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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ワーク加工用シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240628BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240628BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J11/06
C09J133/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020167560
(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公開番号】P2022059761
(43)【公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】山口 征太郎
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/030186(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/140163(WO,A1)
【文献】特開2015-115385(JP,A)
【文献】特開2017-092365(JP,A)
【文献】特開2011-032208(JP,A)
【文献】特開2011-153109(JP,A)
【文献】特開2017-025258(JP,A)
【文献】特開2013-209559(JP,A)
【文献】特開2013-247163(JP,A)
【文献】特開2006-152154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
H01L21/301;21/78
C09K3/18
C08F283/01;290/00-290/14;299/00-299/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材における片面側に積層された粘着剤層とを備えるワーク加工用シートであって、
前記粘着剤層が、
4級アンモニウム塩および活性エネルギー線硬化性基を有するポリマーと、
活性エネルギー線硬化性粘着成分(前記ポリマーを除く)と、
イオン液体と
を含有する粘着剤組成物から形成されたものであり、
前記ポリマーが、前記4級アンモニウム塩および前記活性エネルギー線硬化性基を側鎖に有し、
前記ポリマーにおける前記活性エネルギー線硬化性基が、(メタ)アクリロイル基であり、
前記ポリマーが、アクリル系重合体であり、
前記活性エネルギー線硬化性粘着成分が、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体であり、
前記活性エネルギー線硬化性粘着成分における前記活性エネルギー線硬化性基が、(メタ)アクリロイル基であり、
前記イオン液体を構成するカチオン成分が、下記式(1)~(3)
【化1】

【化2】

【化3】

(上記式(1)~(3)のそれぞれにおいて、R ~R は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、nは、それぞれ独立に、0~20の整数である。)
で示される少なくとも1種の構造を有するものであり、
前記粘着剤組成物中における前記ポリマーの含有量が、前記活性エネルギー線硬化性粘着成分100質量部に対して、1質量部以上、50質量部以下であり、
ワーク加工用シートが、半導体ウエハをワークとするためのものである
ことを特徴とするワーク加工用シート。
【請求項2】
前記粘着剤組成物中における前記イオン液体の含有量は、前記活性エネルギー線硬化性粘着成分100質量部に対して、0.5質量部以上、100質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載のワーク加工用シート。
【請求項3】
前記ポリマーの重量平均分子量は、500以上、20万以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のワーク加工用シート。
【請求項4】
前記粘着剤組成物は、アルカリ金属塩を含有しないことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のワーク加工用シート。
【請求項5】
ダイシングシートであることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のワーク加工用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等のワークの加工に使用されるワーク加工用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ガリウムヒ素などの半導体ウエハや各種パッケージ類は、大径の状態で製造され、チップに切断(ダイシング)され、剥離(ピックアップ)された後に、次の工程であるマウント工程に移される。この際、半導体ウエハ等のワークは、基材および粘着剤層を備える粘着シート(以下、「ワーク加工用シート」という場合がある。)上に積層された状態で、バックグラインド、ダイシング、洗浄、乾燥、エキスパンディング、ピックアップ、マウンティング等の加工が行われる。
【0003】
上記ワーク加工用シートとして、活性エネルギー線硬化性を示す粘着剤層を備えるシートを使用する場合には、活性エネルギー線の照射により粘着力を低下させて、加工済みのワークからワーク加工用シートを容易に剥離させることが可能となる。ここで、加工済みのワークからワーク加工用シートを剥離する際には、ワーク加工用シートと加工済みのワークとの間で剥離帯電と呼ばれる静電気が発生することがある。このような静電気の発生は、加工済みのワークが例えば半導体チップである場合に、当該チップ上に形成された回路等が破壊される原因となる。これを防ぐため、ワーク加工用シートにおいて、粘着剤層を構成する粘着剤に低分子量の4級アンモニウム塩化合物を含有させることで、ワーク加工用シートに帯電防止性を持たせることが知られている。
【0004】
しかし、帯電防止剤として低分子量の4級アンモニウム塩化合物を用いた場合、当該化合物が粘着剤層からブリードアウトしたり、粘着剤の残渣物(パーティクル)が、加工済みのワークの表面を汚染してしまうという問題があった。
【0005】
これに対し、帯電防止性を持たせた粘着剤として、4級アンモニウム塩を有する(メタ)アクリル系共重合体を粘着成分とする光学部材用帯電防止性粘着剤が提案されている(特許文献1)。かかる粘着剤は、4級アンモニウム塩を(メタ)アクリル系共重合体に導入して高分子量とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-12195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年、電子機器の小型化・高密度化が進み、そのような電子機器の部品となるワークの微細化や、当該ワーク上に形成された回路等の構造の微細化も飛躍的に進んでいる。このようなワークを取り扱うに上では、特許文献1のような従来の粘着シートの帯電防止性は不十分となってきている。
【0008】
また、そもそも、特許文献1に開示されている粘着剤は、偏光板などの光学部材に貼付される粘着シートに用いられるものであり、活性エネルギー線照射による剥離を前提としていない。したがって、活性エネルギー線照射の前後により粘着力を大きく変化させるようなワーク加工用シートとは、要求される物性が全く異なるものである。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、活性エネルギー線照射後の剥離時における被着体の汚染を抑制しつつ、優れた帯電防止性を発揮することができるワーク加工用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、基材と、前記基材における片面側に積層された粘着剤層とを備えるワーク加工用シートであって、前記粘着剤層が、4級アンモニウム塩および活性エネルギー線硬化性基を有するポリマーと、活性エネルギー線硬化性粘着成分(前記ポリマーを除く)と、イオン液体とを含有する粘着剤組成物から形成されたものであることを特徴とするワーク加工用シートを提供する(発明1)。
【0011】
上記発明(発明1)に係るワーク加工用シートは、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物が、4級アンモニウム塩および活性エネルギー線硬化性基を有するポリマーととともに、イオン液体を含有することにより、活性エネルギー線照射後の剥離時における被着体の汚染を抑制しつつ、優れた帯電防止性を発揮することができる。
【0012】
上記発明(発明1)において、前記イオン液体を構成するカチオン成分は、ヒドロキシ基およびビニル基の少なくとも一方を有することが好ましい(発明2)。
【0013】
上記発明(発明1,2)において、前記イオン液体を構成するカチオン成分は、下記式(1)~(4)
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

(上記式(1)~(4)のそれぞれにおいて、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、nは、それぞれ独立に、0~20の整数である。)
で示される少なくとも1種の構造を有するものであることが好ましい(発明3)。
【0014】
上記発明(発明1~3)において、前記粘着剤組成物中における前記イオン液体の含有量は、前記活性エネルギー線硬化性粘着成分100質量部に対して、1質量部以上、100質量部以下であることが好ましい(発明4)。
【0015】
上記発明(発明1~4)において、前記ポリマーの重量平均分子量は、500以上、20万以下であることが好ましい(発明5)。
【0016】
上記発明(発明1~5)において、前記粘着剤組成物中における前記ポリマーの含有量は、前記活性エネルギー線硬化性粘着成分100質量部に対して、1質量部以上、40質量部以下であることが好ましい(発明6)。
【0017】
上記発明(発明1~6)において、前記活性エネルギー線硬化性粘着成分は、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体を含有することが好ましい(発明7)。
【0018】
上記発明(発明1~7)において、前記粘着剤組成物は、アルカリ金属塩を含有しないことが好ましい(発明8)。
【0019】
