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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】RTGクレーン、及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/00 20060101AFI20240628BHJP
   B66C 13/48 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B66C13/00 D
B66C13/48 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020166995
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2022059331
(43)【公開日】2022-04-13
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】宮田 紀明
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-147638(JP,A)
【文献】特開2007-153570(JP,A)
【文献】中国実用新案第208279212(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00
B66C 13/22
B66C 13/48
B66C 13/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状の走行路を走行するRTGクレーンであって、
前記走行路を走行方向に走行する走行部と、
前記RTGクレーンに取り付けられ、前記走行方向において、前記走行部の進行側に存在する物体を検出する検出部と、
前記検出部の検出範囲を補正する補正部と、を備え、
前記補正部は、前記走行路に対する前記走行方向のずれ角、及び前記走行路が延びる方向と垂直な方向における前記走行路に対する前記走行部のずれ量の少なくとも一方に基づいて、前記検出部周りに前記検出範囲を旋回させて前記検出部の前記検出範囲を補正する、RTGクレーン。
【請求項2】
前記補正部は、少なくとも前記ずれ角に基づく補正角度を設定する、請求項1に記載のRTGクレーン。
【請求項3】
前記補正部は、少なくとも前記ずれ量に基づく補正量を設定し、前記検出範囲の端部が前記走行部側に前記補正量の分だけ近づくように、前記検出部周りに前記検出範囲を旋回させる、請求項1に記載のRTGクレーン。
【請求項4】
直線状の走行路を走行するRTGクレーンの制御装置であって、
走行方向において、前記RTGクレーンの走行部の進行側に存在する物体を検出する検出部の検出結果を取得する取得部と、
前記検出部の検出範囲を補正する補正部と、を備え、
前記補正部は、前記走行路に対する前記走行方向のずれ角、及び前記走行路が延びる方向と垂直な方向における前記走行路に対する前記走行部のずれ量の少なくとも一方に基づいて、前記検出部周りに前記検出範囲を旋回させて前記検出部の前記検出範囲を補正する、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、RTGクレーン、及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンテナヤードにおけるコンテナの搬送作業の一部を自動化することが記載されている。コンテナを搬送するクレーンは、直線状の走行路を走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-123367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述のようなクレーンにおいては、走行路内に物体が存在する場合に、当該物体とクレーンの走行部とが接触することを抑制するために、走行路に存在する物体を検出するセンサが設けられる場合がある。ここで、RTGクレーンの場合は、走行路に対する走行方向や、走行路に対する走行部の位置などがずれる場合がある。このような場合、センサの検出範囲もずれることによって、走行路内の物体を検出できないという問題や、走行路外の物体を誤検出してしまうなどの問題が生じる。
【0005】
