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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】光照射装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 23/04 20060101AFI20240628BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240628BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20240628BHJP
   F21V 7/09 20060101ALI20240628BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240628BHJP
   F21Y 105/16 20160101ALN20240628BHJP
【FI】
B41F23/04 B
F21S2/00 350
F21V3/00 310
F21V7/09 510
F21Y115:10 300
F21Y105:16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020125906
(22)【出願日】2020-07-23
(65)【公開番号】P2022021973
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148895
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 佳幸
(72)【発明者】
【氏名】五十木 幹彦
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-066203(JP,A)
【文献】特開2020-046119(JP,A)
【文献】特開2018-069214(JP,A)
【文献】特開2017-226109(JP,A)
【文献】特開2009-154436(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0207223(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 23/04
F21S 2/00
F21V 3/00
F21V 7/09
F21Y 115/10
F21Y 105/16
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って相対的に移動可能な照射対象物に対して光を照射する光照射装置であって、
前記第1方向と前記第1方向と直交する第2方向によって規定される基板と、
前記基板上に前記第2方向に沿ってn個(nは2以上の整数)、第1方向に沿ってm列(mは2以上の整数)に並べられ、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向に光軸の向きを揃えて配置された複数の発光素子と、
前記複数の発光素子から出射された前記光が透過するカバーガラスと、
前記カバーガラスを透過した前記光が通る開口部を有し、前記カバーガラスを支持する支持部と、
前記複数の発光素子の光路を前記第1方向に挟むように、前記基板と前記カバーガラスとの間に配置され、前記光を導光する一対の第1反射ミラーと、
を備え、
前記第2方向から見たときに、最も前記第1方向上流側に位置する第1列目の発光素子から最も前記第1方向下流側に位置する第m列目の発光素子までの距離をaとし、前記一対の第1反射ミラーの間隔をbとし、前記一対の第1反射ミラーの前記第3方向の高さをhとし、前記基板から前記支持部までの距離をdとし、前記開口部の前記第1方向の幅をwとしたときに、下式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする光照射装置。

h≦(a+b)/2√3 ・・・(1)
w≧d・2√3-a ・・・(2)
【請求項2】
前記第1方向上流側に位置する前記第1反射ミラーの先端部から前記カバーガラスと対向するように前記第1方向上流側に延び、前記照射対象物によって反射された前記光を前記照射対象物に向かって反射する第2反射ミラーを備えることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記第2反射ミラーが前記第1方向上流側に位置する前記第1反射ミラーと一体的に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記第1方向下流側に位置する前記第1反射ミラーの先端部から前記カバーガラスと対向するように前記第1方向下流側に延び、前記照射対象物によって反射された前記光を前記照射対象物に向かって反射する第3反射ミラーを備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記第3反射ミラーが前記第1方向下流側に位置する前記第1反射ミラーと一体的に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の光照射装置。
