(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240628BHJP
【FI】
G06Q50/02
(21)【出願番号】P 2020528732
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2019022084
(87)【国際公開番号】W WO2020008777
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2018126001
(32)【優先日】2018-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232564
【氏名又は名称】バイエルクロップサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聖
【審査官】原 忠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/047726(WO,A1)
【文献】石原 直樹 他,パラメトリック計画法を用いたマルチインスタンス,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2012年10月31日,VOL.112 No.279,271-276
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病害虫による作物への被害発生時の情報を含む病害虫発生情報と、前記作物の栽培環境を含む環境情報とを取得する取得部と、
前記病害虫発生情報を用いて、前記作物への前記被害発生につながる事象が生じた疑いがある推定事象発生期間と、前記被害発生につながる前記事象が生じていない無事象期間とを決定する事象期間決定部と、
前記被害発生に影響する特徴量を含む前記推定事象発生期間の前記環境情報と、前記特徴量を含まない前記無事象期間の前記環境情報とを比較し、前記比較により前記推定事象発生期間の前記環境情報の中から前記特徴量を抽出し、前記特徴量を用いて、前記推定事象発生期間における前記事象が生じる事象発生確率を算出し、前記事象発生確率に基づいて、前記事象が生じた事象発生時を推定する事象推定部と、
を備え
、
前記病害虫発生情報は、前記事象から前記被害発生までの潜伏期間の情報を更に含み、
前記事象期間決定部は、前記被害発生時の情報と前記潜伏期間の情報とを用いて、前記推定事象発生期間を決定する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記推定事象発生期間は、前記作物への前記被害発生時よりも前の期間であり、前記事象発生時を含む期間が少なくとも一つ以上含まれる、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記事象推定部により推定された前記事象発生時における前記環境情報に関して機械学習を行うことにより、前記事象発生確率を予測するための事象発生予測モデルを構築する機械学習部を備える、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記事象発生予測モデルと、前記作物の前記環境情報の現在値または予測値とを用いて、前記作物の前記事象発生確率を予測する、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記病害虫の種類毎に前記事象発生確率を出力する出力部を備える、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
コンピュータを、
病害虫による作物への被害発生時の情報を含む病害虫発生情報と、前記作物の栽培環境を含む環境情報とを取得する取得部と、
前記病害虫発生情報を用いて、前記作物への前記被害発生につながる事象が生じた疑いがある推定事象発生期間と、前記被害発生につながる前記事象が生じていない無事象期間とを決定する事象期間決定部と、
前記被害発生に影響する特徴量を含む前記推定事象発生期間の前記環境情報と、前記特徴量を含まない前記無事象期間の前記環境情報とを比較し、前記比較により前記推定事象発生期間の前記環境情報の中から前記特徴量を抽出し、前記特徴量を用いて、前記推定事象発生期間における前記事象が生じる事象発生確率を算出し、前記事象発生確率に基づいて、前記事象が生じた事象発生時を推定する事象推定部と、
として機能させるためのプログラム
であって、
前記病害虫発生情報は、前記事象から前記被害発生までの潜伏期間の情報を更に含み、
前記事象期間決定部は、前記被害発生時の情報と前記潜伏期間の情報とを用いて、前記推定事象発生期間を決定する、
プログラム。
【請求項7】
病害虫による作物への被害発生時の情報を含む病害虫発生情報と、前記作物の栽培環境を含む環境情報とを取得する取得部と、