本開示は、走行路内の物体の検出精度を向上できるRTGクレーン、及び制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係るRTGクレーンは、直線状の走行路を走行するRTGクレーンであって、走行路を走行方向に走行する走行部と、RTGクレーンに取り付けられ、走行方向において、走行部の進行側に存在する物体を検出する検出部と、検出部の検出範囲を補正する補正部と、を備え、補正部は、走行路に対する走行方向のずれ角、及び走行路が延びる方向と垂直な方向における走行路に対する走行部のずれ量の少なくとも一方に基づいて、検出部の検出範囲を補正する。
【0007】
RTGクレーンは、RTGクレーンに取り付けられ、走行方向において、走行部の進行側に存在する物体を検出する検出部を備える。従って、検出部が物体を検出することにより、走行部が当該物体と接触することを回避するために停止等の措置をとることができる。ここで、RTGクレーンは、検出部の検出範囲を補正する補正部を備える。補正部は、走行路に対する走行方向のずれ角、及び走行路が延びる方向と垂直な方向における走行路に対する走行部のずれ量の少なくとも一方に基づいて、検出部の検出範囲を補正する。従って、走行路に対する走行方向のずれ角、及び走行路が延びる方向と垂直な方向における走行路に対する走行部のずれ量が発生している場合であっても、補正部は、それらのずれ角及びずれ量に応じて、検出部の検出範囲を補正することができる。これにより、補正部は、走行路に対して適切な検出範囲を設定することができるため、走行路内の物体の検出精度を向上できる。
【0008】
補正部は、少なくともずれ角に基づく補正角度を設定し、検出部周りに補正角度の分だけ検出範囲を旋回させる。これにより、補正部は、ずれ角によって生じた走行路に対する検出範囲のずれを低減することができる。
【0009】
補正部は、少なくともずれ量に基づく補正量を設定し、検出範囲の端部が走行部側に補正量の分だけ近づくように、検出部周りに検出範囲を旋回させる。これにより、補正部は、ずれ量によって生じた走行路に対する検出範囲のずれを低減することができる。
【0010】
本開示の一側面に係る制御装置は、直線状の走行路を走行するRTGクレーンの制御装置であって、走行方向において、RTGクレーンの走行部の進行側に存在する物体を検出する検出部の検出結果を取得する取得部と、検出部の検出範囲を補正する補正部と、を備え、補正部は、走行路に対する走行方向のずれ角、及び走行路が延びる方向と垂直な方向における走行路に対する走行部のずれ量の少なくとも一方に基づいて、検出部の検出範囲を補正する。
【0011】
この制御装置によれば、上述のRTGクレーンと同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、走行路内の物体の検出精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るRTGクレーン、及び制御装置が適用される例示的なコンテナターミナルを示す平面図である。
図2】搬送台車の走行方向に沿って並ぶ荷役対象コンテナ群及び隣接コンテナ群の例を示す斜視図である。
図3】実施形態に係るRTGクレーンを示す斜視図である。
図4】RTGクレーンと当該RTGクレーンの走行路との関係について説明するための模式的な平面図である。
図5】検出部の検出範囲を上方から見た図である。
図6】本実施形態に係る制御装置を備えるクレーン制御システムの構成及び機能を示すブロック図である。
図7】ずれ量に基づく補正部の補正内容を説明するための概念図である。
図8】ずれ角に基づく補正部の補正内容を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、図面を参照しながら本発明を実施する形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、説明の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0015】
図1は、本発明が適用される例示的なコンテナターミナル1を示す平面図である。図1に示されるように、コンテナターミナル1には、コンテナCが配置されるコンテナヤード2と、接岸したコンテナ船に対してコンテナCの移載を行う複数のガントリクレーン3と、コンテナヤード2に配置されてコンテナCの荷役を行う複数のRTGクレーン10と、複数のRTGクレーン10の遠隔操作が可能な遠隔操作室5とが設けられる。
【0016】
