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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】平面型パーツフィーダ
(51)【国際特許分類】
   B65G 27/24 20060101AFI20240628BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B65G27/24
B06B1/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020193624
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022082203
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】507024596
【氏名又は名称】東邦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松嵜 圭太
(72)【発明者】
【氏名】井出 忠宏
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/078273(WO,A1)
【文献】特開2009-208874(JP,A)
【文献】国際公開第2006/035938(WO,A1)
【文献】特開平01-267210(JP,A)
【文献】特開平08-244959(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104362887(CN,A)
【文献】米国特許第09238229(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 27/24
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品が載置される平面状の部品載置面を構成する振動板を振動させて当該部品載置面上の部品同士を分離させる平面型パーツフィーダにおいて、
前記振動板から下方に離れて配設されるベース板と、
前記ベース板に固定された状態で前記振動板の下方に配設され、上下方向の加振力を生成する加振手段と、
前記加振手段により生成された加振力を水平な面に対して傾斜した斜め方向の加振力に変換して出力する振動方向変換部と、
前記振動方向変換部から出力される加振力を前記振動板に伝達する伝達部材とを備え
前記振動方向変換部は、前記ベース板に固定され、前記斜め方向に延びるガイド部材と、当該ガイド部材によって前記斜め方向に往復動可能に案内される可動部材とを備え、
前記伝達部材は、前記可動部材と前記振動板とを連結することを特徴とする平面型パーツフィーダ。
【請求項2】
請求項に記載の平面型パーツフィーダにおいて、
前記加振手段は、電磁石であり、
前記可動部材は、前記斜め方向に延びており、
前記可動部材の下部には、励磁時の前記電磁石に吸引される被吸引部材が固定され、
前記可動部材の上部には、前記伝達部材が固定されていることを特徴とする平面型パーツフィーダ。
【請求項3】
請求項に記載の平面型パーツフィーダにおいて、
前記振動方向変換部は、前記可動部材を上方へ付勢する上方付勢部材と、前記可動部材を下方へ付勢する下方付勢部材とを備え、
前記上方付勢部材及び前記下方付勢部材のそれぞれ付勢力は、前記電磁石が非励磁である時に前記可動部材が往復動範囲の中間位置で保持されるように設定されていることを特徴とする平面型パーツフィーダ。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1つに記載の平面型パーツフィーダにおいて、
前記加振手段は、水平方向に互いに間隔をあけて配置される第1加振手段及び第2加振手段を含み、
前記振動方向変換部は、前記第1加振手段により生成された加振力を水平な面に対して傾斜した第1の斜め方向の加振力に変換して出力する第1振動方向変換部と、前記第2加振手段により生成された加振力を水平な面に対して傾斜しかつ前記第1の斜め方向とは異なる第2の斜め方向の加振力に変換して出力する第2振動方向変換部とを含み、
前記伝達部材は、前記第1振動方向変換部から出力される加振力を前記振動板に伝達する第1伝達部材と、前記第2振動方向変換部から出力される加振力を前記振動板に伝達する第2伝達部材とを含み、
前記第1伝達部材は、前記第1振動方向変換部と前記振動板との間に介在する第1弾性継手であり、
前記第2伝達部材は、前記第2振動方向変換部と前記振動板との間に介在する第2弾性継手であることを特徴とする平面型パーツフィーダ。
【請求項5】
請求項に記載の平面型パーツフィーダにおいて、
