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特許7511424印刷装置およびインク吐出用のヘッドのメンテナンス方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】印刷装置およびインク吐出用のヘッドのメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20240628BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B41J2/17 201
B41J2/165 205
B41J2/165 303
B41J2/165 101
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020158431
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052195
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】梶原 快晴
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-212863(JP,A)
【文献】特開2012-056148(JP,A)
【文献】特開2016-175414(JP,A)
【文献】特開2002-001975(JP,A)
【文献】特開2000-141703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルからインクを下方に吐出するヘッドを有するヘッドユニットと、
第1ワイパと、所定の清掃方向において前記第1ワイパの上流側に配置された第2ワイパと、前記第1ワイパに下方から対向する凹部を有して前記ヘッドユニットに対して当接あるいは離間するキャップと、前記第1ワイパ、前記第2ワイパおよび前記キャップを保持するベース部材とを有するメンテナンスユニットと、
前記キャップに接続された第1インク廃棄部と、
前記第1インク廃棄部と異なる第2インク廃棄部と
を備え、
前記ヘッドは、前記ノズルからインクを流出させるパージを実行し、
前記パージで前記ノズルから流出したインクは、前記ヘッドユニットに当接する前記キャップの凹部に回収され、
前記メンテナンスユニットは、前記第1ワイパと前記ヘッドとの間に間隔を空けて前記ヘッドに対して前記第1ワイパを下方から対向させつつ前記ヘッドに対して前記第1ワイパを前記清掃方向に移動させることで前記ヘッドに付着するインクを前記第1ワイパにより掻き取るプレワイプを前記パージ後に実行してから、前記第2ワイパを前記ヘッドに対して下方から接触させた状態で前記第2ワイパを前記ヘッドに対して前記清掃方向に移動させることで前記ヘッドに付着するインクを前記第2ワイパにより掻き取る本ワイプを実行し、
前記プレワイプで前記第1ワイパによって掻き取られたインクは、前記ヘッドユニットから離間する前記キャップの凹部に回収され、
前記第1インク廃棄部には、前記パージによって前記凹部に回収されたインクおよび前記プレワイプによって前記凹部に回収されたインクが廃棄され、
前記第2インク廃棄部には、前記本ワイプによって掻き取られたインクが廃棄される印刷装置。
【請求項2】
その底面に設けられたノズルからインクを下方に吐出するヘッドと、
第1ワイパと、所定の清掃方向において前記第1ワイパの上流側に配置された第2ワイパと、前記第1ワイパに下方から対向する凹部を有するキャップと、前記第1ワイパ、前記第2ワイパおよび前記キャップを保持するベース部材と、前記ベース部材の上面において前記凹部を取り囲むように、かつ底面視において前記ヘッドの底面の外側に位置するように、設けられるシール部材と、を有するメンテナンスユニットと、
前記キャップに接続された第1インク廃棄部と、
前記第1インク廃棄部と異なる第2インク廃棄部と
を備え、
前記ヘッドは、前記ノズルからインクを流出させるパージを実行し、
前記パージで前記ノズルから流出したインクは、前記キャップの凹部に回収され、
前記メンテナンスユニットは、前記第1ワイパと前記ヘッドとの間に間隔を空けて前記ヘッドに対して前記第1ワイパを下方から対向させつつ前記ヘッドに対して前記第1ワイパを前記清掃方向に移動させることで前記ヘッドに付着するインクを前記第1ワイパにより掻き取るプレワイプを前記パージ後に実行してから、前記第2ワイパを前記ヘッドに対して下方から接触させた状態で前記第2ワイパを前記ヘッドに対して前記清掃方向に移動させることで前記ヘッドに付着するインクを前記第2ワイパにより掻き取る本ワイプを実行し、
前記プレワイプで前記第1ワイパによって掻き取られたインクは、前記キャップの凹部に回収され、
前記第1インク廃棄部には、前記パージによって前記凹部に回収されたインクおよび前記プレワイプによって前記凹部に回収されたインクが廃棄され、
前記第2インク廃棄部には、前記本ワイプによって掻き取られたインクが廃棄される印刷装置。
【請求項3】
ノズルからインクを下方に吐出するヘッドと、
第1ワイパと、所定の清掃方向において前記第1ワイパの上流側に配置された第2ワイパと、前記第1ワイパに下方から対向する凹部を有するキャップと、前記第1ワイパ、前記第2ワイパおよび前記キャップを保持するベース部材とを有するメンテナンスユニットと、
前記キャップに接続された第1インク廃棄部と、
前記第1インク廃棄部と異なる第2インク廃棄部と
を備え、
前記ヘッドは、前記ノズルからインクを流出させるパージを実行し、
前記メンテナンスユニットは、前記第1ワイパと前記ヘッドとの間に間隔を空けて前記ヘッドに対して前記第1ワイパを下方から対向させつつ前記ヘッドに対して前記第1ワイパを前記清掃方向に移動させることで前記ヘッドに付着するインクを前記第1ワイパにより掻き取るプレワイプを前記パージ後に実行してから、前記第2ワイパを前記ヘッドに対して下方から接触させた状態で前記第2ワイパを前記ヘッドに対して前記清掃方向に移動させることで前記ヘッドに付着するインクを前記第2ワイパにより掻き取る本ワイプを実行し、
前記プレワイプで前記第1ワイパによって掻き取られたインクは、前記キャップの凹部に回収され、
前記第1インク廃棄部には、前記プレワイプによって前記凹部に回収されたインクが廃棄されるとともに、前記パージによって前記凹部に回収されたインクが廃棄され、
前記第2インク廃棄部には、前記本ワイプによって掻き取られたインクが廃棄され、
前記メンテナンスユニットは、前記パージを実行する前記ヘッドに前記キャップの前記凹部を下方から対向させることで、前記パージによって前記ノズルから流出するインクを前記凹部によって受け止め
記メンテナンスユニットは、前記キャップに固定されたパージガイドブレードをさらに有し、
前記パージガイドブレードは、前記パージの実行中は、前記ヘッドに接触することで、前記ノズルから流出した後に前記ヘッドを伝って前記パージガイドブレードに到るインクを堰き止める一方、前記プレワイプの実行中は、前記ヘッドから離間する印刷装置。
【請求項4】
前記パージガイドブレードは、前記キャップに固定され、
前記第1ワイパは、前記キャップに対して昇降可能に前記キャップに取り付けられ、
