(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】便座装置及び便器装置
(51)【国際特許分類】
A47K 13/26 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
A47K13/26
(21)【出願番号】P 2020102199
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】瀧内 大
(72)【発明者】
【氏名】森川 雄大
(72)【発明者】
【氏名】平澤 勇人
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-176412(JP,A)
【文献】特開2017-176413(JP,A)
【文献】特開2017-042444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面部と、前記座面部の後部から後方に延びるとともに、前記座面部よりも幅方向の大きさが小さいヒンジ部と、を有し、
前記座面部及び前記ヒンジ部の各々の上部が設けられた座表部材と、
前記座面部及び前記ヒンジ部の各々の下部が設けられるとともに、厚み方向で前記座表部材に接着される座裏部材と、
前記ヒンジ部の前記座表部材又は前記座裏部材に設けられるとともに、前記座表部材及び前記座裏部材とは別の部材で形成されている第1補強部材と、前記座表部材と前記座裏部材との間に配置され、前記座表部材、前記座裏部材、及び前記第1補強部材の各々とは別の部材で形成されている第2補強部材の少なくとも一方の部材と、
を備え、
前記第1補強部材は、前記座表部材及び前記座裏部材のうち一方の部材の高さ方向の中心よりも少なくとも前記座表部材及び前記座裏部材のうち他方の部材との接着面側に配置されている、
便座装置。
【請求項2】
座面部と、前記座面部の後部から後方に延びるとともに、前記座面部よりも幅方向の大きさが小さいヒンジ部と、を有し、
前記座面部及び前記ヒンジ部の各々の上部が設けられた座表部材と、
前記座面部及び前記ヒンジ部の各々の下部が設けられるとともに、厚み方向で前記座表部材に接着される座裏部材と、
前記ヒンジ部の前記座表部材又は前記座裏部材に設けられるとともに、前記座表部材及び前記座裏部材とは別の部材で形成されている第1補強部材と、前記座表部材と前記座裏部材との間に配置され、前記座表部材、前記座裏部材、及び前記第1補強部材の各々とは別の部材で形成されている第2補強部材の少なくとも一方の部材と、
を備え、
前記ヒンジ部の幅方向の両側の側壁部は前後方向に沿って互いに略平行であり、
前記第1補強部材は、前記ヒンジ部の前後方向の中心よりも前記座面部側に配置されている、
便座装置。
【請求項3】
座面部と、前記座面部の後部から後方に延びるとともに、前記座面部よりも幅方向の大きさが小さいヒンジ部と、を有し、
前記座面部及び前記ヒンジ部の各々の上部が設けられた座表部材と、
前記座面部及び前記ヒンジ部の各々の下部が設けられるとともに、厚み方向で前記座表部材に接着される座裏部材と、
前記ヒンジ部の前記座表部材又は前記座裏部材に設けられるとともに、前記座表部材及び前記座裏部材とは別の部材で形成されている第1補強部材と、前記座表部材と前記座裏部材との間に配置され、前記座表部材、前記座裏部材、及び前記第1補強部材の各々とは別の部材で形成されている第2補強部材の少なくとも一方の部材と、
を備え、
前記ヒンジ部の幅方向の両側の側壁部のうち少なくとも一方の側壁部には前後方向の所定の領域で幅方向に凹む凹部が形成され、
前記第1補強部材は、前記ヒンジ部において前後方向で最小幅を有する部分の前後方向の中心よりも前記座面部側の領域に配置されている、
便座装置。
【請求項4】
座面部と、前記座面部の後部から後方に延びるとともに、前記座面部よりも幅方向の大きさが小さいヒンジ部と、を有し、
前記座面部及び前記ヒンジ部の各々の上部が設けられた座表部材と、
前記座面部及び前記ヒンジ部の各々の下部が設けられるとともに、厚み方向で前記座表部材に接着される座裏部材と、
前記ヒンジ部の前記座表部材又は前記座裏部材に設けられるとともに、前記座表部材及び前記座裏部材とは別の部材で形成されている第1補強部材と、前記座表部材と前記座裏部材との間に配置され、前記座表部材、前記座裏部材、及び前記第1補強部材の各々とは別の部材で形成されている第2補強部材の少なくとも一方の部材と、
を備え、
前記ヒンジ部に前記第1補強部材の前後方向及び上下方向の少なくとも一方の移動を規制する移動規制部が設けられている、
便座装置。
【請求項5】
前記第1補強部材は、軸線が前記座表部材と前記座裏部材とを接合した便座本体の厚み方向に沿う柱状部を有し、
前記移動規制部は、前記ヒンジ部の幅方向の両側壁面の各々から中央に向かって突出するとともに、前後方向に間隔をあけて設けられた2つのリブを有し、
前記2つのリブ同士の前後方向の間隔は、前記柱状部の前後方向の大きさ以下であり、
前記幅方向で互いに向き合うリブの先端同士の幅方向の間隔は、前記柱状部の幅方向の大きさ以下である、
請求項
4に記載の便座装置。
【請求項6】
座面部と、前記座面部の後部から後方に延びるとともに、前記座面部よりも幅方向の大きさが小さいヒンジ部と、を有し、
前記座面部及び前記ヒンジ部の各々の上部が設けられた座表部材と、
前記座面部及び前記ヒンジ部の各々の下部が設けられるとともに、厚み方向で前記座表部材に接着される座裏部材と、
前記ヒンジ部の前記座表部材又は前記座裏部材に設けられるとともに、前記座表部材及び前記座裏部材とは別の部材で形成されている第1補強部材
、及び
、前記座表部材と前記座裏部材との間に配置され、前記座表部材、前記座裏部材、及び前記第1補強部材の各々とは別の部材で形成されている第2補強部
材と、
を備え、
前記ヒンジ部は、前記座面部の後部の幅方向で互いに間隔をあけた2つの位置から後方に延びる第1ヒンジ部及び第2ヒンジ部を有し、
前記第1補強部材は、平面視で前記第1ヒンジ部に配置され、
前記第2補強部材は、前記第2ヒンジ部の前後方向の前記座面部側に配置されている、
便座装置。
【請求項7】
便器本体と、
前記便器本体に設置された請求項1から
6の何れか一項に記載の便座装置と、
を備える、
便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便座装置及び便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便座装置及び便器装置は、便器本体に形成された便鉢部に開閉可能な便座が設けられている。例えば特許文献1には、便器本体に固定される固定部材(回転軸部材)と便器本体に対して回転自在に設けられた便座本体とを備えた便座装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の便座装置では、便座本体は、表側に位置するとともに使用者が座った際に接する座表部材と、裏側に位置するとともに座表部材の底端に接続される座裏部材と、備える。座表部材及び座裏部材は、例えば樹脂で形成されている。便座本体は、便座を構成する座面部と、座面部に隣り合うとともに、回転軸部材に接続されるヒンジ部と、を有する。便座本体の製造時には、座表部材及び座裏部材の各々を射出成型等によって形成した後に、座表部材の裏側と座裏部材の表側とを溶着する。座表部材及び座裏部材の成形工程と溶着工程では、座表部材及び座裏部材の材料の樹脂に熱が加わった後、樹脂が冷やされる際に収縮する。樹脂の収縮の度合いは樹脂の厚み等によって便座本体においてばらつき、座面部よりも幅方向の大きさが小さいヒンジ部及びヒンジ部に隣り合う座面部に変形が生じる虞があった。
