IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社吉野工業所の特許一覧

<>
  • 特許-トリガー式液体噴出器 図1
  • 特許-トリガー式液体噴出器 図2
  • 特許-トリガー式液体噴出器 図3
  • 特許-トリガー式液体噴出器 図4
  • 特許-トリガー式液体噴出器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】トリガー式液体噴出器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20240628BHJP
   B05B 11/00 20230101ALI20240628BHJP
【FI】
B65D47/34 100
B05B11/00 102G
B05B11/00 102Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020199142
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086873
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】坂田 耕太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宏太郎
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-213296(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230602(WO,A1)
【文献】特開2017-80725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
B05B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する容器体に装着される噴出器本体と、
前記噴出器本体の前端部に装着され、液体を前方に向けて噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、
を備え、
前記噴出器本体は、
上下方向に延在し、前記容器体内の液体を吸上げる縦供給筒部と、
前記縦供給筒部の前方に前方付勢状態で後方に移動可能に配置されたトリガー部を有し、前記トリガー部の後方への移動によって、液体を前記縦供給筒部内から前記噴出孔側に向けて流通させるトリガー機構と、
前記トリガー部の後方への移動によって、前記縦供給筒部内を通過した液体が内部に供給される貯留シリンダと、
前記貯留シリンダ内に前記貯留シリンダの中心軸線に沿う軸方向に移動可能に配置され、前記貯留シリンダ内への液体の供給に伴って前記軸方向のうちの一方側に向けて移動するとともに、付勢部材によって前記軸方向のうちの他方側に向けて付勢される貯留プランジャと、
を有し、
前記縦供給筒部には、
前記縦供給筒部の後端部に配置され、前記貯留シリンダから下方に延びて下端部が下方から閉塞された回収通路と、
前記回収通路から、前記縦供給筒部の周方向に延びる連通路と、
前記回収通路よりも前方に配置され、前記連通路と前記容器体内とを連通する連通開口と、が設けられている、トリガー式液体噴出器。
【請求項2】
前記連通開口は、前記縦供給筒部の前端部に配置されている、請求項1に記載のトリガー式液体噴出器。
【請求項3】
前記トリガー機構は、
前記トリガー部の移動に伴って前後に移動する主ピストンと、
前記主ピストンの移動に伴って内部が加圧及び減圧し、且つ内部が前記縦供給筒部内に連通する主シリンダと、を備え、
前記縦供給筒部の前端部には、前記主シリンダから下方に延びて前記容器体内に開口する残圧解除通路が設けられ、
前記連通路は、前記回収通路と前記残圧解除通路とを連通し、
前記連通開口は、前記残圧解除通路の下端部によって形成されている、請求項1または2に記載のトリガー式液体噴出器。
【請求項4】
前記縦供給筒部は、
外筒と、
前記外筒内に嵌合された内筒と、を備え、
前記回収通路および前記連通路は、前記外筒と前記内筒との間に設けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載のトリガー式液体噴出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガー式液体噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
トリガー式液体噴出器は、液体を前方に向けて噴出する噴出孔が形成されたノズル部材、及び噴出器本体を備えている。
噴出器本体は、トリガー部の後方への移動によって、縦供給筒部内を通過した液体が内部に供給される貯留シリンダと、貯留シリンダ内にその中心軸線に沿う軸方向に移動可能に配置され、貯留シリンダ内への液体の供給に伴って後方に向けて移動するとともに、付勢部材によって前方に向けて付勢される貯留プランジャと、を備えている(例えば、特許文献1参照)。
縦供給筒部の後端部には、貯留シリンダから下方に延びる回収通路が設けられている。回収通路の下端部は、容器体内に開口する開口部となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-213497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、例えば、従来のトリガー式液体噴出器が倒立姿勢でノズル部材側から落下する等し、トリガー式液体噴出器に対して前方から、落下衝撃などの衝撃力が上下方向に作用したときに、縦供給筒部の後端部に高い負荷が生じ、回収通路の下端部(開口部)を起点として縦供給筒部に破損が生じるという問題を見出した。
なお、従来のトリガー式液体噴出器では、縦供給筒部の前端部に、縦供給筒部とは異なる他の構造物が一体に設けられており、前記他の構造物により縦供給筒部の前端部が補強されていたが、縦供給筒部の後端部には、前述のような他の構造物が特には設けられていなかった。そのため、例えば、トリガー式液体噴出器が倒立姿勢で貯留シリンダ側から落下する等し、トリガー式液体噴出器に対して後方から、落下衝撃などの衝撃力が上下方向に作用する等したときも、縦供給筒部の後端部に高い負荷が生じる。
【0005】
本発明は、耐衝撃性を向上させることができるトリガー式液体噴出器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