前記パージから前記プレワイプへ移行すると、前記キャップが前記ヘッドから鉛直方向に離間するのに伴って、前記パージガイドブレードが前記ヘッドから離間するとともに、前記第1ワイパが前記キャップに対して上昇する請求項に記載の印刷装置。
【請求項5】
ノズルからインクを下方に吐出するヘッドと、
第1ワイパと、所定の清掃方向において前記第1ワイパの上流側に配置された第2ワイパと、前記第1ワイパに下方から対向する凹部を有するキャップと、前記第1ワイパ、前記第2ワイパおよび前記キャップを保持するベース部材とを有するメンテナンスユニットと、
前記キャップに接続された第1インク廃棄部と、
前記第1インク廃棄部と異なる第2インク廃棄部と、
前記ヘッドを保持するヘッド保持部材と、
を備え、
前記ヘッドは、前記ノズルからインクを流出させるパージを実行し、
前記メンテナンスユニットは、前記第1ワイパと前記ヘッドとの間に間隔を空けて前記ヘッドに対して前記第1ワイパを下方から対向させつつ前記ヘッドに対して前記第1ワイパを前記清掃方向に移動させることで前記ヘッドに付着するインクを前記第1ワイパにより掻き取るプレワイプを前記パージ後に実行してから、前記第2ワイパを前記ヘッドに対して下方から接触させた状態で前記第2ワイパを前記ヘッドに対して前記清掃方向に移動させることで前記ヘッドに付着するインクを前記第2ワイパにより掻き取る本ワイプを実行し、
前記プレワイプで前記第1ワイパによって掻き取られたインクは、前記キャップの凹部に回収され、
前記第1インク廃棄部には、前記プレワイプによって前記凹部に回収されたインクが廃棄され、
前記第2インク廃棄部には、前記本ワイプによって掻き取られたインクが廃棄され、
前記メンテナンスユニットは、前記第1ワイパより上方に突出して、前記清掃方向に直交する回転軸を中心に回転するローラを有し、前記プレワイプの実行中は、前記ローラを前記ヘッド保持部材に当接させることで、前記第1ワイパと前記ヘッドとの間に間隔を空ける印刷装置。
【請求項6】
前記ローラは、前記第1ワイパに取り付けられている請求項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記第1ワイパは、前記キャップの前記凹部の内壁に向けて突出する突出部を有し、前記第1ワイパによって掻き取られたインクは、前記突出部によって当該内壁に案内される請求項1ないしのいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項8】
ノズルからインクを下方に吐出するヘッドの前記ノズルからインクを流出させるパージを実行する工程と、
前記ヘッドを有するヘッドユニットに当接するキャップによって、前記パージによって前記ノズルから流出するインクを受けて、前記キャップに接続される第1インク廃棄部に廃棄する工程と、
第1ワイパと前記ヘッドとの間に間隔を空けて前記第1ワイパを前記ヘッドに下方から対向させつつ前記ヘッドに対して前記第1ワイパを清掃方向に移動させることで、前記ヘッドに付着するインクを前記第1ワイパにより掻き取るプレワイプを前記パージ後に実行する工程と、
前記プレワイプによって掻き取られたインクを前記ヘッドユニットから離間するキャップによって受けて前記第1インク廃棄部に廃棄する工程と、
第2ワイパを前記ヘッドに下方から接触させつつ前記ヘッドに対して前記第2ワイパを前記清掃方向に移動させることで前記ヘッドに付着するインクを前記第2ワイパにより掻き取る本ワイプを、前記プレワイプ後に実行する工程と、
前記本ワイプによって掻き取られたインクを第2インク廃棄部に廃棄する工程と
を備えた印刷用ヘッドのメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インク吐出用のヘッドに対してメンテナンスを実行する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルからインクを吐出するインク吐出用のヘッドに対しては、ノズルの目詰まりの防止のために、ノズルからインクを流出させるパージといったメンテナンスが適宜実行される。ただし、パージの実行後は、ノズルから流出した多量のインクがヘッド(特にノズルの周囲)に付着する。そこで、ワイパによってヘッドからインクを掻き取るワイプといったメンテナンスが実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-240235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1の図2に示される動作では、ヘッドに対して間隔を空けて下方から対向するワイパと、ヘッドに対して摺動されるワイパとが具備され、前者のワイパでインクを掻き取ってから、さらに後者のワイパでインクを掻き取る。こうして掻き取られたインクは、自重によってインク廃棄部(廃液タンク)に廃棄される。
【0005】
しかしながら、パージによってノズルから流出した多量のインクが1度にインク廃棄部に廃棄されると、インク廃棄部へのインクの廃棄処理が追いつかずに、インクが滞留したり溢れたりするおそれがある。また、インクの廃棄処理が追いついたとしても、インク廃棄部に貯留されたインクの除去作業の頻発を招くそれがある。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、パージによってノズルから流出したインクをインク廃棄部に廃棄するにあたって、インクの滞留あるいは溢れを防止するとともにインク廃棄部からのインクの除去作業の頻発を回避可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る印刷装置は、ノズルからインクを下方に吐出するヘッドと、第1ワイパと、所定の清掃方向において第1ワイパの上流側に配置された第2ワイパと、第1ワイパに下方から対向する凹部を有するキャップと、第1ワイパ、第2ワイパおよびキャップを保持するベース部材とを有するメンテナンスユニットと、キャップに接続された第1インク廃棄部と、第1インク廃棄部と異なる第2インク廃棄部とを備え、ヘッドは、ノズルからインクを流出させるパージを実行し、メンテナンスユニットは、第1ワイパとヘッドとの間に間隔を空けてヘッドに対して第1ワイパを下方から対向させつつヘッドに対して第1ワイパを清掃方向に移動させることでヘッドに付着するインクを第1ワイパにより掻き取るプレワイプをパージ後に実行してから、第2ワイパをヘッドに対して下方から接触させた状態で第2ワイパをヘッドに対して清掃方向に移動させることでヘッドに付着するインクを第2ワイパにより掻き取る本ワイプを実行し、プレワイプで第1ワイパによって掻き取られたインクは、キャップの凹部に回収され、第1インク廃棄部には、プレワイプによって凹部に回収されたインクが廃棄され、第2インク廃棄部には、本ワイプによって掻き取られたインクが廃棄される。
【0008】
本発明に係る印刷用ヘッドのメンテナンス方法は、ノズルからインクを下方に吐出するヘッドのノズルからインクを流出させるパージを実行する工程と、第1ワイパとヘッドとの間に間隔を空けて第1ワイパをヘッドに下方から対向させつつヘッドに対して第1ワイパを清掃方向に移動させることで、ヘッドに付着するインクを第1ワイパにより掻き取るプレワイプをパージ後に実行する工程と、プレワイプによって掻き取られたインクを第1インク廃棄部に廃棄する工程と、第2ワイパをヘッドに下方から接触させつつヘッドに対して第2ワイパを清掃方向に移動させることでヘッドに付着するインクを第2ワイパにより掻き取る本ワイプを、プレワイプ後に実行する工程と、本ワイプによって掻き取られたインクを第2インク廃棄部に廃棄する工程とを備える。