【請求項6】
前記基板、前記複数の発光素子、及び前記一対の第1反射ミラーを収容する筐体を有し、前記支持部及び前記カバーガラスが、前記筐体の一部を構成していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項7】
前記光は、紫外線波長域の光であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項8】
前記照射対象物は、シート状の形状を呈し、前記紫外線波長域の光が前記照射対象物の表面上に塗布されたインキを硬化させることを特徴とする請求項7に記載の光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向に搬送される照射対象物に対して光を照射する光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外光の照射によって硬化するUVインクを用いて印刷を行なう印刷装置が知られている。このような印刷装置では、ヘッドのノズルから媒体にインクを吐出した後、媒体に形成されたドットに紫外光を照射する。紫外光の照射により、ドットが硬化して媒体に定着するので、液体を吸収しにくい媒体に対しても良好な印刷を行うことができる。
【0003】
このような印刷装置に用いられる紫外光照射装置においては、近年、消費電力の削減、長寿命化、装置サイズのコンパクト化の要請から、従来の放電ランプに替えて、LED(Light Emitting Diode)素子を光源として利用したものが実用に供されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許5482537号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の紫外光照射装置は、照射対象物の搬送方向と直交する方向に沿って並ぶ複数の紫外光光源(紫外線LED)を有する光源ユニットと、光源ユニットと照射対象物との間に配置され、光源ユニットを、搬送方向の上流側及び下流側から挟むように配置された一対の反射部材と、を備え、紫外光光源からの紫外光を一対の反射板で導光して出射することで紫外光に指向性を持たせる構成を採っている。
【0006】
しかしながら、特許文献1のような構成を採ると、反射部材が所定の反射率を有するために、紫外光が反射部材によって反射されるたびに紫外光の光量(強度)が低下してしまい、照射対象物上において所定の光量(つまり、UVインクを確実に硬化させるための光量)を得ようとすると、光量の低下分を補うために、紫外光LEDの数を増やす必要が生じる。そして、その結果、装置のコストアップ、サイズアップ、消費電力のアップを招いてしまうといった問題が発生する。そのため、LEDの数を増やすことなく、効率のよい照射が可能な光照射装置が求められている。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、出射光に指向性を持たせつつも、効率のよい照射が可能な光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の光照射装置は、第1方向に沿って相対的に移動可能な照射対象物に対して光を照射する光照射装置であって、第1方向と第1方向と直交する第2方向によって規定される基板と、基板上に第2方向に沿ってn個(nは2以上の整数)、第1方向に沿ってm列(mは2以上の整数)に並べられ、第1方向及び第2方向と直交する第3方向に光軸の向きを揃えて配置された複数の発光素子と、複数の発光素子から出射された光が透過するカバーガラスと、カバーガラスを透過した光が通る開口部を有し、カバーガラスを支持する支持部と、複数の発光素子の光路を第1方向に挟むように、基板とカバーガラスとの間に配置され、光を導光する一対の第1反射ミラーと、を備え、第2方向から見たときに、最も第1方向上流側に位置する第1列目の発光素子から最も第1方向下流側に位置する第m列目の発光素子までの距離をaとし、一対の第1反射ミラーの間隔をbとし、一対の第1反射ミラーの第3方向の高さをhとし、基板から支持部までの距離をdとし、開口部の第1方向の幅をwとしたときに、下式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする。

h≦(a+b)/2√3 ・・・(1)
w≧d・2√3-a ・・・(2)
【0009】
このような構成によれば、強度の強い、拡がり角が60°以下の光線(紫外光)が第1反射面108a、109aに1回反射されるか、又は反射されずに、照射対象物P上に到達するため、第1反射面108a、109aによる反射の影響(つまり、光量の減少)は殆ど発生しない。従って、第1反射面108a、109aによって出射光に指向性を持たせつつも、効率のよい照射が可能となる。