上記発明(発明1~8)においては、ダイシングシートであることが好ましい(発明9)。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るワーク加工用シートは、活性エネルギー線照射後の剥離時における被着体の汚染を抑制しつつ、優れた帯電防止性を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係るワーク加工用シートは、基材と、当該基材における片面側に積層された粘着剤層とを備える。そして、当該粘着剤層は、4級アンモニウム塩および活性エネルギー線硬化性基を有するポリマーと、活性エネルギー線硬化性粘着成分(上記ポリマーを除く)と、イオン液体とを含有する粘着剤組成物から形成されたものである。
【0022】
上述した4級アンモニウム塩および活性エネルギー線硬化性基を有するポリマーおよびイオン液体は、粘着剤層中において優れた導電性を発揮することができるため、本実施形態に係るワーク加工用シートは、非常に優れた帯電防止性を有するものとなる。
【0023】
また、4級アンモニウム塩および活性エネルギー線硬化性基を有するポリマーは、活性エネルギー線の照射により、当該ポリマー同士、および当該ポリマーと活性エネルギー線硬化性粘着成分との間で化学的に結合して三次元構造を形成する結果、粘着剤層に良好に保持される。一方、イオン液体も、粘着剤層中のその他の成分と高い相溶性を有することにより、粘着剤層中に良好に保持させる。これらの結果、本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層中の成分のブリードアウトや、被着体の表面における粘着剤の残渣物(パーティクル)の付着を抑制することができる。
【0024】
1.ワーク加工用シートの構成
(1)基材
本実施形態における基材としては、ワーク加工用シートの使用の際に所望の機能を発揮するものである限り、特に限定されない。特に、基材は、樹脂系の材料を主材とする樹脂フィルムであることが好ましい。その具体例としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン-ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等のポリオレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム;エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体フィルム、その他のエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム等のエチレン系共重合フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素樹脂フィルムなどが挙げられる。また、これらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムといった変性フィルムも用いられる。また、基材は、上述したフィルムが複数積層されてなる積層フィルムであってもよい。この積層フィルムにおいて、各層を構成する材料は同種であってもよく、異種であってもよい。上記の中でも、ポリ塩化ビニル系フィルムを使用することが好ましく、特にポリ塩化ビニルフィルムを使用することが好ましい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。また、本明細書における「重合体」は「共重合体」の概念も含むものとする。
【0025】
基材は、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤、着色剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、イオン捕捉剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤の含有量としては、特に限定されないものの、基材が所望の機能を発揮する範囲とすることが好ましい。
【0026】
基材の粘着剤層が積層される面には、粘着剤層との密着性を高めるために、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されてもよい。
【0027】
基材の厚さは、ワーク加工用シートが使用される方法に応じて適宜設定できるものの、例えば、200μm以下であることが好ましく、特に150μm以下であることが好ましい。また、基材の厚さは、10μm以上であることが好ましく、特に25μm以上であることが好ましい。
【0028】
(2)粘着剤層
本実施形態における粘着剤層は、4級アンモニウム塩および活性エネルギー線硬化性基を有するポリマーと、活性エネルギー線硬化性粘着成分と、イオン液体とを含有する粘着剤組成物から形成されるものである。なお、本明細書において、活性エネルギー線硬化性粘着成分は、4級アンモニウム塩および活性エネルギー線硬化性基を有するポリマーを含まないものとする。
【0029】
本実施形態における粘着剤組成物は、アルカリ金属塩を含有しないことが好ましい。これにより、被着体となるワークや本実施形態に係るワーク加工用シートを取り扱う装置において、金属汚染を効果的に抑制することができる。
【0030】
(2-1)活性エネルギー線硬化性粘着成分(A)
活性エネルギー線硬化性粘着成分(A)は、活性エネルギー線硬化性を有しないアクリル系重合体(A1)および活性エネルギー線硬化性化合物(A2)を含有するものであるか、側鎖にエネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A3)を含有するものであることが好ましい。また、活性エネルギー線硬化性粘着成分(A)は、側鎖にエネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A3)および活性エネルギー線硬化性化合物(A2)を含有するものであってもよい。
【0031】
被着体の汚染を効果的に抑制するという観点からは、活性エネルギー線硬化性粘着成分(A)は、側鎖にエネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A3)を含有するものであることが好ましい。
【0032】
なお、本実施形態における活性エネルギー線硬化性粘着成分(A)は、被着体の汚染を抑制し易いという観点から、エマルション系重合体を含まないことが好ましい。
【0033】
(2-1-1)活性エネルギー線硬化性を有しないアクリル系重合体(A1)
本実施形態における粘着剤組成物が活性エネルギー線硬化性を有しないアクリル系重合体(A1)を含有する場合、当該アクリル系重合体(A1)は、粘着剤組成物にそのまま含有されていてもよく、また少なくともその一部が後述する架橋剤(C)と架橋反応を行って架橋物として含有されていてもよい。
【0034】
アクリル系重合体(A1)としては、従来公知のアクリル系の重合体を用いることができる。アクリル系重合体(A1)は、1種類のアクリル系モノマーから形成された単独重合体であってもよいし、複数種類のアクリル系モノマーから形成された共重合体であってもよいし、1種類または複数種類のアクリル系モノマーとアクリル系モノマー以外のモノマーとから形成された共重合体であってもよい。アクリル系モノマーとなる化合物の具体的な種類は特に限定されず、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、その誘導体(アクリロニトリル、イタコン酸など)が具体例として挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルについてさらに具体例を示せば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の鎖状骨格を有する(メタ)アクリレート;シクロへキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イミドアクリレート等の環状骨格を有する(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基以外の反応性官能基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。また、アクリル系モノマー以外のモノマーとして、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン、酢酸ビニル、スチレンなどが例示される。なお、アクリル系モノマーがアルキル(メタ)アクリレートである場合には、そのアルキル基の炭素数は1~18の範囲であることが好ましい。
【0035】
本実施形態における粘着剤組成物が、後述する架橋剤(C)を含有する場合には、アクリル系重合体(A1)は、架橋剤(C)と反応する反応性官能基を有することが好ましい。反応性官能基の種類は特に限定されず、架橋剤(C)の種類などに基づいて適宜決定すればよい。
【0036】
例えば、架橋剤(C)がエポキシ系化合物である場合には、アクリル系重合体(A1)が有する反応性官能基として、カルボキシ基、アミノ基、アミド基などが例示され、中でもエポキシ基との反応性の高いカルボキシ基が好ましい。また、架橋剤(C)がポリイソシアネート化合物である場合には、アクリル系重合体(A1)が有する反応性官能基として、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基などが例示され、中でもイソシアネート基との反応性の高いヒドロキシ基が好ましい。
【0037】
アクリル系重合体(A1)に反応性官能基を導入する方法は特に限定されず、一例として、反応性官能基を有するモノマーを用いてアクリル系重合体(A1)を形成し、反応性官能基を有するモノマーに基づく構成単位を重合体の骨格に含有させる方法が挙げられる。例えば、アクリル系重合体(A1)にカルボキシ基を導入する場合は、(メタ)アクリル酸などのカルボキシ基を有するモノマーを用いてアクリル系重合体(A1)を形成すればよい。
【0038】
アクリル系重合体(A1)が反応性官能基を有する場合には、架橋の程度を良好な範囲にする観点から、アクリル系重合体(A1)全体の質量に占める反応性官能基を有するモノマー由来の構造部分の質量の割合が、1質量%以上であることが好ましく、特に2質量%以上あることが好ましい。また、上記割合は、同様の観点から、40質量%以下であることが好ましく、特に30質量%以下であることが好ましい。
【0039】
アクリル系重合体(A1)の重量平均分子量(Mw)は、塗工時の造膜性の観点から、1万以上であることが好ましく、特に10万以上であることが好ましい。また、アクリル系重合体(A1)の重量平均分子量(Mw)は、同様の観点から、200万以下であることが好ましく、特に150万以下であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0040】
アクリル系重合体(A1)のガラス転移温度Tgは、-70℃以上であることが好ましく、特に-60℃以上であることが好ましい。また、当該ガラス転移温度Tgは、30℃以下であることが好ましく、特に20℃以下であることが好ましい。なお、上記ガラス転移温度は、Fox式より計算することができる。
