(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】コンクリートミキサ
(51)【国際特許分類】
B28C 5/14 20060101AFI20240628BHJP
B01F 27/70 20220101ALI20240628BHJP
【FI】
B28C5/14
B01F27/70
(21)【出願番号】P 2020174412
(22)【出願日】2020-10-16
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】篭谷 武
(72)【発明者】
【氏名】田村 彰啓
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-036775(JP,A)
【文献】特開2005-041113(JP,A)
【文献】特開昭51-039454(JP,A)
【文献】特開2010-201835(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103128855(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 5/00 - 5/48
B01F 27/00 - 27/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面略半円形状の二双の混練胴よりなる混練槽を備え、該混練槽の対向する一対の垂直面からなる側壁には前記各混練胴の略中心部を通すように四本の混練軸を回転自在に軸支し、該各混練軸には前記混練胴の底壁に沿って回転して混練材料を連続的に送り出す螺旋形状の混練羽根を固着すると共に、前記各混練軸の混練羽根は、対向位置の混練軸の混練羽根とは互いに干渉しない長さとし、かつ平行位置の混練軸の混練羽根とは回転軌跡の一部が交錯するように形成し、前記各混練軸のうち、平行位置の混練軸同士は同一方向に回転する一方、対向位置の混練軸同士は逆方向に回転する構成としたことを特徴とするコンクリートミキサ。
【請求項2】
前記混練羽根は、前記混練軸の軸心に対して対向位置に一対固着することを特徴とする請求項1記載のコンクリートミキサ。
【請求項3】
前記混練羽根は、対向位置の混練軸の混練羽根とは互いの羽根先端部同士が近接する長さとしたことを特徴とする請求項1または2記載のコンクリートミキサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂利、砂、セメント、水、及び混和剤などのコンクリート用の各種混練材料を練り混ぜてコンクリートを製造するコンクリートミキサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートやモルタル等を製造するバッチャープラントでは、
図1に示すように、断面が略半円形状の二双の混練胴102、103よりなる混練槽104内に、前記各混練胴102、103の略中心部を通すように二本の平行な混練軸105a、105bを回転自在に軸支し、該混練軸105a、105bの周囲に複数の混練羽根106を取り付けてなる二軸式のコンクリートミキサ101aが多く採用されている。
【0003】
前記二軸式のコンクリートミキサ101aでは、混練槽104内の二本の混練軸105a、105b間の中央部付近にて各混練軸105a、105bの混練羽根106の回転軌跡の一部が交錯する構成としていると共に、前記各混練軸105a、105bを、
図1の(a)に示すように、混練槽104の下半部側で見たときに何れの混練羽根106も混練槽104の前記中央部側へ向かうように、図中X方向へ回転(以下、「正回転」という。)させている。
【0004】
