(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】成型ドラム
(51)【国際特許分類】
B29D 30/26 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
B29D30/26
(21)【出願番号】P 2020134731
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】大谷 和輝
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-015328(JP,U)
【文献】特開2018-024114(JP,A)
【文献】特開2004-106105(JP,A)
【文献】実開平06-061487(JP,U)
【文献】特開2000-254982(JP,A)
【文献】特開平04-329126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム軸の軸周りに円周方向に均等な間隔で設けられ、1つの円周面を構成する複数のセグメントを有し、前記複数のセグメントにより形成される前記円周面を拡縮可能な成型ドラムであって、
前記ドラム軸の軸方向に移動可能に該ドラム軸に外嵌され、一端側にテーパー状の傾斜面を有するスライダと、
前記スライダの円周方向に沿って均等な間隔で前記傾斜面に配置され、可動方向が半径方向となるように取り付けられる複数の直動機構と、
前記直動機構及び前記セグメントが個別に取り付けられるブラケットと、
前記ブラケットの前記ドラム軸の軸方向への移動を規制する規制体と、
を備え
、
前記直動機構は、円周方向の各位置において重ねて設けられ、
各直動機構は、半径方向に直線的に延長するレールと、前記レール上を移動するブロックとを備え、
互いに重ねられる直動機構は、一方のレールの半径方向外側に他方のブロックが取り付けられ、
最もスライダ側に位置する直動機構のブロックが前記傾斜面の半径方向外側に取り付けられ、
最もブラケット側に位置する直動機構のレールがブラケットに取り付けられ、
各直動機構は、レールに重力が作用したときに、自重によりブロックに対して該レールが移動可能な状態で、前記傾斜面と前記ブラケットの間に設けられたことを特徴とする成型ドラム。
【請求項2】
前記ブラケットと、前記規制体との間に、前記ブラケットの半径方向への移動を可能にする径方向ガイドを
円周方向に沿って均等な間隔で備え
、
前記径方向ガイドは、円周方向の各位置において重ねて設けられ、
各径方向ガイドは、半径方向に直線的に延長するガイド用レールと、前記レール上を移動するガイド用ブロックとを備え、
互いに重ねられる径方向ガイドは、一方のガイド用レールの半径方向外側に他方のガイド用ブロックが取り付けられ、
最も規制体側に位置する径方向ガイドのガイド用ブロックが前記規制体の半径方向外側に取り付けられ、
最もブラケット側に位置する径方向ガイドのガイド用レールがブラケットに取り付けられたことを特徴とする請求項1に記載の成型ドラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型ドラムに関し、特に、加硫前のグリーンタイヤの成型に用いられる外径が拡縮可能な成型ドラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤは、成型ドラムの外周に複数の部材を巻き付けてグリーンタイヤを成型し、加硫成型することで製造される。複数の部品が巻き付けられる成型ドラムの外周は、円周方向に均等な間隔で複数のセグメントを配置することで1つの円周面として形成され、各セグメントを半径方向内外に同期して移動させることで外周面の外形寸法を拡縮可能に構成されている。各セグメントは、ドラム軸の外周に外嵌され、ドラム軸の軸方向に沿って移動可能に取り付けられたスライダに、一端が揺動自在に取り付けられた揺動アームの他端に揺動自在に接続される。これにより、成型ドラムは、スライダをドラム軸の軸方向に沿って進退させ、揺動アームに所謂リンク動作をさせることで、セグメントを半径方向内外に移動させる拡縮機構により、外形寸法を拡縮可能となっている。