(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】引戸装置
(51)【国際特許分類】
E05D 13/00 20060101AFI20240628BHJP
E06B 3/46 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
E05D13/00 A
E06B3/46
(21)【出願番号】P 2020103689
(22)【出願日】2020-06-16
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 雄介
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】実公平1-13722(JP,Y2)
【文献】特開2009-30298(JP,A)
【文献】特開平11-107612(JP,A)
【文献】実公昭49-5091(JP,Y1)
【文献】実開昭63-140481(JP,U)
【文献】実開昭54-156451(JP,U)
【文献】登録実用新案第3183840(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 11/00-15/58
E06B 3/04- 3/46
E06B 3/50- 3/52
E06B 3/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横幅方向へスライドして開閉する引戸本体と、前記引戸本体の上端側に嵌り合って該上端側を開閉方向へ導く上枠と、前記引戸本体の下端側に嵌り合って該下端側を開閉方向へ導くガイド部とを備え、
前記引戸本体の上端部には、上方へ突出して前記上枠に対し下方側から近接する外止め部材が設けられ、
前記上枠は、横幅方向の一部分に設けられて上方へ移動した場合の前記外止め部材を挿入可能な逃がし凹部と、前記逃がし凹部を開閉可能に閉鎖する閉鎖部材とを具備し、
前記外止め部材は、前記引戸本体に対し戸幅方向に間隔を置いて複数設けられ、前記逃がし凹部及び前記閉鎖部材は、前記複数の外止め部材に対応して複数設けられ、
複数の前記逃がし凹部及び前記閉鎖部材のうち、その一部は、前記引戸本体を開閉方向の一方側に寄せた場合にその他方側に確保された開口部の上方に位置し、他の一部は、前記引戸本体を開閉方向の前記他方側に寄せた場合に前記一方側に確保された開口部の上方に位置することを特徴とする引戸装置。
【請求項2】
横幅方向へスライドして開閉する引戸本体と、前記引戸本体の上端側に嵌り合って該上端側を開閉方向へ導く上枠と、前記引戸本体の下端側に嵌り合って該下端側を開閉方向へ導くガイド部とを備え、
前記引戸本体の上端部には、上方へ突出して前記上枠に対し下方側から近接する外止め部材が設けられ、
前記上枠は、横幅方向の一部分に設けられて上方へ移動した場合の前記外止め部材を挿入可能な逃がし凹部と、前記逃がし凹部を開閉可能に閉鎖する閉鎖部材とを具備し、
前記閉鎖部材は、着脱されることで前記逃がし凹部を開閉する部材であることを特徴とする引戸装置。
【請求項3】
横幅方向へスライドして開閉する引戸本体と、前記引戸本体の上端側に嵌り合って該上端側を開閉方向へ導く上枠と、前記引戸本体の下端側に嵌り合って該下端側を開閉方向へ導くガイド部とを備え、
前記引戸本体の上端部には、上方へ突出して前記上枠に対し下方側から近接する外止め部材が設けられ、
前記上枠は、横幅方向の一部分に設けられて上方へ移動した場合の前記外止め部材を挿入可能な逃がし凹部と、前記逃がし凹部を開閉可能に閉鎖する閉鎖部材とを具備し、
前記閉鎖部材は、前記逃がし凹部内に着脱可能に挿入されていることを特徴とする引戸装置。
【請求項4】
横幅方向へスライドして開閉する引戸本体と、前記引戸本体の上端側に嵌り合って該上端側を開閉方向へ導く上枠と、前記引戸本体の下端側に嵌り合って該下端側を開閉方向へ導くガイド部とを備え、
前記引戸本体の上端部には、上方へ突出して前記上枠に対し下方側から近接する外止め部材が設けられ、
