(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】スポイト容器
(51)【国際特許分類】
B65D 51/32 20060101AFI20240628BHJP
A61M 35/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B65D51/32
A61M35/00 Z
(21)【出願番号】P 2020198670
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和寿
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-222291(JP,A)
【文献】特開2016-033056(JP,A)
【文献】特開2016-050019(JP,A)
【文献】特表2014-514214(JP,A)
【文献】特表2018-528022(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0320175(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0299004(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 51/32
A61M 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する有底筒状の容器本体と、
前記容器本体の口部に螺着された内キャップと、
前記内キャップに固定され、前記容器本体内で開口するスポイト管と、
前記内キャップに対する所定量以上の容器軸回りの回転が規制された外キャップと、
前記外キャップに対する容器軸回りの回転が規制されるとともに、前記内キャップに対して容器軸回りに回転することで前記内キャップに対して上下動する作動部材と、
前記外キャップの頂壁に形成された貫通孔を通して上方に突出した操作部と、
前記作動部材が前記内キャップに対して上下動する際に互いに摺動するピストンおよび摺動筒部と、を備え、
前記外キャップと前記容器本体との間に、前記外キャップが前記容器本体に対して回転する際に、前記容器本体または前記外キャップに対して摺動する摺動部材が設けられ
、
前記外キャップが前記容器本体に対して回転し、前記内キャップの内側係合部と前記外キャップの外側係合部とが当接した後、前記摺動部材と前記容器本体との接触が解除される、スポイト容器。
【請求項2】
前記摺動部材の少なくとも一部は弾性変形可能である、請求項1に記載のスポイト容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポイト容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示されるように、スポイト管を有するスポイト容器が用いられている。特許文献1の構成では、外キャップ(蓋)を容器本体に対して回転させると、外キャップが容器本体に対して上昇するとともに、スポイト管に内容物が吸い上げられる。その後、操作部(押釦)を外キャップに対して押下することで、内容物を吐出させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のスポイト容器では、スポイト管に内容物を吸い上げる際に、蓋を開方向へ回転させると、まず可動蓋部が蓋基部に対して螺上昇し(第1の動作)、次に蓋基部が口頸部に対して螺上昇する(第2の動作)。ここで、特許文献1では容器体に対する蓋基部の摩擦力が大きくなっているため、第1の動作における操作力は第2の動作における操作力より小さい。このため、第1の動作が機構上の遊び(吐出機能に関与しない動作)であると使用者が誤解し、第1の動作が途中の状態で保管される場合があった。その結果、次回の吸上げ動作の不良が生じたり、シール性の低下による液漏れが生じたりする場合があった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、使用者の誤操作を抑制することが可能なスポイト容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るスポイト容器は、内容物を収容する有底筒状の容器本体と、前記容器本体の口部に螺着された内キャップと、前記内キャップに固定され、前記容器本体内で開口するスポイト管と、前記内キャップに対する所定量以上の容器軸回りの回転が規制された外キャップと、前記外キャップに対する容器軸回りの回転が規制されるとともに、前記内キャップに対して容器軸回りに回転することで前記内キャップに対して上下動する作動部材と、前記外キャップの頂壁に形成された貫通孔を通して上方に突出した操作部と、前記作動部材が前記内キャップに対して上下動する際に互いに摺動するピストンおよび摺動筒部と、を備え、前記外キャップと前記容器本体との間に、前記外キャップが前記容器本体に対して回転する際に、前記容器本体または前記外キャップに対して摺動する摺動部材が設けられ、前記外キャップが前記容器本体に対して回転し、前記内キャップの内側係合部と前記外キャップの外側係合部とが当接した後、前記摺動部材と前記容器本体との接触が解除される。
