(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 73/20 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
H01H73/20 A
(21)【出願番号】P 2020214084
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】山中 佑太
(72)【発明者】
【氏名】新美 貴広
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-353381(JP,A)
【文献】特開平10-074545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 73/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースの後部に電源側端子が設けられている一方、前記本体ケースの前部に負荷側端子が設けられており、前記負荷側端子が、前記本体ケースに開設された端子孔から電線を差し込むことで、前記電線と前記本体ケース内の電路とが電気的に接続される速結端子で構成された回路遮断器であって、
前記速結端子として、コ字状又はロ字状の電線収容部を備えた固定金具と、前記電線収容部内に設置され、前記電線を前記電線収容部の下面に押し付ける接続バネ、及び差し込まれた前記電線を抜け止めする抜け止めバネを有する速結端子用金具とが設けられているとともに、
通常姿勢と、前記電線の差し込みに伴い左右方向を軸として後方へ回動した接続姿勢との間で姿勢変更可能であるとともに、前記接続姿勢から前記通常姿勢側への操作に伴い前記速結端子用金具による抜け止めを解除する解除レバーが設けられ、
前記解除レバーに、前記通常姿勢では、前記電線収容部の後側において前記電線の差し込み方向で前記電線収容部の下面よりも上方に突出する作動突起が設けられており、
差し込まれた前記電線の先端が前記作動突起を押し下げることで、前記解除レバーが前記通常姿勢から前記接続姿勢へと姿勢変更することを特徴とする回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば分電盤内等に設置される回路遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電線を差し込むだけで当該電線と本体ケース内の電路とを電気的に接続可能とした所謂速結端子を設けてなる回路遮断器が考案されている。また、そのような回路遮断器としては、電線を速結端子から抜き取るための解除レバーを設けてなるものがある。当該回路遮断器にあっては、解除レバーが、電線の速結端子への差し込みに伴い通常姿勢から接続姿勢へと姿勢変更するようになっており、接続姿勢にある解除レバーの通常姿勢側への操作に伴い電線の抜き取りが可能となるように構成されている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の回路遮断器では、速結端子に差し込まれる電線の径によって解除レバーの通常姿勢から接続姿勢側への作動量が異なるという問題があった。そのため、たとえば解除レバーに電線が差し込まれているか否かを表示する表示部が設けられていても、該表示部での表示内容が上手く切り替わらない等の問題の要因となっている。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、速結端子に差し込む電線の径の大小に解除レバーの作動量が影響を受けることのない回路遮断器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、本体ケースの後部に電源側端子が設けられている一方、前記本体ケースの前部に負荷側端子が設けられており、前記負荷側端子が、前記本体ケースに開設された端子孔から電線を差し込むことで、前記電線と前記本体ケース内の電路とが電気的に接続される速結端子で構成された回路遮断器であって、前記速結端子として、コ字状又はロ字状の電線収容部を備えた固定金具と、前記電線収容部内に設置され、前記電線を前記電線収容部の下面に押し付ける接続バネ、及び差し込まれた前記電線を抜け止めする抜け止めバネを有する速結端子用金具とが設けられているとともに、通常姿勢と、前記電線の差し込みに伴い左右方向を軸として後方へ回動した接続姿勢との間で姿勢変更可能であるとともに、前記接続姿勢から前記通常姿勢側への操作に伴い前記速結端子用金具による抜け止めを解除する解除レバーが設けられ、前記解除レバーに、前記通常姿勢では、前記電線収容部の後側において前記電線の差し込み方向で前記電線収容部の下面よりも上方に突出する作動突起が設けられており、差し込まれた前記電線の先端が前記作動突起を押し下げることで、前記解除レバーが前記通常姿勢から前記接続姿勢へと姿勢変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、解除レバーに、通常姿勢では、電線収容部の後側において電線の差し込み方向で電線収容部の下面よりも上方に突出する作動突起を設けており、差し込まれた電線の先端が作動突起を押し下げることで、解除レバーが通常姿勢から接続姿勢へと姿勢変更するように構成しているため、太い電線であっても細い電線であっても作動突起が押し下げられる量、すなわち解除レバーの通常姿勢からの作動量は変わらない。したがって、速結端子に差し込む電線の径の大小に解除レバーの作動量が影響を受けることがなく、たとえば解除レバーに電線の差し込みの有無に拘わる表示部を設けたものにあっては、該表示部での表示内容を確実に切り替えることができる等の効果を奏する回路遮断器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】電線が差し込まれていない状態にある回路遮断器を示した斜視説明図である。
