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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20240628BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
E02F9/00 N
B60K13/04 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020173884
(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公開番号】P2022065361
(43)【公開日】2022-04-27
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 悟
(72)【発明者】
【氏名】生井 喜雄
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-33851(JP,A)
【文献】特開2014-80828(JP,A)
【文献】国際公開第2015/079764(WO,A1)
【文献】特開2016-69960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
B60K 13/04
B60K 11/04
B60K 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、
前記車体を動作させるための駆動力を発生させるエンジンと、
前記エンジンの排気ガスを浄化する排気ガス後処理装置と、
前記排気ガス後処理装置に取り付けられた電装品と、
前記車体に搭載された前記エンジン及び前記排気ガス後処理装置を収容する建屋カバーと、
前記排気ガス後処理装置の上方において、前記建屋カバーに開閉可能に設けられた開閉カバーとを備える建設機械において、
前記開閉カバーは、
前記開閉カバーの上面から上方に突出し、水平方向において前記電装品とずれた位置の側面が排気口として開放されたダクトと、
前記排気口から侵入した水滴を排水する排水部材とを備え、
前記排水部材は、
前記電装品より上方で且つ前記ダクトの天壁より下方において、前記排気口に対面する堰止板と、
前記堰止板の下端から前記排気口側に向けて下り傾斜となり、上下方向に貫通する貫通孔が形成された傾斜板とを備えることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記排気ガス後処理装置は、
前記エンジンから排出された排気ガスを浄化する筒形状の第1の排気ガス後処理装置と、
前記第1の排気ガス後処理装置よりも上方かつ前記排気口に近い側に配置され、前記第1の排気ガス後処理装置と接続管で接続される第2の排気ガス後処理装置と、を備え、
前記傾斜板は前記第2の排気ガス後処理装置の上部に位置し、前記貫通孔は前記第2の排気ガス後処理装置の上方に設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械において、
前記堰止板は、前記電装品より前記排気口に近い位置に配置されていることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項3に記載の建設機械において、
前記ダクトの天壁のうちの前記電装品の上方の領域は、前記排気口側に向けて上り傾斜となっていることを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1に記載の建設機械において、
前記排気ガス後処理装置は、排気ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する装置であり、
前記電装品は、排気ガスに含まれる窒素酸化物の量を検知するセンサであることを特著とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後処理装置を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより構成されている。また、上部旋回体は、エンジン、及びエンジンの排気ガスを浄化する後処理装置などを収容する建屋カバーを有する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
後処理装置には、電装品(例えば、NOx量を検知するセンサ、センサの検知信号を電気信号として出力するコントローラ等)が取り付けられている。そして、建屋カバーには、電装品を熱から保護するために、建屋カバーの内部の熱を排出するためのダクトが設けられている。
