(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】漏電遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 83/02 20060101AFI20240628BHJP
H02H 3/347 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H01H83/02 E
H01H83/02 F
H01H83/02 H
H02H3/347 A
(21)【出願番号】P 2020114315
(22)【出願日】2020-07-01
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】外山 博之
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-125053(JP,A)
【文献】特開2007-149603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 83/02
H02H 3/347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電路の零相電流を検出する零相変流器と、前記零相変流器が検出した零相電流を基に漏電発生を判断する漏電判定部と、漏電発生と判断したら前記電路を遮断する遮断手段とを有する漏電遮断器であって、
前記漏電判定部は、交流電流の漏電を検出して判定するAC形漏電判定回路と、
直流成分を含む脈流電流の漏電を検出して判定するA形漏電判定回路とを有すると共に、
2つの前記漏電判定回路のうちの一方を選択して能動状態とする回路選択部を備え、
選択された漏電判定回路が漏電発生を判断する
一方、
漏電遮断器ケースは、前記回路選択部を視認するための視認窓を有し、選択された前記漏電判定回路を外部から前記視認窓を介して判別可能なことを特徴とする漏電遮断器。
【請求項2】
電路の零相電流を検出する零相変流器と、前記零相変流器が検出した零相電流を基に漏電発生を判断する漏電判定部と、漏電発生と判断したら前記電路を遮断する遮断手段とを有する漏電遮断器であって、
前記漏電判定部は、交流電流の漏電を検出して判定するAC形漏電判定回路と、
直流成分を含む脈流電流の漏電を検出して判定するA形漏電判定回路とを有すると共に、
2つの前記漏電判定回路のうちの一方を選択して能動状態とする回路選択部を備え、
選択された漏電判定回路が漏電発生を判断する一方、
前記零相変流器が検出した零相電流を増幅する増幅部を有して、当該増幅部の出力が2分岐されて前記2つの漏電判定回路に入力されるよう構成され、
前記2分岐された電路は回路基板上にパターン形成されて成り、更に分岐された2つの電路パターンはそれぞれ分断部を有して、前記回路基板の前記分断部に別途配置された導通部材を配置して連結することで前記漏電判定回路の入力部に接続されるよう形成され、
前記回路選択部が前記導通部材であり、前記導通部材を一方の前記分断部のみに配置することで、使用する前記漏電判定回路を選択することを特徴とする漏電遮断器。
【請求項3】
漏電遮断器ケースは、前記回路選択部を視認するための視認窓を有し、選択された前記漏電判定回路を外部から前記視認窓を介して判別可能なことを特徴とする請求項
2記載の漏電遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は漏電遮断器に関し、特にA形、AC形の2種類の漏電判定回路を備えて、設置環境に応じて回路を選択できる漏電遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
漏電遮断器には、正弦波交流電力に漏電が発生した場合にそれを検出するAC形漏電遮断器と、正弦波交流に加えて直流成分を含んだ脈流電流の漏電が発生しても、それを検出できるA形漏電遮断器との2種類がある。
例えば、太陽光発電装置を備えた電路は、太陽光発電装置が直流電力を出力するため、交流に変換する前段階で漏電が発生しても、A形漏電遮断器を使用することでそれを良好に検出できる。それでいて、正弦波交流の漏電も検出できるため、AC形漏電遮断器としても使用でき(例えば、特許文献1参照)、設置環境を選ばないため普及が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、A形漏電遮断器は脈流電流による漏電も検出することが求められ、例えば遅れ角135度のような1波あたりの波形が細い電流波形であっても、検出して遮断しなければならないことが求められている(JIS C8201-2-2)。
A形漏電遮断器にはこのような能力があるため、同様に1波あたりの波形が細い特性を有するノイズが発生し易い環境では誤動作が生じてしまう。そのため、このような特殊な環境では、A形の漏電遮断器をAC形として使用できなかった。