前記第1振動方向変換部は、前記第1加振手段により生成された加振力を上へ行くほど前記第2加振手段へ近づく方向の加振力に変換して出力するように構成され、
前記第2振動方向変換部は、前記第2加振手段により生成された加振力を上へ行くほど前記第1加振手段へ近づく方向の加振力に変換して出力するように構成されていることを特徴とする平面型パーツフィーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばボルトやナット、ネジ、ワッシャ、ピンといった各種部品を供給することが可能なパーツフィーダに関し、特に部品載置面が平面状または平面に近い形状である平面型パーツフィーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、多数の部品をまとめて振動板の上に載置し、その振動板を振動させることによって部品同士を分離させるように構成されたパーツフィーダが各種製品の製造現場で用いられている。
【0003】
この種のパーツフィーダとして、例えば特許文献1に開示されているように、部品載置面が平面状をなす振動板と、振動板を振動させる加振手段とを備えた平面型パーツフィーダが知られている。特許文献1のパーツフィーダの加振手段は、振動板を水平な第1方向に振動させる第1加振手段と、振動板を水平かつ第1方向と直交する方向に振動させる第2加振手段と、振動板を鉛直方向に振動させる第3加振手段とを備えている。そして、第1加振手段は互いに水平方向に間隔をあけて配置された4つの圧電素子で構成され、また、第2加振手段も4つの圧電素子で構成され、さらに、第3加振手段も4つの圧電素子で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5803359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、まとまった状態で振動板に載置された部品同士を分離させる場合には、振動板を水平方向のみ、または鉛直方向のみに振動させたのでは十分な分離性能を得ることができない場合がある。したがって、特許文献1のように、水平方向と鉛直方向の振動を組み合わせて振動板を斜めに振動させる振動パターンを実現するの好ましい。
【0006】
ところが、特許文献1では、斜めの振動パターンを実現するために、水平方向の2方向と鉛直方向の1方向を合わせて12個の圧電素子で振動させており、圧電素子の数が多くなる。圧電素子の数が多くなると、その分、コスト高になるとともに、多くの圧電素子を制御するため、圧電素子の数に対応したドライバも必要になり、このこともコスト高の要因になる。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、加振手段の数を少なくしながら、斜め方向の振動を作り出せるようにして低コスト化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の開示は、複数の部品が載置される平面状の部品載置面を構成する振動板を振動させて当該部品載置面上の部品同士を分離させる平面型パーツフィーダにおいて、前記振動板から下方に離れて配設されるベース板と、前記ベース板に固定された状態で前記振動板の下方に配設され、上下方向の加振力を生成する加振手段と、前記加振手段により生成された加振力を水平な面に対して傾斜した斜め方向の加振力に変換して出力する振動方向変換部と、前記振動方向変換部から出力される加振力を前記振動板に伝達する伝達部材とを備えていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、加振手段が上下方向の加振力を生成すると、その加振力が振動変換部に入力される。振動変換部は、加振手段から入力された加振力を斜め方向の加振力に変換して出力する。振動変換部から出力された斜め方向の加振力が伝達部材を介して振動板に伝達されるので、振動板が斜め方向に振動する。これにより、部品載置面に載置されている複数の部品に対して斜め方向の加振力が作用するので、部品同士の分離性能が十分に高まる。
【0010】
第2の発明は、前記振動方向変換部は、前記ベース板に固定され、前記斜め方向に延びるガイド部材と、当該ガイド部材によって前記斜め方向に往復動可能に案内される可動部材とを備え、前記伝達部材は、前記可動部材と前記振動板とを連結することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ガイド部材がベース板に固定されていることで可動部材を精度よく斜め方向に移動させることができ、これにより、振動板を狙い通りに振動させることができる。
【0012】