【0004】
但し、ダクトを設けたことによって、建屋カバーの内部に雨水などが侵入してしまうという課題がある。そこで、従来の建設機械では、ダクトを通じて建屋カバーの内部に侵入した雨水などから後処理装置の電装品を保護するために、電装品を覆うカバーがボルトによって後処理装置に取り付けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/196395号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電装品を覆うカバーは、後処理装置の日常点検の際に取り外す必要がある。また、電装品がカバーで覆われることによって、電装品の周辺に熱が籠りやすいという新たな課題を生じる。
【0007】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、ダクトを通じて侵入した水滴から後処理装置の電装品を保護すると共に、電装品の周辺から適切に放熱することができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、自走可能な車体と、前記車体を動作させるための駆動力を発生させるエンジンと、前記エンジンの排気ガスを浄化する排気ガス後処理装置と、前記排気ガス後処理装置に取り付けられた電装品と、前記車体に搭載された前記エンジン及び前記排気ガス後処理装置を収容する建屋カバーと、前記排気ガス後処理装置の上方において、前記建屋カバーに開閉可能に設けられた開閉カバーとを備える建設機械において、前記開閉カバーは、前記開閉カバーの上面から上方に突出し、水平方向において前記電装品とずれた位置の側面が排気口として開放されたダクトと、前記排気口から侵入した水滴を排水する排水部材とを備え、前記排水部材は、前記電装品より上方で且つ前記ダクトの天壁より下方において、前記排気口に対面する堰止板と、前記堰止板の下端から前記排気口側に向けて下り傾斜となり、上下方向に貫通する貫通孔が形成された傾斜板とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ダクトを通じて侵入した水滴から後処理装置の電装品を保護すると共に、電装品の周辺から適切に放熱することができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルを示す正面図である。
図2】上部旋回体をキャブ、建屋カバー等を省略した状態で示す平面図である。
図3図2中のエンジン、排気ガス後処理装置等を拡大して示す平面図である。
図4】エンジン、後処理装置架台、排気ガス後処理装置を図3中の矢示IV-IV方向からみた断面図である。
図5】旋回フレームに搭載された後処理装置架台と排気ガス後処理装置とを示す斜視図である。
図6】後処理装置架台に取付けられた排気ガス後処理装置を示す斜視図である。
図7】後処理装置架台からカバー部材を取外した状態を示す分解斜視図である。
図8図4中の排気ガス後処理装置を拡大して示す側面図である。
図9】排気ガス後処理装置を図8中の矢示IX-IX方向からみた正面図である。
図10】排気ガス後処理装置の内部構造を概略的に示す断面図である。
図11】開閉カバーの斜視図である。
図12】ダクト及び排水部材の斜視図である。
図13】排気ガス後処理装置、ダクト、及び排水部材の位置関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る建設機械の代表例として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0012】
図1に示す油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前,後方向の前側に俯仰動可能に設けられ土砂の掘削作業等を行う作業装置4とにより構成されている。下部走行体2と上部旋回体3とは、本発明の車体を構成している。
【0013】
上部旋回体3は、支持構造体をなす旋回フレーム5と、旋回フレーム5の後端側に設けられ、作業装置4との重量バランスをとるカウンタウエイト6と、旋回フレーム5の前部左側に設けられオペレータが搭乗するキャブ7と、カウンタウエイト6の前側に設けられ、内部に後述のエンジン9、排気ガス後処理装置24等の搭載機器を収容する建屋カバー8とを含んで構成されている。
【0014】