【0005】
本開示は、ヒンジ部の変形を防止可能な便座装置及び便器装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る便座装置は、座面部と、前記座面部の後部から後方に延びるとともに、前記座面部よりも幅方向の大きさが小さいヒンジ部と、を有し、前記座面部及び前記ヒンジ部の各々の上部が設けられた座表部材と、前記座面部及び前記ヒンジ部の各々の下部が設けられるとともに、厚み方向で前記座表部材に接着される座裏部材と、前記ヒンジ部の前記座表部材又は前記座裏部材に設けられるとともに、前記座表部材及び前記座裏部材とは別の部材で形成されている第1補強部材と、前記座表部材と前記座裏部材との間に配置され、前記座表部材、前記座裏部材、及び前記第1補強部材の各々とは別の部材で形成されている第2補強部材の少なくとも一方の部材と、を備え、前記第1補強部材は、前記座表部材及び前記座裏部材のうち一方の部材の高さ方向の中心よりも少なくとも前記座表部材及び前記座裏部材のうち他方の部材との接着面側に配置されている。本開示に係る便座装置では、前記ヒンジ部の幅方向の両側の側壁部は前後方向に沿って互いに略平行であり、前記第1補強部材は、前記ヒンジ部の前後方向の中心よりも前記座面部側に配置されている。本開示に係る便座装置では、前記ヒンジ部の幅方向の両側の側壁部のうち少なくとも一方の側壁部には前後方向の所定の領域で幅方向に凹む凹部が形成され、前記第1補強部材は、前記ヒンジ部において前後方向で最小幅を有する部分の前後方向の中心よりも前記座面部側の領域に配置されている。本開示に係る便座装置では、前記ヒンジ部の幅方向の両側の側壁部のうち少なくとも一方の側壁部には前後方向の所定の領域で幅方向に凹む凹部が形成され、前記第1補強部材は、前記ヒンジ部において前後方向で最小幅を有する部分の前後方向の中心よりも前記座面部側の領域に配置されている。本開示に係る便座装置では、前記ヒンジ部に前記第1補強部材の前後方向及び上下方向の少なくとも一方の移動を規制する移動規制部が設けられている。本開示に係る便座装置は、前記第1補強部材及び前記第2補強部材の両方を備え、前記ヒンジ部は、前記座面部の後部の幅方向で互いに間隔をあけた2つの位置から後方に延びる第1ヒンジ部及び第2ヒンジ部を有し、前記第1補強部材は、平面視で前記第1ヒンジ部に配置され、前記第2補強部材は、前記第2ヒンジ部の前後方向の前記座面部側に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示に係る一実施形態の便座装置及び便器装置の斜視図である。
【
図2】
図1に示す便座装置及び便器装置の斜視図である。
【
図4】
図1に示す便座装置の第1ヒンジ部の断面図である。
【
図5】
図4に示すX1線上で上方から見た第1ヒンジ部の断面図である。
【
図6】
図1に示す便座装置の第2ヒンジ部及びその周囲の構造の斜視図である。
【
図7】
図1に示す便座装置の第2ヒンジ部及びその周囲の構造の斜視図である。
【
図8】
図6に示すX2-X2線で矢視した第2ヒンジ部及びその周囲の構造の断面図である。
【
図9】
図6に示すX3-X3線で矢視した第2ヒンジ部及びその周囲の構造の断面図である。
【
図10】
図1に示す便座装置の第1ヒンジ部の変形例の断面図である。
【
図11】
図1に示す便座装置の第1ヒンジ部の変形例の断面図である。
【
図12】
図1に示す便座装置の第1ヒンジ部の変形例の断面図である。
【
図13】
図1に示す便座装置の第2ヒンジ部の変形例の斜視図である。
【
図14】
図1に示す便座装置の第2ヒンジ部の変形例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1及び
図2に示すように、本開示に係る一実施形態に係る便器装置15は、便器本体20と、便座装置110と、を備える。便器本体20は、陶器で形成されている。
図2に示すように、便器本体20には、便鉢部22が形成されている。便座装置110は、便器本体20の上方に設置され、便鉢部22の上端の周縁部24に対して開閉可能に設けられている。
図1及び
図2では、便座装置110は、周縁部24に接し、閉じている。以下の説明では、便座装置110及び便器装置15が置かれる床面から鉛直に延びる方向を上下方向Hとし、上下方向Hで床面に近い方を下と記載し、上下方向Hで床面から遠い方を上と記載する。上下方向Hに直交する一方向を前後方向Lとし、不図示の使用者が便座装置110に座ったときに使用者が向く方向の前方を前とし、使用者が向く方向の後方を後と記載する。上下方向H及び前後方向Lに直交する方向を幅方向Wと記載する。使用者が便座装置110に座ったときに使用者から見て右側を右とし、使用者から見て左側を左と記載する。
【0009】
図1から
図3に示すように、便座装置110は、便蓋107と、便座本体220と、補強部材(第1補強部材)300と、スペーサ(第2補強部材)370と、ヒータ部材480と、ハーネス(電線)490と、機能部250と、回転軸部材280-1、280-2と、を備える。
【0010】
便蓋107は、便座本体220と同軸で便器本体20の周縁部24と便座本体220に対して開閉可能に設けられている。便蓋107は、便座本体220を表側から覆うことができる。
図1では、便蓋107は、周縁部24に対して閉じている。
図2では、便蓋107は、周縁部24に対して開いている。
【0011】
便座本体220は、上部を構成する座表部材301と、下部を構成する座裏部材311で構成されている。座裏部材311の表端312は、座表部材301の裏端302に隙間なく接着されている。例えば、座裏部材311の表端312は、座表部材301の裏端302と互いに幅方向Wに振動を受けながら溶着されている。座表部材301の裏端302には、溶着面317が設けられている。座裏部材311の表端312には、溶着面318が設けられている。
【0012】
便座本体220は、中空体である。座表部材301及び座裏部材311は、便座本体220の周壁部を構成可能な形状を有する。便座本体220の表と裏を結ぶ厚み方向T1、即ち
図1及び
図2に示すように閉じた状態の便座本体220の上下方向Hに関して、座表部材301と座裏部材311の各厚み及び厚みの比率は、特定の値に限定されず、適宜設定される。本開示では、座表部材301は、座裏部材311よりも厚く形成されている。このことによって、座表部材301及び座裏部材311の溶着工程を進めやすく、且つ他部品との干渉を回避し、溶着工程で発生するビード、即ち溶けた端材の外観への飛び出しを防止できる。座裏部材311は、便座本体220の底壁部分を構成している。座表部材301は、便座本体220の側壁部分及び頂壁部分を構成し、座裏部材311に表側から溶着されることによって便座本体220の内部空間350を形成している。座表部材301及び座裏部材311は、例えば樹脂で形成されている。