このように外形寸法が拡縮可能な成型ドラムでは、種々の内径の異なるタイヤを成型することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述の拡縮機構では、成型ドラムの外形寸法の拡径につれてスライダを移動させるために必要とされる駆動力が変化するという問題がある。外形寸法を最も縮径した状態では、ドラム軸の延長方向と、揺動アームの延長方向とが交差する挟角の角度が小さいが、拡径させるにつれて挟角の角度が大きくなり、揺動アームを押圧するスライダの移動に必要とされる駆動力も大きくなっている。したがって、スライダを移動させる駆動機構には、少なくとも最大拡径したときに必要とされる駆動力を出力可能な能力が必要とされる。このため、内径の小さなタイヤを成型するときには、成型ドラムの能力として過剰であり、不要な電力を消費することになる。
また、前述のように、揺動アームにかかる負荷が変化するため、揺動アームのリンク動作に伴ない、揺動アームが連結されるセグメントやスライダの接続部にがたつきが生じ易く、成型ドラムの拡縮径の精度が低下する虞があり、耐久性に懸念がある。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、成型ドラムの外形寸法の拡径動作においてスライダを移動させるために必要とされる駆動力を一定とするとともに、拡縮動作の精度を維持可能な成型ドラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するための成型ドラムの構成として、ドラム軸の軸周りに円周方向に均等な間隔で設けられ、1つの円周面を構成する複数のセグメントを有し、複数のセグメントにより形成される円周面を拡縮可能な成型ドラムであって、ドラム軸の軸方向に移動可能に該ドラム軸に外嵌され、一端側にテーパー状の傾斜面を有するスライダと、スライダの円周方向に沿って均等な間隔で傾斜面に配置され、可動方向が半径方向となるように取り付けられる複数の直動機構と、直動機構及びセグメントが個別に取り付けられるブラケットと、ブラケットのドラム軸の軸方向への移動を規制する規制体とを備え、前記直動機構は、円周方向の各位置において重ねて設けられ、各直動機構は、半径方向に直線的に延長するレールと、前記レール上を移動するブロックとを備え、互いに重ねられる直動機構は、一方のレールの半径方向外側に他方のブロックが取り付けられ、最もスライダ側に位置する直動機構のブロックが前記傾斜面の半径方向外側に取り付けられ、最もブラケット側に位置する直動機構のレールがブラケットに取り付けられ、各直動機構は、レールに重力が作用したときに、自重によりブロックに対して該レールが移動可能な状態で、前記傾斜面と前記ブラケットの間に設けられた構成とした。
本構成によれば、スライダを規制体方向に移動させることで、成型ドラムの外形寸法の拡径動作においてスライダを移動させるために必要とされる駆動力を一定とすることができ、結果として、成型ドラムの稼働に要する電力を最小化することができる。また、従来のように拡縮動作において、リンク機構のような揺動動作がなく、揺動動作を可能とするあそびや、あそびの摩耗に伴うガタが生じないため、拡縮動作にともなう耐久性が向上し、拡縮動作における精度を長期にわたり維持することができる。
また、成型ドラムは、ブラケットと、規制体との間に、ブラケットの半径方向への移動を可能にする径方向ガイドを備え、前記径方向ガイドは、円周方向の各位置において重ねて設けられ、各径方向ガイドは、半径方向に直線的に延長するガイド用レールと、前記レール上を移動するガイド用ブロックとを備え、互いに重ねられる径方向ガイドは、一方のガイド用レールの半径方向外側に他方のガイド用ブロックが取り付けられ、最も規制体側に位置する径方向ガイドのガイド用ブロックが前記規制体の半径方向外側に取り付けられ、最もブラケット側に位置する径方向ガイドのガイド用レールがブラケットに取り付けられた構成としても良い。
【0006】
なお、上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、特徴群を構成する個々の構成もまた発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】成型ドラムの構成を示す断面図及び平面図である。