そして、混練槽104内に投入した混練材料に対し、混練槽104の前記中央部付近にて各混練軸105a、105bの混練羽根106が交錯する際に剪断作用を付与しつつ、混練槽104内全域に亘って平面視で略環状に流動(循環流動)させて練り混ぜるようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では、設計基準強度が36N/mm2を超える高強度コンクリートと呼ばれるコンクリートはもとより、60N/mm2を超える超高強度コンクリートと呼ばれるコンクリートを製造する機会が増えつつあり、場合によっては150~200N/mm2程度もの強度を有するコンクリートを製造する機会も増えている。このような超高強度コンクリートは普通コンクリート(設計基準強度が36N/mm2以下のコンクリート)と比較すると粘性が高く、特に150~200N/mm2程度もの強度を有するものでは相当に高粘性を呈して練り混ぜ途中での流動性が低下し、例えば、従来の前記二軸式のコンクリートミキサ101aにてこのような高粘性のコンクリートを混練しようとすると、循環流動の動きが鈍くなる結果、場合によっては混練時間が長くなる傾向があった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑み、普通コンクリートだけでなく超高強度コンクリートなどの高粘性のコンクリートをも効率よく混練できるコンクリートミキサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、各混練軸105a、105bの回転方向に着眼し、前記のように、従来の二軸式のコンクリートミキサ101aでは各混練軸105a、105bの回転方向を専ら正回転として設計しているが、必ずしも正回転に限定する必要はないのではないかと考えた。そして、本発明者らは上記発想の下、
図1の(b)に示すように、コンクリートミキサ101bの各混練軸105a、105bを、混練槽104の下半部側で見たときに何れの混練羽根106も混練槽104の左右側壁107a、107b側へ向かうように、図中Y方向へ回転(以下、「逆回転」という。)させた上で、高粘性の超高強度コンクリートを混練する実験を試みたところ、何れの混練軸105a、105bも正回転とする従来のコンクリートミキサ101aよりも比較的短時間で練り混ぜ可能であることを確認した。これは、推測であるが、逆回転する各混練軸105a、105bの混練羽根106の搬送面にて混練槽104内の混練材料を混練槽104の左右側壁107a、107b内面に強く押し付けることが可能になったことにより、混練材料に効果的に圧縮・剪断作用を付与することができたことが要因であると考えた。
【0009】
ただし、二軸式のコンクリートミキサ101bにて各混練軸105a、105bを共に逆回転させた場合、
図1の(b)に示すように、混練に伴って徐々に高粘性を発現する混練材料は混練槽104の左右側壁107a、107b側に分断されて滞留を生じ易くなる結果、材料の循環流動の動きはあまり良化せず、また混練槽104中央部の上方から混練槽104底壁方向へ回転する混練羽根106が空気を巻き込み易くなる結果、エントラップトエア(ミキサ混練時に自然に混入する空気泡であって、これが増加するとコンクリートの強度低下に繋がる)が増加するなど、依然として改善の余地があった。
【0010】
そこで、本発明者らは、更に研究を重ね、各混練軸105a、105bを同方向に回転させるのではなく、
図1の(c)に示すように、コンクリートミキサ101cの一方の混練軸105bを逆回転させ、他方の混練軸105aを正回転させればよいのではないかと考えた。即ち、一方の混練軸105bを逆回転させることで、逆回転による混練材料への圧縮・剪断作用を維持しつつ、他方の混練軸105aは正回転とすることで、混練槽104内での材料の分断を抑えて循環流動の動きを高めると共に、エントラップトエアの増加を抑制するようにすれば、正・逆回転のそれぞれの長所を生かせてより好ましいものになるのではないかと考えた。
【0011】
なお、混練軸が二軸の場合、上記のように回転させると、混練材料は混練槽104の片側に偏在し、好適に混練することが困難になると予想されるため、例えば二本の各混練軸を長手方向の中間部分で分断して四軸とした上で、これら各混練軸のうち、平行位置の混練軸同士は同一方向に回転する一方、対向位置の混練軸同士は逆方向に回転する構成とすれば前記不具合も解消できるのではないかとの結論に至り、本発明を成すに至った。
【0012】