図2は、コンテナヤード2のコンテナC及び例示的な搬送台車20を示す斜視図である。搬送台車20は、例えばトラック、貨車、トレーラ又はAGV(Automated Guide Vehicle:自動搬送台車)等である。図1及び図2に示されるように、コンテナヤード2には、複数のコンテナが蔵置される蔵置エリアと、搬送台車20の走行路(トラックレーン)が敷設されている。RTGクレーン10は、所定の位置に停止した搬送台車20からコンテナCを取得してコンテナCをコンテナヤード2の所定の番地に載置する。また、RTGクレーン10は、コンテナヤード2に配置されているコンテナCを取得してコンテナCを搬送台車20に移載し、搬送台車20はコンテナCを搬出する。
【0017】
一例として、コンテナCは、ISO規格のコンテナである。コンテナCは、長尺の直方体状を呈し、例えば、コンテナCの長手方向の長さは20フィート以上且つ45フィート以下である。コンテナCの高さは、例えば、8.5フィート以上且つ9.5フィート以下である。コンテナCは、コンテナヤード2に一段又は複数段積み上げられる。コンテナCが配置されている段数は、ティアとよばれることがある。
【0018】
図1に示すように、コンテナヤード2は、コンテナCが配置される複数のレーンLを備え、複数のRTGクレーン10が配置される。RTGクレーン10は、例えば、レーンLごとにRTGクレーン10が配置されている。レーンLに配置されるRTGクレーン10の台数は、1台であってもよいし、複数台であってもよい。
【0019】
図2に示すように、コンテナCは、コンテナヤード2に一段又は複数段積み上げられて複数のロウRを形成している。各ロウRは、当該ロウRを構成するコンテナC(すなわち、当該ロウRに載置されるコンテナC)の長手方向が他のロウRを構成するコンテナCの長手方向に対して平行となるように、整列されている。
【0020】
コンテナヤード2に整列配置されたコンテナCの長手方向をX方向、コンテナCの短手方向をY方向、コンテナCの高さ方向をZ方向、とすると、コンテナヤード2はXY平面上に延在しており、コンテナCは、例えば、当該XY平面上のいずれかの位置においてZ方向に積み上げられる。X方向はレーンLにおけるRTGクレーン10の走行方向に一致する。Y方向は、レーンLにおけるRTGクレーン10の横行方向に一致する。
【0021】
コンテナCは、Y方向に沿って並ぶと共にZ方向に沿って積み上げられる複数のコンテナ群であるベイBを構成する。コンテナヤード2には、X方向に沿って並ぶ複数のベイBが設けられる。ベイBは、例えば、コンテナCの荷役対象とされる荷役対象ベイである荷役対象コンテナ群B1、及び荷役対象コンテナ群B1のX方向の両側のそれぞれに位置する隣接コンテナ群B2を含んでいる。
【0022】
コンテナヤード2においては、コンテナCを積み付ける位置が三次元空間に仮想的に設定されており、このコンテナCの仮想的な積み付け位置は番地(X,Y,Z)として定義される。すなわち、コンテナヤード2は、コンテナCを載置可能な領域として予め定められた複数の番地(X,Y,Z)を有する。番地(X,Y,Z)のうち、「X」はベイ番号、「Y」はロウ番号、「Z」はティア番号を示している。
【0023】
図3は、コンテナヤード2に配置された本実施形態に係るRTGクレーン10の一例を示す斜視図である。図3に示されるように、RTGクレーン10は、コンテナCを荷役するコンテナ取り扱いクレーンである。RTGクレーン10は、タイヤ式ガントリークレーン(RTG;Rubber Tired Gantry Crane)と称されるタイプのクレーンである。RTGクレーン10は、例えば、コンテナターミナル1においてコンテナヤード2に配置されたコンテナCの荷役を自動で行う。
【0024】
RTGクレーン10は、例えば、一対の脚部11と、一対の脚部11の上端同士を繋ぐクレーンガーダ12と、クレーンガーダ12上を横行可能なトロリ13と、コンテナCを荷役するスプレッダ14と、車輪23を有する一対の走行部15A,15Bとを備える。一対の脚部11及びクレーンガーダ12は、門形を呈する。RTGクレーン10は、例えば、門形を呈する一対の脚部11及びクレーンガーダ12の組を2つ備え、2つの当該組がX方向に沿って並ぶように配置される。
【0025】
トロリ13は、例えば、横行モータの駆動によってY方向に沿って横行する。本実施形態において、Y方向はトロリ13の横行方向に一致する。一例として、トロリ13は、ドラム駆動モータにより正逆回転するドラムを含む巻駆動部16を有し、ワイヤを含む吊部材18を介してスプレッダ14を吊り下げている。トロリ13からは、X方向に並ぶ2箇所の位置から吊部材18が延びており、スプレッダ14はX方向に並ぶ2箇所の位置において吊部材18に吊られている。
