(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】画像形成装置及び画像読取装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240628BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240628BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20240628BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
G03G21/00 510
G03G15/00 303
B41J29/393 107
H04N1/00 C
(21)【出願番号】P 2020086905
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜田 修平
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-032922(JP,A)
【文献】特開2006-305955(JP,A)
【文献】特開2007-241079(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0193180(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/00
B41J 29/393
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる濃度の複数の画像を含む濃度パッチをシートに形成する画像形成手段と、
前記シートを第1方向に搬送する搬送手段と、
前記濃度パッチが形成され前記搬送手段により搬送されている前記シートの表面を読み取って読取データを出力する読取手段と、
前記読取データに基づき、前記濃度パッチの前記第1方向に対する斜行量を検出する検出手段と、
前記斜行量に基づき、前記濃度パッチの前記複数の画像それぞれについて、前記読取データの内、画像の濃度を判定するために使用する前記画像の所定領域に対応するデータを判定する判定手段と、
を備え
、
前記濃度パッチの前記複数の画像は、前記第1方向に沿って形成され、
前記検出手段は、前記複数の画像の内の第1画像及び第2画像それぞれの前記第1方向とは直交する第2方向の位置に基づき前記斜行量を検出し、
前記第1画像及び前記第2画像の濃度は、前記複数の画像の内の前記第1画像及び前記第2画像とは異なる画像の濃度より高いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1画像及び前記第2画像それぞれの前記第2方向の位置は、前記第1画像及び前記第2画像それぞれの前記第1方向のエッジの前記第2方向の位置であることを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記斜行量は、前記第1画像の前記第1方向の位置と前記第2画像の前記第1方向の位置との第1差と、前記第1画像の前記第2方向の位置と前記第2画像の前記第2方向の位置との第2差と、の比に基づく値であることを特徴とする請求項
1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記濃度パッチの前記第1方向の端部の位置に基づき、前記濃度パッチの前記複数の画像それぞれについて、画像の濃度を判定するために使用する前記画像の前記所定領域の前記第1方向の範囲に対応する前記読取データを記憶する記憶手段をさらに備えていることを特徴とする請求項
1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記濃度パッチの前記複数の画像それぞれについて、前記記憶手段に記憶された前記読取データの内、画像の濃度を判定するために使用する前記画像の前記所定領域の前記第2方向の範囲に対応するデータを前記斜行量に基づき判定することを特徴とする請求項
4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成手段は、前記シートのユーザ画像を形成する領域の外側に前記濃度パッチを形成することを特徴とする請求項1
乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記濃度パッチが形成された前記シートを前記読取手段が読み取った後、前記シートの前記濃度パッチが形成された領域を断裁して除去する除去手段をさらに備えていることを特徴とする請求項