前記上枠は、横幅方向の一部分に設けられて上方へ移動した場合の前記外止め部材を挿入可能な逃がし凹部と、前記逃がし凹部を開閉可能に閉鎖する閉鎖部材とを具備し、
前記逃がし凹部は、内部上端を上底部とした有底穴状に形成され、
前記閉鎖部材は、ネジ部を前記逃がし凹部内に螺合するとともに、下端側部分によって前記逃がし凹部の開口を塞ぐことを特徴とする引戸装置。
【請求項5】
横幅方向へスライドして開閉する引戸本体と、前記引戸本体の上端側に嵌り合って該上端側を開閉方向へ導く上枠と、前記引戸本体の下端側に嵌り合って該下端側を開閉方向へ導くガイド部とを備え、
前記引戸本体の上端部には、上方へ突出して前記上枠に対し下方側から近接する外止め部材が設けられ、
前記上枠は、横幅方向の一部分に設けられて上方へ移動した場合の前記外止め部材を挿入可能な逃がし凹部と、前記逃がし凹部を開閉可能に閉鎖する閉鎖部材とを具備し、
前記逃がし凹部は、内部上端を上底部とした有底穴状又は貫通孔状に形成されていることを特徴とする引戸装置。
【請求項6】
横幅方向へスライドして開閉する引戸本体と、前記引戸本体の上端側に嵌り合って該上端側を開閉方向へ導く上枠と、前記引戸本体の下端側に嵌り合って該下端側を開閉方向へ導くガイド部とを備え、
前記引戸本体の上端部には、上方へ突出して前記上枠に対し下方側から近接する外止め部材が設けられ、
前記上枠は、横幅方向の一部分に設けられて上方へ移動した場合の前記外止め部材を挿入可能な逃がし凹部と、前記逃がし凹部を開閉可能に閉鎖する閉鎖部材とを具備し、
前記閉鎖部材は、ネジ部を前記逃がし凹部内に螺合するとともに、下端側部分によって前記逃がし凹部の開口を塞ぐことを特徴とする引戸装置。
【請求項7】
横幅方向へスライドして開閉する引戸本体と、前記引戸本体の上端側に嵌り合って該上端側を開閉方向へ導く上枠と、前記引戸本体の下端側に嵌り合って該下端側を開閉方向へ導くガイド部とを備え、
前記引戸本体の上端部には、上方へ突出して前記上枠に対し下方側から近接する外止め部材が設けられ、
前記上枠は、横幅方向の一部分に設けられて上方へ移動した場合の前記外止め部材を挿入可能な逃がし凹部と、前記逃がし凹部を開閉可能に閉鎖する閉鎖部材とを具備し、
前記閉鎖部材は、前記逃がし凹部の開口下端部を開閉することを特徴とする引戸装置。
【請求項8】
横幅方向へスライドして開閉する引戸本体と、前記引戸本体の上端側に嵌り合って該上端側を開閉方向へ導く上枠と、前記引戸本体の下端側に嵌り合って該下端側を開閉方向へ導くガイド部とを備え、
前記引戸本体の上端部には、上方へ突出して前記上枠に対し下方側から近接する外止め部材が設けられ、
前記上枠は、横幅方向の一部分に設けられて上方へ移動した場合の前記外止め部材を挿入可能な逃がし凹部と、前記逃がし凹部を開閉可能に閉鎖する閉鎖部材とを具備し、
前記逃がし凹部は、見込方向に端面を有する凹状に形成されていることを特徴とする引戸装置。
【請求項9】
横幅方向へスライドして開閉する引戸本体と、前記引戸本体の上端側に嵌り合って該上端側を開閉方向へ導く上枠と、前記引戸本体の下端側に嵌り合って該下端側を開閉方向へ導くガイド部とを備え、
前記引戸本体の上端部には、上方へ突出して前記上枠に対し下方側から近接する外止め部材が設けられ、
前記上枠は、横幅方向の一部分に設けられて上方へ移動した場合の前記外止め部材を挿入可能な逃がし凹部と、前記逃がし凹部を開閉可能に閉鎖する閉鎖部材とを具備し、
前記閉鎖部材は、前記逃がし凹部の凹状部分に嵌脱可能に嵌り合うことを特徴とする引戸装置。
【請求項10】
横幅方向へスライドして開閉する引戸本体と、前記引戸本体の上端側に嵌り合って該上端側を開閉方向へ導く上枠と、前記引戸本体の下端側に嵌り合って該下端側を開閉方向へ導くガイド部とを備え、
前記引戸本体の上端部には、上方へ突出して前記上枠に対し下方側から近接する外止め部材が設けられ、
前記上枠は、横幅方向の一部分に設けられて上方へ移動した場合の前記外止め部材を挿入可能な逃がし凹部と、前記逃がし凹部を開閉可能に閉鎖する閉鎖部材とを具備し、