【0010】
また、第1方向上流側に位置する第1反射ミラーの先端部からカバーガラスと対向するように第1方向上流側に延び、照射対象物によって反射された光を照射対象物に向かって反射する第2反射ミラーを備えることができる。また、この場合、第2反射ミラーが第1方向上流側に位置する第1反射ミラーと一体的に形成されていることが望ましい。
【0011】
また、第1方向下流側に位置する第1反射ミラーの先端部からカバーガラスと対向するように第1方向下流側に延び、照射対象物によって反射された光を照射対象物に向かって反射する第3反射ミラーを備えることができる。また、この場合、第3反射ミラーが第1方向下流側に位置する第1反射ミラーと一体的に形成されていることが望ましい。
【0012】
また、基板、複数の発光素子、及び一対の第1反射ミラーを収容する筐体を有し、支持部及びカバーガラスが、筐体の一部を構成していることが望ましい。
【0013】
また、光は、紫外線波長域の光であることが望ましい。また、この場合、照射対象物は、シート状の形状を呈し、紫外線波長域の光が照射対象物の表面上に塗布されたインキを硬化させるように構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、出射光に指向性を持たせつつも、効率のよい照射が可能な光照射装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る光照射装置の構成を説明する外観図である。
図2図2は、図1(b)のA-A線断面図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に係る光照射装置に備わる光源ユニットの構成を説明する図である。
図4図4は、本発明の第1の実施形態に係る光照射装置の構成を説明する模式図である。
図5図5は、本発明の第1の実施形態に係る光照射装置の作用効果を説明するシミュレーション結果である。
図6図6は、本発明の第1の実施形態に係る光照射装置の構成を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
(第1の実施形態)
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態に係る光照射装置1の構成を示す図であり、図1(a)は斜視図であり、図1(b)は正面図である。また、図2は、図1(b)のA-A線断面図である。図1及び図2に示すように、本実施形態の光照射装置1は、印刷装置等に組み込まれて、紫外線硬化型インキや紫外線硬化樹脂を硬化させる光源装置であり、一方向に搬送される照射対象物P(例えば、シート状の記録媒体等)の上方に配置され、照射対象物Pに対してライン状の紫外光を出射する。なお、図1(a)においては、説明の便宜のため、光照射装置1のみを示しているが、実際の印刷装置等においては、異なる色のインクをそれぞれ付与する、複数の記録ヘッドが照射対象物Pの搬送方向に並び、各記録ヘッドの下流側の狭い空間に光照射装置1が配置される。また、本明細書においては、照射対象物Pの搬送方向をX軸方向(第1方向)、後述するLED(Light Emitting Diode)素子217の配列方向をY軸方向(第2方向)、LED素子217が紫外光を出射する方向をZ軸方向(第3方向)と定義して説明する。また、一般に、紫外光とは、波長400nm以下の光を意味するものとされているが、本明細書において、紫外光とは、照射対象物P上に塗布された紫外線硬化型インキを硬化させることが可能な波長(例えば、波長250~420nm)の光を意味するものとする。
【0018】
図1及び図2に示すように、本実施形態の光照射装置1は、光源ユニット200と、冷却ファン300と、光源ユニット200及び冷却ファン300を収容する筐体100等を備えている。
【0019】
筐体100は、Y軸方向に長い箱形のケースであり、前面(Z軸方向プラス側の面)に紫外光が出射されるガラス製のカバーガラス105を備えている。また、光源ユニット200とカバーガラス105の間には、一対のミラーユニット108、109がX軸方向に離間して配置され(図2)、カバーガラス105の前面には、カバーガラス105の縁部をZ軸方向プラス側から支持する支持プレート107(支持部)が配置されている(図1(b)、図2)。支持プレート107は、中央部に矩形状の開口107a(開口部)を有しており、カバーガラス105を通過した紫外光は、開口107aを通って、照射対象物P上に照射されるようになっている。このように、本実施形態においては、カバーガラス105と支持プレート107が筐体100の正面を覆うように配置されており、カバーガラス105と支持プレート107が筐体100の一部を構成している。
【0020】
