(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】柱の調整機構及び柱の調整方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/24 20060101AFI20240628BHJP
E02D 7/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
E02D5/24
E02D7/00 Z
(21)【出願番号】P 2020188185
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】000176512
【氏名又は名称】三谷セキサン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】谷川 友浩
(72)【発明者】
【氏名】田屋 裕司
(72)【発明者】
【氏名】土屋 富男
(72)【発明者】
【氏名】菊池 亮人
(72)【発明者】
【氏名】西 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】飯田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】豊田 光一
(72)【発明者】
【氏名】横山 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】今井 明士
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-108720(JP,A)
【文献】特開2019-135353(JP,A)
【文献】特開2017-008490(JP,A)
【文献】特開平07-109733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22- 5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既製杭が杭孔へ挿入された状態で、前記既製杭の杭頭に固定された柱を挟み込み、前記柱の水平位置及び鉛直位置を位置決めする位置決め架台と、
前記既製杭と前記杭孔との間に挟まれた状態で膨張し、前記柱の傾きを調整する袋体と、
を備え、
前記位置決め架台は、
前記柱を挟み込んで水平方向の第一方向及び前記第一方向と直交する第二方向に位置決めする方向調整部材と、
前記方向調整部材によって位置決めされた前記柱の平面位置を調整可能なジャッキと、
を有する柱の調整機構。
【請求項2】
前記方向調整部材は、
第一方向から前記柱を挟み込んで第一方向に位置決めする第一方向調整部材と、
第二方向から前記柱を挟み込んで第二方向に位置決めする第二方向調整部材と、
を備え、
前記ジャッキは、
前記第一方向調整部材及び前記第二方向調整部材が固定された枠体を台座に対して位置決め可能な、
請求項1に記載の柱の調整機構。
【請求項3】
前記既製杭は中空とされ、
前記既製杭の杭頭には排泥機構が備えられている、
請求項1
又は2に記載の柱の調整機構。
【請求項4】
前記排泥機構は、
十字型の鋼製柱の下端部に溶接された円環状のベースプレートであり、前記ベースプレートに前記既製杭が固定されている、
請求項3に記載の柱の調整機構。
【請求項5】
杭頭に柱が固定された既製杭を杭孔へ挿入する工程と、
位置決め架台で前記柱を挟み込み、前記柱の水平位置及び鉛直位置を位置決めする工程と、
前記既製杭と前記杭孔との間に挟まれた袋体を膨張させ、前記柱の傾きを調整する工程と、
を備え、
前記水平位置の位置決めは、
前記柱を挟み込む方向調整部材を用いて水平方向の第一方向及び前記第一方向と直交する第二方向に位置決めする工程と、
前記方向調整部材によって位置決めされた前記柱の平面位置をジャッキで調整する工程と、
を有する、柱の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱の調整機構及び柱の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、杭体施工方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の杭体施工方法においては、杭体の外周面に設置した袋状体に注入材を注入することにより、杭体及び柱の位置又は傾きを調整している。
【0005】