【0013】
便座本体220は、座面部230と、ヒンジ部240と、を有する。座面部230は、使用者が座る便座を構成する部分である。表側から厚み方向T1に沿って見ると、座面部230には、便器本体20に形成された便鉢部22の開口と略重なる開口が形成されている。厚み方向T1に沿って見ると、座面部230は、略環状に形成されている。座面部230で開口が形成されている部分よりも後方の後端部(後部)232は、幅方向Wに沿って略直線状に形成されている。
【0014】
ヒンジ部240は、座面部230の後端部232から前後方向Lに沿って後方に延びている。ヒンジ部240の幅方向Wの大きさは、座面部230の幅方向Wの大きさよりも小さい。本開示では、ヒンジ部240は、第1ヒンジ部(ヒンジ部)241と、第2ヒンジ部(ヒンジ部)242と、を備える。第1ヒンジ部241と第2ヒンジ部242とは、座面部230の後端部232の幅方向Wで互いに間隔をあけた2つの位置PP1、PP2に設けられている。第1ヒンジ部241の最大幅WW1は、第2ヒンジ部242の最大幅WW2と同じであり、座面部230の最大幅WW3よりも小さい。
【0015】
第1ヒンジ部241及び第2ヒンジ部242は、座面部230の幅方向Wの両端部に配置されている。第1ヒンジ部241の幅方向Wの右側の側壁部(幅方向Wの側壁)362は、座面部230の幅方向Wの右側の側壁部243よりも座面部230の幅方向Wの中央CC230側に位置する。第1ヒンジ部241の右側の端面291は、幅方向Wで座面部230の右側の端面292よりも座面部230の幅方向Wの中央CC230側に位置する。第2ヒンジ部242の幅方向Wの左側の側壁部331は、座面部230の幅方向Wの左側の側壁部244よりも座面部230の幅方向Wの中央CC230側に位置する。第2ヒンジ部242の左側の端面293は、幅方向Wで座面部230の左側の端面294よりも座面部230の幅方向Wの中央CC230側に位置する。第1ヒンジ部241及び第2ヒンジ部242は、座面部230の後端部232の幅方向Wの両端から中央CC230側にセットバックされている。
【0016】
図3に示すように、補強部材300は、ヒンジ部240に設けられ、例えば第1ヒンジ部241に設けられている。補強部材300は、座表部材301及び座裏部材311の各々とは別の部材で形成され、座表部材301及び座裏部材311とは別体である。補強部材300の材質は、座表部材301及び座裏部材311の材質と同じであってもよく、座表部材301及び座裏部材311とは異なる材質であってもよい。ヒータ部材480は、便座本体220の内部空間350に設けられている。ヒータ部材480は、アルミニウム(Al)、或いはアルミニウム以外の熱伝導性の良好な金属で形成されている。ヒータ部材480は、公知の便座装置で便座の温度調節を実行するために用いられる伝熱部材等で構成されてもよい。ハーネス490は、ヒータ部材480に機能部250からの電力等を伝達するための電線で構成されている。ハーネス490の一方の端部491は、ヒータ部材480に接続されている。ハーネス490の他方の端部492は、便座本体220の外部に延びている。
【0017】
機能部250は、便器本体20に形成された便鉢部22の内周面や使用者の局部の洗浄、後述する便座本体220の温度調整等の各種機能(所定の機能)を実行し、便器本体20の後部に配置されている。
図2に示すように、機能部250の上部は、便器本体20の後部の上面21よりも上方に現れている。機能部250の上部よりも下の部分は、便器本体20の後部に形成された開口を通じて便器本体20の内部空間に収容されている。
【0018】
機能部250は、機能部本体260と、トップカバー270と、本体カバー262と、を備える。機能部本体260は、機能部250の各種機能を実行するための電源、回路、局部洗浄ノズル、局部洗浄ノズルの移動機構、シャッタ252等の部品を有する。機能部250における各種部品の種類、数、及び部品同士の相対配置は、機能部250が実行する各種機能に応じて適宜設定され、特に限定されない。
【0019】
本体カバー262は、機能部本体260が有する複数の部品のうち、少なくとも便器本体20の上面21よりも上方に位置する部品を支持している。本体カバー262の上端は、上方に向けて開口している。トップカバー270は、本体カバー262の上端に対して開閉可能に設けられている。
図3に示すように、本体カバー262の幅方向Wの右側の側壁部263には、前側から順に、第2通過口265、第3貫通孔266が形成されている。本体カバー262の幅方向Wの左側の側壁部264には、前後方向Lで側壁部263に形成された第3貫通孔266と重なる第3貫通孔266が形成されている。
図3では、側壁部263に形成された第3貫通孔266は、側壁部264よりも紙面の奥側に隠れている。
【0020】
回転軸部材280-1、280-2は、幅方向Wに沿って延びている。回転軸部材280-1は、本体カバー262の内部から側壁部263に形成された第3貫通孔266を通り、機能部250よりも幅方向Wの外方、即ち本体カバー262の側壁部263よりも右側に突出している。回転軸部材280-2は、本体カバー262の内部から側壁部264に形成された第3貫通孔266を通り、機能部250よりも幅方向Wの外方、即ち本体カバー262の側壁部264よりも左側に突出している。
図3では、回転軸部材280-1は、本体カバー262よりも紙面の奥側に隠れている。
【0021】
図4に示すように、補強部材300は、便座本体220の厚み方向T1に沿って、ハーネス490が通っていない第1ヒンジ部241の内部空間350に配置されている。
図4及び
図5に示すように、補強部材300は、例えば軸線が厚み方向T1に沿う円柱部(柱状部)353を有する。補強部材300の円柱部353よりも上側には、上に凸形状を有する半球部355が設けられている。補強部材300の円柱部353よりも下側には、下に凸形状を有する半球部356が設けられている。補強部材300において厚み方向T1に交差する断面の形状は、略真円である。
【0022】
図5に示すように、第1ヒンジ部241には、補強部材300の前後方向L及び上下方向Hの各々での移動を規制する移動規制部360が設けられている。移動規制部360は、4つのリブ360-1、360-2、360-3、360-4を備える。2つのリブ360-1、360-2は、第1ヒンジ部241の左側の側壁部(幅方向Wの側壁)361において内部空間350に向いている側壁面361に前後方向Lで間隔をあけて設けられている。2つのリブ360-1、360-2同士の前後方向Lでの間隔は、補強部材300の前後方向Lでの最大長さ以下、即ち直径以下である。2つのリブ360-3、360-4は、第1ヒンジ部241の右側の側壁部362において内部空間350に向いている側壁面362に前後方向Lで間隔をあけて設けられている。2つのリブ360-3、360-4同士の前後方向Lでの間隔は、補強部材300の前後方向Lでの最大長さ以下、即ち直径以下である。補強部材300の上下方向Hの移動は、補強部材300が幅方向Wの両側から4つのリブ360-1、360-2、360-3、360-4で支持されている状態で自身の中心側に向かって受ける押圧力によって規制されている。