また、筐体100の左側面(X軸方向マイナス側の面)には筐体100内の空気を排気する排気口101が形成され、筐体100の背面(Z軸方向マイナス側の面)には、筐体100内に空気を供給する4個の吸気口103が形成され、各吸気口103に対応して冷却ファン300が配置されている(図1(a)、図2)。光照射装置1は、不図示の電源装置と電気的に接続され、電源装置からの電力が内部の光源ユニット200、冷却ファン300等に供給されるようになっている。
【0021】
図3は、本実施形態の光源ユニット200の構成を説明する図であり、図3(a)は、正面図(Z軸方向プラス側から見た図)であり、図3(b)は、側面図(X軸方向マイナス側から見た図)である。図3に示すように、光源ユニット200は、Y軸方向に並べて配置された4個のLEDモジュール210と、ヒートシンク220を備えており、LEDモジュール210から出射される紫外光は、一対のミラーユニット108、109によって導光され、筐体100の前面のカバーガラス105、開口107aを通って照射対象物P上に照射されるようになっている(図2の破線矢印参照)。
【0022】
LEDモジュール210は、X軸方向及びY軸方向で規定される矩形板状の基板215と、同じ特性を有する複数のLED素子217とを備えており、ヒートシンク220のベースプレート222の端面(Z軸方向プラス側の端面)上に固定されている。
【0023】
各LEDモジュール210の基板215は、熱伝導率の高い材料(例えば、窒化アルミニウム)で形成された矩形状配線基板であり、図3(a)に示すように、その表面には、5列(X軸方向)×20個(Y軸方向)のLED素子217が、COB(Chip On Board)実装されている。また、本実施形態においては、LED素子217は、基板215のX軸方向略中央部のLED搭載領域S(図3(a)において破線で囲む領域)内において、X軸方向及びY軸方向に一定の間隔(例えば、2mm)をおいて配置されている。なお、図3(b)に示すように、本明細書においては、説明の便宜のため、各列に配置されるLED素子217を、X軸方向に沿って順に、LED素子217a、217b、217c、217d、217eと称する。
【0024】
基板215上には、各LED素子217に電力を供給するためのアノードパターン(不図示)及びカソードパターン(不図示)が形成されており、各LED素子217は、アノードパターン及びカソードパターンにそれぞれハンダ付けされ、電気的に接続されている。また、基板215は、不図示の配線ケーブルによって不図示のドライバ回路と電気的に接続されており、各LED素子217には、アノードパターン及びカソードパターンを介して、ドライバ回路から駆動電流が供給されるようになっている。各LED素子217に駆動電流が供給されると、各LED素子217からは駆動電流に応じた光量の紫外光(例えば、波長385nm)が出射され、LEDモジュール210からはY軸方向に平行なライン状の紫外光が出射される。図3(a)に示すように、本実施形態においては、4個のLEDモジュール210がY軸方向に並べられており、各LEDモジュール210からのライン状の紫外光がY軸方向に連続するように構成されている。なお、本実施形態の各LED素子217は、略一様な光量の紫外光を出射するように各LED素子217に供給される駆動電流が調整されており、4個のLEDモジュール210から出射されるライン状の紫外光は、X軸方向及びY軸方向において略均一な光量分布を有している。
【0025】
ヒートシンク220は、LEDモジュール210の基板215の裏面に密着するように配置され、各LEDモジュール210で発生した熱を放熱する、いわゆる空冷ヒートシンクである。ヒートシンク220は、アルミニウムや銅等の熱伝導性の良好な材料からなり、Y軸方向に延びる薄板状のベースプレート222と、基板215が当接する面とは反対側の面に形成された複数の放熱フィン225と、を備えている。各放熱フィン225は、X-Z平面に平行な薄板状の形状を呈し、Y軸方向に所定の間隔をおいて設けられている。なお、本実施形態においては、冷却ファン300によって生成される冷却風によって、複数の放熱フィン225が一様に冷却されるようになっている。
【0026】
各LED素子217に駆動電流が流れ、各LED素子217から紫外光が出射されると、LED素子217の自己発熱により温度が上昇するが、各LED素子217で発生した熱は、基板215及びベースプレート222を介して、放熱フィン225に速やかに伝導され、各放熱フィン225から周辺の空気中に放熱される。そして、放熱フィン225によって加熱された空気は、冷却ファン300によって生成される冷却風によって排気口101を通って速やかに排気される。このように、本実施形態においては、ヒートシンク220と冷却ファン300によって各LEDモジュール210が一様に冷却されるため、LED素子217の温度上昇によって生じる発光効率の低下が抑制される。
【0027】
なお、上述したように、本実施形態においては、光源ユニット200とカバーガラス105の間に、一対のミラーユニット108、109がX軸方向に離間して配置され(図2)、カバーガラス105の前面には、カバーガラス105の縁部をZ軸方向プラス側から支持する支持プレート107(支持部)が配置されている(図1(b)、図2)。