【0009】
このように構成された本発明(印刷装置、印刷用ヘッドのメンテナンス方法)では、プレワイプと本ワイプとが実行される。プレワイプでは、パージ後のヘッドに対して間隔を空けて下方から対向する第1ワイパを清掃方向に移動させることで、ヘッドからインクが掻き取られる。また、本ワイプでは、プレワイプの実行後のヘッドに対して下方から接触する第2ワイパを清掃方向に移動させることで、ヘッドからインクが掻き取られる。特に本発明では、こうして掻き取られたインクの廃棄先として、第1インク廃棄部と第2インク廃棄部とが具備されている。そして、プレワイプで掻き取られたインクは第1インク廃棄部に廃棄される一方、本ワイプで掻き取られたインクは第2廃棄部へ廃棄される。そのため、第1インク廃棄部には、プレワイプで掻き取られたインクのみが流入し、本ワイプで掻き取られたインクは流入しない。したがって、第1インク廃棄部は、プレワイプで掻き取られたインクのみを処理すれば良い。同様に、第2インク廃棄部は、本ワイプで掻き取られたインクのみを処理すれば良い。その結果、本発明では、パージによってノズルから流出したインクをインク廃棄部に廃棄するにあたって、インクの滞留あるいは溢れを防止するとともにインク廃棄部からのインクの除去作業の頻発を回避することが可能となっている。
【0010】
また、メンテナンスユニットは、パージを実行するヘッドにキャップの凹部を下方から対向させることで、パージによってノズルから流出するインクを凹部によって受け止め、第1インク廃棄部には、パージによって凹部に回収されたインクが廃棄され、メンテナンスユニットは、キャップに固定されたパージガイドブレードをさらに有し、パージガイドブレードは、パージの実行中は、ヘッドに接触することで、ノズルから流出した後にヘッドを伝ってパージガイドブレードに到るインクを堰き止める一方、プレワイプの実行中は、ヘッドから離間するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、パージによってノズルから流出したインクが広がって装置各部を汚染するのを、パージガイドブレードによって防止できる。
【0011】
ちなみに、パージガイドブレードはキャップに固定されており、キャップは第1ワイパに下方から対向するように設けられている。したがって、プレワイプの際には、第1ワイプの移動に伴ってキャップおよびパージガイドブレードも移動する。よって、パージガイドブレードに付着したインクがヘッドを汚すといった問題が想定される。そこで、プレワイプの実行中は、パージガイドブレードはヘッドから離間する。これによって、かかる問題の発生が効果的に防止されている。
【0012】
また、パージガイドブレードは、キャップに固定され、第1ワイパは、キャップに対して昇降可能にキャップに取り付けられ、パージからプレワイプへ移行すると、キャップがヘッドから鉛直方向に離間するのに伴って、パージガイドブレードがヘッドから離間するとともに、第1ワイパがキャップに対して上昇するように、印刷装置を構成してもよい。これによって、第1ワイプによるプレワイプの実行中は、パージガイドブレードをヘッドから離間させて、パージガイドブレードに付着したインクでヘッドが汚染されるのを確実に防止できる。
【0013】
また、ヘッドを保持するヘッド保持部材をさらに備え、メンテナンスユニットは、第1ワイパより上方に突出して、清掃方向に直交する回転軸を中心に回転するローラを有し、プレワイプの実行中は、ローラをヘッド保持部材に当接させることで、第1ワイパとヘッドとの間に間隔を空けるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、第1ワイパとヘッドとの間隔をローラによって規定しつつプレワイプを適切に実行することができる。
【0014】
また、ローラは、第1ワイパに取り付けられているように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、プレワイプ時の第1ワイパとヘッドとの間隔を、ローラによって的確に規定することができる。
【0015】
また、第1ワイパは、キャップの凹部の内壁に向けて突出する突出部を有し、第1ワイパによって掻き取られたインクは、突出部によって当該内壁に案内されるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、プレワイプにおいて第1ワイパに掻き取られたインクは、第1ワイパの突出部によってキャップの凹部の内壁に案内される。したがって、プレワイプで掻き取られたインクをキャップの凹部に確実に回収して、第1インク廃棄部に廃棄することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、パージによってノズルから流出したインクをインク廃棄部に廃棄するにあたって、インクの滞留あるいは溢れを防止するとともにインク廃棄部からのインクの除去作業の頻発を回避することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る印刷装置の一例を模式的に示す正面図。
図2図1の印刷装置が備える電気的構成を示すブロック図。
図3】ヘッドユニットの構成を模式的に示す底面図。
図4】メンテナンスユニットの構成を模式的に示す斜視図。
図5】プレワイパとキャップとの構成を模式的に示す斜視図。
図6】プレワイパおよびキャップの断面とキャップに接続されたインク排出機構とを模式的に示す図。
図7】メンテナンスユニットによるキャップの実行態様を模式的に示す部分断面図。
図8】メンテナンスユニットによるパージの実行態様を模式的に示す部分断面図。
図9】メンテナンスユニットによるプレワイプの実行態様を模式的に示す部分断面図。
図10】メンテナンスユニットによる移動の実行態様を模式的に示す部分断面図。
図11】メンテナンスユニットの動作のフローを模式的に示す図。
図12】プレワイパの変形例を模式的に示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明に係る印刷装置の一例を模式的に示す正面図であり、図2図1の印刷装置が備える電気的構成を示すブロック図である。図1および以下の図では、水平方向であるX方向、X方向に直交する水平方向であるY方向および鉛直方向であるZ方向を適宜示す。印刷装置1は、ロール・トゥ・ロールで長尺帯状のウェブWを搬送しつつ、インクジェット方式でウェブWにインクを吐出することで、ウェブWに画像を印刷する。ウェブWの素材は紙あるいはフィルムであり、ウェブWは可撓性を有する。印刷装置1は、装置全体を統括的に制御する制御部10を備え、ウェブWへの画像の印刷に要する制御は制御部10によって実行される。この制御部10はCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成される。
【0019】