図5に示すように、旋回フレーム5は、前,後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板5Aと、該底板5A上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びた左縦板5B,右縦板5Cと、該各縦板5B,5Cの左,右方向に間隔をもって配置され、前,後方向に延びた左サイドフレーム5D,右サイドフレーム5Eと、底板5A、各縦板5B,5Cから左,右方向に張出し、その先端部に左,右のサイドフレーム5D,5Eを支持する複数本の張出ビーム5Fとを含んで構成されている。複数本の張出ビーム5Fのうち、右後側に位置する前,後の張出ビーム5F1,5F2には、後述の後処理装置架台15が取付けられている。
【0015】
エンジン9は、カウンタウエイト6の前側に位置して上部旋回体3の左,右方向に延びる横置き状態で旋回フレーム5に搭載されている。図2から図4に示すように、エンジン9の左側には、後述する熱交換器11に冷却風を供給するための冷却ファン9Aが設けられている。一方、エンジン9の右側には、後述する油圧ポンプ12が設けられている。さらに、エンジン9の前側の上部には、エキゾーストマニホールド9Bに接続する後述の過給機10が設けられている。そして、エンジン9は、例えば4個の防振マウント9C(図4中に2個のみ図示)を介して旋回フレーム5に防振状態で支持されている。
【0016】
過給機10(ターボチャージャ)は、例えばエンジン9の前側に位置してエキゾーストマニホールド9Bに接続され、上部旋回体3の左,右方向の右側に向けて排気口10Aが開口している。ここで、過給機10の排気口10Aは、エンジン9からの排気ガスを排出するもので、後述する第1の排気ガス後処理装置25の筒体26の下端よりも上,下方向の上方位置に設けられている。この排気口10Aには、排気ガス後処理装置24(第1の排気ガス後処理装置25)に排気ガスを導く排気管35が接続されている。
【0017】
熱交換器11は、エンジン9の左側に配設されている。この熱交換器11は、エンジン9の冷却ファン9Aに対面して設けられている。熱交換器11は、例えばエンジン冷却水を冷却するラジエータ、作動油を冷却するオイルクーラ、エンジン9が吸込む空気を冷却するインタクーラ等により構成されている。
【0018】
油圧ポンプ12は、エンジン9の右側に設けられている。この油圧ポンプ12は、エンジン9によって駆動されることにより、後述の作動油タンク13から供給される作動油を、圧油として制御弁装置(図示せず)に向け吐出するものである。
【0019】
作動油タンク13は、油圧ポンプ12の前側に位置して旋回フレーム5の右側に設けられている。作動油タンク13は、下部走行体2および作業装置4等に設けられたアクチュエータを駆動するための作動油を貯えるものである。一方、燃料タンク14は、作動油タンク13の前側に位置して旋回フレーム5に設けられている。
【0020】
後処理装置架台15は、油圧ポンプ12を前,後方向に跨いだ状態で旋回フレーム5の前,後の張出ビーム5F1,5F2に設けられている。この後処理装置架台15は、後述の排気ガス後処理装置24を取付けるためのものである。そして、後処理装置架台15は、前脚部16、後脚部17、補助脚部18、後処理装置取付枠19を含んで構成されている。
【0021】
前脚部16は、油圧ポンプ12の前側に位置して旋回フレーム5から立上っている。この前脚部16は、旋回フレーム5の右後側で前,後方向の前側に設けられた張出ビーム5F1上に取付けられている。前脚部16の高さ寸法は、油圧ポンプ12の高さ寸法よりも大きくなっている。そして、前脚部16は、張出ビーム5F1から立上る下前脚部16Aと、下前脚部16A上から立上る上前脚部16Bとを含んで構成されている。
【0022】
後脚部17は、油圧ポンプ12の後側に位置して旋回フレーム5から立上っている。即ち、後脚部17は、前脚部16と油圧ポンプ12を挟んで前,後方向に対面している。この後脚部17は、旋回フレーム5の右後側で前,後方向の後側に設けられた張出ビーム5F2に取付けられている。後脚部17の高さ寸法は、油圧ポンプ12の高さ寸法よりも大きくなっている。そして、後脚部17は、張出ビーム5F2から立上る下後脚部17Aと、下後脚部17A上から立上る上後脚部17Bとにより構成されている。
【0023】
補助脚部18は、下前脚部16Aと右縦板5Cとの間に位置して旋回フレーム5から立上っている。この補助脚部18は、下端側が下前脚部16Aの左側で張出ビーム5F1に取付けられ、上端側が後処理装置取付枠19に取付けられている。前脚部16、後脚部17、および補助脚部18は、後述の後処理装置取付枠19に取付けられた排気ガス後処理装置24を支持している。
【0024】