前記病害虫発生情報を用いて、前記作物への前記被害発生につながる事象が生じた疑いがある推定事象発生期間と、前記被害発生につながる前記事象が生じていない無事象期間とを決定する事象期間決定部と、
前記被害発生に影響する特徴量を含む前記推定事象発生期間の前記環境情報と、前記特徴量を含まない前記無事象期間の前記環境情報とを比較し、前記比較により前記推定事象発生期間の前記環境情報の中から前記特徴量を抽出し、前記特徴量を用いて、前記推定事象発生期間における前記事象が生じる事象発生確率を算出し、前記事象発生確率に基づいて、前記事象が生じた事象発生時を推定する事象推定部と、
を含
み、
前記病害虫発生情報は、前記事象から前記被害発生までの潜伏期間の情報を更に含み、
前記事象期間決定部は、前記被害発生時の情報と前記潜伏期間の情報とを用いて、前記推定事象発生期間を決定する、
情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
作物の収穫を左右する要因として病害虫の発生が挙げられる。近年、情報通信技術を用いてこれらの病害虫から作物を守る技術が研究開発されている。病害虫には、作物への感染、潜伏、発病(発生)の3つの段階があり、病害虫の発生を予測することにより、農作物の効率的な生産に役立てる技術が種々開発されている。特許文献1および特許文献2には、病害虫の発生を予測する技術が開示されている。これらは、過去の環境情報、作物の栽培情報等から病害虫の発生につながる条件を探索する技術である。この病害虫発生予測を基に、農家では農薬を散布する等して、作物を病害虫から守っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-287871号公報
【文献】特開2003-167975号公報
【文献】特開2009-106261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、農薬の散布は、病害虫の発病(発生)よりも病害虫への感染前後、あるいは感染前に行うとより効果的である。例えば、特許文献3には、感染のおそれのある病害を予測するとともに、最適な農薬を選定する技術が開示されている。このように病害の感染を予測する上で、感染と発病の関係を把握することは重要である。一方で、特許文献3には、病害の感染推定に関する具体的な記述はない。感染は発病のように検知することが難しく、発病時期から感染時期を推定して、将来の感染予測を行うことは容易ではない。特に、発病前のデータには、病害の感染につながる条件と病害の感染につながらない条件とが混在し、その中から、感染時期を推定することは困難である。以上のような理由により、病害虫から作物を守る上で、病害虫への感染推定の精度の向上が求められていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、病害虫による作物への被害発生につながる事象が生じた事象発生時を推定することが可能な、新規かつ改良された情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、病害虫による作物への被害発生時の情報を含む病害虫発生情報および前記作物の栽培環境を含む環境情報を取得する、取得部と、前記病害虫発生情報を用いて、前記作物への前記被害発生につながる事象が生じた疑いがある推定事象発生期間と前記被害発生につながる前記事象が生じていない無事象期間とを決定する、事象期間決定部と、前記推定事象発生期間の前記環境情報と、前記無事象期間の前記環境情報と、を比較して、前記推定事象発生期間から前記事象が生じた事象発生時を推定する、事象推定部と、を備える、情報処理装置が提供される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、病害虫による作物への被害発生時の情報を含む病害虫発生情報および前記作物の栽培環境を含む環境情報を取得する、取得部と、前記病害虫発生情報を用いて、前記作物への前記被害発生につながる事象が生じた疑いがある推定事象発生期間と前記被害発生につながる前記事象が生じていない無事象期間とを決定する、事象期間決定部と、前記推定事象発生期間の前記環境情報と、前記無事象期間の前記環境情報と、を比較して、前記推定事象発生期間から前記事象が生じた事象発生時を推定する、事象推定部と、として機能させるためのプログラムが提供される。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、病害虫による作物への被害発生時の情報を含む病害虫発生情報および前記作物の栽培環境を含む環境情報を取得する、取得部と、前記病害虫発生情報を用いて、前記作物への前記被害発生につながる事象が生じた疑いがある推定事象発生期間と前記被害発生につながる前記事象が生じていない無事象期間とを決定する、事象期間決定部と、前記推定事象発生期間の前記環境情報と、前記無事象期間の前記環境情報と、を比較して、前記推定事象発生期間から前記事象が生じた事象発生時を推定する、事象推定部と、を含む、情報処理システムが提供される。