このように、AC形漏電遮断器しか使用できない環境があり、A形漏電遮断器をAC形漏電遮断器として使用できても、AC形漏電遮断器には一定の需要があった。
【0005】
しかしながら、AC形漏電遮断器は市場規模が小さく絶対数が少ないため、製造コストを下げられずA形に比べてコスト高となっていた。
一方で、近年AC形漏電判定回路、A形漏電判定回路はIC化されて小型化が進んでおり、双方を同一基板に搭載しても大きなコスト増とはならなくなってきている。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点、背景に鑑み、A形漏電判定回路とAC形漏電判定回路の双方を備えて、設置環境に適した一方を選択して使用できる漏電遮断器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、電路の零相電流を検出する零相変流器と、前記零相変流器が検出した零相電流を基に漏電発生を判断する漏電判定部と、漏電発生と判断したら前記電路を遮断する遮断手段とを有する漏電遮断器であって、
前記漏電判定部は、交流電流の漏電を検出して判定するAC形漏電判定回路と、
直流成分を含む脈流電流の漏電を検出して判定するA形漏電判定回路とを有すると共に、
2つの前記漏電判定回路のうちの一方を選択して能動状態とする回路選択部を備え、
選択された漏電判定回路が漏電発生を判断する一方、
漏電遮断器ケースは、前記回路選択部を視認するための視認窓を有し、選択された前記漏電判定回路を外部から前記視認窓を介して判別可能なことを特徴とする。
この構成によれば、AC形とA形の双方の漏電判定回路を有し、一方を選択して使用できるため、漏電遮断器自体を交換すること無く設置環境に適した漏電判定回路を選択して使用することができ、利便性が良い。そして、AC形漏電遮断器をA形漏電遮断器とを同一コストで作製できる。
更に、ケースを開けること無く、AC形かA形かどちらの漏電判定回路が選択されているか判別でき、別途ケースにどちらが選択されているか表示しなくても良く利便性が良い。
【0008】
請求項2の発明は、電路の零相電流を検出する零相変流器と、前記零相変流器が検出した零相電流を基に漏電発生を判断する漏電判定部と、漏電発生と判断したら前記電路を遮断する遮断手段とを有する漏電遮断器であって、
前記漏電判定部は、交流電流の漏電を検出して判定するAC形漏電判定回路と、
直流成分を含む脈流電流の漏電を検出して判定するA形漏電判定回路とを有すると共に、
2つの前記漏電判定回路のうちの一方を選択して能動状態とする回路選択部を備え、
選択された漏電判定回路が漏電発生を判断する一方、
前記零相変流器が検出した零相電流を増幅する増幅部を有して、当該増幅部の出力が2分岐されて前記2つの漏電判定回路に入力されるよう構成され、
前記2分岐された電路は回路基板上にパターン形成されて成り、更に分岐された2つの電路パターンはそれぞれ分断部を有して、前記回路基板の前記分断部に別途配置された導通部材を配置して連結することで前記漏電判定回路の入力部に接続されるよう形成され、
前記回路選択部が前記導通部材であり、前記導通部材を一方の前記分断部のみに配置することで、使用する前記漏電判定回路を選択することを特徴とする。
この構成によれば、AC形とA形の双方の漏電判定回路を有し、一方を選択して使用できるため、漏電遮断器自体を交換すること無く設置環境に適した漏電判定回路を選択して使用することができ、利便性が良い。そして、AC形漏電遮断器をA形漏電遮断器とを同一コストで作製できる。
加えて、漏電判定回路の選択は、導通部材を回路基板上に配置することで行うため、スイッチ等を使用するより安価にできる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の構成において、漏電遮断器ケースは、前記回路選択部を視認するための視認窓を有し、選択された前記漏電判定回路を外部から前記視認窓を介して判別可能なことを特徴とする。
この構成によれば、ケースを開けること無く、AC形かA形かどちらの漏電判定回路が選択されているか判別でき、別途ケースにどちらが選択されているか表示しなくても良く利便性が良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、AC形とA形の双方の漏電判定回路を有し、一方を選択して使用できるため、漏電遮断器自体を交換すること無く設置環境に適した漏電判定回路を使用することができ、利便性が良い。そして、AC形漏電遮断器をA形漏電遮断器と同一コストで作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る漏電遮断器の一例を示す回路ブロック図である。
【
図2】回路選択部の構成を示す説明図であり、回路基板の要部斜視図である。
【
図3】漏電遮断器の平面図を示し、(a)は一方の漏電判定回路が選択された状態、(b)は他方の漏電判定回路が選択された状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る漏電遮断器の一例を示す回路ブロック図であり、3端子を備えた漏電遮断器を示している。