【0007】
上記態様によれば、容器本体に対して外キャップを容器軸回りに回転させると、所定量の範囲内で外キャップが内キャップに対して回転する。このとき、外キャップに対する回転が規制された作動部材も、内キャップに対して回転しながら上昇する。これにより、ピストンおよび摺動筒部が互いに摺動することでスポイト管の内部空間が負圧となり、スポイト管の開口から容器本体の内容物を吸い上げることができる。
このように、スポイト管に内容物を吸い上げるための動作に操作部が関与せず、操作部、外キャップ、作動部材が一体となって内キャップに対して上昇するため、内容物を吸い上げる際に操作部の外キャップからの突出量が変化しない。したがって、上記態様によれば、操作部の外キャップに対する突出量の変化を抑制したスポイト容器を提供することができる。
また、外キャップが容器本体に対して回転する際に、容器本体または外キャップに対して摺動部材が摺動する。この構成により、外キャップが内キャップおよび容器本体に対して回転する動作と、外キャップとともに内キャップが容器本体に対して回転する動作と、の間のトルク(操作力)の差異を小さくできる。したがって、操作性をより向上させることができる。さらに、外キャップおよび内キャップの両方が充分に締まり方向に回転した状態で使用者がスポイト容器を保管することができる。
【0008】
ここで、前記摺動部材の少なくとも一部は弾性変形可能であってもよい。
【0009】
この場合、摺動部材が容器本体または外キャップに対して摺動することで生じるトルクの大きさを安定させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記態様によれば、使用者の誤操作を抑制することが可能なスポイト容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るスポイト容器の縦断面図である。
【
図2】
図1の外キャップおよび内キャップのII-II断面矢視図である。
【
図3】
図1の外キャップを内キャップに対して回転させた状態を示す縦断面図である。
【
図5】
図1のスポイトアセンブリを容器本体に対して上昇させた状態を示す縦断面図である。
【
図6】第1の変形例に係るスポイト容器の縦断面図である。
【
図8】第2の変形例に係るスポイト容器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態のスポイト容器について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、スポイト容器10は、容器本体1と、スポイト管20と、ピストン30と、内キャップ40と、外キャップ50と、作動部材60と、ボタン部70と、中栓80と、パッキン90と、摺動部材100と、を備える。容器本体1は有底筒状に形成されており、内容物が収容される。内容物としては、例えば人体(皮膚)に塗布(吐出)する水虫薬等の薬剤、液体化粧料などを用いることができる。本実施形態における構成部品は、樹脂材料により形成されている。
【0013】
スポイト管20、ピストン30、内キャップ40、外キャップ50、作動部材60、ボタン部70、、パッキン90、および摺動部材100は、スポイトアセンブリ2を構成している。詳細は後述するが、スポイト容器10が使用される際には、スポイトアセンブリ2が容器本体1から取り外される。
【0014】
(方向定義)
本実施形態では、容器本体1およびスポイト管20の各中心軸は共通の軸線上に位置している。以下、この共通の軸線を容器軸Oといい、容器軸Oに沿う方向を上下方向といい、上下方向に沿って口部1a側を上方、容器本体1の底部側を下方という。また、上下方向から見た平面視において、容器軸Oに交差する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0015】
