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  • 特許-アスファルト合材の供給方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】アスファルト合材の供給方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 5/12 20060101AFI20240628BHJP
   E01C 19/02 20060101ALI20240628BHJP
   E01C 7/22 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
E01C5/12
E01C19/02
E01C7/22
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020112061
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022011130
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】蓬莱 秀人
(72)【発明者】
【氏名】伊木 宏之
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-160323(JP,A)
【文献】特開平10-292304(JP,A)
【文献】特開昭60-208502(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103756339(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110747503(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 5/12
E01C 19/02
E01C 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトプラントのミキサーにて骨材、フィラー、溶融アスファルトを110~130℃で撹拌・混合して製造した直後のアスファルト合材をブロック状に成型後、常温まで冷まして固化状態で貯蔵しておく一方、舗装現場、舗装現場近傍のサテライトプラント、アスファルト合材の搬送車両のうち、少なくとも何れか一つにはブロック状のアスファルト合材の再加熱手段である誘電加熱装置またはマイクロ波加熱装置を備え、舗装工事の際には貯蔵しておいた前記ブロック状のアスファルト合材を搬送車両にて前記舗装現場またはサテライトプラントまで搬送し、前記誘電加熱装置またはマイクロ波加熱装置にて160℃まで再加熱して軟化状態に戻してから前記舗装現場に供給することを特徴とするアスファルト合材の供給方法。
【請求項2】
前記ブロック状のアスファルト合材には高周波またはマイクロ波を吸収しやすい素材である高炉スラグ及び/または廃石膏を配合したことを特徴とする請求項1記載のアスファルト合材の供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルトプラントで製造されるアスファルト合材を舗装現場に供給する供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アスファルト合材製造工場に設置されるアスファルトプラントでは、各種粒径の骨材を、例えば約160℃程度もの高温に加熱した上で、フィラー(石粉)や溶融アスファルト等と所定量ずつミキサーで撹拌・混合してアスファルト合材を製造している。製造直後の高温で適度に軟化状態にあるアスファルト合材は、大気下では時間の経過と共に徐々に温度低下、酸化劣化が進んでいき、それらの進行度合いによっては粘性が高まって舗装現場でのワーカビリティー(施工性)が低下したり、硬化して道路舗装材として使用できなくなる可能性がある。
【0003】