【0023】
図5に示すように、前後方向Lにおいて、リブ360-1、360-3が互いに重なり、リブ360-2、360-4が互いに重なっている。幅方向Wで互いに向き合うリブ360-1、360-3の先端同士の幅方向Wの間隔は、補強部材300の幅方向Wでの最大長さ以下、即ち直径以下である。幅方向Wで互いに向き合うリブ360-2、360-4の先端同士の幅方向Wの間隔は、補強部材300の幅方向Wでの最大長さ以下、即ち直径以下である。上述のように4つのリブ360-1、360-2、360-3、360-4の間隔が調整されていることによって、補強部材300の円柱部353は、第1ヒンジ部241において4つのリブ360-1、360-2、360-3、360-4によって位置決めされている。補強部材300の円柱部353は、4つのリブ360-1、360-2、360-3、360-4よりも前後方向Lで前方及び後方に移動できず、4つのリブ360-1、360-2、360-3、360-4よりも幅方向Wで左方及び右方に移動できない。
【0024】
図4に示すように、補強部材300は、座表部材301と座裏部材311との間の厚み方向T1で内部空間350のうち所定の領域352に設けられている。補強部材300の厚み方向T1の長さは、領域352の厚み方向T1の長さ以上であることが好ましい。補強部材300の厚み方向T1での大きさは、座表部材301と座裏部材311との間の全体の長さと略同じでもよいが、領域352と略同じであることが好ましい。補強部材300の厚み方向T1での大きさが領域352と略同じであることによって、例えば座表部材301と座裏部材311との間の全体の長さに及ぶ場合に比べて補強部材300の材料の使用量を抑えることができる。所定の領域352は、便座本体220の厚み方向T1において座表部材301と座裏部材311との溶着部分に隣り合う領域、或いは溶着部分に近い領域が好ましい。補強部材300は、上下方向Hにおいて座表部材301の厚み方向T1の中心CT301よりも溶着面317側の領域351に配置されている。
【0025】
図5に示すように、第1ヒンジ部241の幅方向Wの両側の側壁部391、392のうち、側壁部392は、側壁部391よりも座面部230の右側の端面(幅方向の側端)292に近い。側壁部391は、平面視で前後方向Lに沿って略直線状に形成されている。側壁部392は、直線部392-1、392-2、392-3を有する。側壁部392のうち後端から前後方向Lの所定の位置397までの直線部392-1は、前後方向Lに沿って側壁部391に略平行である。側壁部392のうち直線部392-2は、平面視において所定の位置で直線部392-1の前端から幅方向Wに沿って座面部230の中心側に延びている。側壁部392のうち前後方向Lの所定の位置397から前端までの直線部392-3は、平面視において直線部392-2の左端から前後方向Lに沿って延びている。直線部392-1、392-2、392-3は、この順に連結され、一体に形成されている。側壁部392は、前側から所定の位置397まで前後方向Lに沿い、所定の位置397から座面部230の幅方向Wの中心側に近づくように屈折し、その後再び前後方向Lに沿って延びている。平面視で直線部392-1、392-2がなす角度及び直線部392-2、392-3がなす角度は、それぞれ略90°である。第1ヒンジ部241の側壁部392は所定の位置397でセットバックされている。側壁部392には、直線部392-2、392-3によって、幅方向Wに凹む凹部610が形成されている。凹部610は、前後方向Lの所定の位置397から側壁部392の前端までの領域(所定の領域)620に形成されている。
【0026】
第1ヒンジ部241の側壁部391と側壁部392の直線部392-3との間の幅は、側壁部391と側壁部392の直線部392-1との間の幅よりも小さく、第1ヒンジ部241の最小幅である。領域620の第1ヒンジ部241の幅は、所定の位置397よりも前側の第1ヒンジ部241の幅よりも小さい。領域620の第1ヒンジ部241には、後述する回転軸部材280-1が幅方向Wに沿って貫通している。領域620の第1ヒンジ部241は、回転軸部材280-1が貫通するヒンジ本体(部分)631である。前後方向Lで所定の位置397よりも前側の第1ヒンジ部241は、ヒンジ本体631と座面部230とを前後方向に連結するヒンジ連結部632である。
【0027】
ヒンジ本体631は、第1ヒンジ部241において前後方向Lで最小幅を有する。補強部材300は、ヒンジ本体631の前後方向Lの中心398よりも座面部230側、即ち前側の領域641に配置されている。4つのリブ360-1、360-2、360-3、360-4は、補強部材300の配置に合わせて、ヒンジ本体631の中心398よりも座面部230側の領域641に設けられている。
【0028】
第1ヒンジ部241及び第2ヒンジ部242の平面視形状は、座面部230の幅方向W中心に対して互いに略線対称である。第2ヒンジ部242の後端部に、第1ヒンジ部241と同様にヒンジ本体631が設けられている。
【0029】
図6から
図9に示すように、スペーサ370は、座表部材301と座裏部材311との間に配置され、前後方向Lで座面部230側の第2ヒンジ部242に設けられている。スペーサ370、座表部材301、座裏部材311、補強部材300の各々とは別の部材で形成され、座表部材301、座裏部材311、補強部材300とは別体である。スペーサ370の材質は、座表部材301、座裏部材311、補強部材300の何れかの材質と同じであってもよく、座表部材301、座裏部材311、補強部材300の各々とは異なる材質であってもよい。
【0030】
図6及び
図8に示すように、座表部材301の領域RS1にスペーサ取付部304が設けられている。領域RS1は、前後方向Lで座面部230に隣り合い且つ第2ヒンジ部242の前側に位置するとともに、幅方向Wで第2ヒンジ部242の左側に位置する領域である。スペーサ取付部304は、座表部材301の上壁321から側壁322に向かって湾曲しながら下降する壁部323の内周面324に設けられている。スペーサ取付部304は、壁部323の内周面324から座裏部材311に向かって下降するように突出している。スペーサ取付部304には、先端から座裏部材311側に開口し、且つ便座本体220の厚み方向T1に沿って延びるねじ挿入穴305が形成されている。スペーサ取付部304及びねじ挿入穴305が座表部材301の湾曲部分に設けられることによって、製造時にねじ挿入穴305に起因して生じ得る座表部材301のひけが湾曲面で目立たず、座表部材301の美観性が高まる。
図6及び
図7では、座表部材301を破線で示し、スペーサ取付部304は省略されている。