【0026】
スプレッダ14は、コンテナCを吊り下げる吊具である。スプレッダ14は、例えば、X方向に延びる矩形状を呈する。スプレッダ14は、コンテナCを上方から係止可能であり、コンテナCを係止して吊り上げることによってコンテナCの荷役を行う。例えば、スプレッダ14の動作は、前述した横行モータ及びドラム駆動モータの駆動によって制御され、当該横行モータ及びドラム駆動モータの駆動はクレーン制御システム100によって制御される。
【0027】
走行部15A,15Bは、RTGクレーン10の直線状の走行路を走行する機構である。RTGクレーン10は、Y方向の両端側のそれぞれの脚部11の下方に設けられる一対の走行部15A,15Bを備える。それぞれの走行部15A,15Bは、X方向に互いに離間する脚部11同士を接続する接続部材21と、接続部材21の下側に設けられた複数の車輪ユニット22と、を備える。車輪ユニット22は、接続部材21のX方向の両端にそれぞれ一つずつ設けられる。車輪ユニット22は、複数の車輪23と、車輪23を支持する車輪支持部24と、を備える。車輪支持部24は、Y方向に並ぶ一対の車輪23の車輪を支持し、当該一対の車輪23をX方向に並んだ状態で二組支持する。なお、一つ当たりの車輪ユニット22が有する車輪23の数、及び走行部15A,15Bが有する車輪ユニット22の数は特に限定されない。
【0028】
RTGクレーン10は、自動的に走行路を真っ直ぐに走行できるように、走行位置検出部26を備える。走行位置検出部26は、走行路に対するY方向におけるRTGクレーン10の走行位置を検出する。走行位置検出部26は、走行路の地面にX方向に直線状をなすように設けられたガイドライン27を検出するように、走行部15Aの下面側に設けられる。例えば、ガイドライン27は、磁石を含んで構成されており、走行位置検出部26は、磁力を検出するセンサによって構成される。例えば、走行部15Aが走行路に対してY方向のずれなく、X方向に真っ直ぐ走行しているときは、走行位置検出部26が検出する磁力は一定となる。これに対し、走行部15Aが走行路に対してY方向にずれたり、走行方向が走行路に対して傾いたような場合は、走行位置検出部26が検出する磁力に変動が生じる。これにより、走行位置検出部26の検出結果に基づいて、RTGクレーン10の走行位置のずれを検出することが可能となる。
【0029】
図4は、RTGクレーン10と当該RTGクレーン10の走行路RDA,RDBとの関係について説明するための模式的な平面図である。図4に示すように、Y方向における一方側の走行部15Aが、走行路RDAを走行する。Y方向における他方側の走行部15Bが、走行路RDBを走行する。これにより、RTGクレーン10は、走行部15Aが走行路RDAを直線状に走行し、且つ、走行部15Bが走行路RDBを直線状に走行することによって、X方向に平行な方向へ走行する。以降の説明においては、走行路RDA,RDBを基準とした絶対座標における方向をX方向及びY方向を用いて説明し、RTGクレーンが走行する方向を「走行方向D1」と称する場合がある。また、走行方向D1と直交する水平方向を走行部15A,15Bの「幅方向D2」と称する場合がある。
【0030】
走行路RDAは、RTGクレーン10のY方向における一方の端部側において、コンテナCのベイBとY方向の一方側に隣り合う位置にて、X方向に直線状に延びている。RDBは、RTGクレーン10のY方向における他方の端部側において、コンテナCのベイBとY方向の他方側に隣り合う位置にて、X方向に直線状に延びている。各走行路RDAは、Y方向において、走行部15A,15Bの幅方向D2の寸法よりも若干広く設定されている。ここで、図4に示すように、走行方向D1における一方側の向きを「向きA1」とし、他方側の向きを「向きA2」とする。このとき、走行部15A,15Bは、向きA1へ向かって走行することができる。このときは、向きA1が走行部15A,15Bの走行方向D1における進行側に該当する。また、走行部15A,15Bは、向きA2へ向かって走行することができる。このときは、向きA2が走行部15A,15Bの走行方向D1における進行側に該当する。
【0031】