【0028】
図2に示すように、一対のミラーユニット108、109は、LED素子217から出射される各紫外光の光路をX軸方向から挟むようにY軸方向に延びる金属製の板状部材である。各ミラーユニット108、109は、Y軸方向から見たときに、カバーガラス105から略垂直に起立するようにZ軸方向に延び、LED素子217から出射される各紫外光の光路を挟んで対称に配置されている。また、各ミラーユニット108、109は、LED素子217から出射される各紫外光の光路を挟むように対向する第1反射面108a、109aを備えている。
【0029】
LED素子217から出射される紫外光は、一般に、所定の拡がり角で発散され、角度成分の大きい紫外光ほど強度が弱くなることが知られているが、本実施形態においては、LED素子217から出射される各紫外光の光路を挟むように第1反射面108a、109aが配置されているため、強度が弱く角度成分の大きい紫外光も含めて、第1反射面108a、109aによって導光され、カバーガラス105を通って出射される。
しかしながら、このような構成(つまり、第1反射面108a、109aによって導光する構成)を採ると、第1反射面108a、109aが所定の反射率(例えば、90%)を有するため、紫外光が第1反射面108a、109aによって反射されるたびに光量が減少してしまい、結果として、照射対象物P上での光量が減少してしまうといった問題が発生する。
そこで、本実施形態においては、かかる問題を解決し、LED素子217から出射される紫外光を効率よく取り出せるように、LED素子217から出射される紫外光の光線のうち、角度成分の小さい光線(例えば、拡がり角≦60°の光線)は第1反射面108a、109aに1回反射されるか、又は反射されずに出射され、角度成分の大きい光線(例えば、拡がり角>60°の光線)は第1反射面108a、109aに1回以上反射されて出射されるように構成している(詳細は後述)。
【0030】
以下、一対のミラーユニット108、109の第1反射面108a、109aの機能について詳述する。
図4は、LEDモジュール210、ミラーユニット108、109、カバーガラス105、支持プレート107の配置と、各LED素子217から出射される光線との関係を説明する模式図である。図4(a)は、拡がり角の小さい(例えば、拡がり角≦60°)紫外光の光線との関係を示す図であり、図4(b)は、拡がり角の大きい(例えば、拡がり角>60°)紫外光の光線との関係を示す図である。図4(a)において、L60aは、LED素子217aから出射される拡がり角60°の光線であり、L60cは、LED素子217cから出射される拡がり角60°の光線であり、L60eは、LED素子217eから出射される拡がり角60°の光線であり、L0aは、LED素子217aから出射される拡がり角0°の光線である。また、図4(b)において、L65aは、LED素子217aから出射される拡がり角65°の光線であり、L80eは、LED素子217eから出射される拡がり角80°の光線である。なお、図4(a)、図4(b)において、LED素子217b、217dから出射される紫外光の光線ついては説明の便宜上省略しているが、実際にはLED素子217b、217dからもLED素子217a、217c、217eと同様の光線が出射される。また、図4(a)、図4(b)においては、説明の便宜上、各LED素子217の形状を矩形状に示すが、実際には各LED素子217はZ軸方向に十分に薄く、各LED素子217の発光点は、実質的に基板215の表面に位置している。
【0031】
図4(a)に示すように、本実施形態においては、Y軸方向から見たときに、LED搭載領域SのX軸方向の幅(つまり、最もX軸方向上流側(X軸方向マイナス側)に位置する第1列目のLED素子217aから最もX軸方向下流側(X軸方向プラス側)に位置する第5列目のLED素子217eまでの距離)をaとし、第1反射面108a、109aの間隔をbとし、第1反射面108a、109aのZ軸方向の高さをhとし、基板215から支持プレート107までの距離をdとし、支持プレート107のX軸方向の間隔(つまり、開口107aのX軸方向の幅)をwとしたときに、下式(1)及び(2)を満たすように構成されている。

h≦(a+b)/2√3 ・・・(1)
w≧d・2√3-a ・・・(2)
【0032】
具体的には、LED素子217aから出射される紫外光の光線のうち、拡がり角60°の光線L60aは、第1反射面108aによって1回反射され、カバーガラス105を通って出射されると共に、第1反射面109aには入射せずに(つまり、第1反射面109aの先端を抜けて)カバーガラス105を通って出射されるようになっている(図4(a))。
また、LED素子217cから出射される紫外光の光線のうち、拡がり角60°の光線L60cは、第1反射面108a、109aによって1回反射され、カバーガラス105を通って出射されるようになっている。