【0008】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、タイヤ成型装置1の模式図である。
図1に示すように、タイヤ成型装置1は、成型ドラム10と、成型ドラム10を回転させる回転駆動機構12と、成型ドラム10を拡縮させる拡縮駆動機構14とを備える。
【0010】
図2は、本実施形態に係る成型ドラム10の概略構成図である。
図2に示すように、成型ドラム10は、基軸18と、ドラム軸20と、スライダ22と、傾斜ガイド24と、ブラケット26と、垂直ガイド28と、ストッパ30と、セグメント32と、を備える。
【0011】
基軸18は、例えば、外形寸法が一定の中空、或いは中軸等の軸体から構成され、成型ドラム10によるタイヤの成型作業における中心軸である。基軸18は、軸線Cが水平方向に延長するように設けられる。
【0012】
ドラム軸20は、内周を基軸18が貫通する中空の筒体として形成され、基軸18の外周を回転可能に設けられる。ドラム軸20の一端側には、ドラム軸20を回転させる回転駆動機構12が接続される。ドラム軸20は、回転駆動機構12の駆動により、基軸18の軸線Cを回転中心軸として回転する。
【0013】
回転駆動機構12には、例えば、駆動モータの回転をドラム軸20に伝動するチェーンスプロケット機構やベルトプーリー機構等の伝動機構などのように、成型ドラム10を回転駆動できるものであればどのような機構でも良い。
【0014】
スライダ22は、概略、内周をドラム軸20が貫通する中空の筒体として形成され、ドラム軸20の外周を軸方向に沿って移動可能にドラム軸20の外周に外嵌される。スライダ22は、一端側において拡縮駆動機構14と接続され、拡縮駆動機構14の駆動により、ドラム軸20の軸方向に沿って往復移動する。
【0015】
拡縮駆動機構14には、例えばシリンダ機構又はネジ伝動機構などの直線運動機構を用いることができる。
【0016】
図4は、スライダ22の平面図である。スライダ22は、前述の拡縮駆動機構14が接続された端部の逆側の他端側にテーパー部34を備える。テーパー部34は、端部に向かうにつれて漸次縮径する錐面状に形成される。
図4に示すように、テーパー部34は、例えば、軸線Cに沿う断面視において軸線Cに交差するように傾斜する傾斜面34aを有するように、例えば、正多角錘状に形成される。傾斜面34aは、正多角錐における角錐面に対応し、平面状に形成される。
【0017】
図2乃至
図4では、傾斜面34aは、例えば、軸線Cに対して45°の角度で交差するように設定されたものを示している。なお、傾斜面34aの角度は、45°に限定されず、スライダ22の軸方向への往復移動するストローク量や、ストローク量に対するセグメント32の拡縮比、スライダ22の移動を制御する拡縮駆動機構14の駆動力等に応じて適宜変更すると良い。テーパー部34には、傾斜ガイド24が取り付けられる。
【0018】
傾斜ガイド24は、複数のリニアガイド機構40により構成される。リニアガイド機構40は、直線的に延長するレール42と、レール42に沿って移動するブロック44とで構成され、レール42とブロック44との間に転動するボールを介在させてボールの転がりを利用することで、レール42に対するブロック44のスライドを可能に構成される。
【0019】
リニアガイド機構40は、例えば、2つの部品間において、一方の部材にレール42、他方の部材をブロック44に取り付けることで、一方の部品に対する他方の部品の直動運動を可能にする。各部品は、レール42及びブロック44にそれぞれ設けられた取付面に取り付けられる。レール42及びブロック44に設けられた取付面は、例えば、それぞれ平面状に形成され、互いに平行の関係にある。
【0020】
リニアガイド機構40は、各傾斜面34aに設けられる。本実施形態では、
図2,
図3に示すように、各傾斜面34aにおいて2段重ねて取り付けられる。なお、各傾斜面34aに重ねて取り付けられるリニアガイド機構40の段数は、2段に限定されず、2段以上の複数や重ねずに1段等としても良い。
【0021】
以下の説明では、傾斜面34aに直接取り付けられるリニアガイド機構40を第1ガイド部40A、第1ガイド部40Aに重ねられるリニアガイド機構40を第2ガイド部40Bという。また、第1ガイド部40Aを構成するレール42をレール42A、ブロック44をブロック44A、第2ガイド部40Bを構成するレール42をレール42B、ブロック44をブロック44Bという。なお、第1ガイド部40A及び第2ガイド部40Bには、同一のリニアガイド機構40を用いた。