そこで、製造したアスファルト合材を貯蔵する際には、アスファルトプラントやサテライトプラント(騒音規制が厳しく、アスファルトプラントの設置が難しい都市部近郊等に設けられる、アスファルト合材の貯蔵・出荷機能に特化したプラント)に具備される、内部に不活性ガスを充填した状態で保温貯蔵が可能な合材サイロ(例えば、特許文献1~3参照)にて貯蔵するようにしていると共に、出荷する際にも、搬送車両の荷台に払い出したアスファルト合材の上から養生シートで覆うなどの保温対策を図りながら舗装現場まで搬送・供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-256615号公報
【文献】特開平10-204816号公報
【文献】特開平4-169610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記合材サイロでの貯蔵であっても、アスファルト合材の温度低下、酸化劣化は完全に防止できるものではなく、通常、1~2日程度を超えるような長時間に亘る貯蔵は難しい。また、搬送車両での搬送時には、アスファルト合材が大気と接しやすいことから、温度低下、酸化劣化は一段と進みやすく、通常、出荷から約1時間半以内に届けられる範囲の舗装現場にしか供給できず、これを超えるような遠隔地への供給は難しいものがあった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑み、時間的な制約なく貯蔵・搬送が可能なアスファルト合材の供給方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、現状、アスファルトプラントにて製造したアスファルト合材を、できるだけ製造時の温度(例えば約160℃程度)で軟化状態に維持したまま貯蔵、或いは舗装現場まで搬送して供給するようにしているが、敢えて一旦常温まで冷まして固化状態で貯蔵しておき、舗装工事の際にはアスファルト合材を常温の固化状態のまま舗装現場またはその近傍のサテライトプラントまで搬送し、前記舗装現場またはサテライトプラントに備えた適宜の加熱手段にて再加熱して元の軟化状態に戻してから舗装現場に供給するようにすればよいのではないかと考えた。
【0008】
従来、道路工事等により掘り起こされるアスファルト舗装廃材(以下、「廃材」という。)は、所定粒径以下に破砕した上で、アスファルトプラントの廃材再生用ドライヤ等にて加熱して軟化溶融し、別途加熱した新規骨材等と任意の割合で混合することでアスファルト合材として問題なく使用されていることから、加熱した新規骨材、フィラー、溶融アスファルトを混合して製造した直後のアスファルト合材を、一旦冷まして固化した後に再加熱して軟化溶融したとしても、前記廃材と同様に、道路舗装材として問題なく使用できるものと予想される。そして、常温まで冷ました固化状態のアスファルト合材であれば、酸化劣化のおそれもほとんどなく、時間的な制約なく貯蔵・搬送が可能となるのではないかと考え、本発明を成すに至った。
【0009】
即ち、本発明に係る請求項1記載のアスファルト合材の供給方法では、アスファルトプラントのミキサーにて骨材、フィラー、溶融アスファルトを110~130℃で撹拌・混合して製造した直後のアスファルト合材をブロック状に成型後、常温まで冷まして固化状態で貯蔵しておく一方、舗装現場、舗装現場近傍のサテライトプラント、アスファルト合材の搬送車両のうち、少なくとも何れか一つにはブロック状のアスファルト合材の再加熱手段である誘電加熱装置またはマイクロ波加熱装置を備え、舗装工事の際には貯蔵しておいた前記ブロック状のアスファルト合材を搬送車両にて前記舗装現場またはサテライトプラントまで搬送し、前記誘電加熱装置またはマイクロ波加熱装置にて160℃まで再加熱して軟化状態に戻してから前記舗装現場に供給することを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る請求項2記載のアスファルト合材の供給方法では、前記ブロック状のアスファルト合材には高周波またはマイクロ波を吸収しやすい素材である高炉スラグ及び/または廃石膏を配合したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る請求項1記載のアスファルト合材の供給方法によれば、アスファルトプラントのミキサーにて骨材、フィラー、溶融アスファルトを110~