【0041】
(2-1-2)活性エネルギー線硬化性化合物(A2)
活性エネルギー線硬化性粘着成分(A)は、活性エネルギー線硬化性を有しないアクリル系重合体(A1)を含有する場合、活性エネルギー線硬化性化合物(A2)を合わせて含有する。活性エネルギー線硬化性化合物(A2)は、活性エネルギー線硬化性基を有し、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射を受けると重合する化合物である。
【0042】
活性エネルギー線硬化性化合物(A2)が有する活性エネルギー線硬化性基は、例えば活性エネルギー線硬化性の炭素-炭素二重結合を含む基であり、具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基などを例示することができる。
【0043】
活性エネルギー線硬化性化合物(A2)の例としては、上記の活性エネルギー線硬化性基を有していれば特に限定されないが、汎用性の観点から低分子量化合物(単官能、多官能のモノマーおよびオリゴマー)であることが好ましい。低分子量の活性エネルギー線硬化性化合物(A2)の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートあるいは1,4-ブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジシクロペンタジエンジメトキシジアクリレート、イソボルニルアクリレートなどの環状脂肪族骨格含有アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシ変性アクリレート、ポリエーテルアクリレート、イタコン酸オリゴマーなどのアクリレート系化合物が挙げられる。
【0044】
活性エネルギー線硬化性化合物(A2)の分子量は、100以上であることが好ましく、特に300以上であることが好ましい。また、活性エネルギー線硬化性化合物(A2)の分子量は、30000以下であることが好ましく、特に10000以下であることが好ましい。
【0045】
アクリル系重合体(A1)と活性エネルギー線硬化性化合物(A2)との比率としては、アクリル系重合体(A1)100質量部に対し、活性エネルギー線硬化性化合物(A2)を、10質量部以上で使用することが好ましく、特に30質量部以上で使用することが好ましい。また、アクリル系重合体(A1)100質量部に対し、活性エネルギー線硬化性化合物(A2)を、400質量部以下で使用することが好ましく、特に350質量部以下で使用することが好ましい。
【0046】
(2-1-3)側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A3)
本実施形態における活性エネルギー線硬化性粘着成分(A)が側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A3)を含有する場合、かかるアクリル系重合体(A3)は、粘着剤組成物にそのまま含有されていてもよく、また少なくともその一部が後述する架橋剤(C)と架橋反応を行って架橋物として含有されていてもよい。
【0047】
側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A3)の主骨格は特に限定はされず、前述のアクリル系重合体(A1)と同様のものが例示される。
【0048】
アクリル系重合体(A3)の側鎖に導入される活性エネルギー線硬化性基は、例えば活性エネルギー線硬化性の炭素-炭素二重結合を含む基であり、具体的には(メタ)アクリロイル基等を例示することができる。活性エネルギー線硬化性基は、アルキレン基、アルキレンオキシ基、ポリアルキレンオキシ基等を介してアクリル系重合体(A3)に結合していてもよい。
【0049】
側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A3)は、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を含有するアクリル系重合体と、当該官能基と反応する置換基および活性エネルギー線硬化性炭素-炭素二重結合を1分子毎に1~5個を有する硬化性基含有化合物とを反応させて得られる。かかるアクリル系重合体は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体と、前述した成分(A1)を構成するモノマーとから共重合することで得られる。また、上記硬化性基含有化合物としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0050】
また、本実施形態における粘着剤組成物が、後述する架橋剤(C)を含有する場合には、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A3)は、架橋剤(C)と反応する反応性官能基を有することが好ましい。反応性官能基の種類は特に限定されず、前述したアクリル系重合体(A1)と同様のものを例示することができる。
【0051】
側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A3)の重量平均分子量(Mw)は、10万以上であることが好ましく、特に30万以上であることが好ましい。また、上記重量平均分子量(Mw)は、200万以下であることが好ましく、特に150万以下であることが好ましい。
【0052】
アクリル系重合体(A3)のガラス転移温度(Tg)は、-70℃以上であることが好ましく、特に-60℃以上であることが好ましい。また、上記ガラス転移温度(Tg)は、30℃以下であることが好ましく、特に20℃以下であることが好ましい。なお、本明細書においてアクリル系重合体(A3)のガラス転移温度(Tg)は、硬化性基含有化合物と反応させる前のアクリル系重合体のものを指す。
【0053】
(2-2)4級アンモニウム塩および活性エネルギー線硬化性基を有するポリマー(B)
本実施形態における粘着剤組成物は、前述した活性エネルギー線硬化性粘着成分(A)に加えて、4級アンモニウム塩および活性エネルギー線硬化性基を有するポリマー(B)(以下「エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)」という。)を含有する。
【0054】
活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)は、4級アンモニウム塩を有することにより、帯電防止性を発揮する。活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)は、4級アンモニウム塩を主鎖または側鎖に有していればよいが、側鎖に有していることが好ましい。4級アンモニウム塩は、4級アンモニウムカチオンと、これに対するアニオンとから構成されるが、活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)に共有結合した4級アンモニウムカチオンとこれに対するアニオンとから構成されるものでもよく、活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)に共有結合したアニオンとこれに対する4級アンモニウムカチオンとから構成されるものでもよい。
【0055】
ここで、上記「4級アンモニウムカチオン」とは、窒素のオニウムカチオンを意味し、イミダゾリウム、ピリジウムのような複素環オニウムイオンを含む。4級アンモニウムカチオンとしては、アルキルアンモニウムカチオン(ここでいう「アルキル」は、炭素原子数1~30の炭化水素基のほか、ヒドロキシアルキルおよびアルコキシアルキルで置換されているものを含む。);ピロリジニウムカチオン、ピロリウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピペラジニウムカチオン等の複素単環カチオン;インドリウムカチオン、ベンズイミダゾリウムカチオン、カルバゾリウムカチオン、キノリニウムカチオン等の縮合複素環カチオン;などが挙げられる。いずれも、窒素原子および/または環に炭素原子数1~30(例えば、炭素原子数1~10)の炭化水素基、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシアルキル基が結合しているものを含む。
【0056】
上記アニオンとしては、ハロゲン原子を有するアニオンのほか、カルボン酸、スルホン酸、リン酸等のオキソ酸の誘導体(たとえば、硫酸水素、メタンスルホナート、エチルスルファート、ジメチルフォスフェート、2-(2-メトキシエトキシ)エチルスルファート、ジシアナミド等)などが挙げられるが、中でもハロゲン原子を有するアニオンが好ましい。具体的には、(FSO(ビス{(フルオロ)スルホニル}イミドアニオン)、(CFSO(ビス{(トリフルオロメチル)スルホニル}イミドアニオン)、(CSO(ビス{(ペンタフルオロエチル)スルホニル}イミドアニオン)、CFSO-N-COCF 、R-SO-N-SOCF (Rは脂肪族基)、ArSO-N-SOCF (Arは芳香族基)等の窒素原子を有するアニオン;C2n+1CO (nは1~4の整数)、(CFSO、C2n+1SO (nは1~4の整数)、BF 、PF など、ハロゲン原子としてフッ素原子を有するアニオンが好ましく例示される。これらの中でも、ビス{(フルオロ)スルホニル}イミドアニオン、ビス{(トリフルオロメチル)スルホニル}イミドアニオン、ビス{(ペンタフルオロエチル)スルホニル}イミドアニオン、2,2,2-トリフルオロ-N-{(トリフルオロメチル)スルホニル)}アセトイミドアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、およびヘキサフロオロフォスフェートアニオンが特に好ましい。
【0057】
また、活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)は、側鎖に活性エネルギー線硬化性基を有することにより、粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射したときに、活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)同士、または活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)と前述した活性エネルギー線硬化性粘着成分(A)とが反応して架橋する。そのため、活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)の粘着剤層からのブリードアウトが抑制されるとともに、ワーク加工用シートを剥離したときに粘着剤の残渣物(パーティクル)が発生し難く、被着体の汚染を抑制することができる。
【0058】