第3の発明は、前記加振手段は、電磁石であり、前記可動部材は、前記斜め方向に延びており、前記可動部材の下部には、励磁時の前記電磁石に吸引される被吸引部材が固定され、前記可動部材の上部には、前記伝達部材が固定されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、電磁石に対して電圧を所定の周期で印加することにより、被吸引部材が電磁石に吸引された状態と吸引されない状態とを交互に作り出すことができる。これにより、可動部材に上下方向の加振力を入力させて可動部材をガイド部材によって斜め方向に往復動させることができる。
【0014】
第4の発明は、前記振動方向変換部は、前記可動部材を上方へ付勢する上方付勢部材と、前記可動部材を下方へ付勢する下方付勢部材とを備え、前記上方付勢部材及び前記下方付勢部材のそれぞれ付勢力は、前記電磁石が非励磁である時に前記可動部材が往復動範囲の中間位置で保持されるように設定されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、電磁石に対して被吸引部材を吸引する方向に電圧を印加すると、上方付勢部材の付勢力に抗して被吸引部材が電磁石に吸引されて可動部材が下方へ移動する。一方、電磁石に対して被吸引部材を遠ざける方向、即ち反吸引方向に電圧を印加すると、下方付勢部材の付勢力に抗して被吸引部材が電磁石から離れて可動部材が上方へ移動する。つまり、電磁石に印加する電圧を切り替えることで可動部材を上下方向に往復動させることができる。
【0016】
第5の発明は、前記加振手段は、水平方向に互いに間隔をあけて配置される第1加振手段及び第2加振手段を含み、前記振動方向変換部は、前記第1加振手段により生成された加振力を水平な面に対して傾斜した第1の斜め方向の加振力に変換して出力する第1振動方向変換部と、前記第2加振手段により生成された加振力を水平な面に対して傾斜しかつ前記第1の斜め方向とは異なる第2の斜め方向の加振力に変換して出力する第2振動方向変換部とを含み、前記伝達部材は、前記第1振動方向変換部から出力される加振力を前記振動板に伝達する第1伝達部材と、前記第2振動方向変換部から出力される加振力を前記振動板に伝達する第2伝達部材とを含み、前記第1伝達部材は、前記第1振動方向変換部と前記振動板との間に介在する第1弾性継手であり、前記第2伝達部材は、前記第2振動方向変換部と前記振動板との間に介在する第2弾性継手であることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、第1加振手段による加振力と、第2加振手段による加振力とが、振動板に対して異なる方向の加振力として作用することになる。これにより、第1加振手段の加振力のみによって部品を振動させたり、第2加振手段の加振力のみによって部品を振動させたり、第1加振手段及び第2加振手段の両方の加振力によって部品を振動させることで、部品の分離性能を高めることができるとともに、部品を所望の方向に搬送することも可能になる。
【0018】
第6の発明は、前記第1振動方向変換部は、前記第1加振手段により生成された加振力を上へ行くほど前記第2加振手段へ近づく方向の加振力に変換して出力するように構成され、前記第2振動方向変換部は、前記第2加振手段により生成された加振力を上へ行くほど前記第1加振手段へ近づく方向の加振力に変換して出力するように構成されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、第1振動方向変換部、第2振動方向変換部、第1伝達部材及び第2伝達部材を振動板の下方においてコンパクトにまとめることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、加振手段から出力される上下方向の加振力を振動変換部によって斜め方向の加振力に変換して振動板に伝達させることができるので、加振手段の数を少なくしながら、斜め方向の振動を作り出して部品同士の分離性能を高めることができ、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る平面型パーツフィーダを備えたパーツピッキングシステムの概略構成図である。
図2】側面カバーを省略した平面型パーツフィーダを上方から見た斜視図である。
図3】平面型パーツフィーダのブロック図である。
図4】側面カバーを省略した平面型パーツフィーダの左側面図である。
図5】側面カバーを省略した平面型パーツフィーダの正面図である。
図6】側面カバーを省略した平面型パーツフィーダの平面図である。
図7図6におけるVI-VI線断面図である。
図8図6におけるVII-VII線断面図である。