【0031】
スペーサ370は、領域RS1に配置される固定部371と、領域RS2に配置される空間形成部372と、を有する。領域RS2は、前後方向Lで第2ヒンジ部242に隣り合い且つ第2ヒンジ部242の前方に位置するとともに、幅方向Wで第2ヒンジ部242と略重なる領域である。
図8に示すように、固定部371の厚み方向T1の少なくとも上面は、座表部材301の領域RS1の内周面324に沿って形成されている。固定部371の上部には、上方からスペーサ取付部304を挿入可能な穴375が形成されている。穴375の底壁を構成するスペーサ370の支持壁部373には、ねじ止め孔374が形成されている。ねじ止め孔374及びねじ挿入穴305の各々の軸線は、前後方向L及び幅方向Wで互いに重なり、厚み方向T1で互いに隣り合う。前後方向L及び幅方向Wにおいて、ねじ止め孔374は、ねじ挿入穴305よりも大きく形成されている。ねじ挿入穴305の大きさに合う頭部と、ねじ止め孔374の大きさ及び軸線方向の長さに合うネジ部とを有する不図示のねじを下方からねじ止め孔374及びねじ挿入穴305に挿入し、前述のねじとスペーサ取付部304とをねじ止めすることによって、固定部371は、座表部材301に固定されている。座表部材301に固定された状態の固定部371の厚み方向T1の上面は、座表部材301の内周面324に接している。
【0032】
空間形成部372は、固定部371と一体に形成されている。
図8及び
図9に示すように、空間形成部372は、固定部371の下部から幅方向Wで右方に突出している。
図9に示すように、第2ヒンジ部242の前部及びその前方の内部空間350の下部に、空間形成部372が位置する。
図6に示すように、空間形成部372の後部は、固定部371よりも後方に延びている。空間形成部372の後部は、傾斜面376を有する。傾斜面376は、空間形成部372の後部の厚み方向T1の上面に設けられ、後方に進むにしたがって下降している。
【0033】
図6、
図8及び
図9に示すように、スペーサ370の空間形成部372と座表部材301との間に、ハーネス490が通る通過空間(空間)494が形成されている。前述のように空間形成部372の後部に傾斜面376が設けられていることによって、通過空間494の後部は、後方に進むにしたがって下側に拡がっている。下側に拡がった通過空間494は、第2ヒンジ部242の内部空間350の後側に延びている。
【0034】
図6及び
図9に示すように便座本体220が閉じた状態で、座表部材301の第2ヒンジ部242には、ハーネス可動空間(電線可動領域)380が設けられている。ハーネス可動空間380は、幅方向Wに沿う回転軸部材280-2の軸線JX280-2を中心として周方向θ280に沿って形成されている。ハーネス可動空間380は、座表部材301の第2ヒンジ部242の右側の側壁部330に開口している。第2ヒンジ部242の側壁部330には、第1通過口395が形成されている。ハーネス可動空間380は、前方の通過空間494と部分的に繋がっている。
図6に示すように、座面部230の内部空間350内のハーネス490の端部492に近い部分は、空間形成部372によって通過空間494に導かれ、第2ヒンジ部242の内部空間350及びハーネス可動空間380を経て、第1通過口395から第2ヒンジ部242及び便座本体220の外部に達する。
【0035】
機能部250の本体カバー262の左側の側壁部264に形成されている第2通過口265は、幅方向Wで便座本体220の第2ヒンジ部242に形成された第1通過口395と少なくとも部分的に重なるとともに、第1通過口395に向き合っている。便座本体220の開閉状態に関係なく、幅方向Wから見て第1通過口395と第2通過口265とが互いに重なる部分の大きさは、ハーネス490の断面よりも大きい。第1通過口395と第2通過口265とが互いに重なる部分は、第2ヒンジ部242と機能部250の機能部本体260との間で幅方向Wに沿って形成されている。
【0036】
図7は、便座本体220が略完全に開いた状態である様子を示している。
図6及び
図7に示すように、便座本体220が閉じた状態から回転軸部材280-1、280-2を中心に開くと、座面部230が周方向θ280で回転するので、ハーネス490が座面部230に伴って周方向θ280で移動する。この動きによって、第2ヒンジ部242におけるハーネス490の全長が変化する。ハーネス490が周方向θ280で移動するのと同時に、ハーネス490はハーネス可動空間380内を周方向θ280に沿って移動することによって、第2ヒンジ部242におけるハーネス490の長さが略変わらず、ハーネス490が第2ヒンジ部242の内部空間350で過度に撓まない、或いは過度に引っ張られない。ハーネス490の周方向θ280での回転及び移動を円滑に行うために、ハーネス可動空間380が形成される周方向θ280での角度範囲は、便座本体220の回転角度に合わせて適宜設定され、例えば約115°である。
【0037】
上述の構成に関し、ハーネス490は、前側から後側に向かって、平面視で第2ヒンジ部242に隣り合う座面部230の後部の内部空間350、通過空間494、ヒンジ本体631の内部空間350を前述の順に通り、機能部本体260に接続されている。座面部230の後部の内部空間350、通過空間494、ヒンジ本体631の内部空間350は、幅方向Wで互いに重なる部分を有する。
【0038】
以上説明した便座装置110は、座面部230と、ヒンジ部240と、を有する。ヒンジ部240は、座面部230の後部から後方に延びている。ヒンジ部240の幅方向Wの大きさは、座面部230よりも小さい。便座装置110は、座表部材301と、座裏部材311と、補強部材(第1補強部材)300と、スペーサ(第2補強部材)と、を備える。座表部材301には、座面部230及びヒンジ部240の各々の表部(上部)が設けられている。座裏部材311には、座面部230及びヒンジ部240の各々の裏部(下部)が設けられている。座裏部材311は、厚み方向T1で座表部材301に接着されている。座表部材301と座裏部材311とが厚み方向T1で接着されることによって、平面視で座面部230及びヒンジ部240が形成されている。補強部材300は、ヒンジ部240の座表部材301と座裏部材311との間に設けられ、座表部材301及び座裏部材311とは別の部材で形成されている。スペーサ370は、座表部材301と座裏部材311との間に設けられ、座表部材301、座裏部材311、補強部材300とは別の部材で形成されている。
【0039】
本開示に係る上述の便座装置110では、便座本体220の製造時において、例えば座表部材301及び座裏部材311を射出成形する工程、或いは座表部材301の裏端302と座裏部材311の表端312とを溶着する工程で、各部材の材料の樹脂の固化時の収縮が生じる。上述の便座装置110によれば、樹脂の収縮によって、座面部230よりも幅方向Wの大きさが小さい第1ヒンジ部241に対して、例えば幅方向Wで座面部230の中心CC230に近づく方向等に負荷がかかっても、補強部材300によって第1ヒンジ部241が補強されているため、第1ヒンジ部241の変形を抑えることができる。上述の便座装置110によれば、厚み方向T1に亘るスペーサ370によって座表部材301と座裏部材311との接着構造が補強されているので、製造時の便座本体220のヒケや凹み、変形等の発生を防止できる。