印刷装置1は、ウェブWを搬送する搬送部2を備える。搬送部2は、操出ローラ21と巻取ローラ22とを有し、操出ローラ21が繰り出すウェブWを巻取ローラ22により巻き取ることで、ロール・トゥ・ロールでウェブWを搬送する。この搬送部2は、操出ローラ21から繰り出されたウェブWを取り込む取り込み部23を、操出ローラ21と巻取ローラ22との間に備える。取り込み部23は、2本の駆動ローラ231と、2本のニップローラ232と、2本の駆動ローラ231の間に設けられたエッジ位置調整部234とを有する。各駆動ローラ231はウェブWを巻き掛けつつモータの駆動力によって回転することで、ウェブWを駆動する。2本のニップローラ232はそれぞれ2本の駆動ローラ231に対応して設けられ、各ニップローラ232は対応する駆動ローラ231との間にウェブWを挟む。エッジ位置調整部234は、ウェブWの幅方向であるX方向において、ウェブWの端の位置を調整する。
【0020】
また、搬送部2は、取り込み部23と巻取ローラ22との間でウェブWを支持する複数の支持ローラ24を有する。これら支持ローラ24は、インクジェット方式でインクが吐出されるウェブWを下方から支持しつつ、ウェブWをY方向へ搬送する。特に、複数の支持ローラ24は、ウェブWの搬送方向(Y方向)の下流側の支持ローラ24ほど高い位置に位置するように、傾斜して配列されている。したがって、これら支持ローラ24によって搬送されるウェブWは、Y方向へ向かうに連れて上昇するように傾斜して搬送される。
【0021】
さらに、搬送部2は、これら支持ローラ24と巻取ローラ22との間でウェブWを支持する複数の支持ローラ25と、これら支持ローラ25と巻取ローラ22との間に配置された乾燥部26を有する。乾燥部26はヒートドラム261と、ヒートドラム261から巻取ローラ22へ向かうウェブWを支持する支持ローラ262とを有する。ヒートドラム261はウェブWの搬送に応じて回転駆動され、内蔵するヒータによってウェブWを加熱することでウェブWを乾燥させる。また、搬送部2は、乾燥部26から巻取ローラ22へ向かうウェブWを支持する複数の支持ローラ27を有する。さらに、搬送部2は、これら支持ローラ27と巻取ローラ22との間に配置された駆動ローラ281とニップローラ282とを有する。駆動ローラ281は、ウェブWを巻き掛けつつモータの駆動力によって回転することで、ウェブWを駆動する。ニップローラ282は駆動ローラ281との間にウェブWを挟む。
【0022】
印刷装置1は、複数の支持ローラ24によって支持されるウェブWに上方から対向する複数(6個)のヘッドユニット3(図3)を有する。図3はヘッドユニット3の構成を模式的に示す底面図である。ヘッドユニット3は、複数(5個)のヘッド31を有する。複数のヘッド31は2行千鳥でX方向に配列されており、換言すれば、X方向に平行に配列された3個のヘッドユニット3からなるヘッド列C31と、X方向に平行に配列された2個のヘッドユニット3からなるヘッド列C31とがY方向に設けられている。各ヘッド31では、複数のノズルNがX方向に千鳥状に配列されて上方からウェブWに対向し、各ノズルNはインクジェット方式でインクをウェブWに吐出する。このヘッドユニット3は、各ヘッド31を保持するヘッド保持部材32を有する。ヘッド保持部材32は、複数のヘッド31に対応して設けられた複数のヘッド挿入孔321を有し、複数のヘッド31のそれぞれ対応するヘッド挿入孔321に挿入された状態で、ヘッド保持部材32に固定される。かかるヘッド保持部材32は、金属あるいは樹脂といった非弾性部材で構成することができる。
【0023】
図1に示すように、複数の支持ローラ24によって支持されるウェブWの傾斜に応じて、複数のヘッドユニット3それぞれの姿勢が設定される。つまり、複数のヘッドユニット3のうち、ウェブWの搬送方向の上流側のヘッドユニット3ほどZ方向に対する傾きが大きくなるように、各ヘッドユニット3が配置されている。ただし、ウェブWの搬送方向(Y方向)の最下流のヘッドユニット3は水平に配置されており、Z方向に対して傾いておらず、当該最下流のヘッドユニット3以外のヘッドユニット3が、ウェブWの搬送方向に向かって高くなるように傾く。なお、ヘッドユニット3の傾きは、ノズルNが形成されたヘッド31の底面がZ方向に対してなす角度によって評価できる。
【0024】
複数のヘッドユニット3のそれぞれは、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックを含む互いに異なる色のインクを、制御部10からの指令に応じてノズルNから吐出する。これによって、ウェブWにカラー画像を印刷することができる。ただし、ヘッドユニット3の個数やインクの色は、ここの例に限られない。
【0025】
また、印刷装置1は、複数のヘッドユニット3に対応してそれぞれ設けられた複数の昇降駆動部4を備える。各昇降駆動部4は、対応するヘッドユニット3を制御部10からの指令に応じて昇降させることで、互いに高さの異なる複数の位置のいずれかにヘッドユニット3を位置させることができる。図1では、各ヘッドユニット3はウェブWにもっとも近接する印刷高さh0に位置する。かかる昇降駆動部4は、周知の具体的構成により実現でき、例えばボールネジあるいは偏心カム等をモータで駆動することでヘッドユニット3を昇降するように構成することができる。
【0026】
さらに、印刷装置1は、ヘッドユニット3に対してメンテナンスを実行するメンテナンスユニット5(図4)と、メンテナンスユニット5を水平方向(X方向)に駆動する水平駆動部9とを備える。このメンテナンスユニット5は、水平駆動部9によって清掃方向であるX方向に移動することで、ヘッドユニット3に対してメンテナンスを行う。メンテナンスユニット5および水平駆動部9は、複数のヘッドユニット3のそれぞれに対して設けられる。水平駆動部9は、例えばメンテナンスユニット5を支持するX方向に延設されたレールと、メンテナンスユニット5をX方向に駆動するリニアモータによって構成することができる。また、リニアモータに代えて、メンテナンスユニット5に取り付けられたベルトを巻き掛けるプーリをモータで回転させる機構や、メンテナンスユニット5を直動させるボールネジを用いても構わない。続いては、メンテナンスユニット5の詳細について説明を行う。
【0027】
図4はメンテナンスユニットの構成を模式的に示す斜視図である。上述の通り、メンテナンスユニット5は、複数のヘッドユニット3のそれぞれに対して設けられ、各メンテナンスユニット5は対応するヘッドユニット3に下方から対向する。この際、ヘッドユニット3の傾きに応じて、メンテナンスユニット5も傾いて配置される。ただし、メンテナンスユニット5の傾きは僅かであるため、図4および以下の図では、メンテナンスユニット5の傾きは反映させていない。また、複数のヘッドユニット3に対応して設けられた複数のメンテナンスユニット5は共通の構成を備えるため、1つのメンテナンスユニット5について説明を行うこととする。
【0028】
メンテナンスユニット5は、X方向に長尺な直方体形状を有するベース部材51を有し、水平駆動部9(図2)はベース部材51を支持しつつX方向に駆動する。このベース部材51には、X方向に長尺な直方体形状を有して上方へ開口するキャップ挿入孔511が設けられている。メンテナンスユニット5は、対向するヘッドユニット3の複数のヘッド31に対応して、複数のキャップ挿入孔511を有する。こうして複数のキャップ挿入孔511が2行千鳥でX方向に配列されている。