前記閉鎖部材は、上下方向の軸を支点にして回動することで前記逃がし凹部を開閉することを特徴とする引戸装置。
【請求項11】
横幅方向へスライドして開閉する引戸本体と、前記引戸本体の上端側に嵌り合って該上端側を開閉方向へ導く上枠と、前記引戸本体の下端側に嵌り合って該下端側を開閉方向へ導くガイド部とを備え、
前記引戸本体の上端部には、上方へ突出して前記上枠に対し下方側から近接する外止め部材が設けられ、
前記上枠は、横幅方向の一部分に設けられて上方へ移動した場合の前記外止め部材を挿入可能な逃がし凹部と、前記逃がし凹部を開閉可能に閉鎖する閉鎖部材とを具備し、
前記閉鎖部材は、戸厚方向へスライドして前記逃がし凹部を開閉することを特徴とする引戸装置。
【請求項12】
前記逃がし凹部及び前記閉鎖部材は、前記引戸本体を開閉方向の一方側に寄せた場合にその他方側に確保された開口部の上方に位置することを特徴とする請求項1~11何れか1項記載の引戸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸本体を横幅方向へ開閉動作させる引戸装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な引戸は、横幅方向へスライドして開閉する引戸本体と、前記引戸本体の上端側を凹溝に嵌め合わせて開閉方向へ導く上枠と、前記引戸本体の下端側の戸車に嵌り合って該下端側を開閉方向へ導く下枠とを具備している(例えば、特許文献1参照)。
そして、従来の引戸では、引戸本体を上枠と下枠の間に嵌め合わせるには、先ず引戸本体を上枠の凹溝内へ差し込んで持ち上げ、引戸本体の下端側の戸車を下枠上のレールに嵌め合わせる。引戸本体を外す際には、引戸本体を持ち上げて下端側の戸車をレールから外した後に、引戸本体の上端側を上枠の凹溝から外す。
このため、従来の引戸では、引戸本体の上端と、上枠の凹溝内の上底部との間に、引戸本体を持ち上げ可能にする隙間が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来構造によれば、例えば地震や強風、激しい開閉動作等により引戸本体が上下方向及び厚さ方向へ複雑に振動した場合、この引戸本体が上枠と下枠の間から外れてしまうおそれがある。
そこで、
図7に示すように、引戸本体100の上端部における戸幅方向の中央寄りに、上方へ突出して上枠110の凹溝内の上底部111に近接する外止め部材101を設けるとともに、上枠110の上底部111には、横幅方向の中央寄りに逃がし凹部111aを設け、引戸本体100を上枠110と下枠120の間に着脱する際には、引戸本体100を上枠110の中央寄りに寄せ、外止め部材101を逃がし凹部111aに嵌め合わせて引戸本体100を持ち上げるようにすることが考えられる。
しかしながら、このような構成においても、引戸本体100が開閉途中で複雑に振動した場合には、外止め部材101が逃がし凹部111aに嵌り合って引戸本体100が持ち上がり、戸車102がレールから外れてしまう可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つは、上記課題の少なくとも一部を解決するために、以下の構成を具備するものである。
横幅方向へスライドして開閉する引戸本体と、前記引戸本体の上端側に嵌り合って該上端側を開閉方向へ導く上枠と、前記引戸本体の下端側に嵌り合って該下端側を開閉方向へ導くガイド部とを備え、
前記引戸本体の上端部には、上方へ突出して前記上枠に対し下方側から近接する外止め部材が設けられ、
前記上枠は、横幅方向の一部分に設けられて上方へ移動した場合の前記外止め部材を挿入可能な逃がし凹部と、前記逃がし凹部を開閉可能に閉鎖する閉鎖部材とを具備し、
前記外止め部材は、前記引戸本体に対し戸幅方向に間隔を置いて複数設けられ、前記逃がし凹部及び前記閉鎖部材は、前記複数の外止め部材に対応して複数設けられ、