6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記判定手段が判定した前記画像の前記所定領域に対応する前記読取データの内のデータに基づき前記画像の濃度を判定し、判定した濃度に基づき濃度に関する画像形成条件を調整する調整手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1
乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
画像の前記所定領域は、前記画像のエッジを含まない領域であることを特徴とする請求項1
乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
画像の前記所定領域は、前記画像の中央を含む領域であることを特徴とする請求項
9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
シートを第1方向に搬送する搬送手段と、
異なる濃度の複数の画像を含む濃度パッチが形成され前記搬送手段により搬送されている前記シートの表面を読み取って読取データを出力する読取手段と、
前記読取データに基づき、前記濃度パッチの前記第1方向に対する斜行量を検出する検出手段と、
前記斜行量に基づき、前記濃度パッチの前記複数の画像それぞれについて、前記読取データの内、画像の濃度を判定するために使用する前記画像の所定領域に対応するデータを判定する判定手段と、
を備え
、
前記濃度パッチの前記複数の画像は、前記第1方向に沿って形成され、
前記検出手段は、前記複数の画像の内の第1画像及び第2画像それぞれの前記第1方向とは直交する第2方向の位置に基づき前記斜行量を検出し、
前記第1画像及び前記第2画像の濃度は、前記複数の画像の内の前記第1画像及び前記第2画像とは異なる画像の濃度より高いことを特徴とする画像読取装置。
【請求項12】
前記斜行量は、前記第1画像の前記第1方向の位置と前記第2画像の前記第1方向の位置との第1差と、前記第1画像の前記第2方向の位置と前記第2画像の前記第2方向の位置との第2差と、の比に基づく値であることを特徴とする請求項11に記載の画像読取装置。
【請求項13】
前記濃度パッチの前記第1方向の端部の位置に基づき、前記濃度パッチの前記複数の画像それぞれについて、画像の濃度を判定するために使用する前記画像の前記所定領域の前記第1方向の範囲に対応する前記読取データを記憶する記憶手段をさらに備え、
前記判定手段は、前記濃度パッチの前記複数の画像それぞれについて、前記記憶手段に記憶された前記読取データの内、画像の濃度を判定するために使用する前記画像の前記所定領域の前記第2方向の範囲に対応するデータを前記斜行量に基づき判定することを特徴とする請求項11又は12に記載の画像読取装置。
【請求項14】
画像の前記所定領域は、前記画像のエッジを含まない領域であることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項15】
画像の前記所定領域は、前記画像の中央を含む領域であることを特徴とする請求項14に記載の画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像安定化制御のためにシートに形成された画像を読み取る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスにより画像形成を行う画像形成装置においては、経時変化や環境変化による帯電、現像、転写プロセスの特性変化により出力画像の濃度変化が生じ得る。濃度変化を抑えるため、画像形成装置は、画像安定化制御を行う。画像安定化制御において、画像形成装置は、例えば、感光体や中間転写ベルトに濃度パッチを形成し、光学センサによる濃度パッチの検知結果に基づき出力画像が適切な濃度になる様に画像形成条件を調整する。
【0003】
特許文献1は、シートに濃度パッチを転写して定着させ、シートに定着した後の濃度パッチを光学センサにより検出することで画像安定化制御を行う構成を開示している。定着後の濃度パッチの検出結果に基づき画像形成条件を制御することで、シートへの転写や定着の影響を考慮した画像安定化制御を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シートに形成した濃度パッチを光学センサで読み取る場合、濃度パッチの周囲で反射した反射光が光学センサに入射することにより読取誤差が生じる"フレア"と呼ばれる現象が生じ得る。フレアの影響を抑えるためには、濃度パッチの中央領域の読取値のみを使用して画像安定化制御を行う必要がある。しかしながら、シートの搬送方向に対して濃度パッチが傾くと、光学センサには濃度パッチの周囲での反射光が入射し、フレアの影響を受けることになる。
【0006】