【0022】
第1ガイド部40Aは、レール42Aがスライダ22の半径方向に延長するようにブロック44Aを前述の傾斜面34aに固定することでスライダ22に取り付けられる。ブロック44Aは、傾斜面34aの半径方向外側に取り付けられ、例えば、
図2(a)に示すように、軸線Cよりも上方において、レール42Aに重力が作用したときに、自重によりブロック44Aに対してスライド(移動)可能とされる。
【0023】
このように、第1ガイド部40Aを傾斜面34aに取り付けることにより、レール42Aを移動するブロック44Aの移動量を大きくすることができる。即ち、前述のように、レール42Aが自重によりブロック44Aに対して移動したときに、レール42Aの半径方向内側の端部がドラム軸20に接触するまでの距離を長くすることができる。
各傾斜面34aに取り付けられたブロック44Aは、軸線Cを中心とする同一円周上に位置するように配置される。
【0024】
第2ガイド部40Bは、各傾斜面34aに取り付けられた第1ガイド部40のレール42Aとレール42Bが平行に延長するように、ブロック44Bがレール42Aに取り付けられる。ブロック44Bは、レール42Aの半径方向外側に固定される。即ち、第2ガイド部40Bは、第1ガイド部40Aが軸線Cよりも上方に位置するときに、ブロック44Aに対して自重により移動したレール42Aの一端側に重なるように固定される。第2ガイド部40Bのレール42Bには、セグメント32を取り付けるためのブラケット26が取り付けられる。
【0025】
ブラケット26は、各傾斜面34aに取り付けられた第2ガイド部40B毎に設けられる。ブラケット26は、第2ガイド部40Bのレール42Bに取り付けられる傾斜ガイド取付部50と、垂直ガイド28が取り付けられる垂直ガイド取付部52と、セグメント32が取り付けられるセグメント取付部54とを備える。
【0026】
傾斜ガイド取付部50、垂直ガイド取付部52、セグメント取付部54は、例えば、それぞれ平面状に形成され、次の関係が設定される。ブラケット26は、傾斜ガイド取付部50をレール42Bに取り付けたときに、垂直ガイド取付部52が軸線Cと直交する平面として形成され、セグメント取付部54が軸線Cと平行に延長するとともに垂直ガイド取付部52に直交する平面として形成され、直角三角形状をなす。
【0027】
垂直ガイド28は、複数のリニアガイド機構60により構成される。リニアガイド機構60は、前述のリニアガイド機構40と同様に、直線的に延長するレール62と、レール62に沿って移動するブロック64とで構成され、レール62とブロック64との間に転動するボールを介在させてボールの転がりを利用することで、レール62に対するブロック64のスライドを可能に構成される。
【0028】
リニアガイド機構60は、例えば、2つの部品間において、一方の部材にレール62、他方の部材をブロック64に取り付けることで、一方の部品に対する他方の部品の直動運動を可能にする。各部品は、レール62及びブロック64にそれぞれ設けられた取付面に取り付けられる。レール62及びブロック64に設けられた取付面は、例えば、それぞれ平面状に形成され、互いに平行の関係にある。
【0029】
リニアガイド機構60は、各ブラケット26の垂直ガイド取付部52に設けられる。本実施形態では、
図2,
図3に示すように、各ブラケット26の垂直ガイド取付部52において2段重ねて取り付けられる。なお、垂直ガイド取付部52に重ねて取り付けられるリニアガイド機構60の段数は、2段に限定されず、2段以上の複数や重ねずに1段等としても良い。
【0030】
以下の説明では、垂直ガイド取付部52に直接取り付けられるリニアガイド機構60を第1ガイド部60A、第1ガイド部60Aに重ねられるリニアガイド機構60を第2ガイド部60Bという。また、第1ガイド部60Aを構成するレール62をレール62A、ブロック64をブロック64A、第2ガイド部60Bを構成するレール62をレール62B、ブロック64をブロック64Bという。なお、第1ガイド部60A及び第2ガイド部60Bには、同一のリニアガイド機構60を用いた。
【0031】