内キャップ40は、螺着筒部41と、上筒部42と、環状部43と、保持筒部44と、接続部45と、内筒部46と、第1シール部47と、を有している。螺着筒部41は口部1aを径方向外側から囲っている。螺着筒部41の内周面には雌ネジ部が形成されている。この雌ネジ部が、口部1aの外周面に形成された雄ネジ部に螺着されることで、螺着筒部41が口部1aに装着されている。このため、内キャップ40を容器本体1に対して容器軸O回りに回転させると、内キャップ40が容器本体1に対して上下動する。螺着筒部41の外周面には、径方向外側に突出する内側突部41bが形成されている。
【0016】
環状部43は、螺着筒部41の上端部から径方向内側に延びており、平面視で環状に形成されている。上筒部42は、環状部43から上方に延びている。上筒部42の外周面には、第1係合部42aが形成されている。本実施形態の第1係合部42aは螺旋状の溝である。保持筒部44は環状部43の内周縁から上方に延びている。保持筒部44は、ピストン30を保持している。内筒部46は、保持筒部44の径方向内側に位置している。接続部45は、保持筒部44の上端部と内筒部46の上端部とを接続している。第1シール部47は、内筒部46の下端から下方に延びており、筒状に形成されている。
【0017】
スポイト管20の上端部は、保持筒部44および内筒部46によって径方向において挟まれている。保持筒部44の下端(環状部43の内周面)には、径方向内側に突出する突部44aが形成されている。突部44aは、スポイト管20から径方向外側に突出するスポイト突部21にアンダーカット嵌合している。これらの構成により、スポイト管20は内キャップ40に固定されている。図示は省略するが、スポイト管20の下端は容器本体1の底部の近傍において開口している。スポイト管20には、径方向外側に突出するスポイトフランジ22が形成されている。スポイトフランジ22は、パッキン90と保持筒部44との間に位置している。
【0018】
外キャップ50は、周壁51と、頂壁52と、を有している。周壁51は、内キャップ40、作動部材60、及びボタン部70を径方向外側から囲っている。周壁51の内周面には、径方向内側に突出する外側突部51bおよび係止突起51cが形成されている。外側突部51bは、内側突部41bと上下方向において対向しており、内側突部41bよりも下方に位置している。外側突部51bと内側突部41bとの間には上下方向の隙間が設けられている。外キャップ50は、外側突部51bが内側突部41bに当接するまでは、内キャップ40に対して上昇可能となっている。係止突起51cは、周壁51の下端に形成されている。係止突起51cは摺動部材100を下方から支持している。これにより、摺動部材100が外キャップ50から下方に脱落することが抑制される。
【0019】
周壁51の内周面には、径方向内側に突出し、上下方向に延びる縦リブ53が形成されている。縦リブ53は周方向に間隔を空けて複数形成されており、縦リブ53同士の間に作動部材60の回り止め62が位置している。これにより、外キャップ50と作動部材60との容器軸O回りの相対回転が規制されている。なお、縦リブ53の数を1つにして、この縦リブ53を周方向で挟むように複数の回り止め62を形成してもよい。
【0020】
周壁51における縦リブ53の下方には、径方向内側に突出する嵌合突部54が形成されている。嵌合突部54が作動部材60にアンダーカット嵌合することで、作動部材60の外キャップ50に対する下方移動が規制されている。
頂壁52は、周壁51の上端から径方向内側に延びている。頂壁52には貫通孔52aが形成されている。
【0021】
図2に示すように、内キャップ40には複数の内側係合部41aが形成され、外キャップ50には複数の外側係合部51aが形成されている。複数の内側係合部41aは、螺着筒部41の外周面から径方向外側に突出しており、周方向に間隔を空けて配置されている。複数の外側係合部51aは、周壁51の内周面から径方向内側に突出しており、周方向に間隔を空けて配置されている。内側係合部41aと外側係合部51aとの間には、周方向における隙間が形成されている。
【0022】
外キャップ50を容器本体1に対して容器軸O回り(
図2のR方向)に回転させると、外側係合部51aが内側係合部41aに当接するまでは、外キャップ50が内キャップ40に対して回転するが、外キャップ50をさらに容器本体1に対して回転させると、外キャップ50と内キャップ40とが一体となって容器本体1に対して回転する。すなわち、外側係合部51aおよび内側係合部41aにより、外キャップ50の内キャップ40に対する所定量以上の容器軸O回りの回転が規制されている。外キャップ50が内キャップ40に対して回転している間は、内キャップ40は容器本体1に対して回転しない。なお、