後処理装置取付枠19は、油圧ポンプ12の上方に位置して上前脚部16Bと上後脚部17Bとの上端位置を接続している。この後処理装置取付枠19は、左側板19A、上板19B、右側板19C、および下板19Dからなる箱状体として形成され、後述の第1の排気ガス後処理装置25と第2の排気ガス後処理装置30とが取付けられる。
【0025】
後処理装置取付枠19の左側板19Aは、エンジン9側に位置して上前脚部16Bと上後脚部17Bとの間で垂直方向に延びている。左側板19Aには、後述する第1の排気ガス後処理装置25が複数本のボルト20(図5図7に2個のみ図示)を用いて取付けられている。左側板19Aの前側(上前脚部16B側)には、板厚方向(左,右方向)に貫通する流入口挿通孔19A1が設けられている。この流入口挿通孔19A1は、後述する第1の排気ガス後処理装置25の流入口26Aに対応する位置に形成され、第1の排気ガス後処理装置25の筒体26から突出する流入口26Aが挿通する。
【0026】
後処理装置取付枠19の上板19Bは、左側板19Aの上端から水平方向に延びている。この上板19Bは、左側板19Aの上端からエンジン9とは離れる方向に折曲げられている。上板19Bには、取付板21を介して後述する第2の排気ガス後処理装置30が複数本(例えば、2本)のボルト22を用いて取付けられている。
【0027】
後処理装置取付枠19の右側板19Cは、上板19Bの右端から下方に向けて延びている。即ち、右側板19Cは、左側板19Aと左,右方向で対面している。右側板19Cは、左側板19Aの流入口挿通孔19A1に対応する位置に、排気管挿通孔19C1が形成されている。この排気管挿通孔19C1には、後述する排気管35の屈曲管路37が挿通する。また、排気管挿通孔19C1は、屈曲管路37の排気ガス流出側を第1の排気ガス後処理装置25の流入口26Aに接続するときに工具等を挿通させることができる。
【0028】
右側板19Cには、排気管挿通孔19C1に対応する位置に後述のカバー部材39が取付けられる。また、右側板19Cには、複数(例えば、2個)の作業用開口19C2が形成されている。この作業用開口19C2は、例えば第1の排気ガス後処理装置25と第2の排気ガス後処理装置30とを後処理装置取付枠19に取付けるためのボルト20,22を締結するための工具等が挿通されるものである。
【0029】
後処理装置取付枠19の下板19Dは、左側板19Aの下端と右側板19Cの下端との間を連結している。即ち、下板19Dは、上板19Bと上,下方向で対面している。下板19Dには、下方に向けて延びるファイヤウォール23が取付けられている(図7参照)。このファイヤウォール23は、エンジン9、排気ガス後処理装置24等が配設されているエンジン側の空間と油圧ポンプ12が配設されているポンプ側の空間とを仕切る仕切部材となっている。ファイヤウォール23は、例えば油圧ポンプ12の周囲で作動油の漏れが生じた場合でも、その漏れた作動油がエンジン9側に飛散するのを防止している。
【0030】
次に、エンジン9から排出される排気ガスを浄化する排気ガス後処理装置24について説明する。
【0031】
排気ガス後処理装置24は、エンジン9の排気口10Aに接続された後述する排気管35の排気ガス流出側(出口側)に接続され、後処理装置架台15に取付けられている。そして、排気ガス後処理装置24は、第1の排気ガス後処理装置25、接続管28、および第2の排気ガス後処理装置30により構成されている。
【0032】
第1の排気ガス後処理装置25は、後処理装置取付枠19の左側板19Aに取付けられた状態で、油圧ポンプ12の上側に配置されている。この第1の排気ガス後処理装置25は、後述する排気管35の排気ガス流出側に設けられている。そして、第1の排気ガス後処理装置25は、前,後方向に延びる長尺な円筒状の筒体26と、筒体26内に配置された酸化触媒27とを含んで構成されている。
【0033】
第1の排気ガス後処理装置25の筒体26は、両端が閉塞された密閉容器として形成されている。図4図8に示すように、筒体26の上流側となる前側部位には、筒体26の軸線o1-o1を挟んでエンジン9の反対側から筒体26の径方向外側に向けて突出する管状の流入口26Aが設けられている。この流入口26Aは、第1の排気ガス後処理装置25の排気ガス流入側を構成するもので、後述する排気管35の屈曲管路37に接続されている。一方、筒体26の外周側には、第1の排気ガス後処理装置25を後処理装置取付枠19に取付けるためのブラケット26Bが設けられている。
【0034】