<1>本発明の一態様に係るトリガー式液体噴出器は、液体を収容する容器体に装着される噴出器本体と、前記噴出器本体の前端部に装着され、液体を前方に向けて噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、を備え、前記噴出器本体は、上下方向に延在し、前記容器体内の液体を吸上げる縦供給筒部と、前記縦供給筒部の前方に前方付勢状態で後方に移動可能に配置されたトリガー部を有し、前記トリガー部の後方への移動によって、液体を前記縦供給筒部内から前記噴出孔側に向けて流通させるトリガー機構と、前記トリガー部の後方への移動によって、前記縦供給筒部内を通過した液体が内部に供給される貯留シリンダと、前記貯留シリンダ内に前記貯留シリンダの中心軸線に沿う軸方向に移動可能に配置され、前記貯留シリンダ内への液体の供給に伴って前記軸方向のうちの一方側に向けて移動するとともに、付勢部材によって前記軸方向のうちの他方側に向けて付勢される貯留プランジャと、を有し、前記縦供給筒部には、前記縦供給筒部の後端部に配置され、前記貯留シリンダから下方に延びて下端部が下方から閉塞された回収通路と、前記回収通路から、前記縦供給筒部の周方向に延びる連通路と、前記回収通路よりも前方に配置され、前記連通路と前記容器体内とを連通する連通開口と、が設けられている。
【0007】
このトリガー式液体噴出器によれば、貯留シリンダ内の液体が、回収通路、連通路および連通開口を通して、容器体内に回収される。
ここで、回収通路の下端部が下方から閉塞されている。したがって、仮にトリガー式液体噴出器に対して衝撃力が上下方向に作用し、縦供給筒部の後端部に高い負荷が生じたとしても、回収通路の下端部を起点とした縦供給筒部の破損が生じ難い。これにより、トリガー式液体噴出器の耐衝撃性を向上させることができる。
【0008】
<2>上記<1>に係るトリガー式液体噴出器では、前記連通開口は、前記縦供給筒部の前端部に配置されている、構成を採用してもよい。
【0009】
連通開口が、縦供給筒部の前端部に配置されている。したがって、前述の衝撃力が作用したときに、連通開口を起点とした破損が生じることを効果的に抑制することができる。
【0010】
<3>上記<1>または<2>に係るトリガー式液体噴出器では、前記トリガー機構は、前記トリガー部の移動に伴って前後に移動する主ピストンと、前記主ピストンの移動に伴って内部が加圧及び減圧し、且つ内部が前記縦供給筒部内に連通する主シリンダと、を備え、前記縦供給筒部の前端部には、前記主シリンダから下方に延びて前記容器体内に開口する残圧解除通路が設けられ、前記連通路は、前記回収通路と前記残圧解除通路とを連通し、前記連通開口は、前記残圧解除通路の下端部によって形成されている、構成を採用してもよい。
【0011】
連通開口が、残圧解除通路の下端部によって形成されている。したがって、連通開口と残圧解除通路と兼用することができる。これにより、トリガー式液体噴出器の構造の簡素化を図るとともに、破損の起点となり得る開口の数を低減することができる。
【0012】
<4>上記<1>から<3>のいずれか1項に係るトリガー式液体噴出器では、前記縦供給筒部は、外筒と、前記外筒内に嵌合された内筒と、を備え、前記回収通路および前記連通路は、前記外筒と前記内筒との間に設けられている、構成を採用してもよい。
【0013】
回収通路および連通路が、外筒と内筒との間に設けられている。よって、外筒の外周面や内筒の内周面に、回収通路や連通路に対応する溝などを形成すればよく、構造の簡素化を図ること等ができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐衝撃性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係るトリガー式液体噴出器の縦断面図である。
図2図1において貯留シリンダを含む一部の拡大図である。
図3図1において縦供給筒部を含む一部の拡大図である。
図4図3における要部の拡大図である。
図5図4におけるV-V断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、トリガー式液体噴出器1が容器体Aに取り付けられた噴出容器を例にして説明する。
図1に示されるように、本実施形態のトリガー式液体噴出器1は、液体を収容する容器体Aに装着される噴出器本体2と、液体を噴出する噴出孔4が形成され、噴出器本体2に装着されたノズル部材3と、を備えている。
なお、トリガー式液体噴出器1の各構成部品は、特に記載がなければ、合成樹脂を用いた成形品とされている。
【0017】
噴出器本体2は、縦供給筒部10と、装着キャップ14と、射出筒部11と、トリガー機構50と、貯留シリンダ90と、支持部材60と、貯留プランジャ80と、付勢部材81と、貯留弁20と、カバー体Cと、を有している。
【0018】
本実施形態では、縦供給筒部10の中心軸線を軸線O1と呼ぶ。軸線O1に沿う方向(Z軸方向)を上下方向と呼び、上下方向において、容器体A側(-Z側)を下側又は下方と呼び、その反対側(+Z側)を上側又は上方と呼ぶ。上下方向から見て、軸線O1に交差する一方向(X軸方向)を前後方向と呼び、上下方向及び前後方向の双方に直交する方向(Y軸方向)を左右方向と呼ぶ。前後方向において、ノズル部材3に形成された噴出孔4が開口する側(+X側)を前側又は前方と呼び、その反対側(-X側)を後側又は後方と呼ぶ。
【0019】
また、本実施形態では、貯留シリンダ90の中心軸線を軸線O2と呼ぶ。本実施形態において軸線O2は、前後方向に延びている。すなわち、本実施形態において前後方向は、貯留シリンダ90の中心軸線に沿う軸方向に相当する。また、本実施形態において後側(-X側)は、貯留シリンダ90の中心軸線に沿う軸方向のうちの一方側に相当する。また、本実施形態において前側(+X側)は、貯留シリンダ90の中心軸線に沿う軸方向のうちの他方側に相当する。ただし、軸線O2に沿う軸方向は、前後方向と一致していなくてもよい。
【0020】
縦供給筒部10は、上下方向に延在し、容器体A内の液体を吸い上げる。縦供給筒部10は、有頂筒状の外筒12と、外筒12内に嵌合された内筒13と、を有している。外筒12及び内筒13で構成される縦供給筒部10の軸線O1は、容器体Aの容器軸より後方に位置している。
【0021】
外筒12は、大径部12aと、大径部12aの上方に配置され、かつ大径部12aよりも縮径した小径部12bと、大径部12aの上端部と小径部12bの下端部とを連結した環状連結部12cと、を有している。大径部12aのうち、上端部は、上端部よりも下方に位置する部分に対して小径である。大径部12aの上端部の外周面は、大径部12aの全周にわたって窪んでいる。大径部12aの上端部の外周面には、凸リブなどが設けられていない。小径部12bは、有頂円筒状に形成され、軸線O1と同軸に配設されている。図2に示されるように、小径部12bの頂壁部12dは、貯留シリンダ90と一体に形成されている。