活性エネルギー線硬化性基は、例えば活性エネルギー線硬化性の炭素-炭素二重結合を含む基である。具体的には、(メタ)アクリロイル基およびビニル基等が挙げられ、中でも(メタ)アクリロイル基、特にメタクリロイル基が好ましい。
【0059】
活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)の単位質量あたりの活性エネルギー線硬化性基の含有量は、5×10-5モル/g以上であることが好ましく、特に1×10-4モル/g以上であることが好ましく、さらには3×10-4モル/g以上であることが好ましい。また、上記含有量は、2×10-3モル/g以下であることが好ましく、特に1.5×10-3モル/g以下であることが好ましく、さらには1×10-3モル/g以下であることが好ましい。活性エネルギー線硬化性基の含有量が5×10-5モル/g以上であることにより、活性エネルギー線照射により活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)同士、または活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)と活性エネルギー線硬化性粘着成分(A)との架橋が十分なものとなり、粘着剤層による被着体の汚染を効果的に抑制することができる。また、活性エネルギー線硬化性基の含有量が2×10-3モル/g以下であることにより、活性エネルギー線により粘着剤層を硬化した際の硬化が過度とならず、硬化後において被着体との間の意図しない剥離が抑制される。
【0060】
本実施形態における活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)は、例えば、4級アンモニウム塩を有する重合性モノマー(以下「4級アンモニウム塩モノマー(B1)」ということがある。)と、反応性官能基を有する重合性モノマー(以下「反応性官能基含有モノマー(B2)」ということがある。)と、所望により他の重合性モノマー(B3)とを共重合させた後、上記反応性官能基と反応する置換基および活性エネルギー線硬化性基を有する硬化性基含有化合物(B4)とを反応させることにより得られるものが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0061】
上記4級アンモニウム塩モノマー(B1)は、重合性基と、4級アンモニウムカチオンおよびこれに対するアニオンで構成される塩とを有するものであり、好ましくは、重合性基を有する4級アンモニウムカチオンおよびこれに対するアニオンで構成される塩からなる。重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等の炭素-炭素不飽和基、エポキシ基、オキセタン基等を有する環状エーテル類、テトラヒドロチオフェン等の環状スルフィド類やイソシアネート基などが挙げられ、中でも(メタ)アクリロイル基およびビニル基が好ましい。
【0062】
上記重合性基を有する4級アンモニウムカチオンとしては、例えば、トリアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートアンモニウムカチオン、トリアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドアンモニウムカチオン、1-アルキル-3-ビニルイミダゾリウムカチオン、4-ビニル-1-アルキルピリジニウムカチオン、1-(4-ビニルベンジル)-3-アルキルイミダゾリウムカチオン、1-(ビニルオキシエチル)-3-アルキルイミダゾリウムカチオン、1-ビニルイミダゾリウムカチオン、1-アリルイミダゾリウムカチオン、N-アルキル-N-アリルアンモニウムカチオン、1-ビニル-3-アルキルイミダゾリウムカチオン、1-グリシジル-3-アルキル-イミダゾリウムカチオン、N-アリル-N-アルキルピロリジニウムカチオン、4級ジアリルジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる(ここでいう「アルキル」とは炭素原子数1~10の炭化水素基をいう。)。これらの中でも、トリアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートアンモニウムカチオン(=[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリアルキルアンモニウムカチオン)が好ましい。
【0063】
上記4級アンモニウム塩モノマー(B1)としては、上記重合性基を有する4級アンモニウムカチオンと上記アニオンとから構成される塩であればよく、例えば、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等が挙げられる。なお、4級アンモニウム塩モノマー(B1)は、1種又は2種以上で使用することができる。
【0064】
活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)は、当該ポリマー(B)全体の質量に占める4級アンモニウム塩モノマー(B1)由来の構造部分の質量の割合が、20質量%以上であることが好ましく、特に25質量%以上であることが好ましく、さらには35質量%以上であることが好ましい。また、上記割合は、80質量%以下であることが好ましく、特に75質量%以下であることが好ましく、さらには60質量%以下であることが好ましい。4級アンモニウム塩モノマー(B1)由来の構造部分の質量の割合が20質量%以上であることにより、活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)が十分な帯電防止性を発揮する。一方、4級アンモニウム塩モノマー(B1)由来の構造部分の質量の割合が80質量%以下であることで、他のモノマーに由来する構造部分の質量の割合を好ましい範囲に制御することができる。
【0065】
上記反応性官能基含有モノマー(B2)としては、(メタ)アクリル酸の他、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーが挙げられ、中でも(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0066】
活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)は、当該ポリマー(B)の全体の質量に占める上記反応性官能基含有モノマー(B2)由来の構造部分の質量の割合が、1質量%以上であることが好ましく、特に3質量%以上であることが好ましい。また、割合は、35質量%以下であることが好ましく、特に20質量%以下であることが好ましく、さらには10質量%以下であることが好ましい。反応性官能基含有モノマー(B2)由来の構造部分の質量の割合が上記範囲にあることにより、上記硬化性基含有化合物(B4)に基づく活性エネルギー線硬化性基のエネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)に対する導入量を好ましい範囲に制御することができる。
【0067】
活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)は、当該ポリマー(B)を構成するモノマー単位として、上記他の重合性モノマー(B3)、特にアクリル系の重合性モノマーを含有することが好ましく、主成分として含有することがより好ましい。かかる他の重合性モノマー(B3)としては、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の鎖状骨格を有する(メタ)アクリレート;シクロへキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イミドアクリレート等の環状骨格を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステルである場合には、そのアルキル基の炭素数は1~18の範囲であることが好ましい。
【0068】
上記硬化性基含有化合物(B4)としては、アクリル系重合体(A3)にて例示した硬化性基含有化合物と同様のものを例示することができる。この硬化性基含有化合物(B4)としては、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が好ましく、特にグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0069】
ここで、硬化性基含有化合物(B4)と、上記反応性官能基含有モノマー(B2)とは、モル当量が等量程度となるように反応させることが好ましい。
【0070】
活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)の重量平均分子量は、500以上であることが好ましく、特に800以上であることが好ましい。また、上記重量平均分子量は、20万以下であることが好ましく、特に10万以下であることが好ましく、さらには5万以下であることが好ましい。活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)の重量平均分子量が500以上であると、本実施形態に係るワーク加工用シートを被着体に貼付したときに、活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)の粘着剤層からのブリードアウトを効果的に抑制することができる。また、活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)の重量平均分子量が20万以下であれば、粘着剤層の粘着性に悪影響を及ぼすおそれがない。具体的には、イオン性のエネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)の分子鎖は広がる傾向があるが、それが抑制されて、粘着剤層が硬くならずに良好な粘着性を示し、被着体の保持性能が維持される。
【0071】
本実施形態の粘着剤組成物における活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)の含有量は、活性エネルギー線硬化性粘着成分(A)100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、特に5質量部以上であることが好ましく、さらには10質量部以上であることが好ましい。また、上記含有量は、活性エネルギー線硬化性粘着成分(A)100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、特に35質量部以下であることが好ましく、さらには30質量部以下であることが好ましい。活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)の配合量が1質量部以上であることにより、粘着剤層に帯電防止性が十分に付与される。また、活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)の配合量が50質量部以下であることにより、活性エネルギー線照射前における粘着剤層の凝集力が高く維持され、粘着剤層が好ましい弾性を有するため、ダイシング時の振動の影響が抑制され、もってチッピング(チップ端部の欠け)の発生が効果的に抑制される。また、活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)の配合量が50質量部以下であることにより、被着体の汚染や、活性エネルギー線照射後の剥離性の低下を効果的に抑制することができる。