【0040】
上述の便座装置110において、便座本体220は、中空体で形成されている。補強部材300は、厚み方向T1に沿ってヒンジ部240の内部空間350に配置されている。補強部材300は、上下方向Hにおいて座表部材301の高さ方向の中心CT301よりも座表部材301の溶着面317側の領域351に配置されている。上述の便座装置110によれば、座表部材301と座裏部材311との溶着工程において最も変形しにくい溶着面317付近に補強部材300が配置され、補強部材300によって溶着面317付近の座表部材301が補強されるので、溶着面317付近の便座本体220の変形を防止できる。
【0041】
上述の便座装置110において、第1ヒンジ部241の幅方向Wの両側の側壁部391、392のうち、側壁部392には、前後方向Lの領域620において幅方向Wで座面部230の幅方向Wの中心側に凹む凹部610が形成されている。第1ヒンジ部241の前後方向の領域620には、最小幅を有するヒンジ本体631が設けられている。
補強部材300は、ヒンジ本体631の前後方向Lの中心398よりも座面部230側の領域641に配置されている。補強部材300が領域641に配置されることによって、幅方向Wに細く且つ座表部材301の成形時及び座裏部材311との溶着時に負荷がかかりやすいヒンジ本体631が補強部材300によって補強される。補強部材300を領域641に設けることによって、ヒンジ本体631でのヒケや変形の発生を抑えることができる。
【0042】
上述の便座装置110において、第1ヒンジ部241に、補強部材300の前後方向L及び上下方向Hの各方向の移動を規制する移動規制部360が設けられている。上述の便座装置110によれば、第1ヒンジ部241における補強部材300の前後方向L及び上下方向Hの各方向の移動が規制され、補強部材300が第1ヒンジ部241の所定の位置から、及び上下方向Hにおける領域352から外れた位置に移動することを防止できる。このことによって、第1ヒンジ部241の変形を抑えることができる。
【0043】
上述の便座装置110において、補強部材300は、例えば円柱部353を有する。円柱部353の軸線は、便座本体220の厚み方向T1に沿っている。移動規制部360は、第1ヒンジ部241の幅方向Wの左側の側壁部361に形成された2つのリブ360-1、360-2と、第1ヒンジ部241の幅方向Wの右側の側壁部362に形成された2つのリブ360-3、360-4と、を備える。リブ360-1、360-2は、側壁部361から第1ヒンジ部241の中央に向かって突出している。リブ360-3、360-4は、側壁部362から第1ヒンジ部241の中央に向かって突出している。2つのリブ360-1、360-2と、2つのリブ360-3、360-4の各々の前後方向Lの間隔は、補強部材300の円柱部353の前後方向Lの大きさよりも小さい。2つのリブ360-1、360-3と、2つのリブ360-2、360-4の各々は、幅方向Wで互いに向き合っている。2つのリブ360-1、360-2の先端同士(リブ同士)と、2つのリブ360-3、360-4の先端同士(リブ同士)の各々の幅方向Wの間隔は、補強部材300の円柱部353の幅方向Wの大きさよりも小さい。
【0044】
上述の便座装置110では、補強部材300の前後方向L及び幅方向Wでの各位置が、4つのリブ360-1、360-2、360-3、360-4によって決まる。このことによって、第1ヒンジ部241における補強部材300の前後方向L及び幅方向Wの各方向の移動が規制され、便座本体220の製造時に第1ヒンジ部241の変形を抑えることができる。
【0045】
上述の便座装置110において、スペーサ370は、座表部材301と座裏部材311のうち厚みが大きい座表部材301に固定されている。「厚みが大きい」とは、座表部材301と座裏部材311の各々の部材において、平面視で互いに重なる所定の位置において厚みが大きいことを意味する。本開示に関する所定の位置は、第2ヒンジ部242に隣り合う座面部230で溶着される位置を表す。上述の便座装置110によれば、主に座裏部材311よりも厚みの大きい座表部材301の強度、座表部材301と座裏部材311との溶着時の変形強度、及び座表部材301の成形時の変形強度をスペーサ370によって高め、前後方向Lで互いに隣り合う第2ヒンジ部242の後部及び座面部230の前部の変形及び破損を防止できる。第2ヒンジ部242の内部空間350にハーネス490を通す場合、スペーサ370によってハーネス490の通り道を確保し、ハーネス490の断線や破損を防止できる。
【0046】
上述の便座装置110は、ヒータ部材480と、ハーネス490と、を備える。ヒータ部材480は、便座本体220の内部空間350に設けられている。ハーネス490の端部491はヒータ部材480に接続され、ハーネス490の端部492は便座本体220の外部に延びるとともに、機能部本体260の不図示の電源等に接続されている。第2ヒンジ部242においてスペーサ370の空間形成部372と座表部材301との間にハーネス490が通る通過空間494が形成されている。通過空間494は幅方向Wで座表部材301、座裏部材311、スペーサ370の空間形成部372と重なっている。
【0047】
上述の便座装置110は、ヒンジ部240は、第1ヒンジ部241と、第2ヒンジ部242と、を備える。第1ヒンジ部241及び第2ヒンジ部242は、座面部230の後端部232の幅方向Wで互いに間隔をあけた2つの位置PP1、PP2に設けられ、2つの位置PP1、PP2から後方に延びている。補強部材300は、第1ヒンジ部241に設けられている。スペーサ370は、補強部材300が設けられていない第2ヒンジ部242の前部に設けられている。
【0048】
上述の便座装置110では、補強部材300によって便座本体220の製造時に関する第1ヒンジ部241の変形を抑えることができる。上述の便座装置110では、スペーサ370によって座表部材301及び第2ヒンジ部242の前部の変形を抑え、座表部材301及び第2ヒンジ部242の変形による通過空間494の縮小及び消滅を防止できる。通過空間494の確保によって、ハーネス490の損傷及び断線を防ぎ、ハーネス490を第2ヒンジ部に導くことができる。
【0049】
上述の便座装置110において、第2ヒンジ部242には、回転軸部材280-2の幅方向Wに沿う軸線JX280-2を中心とする周方向θ280に沿って形成されたハーネス可動空間380が形成されている。上述の便座装置110によれば、便座本体220が軸線JX280-2を中心に周方向θ280に回転した際に、ハーネス490をハーネス可動空間380内で周方向θ280に沿って移動させ、第2ヒンジ部242の内部空間350を通るハーネス490の長さを略一定にし、ハーネス490の過度の撓みや引張の発生を抑えることができる。
【0050】