RTGクレーン10は、当該RTGクレーン10に取り付けられた検出部30A,30B,30C,30Dを備える。走行部15A、15Bが向きA1を進行側として走行しているときに、検出部30A,30Bは、走行方向D1において、走行部15A,15Bの進行側に存在する物体を検出する。検出部30A,30Bは、クレーンガーダ12に対して、走行部15A,15Bの向きA1側に取り付けられる。検出部30A,30Bは、走行方向D1における進行側(向きA1側)に延びる検出対象領域DEA,DEBに存在する物体を検出する。検出対象領域DEA,DEBは、走行部15A,15Bが通過する予定の場所、すなわち、走行部15A,15Bから見て向きA1側の所定距離の範囲の走行路RDA,RDBに存在する物体を検出できるように設定される。
【0032】
走行部15A、15Bが向きA2を進行側として走行しているときに、検出部30C,30Dは、走行方向D1において、走行部15A,15Bの進行側に存在する物体を検出する。検出部30C,30Dは、クレーンガーダ12に対して、走行部15A,15Bの向きA2側に取り付けられる。検出部30C,30Dは、走行方向D1における進行側(向きA2側)に延びる検出対象領域DEC,DEDに存在する物体を検出する。検出対象領域DEC,DEDは、走行部15A,15Bが通過する予定の場所、すなわち、走行部15A,15Bから見て向きA2側の所定距離の範囲の走行路RDA,RDBに存在する物体を検出できるように設定される。
【0033】
図5を参照して、検出部30Aが物体を検出する検出範囲DSについて説明する。図5は、検出部30Aの検出範囲DSを上方から見た図である。図5は、走行部15Aが走行路RDAに対してY方向のずれがなく、かつ、走行方向D1が走行路RDAに対して傾斜していない状態を示している。なお、走行路RDAに対して走行方向D1が傾斜する場合に、走行路RDAが延びる方向、すなわちX方向に対して走行方向D1がなす角度を「ずれ角θ1」と称する場合がある(図8参照)。また、走行部15Aが走行路RDAに対してY方向にずれている場合に、走行路RDAの中心線CLに対する走行部15Aの中心線のY方向のずれの大きさを「ずれ量L1」と称する場合がある(図7参照)。
【0034】
なお、図5に示す例においては、検出部30Aは、当該検出部30Aの基準線SLが走行部15Aの中心線と一致するように、走行部15Aに設けられているものとする。従って、図5に示すように、「ずれ角θ1=0」かつ「ずれ量L1=0」の状態では、検出部30Aの基準線SLは、上方から見て、走行路RDAの中心線CLと一致する。このような状態を「定常状態」と称する場合がある。以降の説明では、特に言及がない限り、定常状態における構成について説明を行っているものとする。定常状態という概念を用いた場合、定常状態における検出部30Aの位置からY方向に検出部30Aがずれた場合、当該Y方向の移動量はずれ量L1と等しくなる。また、定常状態における検出部30Aの基準線SLから検出部30Aの基準線SLが傾斜するようにずれた場合、当該傾斜角はずれ角θ1と等しくなる。なお、後述の情報処理部111が、走行位置検出部26の検出結果を利用して、どのようにしてずれ角θ1及びずれ量L1を算出するかは特に限定されず、任意の方法で演算が行われてよい。
【0035】
なお、説明の理解を容易とするために、定常状態における検出部30Aの位置及び向きを上述の様な構成としたが、検出部30Aの取付位置、及び向きは特に限定されるものではない。また、検出部30Aを構成するセンサの種類、及び数も特に限定されない。検出部30Aを構成するセンサとして、レーダー、ライダー等が採用されてよく、両者の組み合わせが採用されてもよい。
【0036】
検出部30Aの検出範囲DSは、検出部30Aから走行方向D1における進行側へ向かって広がる扇形の形状を有する。検出範囲DSは、基準線SLを基準として対象な形状を有する。進行側における検出範囲DSの端部の位置を、検出範囲DSの端部DSaと称する場合がある。この場合、検出範囲DSの幅方向D2における広さは、特に限定されないが、端部DSaが走行路RDAのY方向における略全域を覆うことができるように、設定されてよい。また、検出部30Aは、検出範囲DSを設定可能な範囲として、一点鎖線で示すような検出可能範囲PDSを有している。検出部30Aは、検出可能範囲PDSの中であれば、任意に検出範囲DSを設定することができる。図5に示す例では、検出可能範囲PDSは、Y方向において走行路RDAよりも外側の範囲まで広がっているが、検出範囲DSが走行路RDAの範囲に収まっている。従って、物体が検出可能範囲PDSに入っていたとしても、物体が検出範囲DSに入っていない限り、検出部30Aは、物体を検出しない。これにより、走行路RDAの外側の物体を誤検知することが防止される。
【0037】