図9図4におけるIX-IX線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る平面型パーツフィーダ1を備えたパーツピッキングシステム100の概略構成図である。パーツピッキングシステム100は、平面型パーツフィーダ1の他に、産業用ロボット101と、ロボットコントローラ102と、センサ103とを備えている。産業用ロボット101は、平面型パーツフィーダ1上の部品を把持して別の搬送場所まで搬送することが可能な6軸制御の汎用ロボットである。ロボットコントローラ102は、センサ103からの入力信号に基づいて産業用ロボット101を制御するとともに、ユーザによって設定された搬送経路上をロボット101のハンド部が移動するように当該ロボット101を制御する装置である。センサ103は、平面型パーツフィーダ1上の部品を撮像した三次元画像に基づいて部品の姿勢や位置を測定する装置である。産業用ロボット101、ロボットコントローラ102及びセンサ103を用いたパーツピッキングシステム100は従来から周知である。
【0024】
尚、平面型パーツフィーダ1は、産業用ロボット101、ロボットコントローラ102及びセンサ103と組み合わせて使用することができる他、産業用ロボット101、ロボットコントローラ102及びセンサ103と組み合わせることなく使用することもできる。
【0025】
平面型パーツフィーダ1は、複数の部品が載置される平面状の部品載置面2aを構成する振動板2を振動させて当該部品載置面2a上の部品同士を分離させる装置である。平面型パーツフィーダ1は、複数の部品同士を分離させる以外にも、部品載置面2a上の複数の部品を当該部品載置面2a上で所定方向に搬送することもできる。複数の部品同士を分離させることと所定方向に搬送することとの切替は、後述する加振手段によって部品に与える振動の方向や大きさによって行うことができる。部品載置面2a上での搬送方向の切替も加振手段によって部品に与える振動の方向や大きさによって行うことができる。部品載置面2aに載置する部品としては、例えばボルト、ナット、ワッシャ、ネジ、ピン、スプリング、プラグ、球状部材等を挙げることができるが、これら以外の部品であってもよい。上記部品は金属製の部品であってもよいし、樹脂製の部品であってもよい。
【0026】
この実施形態の説明では、図2及び図4図9に示すように、平面型パーツフィーダ1の長手方向の一方を手前側とし、長手方向の他方を奥側としており、従って、平面型パーツフィーダ1の長手方向を奥行方向と定義することができる。また、平面型パーツフィーダ1を手間側から見たとき、右に位置する側を右側とし、左に位置する側を左側とする。平面型パーツフィーダ1の左右方向を幅方向と定義することもできる。これは、説明の便宜を図るために定義するだけであり、実際の使用時の姿勢や向き、配置状態を限定するものではない。
【0027】
図7及び図9に示すように、振動板2は、透光性を有する樹脂製の下板材20と、透光性を有するゴム製の上板材21とが積層された状態で一体化されてなるものである。下板材20は例えば乳白色にすることができる。上板材21の上面で部品載置面2aが構成されている。上板材21の上面には、長手方向に延びる複数の溝21aが形成されている。尚、溝21aは省略してもよいし、溝21aの代わりに突条部等を形成してもよい。すなわち、部品載置面2aは平面であってもよいし、多少の凹凸があってもよく、平面状または平面に近い形状であればよい。部品載置面2aの一部には、上述した溝21aや突条部等が形成されていてもよく、基本となる大部分の面が平面状であればよい。
【0028】
振動板2の下面には、支持部材22が固定されている。支持部材22の下面には、下側部材23が固定されている。支持部材22及び下側部材23も振動板2の一部を構成する部材である。また、図2に示すように、振動板2の上面の左右両縁部及び奥側の縁部には縦板部24が設けられている。縦板部24は、部品載置面2a上の部品が左や右、または奥側から落下するのを抑制するための部材であり、振動板2の一部を構成する部材である。さらに、振動板2の手前側には、下降傾斜する傾斜板部25が設けられている。振動板2を手前側まで搬送された部品を傾斜板部25によって所定方向へ導くことができるようになっている。この傾斜板部25も振動板2の一部を構成する部材である。
【0029】
図2図5等に示すように、平面型パーツフィーダ1は、振動板2の他に、ベース板3と、手前側振動ユニット4と、奥側振動ユニット5と、左側振動ユニット6と、右側振動ユニット7と、LEDライト8と、操作パネル9(図3に示す)と、制御部10(図3に示す)とを備えている。
【0030】