【0029】
また、メンテナンスユニット5は、複数のキャップ挿入孔511のそれぞれに嵌め込まれたキャップ6を有する。このようにメンテナンスユニット5は、対向するヘッドユニット3の複数のヘッド31に対応して複数のキャップ6を有し、各キャップ6は対応するヘッド31に下方から対向して当該ヘッド31から落下したインクを受ける。複数のキャップ6は2行千鳥でX方向に配列されており、換言すれば、X方向に平行に配列された3個のキャップ6からなるキャップ列C6と、X方向に平行に配列された2個のキャップ6からなるキャップ列C6とがY方向に設けられている。
【0030】
さらに、メンテナンスユニット5は、プレワイパ7を有する。特にキャップ列C6に属する複数のキャップ6のうち、清掃方向(X方向)において最上流のキャップ6に対して、プレワイパ7が設けられる。一方、最上流のキャップ6以外のキャップ6に対してはプレワイパ7が設けられていない。各プレワイパ7は、後述するように、ヘッド31からインクを掻き取る。
【0031】
メンテナンスユニット5は、ベース部材51の上面に配置されたシール部材57を有する。シール部材57は、Z方向からの平面視において直方体形状を有する枠体であり、複数のキャップ6のそれぞれに対して設けられている。このシール部材57は、ベース部材51の上面から所定の高さ突出し、平面視において対応するキャップ6を外側から囲む。また、キャップ6に対して設けられたプレワイパ7も同様に、平面視においてシール部材57によって外側から囲まれる。このシール部材57は、ゴムあるいはシリコン等の弾性部材で構成され、外力に応じて弾性変形する。なお、同様のシール部材をベース部材51の平面縁部に沿って配設してもよい。
【0032】
また、メンテナンスユニット5は、ゴムあるいはシリコン等の弾性変形する弾性部材で構成された本ワイパ59を有する。本ワイパ59は、Y方向に平行に延設された平板形状を有するブレードであり、ベース部材51の上面から立設されている。本ワイパ59は、複数(2列)のキャップ列C6のそれぞれに対応して設けられており、各本ワイパ59は、対応するキャップ列C6のX方向(清掃方向)の上流側に配置されている。こうしてベース部材51のX方向の上流端では、複数(2本)の本ワイパ59がY方向に配列される。各本ワイパ59は、後述するように、ヘッド31からインクを掻き取る。
【0033】
さらに、メンテナンスユニット5は、複数の本ワイパ59のそれぞれに対して設けられたタンク取付部512を有する。このタンク取付部512は、ベース部材51に形成された上方に開口する孔であり、対応する本ワイパ59の下方に位置し、各タンク取付部512には廃液容器81が挿入される。こうして、複数の本ワイパ59のそれぞれの下方に廃液容器81が設けられる。各廃液容器81は、上方に開口する箱体のタンクであり、対応する本ワイパ59に下方から対向する。かかる廃液容器81は、本ワイパ59により掻き取られて本ワイパ59から落下してきたインクを貯留する。なお、廃液容器81は箱体である必要はなく、インクを受けるパンでも構わない。
【0034】
図5はプレワイパとキャップとの構成を模式的に示す斜視図であり、図6はプレワイパおよびキャップの断面とキャップに接続されたインク排出機構とを模式的に示す図である。キャップ6は、X方向に長尺な直方体形状を有するキャップ本体61を有する。キャップ本体61は樹脂製であり、上記の弾性部材と比較して弾性変形しにくい性質を有する。キャップ本体61には上方に開口する凹部62が設けられている。平面視において凹部62は直方体形状を有し、凹部62を囲むキャップ本体61の上面61Uは平面である。キャップ本体61は、凹部62をY方向から規定する一対の側壁63と、凹部62をX方向から規定する一対の側壁64とを有し、キャップ6の各側壁63には挿入孔631がZ方向から設けられている。この挿入孔631は、Z方向に延設された円筒形状を有し、Z方向の上方に開口する。また、各側壁63には、挿入孔631の上端部と凹部62とを繋ぐ切り欠き632と、挿入孔631から凹部62の逆側へ設けられた切り欠き633とが形成されている。
【0035】
凹部62の底面621には排出口622がZ方向に貫通しており、凹部62の底面621は、Y方向において側壁63から底面621に向けて下降する斜面623により構成されている。したがって、底面621に落下したインクは、斜面623を下降して排出口622に到達する。また、キャップ6は、キャップ本体61の上面61Uの四隅において、当該上面61Uから上方に突出する位置決め突起65を有する。
【0036】
プレワイパ7は、Y方向に平行に延設されたワイパブレード71を有する。ワイパブレード71は、ゴムやシリコン等の弾性部材で構成してもよいし、樹脂や金属等で構成してもよい。ワイパブレード71は、キャップ本体61の凹部62をY方向に跨ぐように配置され、ワイパブレード71の上面(上端)はY方向に平行である。ワイパブレード71は、凹部62のX方向の上流側の端に偏って設けられる。このワイパブレード71は、X方向において、凹部62の上流側の端(辺)より所定距離だけ下流側に離れた位置に配置され、凹部62に上方から対向する。これによって、ワイパブレード71で掻き取ったインクを凹部62により確実に受けることができる。
【0037】
さらに、プレワイパ7は、Y方向の両側からワイパブレード71を支持する2本の支柱72を有する。支柱72は、Z方向に延設された円筒形状を有し、2本の支柱72はそれぞれ、キャップ本体61に設けられた2個の挿入孔631に挿入される。かかる支柱72は、挿入孔631に対してZ方向に昇降可能である。また、キャップ6は、支柱72の底面と挿入孔631の底面との間に設けられた圧縮バネ66(付勢部材)を有し、支柱72は、圧縮バネ66によってキャップ本体61に対して上方へ付勢されている。
【0038】
このプレワイパ7には、Y方向に平行な回転軸Crを中心に回転可能なローラRが取り付けられている。ローラRは、支柱72の外側(Y方向においてワイパブレード71の逆側)に回転可能に取り付けられ、ワイパブレード71の上面より上方へ所定量だけ突出する。かかるローラRは、2本の支柱72のそれぞれに取り付けられており、各支柱72の上端より上方に突出する。すなわち、ローラRはプレワイパ7(ワイパブレード71および支柱72)より上方へ突出する。かかるローラRは、例えばミニチュアベアリング等の回転部材により構成される。
【0039】
また、メンテナンスユニット5は、X方向に平行に延設されたパージガイドブレード68を有する。パージガイドブレード68はゴムあるいはシリコン等の弾性部材であり、キャップ6の凹部62の内壁(換言すれば、凹部62を規定する側壁63の壁面)に固定されている。パージガイドブレード68は、X方向においてワイパブレード71より下流側に設けられており、Z方向からの平面視において、ワイパブレード71とパージガイドブレード68とは重複しない。このパージガイドブレード68は、ヘッド31の底面に付着するインクがヘッド31の傾きによって当該底面を伝って広がるのを堰き止めるために設けられ、ヘッド31のY方向の両端のうちの低い方の端に対して設けられる。つまり、ヘッド31のY方向の両端に対応して設けられた2個の側壁63のうち、低い方の側壁63の内壁面に設けられ、当該側壁63の上面(換言すれば、上面61U)より僅かに上方へ突出する。