また、LED素子217eから出射される紫外光の光線のうち、拡がり角60°の光線L60eは、第1反射面109aによって1回反射され、カバーガラス105を通って出射されると共に、第1反射面108aには入射せずに(つまり、第1反射面108aの先端を抜けて)カバーガラス105を通って出射されるようになっている。
従って、各LED素子217から出射される紫外光の光線のうち、拡がり角が60°よりも小さい光線についても同様に、第1反射面108a、109aによって1回反射されるか、又は反射されずに、カバーガラス105を通って出射される。なお、拡がり角60°以下の光線(光線L60a、L60c、L60e、L0a)は、カバーガラス105を通った後、開口107aを通り(つまり、支持プレート107によってケラレることなく)照射対象物P上に到達する。
【0033】
一方、LED素子217から出射される紫外光の光線のうち、拡がり角が60°よりも大きい光線(つまり、拡がり角65°の光線L65a、拡がり角80°の光線L80e)は、第1反射面108a、109aに少なくとも1回以上反射され、カバーガラス105を通って出射される(図4(b))。なお、拡がり角が60°よりも大きい一部の光線(例えば、光線L65a)は、カバーガラス105を通った後、開口107aを通り(つまり、支持プレート107によってケラレることなく)照射対象物P上に到達するが、他の光線(例えば、光線L80e)は、開口107aを通らずに(つまり、支持プレート107によってケラレて)、支持プレート107等の部品によってランダムに反射された後に照射対象物P上に到達する。
【0034】
ここで、LED素子217、第1反射面108a、109a、支持プレート107の位置関係について検討すると、LED素子217aの中心軸(発光点)から第1反射面109aまでのX軸方向の距離は、光線L60aとの関係から√3hと表すことができ、LED素子217eの中心軸(発光点)から第1反射面108aまでのX軸方向の距離は、光線L60eとの関係から√3hと表すことができるため、第1反射面108a、109aの間隔bは、
b≧√3h+√3h-a
と表すことができ、これを変形して上記式(1)が得られる。
また、LED素子217aの中心軸(発光点)から支持プレート107の一方端(X軸方向プラス側の端部)までのX軸方向の距離は、光線L60aとの関係から√3dと表すことができ、同様に、LED素子217eの中心軸(発光点)から支持プレート107の他方端(X軸方向マイナス側の端部)までのX軸方向の距離は、光線L60eとの関係から√3dと表すことができるため、支持プレート107のX軸方向の間隔wは、
w≧√3d+√3d-a
と表すことができ、これを変形して上記式(2)が得られる。
【0035】
このように、本実施形態においては、強度の強い、拡がり角が60°以下の光線(紫外光)が第1反射面108a、109aに1回反射されるか、又は反射されずに、照射対象物P上に到達するため、第1反射面108a、109aによる反射の影響(つまり、光量の減少)が抑制される。なお、拡がり角が60°よりも大きい光線(紫外光)は第1反射面108a、109aに少なくとも1回以上反射されることとなるが、拡がり角が60°よりも大きい光線(紫外光)は強度が弱いため、照射対象物P上に照射される全光量に対する影響は軽微である(つまり、光量減少の影響は僅かである)。
【0036】
図5は、本実施形態の光照射装置1の作用効果を説明するシミュレーション結果であり、横軸は支持プレート107のX軸方向の間隔(つまり、開口107aのX軸方向の幅)w(mm)である。また、縦軸は、光照射装置1から照射される紫外光の積算光量であり、wが100(mm)のときの積算光量を1とした相対値である。
シミュレーション条件としては、LED搭載領域SのX軸方向の幅(つまり、最もX軸方向上流側(X軸方向マイナス側)に位置する第1列目のLED素子217aから最もX軸方向下流側(X軸方向プラス側)に位置する第5列目のLED素子217eまでの距離)aを10(mm)とし、第1反射面108a、109aの間隔bを15(mm)とし、第1反射面108a、109aのZ軸方向の高さhを5(mm)とし、基板215から支持プレート107までの距離dを8(mm)とし、w(mm)を変化させて、積算光量を求めた。
その結果、wが約17(mm)のときに積算光量は約0.9となり、wが30(mm)以上となると、積算光量が低下しない(つまり、光照射装置1から照射される紫外光が支持プレート107によってケラレることなく照射対象物P上に到達する)ことが分かった。
【0037】
ここで、上記のシミュレーション条件を上記式(1)に代入すると、以下のようになり、式(1)を満たす。
h≦(a+b)/2√3 ・・・(1)
5(mm)≦(10(mm)+15(mm))/2√3
5(mm)≦7.2(mm)
【0038】
また、シミュレーション条件を上記式(2)に代入すると、以下のようになる。
w≧d・2√3-a ・・・(2)
w≧8(mm)×2√3-10(mm)
w≧17.8(mm)
【0039】