ベース板3は、平面型パーツフィーダ1の奥行方向に長い高剛性な金属製板材からなるものである。ベース板3は、振動板2から下方に離れて配設されている。このベース板3を各種製造設備のフレーム等に取り付けることで、平面型パーツフィーダ1を動かないように固定できる。平面型パーツフィーダ1は、図1に示すような側面カバー11を備えており、この側面カバー11により、手前側振動ユニット4、奥側振動ユニット5、左側振動ユニット6、右側振動ユニット7及びLEDライト8を収容する収容空間を区画形成することができる。図2図4~9では、側面カバー11を省略している。
【0031】
手前側振動ユニット4、奥側振動ユニット5、左側振動ユニット6及び右側振動ユニット7は、互いに水平方向に離れて配設されている。すなわち、手前側振動ユニット4はベース板3の手前側に配設される一方、奥側振動ユニット5はベース板3の奥側に配設されており、手前側振動ユニット4と奥側振動ユニット5とはベース板3の長手方向に離れることになる。また、左側振動ユニット6はベース板3の左側に配設される一方、右側振動ユニット7はベース板3の右側に配設されており、左側振動ユニット6と右側振動ユニット7とはベース板3の短手方向に離れることになる。手前側振動ユニット4と奥側振動ユニット5との離間寸法は、左側振動ユニット6と右側振動ユニット7との離間寸法よりも長く設定されている。
【0032】
手前側振動ユニット4、奥側振動ユニット5、左側振動ユニット6及び右側振動ユニット7は、全て同じユニットで構成されており、ベース板3への配設位置及び向きが互いに異なっているだけである。全て同じユニットで構成することにより、部品の共通化が行われている。尚、手前側振動ユニット4、奥側振動ユニット5、左側振動ユニット6及び右側振動ユニット7を全て同じユニットで構成することなく、図示しないが、一部のユニットと他のユニットとを変えてもよい。
【0033】
手前側振動ユニット4は、手前側電磁石(第1加振手段)40と、手前側振動方向変換部(第1振動方向変換部)41と、手前側伝達部材(第1伝達部材)42とを備えている。手前側電磁石40は、電圧を印加することによって磁力を発生する周知の部材であり、印加する電圧のプラス極とマイナス極を入れ替えることで吸引力と反発力とを切り替えることができる。手前側電磁石40は、ベース板3の手前側に固定された状態で振動板2の手前側の下方に配設されている。手前側電磁石40の上面に磁力が発生するようになっており、手前側電磁石40の上面に対向するように、磁性体からなる手前側被吸引部材43が配設されている。手前側被吸引部材43は、手前側電磁石40が励磁して吸引力を発生しているときに手前側電磁石40に吸引される一方、手前側電磁石40が励磁して反発力を発生しているときに反発する部材である。手前側被吸引部材43の振幅は、例えば1mm~4mmの間で設定することができる。
【0034】
手前側電磁石40に印加する電圧のプラス極とマイナス極を所定の周期で入れ替えることにより、手前側被吸引部材43が手前側電磁石40に吸引されたり、反発する。吸引力は下向きの力であり、また、反発力は上向きの力である。したがって、手前側電磁石40は、上下方向の加振力を生成するものであり、その向きは図8に直線Aで示すように本実施形態では鉛直方向となっているが、鉛直に対して多少傾斜していてもよい。
【0035】
手前側振動方向変換部41は、手前側電磁石40により生成された上下方向の加振力を水平な面に対して傾斜した斜め方向の加振力に変換して出力する部分である。すなわち、手前側振動方向変換部41は、ベース板3に固定される一対の縦板41a、41a(図2に示す)と、縦板41a、41aに固定されたガイド部材44(図7及び図8に示す)と、可動部材45と、上側スプリング(上方付勢部材)48と、下側スプリング(下方付勢部材)49とを備えている。上側スプリング48及び下側スプリング49は、コイルスプリングで構成されているが、例えばゴム等で構成されていてもよい。図2に示すように、縦板41a、41aは、ベース板3における手前側電磁石40の左側方及び右側方から上方へ延びるとともに、奥行方向にも延びている。縦板41a、41aの上部は、手前側被吸引部材43よりも上に位置している。また、一対の縦板41a、41aの間に、手前側電磁石40及び手前側被吸引部材43が位置している。
【0036】
図7及び図8に示すガイド部材44は、左右方向に長い形状を有するブロック状の部材である。ガイド部材44の左側は、左側に位置する縦板41aに固定され、また、ガイド部材44の右側は、右側に位置する縦板41aに固定されている。ガイド部材44は、上へ行くほど奥側に位置するように斜めに配置されており、これにより、縦板41aを介してベース板3に固定されて斜め方向に延びるガイド部材44となる。
【0037】