図2のR方向は、内キャップ40の口部1aへの螺着を緩める方向である。以下、R方向を緩み方向Rという。
【0023】
図1に示すように、作動部材60は、係合筒部61と、回り止め62と、隔壁63と、柱状部64と、第2シール部65と、摺動筒部66と、を有している。係合筒部61は、上筒部42を径方向外側から囲っている。係合筒部61の内周面には第2係合部61aが形成されている。本実施形態の第2係合部61aは、係合筒部61から径方向内側に突出する突起である。突起である第2係合部61aが、螺旋状の溝である第1係合部42aの内側に位置していることで、作動部材60が内キャップ40に対して容器軸O回りに回転すると、作動部材60が内キャップ40に対して上下動する。
【0024】
回り止め62は、係合筒部61から径方向外側に突出している。隔壁63は、係合筒部61から径方向内側に延びている。隔壁63には複数の連通孔63aが形成されている。なお、連通孔63aの数は1つでもよい。柱状部64は隔壁63の径方向中央部から下方に延びている。柱状部64は中空形状となっているが、中実形状であってもよい。第2シール部65は柱状部64の下端から下方に延びる筒状に形成されている。第2シール部65は、第1シール部47の内側に嵌合している。本実施形態では、第1シール部47および第2シール部65により、スポイト管20内と作動空間S内との連通およびその遮断を切り替えるシール部が構成されている。
【0025】
摺動筒部66は、隔壁63から下方に向けて延びている。摺動筒部66は、径方向において、上筒部42と保持筒部44との間に位置している。また、摺動筒部66と保持筒部44との間にピストン30が配置されている。
ピストン30は、取付部31と、フランジ部32と、摺動部33と、を有している。取付部31は筒状に形成され、保持筒部44に外嵌されている。これにより、ピストン30は内キャップ40に固定されている。フランジ部32は取付部31の上下方向における中央部から径方向外側に延び、平面視で環状に形成されている。摺動部33はフランジ部32の径方向外側の端部から上下に延びており、摺動筒部66の内周面に接している。摺動部33は薄肉に形成され、弾性変形可能となっている。
【0026】
ボタン部70は、操作部71と、固定部72と、を有している。固定部72は平面視で環状に形成されており、作動部材60と外キャップ50との間で挟まれて固定されている。このため、作動部材60、外キャップ50、およびボタン部70は一体として上下動し、ボタン部70の外キャップ50に対する位置は変化しない。操作部71は、上方に向けて凸となるように湾曲した弾性膜であり、下方に弾性変形可能である。操作部71は、例えばゴムやエラストマー等の弾性変形可能な材質により形成されている。外キャップ50の貫通孔52aを通して、操作部71は外キャップ50の頂壁52から上方に突出している。
【0027】
本実施形態では、作動部材60、ピストン30、および内キャップ40によって囲まれた空間を作動空間Sという。作動空間Sの容積は、作動部材60が内キャップ40に対して上下動することで増減する(
図3参照)。作動部材60が内キャップ40に対して上下動するとき、ピストン30の摺動部33が作動部材60の摺動筒部66に対して摺動する。作動空間Sは、隔壁63に形成された連通孔63aによって、操作部71の内部空間(操作部71と隔壁63との間の空間)に連通している。なお、操作部71の内部空間の容積は、操作部71が弾性変形することで増減する。
【0028】
中栓80は、固定筒部81と、しごき片82と、接続部83と、を有している。固定筒部81は口部1a内に嵌合し、接続部83は口部1aの上端に載置されている。しごき片82は固定筒部81から径方向内側に突出しており、スポイト管20の外周面に接している。しごき片82は弾性変形可能に形成されており、スポイト管20が容器本体1から上方に離脱する際に、スポイト管20の外周面に付着した内容物をかき落とす。しごき片82には、複数の通気孔82aが周方向に間隔を空けて形成されている。接続部83は固定筒部81の上端から径方向外側に突出する環状のフランジ部であり、接続部83と内キャップ40の環状部43との間には、環状のパッキン90が挟まれている。
【0029】
パッキン90は、ゴムなどの弾性体により形成されている。パッキン90は、環状のパッキン本体91と、複数の凸部92と、複数の凹部93と、を有する。各凸部92はパッキン本体91から下方に向けて突出し、各凹部93はパッキン本体91の上面から下方に向けて窪んでいる。
図4に示すように、各凸部92および各凹部93はそれぞれ周方向に間隔を空けて配置されており、周方向における位置が互いに同じである。つまり、各凹部93は各凸部92の真上に配置されている。各凹部93と各凸部92とは平面視において重なる。