【0072】
(2-3)イオン液体(C)
本実施形態におけるイオン液体(C)の種類は、常温(25℃、1気圧)において液体で存在する塩であれば、特に限定されない。イオン液体(C)の融点は、150℃以下であることが好ましく、特に融点が100℃以下であることが好ましい。一方、イオン液体(C)の融点の下限値は特に限定されず、例えば-50℃以上である。
【0073】
本実施形態におけるイオン液体(C)を構成するカチオン成分の例としては、ピリジニウム、アルキルピリジニウム等のピリジニウム系;ピリミジニウム系;ピラゾリウム系;ピロリジニウム系;ピペリジニウム系;環状のピロリジニウム系;イミダゾリウム、ジアルキルイミダゾリウム等のイミダゾリウム系;テトラアルキルアンモニウム系のアンモニウム系;ホスホニウム、トリアルキルスルホニウム、テトラアルキルホスホニウム等のフォスフィン系等が挙げられる。
【0074】
なお、本実施形態におけるカチオン成分は、ヒドロキシ基およびビニル基の少なくとも一方を有することが好ましい。カチオン成分がこれらの基を有することにより、帯電防止性を発揮し易くなるとともに、被着体の汚染をより効果的に抑制できるようになる。
【0075】
また、本実施形態におけるカチオン成分は、下記式(1)~(4)
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

(上記式(1)~(4)のそれぞれにおいて、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、nは、それぞれ独立に、0~20の整数である。)
で示される少なくとも1種の構造を有するものであることも好ましい。カチオン成分が上述した構造を有するものであることにより、形成される粘着剤層がより優れた帯電防止性を発揮し易いものとなる。
【0076】
また、本実施形態におけるイオン液体(C)を構成するアニオンの例としては、Cl、Br、I、AlCl 、AlCl 、BF 、PF 、ClO 、NO 、CHCOO、CFCOO、CHSO 、CFSO 、(FSO、(CFSO、(CFSO、AsF 、SbF 、NbF 、TaF 、F(HF)-、(CN)N-、CSO 、(CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)N等が挙げられる。
【0077】
前述したアンモニウム系のカチオン成分の具体例としては、トリオクチルメチルアンモニウム=ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、トリメチルプロピルアンモニウム=ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、ジメチルエチル[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アンモニウム=ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、ジエチルメチル(2-メトキシエチル)アンモニウム=ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、ジエチルメチル(2-メトキシエチル)アンモニウム=テトラフルオロホスフェート、ジメチルエチル[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アンモニウム=テトラフルオロホスフェート、ジエチルメチル(2-メトキシエチル)アンモニウム=ヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0078】
前述したイミダゾリウム系のカチオン成分の具体例としては、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム=ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム=テトラフルオロボレート、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウム=ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウム=テトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム=ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム=テトラフルオロボレート、1-ペンチル-3-メチルイミダゾリウム=ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1-ペンチル-3-メチルイミダゾリウム=テトラフルオロボレート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム=ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム=テトラフルオロボレート、1,3-ジエチルイミダゾリウム=ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1,3-ジエチルイミダゾリウム=テトラフルオロホスフェート、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム=ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム=テトラフルオロボレート等が挙げられる。
【0079】
前述したピリジニウム系のカチオン成分の具体例としては、1-ブチルピリジニウム=ビストリフルオロメタンスルホニウムイミド、1-ペンチルピリジニウム=ビストリフルオロメタンスルホニウムイミド、1-ヘキシルピリジニウム=ビストリフルオロメタンスルホニウムイミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウム=ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1-ブチル-4-メチルピリジニウム=ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1-ヘキシル-4-メチルピリジニウム=ビストリフルオロメタンスルホニルイミド等が挙げられる。
【0080】
前述したピロリジニウム系のカチオン成分の具体例としては、、1-メチル-1-プロピルピロリジニウム=ビストリフルオロメタンスルホニウムイミド、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム=ビストリフルオロメタンスルホニウムイミド、1-メチル-1-ペンチルピロリジニウム=ビストリフルオロメタンスルホニウムイミド、1-ヘキシル-1-メチルピロリジニウム=ビストリフルオロメタンスルホニウムイミド等が挙げられる。
【0081】
前述したピペリジニウム系のカチオン成分の具体例としては、1-メチル-1-ブチルピペリジニウム=ビストリフルオロメタンスルホニウムイミド、1-メチル-1-ペンチルピペリジニウム=ビストリフルオロメタンスルホニウムイミド、1-メチル-1-ヘキシルピペリジニウム=ビストリフルオロメタンスルホニウムイミド等が挙げられる。
【0082】
前述したフォスフィン系のカチオン成分の具体例としては、トリブチルメチルホスホニウム=ビストリフルオロメタンスルホニウムイミド、トリエチルオクチルホスホニウム=ビストリフルオロメタンスルホニウムイミド、トリプロピルオクチルホスホニウム=ビストリフルオロメタンスルホニウムイミド、トリブチルオクチルホスホニウム=ビストリフルオロメタンスルホニウムイミド等が挙げられる。
【0083】
市販のイオン製品の具体例としては、いずれも広栄化学社製の製品名「IL-A1」、「IL-A2」、「IL-MA1」、「IL-MA2」、「IL-MA3」、「IL-OH2」、「IL-OH9」が挙げられる。
【0084】
本実施形態の粘着剤組成物におけるイオン液体(C)の含有量は、活性エネルギー線硬化性粘着成分(A)100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、特に1質量部以上であることが好ましく、さらには2質量部以上であることが好ましい。また、上記含有量は、活性エネルギー線硬化性粘着成分(A)100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、特に80質量部以下であることが好ましく、さらには60質量部以下であることが好ましい。イオン液体(C)の配合量が0.5質量部以上であることにより、粘着剤層に帯電防止性が十分に付与される。また、イオン液体(C)の配合量が100質量部以下であることにより、活性エネルギー線照射前における粘着剤層の凝集力が高く維持され、粘着剤層が好ましい弾性を有するため、ダイシング時の振動の影響が抑制され、もってチッピング(チップ端部の欠け)の発生が効果的に抑制される。
【0085】
(2-4)架橋剤(D)
本実施形態における粘着剤組成物は、前述したように、アクリル系重合体(A1)またはアクリル系重合体(A3)と反応し得る架橋剤(C)を含有してもよい。この場合には、本実施形態における粘着剤層は、アクリル系重合体(A1)またはアクリル系重合体(A3)と架橋剤(C)との架橋反応により得られた架橋物を含有する。
【0086】
架橋剤(C)の種類としては、例えば、エポキシ系化合物、ポリイソシアネート系化合物、金属キレート系化合物、アジリジン系化合物等のポリイミン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、金属アルコキシド、金属塩等が挙げられる。これらの中でも、架橋反応を制御し易いことなどの理由により、エポキシ系化合物またはポリイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0087】
エポキシ系化合物としては、例えば、1,3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。
【0088】
ポリイソシアネート化合物は、1分子当たりイソシアネート基を2個以上有する化合物である。具体的には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。
【0089】