第1ガイド部60Aは、レール62Aがスライダ22の半径方向に延長するようにブロック64Aを前述の垂直ガイド取付部52に固定することでブラケット26に取り付けられる。
【0032】
第2ガイド部60Bは、レール62Bが第1ガイド部60Aのレール62Aと平行に延長するように第1ガイド部60Aのブロック64Aに取り付けられ、ブロック64Bがストッパ30に取り付けられる。
【0033】
第1ガイド部60A及び第2ガイド部60Bは、成型ドラム10が最も縮径している状態で、ブラケット26とストッパ30との間において、ブロック64A及びブロック64Bが、半径方向外側に位置するように配置される。半径方向外側のスライダ22の半径方向に延長するようにブロック62Aを前述の垂直ガイド取付部52に固定することでブラケット26に取り付けられる。
【0034】
各ブラケット26に取り付けられた第1ガイド部60Aのブロック64Aや第2ガイド部60Bのブロック64Bは、それぞれ軸線Cを中心とする同一円周上に位置するように配置される。
【0035】
ストッパ30は、ドラム軸20の外周に不動に固定され、前述のスライダ22の移動に伴うブラケット26の軸方向への移動を規制する規制体として機能する。ストッパ30は、例えば環状体として構成され、ドラム軸20に固定された状態において、一端側が軸線Cと直交する平面状に形成される。ブラケット26に取り付けられた第2ガイド部60Bは、この平面状の端部に、レール62Bの取付面を接触させて固定される。
【0036】
セグメント32は、ブラケット26のセグメント取付部54に取り付けられる。セグメント32は、例えば、一方長尺の板状部材、或いは棒状部材からなり、延長方向が軸線Cに沿って平行に延長するように各ブラケット26に取り付けられる。セグメント32は各ブラケット26に取り付けられた状態において、軸方向視したときに一つの円周面を形成するように、半径方向外側に位置する面が円弧状に形成される。
【0037】
図5及び
図6は、成型ドラム10の拡径動作を示す図である。以下、成型ドラム10の拡径動作について説明する。
成型ドラム10は、
図2に示すように、最も縮径した状態から拡縮駆動機構14を駆動させてスライダ22をストッパ30に近接させることで拡径される。
【0038】
図5(b),
図6(b)に示すように、拡縮駆動機構14によりスライダ22に加えられた押圧力Pは、スライダ22から傾斜ガイド24→ブラケット26→垂直ガイド28→ストッパ30に伝達される。ストッパ30は、ドラム軸20に固定されているため、傾斜ガイド24、ブラケット26、垂直ガイド28の軸線C方向への移動を規制する。一方で、スライダ22から傾斜ガイド24への押圧力Pの伝達は、テーパー部34の傾斜により、傾斜ガイド24を軸方向に押す力p1と、半径方向外側に押し上げる力p2とに分解されて伝達される。
【0039】
テーパー部34には、傾斜面34aに沿って移動可能なレール42A;42Bを有する傾斜ガイド24が取り付けられているため、スライダ22は、例えば、
図5(b)に示すように、スライダ22に取り付けられた第1ガイド部40Aのブロック44Aに対して第2ガイド部40Bとともにレール42Aを半径方向外側に移動させながら、ストッパ30に向けて軸方向に移動させる。これにより、第2ガイド部40Bのレール42Bに取り付けられたブラケット26とともにセグメント32を半径方向外側に移動させる。また、ブラケット26は、垂直ガイド28を介してストッパ30に力p1により押し付けられるものの、ストッパ30に固定された第2ガイド部60Bのブロック64Bに対してレール62Bとともに第1ガイド部60Aが半径方向外側に移動することで、ブラケット26の半径方向への移動を円滑にさせることができる。その結果、
図5(a)に示すように、複数のセグメント32により形成される円周面の外径が拡径されることになる。
【0040】
図5に示す状態から、さらにスライダ22をストッパ30に向けて移動させることにより、