本発明は、フレアの影響を抑えて精度良く画像を読み取る技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によると、画像形成装置は、異なる濃度の複数の画像を含む濃度パッチをシートに形成する画像形成手段と、前記シートを第1方向に搬送する搬送手段と、前記濃度パッチが形成され前記搬送手段により搬送されている前記シートの表面を読み取って読取データを出力する読取手段と、前記読取データに基づき、前記濃度パッチの前記第1方向に対する斜行量を検出する検出手段と、前記斜行量に基づき、前記濃度パッチの前記複数の画像それぞれについて、前記読取データの内、画像の濃度を判定するために使用する前記画像の所定領域に対応するデータを判定する判定手段と、を備え、前記濃度パッチの前記複数の画像は、前記第1方向に沿って形成され、前記検出手段は、前記複数の画像の内の第1画像及び第2画像それぞれの前記第1方向とは直交する第2方向の位置に基づき前記斜行量を検出し、前記第1画像及び前記第2画像の濃度は、前記複数の画像の内の前記第1画像及び前記第2画像とは異なる画像の濃度より高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、フレアの影響を抑えて精度良く画像を読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による印刷システムの機能ブロック図。
【
図3】一実施形態による読取装置の機能ブロック図。
【
図6】一実施形態による画像形成条件の調整処理のフローチャート。
【
図7】一実施形態による濃度検出処理部のブロック図。
【
図8】平均輝度値の算出に使用する中央領域と、メモリに記憶する領域の説明図。
【
図10】一実施形態による平均輝度値の算出処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
図1は、画像形成装置100を含む印刷システムの機能ブロック図である。印刷システムは、画像形成装置100と、ホストコンピュータ101と、を備える。画像形成装置100とホストコンピュータ101は、ネットワーク105を介して相互に通信可能である。ネットワーク105は、例えば、LANやWANである。
図1においては、1つの画像形成装置100と、1つのホストコンピュータ101がネットワーク105に接続されているが、複数の画像形成装置100や、複数のホストコンピュータ101を、ネットワーク105に接続することができる。
【0012】
ホストコンピュータ101は、ネットワーク105を介して、画像形成装置100に印刷ジョブを送信する。印刷ジョブには、形成する画像の画像データ、印刷を行うシートの種類、印刷枚数、両面印刷であるか片面印刷であるか等、印刷に必要な各種情報が含まれる。
【0013】
画像形成装置100は、ホストコンピュータ101から受信する印刷ジョブに基づいてシートに画像を形成する。画像形成装置100は、システムバス116を介して相互に通信可能な、コントローラ110、操作パネル120、給送装置140、プリンタ150、及び、読取装置160を備える。
【0014】
コントローラ110の不揮発性メモリであるROM112は、各種制御プログラムを記憶する。RAM113は揮発性メモリであり、ROM112に記憶された制御プログラムを読み出して記憶するシステムワークメモリとして機能する。CPU114は、RAM113に読み出された制御プログラムを実行して、画像形成装置100全体を統括的に制御する。HDD115は大容量記憶装置である。HDD115は、制御プログラムや画像形成処理(印刷処理)に用いる画像データ等の各種データを格納する。I/O制御部111は、ネットワーク105を介して、ホストコンピュータ101等と通信を行うインタフェースである。なお、コントローラ110内のこれら各機能ブロックも、システムバス116を介して相互に通信可能である。
【0015】
操作パネル120は、ユーザインタフェースを提供し、操作ボタン、テンキー、液晶デイスプレイ等を有する。オペレータは、操作パネル120により画像形成装置100を操作し、かつ、操作パネル120に表示される情報に基づき画像形成装置100の状態を判定することができる。
【0016】
給送装置140は、シートを収容する複数の給送ユニットを備え、給送ユニットのシートをプリンタ150に給送する。プリンタ150は、画像データに基づいて、給送装置140により給送されたシートに画像を形成する。プリンタ150の構成の詳細については
図2を用いて後述する。読取装置160は、シートの表面を読み取って、画像データである読取データをコントローラ110に出力する。
【0017】
図2は、画像形成装置100の構成図である。画像形成装置100は、給送装置140と、プリンタ150と、読取装置160と、フィニッシャ190と、を備えている。フィニッシャ190は、プリンタ150の印刷物に対して後処理を行う後処理装置である。フィニッシャ190は、例えば、複数の印刷物に対するステイプル処理、断裁処理、ソート処理等を行う。