図1に示すように、電源側端子10、負荷側端子11の間に配置された3本の電路Mに対して漏電遮断回路が組み付けられている。1は検知対象の電路Mに設置された零相変流器、2は電路Mを開閉する接点、3は接点2を開操作する引き外しコイル、4は零相変流器1が出力する零相電流を増幅する増幅部、5は漏電判定回路(AC形漏電判定回路5a、A形漏電判定回路5b)、7は引き外しコイル3を駆動する出力部、8は使用する漏電判定回路5(5a,5b)を選択する回路選択部を構成する導通部材である。
【0013】
AC形漏電判定回路5a及びA形漏電判定回路5bは、それぞれIC化されており、図示しない電源回路から電源が供給される。また、双方は並列に配置されて、増幅部4で増幅された零相電流情報が2分岐されてそれぞれに入力されるよう構成されている。零相電流情報が入力された漏電判定回路5は、入力された漏電電流情報の大きさがそれぞれの回路で設定されている閾値を超えたら漏電発生と判断する。
【0014】
この2つの漏電判定回路5は、いずれか一方が選択されて漏電判定に使用され、他方は使用されない。この選択は以下のように行われる。
図2は回路基板19上に設けられた回路選択部形成部を示し、AC形漏電判定回路5aが選択された状態を示している。
図2において、13は増幅部4の出力をAC形漏電判定回路5aに入力させるため回路基板19に形成された第1電路バターンであり、電路を分断した分断部14に配置された導通部材8を介して、同様にパターン形成された電路13aに接続され、図示しないAC形漏電判定回路5aに接続される。
【0015】
一方、15は増幅部4の出力をA形漏電判定回路5bに入力させるために分岐された第2電路パターンであり、分断部14を介してパターン形成された電路15aに導電部材8を介して接続されるよう構成されている。電路15aの先には、図示しないA形漏電判定回路5bが配置され、接続されている。
【0016】
ここでは、第1電路パターン13の分断部14に、抵抗チップが導通部材8として掛け渡されている。この結果、AC形漏電判定回路5aに増幅部4の出力が入力される。
そして、A形漏電判定回路5bが選択される場合は、第1電路パターン13上の導通部材8が取り外され、第2電路パターン15の分断部14に掛け渡される(点線で示している)。
尚、導通部材8としての抵抗チップは、0オーム或いは低抵抗値のものが使用されて半田付けされるが、ジャンパー線を使用してブリッジさせても良い。
【0017】
図3は、漏電遮断器の平面図であり、(a)はAC形漏電判定回路5aを選択した状態、(b)はA形漏電判定回路5bを選択した状態を示している。
図3に示すように、漏電遮断器ケース20の背面側に電源側端子10、前面側に負荷側端子11が配置され、上面には漏電遮断器をオン/オフ操作する操作ハンドル21が略中央に配置されている。
【0018】
この漏電遮断器ケース20の内部に、漏電を検出して遮断させる回路が組み付けられ、上述した回路基板19等が収容されている。
そして
図3に示すように、漏電遮断器ケース20の上面には、回路選択部の状態を視認可能とする窓(視認窓)22が設けられている。窓22は、漏電遮断器ケース20に開口窓が穿設され、この開口窓が透明の樹脂板で閉塞されて構成されている。
窓22は、内部に配置された回路基板19上に配置された導通部材8の真上に形成され、どちらの漏電判定回路5が選択されているか目視で確認できるよう形成されている。
【0019】
このように、AC形とA形の双方の漏電判定回路5を有し、一方を選択して使用できるため、漏電遮断器自体を交換すること無く設置環境に適した漏電判定回路5を選択して使用することができ、利便性が良い。そして、AC形漏電遮断器をA形漏電遮断器と同一コストで作製できる。
また、漏電遮断器ケース20を開けること無く、AC形かA形かどちらの漏電判定回路5が選択されているか判別できるため、別途漏電遮断器ケース20にどちらを選択したか表示部を設けなくても良く利便性が良い。
更に、漏電判定回路5の選択は、導通部材8を回路基板19上に配置することで行うため、スイッチ等を使用するより安価にできる。
【0020】
尚、上記実施形態では、入力信号の有無で使用する漏電判定回路5を決定しているが、双方の漏電判定回路5に供給する電源のオン/オフで設定しても良い。実施例と同様の選択回路で電源回路のオン/オフを実施できる。
【符号の説明】
【0021】
1・・零相変流器、2・・接点、3・・引き外しコイル、4・・増幅部、5・・漏電判定回路、5a・・AC形漏電判定回路、5b・・A形漏電判定回路、8・・導通部材(回路選択部)、10・・電源側端子、11・・負荷側端子、13・・第1電路パターン(電路パターン)、14・・分断部、15・・第2電路パターン(電路パターン)、19・・回路基板、20・・漏電遮断器ケース、22・・窓(視認窓)。