、ユーザーが指定した任意の期間において取得された学習データを用いた機械学習により、学習モデルMの生成リクエストを受け付けても良い。
【0049】
また、大きなトレンドの変化があり、かつ十分な量の学習データを取得していない場合には、出力部17により会計処理又は税務処理に関する情報の出力を停止してもよい。例えば、入力データに対応する勘定科目の自動提案機能を停止してもよい。
【0050】
さらに、クラウド型又はアプリケーションとしての会計サービス又は家計簿サービス以外にも、情報処理装置1による学習モデルMに対する機能学習の制御を適用してもよい。例えば、ERP(Enterprise Resource Planning)、RPA(Robotic Process Automation)等に対し、組織の特徴を色濃く反映して学習させた学習モデルMを実装する場合、情報処理装置1による処理は好適である。
【0051】
次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記情報処理装置において、指定部を備え、前記指定部は、前記機械学習に用いる学習データの取得期間を指定可能に構成され、前記実行制御部は、第2データセットを用いて前記機械学習を実行可能に構成され、前記第2データセットは、前記指定部により指定された取得期間において前記取得部により取得された学習データの少なくとも一部を含むデータセットである、情報処理装置。
前記情報処理装置において、指定部を備え、前記指定部は、前記機械学習の実行の停止時期を指定可能に構成される、情報処理装置。
前記情報処理装置において、選択部を備え、前記学習モデルは、第1学習モデル及び第2学習モデルを含み、前記第2学習モデルは、前記第1学習モデルに対する前記機械学習により生成された学習モデルであり、前記選択部は、適用される学習モデルとして、前記第1学習モデル又は前記第2学習モデルを選択可能に構成される、情報処理装置。
前記情報処理装置において、テスト部を備え、前記テスト部は、前記第1学習モデル及び前記第2学習モデルの精度を確認するテスト処理を実行可能に構成され、前記選択部は、前記テスト部によるテスト処理の結果、前記第2学習モデルの方が前記第1学習モデルより精度が高いと評価された場合、適用される学習モデルとして、前記第2学習モデルを選択可能に構成される、情報処理装置。
前記情報処理装置において、前記実行制御部は、手動モード及び自動モードを切替可能に構成され、前記手動モードでは、前記機械学習、前記適用される学習モデルの選択、又は前記テスト処理をユーザーからの指示に基づいて実行し、前記自動モードでは、前記機械学習、前記適用される学習モデルの選択、又は前記テスト処理を自動的に実行する、情報処理装置。
前記情報処理装置において、出力部を備え、前記取得部は、会計処理に又は税務処理に関する入力データを取得し、前記出力部は、前記学習モデルに前記入力データを入力し、前記会計処理又は前記税務処理に関する情報を出力可能に構成される、情報処理装置。
前記情報処理装置において、前記出力部は、前記学習モデルに前記入力データを入力し、前記入力データに対応する勘定科目、補助科目、摘要、及び税区分の少なくとも1つを出力可能に構成される、情報処理装置。
前記情報処理装置において、検出部を備え、前記検出部は、前記会計処理又は前記税務処理に関する規則が変更されたことを検出可能に構成される、情報処理装置。
前記情報処理装置において、前記実行制御部は、前記検出部により前記規則が変更されたことを検出した場合、第3データセットを用いて前記機械学習を実行可能に構成され、前記第3データセットは、前記規則が変更されてから現在までの期間において前記記取得部により取得された学習データの少なくとも一部を含むデータセットである、情報処理装置。
プログラムであって、コンピュータを、前記情報処理装置の各部として機能させるプログラム。
もちろん、この限りではない。
【0052】
また、上述のコンピュータを、情報処理装置の各部として機能させるプログラムを格納する、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として提供してもよい。
【0053】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
上述した実施形態及び複数の変形例は任意に組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 :情報処理装置
2 :ユーザー端末
3 :連携システム
10 :制御部
11 :取得部
12 :学習部
13 :実行制御部
14 :指定部
15 :選択部
16 :テスト部
17 :出力部
18 :検出部
20 :通信部
30 :記憶部
40 :入力部
50 :表示部
100 :システム
I :アイコン