【0018】
プリンタ150は、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの画像を形成する4つの画像形成ユニットを備える。各画像形成ユニットの構成は、基本的には共通である。画像形成ユニットの感光体153は、画像形成時、矢印R1方向に回転駆動される。帯電器220は、感光体153の表面を帯電させる。露光装置223は、形成する画像の画像データに基づき感光体153を露光し、感光体153に静電潜像を形成する。現像器152は、現像剤(トナー)を用いて感光体153の静電潜像を現像する。これにより、感光体153の静電潜像が顕像化されて、感光体153に画像が形成される。
【0019】
中間転写ベルト154は、画像形成時、矢印R2方向に回転駆動される。各画像形成ユニットにより形成された画像は、中間転写ベルト154に転写される。なお、各画像形成ユニットにより形成された画像を重ねて中間転写ベルト154に転写することで、中間転写ベルト154にフルカラーの画像を形成することができる。中間転写ベルト154に転写された画像は、転写ローラ221の対向位置に向けて搬送される。
【0020】
給送装置140は、シートを収容する給送ユニット140a、140b、140c、140d及び140eを有する。給送装置140は、いずれかの給送ユニットのシートをプリンタ150に給送する。プリンタ150は、給送されたシートを転写ローラ221の対向位置に向けて搬送する。転写ローラ221は、中間転写ベルト154の画像をシートに転写する。
【0021】
プリンタ150は、シートに転写された画像を加熱及び加圧して、シートに画像を定着させる第1定着器155及び第2定着器156を有する。第1定着器155は、内部にヒータを有する定着ローラと、シートを定着ローラに圧接させるための加圧ベルトとを備える。これらローラは不図示のモータにより駆動されてシートを搬送する。第2定着器156は、シートの搬送方向において第1定着器よりも下流側に配置される。第2定着器156は、第1定着器155を通過したシート上の画像に対してグロスを増加させるためや、定着性を担保するために設けられる。第2定着器156は、内部にヒータを有する定着ローラと、内部にヒータを有する加圧ローラと、を備える。シートの種類によっては第2定着器156を使用する必要がない。この場合、シートは搬送経路130に搬送され、第2定着器156を経由しない。フラッパ131は、シートを搬送経路130へ誘導するか、第2定着器156へ誘導するかを切り替える。
【0022】
フラッパ132は、シートを搬送経路135へ誘導するか、排出経路139へ誘導するかを切り替える。フラッパ132は、例えば、両面印刷モードにおいて、第1面に画像が形成されたシートを搬送経路135へ誘導する。また、フラッパ132は、例えば、フェイスアップ排紙モードにおいて、第1面に画像が形成されたシートを排出経路139へ誘導する。さらに、フラッパ132は、例えば、フェイスダウン排紙モードにおいて、第1面に画像が形成されたシートを搬送経路135へ誘導する。
【0023】
搬送経路135へ搬送されたシートは、反転部136へ搬送される。反転部136に搬送後、シートの搬送方向は、反転される。そして、フラッパ133は、反転部136のシートを搬送経路138へ誘導するか搬送経路135へ誘導するかを切り替える。フラッパ133は、例えば、両面印刷モードにおいてはシートを搬送経路138へ誘導する。また、フラッパ133は、例えば、フェイスダウン排紙モードにおいて、スイッチバックしたシートを搬送経路135へ誘導する。フラッパ133により搬送経路135へ搬送されたシートはフラッパ134によって排出経路139へ誘導される。フラッパ133により搬送経路138へ搬送されたシートは、再度、転写ローラ221の対向位置に搬送され、これにより、シートの両面に画像が形成される。
【0024】
搬送経路139に誘導されたシートは、読取装置160の搬送経路313に沿って搬送される。読取装置160の原稿検知センサ311は、搬送経路313に沿って搬送されるテストシートの、搬送方向における先端を検出する。原稿検知センサ311は、例えば、発光素子と受光素子とを有する光学センサである。ラインセンサユニット312aは、シートの一方の面を読み取り、ラインセンサユニット312bは、シートの他方の面を読み取る。なお、コントローラ110は、原稿検知センサ311によるシート先端の検出タイミングに基づいてラインセンサユニット312a及び312bの読取タイミングを制御する。
【0025】
図3は、読取装置160の機能ブロック図である。ラインセンサユニット312a及び312bの構成は、同様であり、それぞれ、メモリ300と、ラインセンサ301と、アナログデジタル変換器(ADC)302と、を有する。ラインセンサ301は、例えば、密着イメージセンサ(CIS)である。