即ち、本発明に係る請求項1記載のコンクリートミキサでは、断面略半円形状の二双の混練胴よりなる混練槽を備え、該混練槽の対向する一対の垂直面からなる側壁には前記各混練胴の略中心部を通すように四本の混練軸を回転自在に軸支し、該各混練軸には前記混練胴の底壁に沿って回転して混練材料を連続的に送り出す螺旋形状の混練羽根を固着すると共に、前記各混練軸の混練羽根は、対向位置の混練軸の混練羽根とは互いに干渉しない長さとし、かつ平行位置の混練軸の混練羽根とは回転軌跡の一部が交錯するように形成し、前記各混練軸のうち、平行位置の混練軸同士は同一方向に回転する一方、対向位置の混練軸同士は逆方向に回転する構成としたことを特徴としている。
【0013】
また、請求項2記載のコンクリートミキサでは、前記混練羽根は、前記混練軸の軸心に対して対向位置に一対固着することを特徴としている。
【0014】
また、請求項3記載のコンクリートミキサでは、前記混練羽根は、対向位置の混練軸の混練羽根とは互いの羽根先端部同士が近接する長さとしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る請求項1記載のコンクリートミキサによれば、混練槽の対向する一対の垂直面からなる側壁には各混練胴の略中心部を通すように四本の混練軸を回転自在に軸支し、該各混練軸には螺旋形状の混練羽根を固着すると共に、前記各混練軸の混練羽根は、対向位置の混練軸の混練羽根とは互いに干渉しない長さとし、かつ平行位置の混練軸の混練羽根とは回転軌跡の一部が交錯するように形成し、前記各混練軸のうち、平行位置の混練軸同士は同一方向に回転する一方、対向位置の混練軸同士は逆方向に回転する構成としたので、混練槽内に投入した混練材料を各混練羽根の回転方向にしたがって送り出せば、混練材料の循環流動の動きを損なうことなく、混練材料に対して効果的に圧縮・剪断作用を付与でき、普通コンクリートだけでなく、超高強度コンクリートなどの高粘性のコンクリートをも効率よく混練できる。
【0016】
また、請求項2記載のコンクリートミキサによれば、前記混練羽根は、前記混練軸の軸心に対して対向位置に一対固着するので、混練材料の循環流動の動きを高められると共に、混練材料に対する圧縮・剪断作用をより効果的に付与でき、高粘性のコンクリートを一層効率よく混練できる。
【0017】
また、請求項3記載のコンクリートミキサによれば、前記混練羽根は、対向位置の混練軸の混練羽根とは互いの羽根先端部同士が近接する長さとしたので、混練材料の送り出しをより連続的にできて循環流動の動きを一層高められると共に、対向位置の混練軸の混練羽根との間で生じる剪断作用を混練材料に対してより効果的に付与でき、高粘性のコンクリートを一層効率よく混練できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】二軸式のコンクリートミキサの各混練軸の回転方向を、共に正回転(a)、共に逆回転(b)、一方を正回転・他方を逆回転(c)とした上で、混練材料を混練する状態を示した混練槽の断面図である。
【
図2】本発明に係るコンクリートミキサの実施例を示す、一部を切り欠き、省略した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るコンクリートミキサにあっては、断面略半円形状の二双の混練胴よりなる混練槽を備え、該混練槽の対向する一対の垂直面からなる側壁には各混練胴の略中心部を通すように四本の混練軸を貫通させ、それぞれ回転自在に軸支する。
【0020】
前記各混練軸には、前記混練胴の底壁に沿って回転して混練材料を連続的に送り出す螺旋形状の混練羽根を固着する。また、前記各混練軸の混練羽根は、対向位置の混練軸の混練羽根とは互いに干渉しない長さとし、かつ隣り合う平行位置の混練軸の混練羽根とは回転軌跡の一部が交錯するように形成する。
【0021】
また、前記各混練軸のうち、隣り合う平行位置の混練軸同士は同一方向に回転(一方が正回転、他方が逆回転)する一方、対向位置の混練軸同士は逆方向に回転する構成とする。なお、平行位置の混練軸同士は、各混練軸の混練羽根が交錯する領域でお互いに干渉しないように、位相を、例えば90度程度ずらした上で、同期させながら回転する構成とする一方、対向位置の混練軸同士は、各混練軸の混練羽根は干渉が生じない配置としているため、回転時に同期をとる必要は無い。