【0030】
内キャップ40が容器本体1の口部1aに締め込まれた状態において、パッキン90は、中栓80の接続部83と内キャップ40の環状部43との間に圧縮状態で挟まれる。このため内キャップ40には、パッキン90の弾性復元力に起因する上方付勢力が作用する。凸部92のほぼ真上に凹部93が配置されていることで、パッキン90が圧縮される際、凸部92の上方への押し潰れが円滑に生じる。これにより、パッキン90による中栓80と内キャップ40との間のシール性が良好に確保される。パッキン90の下方に、スポイト管20の外周面から突出した抜け止め23が位置している。抜け止め23により、パッキン90がスポイト管20から下方に脱落することが規制されている。
【0031】
摺動部材100は、環状に形成されており、外キャップ50と容器本体1との間に設けられている。摺動部材100は、周壁51の係止突起51cによって、下方から支持されている。これにより、摺動部材100が外キャップ50から下方に脱落することが抑制される。摺動部材100は、容器本体1の口部1aを径方向外側から囲っている。口部1aには、内キャップ40が螺着される螺着部(雄ネジが形成された部分)と、螺着部よりも外径が大きく、螺着部の下方に位置する拡径部と、が含まれる。この拡径部と外キャップ50との間に摺動部材100が配置されており、摺動部材100は拡径部に接している。本実施形態の摺動部材100は、硬質部100aと、硬質部100aよりも軟らかい材質により形成された軟質部100bと、を有する。
【0032】
軟質部100bは弾性変形可能な材質(例えばエラストマー等)により形成されている。硬質部100aは、軟質部100bよりも硬い材質(例えば低密度ポリエチレン)により形成されている。軟質部100bは硬質部100aの径方向内側に位置している。軟質部100bの下端部には、径方向内側に突出する突部が形成されている。軟質部100bの突部は、容器本体1の口部1aに当接することで、径方向に圧縮変形(弾性変形)している。これにより、摺動部材100が口部1aに対して摺動する際に、弾性力に起因する摩擦が生じる。硬質部100aは周壁51の内周面に嵌合されており、軟質部100bを保持する機能を有する。摺動部材100は、例えば硬質部100aおよび軟質部100bのうちの一方をインサート品とするインサート成形によって形成できる。あるいは、二色成形によって摺動部材100を形成してもよい。硬質部100aおよび軟質部100bはともに筒状であってもよい。あるいは、筒状の硬質部100aの内周面に、周方向に間隔を空けて複数の軟質部100bが固定されていてもよい。あるいは、硬質部100aおよび軟質部100bからなる、筒状ではない部品が、周方向に間隔を空けて複数配置された構造を採用してもよい。
【0033】
次に、以上のように構成されたスポイト容器10の作用について説明する。
【0034】
スポイト容器10が未使用の状態(出荷時の状態)では、
図1に示すように、作動部材60が内キャップ40に対して下降端位置に位置している。この状態では、第2シール部65が第1シール部47の内側に嵌合しており、スポイト管20内と作動空間Sとの間はシールされている。このため、スポイト管20内の内容物が作動空間S内に流入することが抑制される。
【0035】
図1に示す状態から、外キャップ50を容器本体1に対して容器軸O回りの緩み方向Rに回転させると、外側係合部51aが内側係合部41aに当接するまで(
図2参照)は、外キャップ50が内キャップ40に対して回転する。この動作を、本実施形態では「第1回転動作」という。外キャップ50と作動部材60との相対回転は、回り止め62および縦リブ53によって規制されているため、第1回転動作では作動部材60も外キャップ50とともに回転する。すなわち、第1回転動作では作動部材60も内キャップ40に対して回転する。
【0036】
作動部材60が内キャップ40に対して回転すると、第1係合部42aと第2係合部61aとが係合して、作動部材60が外キャップ50とともに内キャップ40に対して上昇する。これにより、
図3に示すように、作動空間Sの容積が増大するとともに、第2シール部65が第1シール部47から上方に離脱する。作動空間Sの容積が増大することで作動空間S内は負圧となり、スポイト管20内も負圧となる。したがって、容器本体1の内容物がスポイト管20内に吸い上げられる。この一連の動作を「吸上げ動作」という。
【0037】