図4は、ラインセンサ301の構成図である。LED400a及び400bは、光源であり、白色光を射出する。LED400a及び400bは、それぞれ、導光体402aの長手方向における異なる端部に配置される。なお、長手方向が、シートの搬送方向とは直交する様にラインセンサ301は配置される。以下、長手方向を主走査方向とも呼び、シートの搬送方向を副走査方向とも呼ぶ。LED400a及び400bが発した光は、導光体402a内部を主走査方向に拡散し、導光体402aの主走査方向の全体からシートを照射する。シートでの反射光は、レンズアレイ403aを介して、主走査方向に沿って配置された複数の受光素子401aに入射する。なお、各受光素子401aに入射する反射光のシートでの反射位置を画素とも呼ぶ。複数の受光素子401aは、赤(R)、緑(G)及び青(B)のカラーフィルタが塗布された3ライン構成である。本実施形態のラインセンサ301は、副走査方向においてレンズアレイ403aの両側から光を照射する"両側照明構成"になっている。
【0026】
図3に戻り、メモリ300には、対応するラインセンサ301の複数の受光素子401aの光量ばらつき等を補正するための補正情報が格納される。ラインセンサ301は、各受光素子401aの受光量を補正情報で補正し、各受光素子401aの補正後の受光量を、画素の受光量として順にADC302に出力する。ADC302は、対応するラインセンサ301が出力するアナログ信号をデジタル信号へ変換し、読取データとして濃度検出処理部305に出力する。読取データは、各画素の赤(R)、緑(G)及び青(B)の輝度値を示す。ラインセンサ301は、シートが搬送されている間、繰り返し、主走査方向の1ライン分の画像を読み取ることでシート全体の画像を読み取る。濃度検出処理部305での処理については後述する。画像メモリ303は、濃度検出処理部305が行う処理の際に、読取データを記憶する記憶部として使用される。
【0027】
画像形成装置100は、画像安定化制御のためにテストシートを形成して読取装置160に読み取らせる。ここで、テストシートとは、ユーザが形成する画像(以下、ユーザ画像)と濃度パッチが形成されたシートである。
図5(A)~
図5(C)は、テストシートの一例を示している。なお、
図5(A)~
図5(C)の左右方向が主走査方向であり、上下方向が副走査方向である。
図5(A)~
図5(C)の網掛け領域は、ユーザ画像が形成される領域(以下、ユーザ画像形成領域)である。テストシートには、画像形成に使用する4つの色それぞれの濃度パッチが、シート内のユーザ画像形成領域の外側に形成される。なお、各色の濃度パッチは、濃度を段階的に変化させた複数の画像(以下、パッチ)を含む。本実施形態では、1つの濃度パッチの、複数のパッチが連続する方向において両端部のパッチの濃度を、当該濃度パッチ内の他のパッチの濃度よりも高くする。例えば、1つの濃度パッチの一方の端部のパッチを最も高い濃度とし、他方の端部のパッチを2番目に高い濃度とすることができる。なお、1つの濃度パッチの2つの端部のパッチの濃度を同じとすることもできる。濃度パッチが形成される領域は、最終的には、例えば、フィニッシャ190により断裁されて除去される領域であるため、ユーザへの最終成果物には濃度パッチは含まれない。なお、濃度パッチは、ユーザ画像がシートの片面のみに形成されるか両面に形成されるかに拘わらず、シートの両面に形成することも、シートの一方の面のみに形成することもできる。
【0028】
図5(A)では、主走査方向におけるシートの一方の端部において、4つの色の濃度パッチを副走査方向に沿って配置している。
図5(B)では、主走査方向におけるシートの一方の端部において2つの色の濃度パッチを副走査方向に沿って配置し、他方の端部において残りの2つの色の濃度パッチを副走査方向に沿って配置している。
図5(C)では、副走査方向におけるシートの一方の端部において2つの色の濃度パッチを主走査方向に沿って配置し、他方の端部において残りの2つの色の濃度パッチを主走査方向に沿って配置している。
【0029】
テストシートを読取装置160に読み取らせた場合、ラインセンサユニット312a及びラインセンサユニット312bは、ユーザ画像や濃度パッチを含む読取データを濃度検出処理部305に出力する。濃度検出処理部305は、各色の濃度パッチについて、複数のパッチそれぞれの平均輝度値を読取データに基づき判定する。そして、濃度検出処理部305は、平均輝度値をコントローラ110に出力する。コントローラ110は、各パッチの平均輝度値から各パッチの検出濃度を求め、形成したパッチの濃度と検出濃度とに基づき、濃度に関する画像形成条件を設定する。なお、コントローラ110は、各パッチの濃度を求めるために補色の輝度値を用いる。例えば、濃度検出処理部305は、シアン、マゼンタ及びイエローのパッチの平均輝度値を、それぞれ、赤、緑及び青の輝度値から決定する。なお、コントローラ110は、ブラックのパッチの平均輝度値を緑の輝度値から決定する。濃度検出処理部305は、例えば、FPGA及び/又はASIC等で構成され得る。