【0009】
上記構成により、作物への被害発生につながる事象が生じた期間が少なくとも一つ以上含まれる推定事象発生期間の環境情報と、作物への被害発生につながる事象が生じていない無事象期間の環境情報とを比較することで、推定事象発生期間の中から事象発生時をより正確に推定できる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明によれば、病害虫による作物への被害発生につながる事象が生じた事象発生時をより正確に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る概念を示す概念図である。
【
図2】同実施形態で用いられる機械学習の概念図である。
【
図3】同実施形態に係る情報処理システムの機能及び構成を示すブロック図である。
【
図4】同実施形態に係る情報処理システムにおいて、事象発生の推定が行われる一例を示した図である。
【
図5】同実施形態に係る情報処理システムの動作フローの一例を示すフローチャートである。
【
図6】同実施形態に係る情報処理システムの動作フローの一例を示すフローチャートである。
【
図7】同実施形態に係る情報処理システムの動作フローの一例を示すフローチャートである。
【
図8】同実施形態に係る情報処理システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
<1.情報処理システム概略>
(1.1.技術概要)
本発明は、作物への病害虫による被害発生時の情報および該作物の環境情報に基づいて、作物への被害発生につながる事象が生じた事象発生時を推定する技術に関する。
【0014】
図1を参照して、該事象発生時を推定する情報処理装置100と該事象発生推定に必要な情報を取得、および出力するその他構成を含んだ情報処理システム1に関して説明する。情報処理システム1には、情報処理装置100と、栽培センサ300と、気象サーバ400と、情報処理端末200とが備えられている。
【0015】
情報処理装置100は、作物に病虫害が発生した際に、情報処理端末200にユーザ等が入力等した病害虫発生情報を取得する。ここで言う病害虫発生情報は、例えば作物に病害虫が発生した時の情報を含む情報である。この病害虫発生情報と、ハウス内の栽培に関する情報を取得する栽培センサ300および気象サーバ400から得られる環境情報と、に基づいて、情報処理装置100は、作物への被害発生につながる事象が生じた事象発生時を推定する。
【0016】
情報処理装置100では、この事象発生時の推定の際に、マルチインスタンス学習(Multiple Instances Learning)と称される機械学習手法を用いる。この手法を用いることにより、環境情報の中に混在する作物への被害発生につながる事象とつながらない事象との中から、作物への被害発生につながる特徴量を抽出し、特徴量に基づいて、事象が生じる確率を算出し、該確率に基づいて、事象発生時を精度よく推定する。
【0017】
(1.2.機械学習)
図2を参照して、マルチインスタンス学習(Multiple Instances Learning)を用いた機械学習手法に関して説明する。本手法では、例えば、複数のサンプルを、2つに分類する際に、その分類が何をもって分類されているか、を把握することができる。本手法では、複数のサンプルをひとつの集合体(bag)として扱う。ここでは、複数のサンプルを2つに分類する際に関して説明を行うが、分類は2つに限らず3つ以上の複数行われてもよい。
【0018】
図2では、7種類の部屋の風景11、風景12、風景13、風景14、風景15、風景16、風景17が示されている。各風景には、様々なアイテムS、アイテムX1、アイテムX2、アイテムX3、アイテムX4、アイテムX5が含まれている。
【0019】
風景11には、アイテムSとアイテムX1とが含まれており、風景12には、アイテムX1とアイテムX2とアイテムSとが含まれている。風景13には、アイテムX2とアイテムX3とアイテムSとが含まれており、風景14には、アイテムX2とアイテムSとアイテムX4とが含まれている。
【0020】
風景15には、アイテムX5とアイテムX6とが含まれ、風景16には、アイテムX1と、アイテムX5とが含まれ、風景17には、アイテムX4とアイテムX5とが含まれている。
【0021】
これらの風景11~風景17を複数のサンプルとしたときに、本手法では、まず風景11~風景14を一つのBagとし、風景15~風景17を別のBagとする。具体的には、風景11~風景14を、PositiveBag(以下、PBと称す。)として決定する。一方、風景15~風景17を、NegativeBag(以下、NBと称す。)として決定する。