【0022】
また、好ましくは、前記混練羽根は、前記混練軸の軸心に対して対向位置に一対固着するとよく、これにより混練軸が一回転する際の混練羽根による混練材料の送り出しを倍増できる結果、混練材料の循環流動の動きを高められると共に、混練材料に対する圧縮・剪断作用をより効果的に付与可能な構成となる。
【0023】
また、更に好ましくは、前記混練羽根は、対向位置の混練軸の混練羽根とは互いの羽根先端部同士が近接する長さとするとよく、これにより混練材料を混練槽の対向位置へより連続的に送り出せる結果、混練材料の循環流動の動きを一層高められると共に、対向位置の混練軸の混練羽根との間で生じる剪断作用を混練材料に対してより効果的に付与可能な構成となる。
【0024】
なお、対向位置の各混練軸の混練羽根の間隔としては、あまり狭め過ぎると混練中に各混練羽根間を通過する骨材が噛み込んで骨材割れを生じたり、ミキサに高負荷を及ぼすおそれがある一方、広げ過ぎると混練槽内の混練材料の循環流動が鈍くなり、かつ付与される剪断作用も弱まるため、混練するコンクリートに含まれる最大粒径の骨材がぎりぎり通過可能な程度の間隔(最大骨材径より僅かに広い間隔)となるように調整すると好ましい。
【0025】
そして、前記コンクリートミキサにて超高強度コンクリートなどの高粘性のコンクリートを混練するときには、正回転側の混練軸の混練羽根では、混練槽内の混練材料を平行位置の混練軸との間の中央部(以下、「平行側中央部」という。)へ順次送り出す一方、平行位置の逆回転側の混練軸の混練羽根では、混練槽の平行側中央部に送り出した混練材料を受け継ぎ、回転方向下流側である混練槽の側壁面へと順次送り出す。このとき、正回転側の混練羽根と、平行位置の逆回転側の混練羽根とは、混練槽の平行側中央部付近にて交錯する際に混練材料に対して剪断作用を付与することとなるが、前記各混練羽根は平行側中央部付近では進行方向が逆行するため、より効果的な剪断作用が期待できる。そして、逆回転側の混練羽根では、混練材料を混練槽の側壁面へ送り出す傍ら、羽根の搬送面にて進行方向にある前記側壁内面に強く押し付け、その際に混練材料に効果的に圧縮・剪断作用を付与する。
【0026】
次いで、前記逆回転側の混練羽根では、混練槽の側壁内面に押し付けた混練材料を、混練槽の側壁に沿って対向位置の混練軸方向に順次送り出す一方、対向位置の正回転側の混練軸の混練羽根では、送り出された前記混練材料を受け継ぎ、前記同様に、混練槽の平行側中央部へと順次送り出していく。このとき、前記逆回転側の混練軸の混練羽根と、対向位置の正回転側の混練軸の混練羽根とは、これら各混練軸間の中央部(以下、「対向側中央部」という。)付近にて混練材料を受け継ぐ際にも、前記各混練羽根の進行方向が逆行することから、二軸式のコンクリートミキサとは異なり、混練材料に対して効果的に剪断作用を付与することとなる。そして、前記正・逆回転の四本の各混練軸の混練羽根が上記一連の回転動作を継続することにより、混練槽内の混練材料は前記剪断作用、圧縮・剪断作用を繰り返し受けながら混練槽内全域を循環流動して混練されていく。
【0027】
このように、混練槽内に二本ずつ向き合うように四本の混練軸を回転自在に軸支した上で、これら各混練軸のうち、平行位置の混練軸同士は同一方向へ、対向位置の混練軸同士は逆方向へと回転させるようにしたことにより、混練槽内の材料を混練槽内全域に亘って円滑に循環流動させることができると共に、混練材料に対して効果的に剪断作用、及び圧縮・剪断作用を付与でき、普通コンクリートだけでなく、高強度コンクリートや超高強度コンクリートなどの高粘性のコンクリートをも効率よく混練することが可能となる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0029】
図中の1は、砂利、砂、セメント、水、及び混和剤などの各種混練材料を練り混ぜてコンクリートやモルタルを製造するコンクリートミキサであって、上端部に材料投入口を、下端部に排出ゲート(図示せず)を有した、断面略半円形状の二双の混練胴2、3よりなる混練槽4を備えている。