内筒13は、図1に示されるように、大径部13aと、大径部13aの上方に配置され、かつ大径部13aよりも縮径した小径部13bと、大径部13aの上端部と小径部13bの下側部分とを連結した環状連結部13cと、を有している。
【0022】
大径部13aは、外筒12の大径部12a内に配設されている。大径部13aの上端部は、外筒12の大径部12aの上端部内に嵌合されている。大径部13aの上端部は、外筒12の大径部12aの内周面に全周にわたって面接触している。大径部13aの上端部の外周面と外筒12の大径部12aの上端部の内周面との間はシールされている。大径部13aの下端部は、外筒12の大径部12a内から下方に突出している。大径部13aのうち外筒12の大径部12aから下方に突出した部分には、大径部13aの径方向の外側に向けて突出した環状の鍔部13dが形成されている。鍔部13dは、容器体Aの口部A1に装着(例えば螺着)される装着キャップ14の上端部内に配設され、装着キャップ14の上端部をその軸線回りに回転自在に係止している。鍔部13dは、装着キャップ14の上端部と容器体Aの口部A1における上端開口縁とにより上下方向に挟まれる。
【0023】
小径部13bは、円筒状に形成され、軸線O1と同軸に配設されている。小径部13bは、上下方向の両方に開口している。小径部13bは、外筒12の小径部12b内に配設されている。小径部13bの上端開口縁は、外筒12の頂壁部12dから僅かに下方に離れている。小径部13bの下側部分の内側には、上下方向に延びるパイプ15の上部が嵌合されている。パイプ15の下端開口部は、容器体Aの図示しない底部に位置している。
環状連結部13cの上面と、外筒12の環状連結部12cの下面と、の間に上下方向の隙間S1が設けられている。
【0024】
内筒13の内周面には、弁座部13eが形成されている。図示の例において、弁座部13eは、内筒13において、弁座部13eよりも上側に位置する部分の内径を、弁座部13eより下側に位置する部分の内径より大きくする段差によって形成されている。弁座部13eの上面に、貯留弁20が着座している。
【0025】
内筒13の内周面のうち、弁座部13eより下側に位置し、かつパイプ15の上端部より上側に位置する部分に、外径が内筒13の内径より小さい円筒状の支持筒部16が設けられている。支持筒部16は、軸線O1と同軸に配設され、内筒13の内周面から上方に向けて突出している。支持筒部16の上端開口縁に、ボール弁19が上方に向けて離反可能に配置されている。
【0026】
図3および図4に示すように、外筒12と内筒13との間に、回収通路17が設けられている。回収通路17は、貯留シリンダ90から下方に延びる。回収通路17の上端部は、上方に開口している。回収通路17の下端部は、内筒13の閉塞部13hによって下方から閉塞されている。回収通路17は、外筒12の小径部12bの内周面に形成された上下方向に延びる縦溝となっている。閉塞部13hは、内筒13において前記縦溝に下方から対向する部分(図示の例では環状連結部13c)である。
【0027】
回収通路17は、軸線O1よりも後方に位置している。回収通路17は、縦供給筒部10の後端部に配置されている。回収通路17は、後述する連通路17aおよび連通開口18aを通して容器体A内と連通している。
なお回収通路17は、例えば、内筒13の外周面に形成された縦溝であってもよい。さらに、回収通路17が、外筒12および内筒13のそれぞれに形成された縦溝が組み合わされて形成されてもよい。
【0028】
図1および図2に示すように、縦供給筒部10の上端部には、前方に向けて延びる接続筒部30が設けられている。接続筒部30は、前方に開口し、後方が閉塞された有底筒状に形成されている。図2に示されるように、接続筒部30の底部31は、外筒12の上端部と一体に形成されている。底部31には、底部31を前後方向に貫通する貫通孔31aが形成されている。貫通孔31aは、内筒13の上端部に形成された貫通孔13fに向けて開口している。貫通孔13fは、内筒13の小径部13bのうち弁座部13eより上方に位置する部分に形成されている。これにより、接続筒部30内は、貫通孔31a、13fを通して、内筒13内のうち弁座部13eより上方に位置する部分に連通している。
接続筒部30の内径は、内筒13の内径以上となっている。接続筒部30の前端部内に、閉塞栓32が密に嵌合されている。
【0029】
閉塞栓32は、栓本体32aと、フランジ部32bと、を備えている。
栓本体32aは、前方に向けて開口し、後方が閉塞された有底筒状に形成されている。
栓本体32aは、接続筒部30の前端部内に密に嵌合されている。これにより、閉塞栓32は、接続筒部30の前端開口部を閉塞している。
フランジ部32bは、栓本体32aの前端開口縁から外側に張り出している。フランジ部32bは、栓本体32aが接続筒部30に装着された状態において、接続筒部30の前端開口縁に前方から突き当たっている。
【0030】
図1に示すように、接続筒部30の下方には、シリンダ用筒部40が設けられている。
シリンダ用筒部40は、外筒12の小径部12bから前方に向けて突出するとともに、前方に向けて開口している。シリンダ用筒部40の下端部の後側部分は、外筒12の環状連結部12cと一体に形成されている。
【0031】
シリンダ用筒部40の周囲には、下側リブ46が設けられている。下側リブ46は、シリンダ用筒部40と大径部12aとの間を架け渡している。下側リブ46は、例えばシリンダ用筒部40の直下を回避した位置で、シリンダ用筒部40の軸線回りの周方向に間隔をあけて一対設けられている。各下側リブ46は、上端がシリンダ用筒部40の外周面に接続され、後端が大径部12aの外周面に接続されている。なお、下側リブ46はシリンダ用筒部40の直下に設けられていてもよい。
【0032】
シリンダ用筒部40の内側には、外筒12の小径部12bから前方に向けて突出するとともに、前方に向けて開口した嵌合筒部41が設けられている。嵌合筒部41は、シリンダ用筒部40と同軸に配設されている。嵌合筒部41の前端部は、シリンダ用筒部40の前端部よりも後方に位置している。
【0033】
図3および図4に示すように、外筒12の内周面と、内筒13の外周面と、の間に、残圧解除通路18が形成されている。残圧解除通路18は、後述するシリンダ53から下方に延びている。残圧解除通路18は、上下方向に延びている。残圧解除通路18は、嵌合筒部41内と内筒13の大径部13a内とを連通している。残圧解除通路18は、大径部13a内を通して、嵌合筒部41内と容器体A内とを連通している。
【0034】
残圧解除通路18は、回収通路17から軸線O1回りに離れている。残圧解除通路18(後述する連通開口18a)は、回収通路17や軸線O1よりも前方に位置している。残圧解除通路18は、縦供給筒部10の前端部に配置されている。