次に、図6を参照して、本実施形態に係る制御装置110を備えるクレーン制御システム100のブロック構成について説明する。図6は、本実施形態に係る制御装置110を備えるクレーン制御システム100の構成及び機能を示すブロック図である。図6に示すように、クレーン制御システム100は、制御装置110を備える。制御装置110は、検出部30からの検出結果を受信する。また、制御装置110は、走行位置検出部26からの検出結果を受信する。制御装置110は、RTGクレーン10の駆動部50、及び出力部51へ制御信号を出力する。なお、制御装置110が配置される場所は得に限定されず、RTGクレーン10の何れかの位置に設けられてもよいし、RTGクレーン10から離れた位置に設けられてもよい。
【0038】
駆動部50は、スプレッダ14を設定した搬送経路に従って移動させるための駆動力を発生する機器、及び走行部15A,15Bを設定した動作に従って移動させるための駆動力を発生する機器である。駆動部50は、例えばスプレッダ14の巻上げ装置、トロリ13の横行用のモータ、走行部15A,15Bの走行用のモータなどを含んでいる。出力部51は、各種情報を出力する機器である。出力部51は、例えば、モニタ、スピーカ、警告灯などによって構成される。
【0039】
制御装置110は、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信インタフェースを備え、コンピュータ(機上自動制御PCとも称される)として構成されていてもよい。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)等の演算器である。メモリは、ROM(ReadOnly Memory)又はRAM(Random Access Memory)等の記憶部である。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶部(記憶媒体)である。通信インタフェースは、データ通信を実現する通信機器である。プロセッサは、メモリ、ストレージ及び通信インタフェースを制御し、後述する制御装置110としての機能を実現する。制御装置110では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種機能を実現する。制御装置110を構成するコンピュータの数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。
【0040】
制御装置110は、情報処理部111と、経路設定部112と、駆動制御部113と、警告制御部114と、補正部115を備える。
【0041】
情報処理部111は、検出部30で検出された検出結果に関する情報を取得すると共に、当該結果に基づいて、検出範囲DS内の物体を検出する。また、情報処理部111は、走行位置検出部26で検出された検出結果に関する情報を取得すると共に、当該結果に基づいて、RTGクレーン10の走行状態を検出する。これにより、情報処理部111は、RTGクレーンのずれ量L1(図7参照)及びずれ角θ1(図8参照)を取得することができる。経路設定部112は、RTGクレーン10のスプレッダ14によるコンテナCの移送経路を設定する。
【0042】
駆動制御部113は、経路設定部112により設定された搬送経路に従いスプレッダ14が移動するように駆動部50を制御する。また、駆動制御部113は、検出部30による検出結果に基づいて走行部15A,15Bの走行を制御する。駆動制御部113は、駆動部50を構成するモータ等の各機器に対して、制御信号を送信することで、スプレッダ14が、予め定めた搬送経路に従って移動するように制御し、走行部15A,15Bが所望の動作を行うように制御する。例えば、駆動制御部113は、検出部30の検出範囲DSに物体が存在することが検知された場合、走行部15A,15Bの走行を停止する。
【0043】
警告制御部114は、安全対応処理を行う必要がある場合に、出力部51を制御して、ユーザーに対して警告を行う。例えば、警告制御部114は、検出部30の検出範囲DSに物体が存在することが検知された場合、警告を行う。
【0044】
補正部115は、検出部30の検出範囲DSを補正する。すなわち、RTGクレーン10が定常状態から走行路RDA,RDBに対してずれることで、検出範囲DSが走行路RDA,RDBに対してずれる場合がある。このとき、検出範囲DSの一部が走行路RDA,RDBの外部にはみ出たり、走行路RDA,RDBにおいて検出範囲DSの死角ができる。このような場合に、補正部115は、走行路RDA,RDBに対する検出範囲DSのずれを低減、または無くすように、検出範囲DSを補正する。