しかしながら、袋状体に注入する注入材の量を調整するだけでは、柱の位置又は傾きの微調整がし難く、柱の施工精度を確保することが難しい。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、既製杭に固定された状態で立設される柱の施工精度を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の柱の調整機構は、既製杭が杭孔へ挿入された状態で、前記既製杭の杭頭に固定された柱を挟み込み、前記柱の水平位置及び鉛直位置を位置決めする位置決め架台と、前記既製杭と前記杭孔との間に挟まれた状態で膨張し、前記柱の傾きを調整する袋体と、を備え、前記位置決め架台は、前記柱を挟み込んで水平方向の第一方向及び前記第一方向と直交する第二方向に位置決めする方向調整部材と、前記方向調整部材によって位置決めされた前記柱の平面位置を調整可能なジャッキと、を有する。
【0008】
請求項1の柱の調整機構においては、既製杭の杭頭に固定された柱の水平位置及び鉛直位置が、位置決め架台によって位置決めされる。さらに、既製杭と杭孔との間に挟まれた袋体が膨張することで、柱の傾きが調整される。これにより、既製杭に固定された状態で立設される柱の施工精度を確保できる。
請求項2の柱の調整機構は、請求項1に記載の柱の調整機構において、前記方向調整部材は、第一方向から前記柱を挟み込んで第一方向に位置決めする第一方向調整部材と、第二方向から前記柱を挟み込んで第二方向に位置決めする第二方向調整部材と、を備え、前記ジャッキは、前記第一方向調整部材及び前記第二方向調整部材が固定された枠体を台座に対して位置決め可能である。
【0009】
請求項3の柱の調整機構は、請求項1又は2に記載の柱の調整機構において、前記既製杭は中空とされ、前記既製杭の杭頭には排泥機構が備えられている。
【0010】
請求項3の柱の調整機構においては、既製杭が中空とされている。このため、既製杭を杭孔へ挿入すると、杭の先端から中空部分に泥土が充填される。ここで、杭頭に排泥機構が備えられていることにより、中空部分に充填された泥土等は、杭頭から排出される。これにより、杭頭から排泥されない構成と比較して、中空部分にセメントミルクが充填されやすく、杭の強度を確保し易い。
請求項4の柱の調整機構は、請求項3に記載の柱の調整機構において、前記排泥機構は、十字型の鋼製柱の下端部に溶接された円環状のベースプレートであり、前記ベースプレートに前記既製杭が固定されている。
【0011】
請求項5の柱の調整方法は、杭頭に柱が固定された既製杭を杭孔へ挿入する工程と、位置決め架台で前記柱を挟み込み、前記柱の水平位置及び鉛直位置を位置決めする工程と、前記既製杭と前記杭孔との間に挟まれた袋体を膨張させ、前記柱の傾きを調整する工程と、を備え、前記水平位置の位置決めは、前記柱を挟み込む方向調整部材を用いて水平方向の第一方向及び前記第一方向と直交する第二方向に位置決めする工程と、前記方向調整部材によって位置決めされた前記柱の平面位置をジャッキで調整する工程と、を有する。
【0012】
請求項5の柱の調整方法においては、既製杭の杭頭に固定された柱の水平位置及び鉛直位置が、位置決め架台によって位置決めされる。さらに、既製杭と杭孔との間に挟まれた袋体が膨張することで、柱の傾きが調整される。これにより、既製杭に固定された状態で立設される柱の施工精度を確保できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、既製杭に固定された状態で立設される柱の施工精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(A)は本発明の実施形態に係る柱の調整機構が適用される柱及び杭の接合部を示す立面図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る柱の調整機構における位置決め架台を示す立面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る柱の調整機構における位置決め架台を示す平面図である。
【
図4】(A)は本発明の実施形態に係る柱の調整方法において、杭を挿入する杭孔を形成している状態を示す立面図であり、(B)は柱が固定された杭を杭孔へ挿入している状態を示す立面図であり、(C)は位置決め架台を用いて柱の平面位置を調整している状態を示す立面図であり、(D)は(C)と交わる方向の平面位置を調整している状態を示す立面図である。
【