【0040】
図5に示す状態では、各支柱72は圧縮バネ66の付勢力(弾性力)によって挿入孔631から上方へ突出し、ワイパブレード71は、キャップ本体61の上面61Uや位置決め突起65の上端より上方に位置する。一方、圧縮バネ66の付勢力に抗してプレワイパ7を押し下げると、各支柱72は挿入孔631に収納される。また、各ローラRは切り欠き633内に収納され、ワイパブレード71の両端のそれぞれは切り欠き632に収納される。その結果、プレワイパ7およびローラRは、キャップ本体61の上面61Uと同じ高さ、あるいは当該上面61Uより低い高さに位置して、当該上面61Uから突出しない。
【0041】
また、図6に示すように、印刷装置1は、キャップ6の凹部62からインクを排出するインク排出機構83を備える。インク排出機構83は、廃液容器84と、ポンプ85と、廃液容器84とポンプ85とを接続する配管86と、排出口622とポンプ85とを接続する可撓性の配管87と、配管87に介装された電磁弁88とを有する。したがって、排出口622に到達したインクは、ポンプ85によって廃液容器84に廃棄される。廃液容器84、ポンプ85および配管86は、メンテナンスユニット5の複数(5個)のキャップ6に共通して設けられ、複数のキャップ6それぞれに設けられた配管87が、ポンプ85に接続される。ただし、複数のキャップ6のそれぞれに、インク排出機構83を設けるように構成しても構わない。
【0042】
続いては、メンテナンスユニット5によるヘッドユニット3のメンテナンスの実行態様について説明する。このメンテナンスは、制御部10の指令に応じて、昇降駆動部4がヘッドユニット3の位置を制御するとともに水平駆動部9がメンテナンスユニット5の位置を制御することで実行される。複数のメンテナンスユニット5によるメンテナンスの実行態様は共通するため、ここでは、1つのメンテナンスユニット5について説明を行う。
【0043】
図7はメンテナンスユニットによるキャップの実行態様を模式的に示す部分断面図であり、図8はメンテナンスユニットによるパージの実行態様を模式的に示す部分断面図であり、図9はメンテナンスユニットによるプレワイプの実行態様を模式的に示す部分断面図であり、図10はメンテナンスユニットによる移動の実行態様を模式的に示す部分断面図である。
【0044】
上述の通り、昇降駆動部4は、ヘッドユニット3を昇降させる。これによって、ヘッドユニット3はその底面高さを基準に、印刷高さh0(図1)、印刷高さh0より高いキャップ高さh1(図7)、キャップ高さh1より高いパージ高さh2(図8)、パージ高さh2より高いプレワイプ高さh3(図9)およびプレワイプ高さh3より高い移動高さh4(図10)のいずれかに位置することができる。なお、図7図10に示すように、ヘッド31の底面31Lおよびヘッド保持部材32の底面32Lはいずれも平面であって面一に並ぶ。また、ヘッドユニット3の高さh1~h4は、当該底面31L、32L(換言すればヘッドユニット3の底面)の高さで示されている。
【0045】
ヘッドユニット3が高さh1~h4のいずれかに位置する場合は、ヘッドユニット3とウェブWとの間にメンテナンスユニット5が位置することができる。一方、ヘッドユニット3が印刷高さh0に位置する場合は、ヘッドユニット3とウェブWとの間にメンテナンスユニット5が位置できない。そのため、水平駆動部9がメンテナンスユニット5をウェブWよりX方向へ退避させる。
【0046】
これらの図に示すように、ヘッド保持部材32の底面32Lには、Z方向に延設されて下方に開口する位置決め孔322が設けられている。この位置決め孔322には、キャップ6の位置決め突起65が下方から挿脱可能であり、四隅に設けられた4個の位置決め突起65に対応して4個の位置決め孔322が設けられている。この位置決め孔322は、位置決め突起65よりも長い。また、キャップ6は、ベース部材51のキャップ挿入孔511に対してZ方向に昇降可能である。キャップ6の底面とキャップ挿入孔511の底面との間には、圧縮バネ513(付勢部材)が設けられており、キャップ6は圧縮バネ513によってベース部材51に対して上方へ付勢されている。
【0047】
図7に示すキャップ時は、メンテナンスユニット5の複数のキャップ6は、ヘッドユニット3の複数のヘッド31にそれぞれ下方から対向する。ヘッドユニット3はキャップ高さh1に位置して、ヘッドユニット3のヘッド保持部材32の底面32Lがシール部材57に上方から接触する。シール部材57は、接触するヘッド保持部材32の底面32Lの形状に応じて弾性変形して、当該底面32Lに密着する。これによって、ヘッド保持部材32の底面32Lとシール部材57との間の隙間は消失し、底面視においてシール部材57の内側に存在するヘッド31の底面31LおよびノズルNはシール部材57によって封止される。こうして、ヘッドユニット3に密着するシール部材57は、シール部材57の内側と外側との間の空気の流れを遮断して、シール部材57の内側のノズルNをシール部材57の外側の雰囲気から隔絶する。すなわち、底面視においてヘッド31はシール部材57の内側に位置して、ヘッドユニット3に密着するシール部材57によって外気から遮断される。
【0048】
図7に示すキャップ時において、位置決め突起65の位置と位置決め孔322の位置とはY方向に僅かにずれており、位置決め突起65は位置決め孔322に嵌らない。このような位置決め突起65と位置決め孔322との位置関係は、水平駆動部9によってキャップ6の位置を調整することで実現できる。その結果、位置決め突起65の上端は、キャップ高さh1のヘッド保持部材32の底面に、圧縮バネ513の付勢力によって下方から押圧される。したがって、キャップ本体61は、ヘッド保持部材32の底面32Lよりも、位置決め突起65の長さ分だけ下方に位置し、パージガイドブレード68はヘッド31の底面31Lから下方へ離間する。
【0049】
また、プレワイパ7に取り付けられたローラRは、キャップ高さh1のヘッド保持部材32の底面32Lに、圧縮バネ66の付勢力によって下方から押圧される。その結果、ヘッド31とワイパブレード71との間には、ローラRとワイパブレード71との高さの差に相当する間隔が空いている。印刷装置1が印刷を停止している待機時等において、制御部10はヘッドユニット3およびメンテナンスユニット5に図7に示す動作を実行させて、ヘッド31のノズルNの保湿を行う。
【0050】
図8に示すパージ時は、メンテナンスユニット5の複数のキャップ6は、ヘッドユニット3の複数のヘッド31にそれぞれ下方から対向する。ヘッドユニット3はパージ高さh2に位置して、シール部材57から上方へ離間する。位置決め突起65の位置と位置決め孔322の位置とは一致しており、位置決め突起65は位置決め孔322に下方から嵌る。その結果、図7のキャップ時と比較してキャップ6のキャップ本体61はヘッドユニット3に近接し、キャップ6のキャップ本体61の上面61Uがヘッド保持部材32の底面32Lに接触する。キャップ6のキャップ本体61は樹脂製であるため、シール部材57のように弾性変形しない。したがって、キャップ本体61の上面61Uがヘッド保持部材32の底面32Lに当接した状態において、キャップ本体61の上面61Uとヘッド保持部材32の底面32Lとの間には微小な隙間が存在する。つまり、ヘッド保持部材32に当接するキャップ6は、この隙間を介したキャップ6の内側と外側との空気の流れを許容する。