スポイト管20内に内容物が吸い上げられる量は、作動空間Sの容積の変化量によって決まる。また、作動空間Sの容積の変化量は、作動部材60の内キャップ40に対する上昇量、すなわち、作動部材60の内キャップ40に対する回転量で決まる。そして、前記回転量は外側係合部51aと内側係合部41aとの間の周方向における距離で決まる。したがって、本実施形態では、外キャップ50を内キャップ40に対して回転させる操作により、略定量の内容物をスポイト管20内に吸い上げることが可能である。
【0038】
外側係合部51aが内側係合部41aに緩み方向Rにおいて当接した状態で、さらに外キャップ50を容器本体1に対して緩み方向Rに回転させると、外キャップ50とともに内キャップ40も容器本体1に対して回転する。この動作を、本明細書では「第2回転動作」という。第2回転動作の間、外側突部51bが内側突部41bに下方から当接することで、内キャップ40が外キャップ50から下方に脱落することが抑制される。第2回転動作により、螺着筒部41の口部1aに対する螺着が解除されて、
図5に示すように、スポイトアセンブリ2が容器本体1から上方に離脱する。以降は、例えば外キャップ50を手で把持して親指で操作部71を押下することなどにより、スポイト管20内に保持された内容物を吐出させることができる。
【0039】
スポイトアセンブリ2を容器本体1に再び装着する際は、外キャップ50を容器本体1に対して締まり方向(緩み方向Rとは逆の回転方向)に回転させると、外側係合部51aと内側係合部41aとが締まり方向において当接するまでは、外キャップ50が内キャップ40に対して空転する。この動作を、本明細書では「第3回転動作」という。第3回転動作の間は、第1係合部42aと第2係合部61aとが係合して、作動部材60および外キャップ50が内キャップ40および容器本体1に対して下降する。これにより、作動空間Sの容積が減少するが、この段階では未だ第2シール部65が第1シール部47に進入していないため、作動空間S内の空気はスポイト管20内に押し出される。したがって、作動空間S内やスポイト管20内の圧力が高まることが抑制され、次回の吸上げ動作において内容物の吸上げ量がばらつくことを抑制できる。
【0040】
その後、外キャップ50をさらに締まり方向に回転させると、外側係合部51aと内側係合部41aとが締まり方向において当接し、内キャップ40も容器本体1に対して締まり方向に回転する。この動作を、本明細書では「第4回転動作」という。第4回転動作により、内キャップ40が締まり方向に所定量回転することで、
図1の状態に戻る。
【0041】
上記の通り、スポイトアセンブリ2を容器本体1から取り外す際には、第1回転動作および第2回転動作が行われる。ここで、第2回転動作では、内キャップ40を容器本体1に対して回転させる分だけ、第1回転動作よりもトルクが大きくなる。使用者にとってみれば、第1回転動作から第2回転動作に移行する際に、操作力(トルク)が大きくなるため、違和感を感じる場合がある。
【0042】
そこで本実施形態では、容器本体1と外キャップ50との間に摺動部材100を設けている。第1回転動作においては、摺動部材100が容器本体1の口部1aに対して摺動することによるトルクが加わる。第1回転動作において、外キャップ50は容器本体1に対して上昇し、所定量回転した時点で摺動部材100と口部1aとの接触が軽減又は解除される。したがって、その後の第2回転動作では、摺動部材100が容器本体1または外キャップ50に対して摺動することによるトルクが加わらない。これにより、第1回転動作と第2回転動作との間の操作力の差異を小さくできる。また、摺動部材100によってトルク(操作力)が上昇することで、スポイト容器10をカバン等に入れて持ち運ぶ際などに、予期せず外キャップ50あるいは内キャップ40が緩んでしまうことを抑制できる。
【0043】
なお、上記した作用効果は、摺動部材100の形状等を変更しても得られる。例えば
図6、
図7に示すように、摺動部材100は、外リング101と、複数の弾性片102と、を有してもよい。外リング101は平面視で環状である。複数(
図7では3つ)の弾性片102は、外リング101の内周面に、周方向に間隔を空けて配置されている。各弾性片102には、周方向に延びるスリット102aが形成されている。また、各弾性片102の周方向における中央部には、径方向内側に向けて突出する摺動突部103が形成されている。この構成によれば、摺動突部103が容器本体1の口部1aに当接したとき、各スリット102aが径方向に潰れるように、各弾性片102が弾性変形する。したがって、摺動部材100が口部1aに対して摺動する際に、弾性力に基づく摩擦が生じる。
【0044】
図6、