【0022】
ここで、PBでは、風景15~風景17と風景11~風景14とを分類する因子が一つ以上は、含まれている。一方、NBでは、風景15~風景17と風景11~風景14とを分類する因子が一つも含まれていない。このように、複数のサンプルからPBおよびNBのBagを決定する。
【0023】
本手法では、このようにPBおよびNBに分類された複数のBagから、PBに分類されるBagおよびNBに分類されるBagを比較することで、PBおよびNBの分類に際して影響する各Bag内の因子を抽出する。
【0024】
図2では、PBおよびNBに分類されるBagを比較することで、PBおよびNBはアイテムSが含まれるか否かで分類されたことを見出すことができる。つまり、風景11~風景14と風景15~風景17とを比較すると、風景11~風景14にはアイテムSが含まれているが、風景15~風景17には、アイテムSは含まれていない。ここでは、アイテムSを影響因子である特徴量として、風景11~風景14がPB、風景15~風景17がNBとして分類されていることがわかる。このように本手法では、PBおよびNBを比較することで、分類する際の特徴量がSであることを見出す。
【0025】
本手法では、PBの中に、特徴量を含むPositiveなサンプルと、特徴量が含まれないNegativeなサンプルとが混在する場合に、PBとNBとを分けるような特徴量を見つけることができる。また、本手法では、上述のように特徴量を見つけることで、未知のBagに対して、Positiveであるか、Negativeであるかを判定することができる。更に本手法では、該特徴量を用いて、PBの中のどのBagがPositiveサンプルであるか等を判定することができる。
【0026】
上記のような手法を用いて、本発明の一実施形態にかかる情報処理装置100では、作物の被害発生につながる事象が発生する疑いがある推定事象時発生期間の環境情報をPB、事象が発生していない無事象期間の環境情報NBとして比較する。この比較により、事象発生につながる特徴量を把握し、推定事象時発生期間から事象発生時を推定する。
【0027】
さらに、本発明では、事象発生時の推定に基づいた事象発生予測モデルの機械学習が行われる。このように、事象発生予測モデルを機械学習させることにより、自律的に事象発生予測モデルを更新することができる。したがって、事象発生確率の算出の正確性を向上させることが可能である。
【0028】
さらにまた、情報処理装置100では、機械学習後の事象発生予測モデルに対して、作物の環境情報、具体的には、作物に対する環境情報の予測値、または現在値等が新たに入力される。これらの環境情報に基づいて、情報処理装置100では、作物に対して、現在または未来の事象発生確率の経時的な変化を出力することができる。なお、現在または未来に限らず、過去に対しても事象発生確率を算出してもよいことは言うまでもない。
【0029】
<2.情報処理装置の機能構成>
以上、本発明の一実施形態に係る情報処理システムの概略について説明した。次に、本発明の一実施形態に係る情報処理システム1の機能構成について説明する。具体例として、作物に対して病害虫による被害が発生した際に、被害につながる事象が発生した事象発生時を推定する例を挙げて説明する。以下では、事象を病害虫への感染、被害発生を発病として説明する。
【0030】
図3を参照して、情報処理システム1の機能構成について説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る情報処理システム1の概略的な機能構成の例を示すブロック図である。
【0031】
図3に示したように、情報処理システム1は、情報処理装置100と、情報処理端末200と、栽培センサ300と、気象サーバ400と、を備える。情報処理システム1では、情報処理装置100が、情報処理端末200と、栽培センサ300または気象サーバ400と、から取得される情報を用いて、作物に対する病害虫感染予測を行う。以下では、まず情報処理装置100が情報処理を行う際に要する情報を取得する情報処理端末200と、栽培センサ300と、気象サーバ400とを順に説明する。
【0032】
(情報処理端末)
情報処理端末200は、入力部210と表示部230と通信部220とを備える。情報処理端末200では、病害虫発生情報を取得する機能を有し、取得された病害虫発生情報は、情報処理装置100の取得部110へ出力される。情報処理端末200は、スマートフォンのような携帯端末でもよく、コンピュータ等の情報処理装置であってもよい。なお、病害虫発生情報は、必ずしも情報処理端末200を介して取得される必要はなく、情報処理装置100にて、取得できれば取得方法は限られない。
【0033】
((入力部))