130℃で撹拌・混合して製造した直後のアスファルト合材をブロック状に成型後、常温まで冷まして固化状態で貯蔵しておく一方、舗装現場、舗装現場近傍のサテライトプラント、アスファルト合材の搬送車両のうち、少なくとも何れか一つには誘電加熱装置またはマイクロ波加熱装置を備え、舗装工事の際には貯蔵しておいた前記ブロック状のアスファルト合材を搬送車両にて前記舗装現場またはサテライトプラントまで搬送し、前記誘電加熱装置またはマイクロ波加熱装置にて160℃まで再加熱して軟化状態に戻してから前記舗装現場に供給するので、貯蔵時や搬送時におけるアスファルト合材の温度低下や酸化劣化を抑えられ、時間的な制約なく貯蔵・搬送が可能となり、遠隔地への供給も可能となる。また、誘電加熱装置またはマイクロ波加熱装置で再加熱することにより、熱伝導率が低くかつブロック状に成型したアスファルト合材でもその中心部まで効率よく加熱でき、比較的短時間にて軟化状態に戻せて使い勝手がよい。
【0012】
また、本発明に係る請求項2記載のアスファルト合材の供給方法によれば、前記ブロック状のアスファルト合材には高周波またはマイクロ波を吸収しやすい素材である高炉スラグ及び/または廃石膏を配合したので、加熱効率を一層高められてより短時間にて軟化状態に戻せて好適である。また、高炉スラグや廃石膏は本来廃棄処分すべきものであるため、これらを有効利用できて環境面でも有益である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るアスファルト合材の供給方法の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るアスファルト合材の供給方法にあっては、アスファルト合材製造工場に設置されるアスファルトプラントにて製造した直後の適度に軟化状態にあるアスファルト合材の一部を、例えば略直方体形状や平板形状等のブロック状に成型後、そのまま常温まで冷まして固化状態とした上で、適宜の貯蔵スペース(アスファルト合材製造工場内、或いは工場外に用意した適宜の空きスペース等)に載置して貯蔵しておく。
【0015】
前記アスファルト合材をブロック状に成型・固化することで、それ単独で貯蔵や搬送が可能となって容器等が不要となると共に、搬送車両への積み上げ・積み降ろし作業もフォークリフト等にて比較的簡単に行うことができて取り扱いやすいものとなる。
【0016】
一方、舗装現場、舗装現場近傍のサテライトプラント、アスファルト合材の搬送車両のうち、少なくとも何れか一つには、ブロック状に成型・固化したアスファルト合材の再加熱手段として、誘電加熱装置またはマイクロ波加熱装置を備える。前記再加熱手段として誘電加熱装置またはマイクロ波加熱装置を採用することで、熱伝導率が低くかつそれなりの大きさを有するブロック状に成型したアスファルト合材であっても、その中心部まで高周波やマイクロ波が容易に浸透することで効率よく加熱でき、舗装現場でも比較的短時間で元の軟化状態に戻せて使い勝手がよいものとなる。
【0017】
また、好ましくは、前記ブロック状のアスファルト合材には、高周波またはマイクロ波を吸収しやすい素材である、金属粉を多く含む高炉スラグ及び/または結晶水を多く含む廃石膏を配合するとよい。これにより、誘電加熱装置またはマイクロ波加熱装置による加熱効率を一層高められ、より小さい電力で、またより短時間にて軟化状態に戻すことが可能となり、例えば、大きな電力を長時間に亘って確保しづらい舗装現場においても一層扱いやすいものとなる。なお、高炉スラグや廃石膏は本来産業廃棄物として廃棄処分すべきものであるため、これらを有効利用することで環境面でも有益であると共に、アスファルト合材の素材である骨材やフィラーの一部と代替して配合するようにすれば、コスト低減も期待できるものとなる。
【0018】
そして、前記ブロック状のアスファルト合材を使用して舗装工事を行う際には、貯蔵しておいた常温のブロック状のアスファルト合材を搬送車両に積載して舗装現場またはサテライトプラントまで搬送し、前記舗装現場、サテライトプラント、搬送車両のうち、少なくとも何れか一つに備えた誘電加熱装置またはマイクロ波加熱装置にて再加熱して軟化状態に戻した上で舗装現場に供給する。舗装現場では、供給されたアスファルト合材を、通常の(高温の軟化状態のまま搬送されてくる)アスファルト合材と同様に敷き均した上で、転圧して舗装処理する。