【0030】
前記混練槽4の対向する二対の側壁5a、5b、及び6a、6bのうち、垂直面からなる側壁5a、5bには、前記各混練胴2、3の略中心部を通すように四本の混練軸7a、7b、8a、8bを貫通させ、それぞれ回転自在に軸支し、適宜の駆動装置(図示せず)にて所定方向に回転する構成としている。
【0031】
前記各混練軸7a、7b、8a、8bには、軸心に対して対向位置に一対の螺旋形状の混練羽根9を固着しており、該混練羽根9は混練胴2、3の底部内周壁面に沿うように混練軸7a、7b、8a、8bの周方向へ約1/4周程度周回させ(捻り)ながら混練槽4の対向側中央部付近まで延伸させた形状としている。なお、混練羽根9を上記形状とすることで、平行位置の混練軸同士(7aと7b、及び8aと8b)の混練羽根9の干渉を避けつつ、混練材料の送り出し能力をできるだけ高められる構成となって好ましい。
【0032】
また、前記混練軸7aに備えた混練羽根9の回転軌跡と、平行位置の混練軸7bに備えた混練羽根9の回転軌跡とは、混練槽4の平行側中央部付近にてその一部が交錯するように形成していると共に、羽根同士の干渉が生じないように混練軸7aの混練羽根9と、混練軸7bの混練羽根9とは、互いに位相を約90度程度ずらした上で、チェーンや同調ギヤ等の適宜の同調機構にて同期させながら回転する構成としている。また、同様の位置関係にある混練軸8a、8bの各混練羽根9についても、前記と同様に位相を約90度程度ずらした上で、同期させながら回転する構成としている。なお、対向位置にある混練軸7aと混練軸8b、及び混練軸7bと混練軸8aの混練羽根9では、羽根同士の干渉が生じない配置であるため、回転時に同期をとる必要は無い。
【0033】
また、前記混練軸7aの混練羽根9の先端部(混練軸7a軸心方向の先端部)と、対向位置の混練軸8bの混練羽根9の先端部(混練軸8b軸心方向の先端部)とは、それらの間隔が混練するコンクリートに含まれる骨材の最大骨材径より僅かに広い間隔(例えば、最大骨材径よりも約10mm程度広い間隔とし、最大骨材径が20mmであれば約30mm程度)となるように近接配置し、互いの混練羽根9が干渉しないように、かつ骨材割れ等の不具合が生じないようにしながらも、混練槽4内での混練材料の循環流動性や、各混練軸7a、8bの混練羽根9による剪断作用をできるだけ高められるように図っている。また、同様の位置関係にある混練軸7b、8aの各混練羽根9の先端部同士の間隔についても、前記と同等の間隔となるように調整している。
【0034】
また、混練槽4内の四本の混練軸7a、7b、8a、8bのうち、平行位置にある混練軸同士(7aと7b、及び8aと8b)は同一方向に回転させる一方、対向位置の混練軸同士(7aと8b、及び7bと8a)は逆方向に回転させる構成としている。なお、図中の太矢印Xが正回転を示している一方、太矢印Yが逆回転を示しており、混練軸7aと8aは正回転、混練軸7bと8bは逆回転することを表している。
【0035】
図2中の太矢印A、B、C、Dは、混練軸7a、8aを正回転させ、混練軸7b、8bを逆回転させた際に、混練槽4内の混練材料が循環流動する方向を示している。また、
図2中の網掛け部α1は、混練槽4内を循環流動する混練材料に対して、平行位置の混練軸7aと7b、及び8aと8bの各混練羽根9が交錯する際に剪断作用が付与される剪断領域、網掛け部α2は、対向位置の混練軸7aと8b、及び7bと8aの各混練羽根9間においてそれぞれの回転方向の違いによって剪断作用が付与される剪断領域、網掛け部βは、逆回転する混練軸7b、8bの各混練羽根9が循環流動する混練材料を混練槽4の側壁6a、6b内面に押し付ける際に圧縮・剪断作用が付与される圧縮・剪断領域を示している。
【0036】
そして、上記構成のコンクリートミキサ1にて超高強度コンクリートなどの高粘性のコンクリートを混練するときには、混練軸7a、8aは正回転させる一方、混練軸7b、8bは逆回転させた上で、混練槽4内に砂利、砂、セメント、混和剤、水などの各種混練材料を配合に応じて所定量ずつ投入すると、前記混練材料は混練槽4内を所定方向(本実施例では、平面視で時計回り)へ順次送り出されて循環流動していく。