図5】(A)は本発明の実施形態に係る柱の調整方法において、袋体を用いて柱の傾きを調整している状態を示す立面図であり、(B)は位置決め架台を撤去した状態を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る柱の調整機構及び柱の調整方法について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0016】
各図において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0017】
本発明の実施形態に係る柱の調整機構は、
図1(A)、(B)に示す杭10に固定された状態で立設される柱20に適用される。
【0018】
(杭及び柱)
杭10は、一例として、既製コンクリート杭であり、内部が中空の筒状に形成されている。杭10の杭頭には、柱20がベースプレート22を介してボルト固定されている。なお、杭10は鋼管杭等としてもよい。
【0019】
柱20は、H形鋼のウェブにT形鋼を溶接して形成された略十字型の鋼製柱であり、下端部にベースプレート22が溶接されている。柱20は、一例として、逆打ち工法に用いられる構真柱である。柱20の柱脚部は、杭10を後述する杭孔10H(
図2等参照)へ挿入する段階においては、杭10と共に杭孔10Hへ挿入される。
【0020】
ベースプレート22は、杭10の杭頭にボルト固定された円環状の平板である。ベースプレート22には、柱20を形成するH形鋼及びT形鋼のフランジ20Fが溶接されている。
【0021】
ベースプレート22が円環状に形成されていることにより、後述する杭孔10Hに杭10を挿入した際に、杭10の中空部分に充填された泥土等が、杭頭から排出される。すなわち、ベースプレート22は、杭10の排泥機構を兼ねている。
【0022】
ベースプレート22とフランジ20Fとで形成される入隅部は、補強リブ24で補強されている。補強リブ24は、ベースプレート22及びフランジ20Fに溶接された鋼板であり、面内方向が上下方向に沿って配置されている。補強リブ24は、それぞれのフランジ20F毎に、3枚ずつ溶接されている。
【0023】
なお、補強リブ24によって柱20及び柱20に作用する軸力を支持できる場合は、ベースプレート22と柱20のフランジ20Fとを離間して配置し、互いに溶接しない仕様としてもよい。ベースプレート22と柱20のフランジ20Fとを離間させることで、杭頭部に空間を確保して、排泥効率を高くすることができる。
【0024】
(袋体)
袋体30は、杭10の外周面に固定された袋ジャッキである。袋体30は、杭10の外周面において、周方向に等間隔に配置されている。袋体30は、周方向に少なくとも3つ以上配置されるが、本実施形態においては、4つ配置されている。
【0025】
袋体30は、例えば養生テープ(不図示)を用いて杭10の外周面に固定されている。養生テープは、杭10及び4つの袋体30を取り囲むように杭10の周方向に沿って巻きつけられる。これにより、杭10を杭孔10H(
図2等参照)内に挿入した際に、杭孔10H内の泥土や地下水によって袋体30が杭10の外周面から捲り上がることを抑制できる。
【0026】
袋体30を形成する布は、一例として、ポリエステル繊維等の非伸縮性織物で形成されている。また、この繊維は、空気やセメントミルクの水成分は通過できるが、セメントミルクのセメント成分は容易に通過することができないように織られている。
【0027】
袋体30において、杭10の杭頭側に配置される端部は一部解放されており、当該開放部分に、注入管32が挿入されている。注入管32は一例として塩化ビニル製のフレキシブルホースとされ、硬化前のセメントミルクや泥土から圧力を受けても潰れない強度を備えている。また、注入管32は、柱20に沿って配置されている。なお、注入管32の材質としては鉄管などの金属管を用いてもよい。
【0028】
袋体30には、注入管32からセメントミルクが注入される。これにより袋体30の内部にはセメントミルクが充填され、充填されたセメントミルクによって、袋体30は膨張する。袋体30が膨張することで、袋体30は、杭10の径方向に沿う厚みが大きくなる。なお、袋体30の膨張に伴って、袋体30を杭10に固定する養生テープは破断するか、または、伸びて袋体30の変形に追随する。
【0029】
ここで、「膨張」とは袋体30の内部の体積が大きくなることであり、袋体30が伸びることではない。但し、袋体30を伸縮性の織物で形成した場合は、袋体が伸びて、かつ、袋体30の内部の体積が大きくなることを含む。
【0030】