【0019】
このように、前記ブロック状のアスファルト合材は常温で貯蔵・搬送するようにしているため、その間の温度低下や酸化劣化を抑えられ、通常のアスファルト合材のような時間的な制約もなく貯蔵・搬送でき、例えば、コスト的にアスファルトプラントを設置することの困難な離島や僻地等の遠隔地への供給も容易となる。また、常温であれば臭気の発生の懸念もなく、貯蔵・搬送時の周辺環境への負荷も抑えられる。
【0020】
また、長期間に亘る貯蔵が可能となることから、例えば、アスファルトプラントの繁忙時には、通常通り、製造直後のアスファルト合材をそのまま舗装現場へと即納して対応しつつ、閑散時には前記同様にアスファルト合材を製造した上で、ブロック状に成型後、常温まで冷まして固化状態で貯蔵(作り置き)しておくようにすれば、プラント稼働率を高めることができる。
【0021】
また、繁忙時に出荷する予定のアスファルト合材の一部を、閑散時に作り置きしたブロック状のアスファルト合材で代用することができれば、アスファルト合材製造工場で繁忙時に使用するエネルギー(ガス、電気等)使用量のピークを抑えて平準化できる結果、基本使用料を抑えられてコストダウンも期待できる。
【0022】
なお、前記ブロック状のアスファルト合材を製造する場合、必ずしも通常のアスファルト合材と同様に約160℃程度もの高温で製造する必要はない。舗装道路の施工時にはワーカビリティー(施工性)の観点から、約160℃程度への加熱は必須ではあるものの、単に骨材、フィラー、溶融アスファルト等をミキサーで撹拌・混合してアスファルト合材を製造するだけであれば(直ぐに施工しないのであれば)、通常のアスファルト合材よりも低温で製造することができる。なお、骨材中の水分を抜いて絶乾状態にさせる必要性があることから、例えば約110~130℃程度の温度で製造すると好ましい。
【0023】
一般に、ミキサーでの撹拌・混合時には、アスファルト合材は高温下で空気と密に接触を繰り返すことから、混合時のアスファルト合材の温度が高くなるほど、また混合時間が長くなるほどアスファルト合材の劣化が進むことが分かっており、上記のように、その際の温度を下げられれば効果的に劣化を抑制できると考えられる。
【0024】
なお、上記のように、ブロック状のアスファルト合材を通常のアスファルト合材よりも低温で製造した場合でも、施工時、即ち舗装現場やその近傍のサテライトプラントで再加熱して軟化状態に戻す際には、ワーカビリティーの観点から、通常のアスファルト合材と同様に約160℃まで昇温する必要があるものの、本発明では、再加熱手段として、ミキサーのような撹拌・混合処理を伴わずに静的に加熱できる誘電加熱装置やマイクロ波加熱装置を採用しているため、再加熱時の劣化、特に酸化劣化を効果的に抑制できる結果、舗装現場へ比較的劣化が少なく品質の良いアスファルト合材を供給できる可能性がある。
【0025】
更に、前記ブロック状のアスファルト合材を平常時からある程度余裕を持って製造・貯蔵しておくようにすれば、万が一アスファルトプラントの稼働が困難となるような地震等の災害が発生した場合でも、道路復旧用等の緊急資材として迅速に現場へと供給することが可能となって好適である。
【実施例
【0026】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0027】
図中の1は道路舗装材であるアスファルト合材を製造・出荷するアスファルト合材製造工場であって、その敷地内には各種粒径の骨材を所定温度、例えば約160℃程度の高温に加熱した上で、フィラーや溶融アスファルト等と共に所定量ずつ撹拌・混合してアスファルト合材を製造するアスファルトプラント2を設置している。
【0028】
図中の3は前記アスファルトプラント2にて製造した直後の高温でかつ適度に軟化状態にあるアスファルト合材4の一部を、例えば型枠等で略直方体形状や平板形状のブロック状に成型後、そのまま常温まで冷まして固化状態としたアスファルト合材4′を一時的に載置して貯蔵しておく貯蔵スペースである。なお、本実施例では、前記貯蔵スペース3を前記アスファルト合材製造工場1の敷地内に設けたが、何らこれに限定されるものではなく、後述のサテライトプラントを含め、アスファルト合材製造工場1の敷地外に用意した適宜の空きスペースを貯蔵スペースとすることができる。