粘着剤層を形成する粘着剤組成物の架橋剤(C)の含有量は、エネルギー線硬化性粘着成分(A)およびエネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)の合計量100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.1質量部以上であることが好ましい。また、架橋剤(C)の含有量は、エネルギー線硬化性粘着成分(A)およびエネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)の合計量100質量部に対し、50質量部以下であることが好ましく、特に10質量部以下であることが好ましい。
【0090】
本実施形態における粘着剤組成物が架橋剤(C)を含有する場合には、その架橋剤(C)の種類などに応じて、適切な架橋促進剤を含有することが好ましい。例えば、架橋剤(C)がポリイソシアネート化合物である場合には、粘着剤組成物は有機スズ化合物などの有機金属化合物系の架橋促進剤を含有することが好ましい。
【0091】
(2-5)その他の成分
本実施形態における粘着剤組成物は、上記の成分に加えて、光重合開始剤、染料や顔料等の着色材料、難燃剤、フィラーなどの各種添加剤を含有してもよい。
【0092】
光重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光開始剤、アミンやキノン等の光増感剤などが挙げられ、具体的には、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β-クロールアンスラキノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどが例示される。活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、光重合開始剤を配合することにより照射時間、照射量を少なくすることができる。
【0093】
(2-6)粘着剤層の厚さ
本実施形態における粘着剤層の厚さは、2μm以上であることが好ましく、特に3μm以上であることが好ましく、さらには5μm以上であることが好ましい。また、粘着剤層の厚さは、50μm以下であることが好ましく、特に30μm以下であることが好ましく、さらには20μm以下であることが好ましい。粘着剤層の厚さが2μm以上であることにより、所望の粘着力を発揮し易くなる。一方、粘着剤層の厚さが20μm以下であることにより、ワークをダイシングする際に発生する粘着剤凝着物の量を少なく抑えることができ、粘着剤凝着物がワーク等に付着したことに起因する不具合が生じ難い。
【0094】
(3)剥離シート
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層における基材とは反対側の面(以下、「粘着面」という場合がある。)をワークに貼付するまでの間、当該面を保護する目的で、当該面に剥離シートが積層されていてもよい。
【0095】
上記剥離シートの構成は任意であり、プラスチックフィルムを剥離剤等により剥離処理したものが例示される。当該プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、およびポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。上記剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等を用いることができ、これらの中でも、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。
【0096】
上記剥離シートの厚さについては特に制限はなく、例えば、20μm以上、250μm以下であってよい。
【0097】
(4)その他
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層における基材とは反対側の面に接着剤層が積層されていてもよい。この場合、本実施形態に係るワーク加工用シートは、ダイシング・ダイボンディングシートとして使用することができる。当該シートでは、接着剤層における粘着剤層とは反対側の面にワークを貼付し、当該ワークとともに接着剤層をダイシングすることで、個片化された接着剤層が積層されたチップを得ることができる。当該チップは、この個片化された接着剤層によって、当該チップが搭載される対象に対して容易に固定することが可能となる。上述した接着剤層を構成する材料としては、熱可塑性樹脂と低分子量の熱硬化性接着成分とを含有するものや、Bステージ(半硬化状)の熱硬化型接着成分を含有するもの等を用いることが好ましい。
【0098】
また、本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層における粘着面に保護膜形成層が積層されていてもよい。この場合、本実施形態に係るワーク加工用シートは、保護膜形成兼ダイシング用シートとして使用することができる。このようなシートでは、保護膜形成層における粘着剤層とは反対側の面にワークを貼付し、当該ワークとともに保護膜形成層をダイシングすることで、個片化された保護膜形成層が積層されたチップを得ることができる。当該ワークとしては、片面に回路が形成されたものが使用されることが好ましく、この場合、通常、当該回路が形成された面とは反対側の面に保護膜形成層が積層される。個片化された保護膜形成層は、所定のタイミングで硬化させることで、十分な耐久性を有する保護膜をチップに形成することができる。保護膜形成層は、未硬化の硬化性接着剤からなることが好ましい。
【0099】
2.ワーク加工用シートの物性
(1)表面抵抗率
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、紫外線照射前における粘着剤層の表面抵抗率が、1×1013Ω/□以下であることが好ましく、特に1×1012Ω/□以下であることが好ましく、さらに2×1011Ω/□以下であることが好ましい。なお、紫外線照射前における粘着剤層の表面抵抗率の下限値は特に限定されず、例えば1×10Ω/□以上であってよい。
【0100】
また、本実施形態に係るワーク加工用シートでは、紫外線照射後における粘着剤層の表面抵抗率が、1×1013Ω/□以下であることが好ましく、特に1×1012Ω/□以下であることが好ましい。なお、紫外線照射後における粘着剤層の表面抵抗率の下限値は特に限定されず、例えば1×10Ω/□以上であってよい。
【0101】
本実施形態に係るワーク加工用シートは、上述した範囲の表面抵抗率を良好に達成することができる。それにより、本実施形態に係るワーク加工用シートを被着体から剥離したときに、被着体が剥離帯電により破壊されるのを防止することができる。なお、上述した紫外線照射前後における表面抵抗率の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0102】
(2)粘着力
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、活性エネルギー線照射前におけるシリコンウエハに対する粘着力が、2000mN/25mm以上であることが好ましく、特に3000mN/25mm以上であることが好ましく、さらには3500mN/25mm以上であることが好ましい。また、上記粘着力は、20000mN/25mm以下であることが好ましく、特に15000mN/25mm以下であることが好ましく、さらには10000mN/25mm以下であることが好ましい。活性エネルギー線照射前の粘着力が上記の範囲内にあることで、ワークの加工の際においてワークを確実に固定し易くなる。
【0103】
また、本実施形態に係るワーク加工用シートでは、活性エネルギー線照射後におけるシリコンウエハに対する粘着力が、500mN/25mm以下であることが好ましく、特に300mN/25mm以下であることが好ましく、さらには200mN/25mm以下であることが好ましい。活性エネルギー線照射後の粘着力が上記の範囲内にあることで、剥離時にワークをワーク加工用シートから剥離し易くすることができ、かつ、剥離時における粘着剤層の凝集破壊、およびパーティクルによる被着体の汚染を抑制することができる。なお、活性エネルギー線照射後におけるシリコンウエハに対する粘着力の下限値については、例えば、10mN/25mm以上であることが好ましく、特に20mN/25mm以上であることが好ましく、さらには30mN/25mm以上であることが好ましい。
【0104】
なお、上述した活性エネルギー線照射前後における粘着力の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0105】
(3)パーティクル数
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、その粘着剤層における基材と反対側の面(粘着面)をシリコンウエハに貼付した状態で粘着剤層に紫外線を照射した後、ワーク加工用シートを剥離した場合に、当該剥離によって露出したシリコンウエハの露出面に付着した、最大径0.27μm以上の残渣物(パーティクル)の個数が、1000個以下であることが好ましく、特に500個以下であることが好ましく、さらには300個以下であることが好ましい。本実施形態に係るワーク加工用シートは、被着体の汚染を良好に抑制することが可能であるため、上述したパーティクルの個数を実現することができる。なお、上述したパーティクルの個数の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0106】
3.ワーク加工用シートの製造方法
本実施形態に係るワーク加工用シートの製造方法は特に限定されない。例えば、剥離シート上に粘着剤層を形成した後、当該粘着剤層における剥離シートとは反対側の面に基材の片面を積層することで、ワーク加工用シートを得ることが好ましい。
【0107】
上述した粘着剤層の形成は、公知の方法により行うことができる。例えば、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物、および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗布液を調製する。そして、剥離シートの剥離性を有する面(以下、「剥離面」という場合がある。)に上記塗布液を塗布する。続いて、得られた塗膜を乾燥させることで、粘着剤層を形成することができる。
【0108】
上述した塗布液の塗布は公知の方法により行うことができ、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等により行うことができる。なお、塗布液は、塗布を行うことが可能であればその性状は特に限定されず、粘着剤層を形成するための成分を溶質として含有する場合もあれば、分散質として含有する場合もある。また、剥離シートは工程材料として剥離してもよいし、被着体に貼付するまでの間、粘着剤層を保護していてもよい。
【0109】