つまり、上記式(1)、(2)の条件と上記シミュレーション結果は略一致しており、上記式(1)、(2)を満たすとき、光照射装置1から照射される紫外光の積算光量がほぼ低下しない(つまり、積算光量が0.9以上となる)ことが分かる。
【0040】
以上が本実施形態の説明であるが、本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において様々な変形が可能である。
【0041】
例えば、本実施形態のLEDモジュール210においては、LED素子217が5列(X軸方向)×20個(Y軸方向)の態様で並んでいるものとしたが、このような構成に限定されるものではなく、LED素子217は、Y軸方向に沿ってn個(nは2以上の整数)、X軸方向に沿ってm列(mは2以上の整数)に並べられていればよい。
【0042】
また、本実施形態の第1反射面108a、109aは、カバーガラス105から略垂直に起立するようにZ軸方向に延び、LED素子217から出射される各紫外光の光路を挟んで対称に配置されているとしたが、第1反射面108a、109aは、必ずしもZ軸方向に平行である必要はなく、例えば、第1反射面108a、109aがZ軸方向に対してハの字状に広がるように配置することもできる。
【0043】
また、本実施形態においては、LED素子217、第1反射面108a、109a、支持プレート107の位置関係が式(1)、(2)を満たすものとして説明したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではなく、例えば、下式(3)、(4)を満たすように構成することもできる。

h≦(a+b)/2√2 ・・・(3)
w≧d・2√2-a ・・・(4)
【0044】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係る光照射装置1Aの構成を説明する図である。図6に示すように、本実施形態の光照射装置1Aは、一対のミラーユニット108、109のX-Z断面がL字状になっており、ミラーユニット108の第1反射面108aの先端部からカバーガラス105と対向するようにX軸方向マイナス側に延びる第2反射ミラー108bと、ミラーユニット109の第1反射面109aの先端部からカバーガラス105と対向するようにX軸方向プラス側に延びる第3反射ミラー109bと、を備える点で、第1の実施形態の光照射装置1と異なる。
【0045】
図6に示すように、第2反射ミラー108bと第3反射ミラー109bは、LED素子217(図6においてはLED素子217c)から出射され、照射対象物Pによって反射された紫外光を照射対象物Pに向かって再び反射するように構成されている(図6の破線矢印参照)。
従って、本実施形態の構成によれば、照射対象物P上の紫外線硬化型インキの硬化に寄与しなかった紫外光(つまり、照射対象物Pによって反射された紫外光)が再び照射対象物Pに照射されることとなり、紫外光の利用効率をさらに高めることが可能となる。
【0046】
なお、図6においては、第2反射ミラー108bと第3反射ミラー109bによって1回のみ反射する光線を例示したが、紫外光の角度成分によっては複数回反射される。また、複数回の反射が可能となるように、第2反射ミラー108bと第3反射ミラー109bのX軸方向の幅は、できるだけ広い方が好ましく、この場合、カバーガラス105のX軸方向の幅を広くすると共に、支持プレート107のX軸方向の間隔(つまり、開口107aのX軸方向の幅)を広くすればよい。
【0047】
また、第2反射ミラー108bと第3反射ミラー109bは、必ずしも両方設ける必要はなく、いずれか一方を設けてもよい。
【0048】
また、本実施形態のミラーユニット108、109は、X-Z断面がL字状になっており、第1反射面108aと第2反射ミラー108bが一体的に形成され、第1反射面109aと第3反射ミラー109bが一体的に形成されているとしたが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。第1反射面108aと第2反射ミラー108b、第1反射面109aと第3反射ミラー109bは、それぞれ別体で形成されてもよい。
【0049】
なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
1 :光照射装置
1A :光照射装置
100 :筐体
101 :排気口
103 :吸気口
105 :カバーガラス
107 :支持プレート
107a :開口
108 :ミラーユニット
108a :第1反射面
108b :第2反射ミラー
109 :ミラーユニット
109a :第1反射面
109b :第3反射ミラー
200 :光源ユニット
210 :LEDモジュール
215 :基板
217 :LED素子
220 :ヒートシンク
222 :ベースプレート
225 :放熱フィン
300 :冷却ファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6