残圧解除通路18の上端部は、嵌合筒部41の後方に位置している。残圧解除通路18の下端部は、下方に向けて開口している。残圧解除通路18の下端部は、内筒13(環状連結部13c)に形成された連通開口18aである。連通開口18aは、内筒13から下方に向けて開口し、容器体A内に連通している。
【0035】
残圧解除通路18において下端部(連通開口18a)より上方に位置する部分は、外筒12の小径部12bの内周面に形成された上下方向に延びる縦溝となっている。なお残圧解除通路18は、例えば、内筒13の外周面に形成された縦溝によって形成されていてもよい。さらに、残圧解除通路18が、外筒12および内筒13のそれぞれに形成された縦溝が組み合わされて形成されてもよい。
【0036】
図1および図2に示すように、射出筒部11は前後方向に延びている。射出筒部11の内部は、縦供給筒部10の内部に連通している。射出筒部11は、貯留シリンダ90から前方に向けて延び、縦供給筒部10内、及び接続筒部30内を通過した液体を噴出孔4に導いている。射出筒部11の中心軸線は、軸線O2と平行に配置されている。図示の例において、射出筒部11の中心軸線は、貯留シリンダ90の軸線O2よりも上方に位置している。
【0037】
カバー体Cは、縦供給筒部10のうちの下端部を除く全体、射出筒部11の全体、並びに、貯留シリンダ90の全体を、少なくとも左右方向の両側及び上方から覆っている。
【0038】
トリガー機構50は、トリガー部51と、シリンダ53(主シリンダ)と、ピストン52(主ピストン)と、コイルばね54と、を有している。
【0039】
トリガー部51は、縦供給筒部10の前方に前方付勢状態で後方に移動可能に配置されている。トリガー部51は、射出筒部11の下方に設けられ、上下方向に延びている。トリガー部51は、左右方向に延びる回転軸部55を中心に前後方向に揺動可能に支持されている。回転軸部55は、左右方向から見て、射出筒部11の前後方向の中間部分に、射出筒部11の下方に隣接して設けられている。トリガー部51の前後方向への揺動に伴って、ピストン52は前後移動可能とされている。トリガー機構50は、トリガー部51の後方への揺動によって、液体を縦供給筒部10内から噴出孔4側に向けて流通させる。
トリガー部51の上端部は、コイルばね54による前方付勢力によって、後述する規制壁72の下端縁に上下方向に突き当たっている。これにより、トリガー部51は最前方揺動位置に位置決めされている。
【0040】
シリンダ53は、トリガー部51の後方に配置され、トリガー部51と前後方向で対向している。
シリンダ53は、前方に向けて開口する外筒部53aと、外筒部53aの後端開口を塞ぐ後壁部53bと、後壁部53bの中央部分から前方に向けて突出した筒状のピストンガイド53cと、後壁部53bのうちピストンガイド53cよりも上方に位置する部分から後方に向けて突出し、前後方向の両方に開口した筒状の連通筒部53dと、を有している。
【0041】
外筒部53aは、シリンダ用筒部40と同軸に配置されている。外筒部53aは、シリンダ用筒部40内に嵌合されている。シリンダ用筒部40の内周面と外筒部53aの外周面とは、前後方向の両端部において互いに密接している。シリンダ用筒部40の内周面と外筒部53aの外周面との間のうち、前後方向の両端部同士の間に位置する中間部には、環状の隙間S2が設けられている。
【0042】
外筒部53aには、外筒部53aの内側と隙間S2とを連通させる第1通気孔53gが形成されている。図1に示すように、外筒12の環状連結部12cには、上記隙間S2と、外筒12の環状連結部12cと内筒13の環状連結部13cとの間の隙間S1と、を連通させる第2通気孔12fが形成されている。さらに、内筒13の環状連結部13cには、隙間S1と、装着キャップ14の内側と、を連通させる第3通気孔13gが形成されている。
【0043】
連通筒部53dは、外筒12及び内筒13に形成された各貫通孔に一体に嵌合されている。連通筒部53d内を通じて、縦供給筒部10の内筒13内とシリンダ53内とが互いに連通している。連通筒部53dの後端部は、内筒13の内部に突出している。連通筒部53dが嵌合された貫通孔は、内筒13の小径部13b内のうち、弁座部13eと支持筒部16との間に位置する部分に開口している。したがって、支持筒部16の上端開口縁に離反可能に着座したボール弁19は、容器体A内とシリンダ53内との連通及びその遮断を切り替える。
【0044】
ボール弁19は、シリンダ53内の加圧時に、縦供給筒部10内を通じた容器体A内とシリンダ53内との連通を遮断するとともに、シリンダ53内の減圧時に上方に向けて変位することで、縦供給筒部10内を通じた容器体A内とシリンダ53内との連通を許容する逆止弁とされている。ボール弁19の上方には、貯留弁20が配置されているため、貯留弁20によってボール弁19の上方への過度の変位が規制される。なお、ボール弁19は、連通筒部53dの後端部によって、上方への過度の変位が規制されてもよい。
【0045】
ピストンガイド53cは、前方に開口し、後方が閉塞された有底筒状に形成されている。ピストンガイド53cは、外筒部53aの内側に位置している。ピストンガイド53cの前端部は、外筒部53aの前端部よりも後方に位置している。ピストンガイド53cの底部は環状に形成され、内側に嵌合筒部41が嵌合されている。嵌合筒部41の前端部は、ピストンガイド53cの内部に突出している。ピストンガイド53cは、嵌合筒部41と同軸に配設されている。ピストンガイド53cの後端部における外周面には、環状の窪み部53eが形成されている。
【0046】
ピストン52は、シリンダ53の内部に前後方向に移動可能に配置されている。ピストン52は、トリガー部51の揺動に連動して前後方向に移動する。ピストン52の前後方向の移動に伴って、シリンダ53の内部は、加圧及び減圧される。ピストン52は、シリンダ53と同軸に配設され、後方に開口し、前方が閉塞された有頂筒状に形成されている。ピストン52は、トリガー部51とともにコイルばね54の付勢力によって前方に付勢されている。ピストン52は、トリガー部51の後方への揺動に伴って後方に移動してシリンダ53内に押し込まれる。
ピストン52は、後方に開口して内部にピストンガイド53cが挿入されたピストン本体部52aと、ピストン本体部52aの後端部からその径方向の外側に向けて突出し、かつ外筒部53aの内周面に摺接する摺動筒部52bと、を有している。
【0047】
ピストン本体部52aは、後方に開口し、前方が閉塞された有頂筒状に形成されている。ピストン本体部52aの内径は、ピストンガイド53cの外径よりも僅かに大きくなっている。ピストン本体部52aの前端部は、トリガー部51の後方からトリガー部51に当接している。
ピストン本体部52aの後端部には、その径方向の内側に向けて突出し、ピストンガイド53cの外周面に対して摺接する環状の内側リップ部52cが形成されている。これにより、内側リップ部52cとピストンガイド53cの外周面との間に、シール性が確保されている。