【0051】
さらに、キャップ6のキャップ本体61に取り付けられたパージガイドブレード68は、ヘッド31の底面31Lに当接する。特にパージガイドブレード68はこの当接に伴って弾性変形し、パージガイドブレード68の上端は、ヘッド31の底面31Lとヘッド保持部材32の底面32Lとの間の僅かな隙間に入り込む。なお、パージガイドブレード68の上端は、ヘッド31の底面31Lの外周縁部に接触してもよい。
【0052】
また、プレワイパ7に取り付けられたローラRは、パージ高さh2のヘッド保持部材32の底面32Lに、圧縮バネ66の付勢力によって下方から押圧される。その結果、ヘッド31とワイパブレード71との間には、ローラRとワイパブレード71との高さの差に相当する間隔が空いている。
【0053】
ヘッド31のノズルNの目詰まりを防止するためにパージを実行する際には、制御部10は、ヘッドユニット3およびメンテナンスユニット5に図8に示す動作を実行させる。パージは、ヘッド31内に貯留されるインクに圧力を加えてノズルNからインクを所定時間流出させることで実行される。一方、ヘッド保持部材32に当接するキャップ6の凹部62は、下方からヘッド31に対向して、ヘッド31のノズルNから流出するインクを受ける。こうして凹部62に受けられたインクは、廃液容器84に回収される。
【0054】
図9に示すプレワイプ時は、ヘッドユニット3はプレワイプ高さh3に位置する。プレワイプ高さh3は、圧縮バネ513の付勢力によってキャップ6が上昇できる最高点よりも高く、位置決め突起65は位置決め孔322から下方へ抜け出し、ヘッドユニット3とキャップ6とはZ方向に離間する。これに伴って、パージガイドブレード68もヘッドユニット3から下方に離間する。
【0055】
また、プレワイパ7に取り付けられたローラRは、プレワイプ高さh3のヘッド保持部材32の底面32Lに、圧縮バネ66の付勢力によって下方から押圧される。その結果、ヘッド31とワイパブレード71との間には、ローラRとワイパブレード71との高さの差に相当する間隔が空いている。後述するプレワイプの実行時には、制御部10は、ヘッドユニット3およびメンテナンスユニット5に図9に示す動作を実行させて、プレワイパ7がヘッド31から掻き取ったインクをキャップ6の凹部62によって受ける。
【0056】
図10に示す移動時は、ヘッドユニット3は移動高さh4に位置する。移動高さh4は、プレワイパ7に取り付けられたローラRが圧縮バネ66の付勢力によって上昇できる最高点よりも高く、ヘッドユニット3は、ローラRおよびプレワイパ7からZ方向に離間する。もちろん、ヘッドユニット3はキャップ6やパージガイドブレード68からもZ方向に離間する。例えばプレワイプの実行後にヘッドユニット3とウェブWとの間にメンテナンスユニット5を移動させる際に、制御部10は、ヘッドユニット3およびメンテナンスユニット5に図10に示す動作を実行させる。これによって、ヘッドユニット3とメンテナンスユニット5との干渉を回避することができる。
【0057】
図11はメンテナンスユニット5の動作のフローを模式的に示す図である。ヘッド31がパージを実行する際は、制御部10は、メンテナンスユニット5の複数のキャップ6のそれぞれを複数のヘッド31に対向させつつ、ヘッドユニット3をパージ高さh2に位置させる(図8)。この際、プレワイパ7のワイパブレード71および本ワイパ59は、各ヘッドユニット3の複数のヘッド31よりもX方向(清掃方向)の上流側で停止している。このパージによって、ヘッド31の底面31Lには多量のインクIが付着する(図11の「パージ後」)。
【0058】
パージが完了すると、制御部10は、ヘッドユニット3をプレワイプ高さh3に位置させつつ(図9)、メンテナンスユニット5にX方向への移動を開始させることで、プレワイプを実行する。これによって、ヘッド31の底面31Lに対してZ方向に間隔Dを空けたワイパブレード71がヘッド31の底面31Lの下方を通過して、ヘッド31の底面31Lに付着したインクIを掻き取る(図11の「プレワイプ時」)。上述の通り、当該間隔DはローラRによって規定され、具体的にはヘッド31の底面31Lに付着したインク滴の直径あるいはインク液膜の膜厚程度の約0.5mmに例えば設定される。こうして、ワイパブレード71によって掻き取られたインクIは、キャップ6の凹部62に落下してから、廃液容器84に回収される。
【0059】
この際、メンテナンスユニット5が備える2個のワイパブレード71は、それぞれのX方向の下流側で並ぶヘッド列C31の各ヘッド31の下方を通過しつつ、当該各ヘッド31からインクを掻き取る。つまり、同一のヘッド列C31に属する複数のヘッド31に対しては、共通のワイパブレード71がインクの掻き取りを実行する。このプレワイプの実行によって、ヘッド31の底面31Lに付着したインクIの液膜の下端部分が除去される(図11の「プレワイプ後」。
【0060】
また、プレワイプの完了後も、メンテナンスユニット5のX方向の移動は継続される。その結果、本ワイパ59がヘッド31に到達し、本ワイパ59の上端がヘッド31の底面31Lに摺動される(図11の「本ワイプ時」)。つまり、本ワイパ59は、ヘッド31の底面31Lに下方から接触しつつ、ヘッド31の底面31Lに対してX方向に移動することで、ヘッド31の底面31Lに付着するインクIを掻き取る。この際、ワイパブレード71と同様に、同一のヘッド列C31に属する複数のヘッド31に対しては、共通の本ワイパ59がインクIの掻き取りを実行する。こうして、本ワイパ59によって掻き取られたインクIは、本ワイパ59から落下して、本ワイパ59の下方に設けられた廃液容器81に回収される。
【0061】
以上に示す実施形態では、プレワイプと本ワイプとが実行される(図11)。プレワイプでは、パージ後のヘッド31に対して間隔Dを空けて下方から対向するプレワイパ7(第1ワイパ)のワイパブレード71をX方向(清掃方向)に移動させることで、ヘッド31からインクIが掻き取られる。また、本ワイプでは、プレワイプの実行後のヘッド31に対して下方から接触する本ワイパ59(第2ワイパ)をX方向に移動させることで、ヘッド31からインクIが掻き取られる。特にこの実施形態では、こうして掻き取られたインクIの廃棄先として、廃液容器84(第1インク廃棄部)と廃液容器81(第2インク廃棄部)とが具備されている。そして、プレワイプでプレワイパ7により掻き取られたインクIは廃液容器84に回収される一方、本ワイプで本ワイパ59により掻き取られたインクIは廃液容器81に回収される。そのため、廃液容器84には、プレワイプで掻き取られたインクIのみが流入し、本ワイプで掻き取られたインクIは流入しない。したがって、廃液容器84は、プレワイプで掻き取られたインクIのみを処理すれば良い。同様に、廃液容器81は、本ワイプで掻き取られたインクIのみを処理すれば良い。その結果、パージによってノズルNから流出したインクIを廃液容器81、84に廃棄するにあたって、インクIの滞留あるいは溢れを防止するとともに廃液容器81、84からのインクIの除去作業の頻発を回避することが可能となっている。
【0062】