【0030】
図6は、画像形成条件の生成処理のフローチャートである。
図6の処理は、例えば、ユーザが操作パネル120を介して画像形成の開始指示を入力すると開始される。S10で、コントローラ110は、テストシートを形成する。具体的には、コントローラ110は、画像データに基づきシートにユーザ画像を生成すると共に、当該シートに各色の濃度パッチを形成する。S11で、コントローラ110は、読取装置160にテストシートを読み取らせる。なお、読取装置160による読取タイミングは、原稿検知センサ311がテストシートを検知したタイミングに基づき判定される。S12で、濃度検出処理部305は、各パッチの平均輝度値をコントローラ110に出力し、コントローラ110は、各パッチの濃度を検出する。コントローラ110は、S13で、画像形成が終了したか否か、つまり、画像形成の開始指示において指定された総てのシートへの画像を形成したかを判定する。画像形成が終了していない場合、コントローラ110は、S10から処理を繰り返す。一方、画像形成が終了していると、コントローラ110は、S12における濃度パッチの濃度検出結果に基づき濃度を調整するための画像形成条件を設定する。
【0031】
なお、ユーザ画像を形成する総てのシートに濃度パッチを形成する必要はない。つまり、ユーザ画像を形成するシートの内の一部に濃度パッチを形成してテストシートとする構成であっても良い。この場合、S13の処理は、総てのテストシートを形成したか否かを判定する処理となる。
【0032】
続いて、濃度検出処理部305が行う処理について説明する。
図7は、濃度検出処理部305のブロック図である。なお、ラインセンサユニット312a及び312bから入力される読取データに対する処理は同様であるため、
図7では、2つのラインセンサユニットの内の1つから入力される読取データに対する処理について説明する。なお、上述した様に、ラインセンサ301は、副走査方向に搬送されるシートの表面をライン毎に読み取るが、以下の説明では、
図5の上から下に向けてライン毎に読み取るものとする。また、ラインセンサは、1ラインの各画素の輝度値を順に出力するが、以下の説明では、
図5の左側から右側の順で出力するものとする。さらに、以下の説明において、上側、下側、右側、左側とは、
図5の上側、下側、右側、左側に対応するものとする。また、ラインの番号を、ラインセンサ301が読み取る順番とし、1つのライン内の画素の番号を、ラインセンサが出力する順番とする。したがって、最も上側のラインが1番目のラインであり、最も下側のラインが最後のラインとなる。また、また、1つのラインの最も左側の画素が1番目の画素であり、最も右側の画素が最後の画素となる。
【0033】
読取データは、色選択部305a1及び書込部305a4に入力される。色選択部305a1は、後段のエッジ検知部305a2がエッジの検知に使用する色を選択し、選択した色の読取データをエッジ検知部305a2に出力する。色選択部305a1は、エッジ検知の精度を高くするため、例えば、シートの下地の色に従い、エッジ検知に使用する色を選択することができる。
【0034】
エッジ検知部305a2は、色選択部305a1から入力される読取データに基づき、濃度パッチの副走査方向に沿った2つのエッジの内の1つを検知する。本実施形態では、濃度パッチの副走査方向に沿った2つのエッジの内の最初に検知するエッジ、つまり、左側のエッジ(以下、左側エッジ)を検知するものとする。エッジ検知部305a2は、例えば、各ラインそれぞれについて、1番目の画素から順番に輝度値を判定する。濃度パッチの輝度は、白色のシートの下地の部分の輝度より低くなる。したがって、エッジ検知部305a2は、主走査方向において輝度値の立下りを検知することで濃度パッチの左側エッジを検知することができる。なお、1つのライン毎に左側エッジの検知を行うのではなく、副走査方向において連続する所定数のラインごとに左側エッジを検知し、当該所定数のラインで検知したエッジの主走査方向の位置を平均化することにより左側エッジを検出する構成であっても良い。なお、この際、エッジの副走査方向の位置は、平均化に使用した所定数のラインの副走査方向の平均位置とする。
【0035】
範囲決定部305a3は、濃度パッチのサイズと、エッジ検知部305a2が検知した最初のパッチの左側エッジの副走査方向の位置とに基づき、読取データの内、メモリ305a5に格納するデータ範囲を決定して書込部305a4に通知する。
図8(A)及び
図8(B)は、1つの濃度パッチを示している。なお、
図8(A)及び
図8(B)の上下方向が副走査方向である。