【0048】
ここで、ピストン52が後方に移動して、内側リップ部52cが、ピストンガイド53cの窪み部53eに達すると、内側リップ部52cと窪み部53eとの間に、若干の隙間が形成される。この隙間を通じて、シリンダ53の外筒部53a内と、ピストン本体部52aの内周面とピストンガイド53cの外周面との間の隙間と、が連通する。これにより、外筒部53a内が、ピストンガイド53c内を通じて嵌合筒部41内に連通する。内側リップ部52cは、ピストン52が最後方位置に位置したときに窪み部53eに達する。
【0049】
摺動筒部52bは、前後方向の中央部から前方及び後方に向かうに従って各別に拡径している。摺動筒部52bは、前後方向の両端部に位置する外側リップ部52dを有している。外側リップ部52dは、外筒部53aの内周面に対して密に摺接する。これにより、外側リップ部52dと外筒部53aの内周面との間に、シール性が確保されている。
【0050】
ピストン52は、トリガー部51が最前方揺動位置にあるときに、これに対応して最前方位置に位置しており、この際、摺動筒部52bが、外筒部53aに形成された第1通気孔53gを閉塞している。そして、トリガー部51の後方への揺動によってピストン52が最前方位置から所定量だけ後方に移動したときに、摺動筒部52bが第1通気孔53gを開放し、第1通気孔53gが、外筒部53a内を通してトリガー式液体噴出器1の外部に開放される。これにより、容器体Aの内部が、内筒13の環状連結部13cに形成された第3通気孔13g、隙間S1、第2通気孔12f、隙間S2及び第1通気孔53gを通じてトリガー式液体噴出器1の外部に連通する。
【0051】
コイルばね54は、例えば金属材料等で形成され、ピストン52及びシリンダ53と同軸に配設されている。コイルばね54は、ピストンガイド53cの内部とピストン本体部52aの内部とに跨って配置されている。コイルばね54の後端部は、ピストンガイド53cの底部(後壁部53b)に支持されている。コイルばね54の後端部は、嵌合筒部41の前端部を囲んでいる。コイルばね54の前端部は、ピストン本体部52a内に形成された後方を向く段面に支持されている。コイルばね54は、ピストン52を介してトリガー部51を前方に付勢している。
【0052】
トリガー部51とシリンダ53との間の前後方向の隙間に、ストッパTが着脱自在に設けられている。ストッパTは、トリガー部51及びシリンダ53に当接することで、トリガー部51の後方への揺動を規制している。使用者は、取り外したストッパTを廃棄してもよいし、トリガー式液体噴出器1の使用が終了した後に再びストッパTを取り付けてトリガー部51の後方への揺動を規制してもよい。
【0053】
貯留シリンダ90は、縦供給筒部10及び接続筒部30の上方に配置されている。貯留シリンダ90の内部には、トリガー部51の後方への揺動によって、縦供給筒部10内及び接続筒部30内を通過した液体が供給される。貯留シリンダ90は、前後方向に延びており、縦供給筒部10を前後方向に跨いでいる。貯留シリンダ90は、接続筒部30及びシリンダ用筒部40に対してほぼ平行に配置されている。貯留シリンダ90の下端部は、縦供給筒部10の上端部及び接続筒部30の上端部と一体に形成されている。
図2に示されるように、貯留シリンダ90は、前端部に位置する前壁部92と、前壁部92から後方に向けて延びたシリンダ筒93と、を有し、全体として後方に開口し、前方が閉塞された有頂筒状に形成されている。
【0054】
前壁部92は、接続筒部30における前後方向の中間部分から上方に向けて突出している。前壁部92には、前壁部92を前後方向に貫通する連通孔95が形成されている。連通孔95は、円形状に形成され、軸線O2と同軸に配設されている。連通孔95は、貯留シリンダ90内のうちの後述する貯留空間90aと、噴出孔4に連通する射出筒部11の内部と、に開口している。
なお、連通孔95は、シリンダ筒93に形成されてもよい。
【0055】
シリンダ筒93は、前壁部92から後方に向けて延びる前筒部96と、前筒部96よりも外径及び内径が大きく、前筒部96よりも後方に位置する後筒部97と、前筒部96及び後筒部97を前後方向に連結する段部98と、を有している。段部98は、前方から後方に向かうに従い拡径している。前筒部96と段部98との接続部分に、外筒12の頂壁部12dが接続されている。後筒部97は、縦供給筒部10よりも後方に位置している。
貯留シリンダ90には、供給孔91と、連絡溝94と、回収孔99と、が形成されている。
【0056】
供給孔91は、接続筒部30内において、栓本体32aより後方に位置する部分に開口している。供給孔91は、前筒部96における前端部の下側部分に形成されている。貯留シリンダ90内には、縦供給筒部10内及び接続筒部30内を通過した液体が供給孔91を通じて供給される。
連絡溝94は、前筒部96の後部における内周面に形成されている。連絡溝94は、軸線O2回りに間隔をあけて複数配置されている。
回収孔99は、前筒部96と段部98との接続部分、及び外筒12の頂壁部12dを一体に上下方向に貫通している。回収孔99は、縦供給筒部10に設けられた回収通路17の上端部に向けて開口している。回収孔99は、回収通路17を通して容器体A内に連通している。回収孔99の前端部に、複数の連絡溝94のうち下側に位置する連絡溝94の後端部が開口している。
【0057】
支持部材60は、貯留シリンダ90の後端部に固定されている。支持部材60は、後端部に位置する支持壁部62と、支持壁部62から前方に向けて延びる固定筒部61と、を有し、全体として、前方に開口し、後方が閉塞された有底筒状に形成されている。支持部材60は、軸線O2と同軸に配設されている。固定筒部61は、貯留シリンダ90の後端部内に、後方への移動、及び軸線O2回りの回転移動が規制された状態で嵌合されている。支持壁部62は、環状に形成されている。支持壁部62の内側を通して、外部と、貯留シリンダ90内において貯留プランジャ80より後方に位置する部分と、が連通している。固定筒部61には、径方向の外側に向けて突出した係止突起63が形成されている。係止突起63は、軸線O2回りに間隔をあけて複数設けられている。係止突起63は、後筒部97に形成された係止凹部97a内に係止されている。
【0058】
貯留プランジャ80は、貯留シリンダ90内に軸線O2に沿う前後方向に移動可能に配置されている。貯留プランジャ80は、貯留シリンダ90内への液体の供給に伴って後方に向けて移動する。貯留プランジャ80は、連通孔95を通した縦供給筒部10内と噴出孔4との連通を遮断し、かつ後方に移動したときに、連通孔95を通して縦供給筒部10内と噴出孔4とを連通する。