なお、廃液容器81、84からのインクIの除去作業は、ポンプ等によってインクIを吸い取ることで実行してもよいし、廃液容器81、84を取り外してインクIを回収することで実行してもよい。
【0063】
また、メンテナンスユニット5は、パージを実行するヘッド31にキャップ6の凹部62を下方から対向させることで、パージによってノズルNから流出するインクIを凹部62によって受け止める。また、メンテナンスユニット5は、キャップ6に固定されたパージガイドブレード68を有し、パージガイドブレード68は、パージの実行中は、ヘッド31に接触することで、ノズルNから流出した後にヘッド31を伝ってパージガイドブレード68に到るインクIを堰き止める。かかる構成では、パージによってノズルNから流出したインクIが広がって装置各部を汚染するのを、パージガイドブレード68によって防止できる。
【0064】
ちなみに、パージガイドブレード68はキャップ6に固定されており、キャップ6はプレワイパ7に下方から対向するように設けられている。したがって、プレワイプの際には、プレワイパ7の移動に伴ってキャップ6およびパージガイドブレード68も移動する。よって、パージガイドブレード68に付着したインクIがヘッド31を汚すといった問題が想定される。これに対して、プレワイプの実行中は、パージガイドブレード68はヘッド31から離間する。これによって、かかる問題の発生が効果的に防止されている。
【0065】
また、パージガイドブレード68はキャップ6に固定され、プレワイパ7はキャップ6に対して昇降可能にキャップ6に取り付けられる。そして、ヘッドユニット3およびメンテナンスユニット5の動作がパージからプレワイプへ移行すると、キャップ6がヘッド31からZ方向に離間するのに伴って、パージガイドブレード68がヘッド31から離間するとともに、プレワイパ7がキャップ6に対して上昇する(図8図9)。これによって、プレワイパ7によるプレワイプの実行中は、パージガイドブレード68をヘッド31から離間させて、パージガイドブレード68に付着したインクIでヘッド31が汚染されるのを確実に防止できる。
【0066】
また、ヘッドユニット3は、ヘッド31を保持するヘッド保持部材32を有する。これに対して、メンテナンスユニット5は、プレワイパ7より上方に突出して、X方向(清掃方向)に直交する回転軸Crを中心に回転するローラRを有し、プレワイプの実行中は、ローラRをヘッド保持部材32に当接させることで、プレワイパ7とヘッド31との間に間隔Dを空ける。かかる構成では、プレワイパ7とヘッド31との間隔DをローラRによって規定しつつプレワイプを適切に実行することができる。
【0067】
また、ローラRは、プレワイパ7に取り付けられている。かかる構成では、プレワイプ時のプレワイパ7とヘッド31との間隔を、ローラRによって的確に規定することができる。
【0068】
以上に説明した実施形態では、印刷装置1が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、ヘッド31が本発明の「ヘッド」の一例に相当し、ヘッド保持部材32が本発明の「ヘッド保持部材」の一例に相当し、メンテナンスユニット5が本発明の「メンテナンスユニット」の一例に相当し、ベース部材51が本発明の「ベース部材」の一例に相当し、本ワイパ59が本発明の「第2ワイパ」の一例に相当し、キャップ6が本発明の「キャップ」の一例に相当し、凹部62が本発明の「凹部」の一例に相当し、パージガイドブレード68が本発明の「パージガイドブレード」の一例に相当し、プレワイパ7が本発明の「第1ワイパ」の一例に相当し、廃液容器81が本発明の「第2インク廃棄部」の一例に相当し、廃液容器84が本発明の「第1インク廃棄部」の一例に相当し、インクIが本発明の「インク」の一例に相当し、ノズルNが本発明の「ノズル」の一例に相当し、ローラRが本発明の「ローラ」の一例に相当し、X方向が本発明の「清掃方向」の一例に相当する。
【0069】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、ローラRを取り付ける位置は、プレワイパ7に限られない。つまり、パージガイドブレード68を有しない場合には、パージガイドブレード68に対してプレワイパ7を昇降可能に構成する必要はない。そこで、プレワイパ7が取り付けられたキャップ6に対して、ローラRを回転可能に取り付けて、このローラRによってプレワイパ7とヘッド31との間の間隔Dを規定するように構成してもよい。
【0070】
また、プレワイパ7の構成に変形を加えることもできる。図12はプレワイパの変形例を模式的に示す部分断面図である。この変形例では、ワイパブレード71の下面712(下端)は、Y方向の一方側(矢印側)へ向かうにつれて下降し、Y方向において下面712の一方側の端は、下面712の他方側(一方側の逆側)の端よりも低い。より具体的には、ワイパブレード71の下面712は、Y方向において、ワイパブレード71の他方側の端から一方側へ向けて下降する緩斜部713と、緩斜部713からワイパブレード71の一方側の端まで下降する急斜部714とを有する。そして、緩斜部713が下降する角度に比べて急斜部714が下降する角度は大きい(すなわち、急である)。この急斜部714は、凹部62のY方向の一方側の内壁に向けて下降する。そのため、ワイパブレード71のうち、急斜部714を下端に有する突出部715は、緩斜部713を下端に有する部分から、凹部62のY方向の一方側の内壁に突出する。この突出部715の先端は当該内壁に接触する。ただし、突出部715の先端は内壁に僅かに離れていても構わない。
【0071】
このようにプレワイパ7は、キャップ6の凹部62の内壁に向けて突出する突出部715を有し、プレワイパ7によって掻き取られたインクIは、突出部715によって当該内壁に案内される。かかる構成では、プレワイプにおいてプレワイパ7に掻き取られたインクIは、プレワイパ7の突出部715によってキャップ6の凹部62の内壁に案内される。したがって、プレワイプで掻き取られたインクIをキャップ6の凹部62に確実に回収して、廃液容器84に廃棄することができる。
【0072】
また、印刷装置1に設けるヘッドユニット3の個数や、ヘッドユニット3に設けるヘッド31の個数を適宜変更してもよい。これに応じて、メンテナンスユニット5の個数や、メンテナンスユニット5に設けるキャップ6の個数を適宜変更してもよい。
【0073】
また、平面視におけるキャップ6の形状は、直方体に限られず、多角形、楕円形あるいは円形でも構わない。シール部材57の形状も同様である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、インク吐出用のヘッドに対してメンテナンスを実行する技術の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1…印刷装置
31…ヘッド
32…ヘッド保持部材
5…メンテナンスユニット
51…ベース部材
59…本ワイパ(第2ワイパ)
6…キャップ
62…凹部
68…パージガイドブレード
7…プレワイパ(第1ワイパ)
81…廃液容器(第2インク廃棄部)
84…廃液容器(第1インク廃棄部)
I…インク
N…ノズル
R…ローラ
X…X方向(清掃方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12