複数の前記逃がし凹部及び前記閉鎖部材のうち、その一部は、前記引戸本体を開閉方向の一方側に寄せた場合にその他方側に確保された開口部の上方に位置し、他の一部は、前記引戸本体を開閉方向の前記他方側に寄せた場合に前記一方側に確保された開口部の上方に位置することを特徴とする引戸装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、引戸本体が外れてしまうのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る引戸装置の一例を示す正面図であり、要部を切欠して断面表示している。
【
図2】同引戸装置の要部拡大図であり、(a)は一方の閉鎖部材を開放した状態を示し、(b)は引戸本体を持ち上げて外止め部材を逃がし凹部に嵌め合わせた状態を示す。
【
図3】同引戸装置について、引戸本体の厚さ方向の中央部に沿う拡大断面図であり、(a)は逃がし凹部を閉鎖部材により閉鎖した状態を示し、(b)は逃がし凹部を開放した状態を示す。
【
図4】同引戸装置の要部縦断面図であり、(a)は逃がし凹部を閉鎖部材により閉鎖した状態を示し、(b)は逃がし凹部を開放した状態を示す。
【
図5】本発明に係る引戸装置の他例について、引戸本体の厚さ方向の中央部に沿う拡大断面図であり、(a)は逃がし凹部を閉鎖部材により閉鎖した状態を示し、(b)は逃がし凹部を開放した状態を示す。
【
図6】本発明に係る引戸装置の他例について、引戸本体の厚さ方向の中央部に沿う拡大断面図であり、(a)は逃がし凹部を閉鎖部材により閉鎖した状態を示し、(b)は挿入穴を開放した状態を示す。
【
図7】改良前の引戸装置の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、横幅方向へスライドして開閉する引戸本体と、前記引戸本体の上端側に嵌り合って該上端側を開閉方向へ導く上枠と、前記引戸本体の下端側に嵌り合って該下端側を開閉方向へ導くガイド部とを備え、前記引戸本体の上端部には、上方へ突出して前記上枠に対し下方側から近接する外止め部材が設けられ、前記上枠は、横幅方向の一部分に設けられて上方へ移動した場合の前記外止め部材を挿入可能な逃がし凹部と、前記逃がし凹部を開閉可能に閉鎖する閉鎖部材とを具備している(
図1~
図6参照)。
【0009】
第2の特徴として、前記逃がし凹部及び前記閉鎖部材は、前記引戸本体を開閉方向の一方側に寄せた場合にその他方側に確保された開口部の上方に位置する(
図2参照)。
ここで、前記「開口部」には、人や物等が通り抜け可能な開口部を含むのは勿論のこと、片面戸袋のように、戸厚方向の一方側が壁であってその他方側が開口している開口部も含む。
【0010】
第3の特徴として、前記外止め部材は、前記引戸本体に対し戸幅方向に間隔を置いて複数設けられ、前記逃がし凹部及び前記閉鎖部材は、前記複数の外止め部材に対応して複数設けられ、複数の前記逃がし凹部及び前記閉鎖部材のうち、その一部は、前記引戸本体を開閉方向の一方側に寄せた場合にその他方側に確保された開口部の上方に位置し、他の一部は、前記引戸本体を開閉方向の前記他方側に寄せた場合に前記一方側に確保された開口部の上方に位置する(
図2参照)。
【0011】
第4の特徴として、前記閉鎖部材は、スライドすることで前記逃がし凹部を開閉する部材である(
図2~
図4参照)。
【0012】
第5の特徴として、前記閉鎖部材は、着脱されることで前記逃がし凹部を開閉する部材である(
図5及び
図6参照)。
【0013】
第6の特徴として、前記閉鎖部材は、前記逃がし凹部内に着脱可能に挿入されている(
図6参照)。
【0014】
第7の特徴として、前記逃がし凹部は、内部上端を上底部とした有底穴状に形成され、前記閉鎖部材は、ネジ部を前記逃がし凹部内に螺合するとともに、下端側部分によって前記逃がし凹部の開口を塞ぐ(
図6参照)。
【0015】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