図10に示すように、酸化触媒27は、排気ガスを浄化する処理部材の1つを構成するもので、例えばセラミックス製のセル状筒体からなり、その軸方向には多数個の貫通孔が形成され、内面に貴金属等がコーティングされている。そして、酸化触媒27は、所定の温度下で各貫通孔に排気ガスを流通させることにより、この排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を酸化して除去する。また、必要に応じて粒子状物質(PM)も燃焼除去するものである。
【0035】
接続管28は、第1の排気ガス後処理装置25と後述する第2の排気ガス後処理装置30との間を接続している。図8図9に示すように、接続管28は、排気ガス流入側が第1の排気ガス後処理装置25の筒体26の後端(排気ガス流出側)に接続され、U字状に湾曲する湾曲部28Aと、湾曲部28Aから筒体26の上側を筒体26と平行して前,後方向に延び、排気ガス流出側が第2の排気ガス後処理装置30の筒体31の前側に接続される延出部28Bとにより構成されている。
【0036】
図9に示すように、接続管28の湾曲部28Aは、第2の排気ガス後処理装置30の筒体31の後端よりも前側(流入口26A側)に位置している。即ち、湾曲部28Aは、第2の排気ガス後処理装置30の筒体31の後端から突出しないように湾曲している。また、図8に示すように、接続管28の延出部28Bは、排気ガス後処理装置24の横方向(左,右方向)の幅寸法および高さ寸法を可及的に小さくするべく、第1の排気ガス後処理装置25の上側、かつ第2の排気ガス後処理装置30の左下側に配設されている。
【0037】
尿素水噴射ノズル29は、接続管28の排気ガス流れ方向の上流側に取付けられている。この尿素水噴射ノズル29は、接続管28の延出部28Bの後端側に取付けられ、尿素水溶液を貯える尿素水タンクにポンプ(いずれも図示せず)を介して接続されている。尿素水噴射ノズル29は、接続管28内を流通する排気ガスに向けて尿素水溶液を噴射する。
【0038】
第2の排気ガス後処理装置30は、後処理装置取付枠19の上板19Bに取付けられた状態で油圧ポンプ12の上側に配置されている。即ち、第2の排気ガス後処理装置30は、第1の排気ガス後処理装置25の右斜め上側に配置されている。そして、第2の排気ガス後処理装置30は、接続管28の排気ガス流出側に接続され、第1の排気ガス後処理装置25の筒体26と平行して前,後方向に延びる長尺な円筒状の筒体31と、筒体31内に配置され、窒素酸化物(NOx)をアンモニアによって選択的に還元反応させて水と窒素に分解する選択還元触媒32と、選択還元触媒32の下流側に配置され、選択還元触媒32で窒素酸化物を還元した後に残った残留アンモニアを酸化し、窒素と水に分離する酸化触媒33と、酸化触媒33の下流側に配置され、筒体31から上側に向けて突出した尾管34とを含んで構成されている。
【0039】
第2の排気ガス後処理装置30の筒体31は、両端が閉塞された密閉容器として形成され、第1の排気ガス後処理装置25の筒体26よりも若干長い円筒体となっている。筒体31の上流側となる前側部位には、エンジン9側の側面に接続管28の延出部28Bが接続されている。一方、筒体31の外周側には、第2の排気ガス後処理装置30を取付板21を介して後処理装置取付枠19に取付けるためのブラケット31Aが設けられている。
【0040】
図9に示すように、第2の排気ガス後処理装置30の筒体31の軸線o2-o2は、第1の排気ガス後処理装置25の筒体26の軸線o1-o1と平行になっている。また、図8に示すように、第2の排気ガス後処理装置30の筒体31の軸線o2-o2は、筒体26の軸線o1-o1までの距離L1を可及的に小さくした状態で、筒体26の軸線o1-o1を通る鉛直線A-Aに対して角度αだけ右側にずれている。この角度αは、第1の排気ガス後処理装置25の筒体26と第2の排気ガス後処理装置30の筒体31とにより形成される横幅L2を可及的に小さく、かつ接続管28がエンジン9側に大きく突出しないように設定されている。
【0041】
即ち、第2の排気ガス後処理装置30の筒体31は、第1の排気ガス後処理装置25の筒体26に対し、上方でかつ右サイドフレーム5E側(右側)にずらして配置されている。また、第1の排気ガス後処理装置25と第2の排気ガス後処理装置30とは、上方からみてその一部が上,下方向に重なるように配置されている。その結果、第1の排気ガス後処理装置25と第2の排気ガス後処理装置30とは、その横幅L2を可及的に小さくしているので、ひいては後処理装置架台15の横幅寸法を小さくコンパクトにすることができる。これにより、排気ガス後処理装置24および油圧ポンプ12が配設されているポンプ側の空間に空きスペースを確保することができるので、この空きスペースを有効活用することができる。
【0042】