図8(A)の網線領域は、平均輝度値の算出に使用する中央領域(所定領域)を示している。上述した様に、フレアの影響を抑えるため、濃度パッチの各パッチの中央領域を平均輝度値の算出に使用し、網掛領域以外の領域、つまり、エッジを含むエッジ領域については平均輝度値の算出に使用しない。
図8(B)の斜線領域は、範囲決定部305a3がメモリ305a5に格納する画素の範囲を示している。
図8(B)に示す様に、範囲決定部305a3は、副走査方向においては、平均輝度値の算出に使用する中央領域と同じ範囲であり、主走査方向においては、濃度パッチの全領域を包含する範囲に対応する読取データをメモリ305a5に格納すると決定する。メモリ305a5に格納する主走査方向の範囲を、平均輝度値の算出に使用する範囲より拡大するのは、後述する様に濃度パッチの傾きを考慮したものである。したがって、より具体的には、メモリ305a5に格納する主走査方向の範囲は、生じ得る斜行量の最大値を考慮して決定され得る。なお、副走査方向において範囲を拡大しないのは傾きによる影響が小さく無視できるためである。しかしながら、副走査方向においても拡大する構成とすることもできる。書込部305a4は、範囲決定部305a3が決定した範囲の画素の読取データをメモリ305a5に書き込む。この様に、範囲決定部305a3が、テストシートの全画素の輝度値を記憶せずに、斜行量を考慮した濃度パッチの所定領域のみの輝度値を記憶することで、メモリ305a5に必要な容量を少なくすることができる。
【0036】
また、エッジ検知部305a2は、検知した左側エッジをエッジ決定部305b1にも出力する。エッジ決定部305b1は、エッジ検知部305a2が主走査方向の複数のラインにおいて検知する複数の左側エッジに基づき、2つの左側エッジの位置をメモリ305b3に書き込む。この2つ左側エッジは、例えば、1つの濃度パッチの最初のパッチ内の1つのライン上の左側エッジと、最後のパッチの1つライン上の左側エッジとすることができる。例えば、1つの濃度パッチにおいて最初に検知する左側エッジと、最後に検知する左側エッジを、メモリ305b3に書き込む2つの左側エッジとすることができる。また、1つの濃度パッチの最初のパッチについて検知する複数のラインの左側エッジの平均位置と、1つの濃度パッチの最後のパッチについて検知する複数のラインの左側エッジの平均位置とを、それぞれ、2つの左側エッジとしてメモリ305b3に書き込む構成とすることもできる。上述した様に、1つの濃度パッチの最初のパッチと最後のパッチの濃度は、当該1つの濃度パッチの他のパッチより濃度が高いため、最初のパッチと最後のパッチの左側エッジの検出精度は、他のパッチの検出精度より高い。
【0037】
斜行量算出部305b4は、メモリ305b3から2つの左側エッジの位置を読出し、濃度パッチの斜行量を算出する。
図9は、斜行量の算出方法の説明図である。
図9に示す様に、斜行量算出部305b4が、メモリ305b3から、第1左側エッジと第2左側エッジの2つの左側エッジの位置を読み出したものとする。
図9によると、第1左側エッジの主走査方向の位置はX1であり、副走査方向の位置はY1である。また、
図9によると、第2左側エッジの主走査方向の位置はX2であり、副走査方向の位置はY2である。斜行量算出部305b4は、斜行量θを、副走査方向に対する濃度パッチの左側エッジの傾きとして求める。つまり、
図9より、
斜行量θ=(X2-X1)/(Y2-Y1)である。
上述した様に、第1左側エッジと第2左側エッジは、濃度の高いパッチの左側エッジであるため、その検出精度は高く、よって、斜行量を精度良く判定することができる。
【0038】
読出部305cは、斜行量検出部305bで算出した斜行量θに基づき、メモリ305a5に格納された読取データの内、各パッチの中央領域(
図8(A)参照)に対応する読取データを決定する。具体的には、メモリ305a5には、
図8(B)の網線領域の読取データが格納されている。したがって、読出部305cは、斜行量θに基づき
図8(B)の網線領域から、各パッチの中央領域に対応する主走査方向の範囲を決定する。このため、読出部305cは、中央領域の主走査方向における左側の位置を、ラインの副走査方向の位置に応じて、基準位置からSだけ右側に移動させる。具体的には、副走査方向の位置をYとすると、
S=(Y-Y1)×θ
となる。ここで、基準位置は、例えば、第1左側エッジの主走査方向の位置X1からパッチの中央領域の左側までの主走査方向における距離に対応する。なお、左側の位置Sから主走査方向の右側に向けて読み出す長さは、パッチの主走査方向の大きさに基づき予め決まっている。読出部305cは、決定した読取データを、メモリ305a5から読み出して、平均値算出部305dに出力する。
【0039】
平均値算出部305dは、読出部305cが読み出した読取データに基づき、各パッチそれぞれについて、パッチの中央領域の各画素の輝度値を判定し、それらを平均化することで、各パッチの平均輝度値を算出する。