上述の便座装置110は、機能部250と、回転軸部材280-1、280-2と、を備える。機能部250は、例えば回転軸部材280-1、280-2、ハーネス490を介して便座本体220に接続され、局部洗浄や便座本体220の温度調節をはじめとする所定の機能を実行する。回転軸部材280-1、280-2は、機能部250の本体カバー262の右側の側壁部263、側壁部264から幅方向Wに沿って外方に突出している。第1ヒンジ部241は、回転軸部材280-1に挿入され、回転軸部材280-1を介して機能部に接続されている。第2ヒンジ部242は、回転軸部材280-2に挿入され、回転軸部材280-2介して機能部に接続されている。第2ヒンジ部242の側壁部330には、ハーネス490が通る第1通過口395が形成されている。機能部250において第1通過口395の少なくとも一部で向き合う部分に第2通過口265が形成されている。
【0051】
上述の便座装置110では、回転軸部材280-1、280-2を中心として便座本体220が機能部250に対して周方向θ280で回転する。ハーネス490の端部492に近い部分は、便座本体220の座面部230から第2ヒンジ部242に延び、第1通過口395から第2ヒンジ部242及び便座本体220の外部に延びている。第2ヒンジ部242の外部に延びたハーネス490は、機能部250の本体カバー262の側壁部264に形成された第2通過口265からの機能部本体260に直結している。上述の便座装置110によれば、ハーネス490を、第2ヒンジ部242から第1通過口395、第2通過口265を通して便座本体220から機能部250の機能部本体260に円滑に接続できる。
【0052】
上述の便座装置110において、第1ヒンジ部241の右側の端面291は、幅方向Wで座面部230の右側の端面292よりも座面部230の中心CC230側に位置している。第2ヒンジ部242の左側の端面293は、幅方向Wで座面部230の左側の端面294よりも座面部230の中心CC230側に位置している。便座本体220の製造時における座表部材301及び座裏部材311の成形工程、座表部材301と座裏部材311との溶着工程では、幅方向Wで座面部230よりも小さい第1ヒンジ部241及び第2ヒンジ部242の姿勢や形状を僅かに変更する場合がある。前述のように第1ヒンジ部241及び第2ヒンジ部242が座面部230の後端部232の側壁部243、244からセットバックしていることによって、例えば第1ヒンジ部241及び第2ヒンジ部242は幅方向Wで座面部230の中心CC230に近づく方向に力や負荷を特に受けやすい。前述のように第1ヒンジ部241及び第2ヒンジ部242の姿勢や形状を僅かに変更し、第1ヒンジ部241及び第2ヒンジ部242が力や負荷を受けた場合でも、第1ヒンジ部241には補強部材300が設けられているので、少なくとも第1ヒンジ部241の変形を抑えることができる。
【0053】
以上説明した便器装置15は、便器本体20と、便器本体20に設けられた上述の便座装置110と、を備える。便器装置15によれば、便座装置110と同様に、トップカバー270の開閉を容易にできる。便器装置15によれば、上述した便座装置110と同様の作用効果が得られる。
【0054】
以上、本開示に係る好ましい実施形態について詳述した。本開示は上述した実施形態に限定されない。本開示は、特許請求の範囲内に記載された本開示の要旨の範囲内において、変更可能である。
【0055】
本開示に係る便座装置は、便蓋107を備えなくてもよい。本開示に係る便座装置は、便器本体20に設置されていない状態で構成されてもよい。
【0056】
上述の実施形態では、
図4に例示したように補強部材300は、上下方向Hにおいて領域351のみに配置されている。補強部材300は、少なくとも座表部材301の厚み方向T1の中心CT301よりも溶着面317側の領域351に配置されていることが好ましく、例えば
図10に示すように、領域351を含んで座表部材301の厚み方向T1の略全体にわたる領域354に配置されてもよい。補強部材300は、座裏部材311の厚み方向T1の中心CT301よりも溶着面318側の領域357に配置されてもよい。前述のように補強部材300が座裏部材311に設けられた場合、座裏部材311に座表部材301の4つのリブ360-1、360-2、360-3、360-4と同様の形状及び相対配置で補強部材300の前後方向L及び上下方向Hの移動を規制するリブ(移動規制部)が設けられてもよい。
【0057】
上述の実施形態では、第1ヒンジ部241の側壁部392は、前側から所定の位置397まで前後方向Lに沿い、所定の位置397から座面部230の幅方向Wの中心側に近づくように屈折し、その後再び前後方向Lに沿って延びている。側壁部392は、前後方向Lの所定の位置397で屈折せず、例えば
図11に示すように、前後方向Lに沿って側壁部391と略平行であってもよい。第1ヒンジ部241の幅方向Wの両側の側壁部391、392は、前後方向Lに沿って互いに平行であってもよい。このような構成では、第1ヒンジ部241の前端から後端までの側壁部391、392の間の幅が略一定である。補強部材300は、前後方向L1の中心399よりも座面部230側、即ち前側の第1ヒンジ部241に配置されることが好ましい。4つのリブ360-1、360-2、360-3、360-4は、補強部材300の配置に合わせて、中心399よりも座面部230側の第1ヒンジ部241に設けられることが好ましい。
【0058】
図12に示すように、第1ヒンジ部241の側壁部392は上述の実施形態で説明した構成と同様に直線部392-1、392-2、392-3を有し、且つ直線部392-2は平面視で幅方向W及び前後方向Lの各々に対して傾斜してもよい。側壁部392の直線部392-2は、平面視において所定の位置397から後方の所定の位置396まで進むに従って左側に、即ち幅方向Wで座面部230の中心側に向かって移動するように傾斜してもよい。側壁部392の直線部392-3は、平面視において直線部392-2の左端且つ前端から前後方向Lに沿って側壁部391と平行に延びている。補強部材300は、第1ヒンジ部241において前後方向L1の所定の位置396と側壁部392の後端との間の細い部分の中心398よりも座面部230側、即ち後側の第1ヒンジ部241に配置されることが好ましい。4つのリブ360-1、360-2、360-3、360-4は、補強部材300の配置に合わせて、中心398よりも座面部230側の第1ヒンジ部241に設けられることが好ましい。
【0059】
第1ヒンジ部241及び第2ヒンジ部242の形状は、
図5、
図11及び
図12に例示した形状に限定されない。第1ヒンジ部241及び第2ヒンジ部242の形状は、適宜変更可能である。例えば、第1ヒンジ部及び第2ヒンジ部の各々の幅方向Wの両側の側壁部のうち少なくとも一方の側壁部に、前後方向Lの所定の領域で幅方向に凹む凹部が形成されていてもよい。第1ヒンジ部及び第2ヒンジ部の各々の幅方向Wの両側の側壁部に、凹部が形成されもよい。側壁部には、2つ以上の凹部が形成されてもよい。補強部材300及び移動規制部360は、第1ヒンジ部241及び第2ヒンジ部242の少なくとも一方において前後方向Lで最小幅を有する部分の前後方向の中心よりも前側即ち座面部230側の領域に配置されていることが好ましい。