粘着剤層を形成するための粘着剤組成物が前述した架橋剤を含有する場合には、上記の乾燥の条件(温度、時間など)を変えることにより、または加熱処理を別途設けることにより、塗膜内のポリマー成分と架橋剤との架橋反応を進行させ、粘着剤層内に所望の存在密度で架橋構造を形成することが好ましい。さらに、上述した架橋反応を十分に進行させるために、粘着剤層と基材とを貼り合わせた後、例えば23℃、相対湿度50%の環境に数日間静置するといった養生を行ってもよい。
【0110】
4.ワーク加工用シートの使用方法
本実施形態に係るワーク加工用シートは、半導体ウエハ等のワークの加工のために使用することができる。すなわち、本実施形態に係るワーク加工用シートの粘着面をワークに貼付した後、ワーク加工用シート上にてワークの加工を行うことができる。当該加工に応じて、本実施形態に係るワーク加工用シートは、バックグラインドシート、ダイシングシート、エキスパンドシート、ピックアップシート等として使用されることとなる。ここで、ワークの例としては、半導体ウエハ、半導体パッケージ等の半導体部材、ガラス板等のガラス部材が挙げられる。
【0111】
本実施形態に係るワーク加工用シートは、前述した通り、活性エネルギー線照射後の剥離時における被着体の汚染を抑制しつつ、優れた帯電防止性を発揮することができる。そのため、本実施形態に係るワーク加工用シートを用いることで、ワークやワーク表面の微細な構造の汚染および破壊を効果的に抑制することができる。この点で、本実施形態に係るワーク加工用シートは、上述したワーク加工用シートの中でも、微細なワークの取り扱いが行われことが多い、ダイシングシートやピックアップシートとして使用することが好適である。
【0112】
本実施形態に係るワーク加工用シート上にてワークの加工が完了し、加工後のワークをワーク加工用シートから分離する場合には、当該分離の前にワーク加工用シートにおける粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射することが好ましい。これにより、粘着剤層が硬化して、加工後のワークに対するワーク加工用シートの粘着力が良好に低下し、加工後のワークの分離が容易となる。
【0113】
上述した活性エネルギー線としては、例えば、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを使用でき、具体的には、紫外線や電子線などを使用することができる。特に、取扱いが容易な紫外線が好ましい。紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、LED等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50mW/cm以上、1000mW/cm以下であることが好ましい。また、光量は、50mJ/cm以上であることが好ましく、特に80mJ/cm以上であることが好ましく、さらには200mJ/cm以上であることが好ましい。また、光量は、10000mJ/cm以下であることが好ましく、特に5000mJ/cm以下であることが好ましく、さらには2000mJ/cm以下であることが好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10krad以上、1000krad以下が好ましい。
【0114】
なお、本実施形態に係るワーク加工用シートが前述した接着剤層を備える場合には、当該ワーク加工用シートは、ダイシング・ダイボンディングシートとして使用することができる。さらに、本実施形態に係るワーク加工用シートが前述した保護膜形成層を備える場合には、当該ワーク加工用シートは、保護膜形成兼ダイシング用シートとして使用することができる。
【0115】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0116】
例えば、本実施形態に係るワーク加工用シートにおける基材と粘着剤層との間、または基材における粘着剤層とは反対側の面には、他の層が積層されていてもよい。
【実施例
【0117】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0118】
〔実施例1〕
(1)側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A3)の調製
アクリル酸n-ブチル55質量部と、N-アクリロイルモルフォリン17質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル28質量部と、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(固形分濃度0.1質量%)0.25質量部と、溶媒としての酢酸エチルとを、攪拌機、コンデンサー、温度計、及び窒素導入管を取り付けた反応装置に投入し、窒素雰囲気下において、60℃で24時間反応させ、(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有する溶液(固形分濃度40質量%)を得た。当該(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量を、後述の方法によって測定したところ、50万であった。
【0119】
得られた上記溶液にメチルエチルケトンを加えることで、固形分濃度を35質量%とした後、当該溶液100質量部に対し、ジブチルチンジラウレート(DBTDL)0.05質量部、および、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体を構成するアクリル酸2-ヒドロキシエチルに対して90モル%に相当する量の2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を添加し、50℃で24時間反応させることで、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A3)を得た。当該アクリル系重合体(A3)の重量平均分子量を後述の方法によって測定したところ、50万であった。
【0120】
ここで、上述した(メタ)アクリル酸エステル重合体およびアクリル系重合体(A3)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0121】
(2)活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)の調製
4級アンモニウム塩モノマー(B1)としての[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド45質量部、反応性官能基含有モノマー(B2)としてのメタクリル酸5質量部、ならびに重合性モノマー(B3)としてのアクリル酸2-エチルヘキシル38質量部およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル5質量部を共重合した。得られた重合体に、硬化性基含有化合物(B4)としてのメタクリル酸グリシジル7質量部を反応させ、活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)(側鎖にメタクリロイル基および4級アンモニウム塩を有する。)を得た。この活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)の単位質量あたりの活性エネルギー線硬化性基の含有量は、4.92×10-2モル/gであった。
【0122】
得られた活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)の重量平均分子量を以下の測定条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定したところ、標準ポリスチレン換算値として、3万であった。
<測定条件>
・測定装置:東ソー社製,HCL-8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel MH-XL
TSK gel GMH-XL
TSK gel G2000H-XL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0123】
(3)粘着剤組成物の調製
上記(1)で得られた、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A3)100質量部(固形分換算)と、上記(2)で得られた活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)17.7質量部と、イオン液体(C)としての、前述した式(2)の構造を基本構造として有する化合物(広栄化学社製,製品名「IL-OH9」)0.2質量部と、架橋剤(D)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー社製,製品名「コロネートL」)0.2質量部と、光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(BASF社製,製品名「オムニラッド127」)1.1質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着剤組成物の塗布液(固形分濃度30質量%)を得た。
【0124】
(4)ワーク加工用シートの作製
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET3801」)の剥離面に対して、上記工程(3)で得られた粘着剤組成物の塗布液を塗布し、90℃で1分間乾燥させることで、剥離シート上に、厚さ10μmの粘着剤層が形成されてなる積層体を得た。
【0125】
続いて、基材としての、厚さ80μmのポリ塩化ビニル(PVC)フィルムの片面と、上述の通り得られた積層体における粘着剤層側の面とを貼り合わせた後、温度23℃、相対湿度50%の環境下で3週間保管することで、ワーク加工用シートを得た。
【0126】
〔実施例2~9〕
側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A3)の組成、活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)の含有量、ならびに、イオン液体(C)の種類および含有量を表1に記載の通り変更した以外、実施例1と同様にしてワーク加工用シートを得た。
【0127】
〔比較例1〕
活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)およびイオン液体(C)を使用しないこと以外、実施例1と同様にしてワーク加工用シートを得た。
【0128】
〔比較例2~4〕
イオン液体(C)を使用せず、その代わりに代用添加剤を表1に記載の通り使用したこと以外、実施例1と同様にしてワーク加工用シートを得た。
【0129】
〔比較例5〕