本明細書中、「戸幅方向」とは、引戸本体の横幅方向を意味し、左右方向、横幅方向等と称する場合もある。また、「戸厚方向」とは、引戸本体の厚みの方向を意味する。
【0016】
この引戸装置1は、横幅方向へスライドして開閉する左右の引戸本体10,20と、これら引戸本体10,20の上端側に嵌り合って該上端側を開閉方向へ直線的に導く上枠30と、引戸本体10,20の下端側に嵌り合って該下端側を開閉方向へ直線的に導く下枠40と、上枠30と下枠40を左右両端側で支持する側枠51,52とを備え、上枠30、下枠40及び側枠51,52によって囲まれた開口部Aを引戸本体10,20によって開閉する引き違い戸を構成している。
【0017】
一方の引戸本体10は、上下左右の框、骨材及び外装板等によって矩形板状に形成される。この引戸本体10は、上端部に、上方へ突出して上枠30に対し下方側から近接する複数の外止め部材11を有し、下端部には、下枠40上のガイド部41に沿って転動するように戸車12を有する。
【0018】
外止め部材11は、単一の引戸本体10に対し戸幅方向に間隔を置いて複数設けられ、本実施の形態の好ましい一例によれば、引戸本体10の戸幅方向の一端寄りと他端寄りにそれぞれ設けられる。
各外止め部材11は、引戸本体10の上端に固定されて上方へ突出する突起であればよく、
図3に示す一例では、引戸本体10の上端に止着された止着具(例えば、ボルトやネジ、リベット等)の頭部としている。
この外止め部材11の高さ寸法は、引戸本体10を上方へ持ち上げたときに、当該外止め部材11の上端部が、上枠30のガイド溝30b1(
図4参照)の上底部に当接して、戸車12がガイド部41から外れることのないように、適宜に設定される。
【0019】
戸車12は、引戸本体10の下端側において、戸幅方向の一端寄りと他端寄りに回転自在に支持される。各戸車12は、外周面の下端側を下方へ突出している。
【0020】
他方の引戸本体20は、引戸本体10と左右対称に構成され、引戸本体10と同様にして、複数の外止め部材21、及び複数の戸車22を有する。
【0021】
上枠30は、
図4に示すように、開口を下方へ向けた断面略凹状の上枠本体部材30aと、この上枠本体部材30aの凹状部分に嵌め合わせられて引戸本体10,20をそれぞれ開閉方向へ導くガイド部材30bとを具備する。
なお、他例としては、上枠本体部材30aとガイド部材30bを一体の部材とすることも可能である。
【0022】
上枠本体部材30aは、例えば、木材や合成樹脂等から戸幅方向へわたる長尺状に形成される。
この上枠本体部材30aの下端部には、戸幅方向へわたって連続する凹溝状の嵌合凹部30a1が形成される。
【0023】
嵌合凹部30a1の上底部における横幅方向の中央寄りには、引戸本体10(又は20)における複数の外止め部材11(又は21)にそれぞれ対向するように、複数の逃がし凹部31が設けられる。
各逃がし凹部31は、内部上端を上底部とした有底穴状に形成され、外止め部材11,21を遊挿可能である。なお、他例としては、この逃がし凹部31を貫通孔状に形成することも可能である
【0024】
ガイド部材30bは、上枠30の嵌合凹部30a1に、横幅方向へわたって長尺状に嵌り合う部材であり、例えば、アルミニウム合金等の硬質金属材料から形成される。
このガイド部材30bの下端部には、引戸本体10,20をそれぞれ開閉方向へ導くように、二列のガイド溝30b1,30b1が形成される(
図4参照)。
【0025】
各ガイド溝30b1は、下方を開口した縦断面凹状に形成され、開口部Aの横幅方向の略全長にわたる長尺状に形成される。なお、
図4中、符号30b2は、戸厚方向両側のガイド溝30b1,30b1間の仕切り壁である。
各ガイド溝30b1の上底部には、逃がし凹部31に連通する貫通部34と、この貫通部34の内縁で閉鎖部材32を支持するスライド溝35とが設けられる。
【0026】
貫通部34は、外止め部材11を遊挿可能な大きさに形成され、図示例によれば、戸厚方向の寸法を逃がし凹部31の内径と略同等に設定している。