【0029】
また、前記アスファルト合材4′をブロック状に成型・固化することで、それ単独で貯蔵・搬送が可能となって別途容器等が不要となると共に、搬送車両への積み上げ・積み降ろし作業もフォークリフト等にて比較的簡単に行えて取り扱いやすいものとなる。なお、前記ブロック状のアスファルト合材を人力で持ち運びが可能な重量、例えば約20kg以下程度に成型することで使い勝手がよくなり、特に小規模の舗装現場等への供給に適したものとなる。
【0030】
図中の5a~5cは舗装現場であって、このうち5aは、例えば、前記アスファルトプラント2から出荷するアスファルト合材を、製造時の温度(例えば約160℃程度)で軟化状態のまま搬送可能な圏内(例えば、搬送車両で約1時間半以内)に位置する舗装現場である一方、5b、5cは前記圏外に位置する遠隔地の舗装現場である。
【0031】
図中の6は遠隔地の前記舗装現場5cの近傍に位置するサテライトプラントであって、該サテライトプラント6の敷地内には通常の性状(約160℃、軟化状態)のアスファルト合材4を保温貯蔵する合材サイロ7、常温でブロック状のアスファルト合材4′を載置して貯蔵する貯蔵スペース3を備えている。
【0032】
図中の8は前記アスファルトプラント2にて製造したアスファルト合材4、4′を積載して、前記各舗装現場5a~5cに搬送・供給するダンプトラック等の搬送車両であると共に、図中の9は前記搬送車両8にて各舗装現場5a~5cに供給したアスファルト合材4、4′を転圧して舗装処理するロードローラ等の転圧機である。
【0033】
また、遠隔地に位置する前記舗装現場5b、舗装現場5c近傍のサテライトプラント6、アスファルト合材の搬送車両8のうち、少なくとも何れか一つには、ブロック状に成型・固化したアスファルト合材4′の再加熱手段として、例えば、誘電加熱装置10aまたはマイクロ波加熱装置10bを備えている。なお、本実施例では、舗装現場5bや搬送車両8に誘電加熱装置10aを、サテライトプラント6にマイクロ波加熱装置10bを備えるようにしたが、逆の配置としても良いし、何れも誘電加熱装置10a、またはマイクロ波加熱装置10bとしても良い。
【0034】
前記誘電加熱装置10aは、高周波発振器11と、一対の電極12と、発電機13とを主体に構成され、被加熱物であるブロック状のアスファルト合材4′を前記各電極12間に挟み込んだ上で、前記高周波発振器11より各電極12間に高周波電圧を印加すると、前記アスファルト合材4′内部まで高周波F1が容易に浸透する結果、熱伝導率が低くかつそれなりの大きさを有するブロック状のアスファルト合材4′であっても効率よく加熱でき、比較的短時間で元の軟化状態に戻すことができる。
【0035】
なお、前記高周波発振器11に電力を供給する前記発電機13に代えて、搬送車両8から電力を供給する構成としてもよい。また、前記各電極12間の距離が短いほど小さい電力でアスファルト合材4′をより効率よく加熱できるため、加熱効率を優先する場合には、前記アスファルト合材4′の厚みを抑えて、例えば略平板形状に成型するとよい。
【0036】
一方、前記マイクロ波加熱装置10bは、マイクロ波発振器14と、導波管15と、発電機13と、ボックス状の金属製シールド16とを主体に構成され、被加熱物であるブロック状のアスファルト合材4′を前記金属製シールド16内に載置した上で、前記マイクロ波発振器14よりマイクロ波F2を発射すると、マイクロ波は前記導波管15を介して前記金属製シールド16内に放出され、金属製シールド16内に載置したブロック状のアスファルト合材4′内部まで容易に浸透する結果、前記誘電加熱装置10aと同様に効率よく加熱でき、比較的短時間で元の軟化状態に戻すことができる。
【0037】
なお、好ましくは、前記ブロック状のアスファルト合材4′に、高周波またはマイクロ波を吸収しやすい素材である、金属粉を多く含んだ高炉スラグ及び/または結晶水を多く含んだ廃石膏を、アスファルト合材の素材である骨材やフィラーの一部と代替して配合するとよく、これにより誘電加熱装置10aやマイクロ波加熱装置10bによる加熱効率を一層高められる。