なお、袋体30は、二点鎖線で示すように、複数枚重ねて用いてもよい。袋体30を杭10の径方向に複数枚重ねて配置することで、重ねない場合と比較して、膨張時の袋体30の厚み(厚みの合計値)を大きくすることができる。
【0031】
袋体30を複数枚重ねる場合は、外側(杭10より遠い側)の袋体30に挿入する注入管32を、内側の袋体30の挿入する注入管32より撓ませることが好ましい。これにより、袋体30の膨張に伴う注入管32への負荷を低減できる。
【0032】
(位置決め架台)
図2、
図3に示す位置決め架台40(以下、架台40と称す)は、杭10(
図1参照)が挿入される杭孔10Hに跨って配置される架台であり、本体部40A及び位置決め部40Bを備えて形成されている。なお、
図3において位置決め部40Bは2点鎖線で示されている。
【0033】
本体部40Aは、地盤Gに載置されたジャッキ42と、ジャッキ42に載置された台座44と、台座44に載置された枠体46と、台座44と枠体46との間に配置されたジャッキ48と、を備えている。
【0034】
ジャッキ42は、一例としてキリンジャッキとされ、ジャッキ42に載置された台座44の上下位置(鉛直位置)及び傾きを調整する。
【0035】
台座44は、
図3に示すようにH形鋼を井桁状に組み合わせて形成され、台座44の上方には、枠体46が載置されている。また、台座44を形成するH形鋼の両端には、受け部材44Aが接合されている。
【0036】
枠体46は、H形鋼を枠状に組み合わせて形成され、ジャッキ48を用いない状態においては、台座44に対して相対移動可能に(換言すると、固定されないで)配置されている。なお、以下の説明においては、枠体46において、X方向に沿う一対の部材を第一方向枠46A、Y方向に沿う一対の部材を第二方向枠46Bと称す。
【0037】
ジャッキ48は、一例としてジャーナルジャッキとされ、台座44における受け部材44Aと、枠体46との間に、X方向及びY方向の双方に沿って配置される。ジャッキ48は、台座44に載置された枠体46を位置決めする。すなわち、台座44と枠体46との水平方向に沿う相対的な位置関係は、ジャッキ48によって調整される。
【0038】
位置決め部40Bは、第一方向調整部材50Aと、第二方向調整部材50Bと、を備えている。
【0039】
第一方向調整部材50Aは、Y方向に沿って配置され、枠体46における2つの第一方向枠46Aに架け渡されたH形鋼である。また、第一方向調整部材50Aは、柱20を挟んで2本配置されている。
【0040】
第二方向調整部材50Bは、X方向に沿って配置され、2本の第一方向調整部材50Aに架け渡されたH形鋼又は山形鋼である。また、第二方向調整部材50Bは、柱20を挟んで2本配置されている。
【0041】
(柱の調整方法)
本発明の実施形態に係る柱の調整方法は、
図1(A)、(B)に示す杭10に固定された状態で立設される柱20の、水平位置及び鉛直位置を位置決めし、かつ、柱20の傾きを調整する方法である。
【0042】
この柱の調整方法においては、
図4(A)に示すように、杭10及び柱20の建て込みに先行して、地盤Gへ杭孔10Hを形成する。杭孔10Hの形成と同時に、杭孔10Hには根固め液を注入する。
【0043】
根固め液には、混和剤を添加して、根固め液の初期せん断強度を低減させることが好ましい。これにより、後述する柱20の位置決め及び傾き調整時に、杭10が未硬化状態の根固め液から受ける抵抗力を低減することができる。
【0044】
次に、
図4(B)に示すように、杭孔10Hに跨って架台40を設置し、ジャッキ42を用いて台座44の上下位置及び傾きを調整する。台座44の上下位置及び傾きを調整後、杭頭に柱20が固定された杭10を、杭孔10Hへ挿入し、杭10及び柱20を所定の高さに設置する。柱20はクレーンによって揚重されており、この状態を保持することで、柱20の高さ位置が固定される。
【0045】
なお、柱20には、図示しない仮設ブラケット等を固定し、このブラケットを架台40の本体部40Aへ係止させることで、柱20の上下位置を位置決めしてもよい。この場合、架台40が杭10及び柱20の荷重によって変形しないように、架台40の剛性を確保する。また、地盤Gが杭10及び柱20の荷重によって沈下しないように、十分に地盤Gの地均し及び字固めを行う。
【0046】
杭10及び柱20が所定の高さに設置されたら、
図4(C)に示すように、架台40の第一方向枠46A(
図3参照)へ、第一方向調整部材50Aを架け渡す。この第一方向調整部材50Aによって柱20を挟みこんで、柱20のX方向における位置を位置決めする。第一方向調整部材50Aは、架台40の本体部40Aへ、挟締金具等を用いて固定する。