【0037】
例えば、正回転側の混練軸7aの混練羽根9では、
図2中の太矢印Aで示すように、混練槽4内の混練材料を平行位置の混練軸7bとの間の中央部である平行側中央部へ順次送り出す一方、平行位置の逆回転側の混練軸7bの混練羽根9では、前記平行側中央部に送り出した前記混練材料を受け継ぎ、回転方向下流側である混練槽4の略半円形状の側壁6bへと順次送り出す。このとき、正回転側の混練軸7aの混練羽根9と、平行位置の逆回転側の混練軸7bの混練羽根9とは、混練槽4の前記平行側中央部付近である剪断領域α1にて交錯する際に混練材料に対して剪断作用を付与することとなるが、前記各混練羽根9は平行側中央部付近では進行方向が逆行するため、より効果的な剪断作用が期待できる。
【0038】
そして、逆回転側の混練軸7bの混練羽根9では、混練材料を混練槽4の側壁6b内面へ送り出す傍ら、混練羽根9の搬送面にて進行方向にある圧縮・剪断領域βの前記側壁6b内面に強く押し付け、その際に混練材料に効果的に圧縮・剪断作用を付与する。
【0039】
次いで、前記逆回転側の混練軸7bの混練羽根9では、
図2中の太矢印Bで示すように、混練槽4の側壁6b内面に押し付けた混練材料を、前記側壁6b内面に沿わせたまま対向位置の混練軸8a方向に順次送り出す一方、対向位置の正回転側の混練軸8aの混練羽根9では、送り出された混練材料を受け継ぎ、
図2中の太矢印Cで示すように、混練槽4の平行側中央部へと順次送り出していく。このとき、前記逆回転側の混練軸7bの混練羽根9と、対向位置の正回転側の混練軸8aの混練羽根9とは、これら各混練軸7b、8a間中央部の対向側中央部付近である剪断領域α2にて混練材料を受け継ぐ際にも、羽根同士の交錯はないものの、前記各混練軸7b、8aの混練羽根9の進行方向が逆行することから、混練材料に対して効果的に剪断作用を付与できる。
【0040】
そして、前記混練軸8aに対して平行位置にある逆回転側の混練軸8bの混練羽根9では、前記同様に、前記平行側中央部に送り出した前記混練材料を受け継ぎ、回転方向下流側である混練槽4の略半円形状の側壁6aへと順次送り出した後、
図2中の太矢印Dで示すように、再び対向位置にある正回転側の混練軸7a方向に順次送り出していく。このとき、前記混練軸8a、8bの各混練羽根9間の剪断領域α1、混練軸8b、7aの各混練羽根9間の剪断領域α2では、前記同様に、混練材料に対して剪断作用を付与する一方、混練軸8bの混練羽根9の回転方向下流側に位置する混練槽4の側壁6a付近の圧縮・剪断領域βにおいても、前記同様に、混練材料に対して圧縮・剪断作用を付与する。そして、前記各混練軸7a、7b、8a、8bの混練羽根9が上記一連の回転動作を継続することにより、混練槽4内に投入した混練材料は前記剪断作用、圧縮・剪断作用を繰り返し受けながら混練槽4内全域に亘って循環流動を続け、次第に練り上げられていく。
【0041】
このように、混練槽4内に二本ずつ向き合うように四本の混練軸7a、7b、8a、8bを回転自在に軸支した上で、これら各混練軸のうち、平行位置の混練軸同士(7aと7b、及び8aと8b)は同一方向へ、対向位置の混練軸同士(7aと8b、及び7bと8a)は逆方向へと回転させるようにしたことにより、混練槽4内に投入した混練材料を混練槽4内全域に亘って円滑に循環流動させることができると共に、混練材料に対して効果的に剪断作用、及び圧縮・剪断作用を付与でき、普通コンクリートだけでなく、高強度コンクリートや超高強度コンクリートなどの高粘性のコンクリートをも比較的短時間にて効率よく混練することが可能となる。
【0042】
なお、本発明者らは、従来の二軸式のコンクリートミキサと本発明のコンクリートミキサとで、150N/mm2の超高強度コンクリートの比較混練実験を実施したところ、本発明のコンクリートミキサでは、練り上がりまでに要する時間が従来の二軸式のコンクリートミキサよりも約30%程度短縮できることを確認した。
【符号の説明】
【0043】
1…コンクリートミキサ 2、3…混練胴
4…混練槽 7a、7b、8a、8b…混練軸
9…混練羽根