イオン液体(C)の種類および含有量を表1に記載の通り変更するとともに、活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)を使用しないこと以外、実施例1と同様にしてワーク加工用シートを得た。
【0130】
〔比較例6~8〕
側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A3)の組成、および活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)の含有量を表1に記載の通り変更するとともに、イオン液体(C)を使用しないこと以外、実施例1と同様にしてワーク加工用シートを得た。
【0131】
〔比較例9〕
アクリル酸2-エチルヘキシル20質量部と、アクリル酸メチル35質量部と、酢酸ビニル40質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル5質量部と、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(固形分濃度0.1質量%)0.25質量部と、溶媒としての酢酸エチルとを、攪拌機、コンデンサー、温度計、及び窒素導入管を取り付けた反応装置に投入し、窒素雰囲気下において、60℃で24時間反応させ、(メタ)アクリル酸エステル重合体(活性エネルギー線硬化性を有しないアクリル系重合体(A1))を含有する溶液(固形分濃度40質量%)を得た。当該活性エネルギー線硬化性を有しないアクリル系重合体(A1)の重量平均分子量を、前述した方法によって測定したところ、50万であった。
【0132】
得られた活性エネルギー線硬化性を有しないアクリル系重合体(A1)100質量部と、活性エネルギー線硬化性化合物(A2)としてのトリペンタエリスリトールアクリレート、モノおよびジペンタエリスリトールアクリレートならびにポリペンタエリスリトールアクリレートの混合物(大阪有機化学工業社製,製品名「ビスコート♯802」)26.7質量部と、活性エネルギー線硬化性化合物(A2)としてのウレタンアクリレート(三菱ケミカル社製,製品名「UV6630B」)17.0質量部と、実施例1の工程(2)で得られた活性エネルギー線硬化性帯電防止ポリマー(B)19.7質量部と、架橋剤(D)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー社製,製品名「コロネートL」)0.75質量部と、光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(BASF社製,製品名「オムニラッド127」)1.1質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着剤組成物の塗布液(固形分濃度30質量%)を得た。
【0133】
上記の通り得られた粘着剤組成物の塗布液を使用する以外、実施例1と同様にしてワーク加工用シートを得た。
【0134】
〔比較例10〕
活性エネルギー線硬化性化合物(A2)の含有量を表1に記載の通り使用したこと以外、比較例9と同様にしてワーク加工用シートを得た。
【0135】
〔試験例1〕(粘着力の測定)
実施例および比較例にて製造したワーク加工用シートを、25mm幅の短冊状に裁断した。得られた短冊状のワーク加工用シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層の粘着面を、鏡面加工してなるシリコンウエハの当該鏡面に対して、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、2kgゴムローラーを用いて貼付し、20分静置し、粘着力測定用サンプルとした。
【0136】
得られた粘着力測定用サンプルについて、万能引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロンUTM-4-100」)を用い、シリコンウエハから、剥離速度300mm/min、剥離角度180°にてワーク加工用シートを剥離し、JIS Z0237:2009に準じた180°引き剥がし法により、シリコンウエハに対する粘着力(mN/25mm)を測定した。これにより得られた粘着力を、UV照射前における粘着力として表2に示す。
【0137】
また、上記と同様に得られた粘着力測定用サンプルにおける粘着剤層に対し、基材を介して、紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000」)を用いて紫外線(UV)を照射し(照度:230mW/cm,光量:190mJ/cm)、粘着剤層を硬化させた。その後、上記と同様にシリコンウエハに対する粘着力(mN/25mm)を測定した。これにより得られた粘着力を、UV照射後における粘着力として表2に示す。
【0138】
〔試験例2〕(表面抵抗率の測定)
実施例および比較例にて製造したワーク加工用シートを100mm×100mmに裁断し、これを表面抵抗率測定用サンプルとした。当該表面抵抗率測定用サンプルを23℃、50%相対湿度下で24時間調湿したのち、剥離シートを剥離し、粘着剤面の表面抵抗率を、DIGITAL ELECTROMETER(ADVANTEST社製)を用いて印加電圧100Vで測定した。結果を表1に示す。これにより得られた表面抵抗率(Ω/□)を、UV照射前における表面抵抗率として表2に示す。
【0139】
また、上記と同様に得られた表面抵抗率測定用サンプルにおける粘着剤層に対し、基材を介して、紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000」)を用いて紫外線(UV)を照射し(照度:230mW/cm,光量:190mJ/cm)、粘着剤層を硬化させた。その後、上記と同様に表面抵抗率(Ω/□)を測定した。これにより得られた粘着力を、UV照射後における表面抵抗率として表2に示す。
【0140】
〔試験例3〕(ウエハ汚染性の評価)
実施例および比較例にて製造したワーク加工用シートから剥離シートを剥離し、粘着剤層6インチシリコンウエハ上に貼合して、5kgのローラーを1往復させることにより荷重をかけて積層した。これを、23℃、50%RH下で24時間静置したのち、粘着剤層に対し、基材を介して、紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000」)を用いて紫外線(UV)を照射し(照度:230mW/cm,光量:190mJ/cm)、粘着剤層を硬化させた。
【0141】
続いて、剥離速度300mm/min、剥離角度180°で、シリコンウエハからワーク加工用シートを剥離した。そして、シリコンウエハにおけるワーク加工用シートが貼付されていた面について、ウエハ表面検査装置(トプコン社製,製品名「WM-7S」)を用い、最大径0.27μm以上の残渣物(パーティクル)の個数を測定した。結果を表2に示す。
【0142】
〔試験例4〕(ピックアップ性の評価)
グラインダー(ディスコ社製,製品名「DFG8540」)を用いて、厚さが150μmとなるまで、6インチシリコンウエハの片面を研削した。得られたシリコンウエハの研削面の表面粗さを測定すると、♯2000であった。当該研削面に対し、ラミネーターを用いて、実施例および比較例にて製造したワーク加工用シートから剥離シートを剥離して露出した粘着剤層の露出面を貼付した。
【0143】
貼付から20分後、ダイシング装置(ディスコ社製,製品名「DFD6362」)を用いて、以下のダイシング条件でダイシングを行うことで、シリコンウエハをチップに個片化した。
ダイシング条件
チップサイズ:10mm×10mm
カッティング高さ:65μm
ブレード:製品名「ZH05-SD2000-Z1-90 CC」
ブレード回転数:35000rpm
切削スピード:50mm/sec
切削水量:1.0L/min
切削水温度:20℃
【0144】
ダイシング後、ワーク加工用シートにおける基材側の面に対し、紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000m12」)を用いて、紫外線(UV)を照射(照度:230mW/cm,光量:190mJ/cm)し、粘着剤層を硬化させた。
【0145】
次いで、ピックアップ装置を用いて、常温下で、エキスパンド量3mmにてワーク加工用シートをエキスパンドさせながら、突き上げ高さ300μmにて、ニードルを用いてチップの突き上げを行った。そして、当該突き上げと同時に、10mm×10mmのサイズのコレットでワーク加工用シートからのチップの引き離しを試みた。このようなピックアップ操作を3回繰り返し、3回連続して異常を伴うことなくピックアップできた場合に「〇」と評価し、できなかった場合に「×」と評価した。結果を表2に示す。
【0146】
なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
BA:アクリル酸n-ブチル
ACMO:N-アクリロイルモルフォリン
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
MOI:2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート
MMA:メタクリル酸メチル
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
MA:アクリル酸メチル
VAc:酢酸ビニル
ビスコート♯802:トリペンタエリスリトールアクリレート、モノおよびジペンタエリスリトールアクリレートならびにポリペンタエリスリトールアクリレートの混合物,大阪有機化学工業社製,製品名「ビスコート♯802」
UV6630B:ウレタンアクリレート,三菱ケミカル社製,製品名「UV6630B」
IL-OH9:前述した式(2)の構造を基本構造として有する化合物,広栄化学社製,製品名「IL-OH9」
IL-OH2:前述した式(1)の構造を基本構造として有する化合物,広栄化学社製,製品名「IL-OH2」
IL-MA2:前述した式(3)の構造を基本構造として有する化合物,広栄化学社製,製品名「IL-MA2」
IL-A2:前述した式(4)の構造を基本構造として有する化合物,広栄化学社製,製品名「IL-A2」
EO変性ポリグリセリン:EO変性ポリグリセリン,阪本薬品社製,製品名「PG310-6EO」
EO変性ショ糖:EO変性ショ糖,第一工業製薬社製,製品名「N-1400-1」
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
表2から明らかなように、実施例で製造したワーク加工用シートでは、UV照射後の表面抵抗率およびパーティクルの数が共に低く抑えられていた。すなわち、実施例で製造したワーク加工用シートは、活性エネルギー線照射後の剥離時における被着体の汚染を抑制しつつ、優れた帯電防止性を発揮することができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明のワーク加工用シートは、半導体ウエハ等のワークの加工に好適に使用することができる。