貯留プランジャ80は、貯留シリンダ90内を前後方向に摺動する摺動部材24と、摺動部材24内に嵌合された受け部材33と、を有している。摺動部材24及び受け部材33は、前後方向に延びる筒状に形成され、軸線O2と同軸に配設されている。
【0059】
摺動部材24は、例えば受け部材33及び貯留シリンダ90よりも軟質の材料により形成され、前後方向に延びるプランジャ筒25と、プランジャ筒25の前端開口を閉塞する閉塞壁26と、を有している。
【0060】
プランジャ筒25の外周面には、全周にわたって前側リップ部25a及び後側リップ部25bが突設されている。
【0061】
前側リップ部25aは、シリンダ筒93における前筒部96の内周面上を前後方向に密に摺動する。これにより、前側リップ部25aと前筒部96の内周面との間に、シール性が確保されている。前側リップ部25aは、プランジャ筒25の外周面から前方に向けて突出した円筒状に形成されている。前側リップ部25aの内周面と、プランジャ筒25の前端部の外周面と、の間に隙間が設けられている。プランジャ筒25のうち、前側リップ部25aより前方に位置する前端部は、前端部より後方に位置する部分より縮径している。プランジャ筒25の前端部の外周面と、貯留シリンダ90の内周面と、の間に隙間が設けられている。この隙間に、前側リップ部25aの内側、及び貯留シリンダ90に形成された供給孔91が開口している。
この隙間が、縦供給筒部10内を通過した液体が貯留され、かつ液体が供給されるのに伴い、貯留プランジャ80が後方に向けて移動することで拡張する貯留空間90aとなっている。
【0062】
後側リップ部25bは、シリンダ筒93における後筒部97の内周面上を前後方向に密に摺動する。これにより、後側リップ部25bと後筒部97の内周面との間に、シール性が確保されている。後側リップ部25bは、プランジャ筒25の後端外周縁から前方に向けて突出した円筒状に形成されている。後側リップ部25bの内周面と、プランジャ筒25の後端部の外周面と、の間に隙間が設けられている。
【0063】
閉塞壁26は、貯留シリンダ90の前壁部92の後面における連通孔95の開口周縁部に押し付けられている。閉塞壁26の前面には、前方に突出する突出部26aが形成されている。突出部26aは、軸線O2と同軸に配設された円錐台状に形成され、後方から前方に向かうに従って外径が小さくなっている。突出部26aの外周面が、連通孔95の後端部内に当接することで、連通孔95が閉塞されている。
【0064】
受け部材33は、受け筒34と、受け座部35と、を有している。
【0065】
受け筒34は、後方に開口し、前方が閉塞された有頂筒状に形成されており、プランジャ筒25の内側に配置されている。受け筒34の後側部分は、プランジャ筒25の後端開口部から後方に突出し、シリンダ筒93の後筒部97内に進出している。受け筒34の外径は、後筒部97の内径よりも小さくなっている。受け筒34の後側部分の外周面と後筒部97の内周面との間には、環状の隙間が設けられている。この隙間に、付勢部材81の前側部分が差し込まれている。
受け座部35は、受け筒34の外周面から突出したフランジ状に形成されている。受け座部35は、受け筒34の後側部分の外周面に設けられている。受け座部35の前面は、プランジャ筒25の後端開口縁に当接、若しくは近接している。
【0066】
付勢部材81は、貯留プランジャ80を前方に向けて付勢している。付勢部材81の前側部分は、受け筒34の後側部分を囲っている。付勢部材81は、受け座部35と支持部材60の支持壁部62との間に、前後方向に圧縮された状態で配置されている。付勢部材81の前端縁は、受け座部35の後面に当接している。付勢部材81の後端縁は、支持壁部62の前面に当接している。
付勢部材81は、軸線O2と同軸に配設された金属製のコイルばねとなっている。なお、付勢部材81として樹脂製のばねを用いてもよいし、その他の弾性を有する部材を用いてもよい。
【0067】
貯留プランジャ80が、付勢部材81に抗して後方に移動し、閉塞壁26が、貯留シリンダ90の前壁部92から後方に離れたときに、連通孔95が開放される。したがって、貯留プランジャ80が後方に移動するまでは、貯留シリンダ90の貯留空間90aで液体が加圧され、貯留空間90aの液圧が所定値に達し、貯留プランジャ80が付勢部材81に抗して後方に移動したときに、貯留空間90aの液体が、連通孔95を通して噴出孔4側に供給される。すなわち、貯留プランジャ80は蓄圧弁として機能する。
【0068】
貯留弁20は、縦供給筒部10内から貯留シリンダ90内への液体の供給を許容するとともに、貯留シリンダ90内から縦供給筒部10内への液体の流出を規制する逆止弁とされている。貯留弁20は、縦供給筒部10の内筒13内に設けられている。貯留弁20は、内筒13の上端部内に固定された固定部21と、弁座部13eの上面に配置された弁本体部22と、固定部21と弁本体部22とを連結する弾性変形部23と、を有している。
【0069】
固定部21は、円板状に形成され、内筒13の上端部内に密に嵌合されている。
弁本体部22は、上下方向に延びる柱状に形成されている。弁本体部22の下端面は、ボール弁19と上下方向で対向している。弁本体部22は、連通筒部53dの後端開口と前後方向で対向している。弁本体部22の外周面において、連通筒部53dより上方に位置する部分に、弁座部13eの上面に上方に離反可能に配置されたフランジ状の弁板部22aが形成されている。
弾性変形部23は、上下方向に弾性変形可能に形成されている。弾性変形部23は、シリンダ53内が加圧されたときに、弁本体部22が上方に変位することで、上方に向けて圧縮変形する。これにより、弁板部22aが弁座部13eから上方に離反し、縦供給筒部10内から貯留シリンダ90内への液体の供給が許容される。
【0070】
ノズル部材3は、図1に示されるように、前後方向に延びる装着筒71と、装着筒71から下方に突出する規制壁72と、装着筒71の前端部の内側に位置するノズル軸部74と、を有している。
【0071】
装着筒71の後側部分は、射出筒部11に密に外嵌されている。
規制壁72は、装着筒71における前側部分と後側部分との接続部分から下方に向けて突出している。規制壁72の下端縁に、トリガー部51の上端部が上下方向に突き当たっている。
ノズル軸部74の中心軸線は、貯留シリンダ90の軸線O2よりも僅かに上方に位置している。ノズル軸部74は、射出筒部11と同軸に配設されている。ノズル軸部74の前端部は、装着筒71の前端部よりも僅かに後方に位置している。ノズル軸部74には、前方に開口し液体を前方に向けて噴出する噴出孔4が形成されたノズルキャップ78が装着されている。噴出孔4は、射出筒部11と同軸に配設されている。図示は省略するが、ノズル軸部74の外面と、ノズルキャップ78の内面と、の間には、装着筒71の内部のうちノズル軸部74よりも後方に位置する部分と、噴出孔4と、を連通する連絡路が設けられている。