図10に示すように、選択還元触媒32は、例えばセラミックス製のセル状筒体からなり、その軸方向には多数の貫通孔が形成され、内面に貴金属がコーティングされている。この選択還元触媒32は、エンジン9から排出される排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を、尿素水溶液から生成されたアンモニアによって選択的に還元反応させ、窒素と水に分解するものである。
【0043】
酸化触媒33は、前述した酸化触媒27とほぼ同様に、セラミックス製のセル状筒体からなり、その軸方向には多数の貫通孔が形成され、内面に貴金属がコーティングされている。これにより、酸化触媒33は、選択還元触媒32で窒素酸化物を還元した後に残った残留アンモニアを酸化し、窒素と水に分離するものである。
【0044】
尾管34は、筒体31の下流側(酸化触媒33の下流側)となる後側部位に位置し、長さ方向の一端(下端)が筒体31内に挿入され、他端が筒体31から径方向上向きに突出している。筒体31内に入り込んだ尾管34の下端側には、多数個の貫通孔が設けられ、これら各貫通孔を排気ガスが通過することにより、排気音を低減(消音)させることができる。
【0045】
さらに、排気ガス後処理装置24には、電装品24A(図13参照)が取り付けられている。電装品24Aは、例えば、第2の排気ガス後処理装置30を通過する排気ガスに含まれる窒素酸化物の量を検知するセンサ、当該センサによる検知結果を電気信号として出力するコントローラ、その他の電気部品(抵抗、コンデンサ、ダイオード、スイッチ等)を指す。
【0046】
本実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次にその動作について説明する。
【0047】
まず、オペレータはキャブ7に搭乗してエンジン9を作動させる。そして、オペレータが、キャブ7内に配置された走行用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、油圧ショベル1を走行させることができ、作業用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、作業装置4を用いて土砂の掘削作業を行うことができる。
【0048】
ここで、エンジン9の運転時に、エンジン9から排出される排気ガスは、排気口10Aから排気管35を介して第1の排気ガス後処理装置25内に導入される。そして、図10に矢印で示すように、排気ガスは、第1の排気ガス後処理装置25から接続管28を介して第2の排気ガス後処理装置30を通過し、尾管34を通じて大気中に排出される。
【0049】
この場合、第1の排気ガス後処理装置25に設けられた酸化触媒27によって、排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等が酸化して除去される。また、必要に応じて粒子状物質(PM)が燃焼して除去される。一方、接続管28内では、尿素水噴射ノズル29から排気ガスに向けて尿素水が噴射され、第2の排気ガス後処理装置30では、選択還元触媒32によって窒素酸化物が窒素と水に分解される。さらに、酸化触媒33が残留アンモニアを酸化し、窒素と水に分離することにより、十分に浄化された排気ガスを大気中に排出することができる。
【0050】
ここで、エンジン9は、燃料を燃焼させることによって、油圧ショベル1を駆動させるための駆動力を発生させる。そのため、エンジン9の駆動中は、エンジン自体9が高温になると共に、エンジン9から排出される排気ガスも高温になる。さらに、高温の排気ガスが通過する排気管35、第1の排気ガス後処理装置25、接続管28、および第2の排気ガス後処理装置30も高温になる。
【0051】
そこで、本実施形態に係る建屋カバー8には、図11図13に示すように、開閉カバー50が設けられている。開閉カバー50は、排気ガス後処理装置24の日常点検(目視点検)を容易にすると共に、建屋カバー8の内部の熱を油圧ショベル1の外部に排気するダクト51と、ダクト51を通じて油圧ショベル1の外部から侵入する水滴(例えば、雨水など)を排水する排水部材52とを備える。
【0052】
以下、図11図13を参照して、開閉カバー50、ダクト51、及び排水部材52について詳細に説明する。図11は、開閉カバー50の斜視図である。図12は、ダクト51及び排水部材52の斜視図である。図13は、排気ガス後処理装置24、ダクト51、及び排水部材52の位置関係を示す断面図である。
【0053】