【0038】
続いて、前記アスファルト合材製造工場1のアスファルトプラント2にて製造したアスファルト合材4、4′を舗装現場5a~5cに搬送・供給する場合について説明する。先ず、通常時や繁忙時には、図中(A)に示すように、製造直後の高温で軟化状態にあるアスファルト合材4を搬送車両8の荷台に直接払い出し、該搬送車両8では荷台上のアスファルト合材4の上から養生シートで覆うなどの保温対策を図った上で舗装現場5aまで搬送・供給する。前記舗装現場5aでは、供給された、未だ高温で軟化状態に保たれたアスファルト合材4を所定の層厚に敷き均した上で、転圧機9にて転圧して舗装処理を行う。
【0039】
一方、閑散時には、前記同様にアスファルトプラント2にてアスファルト合材を製造した上で、型枠等でブロック状に成型後、そのまま常温まで冷まして固化状態としたアスファルト合材4′を、前記アスファルト合材製造工場1またはサテライトプラント6内に設けた貯蔵スペース3に載置して貯蔵(作り置き)しておく。なお、この貯蔵している間、常温のアスファルト合材4′は酸化劣化のおそれはほとんどない。
【0040】
そして、例えば、前記アスファルト合材製造工場1からは遠隔地にある舗装現場5bから発注があれば、図中(B)に示すように、貯蔵しておいた前記ブロック状のアスファルト合材4′をそのまま搬送車両8に積載して前記舗装現場5bまで搬送する。次いで、前記舗装現場5bまたは搬送車両8に備えておいた誘電加熱装置10a(またはマイクロ波加熱装置10b)に前記ブロック状のアスファルト合材4′をかけて、再加熱処理して元の(製造直後の)軟化状態に戻した上で舗装現場5bに供給する。前記舗装現場5bでは、供給されたアスファルト合材4′を通常の(高温の軟化状態のまま搬送されてくる)アスファルト合材4と同様に所定の層厚に敷き均した上で、転圧機9にて転圧して舗装処理を行う。
【0041】
また、前記舗装現場5cから発注があれば、図中(C)に示すように、該舗装現場5c近傍のサテライトプラント6にて貯蔵しておいたブロック状のアスファルト合材4′を、サテライトプラント6に備えておいたマイクロ波加熱装置10b(または誘電加熱装置10a)にかけて、再加熱処理して元の軟化状態のアスファルト合材4に戻した上で、搬送車両8に積載して舗装現場5cまで供給する。そして、前記舗装現場5cでは前記同様に、供給されたアスファルト合材4を敷き均した上で転圧機9にて転圧して舗装処理を行う。
【0042】
なお、前記サテライトプラント6にて貯蔵しておいたブロック状のアスファルト合材4′を、例えば近傍の舗装現場5cの施工計画等に合わせて予め再加熱処理して元の軟化状態に戻した上で、サテライトプラント6内の前記合材サイロ7に保温貯蔵しておくようにすれば、よりスムーズに舗装現場5cへ出荷できて好適なものとなる。
【0043】
このように、本発明では、製造直後の高温のアスファルト合材4を、ブロック状に成型後、敢えて常温まで冷まして固化状態とした上で貯蔵・搬送するようにしたことで、その間の温度低下や酸化劣化を抑えられ、時間的な制約もなく貯蔵・搬送が可能となり、通常であれば供給の難しいアスファルト合材製造工場1から離間した遠隔地に位置する舗装現場5b、5cにも支障なくアスファルト合材4′を供給できると共に、アスファルト合材製造工場1の閑散時等に作り置きができてプラント稼働率を高められて好適である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、アスファルトプラントで製造されるアスファルト合材を舗装現場に供給する場合に広く利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1…アスファルト合材製造工場 2…アスファルトプラント
3…貯蔵スペース 4、4′…アスファルト合材
5a~5c…舗装現場 6…サテライトプラント
7…合材サイロ 8…搬送車両
9…転圧機
10a…誘電加熱装置(再加熱手段)
10b…マイクロ波加熱装置(再加熱手段)
図1