図8に示すように、ガイド部材44の左右方向中央部よりも左側には、上下方向に貫通するガイド孔44aが形成されている。ガイド孔44aの長手方向に直交する方向の断面は円形であってもよいし、多角形状であってもよい。ガイド孔44aは、上へ行くほど奥側に位置するように斜めに配置されている。ガイド孔44aの中心線X1と、手前側電磁石40によって生成された加振力の方向と平行な線Aとのなす角度αは、例えば10゜以上45゜以下に設定することができるが、これは例示であり、10゜以下であってもよいし、45゜以上であってもよい。図示しないが、ガイド孔はガイド部材44の左右方向中央部よりも右側に形成されている。
【0038】
可動部材45は、ガイド部材44によって上記斜め方向に往復動可能に案内される部材であり、従って上記斜め方向に延びている。上記斜め方向は、ガイド孔44aの中心線X1が延びる方向である。可動部材45は、ガイド孔44aよりも長い金属製の筒状部材で構成することができる。可動部材45の外周面とガイド孔44aとの間には、摺動抵抗を小さくするためのブッシュ44b、44bが配設されている。ブッシュ44b、44bは一例であり、他の軸受部材等を使用することもできる。図示しないが、右側のガイド孔にも同様に可動部材が設けられている。以下の説明は右側も同様である。
【0039】
可動部材45には、ボルト46が下方から挿通されている。手前側被吸引部材43には、ボルト46が挿通するボルト挿通孔43aが形成されている。一方、可動部材45の上部には、螺合部材47が配設されている。螺合部材47には、ボルト46が螺合するネジ孔47aが形成されている。ボルト46を手前側被吸引部材43のボルト挿通孔43aに挿通するとともに、可動部材45に挿通してから螺合部材47のネジ孔47aに螺合させることで、手前側被吸引部材43が可動部材45の下部に固定され、螺合部材47が可動部材45の上部に固定される。したがって、手前側被吸引部材43が手前側電磁石40に吸引されると、可動部材45及び螺合部材47が一体となって中心線X1に沿って下方へ移動し、手前側被吸引部材43が反発すると、可動部材45及び螺合部材47が一体となって中心線X1に沿って上方へ移動する。
【0040】
図7に示すように、ガイド部材44の左右方向中央部には、その上側部分に上側スプリング挿入孔44cが形成され、下側部分に下側スプリング挿入孔44dが形成されている。ガイド部材44の上側スプリング挿入孔44cと下側スプリング挿入孔44dとの間には、スプリング当接部44eが設けられている。上側スプリング挿入孔44c及び下側スプリング挿入孔44dの中心線Bは、中心線X1(図8に示す)と平行である。
【0041】
上側スプリング挿入孔44cには、上側スプリング48が挿入されている。上側スプリング48の軸線は、中心線B上に位置している。上側スプリング48の上部は、螺合部材47の下面における左右方向中央部に当接する一方、上側スプリング48の下部は、スプリング当接部44eの上面に当接している。また、下側スプリング挿入孔44dには、下側スプリング49が挿入されている。下側スプリング49の軸線は、中心線B上に位置している。下側スプリング49の上部は、スプリング当接部44eの下面に当接する一方、下側スプリング49の下部は、手前側被吸引部材43の上面の左右方向中央部に当接している。
【0042】
スプリング当接部44eが設けられているガイド部材44はベース板3に固定されているので、上側スプリング48は、螺合部材47に対して上方への付勢力を常時作用させる部材である。これにより、可動部材45の上部が上方へ常時付勢されることになる。一方、下側スプリング49は、手前側被吸引部材43に対して下方への付勢力を常時作用させる部材である。これにより、可動部材45の下部が下方へ常時付勢されることになる。
【0043】
上側スプリング48及び下側スプリング49のバネ定数により、可動部材45の位置を設定することができる。この実施形態では、手前側電磁石40が励磁していない状態(図7に示す非励磁状態)で、図8に示すように可動部材45が往復動方向の中央部に位置した状態で保持されるように上側スプリング48及び下側スプリング49のバネ定数が設定されている。この可動部材45の位置を中立位置(可動部材45の往復動範囲の中間位置)という。可動部材45が中立位置にあるときには、手前側被吸引部材43の下面と、手前側電磁石40の上面との間に所定の隙間が形成されており、手前側被吸引部材43の下方への移動が許容されるようになっている。
【0044】