【0047】
なお、枠体46の第一方向枠46Aには、第一方向調整部材50Aを固定する位置を、予め墨出ししておく。この墨出しは、杭10を杭孔10Hへ挿入する前に実施することが好ましい。
【0048】
次に、
図4(D)に示すように、第一方向調整部材50Aへ、第二方向調整部材50Bを架け渡す。この第二方向調整部材50Bによって柱20を挟みこんで、柱20のY方向における位置を位置決めする。第二方向調整部材50Bは、第一方向調整部材50Aへ、挟締金具等を用いて固定する。
【0049】
なお、第一方向調整部材50Aには、第二方向調整部材50Bを固定する位置を、予め墨出ししておく。この墨出しは、杭10を杭孔10Hへ挿入する前に実施することが好ましい。
【0050】
このように、杭10に固定された柱20は、第一方向調整部材50A及び第二方向調整部材50Bによって、平面位置が位置決めされる。なお、第一方向調整部材50A及び第二方向調整部材50Bによって柱20の平面位置を位置決めした後は、ジャッキ48を用いて枠体46を動かすことで、この平面位置を適宜微調整することができる。
【0051】
柱20の上下位置及び平面位置が位置決めされたら、
図5(A)に示すように、袋体30にセメントミルクを注入する。袋体30は、セメントミルクが注入されることで膨張し、杭10の外周面及び杭孔10Hの孔壁へ接触する。袋体30は、さらにセメントミルクが注入されることにより、杭10を押圧し、杭10を移動させる。
【0052】
ここで、杭10に固定された柱20は、第一方向調整部材50A及び第二方向調整部材50Bによって、平面位置が固定されている。このため、袋体30が杭10を押圧すると、杭10及び柱20は、第一方向調整部材50A及び第二方向調整部材50Bの位置を中心点として回転するように移動する。これにより、杭10及び柱20の傾きが調整される。なお、杭10及び柱20の傾きは、柱20に図示しない傾斜計を設置して測定する。
【0053】
この傾き調整に伴って柱20の平面位置が位置ずれした場合は、上述したように、ジャッキ48を用いて、この平面位置を微調整することができる。
【0054】
なお、袋体30は、杭10の周方向に複数設けられているが、これらの全てを膨張させる必要はない。杭10及び柱20の傾きを調整するために必要な袋体30のみを、それぞれ必要な量だけ膨張させればよい。袋体30に注入されたセメントミルクが硬化することで、杭10及び柱20が安定して保持される。
【0055】
杭10及び柱20の傾きの調整後、
図5(B)に示すように、架台40を撤去して、杭孔10Hにセメントミルクを注入する。この注入の際、杭10の中空部分から泥土を排出し、セメントミルクを注入する。なお、袋体30にはセメントが注入されているため、この袋体30は残置してもよい。また、杭孔10Hには、架台40の撤去前にセメントミルクを注入してもよい。
【0056】
(作用及び効果)
本発明の実施形態に係る柱の調整機構においては、既製杭である杭10の杭頭に固定された柱20の水平位置及び上下位置(鉛直位置)が、架台40によって位置決めされる。さらに、杭10と杭孔10Hとの間に挟まれた袋体30が膨張することで、柱20の傾きが調整される。これにより、杭10に固定された状態で立設される柱20の施工精度を確保できる。
【0057】
また、本発明の実施形態に係る柱の調整機構においては、杭10が中空とされている。このため、杭10を杭孔へ挿入すると、杭10の先端から中空部分に泥土が充填される。ここで、杭頭に排泥機構としての円環状のベースプレート22が備えられていることにより、中空部分に充填された泥土等は、泥土より比重が重いセメントミルクによって下方から押し出されて、杭頭から排出される。これにより、杭頭から排泥されない構成と比較して、中空部分にセメントが充填されやすく、杭10の強度を確保し易い。
【0058】
なお、ベースプレート22は、必ずしも円環状に形成する必要はない。ベースプレート22を円環状に形成しなくても、例えば泥土吸引用のホース等を挿入する挿入孔を排泥機構として形成することで、杭10の中空部から泥土を排出することができる。また、このような排泥機構は、必ずしも設ける必要はない。排泥機構の有無に関わらず、本発明の柱の調整機構及び調整方法は実施可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 杭(既製杭)
10H 杭孔
20 柱
22 ベースプレート(排泥機構)
30 袋体
40 位置決め架台