図7の形状によれば、摺動部材100が軟材質によって形成されていなくても、摺動部材100と容器本体1とが摺動する際のトルクを生じさせることができる。したがって、摺動部材100は、軟材質ではない単一の材質(例えば低密度ポリエチレン)で形成されていてもよい。
【0045】
あるいは、
図8に示すように、摺動部材100は口部1aに取り付けられてもよい。この場合、スポイトアセンブリ2に摺動部材100が含まれない。
図8の例では、摺動部材100は、口部1aの保持突起1bに嵌合された硬質部100aと、硬質部100aの径方向外側に位置する軟質部100bと、を有する。この場合、外キャップ50が容器本体1に対して回転すると、軟質部100bが外キャップ50の内周面に対して摺動することでトルクが生じる。つまり、摺動部材100は容器本体1または外キャップ50のいずれか一方に取り付けられていればよい。
【0046】
以上説明したように、本実施形態のスポイト容器10は、内容物を収容する有底筒状の容器本体1と、容器本体1の口部1aに螺着された内キャップ40と、内キャップ40に固定されたスポイト管20と、内キャップ40に対する所定量以上の容器軸O回りの回転が規制された外キャップ50と、外キャップ50に対する容器軸O回りの回転が規制されるとともに、内キャップ40に対して容器軸O回りに回転することで内キャップ40に対して上下動する作動部材60と、外キャップ50の頂壁52に形成された貫通孔52aを通して上方に突出した操作部71と、作動部材60が内キャップ40に対して上下動する際に互いに摺動するピストン30および摺動筒部66と、を備えている。そして、外キャップ50と容器本体1との間に、外キャップ50が容器本体1に対して回転する際に、容器本体1または外キャップ50に対して摺動する摺動部材100が設けられている。
【0047】
このような構成によれば、スポイト管20に内容物を吸い上げるための動作に操作部71が関与せず、操作部71、外キャップ50、作動部材60が一体となって内キャップ40に対して上昇するため、内容物を吸い上げる際に操作部71の外キャップ50からの突出量が変化しない。したがって、本実施形態によれば、操作部71の外キャップ50に対する突出量の変化を抑制したスポイト容器10を提供することができる。
【0048】
また、外キャップ50が容器本体1に対して回転する際に、容器本体1または外キャップ50に対して摺動部材100が摺動する。この構成により、第1回転動作と第2回転動作との間のトルク(操作力)の差異を小さくできる。したがって、操作性をより向上させることができる。
【0049】
また、摺動部材100の少なくとも一部は弾性変形可能となっている。例えば
図1、
図8の例では軟質部100bが弾性変形可能であり、
図7の例では弾性片102が弾性変形可能である。これらの構成により、摺動部材100が容器本体1または外キャップ50に対して摺動することで生じるトルクの大きさを安定させることができる。
【0050】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0051】
例えば、前記実施形態の第1係合部42aは螺旋状の溝であり第2係合部61aは突起であったが、第1係合部42aおよび第2係合部61aの形状は適宜変更可能である。具体的には、第1係合部42aが雄ネジ部であり、第2係合部61aが雌ネジ部であってもよい。このような構成でも、作動部材60が内キャップ40に対して容器軸O回りに回転したときに、作動部材60を内キャップ40に対して上下動させることができる。
【0052】
また、前記実施形態では操作部71自体が弾性膜であったが、例えば弾性膜の上方に別の部材を配置し、当該部材を操作部としてもよい。この場合も、操作部である部材を押下することで弾性膜が弾性変形し、弾性膜の内部空間の容積が小さくなることで内容物を吐出させることができる。
【0053】
また、口部1aの外面(特に摺動部材100の軟質部100bと接触する部位)は、平滑面であってもよいし、凹凸が設けられた面であってもよい。凹凸は、例えば複数の縦リブを周方向に間隔を空けて口部1aに形成することで設けることができる。凹凸が設けられた面と軟質部100bが摺動する構成においては、凹凸の形状あるいは個数によって、トルク(操作力)の上昇量を調整することができる。
【0054】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…容器本体 1a…口部 20…スポイト管 30…ピストン 40…内キャップ 41c…第2突起 47…第1シール部(シール部) 50…外キャップ 60…作動部材 65…第2シール部(シール部) 66…摺動筒部 71…操作部 100…摺動部材 O…容器軸 S…作動空間