まず、図11に示すように、建屋カバー8には、開閉カバー50が設けられている。開閉カバー50は、排気ガス後処理装置24の上方を覆うように、建屋カバー8に取り付けられている。また、開閉カバー50は、ヒンジ50Aによって建屋カバー8に対して開閉可能に構成されている。開閉カバー50を開けることによって、排気ガス後処理装置24が露出する。その結果、建屋カバー8を取り外さなくても排気ガス後処理装置24の日常点検(目視点検)が可能になる。一方、点検のとき以外(油圧ショベル1の駆動時、駐機時など)は、開閉カバー50は閉じられる。
【0054】
図11に示すように、開閉カバー50は、ダクト51を有する。ダクト51は、開閉カバー50を厚み方向に貫通する貫通孔50Bを囲むように設けられている。また、ダクト51は、開閉カバー50が閉じられたときに、排気ガス後処理装置24と上下方向に対面する位置に設けられている。さらに、ダクト51は、開閉カバー50の上面から上方に突出している。図12に示すように、ダクト51は、一対の側壁53、54と、天壁55と、排気口56とを備える。
【0055】
側壁53は、貫通孔50Bの前端に沿って左右方向に延設され、且つ上方に突出している。側壁54は、貫通孔50Bの後端に沿って左右方向に延設され、且つ上方に突出している。すなわち、一対の側壁53、54は、前後方向において互いに対面している。また、一対の側壁53、54の左側部分は、その突出量が右方に向かって徐々に大きくなっている。一方、一対の側壁53、54の右側部分は、その突出量が同一である。
【0056】
天壁55は、一対の側壁53、54の突出端に接続されている。天壁55は、傾斜部55Aと、水平部55Bとで構成される。傾斜部55Aは、貫通孔50Bの左端に沿って前後方向に延設され、一対の側壁53、54の右側部分に沿って右方に向かって上り傾斜となっている。水平部55Bは、傾斜部55Aの右端に接続され、一対の側壁53、54の右側部分に沿って水平方向に延設されている。
【0057】
一方、一対の側壁53、54及び天壁55の右端で囲まれたダクト51の右側面は、排気口56として開放されている。排気口56は、概ね矩形の外形を呈する開口部である。さらに、排気口56には、複数の貫通孔が形成された板状のメッシュ56Aが取り付けられている。
【0058】
また、図12に示すように、開閉カバー50は、排水部材52を有する。排水部材52は、ダクト51の内部に取り付けられている。排水部材52は、堰止板57と、傾斜板58と、一対の側板59、60とで構成されている。排水部材52は、例えば、平板を曲げ加工することによって形成される。
【0059】
堰止板57は、傾斜板58の左端から上方に突出し、且つ傾斜板58の左端に沿って前後方向に延設されている。また、堰止板57は、排気口56と対面して配置されている。より詳細には、堰止板57は、排気口56(または、メッシュ56A)と平行に配置されている。
【0060】
また、堰止板57は、左右方向において、傾斜部55Aより排気口56に近い側(すなわち、傾斜部55Aより右側)に配置されている。換言すれば、堰止板57は、水平部55Bの下方に配置されている。さらに、堰止板57は、天壁55(より詳細には、水平部55B)より下方に位置している。換言すれば、堰止板57の上端と、天壁55(より詳細には、水平部55B)の下面との間には、隙間が形成されている。建屋カバー8の内部の高温の空気は上昇し、傾斜部55Aに沿って移動し、天壁55と堰止板57との間の隙間を通って排気口56から排出される。
【0061】
傾斜板58は、堰止板57の下端に沿って前後方向に延設され、且つ堰止板57の下端から右方(すなわち、排気口56側)に向けて下り傾斜となっている。また、傾斜板58には、厚み方向に貫通する貫通孔58Aが形成されている。貫通孔58Aの数は特に限定されないが、本実施形態に係る傾斜板58には、前後方向に離間した2箇所に貫通孔58Aが形成されている。
【0062】
一対の側板59、60は、傾斜板58の前端及び後端から上方に突出し、傾斜板58に沿って右方に向けて下り傾斜となっている。また、一対の側板59、60は、一対の側壁53、54の内面に取り付けられている。すなわち、排水部材52(より詳細には、堰止板57及び傾斜板58)は、ダクト51の前後方向の全域に延設されている。
【0063】
次に図13を参照して、排気ガス後処理装置24と、ダクト51及び排水部材52との位置関係を説明する。
【0064】
まず、第2の排気ガス後処理装置30は、第1の排気ガス後処理装置25より上方かつ排気口56に近い側に配置されている。接続管28は、第1の排気ガス後処理装置25の上端より上方で、且つ第2の排気ガス後処理装置30の上端より下方に配置されている。また、接続管28は、第2の排気ガス後処理装置30より左方(すなわち、排気口56から遠い側)に配置されている。