この貫通部34は、逃がし凹部31を含むようにして戸幅方向へ連続する長尺状に形成される。
【0027】
スライド溝35は、貫通部34の戸厚方向の一方側の内縁と他方側の内縁とにそれぞれ設けられる(
図4参照)。
各スライド溝35は、閉鎖部材32の縁部に嵌り合う縦断面略凹状(図示例によれば、縦断面略横向きV字状)に形成され、戸幅方向へ連続している。
各スライド溝35の戸幅方向の長さは、閉鎖部材32をスライドさせて逃がし凹部31を開閉できるように適宜に設定される。
【0028】
閉鎖部材32は、スライドすることで逃がし凹部31を開閉する部材である。
この閉鎖部材32は、逃がし凹部31の開口を覆うことが可能な平板状の部材であり、硬質金属材料や硬質合成樹脂材料等の硬質材料から形成される。図示例の閉鎖部材32は、スライド溝35,35間に嵌り合う矩形平板状に形成される。
この閉鎖部材32は、逃がし凹部31を閉鎖した状態において、戸幅方向へ安易に移動しないように、着脱可能な止着具33(例えば、ネジやボルト等)によって上枠本体部材30aに止着される(
図3参照)。
【0029】
上枠30に対する閉鎖部材32の組付け方法について説明すれば、スライド溝35,35がガイド部材30bの横幅方向の端部まで連続しており、閉鎖部材32は、スライド溝35,35の端部に対し、抜差し可能に挿入される。
【0030】
上記構成において、複数の逃がし凹部31,31及び閉鎖部材32,32のうち、その一部は、引戸本体10(又は20)を開閉方向の一方側に寄せた場合にその他方側に確保された開口部Aの上方に位置し(
図2(a)参照)、他の一部は、前記引戸本体を開閉方向の前記他方側に寄せた場合にその前記一方側に確保された開口部Aの上方に位置する。
【0031】
また、下枠40は、左右の側枠51,52の下端部間にわたる長尺状の部材であり、その上面に、長手方向の略全長に連続してガイド部41を有する。
【0032】
ガイド部41は、戸車12,22に嵌り合ってこれら戸車12,22を開閉方向へ転動させる部位であり、例えば、戸幅方向へわたる凸レール状や凹溝状等に形成される。
【0033】
なお、他例としては、下枠40を省いて床面等にガイド部41を設けた態様や、戸車12,22を省いて引戸本体10,20の下端部をガイド部41に摺接させる態様等とすること可能である。
【0034】
側枠51,52は、それぞれ、上下方向へわたる長尺状の部材であり、その上端部が上枠30の横幅方向の端部に止着され、下端部が下枠40の同方向の端部に止着される。
【0035】
<作用効果>
次に、上記構成の引戸装置1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
図1に示すように、引戸本体10,20を閉鎖した状態では、外止め部材11,21の上端部が、ガイド溝30b1の上底部に近接して位置する。
このため、開閉動作時等の振動により引戸本体10,20が持ち上がった場合、外止め部材11,21の上端部が、ガイド溝30b1の上底部、又は閉鎖部材32に当接する。よって、戸車12,22がガイド部41から外れるのを防ぐことができる。
【0036】
次に、引戸本体10又は20を上枠30と下枠40の間から外す手順について詳述する。
先ず、
図2(a)に示すように、両方の引戸本体10,20を開閉方向の一方側に寄せることで、その他方側に作業空間となる開口部Aを確保する。
作業者等は、工具等を用いて、開口部Aから前記他方側に位置する閉鎖部材32の止着具33を外し、この閉鎖部材32をスライドさせて開放する。
【0037】
次に、前記同様に、両方の引戸本体10,20を開閉方向の他方側に寄せることで、一方側に作業空間となる開口部Aを確保し、この開口部A内の空間を利用して、前記一方側に位置する閉鎖部材32の止着具33を外し、この閉鎖部材32をスライドさせて開放する(図示せず)。
【0038】
この状態において、