【
図2】負荷側端子において一方の端子部が分解されている状態を示した斜視説明図である。
【
図3】電線が差し込まれていない状態にある負荷側端子の垂直断面を示した説明図である。
【
図4】負荷側端子の一方の端子部に電線が差し込まれている状態にある回路遮断器を示した斜視説明図である。
【
図5】電線が差し込まれている状態にある負荷側端子の垂直断面を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態となる回路遮断器について、図面にもとづき詳細に説明する。
【0010】
図1は、電線が差し込まれていない状態にある回路遮断器1を示した斜視説明図である。
図2は、負荷側端子3において一方の端子部が分解されている状態を示した斜視説明図である。
図3は、電線が差し込まれていない状態にある負荷側端子3の垂直断面を示した説明図である。
図4は、負荷側端子3の一方の端子部に電線31が差し込まれている状態にある回路遮断器1を示した斜視説明図である。
図5は、電線31が差し込まれている状態にある負荷側端子3の垂直断面を示した説明図である。
【0011】
回路遮断器1は、合成樹脂製の左右一対のケースを組み立ててなる本体ケース4を有しており、本体ケース4の後部には電源側端子2が、本体ケース4の前部には負荷側端子3が夫々配されている。電源側端子2は、所謂プラグイン方式の端子とされており、本体ケース4を左右方向に貫通したコ字状に切り欠いて形成された端子口を有して、分電盤内等に配設される電源ラインである導体バー(図示せず)や該導体バーから分岐された分岐バー(図示せず)を挿入接続可能となっている。一方、負荷側端子3は、電線31(
図4に示す)を端子孔5へ差し込むだけで、当該電線31と本体ケース4内の電路とが電気的に接続される所謂速結端子とされている。また、本体ケース4の上面には、前後方向へ回動操作可能なハンドル6が設けられており、該ハンドル6を回動操作することで、本体ケース4内に組み込まれている図示しない遮断機構が作動し、電源側端子2と負荷側端子3とを電気的につなぐ電路が接続/開放されるようになっている。
【0012】
ここで、本発明の要部となる負荷側端子3の端子部に係る構造について説明する。
負荷側端子3における各端子部は、本体ケース4の前部で各端子孔5の内側となる位置に設置される固定金具11と、端子孔5を介して差し込まれた電線31に接触し、該電線31を固定金具11に押し付けるとともに抜け止めする速結端子用金具12と、速結端子用金具12による電線31の抜け止めを解除するための解除レバー13とを備えてなる。固定金具11は、従来周知の構造を有しており、金属板を略コ字状に折り曲げた電線収容部14と、電線収容部14の後部から後方へ延びる前側電路部15とを一体的に有してなる。
【0013】
速結端子用金具12は、電線31を固定金具11に押し付ける接続バネ16と、接続バネ16により固定金具11に押し付けられている電線31を抜け止めする(接続状態で保持する)ための抜け止めバネ17とを一体的に備えてなる。該速結用端子金具12は、従来周知の形状とされているものの、従来とは上下逆さの姿勢で設置される。すなわち、接続バネ16は、略S字状に湾曲形成されているが、下方へ突出する底部が電線31と接触する接触部となっており、該底部と電線収容部14の下面との間に電線31が差し込まれると、電線31を電線収容部14の下面へ押し付ける方向へ付勢力が働き、電線31と固定金具11との接触状態を維持するようになっている。また、抜け止めバネ17は、接続バネ16の上側の端部から前方へ延びた後に下方へ延びる板状に形成されている。そして、抜け止めバネ17の下端は、通常時(電線31の非接続時)において接続バネ16の底部よりも僅かに下方へ突出しており、接続バネ16が電線31を押し付ける際、抜け止めバネ17の下端が電線31の表面に食い込んで電線31を抜け止めするようになっている。
【0014】
一方、解除レバー13は、左右方向が厚み方向となって上下方向へ延びる板状に形成されており、下端には回動支点となる回動軸18が側方へ突設されている。また、回動軸18の後側には、電線31の先端が当接可能な作動突起19が側方へ突設されている。さらに、回動軸18の上側には、後述するように解除レバー13を操作した際に抜け止めバネ17に干渉する干渉突起20が側方へ突設されている。加えて、解除レバー13の上端には、回動軸18を中心とする一定の曲率で前後方向に延びる操作面21が設けられており、該操作面21には、電線31が端子孔5を介して差し込まれているか否かを表示するための表示孔22が穿設されている。なお、各解除レバー13は、本体ケース4に取り付けられたバネ(図示せず)により後述するような通常姿勢側へ付勢されている。