バネ定数の設定時には、可動部材45や振動板2、載置される部品の重量等も考慮する。上側スプリング48による下方への付勢力が強すぎると図8に示す中立位置よりも下に可動部材45が位置することになり、反対に下側スプリング49による上方への付勢力が強すぎると図8に示す中立位置よりも上に可動部材45が位置することになる。手前側電磁石40を励磁させて吸引力を発生させると、可動部材45が下側スプリング49の付勢力に抗して中立位置から下方へ移動し、反対に手前側電磁石40に反発力を発生させると可動部材45が上側スプリング48の付勢力に抗して中立位置から上方へ移動する。つまり、手前側電磁石40の磁力は、上側スプリング48及び下側スプリング49の付勢力に抗して可動部材45を移動させることができるように十分に大きな磁力に設定されている。
【0045】
可動部材45がガイド部材44によって中心線X1方向に案内されるので、手前側電磁石40により生成された鉛直方向の加振力は、中心線X1方向の加振力となって可動部材45から出力される。
【0046】
図7に示すように、手前側伝達部材42は、可動部材45と振動板2とを連結することにより、手前側振動方向変換部41から出力される加振力を振動板2に伝達するための部材である。具体的には、手前側伝達部材42は、いわゆるゴム継手(第1弾性継手)であり、下側取付部42aと、上側取付部42bと、下側取付部42a及び上側取付部42bの間に介在するゴム等からなる弾性材42cとを備えている。下側取付部42aには、ネジ軸42dが固定されている。ネジ軸42dは、螺合部材47を貫通して当該螺合部材47の下面から下方へ突出している。ネジ軸42dの下部には、ナット42eが螺合するようになっている。ネジ軸42dの下部にナット42eを螺合させることにより、下側取付部42aが螺合部材47に固定され、よって、可動部材45の上部に螺合部材47を介して手前側伝達部材42を固定することができる。また、図8に示すように、上側取付部42bは、ネジ42fによって振動板2の下側部材23に固定されている。
【0047】
図5に示すように、奥側振動ユニット5は、奥側電磁石(第2加振手段)50と、奥側振動方向変換部(第2振動方向変換部)51と、奥側伝達部材(第2伝達部材)52とを備えている。奥側伝達部材52は第2弾性継手である。また、図9に示すように、左側振動ユニット6は、左側電磁石60と、左側振動方向変換部61と、左側伝達部材62とを備えている。さらに、右側振動ユニット7は、右側電磁石70と、右側振動方向変換部71と、右側伝達部材72とを備えている。奥側電磁石50、左側電磁石60及び右側電磁石70は、手前側電磁石40と同じものである。また、奥側振動方向変換部51、左側振動方向変換部61及び右側振動方向変換部71は、手前側振動方向変換部41と同じものである。また、奥側伝達部材52、左側伝達部材62及び右側伝達部材72は、手前側伝達部材42と同じものである。よって、奥側振動ユニット5、左側振動ユニット6及び右側振動ユニット7の詳細説明については省略する。
【0048】
手前側振動ユニット4による加振力は、図8に示す中心線X1方向に沿った斜め方向(第1の斜め方向)である。また、奥側振動ユニット5による加振力は、図7に示す中心線X2方向に沿った斜め方向(第2の斜め方向)である。中心線X1と中心線X2とは、上へ行くほど互いに接近している。つまり、奥側振動方向変換部51は、奥側電磁石50で生成された加振力を上へ行くほど手前側振動ユニット4へ近づく方向の加振力に変換して出力し、また、手前側振動方向変換部41は、手前側電磁石40で生成された加振力を上へ行くほど奥側振動ユニット5へ近づく方向の加振力に変換して出力する。
【0049】
また、左側振動ユニット6による加振力は、図9に示す中心線X3方向に沿った斜め方向である。また、右側振動ユニット7による加振力は、図9に示す中心線X4方向に沿った斜め方向である。中心線X3と中心線X4とは、上へ行くほど互いに接近している。つまり、右側振動方向変換部71は、右側電磁石70で生成された加振力を上へ行くほど左側振動ユニット6へ近づく方向の加振力に変換して出力し、また、左側振動方向変換部61は、左側電磁石60で生成された加振力を上へ行くほど右側振動ユニット7へ近づく方向の加振力に変換して出力する。
【0050】
図4図7及び図8に示すように、LEDライト8は、手前側振動ユニット4と奥側振動ユニット5との間、かつ、左側振動ユニット6と右側振動ユニット7との間に設けられている。この実施形態では、振動板2の長手方向に長い形状の複数のLEDライト8を振動板2の幅方向に互いに間隔をあけた状態で、当該振動板2の真下に配設している。各LEDライト8は、複数のLED(Light Emitting Diode)で構成することができ、光の照射方向は上方とされている。LEDライト8の代わりに、LED以外の発光体を利用したライトを設けてもよい。
【0051】