図2(b)に示すように、引戸本体10又は20を、開口部Aの幅方向中央側に寄せて持ち上げれば、引戸本体10又は20における戸幅方向の両側にて、各外止め部材11又は21が各逃がし凹部31に挿入され、各戸車12又は22がガイド部41から外れる。
したがって、引戸本体10又は20を戸厚方向へずらすようにして外すことが可能である。
【0039】
また、引戸本体10,20を上枠30と下枠40の間に装着する際は、先ず、両方の閉鎖部材32をスライドして開放し、両逃がし凹部31,31に、両外止め部材11,11をそれぞれ嵌め合わせるようにして、一方の引戸本体10を持ち上げ、その下方側にて、戸車12,12をガイド部41に嵌め合わせる。他方の引戸本体20についても同様にして嵌め合わせる。
この後、両引戸本体10,20を開閉方向の一方側に寄せて、その他方側の閉鎖部材32を閉鎖し、両引戸本体10,20を開閉方向の他方側へ寄せて、その他方側の閉鎖部材32を閉鎖する。
【0040】
よって、上記構成の引戸装置1によれば、例えば地震や強風、激しい開閉動作等に起因して、開閉動作中の引戸本体10,20が上下方向及び厚さ方向へ複雑に振動した場合でも、この引戸本体10,20が上枠30と下側のガイド部41との間から外れてしまうのを防ぐことができる。
その上、各閉鎖部材32を容易に開閉できるので、引戸本体10,20の着脱する際の作業性が良好である。
【0041】
<他の実施態様>
次に、本発明に係る他の実施態様について説明する。以下に説明する実施態様は、上記引戸装置1の一部を変更したものであるため、主にその変更部分について詳述し、重複する説明を省略する。
【0042】
図5は、上記引戸装置1について、ガイド部材30bをガイド部材30b’に置換し、このガイド部材30b’の下面に、閉鎖部材32を着脱可能に止着したものである。
【0043】
ガイド部材30b’は、上記ガイド部材30bからスライド溝35を省いたものである。
このガイド部材30b’には、逃がし凹部31に連通する貫通部34’が設けられる。
【0044】
閉鎖部材32は、単数又は複数の着脱可能な止着具33によって、貫通部34’及び逃がし凹部31を覆うように、ガイド部材30b’に止着される。
【0045】
よって、
図5に示す態様によれば、上記引戸装置1と同様に、引戸本体10,20がガイド部41から脱落するのを防ぐことができる上、各閉鎖部材32を容易に開放できるので、引戸本体10,20を着脱する作業も容易である。
【0046】
図6は、上記引戸装置1について、上記ガイド部材30bをガイド部材30b’に置換し、上記閉鎖部材32を閉鎖部材60に置換したものである。
【0047】
閉鎖部材60は、ネジ部61と頭部62を有する螺合部材(例えばネジやボルト等)であり、逃がし凹部31内に着脱可能に挿入される。
この閉鎖部材60は、ネジ部61を逃がし凹部31内の上底部に螺合するとともに、その下端側部分である頭部62によって逃がし凹部31の開口を塞いでいる。
【0048】
よって、
図6に示す態様によれば、上記引戸装置1と同様に、開閉動作途中の引戸本体10,20がガイド部41から脱落してしまうのを、簡素構造の閉鎖部材60によって防ぐことができる。
その上、引戸本体10,20を戸幅方向の一方側に寄せれば、その他方側の開口部Aから容易に閉鎖部材60を着脱することができる。したがって、引戸本体10,20を上枠30と下枠40の間に着脱する作業も容易である。
【0049】
<変形例>
なお、逃がし凹部31を開閉可能に閉鎖する手段は、他例としては、逃がし凹部31の凹状部分に嵌脱可能な閉鎖部材(図示せず)を嵌め合わせた態様や、閉鎖部材(図示せず)を戸厚方向へスライドさせて逃がし凹部31を開閉する態様、閉鎖部材(図示せず)を上下方向の軸を支点にし水平方向へ回動させて逃がし凹部31を開閉する態様等とすることが可能である。
【0050】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0051】
10,20:引戸本体
11,21:外止め部材
30:上枠
31:逃がし凹部
32,60:閉鎖部材
40:下枠
41:ガイド部
A:開口部