【0015】
上述したような負荷側端子3における各端子部では、端子孔5の内側において、電線収容部14の内部空間が端子孔5を介して外部に連通するように固定金具11が設置されているとともに、該電線収容部14の内部空間に、接続バネ16が後方、抜け止めバネ17が前方(端子孔5側)を向き、且つ、接続バネ16における接触部が下方を向くような姿勢で速結端子用金具12が設置されている。また、解除レバー13は、電線収容部14よりも下方において回動軸18が左右方向を向くような姿勢で本体ケース4に軸着されており、操作面21は本体ケース4の上面に露出し、且つ、作動突起19及び干渉突起20は各電線収容部14内に位置するような状態となっている。なお、23は、速結端子用金具12を上記姿勢で保持するための保持突起である。
【0016】
そして、上記端子部では、電線31が差し込まれていない通常時、解除レバー13は、操作面21の前端が本体ケース4の前端際にあるとともに、電線収容部14の後側に隣接した位置において、作動突起19の先端(上端)が電線31の差し込み方向で電線収容部14の下面よりも上方へ突出した通常姿勢にある。また、解除レバー13が通常姿勢にあると、表示孔22内には、電線31が差し込まれていない旨(たとえば青色)が表示されている。当該通常時から電線31が端子孔5を介して差し込まれると、当該電線31は接続バネ16と電線収容部14の下面との間に差し込まれる格好となって、接続バネ16により電線収容部14の下面へ押し付けられるとともに、抜け止めバネ17により抜け止めされる。また、電線31の先端が作動突起19を乗り越えるような格好となるため、回動軸18を軸として作動突起19が押し下がる方向へ解除レバー13が回動し、操作面21が本体ケース4の上面上を後方へ移動する。すなわち、解除レバー13は、操作面21の前端が本体ケース4の前端際よりも後側に位置するとともに、作動突起19の先端が電線31の差し込み方向で電線収容部14の下面と略同平面上に位置する接続姿勢へと、通常姿勢から姿勢変更する。そして、解除レバー13が接続姿勢にあると、操作面21の移動に伴い、表示孔22内には、電線31が差し込まれている旨(たとえば赤色)が表示される。なお、電線31を抜き取る際には、解除レバー13の操作面21を前方(通常姿勢側)へ操作しつつ行えばよい。当該解除レバー13の操作により、干渉突起20が抜け止めバネ17に干渉して抜け止めバネ17が押し上げられ、結果として抜け止めバネ17の電線31への食い込みが解除されるため、電線31を抜き取ることができるようになる。また、電線31の抜き取りに伴い、解除レバー13はバネによって通常姿勢へと復帰する。
【0017】
以上のような構成を有する回路遮断器1によれば、解除レバー13に、通常姿勢では、電線収容部14の後側において電線31の差し込み方向で電線収容部14の下面よりも上方に突出する作動突起19を設けており、差し込まれた電線31の先端が作動突起19を押し下げることで、解除レバー13が通常姿勢から接続姿勢へと姿勢変更するように構成している。そのため、差し込まれた電線が太い電線であっても細い電線であっても作動突起19は、その先端が電線31の差し込み方向で電線収容部14の下面と略同平面上に位置するまでしか押し下げられない。すなわち、作動突起19の押し下げられる量、ひいては解除レバーの通常姿勢からの作動量は常に一定となるため、速結端子に差し込む電線31の径の大小に解除レバー13の作動量が影響を受けることがなく、たとえば解除レバー13に電線31の差し込みの有無に拘わる表示孔22を設けたものにあっては、該表示孔22での表示内容を確実に切り替えることができる等の効果を奏する回路遮断器1とすることができる。
【0018】
なお、本発明に係る回路遮断器は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、回路遮断器の全体的な構成は勿論、端子部に係る構成等についても必要に応じて適宜変更することができる。
【0019】
たとえば上記実施形態では、速結端子用金具として従来周知の速結端子用金具を採用し、上下逆さの姿勢で設置するとしているが、接続バネと抜け止めバネとを備えていれば、そのような従来周知の速結端子用金具に代えて、別の形状の速結端子用金具を採用することも可能である。ただ従来周知の速結端子用金具を採用することで、製造コストの低減等を図ることができる。
【0020】
また、上記実施形態では、解除レバーの操作面に表示孔(表示部)を設けるとしているが、そのような表示部が設けられていない解除レバーであっても、本発明に採用することは当然可能である。
さらに、上記実施形態では、金属板をコ字状に折り曲げて電線収容部を形成しているが、ロ字状に折り曲げて電線収容部を形成しても何ら問題はない。
【符号の説明】
【0021】
1・・回路遮断器、2・・電源側端子、3・・負荷側端子、4・・本体ケース、5・・端子孔、11・・固定金具、12・・速結端子用金具、13・・解除レバー、14・・電線収容部、16・・接続バネ、17・・抜け止めバネ、18・・回動軸、19・・作動突起、22・・表示孔、31・・電線。