【0065】
電装品24Aは、第2の排気ガス後処理装置30の上端(換言すれば、筒体31の中心を通り上下方向に延びる仮想線)より左方(すなわち、排気口56から遠い側)に配置されている。また、電装品24Aは、接続管28より上方に配置されている。さらに、電装品24Aは、水平部55Bより左方(すなわち、排気口56から遠い側)に配置されている。換言すれば、電装品24Aは、傾斜部55Aの下方に配置されている。
【0066】
そして、上記の実施形態に係る排気口56は、左右方向(水平方向)において、電装品24Aから右方にずれた位置に配置されている。また、上記の実施形態に係る堰止板57は、電装品24Aより上方において、排気口56に対面して配置されている。さらに、上記の実施形態に係る傾斜板58は、堰止板57の下端から電装品24Aと反対向きに下り傾斜となっている。
【0067】
これにより、排気口56を通じてダクト51の内部に水滴は、堰止板57によって堰き止められて、電装品24Aに到達することが防止される。さらに、堰止板57で堰き止められた水滴は、傾斜板58の上面に沿って右方に導かれ、貫通孔58Aを通じて排出される。
【0068】
また、上記の実施形態に係る傾斜板58は、第2の排気ガス後処理装置30の上部に位置している。また、上記の実施形態に係る貫通孔58Aは第2の排気ガス後処理装置30の上方に設けられている。より詳細には、上記の実施形態に係る貫通孔58Aは、第2の排気ガス後処理装置30の上端より右方(すなわち、排気口56に近い位置)において、傾斜板58を厚み方向に貫通している。これにより、貫通孔58Aを通じて排出された水滴は、第2の排気ガス後処理装置30の筒体31に沿って、電装品24A及び接続管28と反対側に排水される。その結果、電装品24A及び接続管28が被水するのを防止できる。
【0069】
また、上記の実施形態に係る堰止板57は、電装品24Aより右方(すなわち、排気口56に近い位置)に配置されている。これにより、電装品24Aの周辺の高温の空気は、堰止板57及び傾斜板58に邪魔されずに、天壁55及び堰止板57の間を通って排気口56から円滑に排気される。その結果、電装品24Aの周辺の熱を速やかに下げることができる。なお、本実施形態は、冷却ファン9Aの駆動中より、冷却ファン9Aが停止した直後の自然対流(上昇気流)による排気を促せる点で、特に効果がある。
【0070】
また、上記の実施形態に係る電装品24Aは、水平部55Bより左方(すなわち、排気口56から遠い位置)に配置されている。換言すれば、上記の実施形態に係る電装品24Aは、傾斜部55Aの下方に配置されている。これにより、電装品24Aの周辺の高温の空気は、傾斜部55Aに沿って円滑に排気口56へ流れる。その結果、電装品24Aの周辺の熱をさらに速やかに下げることができる。
【0071】
さらに、上記の実施形態によれば、電装品24Aを水滴から保護するためのカバーで排気ガス後処理装置24を覆う必要がない。そのため、電装品24Aの周囲で発生した熱がカバーの内側に籠ることがなくなり、速やかに放熱される。
【0072】
また、上述した実施形態では、第1の排気ガス後処理装置25の筒体26内に酸化触媒27だけを設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第1の排気ガス後処理装置25の筒体26内に、酸化触媒27の下流側に粒子状物質除去フィルタ(DPF)が設けられていてもよい。この粒子状物質除去フィルタは、エンジンから排出される排気ガス中の粒子状物質(PM)を捕集し、燃焼して除去することにより、排気ガスを浄化するものである。
【0073】
また、上述した実施形態では、建設機械として、クローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。それ以外にも、ホイールローダ、ダンプトラック、油圧クレーン等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【0074】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
4 作業装置
8 建屋カバー
9 エンジン
24 排気ガス後処理装置
24A 電装品
25 第1の排気ガス後処理装置
28 接続管
30 第2の排気ガス後処理装置
50 開閉カバー
51 ダクト
52 排水部材
55 天壁
55A 傾斜部
55B 水平部
56 排気口
57 堰止板
58 傾斜板
58A 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13