【0072】
本実施形態のトリガー式液体噴出器1では、トリガー式液体噴出器1の前後方向での重心位置が軸線O1付近に位置するように、縦供給筒部10に対して前方に位置する前側部分(主に、射出筒部11やノズル部材3等)と、縦供給筒部10に対して後方に位置する後側部分(主に、貯留プランジャ80や貯留シリンダ90等)と、の軸線O1からの突出量が設定されている。図示の例において、トリガー式液体噴出器1の前側部分の突出量(軸線O1からノズル部材3の前端までの長さ)は、トリガー式液体噴出器1の後側部分での突出量(軸線O1から貯留シリンダ90の後端までの長さ)よりも長くなっている。また、本実施形態のトリガー式液体噴出器1では、縦供給筒部10に対して前方に位置する前側部分が装着キャップ14の軸線に対しても前方に突出している。図示の例では、トリガー式液体噴出器1のうち、装着キャップ14の軸線に対して前方への突出量と、後方への突出量と、が同等に設定されている。そのため、例えば容器体Aの軸線が装着キャップ14の軸線と同軸に配置された円筒状の場合に、噴出容器の重心位置が前後方向の中心付近に位置する。但し、トリガー式液体噴出器1において、軸線O1に対して前側部分及び後側部分の突出量、及び装着キャップ14の軸線に対して前方への突出量と、後方への突出量は、噴出容器の前後方向での重量バランスが図られていれば適宜変更が可能である。
【0073】
ここで図4および図5に示すように、本実施形態では、縦供給筒部10には、連通路17aが設けられている。連通路17aは、外筒12と内筒13との間に設けられている。連通路17aは、回収通路17と残圧解除通路18とを連通している。連通路17aは、回収通路17から、縦供給筒部10の周方向に延びている。連通路17aは、回収通路17の下端部から、上下方向に位置をずらされることなく前方に延び、回収通路17に繋がっている。連通路17aは、軸線O1を径方向に挟んで2つ設けられている。2つの連通路17aは、いずれも円弧状である。
【0074】
連通路17aは、外筒12の小径部12bの内周面に形成された周方向に延びる周溝となっている。なお連通路17aは、例えば、内筒13の内周面に形成された周溝であってもよい。さらに、連通路17aが、外筒12および内筒13のそれぞれに形成された周溝が組み合わされて形成されてもよい。
連通路17aは、連通開口18aを通して容器体A内と連通している。連通路17aは、内筒13における連通開口18a以外の部分では、下方(容器体A内)に向けて開口していない。
【0075】
次に、上述のように構成されたトリガー式液体噴出器1を使用する場合について説明する。
【0076】
未使用時の状態からトリガー部51を最初に操作する場合に、トリガー部51をコイルばね54の付勢力に抗して後方に引くと、ピストン52が最前方位置から後方に移動する。このとき、シリンダ53内の空気の一部が、残圧解除通路18を通じて容器体A内に排出される。
その後、トリガー部51を解放すると、コイルばね54の付勢力によってピストン52がシリンダ53内を前方に向けて復元移動し、これに伴いトリガー部51も前方に復元移動する。そのため、シリンダ53内が減圧し、容器体A内の圧力よりも低い圧力になるので、貯留弁20の弁本体部22が、弁座部13eの上面に押し付けられたままの状態で、ボール弁19が支持筒部16の上端開口縁から上方に離反し、容器体A内の液体が、縦供給筒部10内に吸い上げられ、支持筒部16内、及び連通筒部53d内を通じてシリンダ53内に導入される。
このように、残圧解除通路18が設けられていることにより、シリンダ53内の空気を効率良く排出しながら、シリンダ53内に容器体A内から吸い上げた液体を溜めることができ、少ないプライミング回数で、使用前の準備を速やかに完了することができる。
【0077】
以下では、上述のようなトリガー部51の操作によって、トリガー式液体噴出器1の各部内に液体が充填され、縦供給筒部10内に液体を吸い上げることができる状態になっているものとする。
【0078】
まず、トリガー部51をコイルばね54の付勢力に抗して後方に引くと、ピストン52が最前方位置から後方に移動し、シリンダ53内が加圧される。これにより、シリンダ53内の液体が、連通筒部53d内を通じて縦供給筒部10の内筒13内に供給される。すると、内筒13に供給された液体は、支持筒部16の上端開口縁に配置されているボール弁19を下方に押し付けるとともに、貯留弁20の弁本体部22を押し上げて、弁板部22aを弁座部13eの上面から離反させる。
【0079】
これにより、縦供給筒部10内の液体が、図2に示される前述の貫通孔13f,31a、接続筒部30内、及び供給孔91を通して、貯留シリンダ90の貯留空間90aに供給され、貯留空間90aが加圧される。貯留空間90aの加圧に伴い、貯留プランジャ80は付勢部材81の付勢力に抗して最前進位置から後方に向けて移動し、液体が貯留空間90aに溜められる。貯留空間90aに液体が導入されはじめた初期段階では、液体は、前側リップ部25aの内周面と、プランジャ筒25の前端部の外周面と、の間の隙間に入り込む。そのため、貯留プランジャ80を後方に向けて移動させやすい。
【0080】
貯留プランジャ80が後方に移動することで、閉塞壁26が、貯留シリンダ90の前壁部92から後方に離れ、連通孔95が開放される。したがって、連通孔95及び射出筒部11内を通じて、圧力が高まった貯留空間90aの液体を噴出孔4に導くことができ、噴出孔4から前方に向けて液体を噴出させることができる。
このように、トリガー部51を後方に引く操作を行う毎に、液体を噴出孔4から噴出させることができるとともに、貯留プランジャ80を後方に移動させて、貯留空間90aに液体を溜めることができる。
【0081】
その後、トリガー部51を解放すると、コイルばね54の付勢力によってピストン52がシリンダ53内を前方に向けて復元移動し、これに伴いトリガー部51も前方に復元移動する。そのため、シリンダ53内が減圧し、容器体A内の圧力よりも低い圧力になるので、貯留弁20の弁本体部22が、弁座部13eの上面に押し付けられたままの状態で、ボール弁19が支持筒部16の上端開口縁から上方に離反し、容器体A内の液体が、縦供給筒部10内に吸い上げられ、支持筒部16内、及び連通筒部53d内を通じてシリンダ53内に導入される。
【0082】
トリガー部51の後方に向けた牽引操作を停止すると、縦供給筒部10内及び接続筒部30内を通じた貯留空間90aへの液体の供給は停止するものの、付勢部材81の付勢力によって貯留プランジャ80が最前進位置に向けて前方移動しはじめる。このとき、貯留空間90aから縦供給筒部10内への液体の流出は、貯留弁20によって規制される。
【0083】