LEDライト8から照射された光は、振動板2を構成している下板材20及び上板材21を透過して部品載置面2a上の部品へ照射される。これにより、パーツピッキングシステム100のセンサ103によって部品載置面2a上の部品の輪郭を鮮明に撮像して部品の姿勢や位置を正確に測定することが可能になる。
【0052】
図9に示す操作パネル9及び制御部10は、ベース板3や側面カバー11等から離れて配設されていてもよいし、ベース板3や側面カバー11に取り付けられていてもよい。操作パネル9は、電源のON及びOFFの切替や、振動板2の振動モードの切替、振動時の周波数の切替等を行うための部材であり、各種スイッチやボタン等を備えている。操作パネル9のスイッチやボタン等は、制御部10に接続されており、制御部10は、操作パネル9の操作状態を検出可能に構成されている。
【0053】
制御部10は、例えばマイクロコンピュータや記憶装置、4つの発振アンプ等を内蔵したユニットであり、外部から電力が供給されるようになっている。4つの発振アンプは、それぞれ独立してマイクロコンピュータによって制御されるようになっており、出力する電圧値、周波数等は発振アンプ毎に変えることができる。4つの発振アンプの各出力側には、手前側電磁石40、奥側電磁石50、左側電磁石60及び右側電磁石70が接続されており、従って、手前側電磁石40、奥側電磁石50、左側電磁石60及び右側電磁石70にはそれぞれ独立して電圧が印加されるようになっている。
【0054】
操作パネル9の操作により、手前側電磁石40、奥側電磁石50、左側電磁石60及び右側電磁石70のうち、1つのみに電圧を印加すること、任意の2つ以上に電圧を印加することが可能である。また、操作パネル9の操作により、手前側電磁石40、奥側電磁石50、左側電磁石60及び右側電磁石70に異なる周波数で電圧を印加することもできる。手前側電磁石40、奥側電磁石50、左側電磁石60及び右側電磁石70に印加する電圧の周波数は、例えば30Hz~500Hzの間で任意の周波数に設定することができる。周波数は、部品の種類や数に応じてユーザが適切な周波数となるように調整できる。
【0055】
振動板2の振動によって部品同士を分離させるのに適切な振動モードを操作パネル9の操作によって設定できる。また、振動板2の振動によって部品を所望の方向へ搬送するのに適切な振動モードを操作パネル9の操作によって設定できる。振動モードとは、振動の強弱、周波数、手前側電磁石40、奥側電磁石50、左側電磁石60及び右側電磁石70のいずれに電圧を印加するか、等で変更できる。
【0056】
例えば手前側電磁石40にのみ電圧を所定の周波数で印加した場合、手前側振動ユニット4のみ加振力を発生し、奥側振動ユニット5、左側振動ユニット6及び右側振動ユニット7は加振力を発生しない状態になる。この状態では、奥側振動ユニット5の奥側伝達部材52の弾性材、左側振動ユニット6の左側伝達部材62の弾性材及び右側振動ユニット7の右側伝達部材72の弾性材が弾性変形することで、手前側振動ユニット4の加振力で振動している振動板2の振動を許容することができる。
【0057】
尚、手前側振動ユニット4、奥側振動ユニット5、左側振動ユニット6及び右側振動ユニット7のうち、任意の1つのみ設けて他の振動ユニットを省略し、省略した振動ユニットで支持されていた振動板2を弾性継手によってベース板3に支持するようにしてもよい。省略する振動ユニットの数は、1つであってもよいし、2つであってもよいし、3つであってもよい。
【0058】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、例えば手前側電磁石40から出力される上下方向の加振力を手前側振動変換部41によって斜め方向の加振力に変換して振動板2に伝達させることができるので、加振手段の数を少なくしながら、斜め方向の振動を作り出して部品同士の分離性能を高めることができ、低コスト化を図ることができる。
【0059】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明に係る平面型パーツフィーダは、各種部品同士を分離したり、搬送する場合に使用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 平面型パーツフィーダ
2 振動板
2a 部品載置面
3 ベース板
40 手前側電磁石(第1加振手段)
41 手前側振動方向変換部(第1振動方向変換部)
42 手前側伝達部材(第1伝達部材)
44 ガイド部材
45 可動部材
48 上側スプリング(上方付勢部材)
49 下側スプリング(下方付勢部材)
50 奥側電磁石(第2加振手段)
51 奥側振動方向変換部(第2振動方向変換部)
52 奥側伝達部材(第2伝達部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9