【0045】
具体的に、補正部115は、走行路RDA,RDBに対する走行方向D1のずれ角θ1(図8参照)、及びY方向(走行路RDA,RDBが延びる方向と垂直な方向)における走行路RDA,RDBに対する走行部15A,15Bのずれ量L1(図7参照)の少なくとも一方に基づいて、検出部30の検出範囲DSを補正する。補正部115は、情報処理部111が演算したずれ角θ1及びずれ量L1を取得し、これらのずれ角θ1及びずれ量L1の少なくとも一方が閾値を超えた場合に、補正を行ってよい。
【0046】
図7を参照して、ずれ量L1に基づく補正部115の補正内容について説明する。図7は、ずれ量L1に基づく補正部115の補正内容を説明するための概念図である。図7(a)は、検出部30Aの基準線SL、すなわち走行部15Aの中心線が、走行路RDAの中心線CL(通常状態における検出部30Aの基準線SL)からずれ量L1の分だけ、Y方向の外側にずれた様子を示している。このとき、検出範囲DSは、全体的にずれ量L1の分だけ、Y方向の外側にずれる。これにより、検出範囲DSの端部DSa付近において、Y方向の外側には検出範囲DSが走行路RDAからはみ出す部分E1が形成され、Y方向の内側には走行路RDAにおいて検出範囲DSで検出されない死角E2が形成される。
【0047】
図7(b)は、補正部115が検出範囲DSを補正した様子を示している。図7(b)では、補正前の検出領域DSBが仮想線で示されている。補正部115は、ずれ量L1に基づく補正量L2を設定する。また、補正部115は、検出範囲DSの端部DSaが走行路RDA側(ここではY方向の内側)に補正量L2の分だけ近づくように、検出部30A周りに検出範囲DSを旋回させる。補正部115は、検出範囲DSが走行路RDAからはみ出す部分E1、及び検出範囲DSで検出されない死角E2を低減、または無くすように、検出範囲DSの補正を行う。補正部115は、検出可能範囲PDSの範囲内で、検出範囲DSを補正する。図7に示す例においては、補正部115は、補正量L2をずれ量L1と同じ値に設定している。そして、補正部115は、検出範囲DSの端部DSaの中心点CPが、Y方向の内側へ補正量L2の分だけ移動するように、検出範囲DSを旋回させている。ただし、補正量L2をどのように設定するかは特に限定されず、ずれ量L1と同じ値にしなくともよい。また、補正部115は、端部DSaの中心点CPを基準として検出範囲DSを補正したが、どの部分を基準とするかは特に限定されない。
【0048】
図8を参照して、ずれ角θ1に基づく補正部115の補正内容について説明する。図8は、ずれ角θ1に基づく補正部115の補正内容を説明するための概念図である。図8(a)は、検出部30Aの基準線SL、すなわち走行部15Aの中心線が、走行路RDAの中心線CL(通常状態における検出部30Aの基準線SL)からずれ角θ1の分だけ、Y方向の内側に傾斜するようにずれた様子を示している。このとき、検出範囲DSは、全体的にずれ角θ1の分だけ、Y方向の内側にずれる。これにより、検出範囲DSの端部DSa付近において、Y方向の内側には検出範囲DSが走行路RDAからはみ出す部分E1が形成され、Y方向の外側には走行路RDAにおいて検出範囲DSで検出されない死角E2が形成される。
【0049】
図8(b)は、補正部115が検出範囲DSを補正した様子を示している。図8(b)では、補正前の検出領域DSBが仮想線で示されている。補正部115は、ずれ角θ1に基づく補正角度θ2を設定する。また、補正部115は、検出部30A周りに補正角度θ2の分だけ検出範囲DSを旋回させる。補正部115は、検出範囲DSが走行路RDAからはみ出す部分E1、及び検出範囲DSで検出されない死角E2を低減、または無くすように、検出範囲DSの補正を行う。補正部115は、検出可能範囲PDSの範囲内で、検出範囲DSを補正する。検出範囲DSの中心線CL2を設定すると、図7(a)に示すように、補正前においては、中心線CL2は、基準線SLと一致する。補正部115は、中心線CL2を補正角度θ2の分だけ、検出部30A周りに旋回させるように、検出範囲DSを旋回させる。これにより、図7(b)に示すように、検出範囲DSの中心線CL2は、走行路RDAの中心線CLと一致するようになる。ただし、補正角度θ2をどのように設定するかは特に限定されず、ずれ角θ1と同じ値にしなくともよい。また、補正部115は、検出範囲DSの中心線CL2を基準として検出範囲DSを補正したが、どの部分を基準とするかは特に限定されない。