これにより、貯留空間90aに溜まった液体を、連通孔95及び射出筒部11内を通じて噴出孔4に導き、噴出孔4を通じて前方に向けて液体を引き続き噴出させることができる。
このように、トリガー部51を後方に引く操作を行ったときだけでなく、トリガー部51を牽引操作しない場合であっても、液体を噴出させることができ、液体の連続噴出を行うことができる。
【0084】
なお、貯留プランジャ80が最後退位置に位置した状態で、仮にトリガー部51を後方に引く操作を行った場合、貯留空間90aに液体が過剰に供給されて、液漏れや各部の破損が発生することが考えられる。
しかしながら本実施形態では、貯留プランジャ80がある程度後方に移動すると、前側リップ部25aが連絡溝94に到達し、貯留空間90aが、連絡溝94、回収孔99、回収通路17、連通路17aおよび連通開口18a(残圧解除通路18)を通して、容器体A内に連通する。すなわち、回収通路17は、貯留プランジャ80が後方に移動したときに、貯留空間90aと容器体A内とを連通させる。したがって、貯留空間90aの液体の一部が容器体A内に戻され、貯留空間90aに液体が過剰に供給されることを抑制できる。これにより、貯留空間90aの圧力が過度に高くなるのを抑制でき、液漏れや各部の破損が発生することを抑制できる。
【0085】
以上説明したように、本実施形態に係るトリガー式液体噴出器1によれば、回収通路17の下端部が下方から閉塞されている。したがって、仮にトリガー式液体噴出器1に対して衝撃力が上下方向に作用し、縦供給筒部10の後端部に高い負荷が生じたとしても、回収通路17の下端部を起点とした縦供給筒部10の破損が生じ難い。これにより、トリガー式液体噴出器1の耐衝撃性を向上させることができる。
【0086】
連通開口18aが、縦供給筒部10の前端部に配置されている。したがって、前述の衝撃力が作用したときに、連通開口18aを起点とした破損が生じることを効果的に抑制することができる。なお本実施形態では、縦供給筒部10の前端部には、接続筒部30およびシリンダ用筒部40が設けられていて、縦供給筒部10の前端部が、これらの接続筒部30およびシリンダ用筒部40によって補強されている。そのため、前述の衝撃力が作用したときにおいても、縦供給筒部10の前端部の上下方向の変形が抑制され、縦供給筒部10の前端部に生じる負荷が抑えられる。
【0087】
また本実施形態では、連通開口18aが内筒13の環状連結部13cにおける前端部、すなわち、小径部13bに対して前方に位置する部分に配置されている。ここで、小径部13bは大径部13aに対して後方に偏心している。そのため、平面視において、環状連結部13cの前端部は、環状連結部13cの後端部よりも大きい。したがって、本実施形態のように、環状連結部13cの前端部に連通開口18aが形成された場合、環状連結部13cの後端部に連通開口18aが形成された場合と比べて、環状連結部13cの強度が相対的に低下しにくい。これにより、前述したような連通開口18aを起点とした破損が生じることを、一層効果的に抑制することができる。
【0088】
連通開口18aが、残圧解除通路18の下端部によって形成されている。したがって、連通開口18aと残圧解除通路18と兼用することができる。これにより、トリガー式液体噴出器1の構造の簡素化を図るとともに、破損の起点となり得る開口の数を低減することができる。
【0089】
回収通路17および連通路17aが、外筒12と内筒13との間に設けられている。よって、外筒12の外周面や内筒13の内周面に、回収通路17や連通路17aに対応する溝などを形成すればよく、構造の簡素化を図ること等ができる。
【0090】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
トリガー部51及びピストン52を前方に付勢する部材として、コイルばね54に代えて、例えば、射出筒部11を左右方向に挟む両側に設けられ、トリガー部51に連結された一対の樹脂ばね等を採用してもよい。
トリガー部51は、例えば、直線状にスライド移動可能に設けられてもよい。
上述した実施形態では、貯留プランジャ80が、連通孔95を閉塞し、かつ付勢部材81に抗して後方に移動したときに連通孔95を開放する構成を示したが、例えば、貯留プランジャ80が、貯留シリンダ90に形成された供給孔91を閉塞し、かつ付勢部材81に抗して後方に移動したときに供給孔91を開放する構成等を採用してもよい。
【0091】
上述した実施形態では、ノズル部材3が射出筒部11に嵌合されている構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、ノズル部材3は、貯留シリンダ90の前方に直接接続される構成であってもよい。
【0092】
上述した実施形態では、連通開口18aが、残圧解除通路18の下端部によって形成されているが、この構成に限られない。例えば、連通開口18aが、残圧解除通路18とは独立した開口であってもよい。
上述した実施形態では、連通開口18aが、縦供給筒部10の前端部に配置されているが、この構成に限られない。連通開口18aが、縦供給筒部10の前端部でなくても、例えば、連通開口18aが、回収通路17よりも前方に配置された他の構成を適宜採用することも可能である。例えば、連通開口18aが、縦供給筒部10の側端部(左右方向の端部)に設けられていてもよい。この場合、連通開口18aが、縦供給筒部10の2つの側端部のうちの一方のみに設けられていることが好ましい。またこの場合、回収通路17の下端部だけでなく、残圧解除通路18の下端部も下方から閉塞されていることが好ましい。この場合、残圧解除通路18から、縦供給筒部10の周方向(後方)に延びる第2の連通路(不図示)が設けられることで、残圧解除通路18が、第2の連通路および連通開口18aを通して容器体A内に連通している構成を、好適に採用することができる。
【0093】
上述した実施形態では、貯留シリンダ90が縦供給筒部10に対して後方に突出している構成について説明したが、この構成に限られない。貯留シリンダ90は、縦供給筒部10に対して上下方向や左右方向に突出していてもよい。また、貯留シリンダ90は、縦供給筒部10からの突出量を小さくした上で、外径を大きくしてもよい。
【0094】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 トリガー式液体噴出器
2 噴出器本体
3 ノズル部材
4 噴出孔
10 縦供給筒部
12 外筒
13 内筒
17 回収通路
17a 連通路
18 残圧解除通路
18a 連通開口
33 部材
34 筒
50 トリガー機構
51 トリガー部
52 ピストン
53 シリンダ
80 貯留プランジャ
81 付勢部材
90 貯留シリンダ
95 連通孔
A 容器体
O1 軸線
O2 軸線
図1
図2
図3
図4
図5