【0060】
上述の実施形態では、ヒンジ本体631は、第2ヒンジ部242の後端部に形成されている。ヒンジ本体631は、機能部本体260との相対位置関係に応じて、第2ヒンジ部242の前端部に設けられてもよく、第2ヒンジ部242の前後方向Lの中央部、又は所定の位置に設けられてもよい。ヒンジ本体631が第2ヒンジ部242の前端部に設けられた場合、ハーネス490は、前側から後側に向かって、座面部230の後部の内部空間350、ヒンジ本体631の内部空間350、通過空間494を前述の順に通ってもよい。ハーネス490が通る通過空間494は、スペーサ370の空間形成部372と座裏部材311との間に形成されてもよい。
【0061】
上述の実施形態では、補強部材300は、円柱部353と半球部355、356とを備える。補強部材300は、角柱部(柱状部)を備えてもよく、これらの構成とは異なる任意の構成を備えてもよい。本開示に係る便座装置が移動規制部360を備える場合、移動規制部360の形状は、補強部材300の形状及び大きさに応じて適宜変更可能である。例えば、上述の実施形態の補強部材300に対して、移動規制部は、側壁面(両側壁面)361、362の各々に1つずつ設けられた合計2つのリブで構成されてもよい。2つのリブの各々の先端には、厚み方向T1に沿って見たときに円柱部353の周面の一部に径方向の外側から接するストッパーが設けられてもよい。
【0062】
本開示に係る便座装置では、ハーネス490が第1ヒンジ部241の内部空間350を通り、第2ヒンジ部242の内部空間350に補強部材300が設けられてもよい。上述の実施形態で説明した第1ヒンジ部241の構造と第2ヒンジ部242の構造とが幅方向Wで互いに逆であってもよい。本開示に係る便座装置がハーネス490を備えない場合は、第2ヒンジ部242が第1ヒンジ部241と同じ構造を備えてもよく、第1ヒンジ部241及び第2ヒンジ部242に補強部材300を備えてもよい。
【0063】
本開示に係る便座装置は、2つのヒンジ部を備え、ヒンジ部の幅方向Wの両端部のみに2つの回転軸部材が挿入されてもよく、ヒンジ部の後端部の全体に幅方向Wに沿って回転軸部材が挿入されてもよい。
【0064】
本開示に係る便座装置では、
図11を参照して説明したように、第1ヒンジ部241の幅方向Wの大きさは、前後方向Lで略一定であってもよい。同様に、
図13に示すように、第2ヒンジ部242の幅方向Wの大きさは、前後方向Lで略一定であってもよい。第2ヒンジ部242の形状に合わせて、スペーサ370の形状は、
図6及び
図7に例示した形状から適宜変更されればよい。
図13に示すように、スペーサ370-2は、固定部371と、空間形成部372と、を備える。スペーサ370-2の固定部371は、座表部材301の領域RS1において湾曲形状を有する内周面324に設けられたスペーサ取付部304に対して下方から不図示のねじ等を介してねじ止め可能に形成されている。上下方向Hに沿って見たとき、固定部371は、空間形成部372の幅方向W及び前後方向Lにおいてスペーサ取付部304と重なる領域の上面から上方に延び、例えば空間形成部372の左端部且つ前端部の上面から上方に延びている。上述の実施形態の便座装置110と同様に、スペーサ取付部304及びねじ挿入穴305が座表部材301の湾曲部分に設けられることによって、製造時に生じ得る座表部材301のひけが目立ちにくく、座表部材301の美観性が高まる。
【0065】
スペーサ370-2の空間形成部372は、上壁部642と、上壁部642の前端から下方に延びる前壁部643と、上壁部642の両側端から下方に延びる側壁部644と、上壁部642の後端から下方に延びる後壁部645と、を備える。上壁部642は、上下方向Hに沿って見て略矩形状に形成されている。上壁部642は、スペーサ370-2の支持壁部373と互いに同一の壁面を構成している。スペーサ370-2は面取りされ、少なくとも上壁部642と、前壁部643、側壁部644及び後壁部645との接続部分は、湾曲面を有し、互いに滑らかに接続されている。後壁部645は、上端から下方の所定の高さに向かって後側に移動する傾斜面376と、所定の高さから下端に向かって上下方向Hに沿う平坦面377と、を有する。所定の高さは、空間形成部372の上下方向Hの中心よりも下方に位置し、第2ヒンジ部242の上下方向Hの中心よりも下方に位置している。傾斜面376と平坦面377との接続部分は、湾曲面を有し、互いに滑らかに接続されている。
図13に示すように、後壁部645の上面が傾斜面376を有することによって、上下方向Hにおける座表部材301座裏部材311との接合部(接着面)の高さ近傍の空間形成部372の前後方向Lの長さは、前述の接合高さより上方の例えば第2ヒンジ部242の上下方向Hの中心近傍よりも長い。したがって、傾斜面376を有するスペーサ370-2によれば、座表部材301と座裏部材311との接合部を補強できる。スペーサ370-2によれば、傾斜面376を有し、且つ傾斜面376と平坦面377及び上壁部642との接続部分が湾曲面を有して滑らかに形成されているため、不図示のハーネス490が引っ掛かりにくく、ハーネス490の表面の損傷を防止できる。
【0066】
スペーサ370-2の空間形成部372の幅方向Wの大きさは、第2ヒンジ部242の座裏部材311における上底面313の幅方向Wの大きさと略同じである。空間形成部372の軽量化を図るため、空間形成部372は下方に開口し、空間形成部372には上壁部642、前壁部643、側壁部644及び後壁部645で囲まれた空間が形成されている。
図14に示すように、スペーサ370-2の前端378は、座面部230の後端部232よりも後方、且つ第2ヒンジ部242の前後方向Lの中心よりも前方に配置されている。このことによって、便座装置の製造時に座表部材301と座裏部材311とを接合したときに左方から右側に向かう外力FRが加わっても、スペーサ取付部304とスペーサ370-2の固定部371とを接続するねじの破損を防止できる。スペーサ370-2の幅方向Wの内側には、抑えとして機能する部材が配置されていない。そのため、スペーサ370-2の前端378が座面部230の後端部232よりも前方に配置されると、外力FRを受けたときにスペーサ370-2がねじれる方向の力が発生し、スペーサ取付部304とスペーサ370-2の固定部371とを接続するねじが破損する虞がある。
【0067】
本開示に係る便座装置は、全体の形状や機能部への取付構造に応じて、補強部材300及びスペーサ370の両方を備える場合に限定されず、補強部材300及びスペーサ370の少なくとも一方を備えればよい。
【符号の説明】
【0068】
15…便器装置、20…便器本体、110…便座装置、230…座面部、240…ヒンジ部、241…第1ヒンジ部、242…第2ヒンジ部、250…機能部、260…機能部本体、300…補強部材(第1補強部材)、301…座表部材、311…座裏部材、370…スペーサ(第2補強部材)