【0050】
補正部115は、ずれ角θ1及びずれ量L1が同時に存在する場合にも、検出範囲DSを補正してよい。この場合に、補正部115がどのように検出範囲DSを補正するかは特に限定されない。例えば、補正部115は、ずれ角θ1を補正して、検出範囲DSの中心線CL2をY方向に平行にしてから、ずれ量L1を補正してよい。あるいは、補正部115は、ずれ角θ1及びずれ量L1を総合的に評価して、検出範囲DSを検出部30A周りに旋回する量を決定してもよい。
【0051】
また、RTGクレーン10の走行路RDA,RDBに対するずれが解消した場合、補正部115は、補正を解除して、定常状態における検出範囲DSに戻してよい。あるいは、ずれ角θ1、ずれ量L1が更に大きくなった場合、補正部115は、更に補正量を大きくして検出範囲DSを補正してよい。
【0052】
次に、本実施形態に係るRTGクレーン10、及び制御装置110の作用・効果について説明する。
【0053】
RTGクレーン10は、RTGクレーン10に取り付けられ、走行方向D1において、走行部15A,15Bの進行側に存在する物体を検出する検出部30を備える。従って、検出部30が物体を検出することにより、走行部15A,15Bが当該物体と接触することを回避するために停止等の措置をとることができる。ここで、RTGクレーン10は、検出部30の検出範囲DSを補正する補正部115を備える。補正部115は、走行路RDA,RDBに対する走行方向D1のずれ角θ1、及び走行路RDA,RDBが延びる方向と垂直なY方向における走行路RDA,RDBに対する走行部15A,15Bのずれ量L1の少なくとも一方に基づいて、検出部30の検出範囲DSを補正する。従って、走行路RDA,RDBに対する走行方向D1のずれ角θ1、及び走行路RDA,RDBが延びる方向と垂直なY方向における走行路RDA,RDBに対する走行部15A,15Bのずれ量L1が発生している場合であっても、補正部115は、それらのずれ角θ1及びずれ量L1に応じて、検出部30の検出範囲DSを補正することができる。これにより、補正部115は、走行路RDA,RDBに対して適切な検出範囲DSを設定することができるため、走行路RDA,RDB内の物体の検出精度を向上できる。
【0054】
補正部115は、少なくともずれ角θ1に基づく補正角度θ2を設定し、検出部30周りに補正角度θ2の分だけ検出範囲DSを旋回させる。これにより、補正部115は、ずれ角θ1によって生じた走行路RDA,RDBに対する検出範囲DSのずれを低減することができる。
【0055】
補正部115は、少なくともずれ量L1に基づく補正量L2を設定し、検出範囲DSの端部DSaが走行路RDA,RDB側に補正量L2の分だけ近づくように、検出部30周りに検出範囲DSを旋回させる。これにより、補正部115は、ずれ量L1によって生じた走行路RDA,RDBに対する検出範囲DSのずれを低減することができる。
【0056】
制御装置110は、直線状の走行路RDA,RDBを走行するRTGクレーンの10の制御装置110であって、走行方向D1において、RTGクレーン10の走行路RDA,RDBの進行側に存在する物体を検出する検出部30の検出結果を取得する情報処理部111(取得部)と、検出部30の検出範囲DSを補正する補正部115と、を備え、補正部115は、走行路RDA,RDBに対する走行方向D1のずれ角θ1、及び走行路RDA,RDBが延びる方向と垂直なY方向における走行路RDA,RDBに対する走行部15A,15Bのずれ量L1の少なくとも一方に基づいて、検出部30の検出範囲DSを補正する。
【0057】
この制御装置110によれば、上述のRTGクレーン10と同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【0058】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0059】
補正部115がずれ角θ1及びずれ量L1に基づいて検出範囲DSを補正する演算方法は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で、あらゆる演算方法を採用してもよい。
【符号の説明】
【0060】
10…RTGクレーン、15A,15B…走行部、30,30A,30B,30C,30D…検出部、110…制御装置、111…情報処理部(取得部)、115…補正部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8