図8(A)に示す様に1つの濃度パッチが7つの異なるパッチを含む場合、1つの濃度パッチから7つの平均輝度値が算出される。
【0040】
図10は、濃度検出処理部305における処理のフローチャートである。濃度検出処理部305は、S20で、濃度パッチのカウンタMを0に初期化する。濃度検出処理部305は、S21で、ラインのカウンタHを0に初期化する。S22で、濃度検出処理部305は、左側エッジを検知すると、S23で、カウンタHを1だけ増加させる。濃度検出処理部305は、S24で、カウンタHが第1設定値以上であるかを判定する。第1設定値は、1つの濃度パッチの副走査方向の長さを、ライン数に換算した値であり、予め濃度検出処理部305に設定されている。ラインのカウンタHが第1設定値未満であることは、1つの濃度パッチの総ての左側エッジを検知していないことを意味するため、濃度検出処理部305はS22から処理を繰り返す。一方、カウンタHが第1設定値以上であることは、1つの濃度パッチの総ての左側エッジを検知したことを意味するため、濃度検出処理部305は、S25で
図9を用いて説明した様に斜行量を求める。
【0041】
濃度検出処理部305は、S26で、斜行量に基づき決定した読取データを、メモリ305a5から読み出し、S27で、各パッチの平均輝度値を算出する。これにより1つの濃度パッチに対する処理が終了する。その後、濃度検出処理部305は、S28で、カウンタMを1だけ増加させ、S29で、カウンタMが第2設定値以上であるかを判定する。第2設定値は、1つの記録材において、副走査方向に沿って形成する濃度パッチの数に対応し、予め濃度検出処理部305に設定されている。カウンタMが第2設定値未満であることは、総ての濃度パッチを検知していないことを意味するため、濃度検出処理部305はS21から処理を繰り返す。一方、カウンタMが第2設定値以上であることは、総ての濃度パッチを検知したことを意味するため、濃度検出処理部305は、
図10の処理を終了する。
【0042】
濃度検出処理部305が出力する各パッチの平均輝度値は、コントローラ110に出力される。コントローラ110は、色毎の濃度パッチの各パッチの平均輝度値を輝度濃度変換テーブルに基づき濃度へ変換する。つまり、各色について、各パッチの濃度を求める。そして、コントローラ110は、各パッチの濃度に基づきプリンタ150の濃度特性(階調特性)を色毎に決定する。コントローラ110は、決定した(現在の)プリンタ150の濃度特性に基づき、プリンタ150の濃度特性が理想的なものとなるように、画像データの入力値を変換する1次元の階調補正テーブルを、色毎に生成する。コントローラ110は、画像データを階調補正テーブルに基づき変換し、変換後の画像データによりプリンタ150に画像を形成させる。この構成により、プリンタ150により形成されるユーザ画像の濃度特性と理想的な濃度特性との差を小さくすることができる。
【0043】
なお、調整する画像形成条件は、階調補正テーブルに限定されず、濃度に関する他の画像形成条件を調整する構成とすることができる。例えば、コントローラ110は、濃度パッチの検知結果に基づいてプリンタ150の帯電器220の帯電バイアス、露光装置223の露光強度、及び、現像器152の現像バイアスの少なくとも1つを制御する構成とすることができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、読取データが示す輝度値を濃度に変換後、濃度を用いて画像形成条件を生成したが、平均輝度値から直接画像形成条件を生成する構成とすることもできる。
【0045】
以上、本実施形態の画像形成装置は、ラインセンサユニットに対する濃度パッチの斜行量を検出し、斜行量に基づき濃度パッチの各パッチの中央領域を判定する。この構成により、フレアの影響を抑えて精度良く濃度パッチを読み取ることができる。また、中央領域に対応する読取データに基づき画像形成条件を調整することで、安定した濃度の画像を出力することができる。なお、本発明によると、画像読取装置が提供される。画像読取装置は、読取装置160に対応し、ラインセンサユニットに対する濃度パッチの斜行量を検出し、斜行量に基づき濃度パッチの各パッチの中央領域を判定する。そして、中央領域の輝度値に基づき各パッチの平均輝度値を出力する。さらに、画像読取装置は、平均輝度値を濃度に変換して画像形成条件を生成することもできる。
【0046】
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0047】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0048】
312a、312b:ラインセンサユニット、305b4:斜行量算出部、305c:読出部