図6(b)に示すように、スライダ22は、第1ガイド部40Aのレール42Aに取り付けられた第2ガイド部40Bのブロック44Bに対してレール42Bを半径方向外側に移動させながら、ストッパ30に向けて軸方向に移動させる。これにより、第2ガイド部40Bのレール42Bに取り付けられたブラケット26とともにセグメント32をさらに半径方向外側に移動させる。また、ブラケット26は、垂直ガイド28を介してストッパ30に力p1により押し付けられるものの、ストッパ30に固定された第2ガイド部60Bのレール62Bに固定された第1ガイド部60Aのブロック64Aに対してレール62Aが半径方向外側に移動することで、ブラケット26の半径方向外側への移動を円滑にさせることができる。その結果、
図6(a)に示すように、複数のセグメント32により形成される円周面の外径がさらに拡径されることになる。
【0041】
また、スライダ22をストッパ30から離間するように動作させることで、複数のセグメント32により形成される円周面の外径が縮径するように、傾斜ガイド24や垂直ガイド28が動作することは言うまでもない。
【0042】
なお、上記実施形態では、説明の便宜上、傾斜ガイド24を構成する第1ガイド部40A、第2ガイド部40Bの順に動作するものとして説明したが、実際には、第2ガイド部40Bの次に第1ガイド部40Aが動作したり、或は両方が同時に動作したりするものである。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る成型ドラム10は、傾斜ガイド24による直動運動に基づいて、複数のセグメント32により形成される円周面(成型面)の外径が拡縮されるため、拡径量によらず一定の力で拡径動作をさせることができる。即ち、従来のリンク機構により拡径動作させるように駆動力に変化がないので、成型ドラムの稼働において省電力化することができる。
また、リンク機構による揺動運動がないので、揺動運動に必要とされるあそびや、あそびに起因する摩耗がなくなるため、拡縮動作に伴う耐久性が向上し、拡縮動作の精度を長期的に維持することができる。
【0044】
即ち、ドラム軸20の軸周りに円周方向に均等な間隔で設けられ、1つの円周面を構成する複数のセグメント32により形成される円周面を拡縮可能な成型ドラム10において、ドラム軸20の軸方向に移動可能に該ドラム軸20に外嵌され、一端側にテーパー状の傾斜面34aを有するスライダ22と、スライダ22の円周方向に沿って均等な間隔で傾斜面34aに配置され、可動方向が半径方向となるように取り付けられる複数の直動機構と、直動機構及びセグメント32が個別に取り付けられるブラケット26と、ブラケット26のドラム軸20の軸方向への移動を規制する規制体とを備える構成とした。
本構成によれば、スライダ22を規制体方向に移動させることで、成型ドラム10の外形寸法の拡径動作においてスライダ22を移動させるために必要とされる駆動力を一定とすることができ、結果として、成型ドラム10の稼働に要する電力を最小化することができる。また、従来のように拡縮動作において、リンク機構のような揺動動作がなく、揺動動作を可能とするあそびや、あそびの摩耗に伴うガタが生じないため、拡縮動作にともなう耐久性が向上し、拡縮動作における精度を長期にわたり維持することができる。
前述の直動機構は、各傾斜面34aに重ねて設けるようにしても良い。このように、直動機構を重ねて設けることにより、成型ドラム10の拡縮動作の範囲を大きくすることができる。また、重ねることで、例えば、ストロークの長い1つの直動機構を用いるよりも、これよりもストロークの短い直動機構を重ねることで、傾斜面34aに取り付けたときの軸方向に突出する長さを短くすることができ、コンパクト化することができる。
直動機構には、例えば、レール42と、レール42に沿って移動するブロック44とを備えるものを用いることができ、レール42をブラケット26に、ブロック44を傾斜面34aに取り付けると良い。また、前述のように、重ねて設ける場合には、傾斜面側に取り付けられた直動機構のレール42にこれに重なる直動機構のブロック44を取り付け、最終的にレールがブラケットに固定されるように重ねると良い。
さらに、ブラケットと、規制体との間に、ブラケットの半径方向への移動を可能にする径方向ガイドを備えることで、規制体に対してブラケットを円滑に移動させることができる。
【符号の説明】
【0045】
10 成型ドラム、12 回転駆動機構、14 拡縮駆動機構、18 基軸、
20 ドラム軸、22 スライダ、24 傾斜ガイド、26 ブラケット、
28 垂直ガイド、30 ストッパ、32 セグメント、34 テーパー部、
40;60 リニアガイド機構。