入力部210では、ユーザによる入力等により、病害虫による病害等が作物で発病した時の情報を含む病害虫発生情報が入力される。病害虫発生情報は、病害虫による病害等が作物で発病した発病日時の情報を含む。発病とは、作物に対して被害が発生したこと、あるいは感染後に潜伏期間が終了し、病虫害による感染の症状が発症したこと、が検知または認知されることを言う。例えば、発病の判断は、該作物の生育状況を観察するセンサ等があれば、センサ等が検知した情報を基に行われてもよく、ユーザが該作物の観察時に、作物への発病を認知することで行われてもよい。また、発病時とは、発病と判断された時を含む任意の期間を表し、発病日または発病時刻であってよい。
【0034】
病害虫発生情報は、病害虫による病害等が発病した日時の情報の他に、発生した病害虫の種類に関する情報も含む。具体的には、微生物病、害虫病、生理障害、雑草による生理障害等の情報を含む。さらに、各種類の更なる詳細に関する情報も含む。例えば、微生物病であれば、灰色かび病、葉かび病等の病気の種類に関する情報を含む。
【0035】
また、病害虫発生情報は、病害虫の感染または寄生から発病までの潜伏期間の情報も含む。病害の潜伏期間とは、病害の感染から発病までに要する日数を言い、虫害の潜伏期間とは、虫が産卵し、卵から幼虫が孵り、作物を食する等して発病(または虫害発生)が認知されるまでの期間を言う。つまり、潜伏期間とは、病虫害による作物への被害が発生するまでの期間を示す。この潜伏期間は、病虫害発生履歴、文献または調査等により得られる情報であってよい。
【0036】
また、情報処理端末200は、病害虫発生情報のみならず、作物が栽培される空間の環境情報および作物栽培の栽培状況に関する環境情報(以下、概して環境情報と称す。)を取得してもよい。なお、情報処理端末200にて取得される環境情報は、後述する栽培センサ300にて、検知が困難な情報であってよい。
【0037】
情報処理端末200にて取得される環境情報として、例えば、作物の栽培状況が挙げられる。作物の栽培状況とは、具体的には、作物の品種、該作物の栽培場所の標高、土壌の種類、土壌の栄養状態、該作物の播種日時、定植日時、該作物の葉の摘葉の状況、薬剤の散布履歴、薬剤の残効状況、除草の状況、樹勢の状況、作物の生育ステージ等の情報を含む。
【0038】
情報処理端末200にて、環境情報が取得される場合には、例えばユーザ等による補助入力の作業によって行われてもよい。つまり、環境情報は、後述する栽培センサ300で取得される情報のみならず、情報処理端末200で取得される情報により、情報処理システム1に取得されてよい。情報処理端末200または栽培センサ300により取得される環境情報は、過去の履歴を含む環境情報であってもよく、現在値または予測値を示した環境情報であってもよい。
【0039】
((通信部))
通信部220は、入力部210にて入力された病害虫発生情報または環境情報を取得し、情報処理装置100に出力する機能を有する。また、通信部220では、情報処理装置100により処理された情報が取得され、表示部230に出力する機能も有する。通信部220では、病害虫発生情報または環境情報が取得される際に、適宜通信を行ってもよく、連続的に通信を行ってもよい。また、情報処理装置100の指示により、通信を行ってもよい。
【0040】
((表示部))
表示部230は、通信部220から出力された情報を出力する機能を有する。例えば、表示部230は、情報処理装置100にて予測された感染確率を、ユーザに呈示する。
【0041】
(栽培センサ)
栽培センサ300は、作物が栽培される空間の環境情報を取得する機能を有する。栽培センサ300は、環境情報をセンシングするセンサ部310と、センシングした環境情報を出力する通信部320と、を備える。
【0042】
((センサ部))
センサ部310は、環境情報をセンシングする。センサ部310は、例えば、温度計、湿度計、日射量計、二酸化炭素濃度計、土壌の水分率を計測する水分率計等により構成されてよい。
【0043】
栽培センサ300が取得する環境情報の作物が栽培される空間とは、作物が栽培されている場所を囲む空間であってよく、例えば、ビニールハウス等の作物栽培を行う農業施設であってよい。作物が栽培されている場所であれば、囲まれていなくともよく、畑または田んぼ等の解放された空間であってもよい。
【0044】
栽培センサ300は、例えば、作物の周囲環境の温度、湿度、日射量、二酸化炭素濃度、作物が栽培される土壌の水分率などの環境情報を取得する。
【0045】
((通信部))
通信部320は、センサ部310にて取得された環境情報を情報処理装置100に出力する機能を有する。通信部320では、環境情報が取得される際に、適宜通信を行ってもよく、連続的に通信を行ってもよい。また、情報処理装置100の指示により、通信を行ってもよい。
【0046】
(気象サーバ)
気象サーバ400は、作物の栽培を行う地域の気象に関する環境情報を出力する機能を有する。出力する環境情報としては、気温、湿度、日射量、雨量等が挙げられる。気象サーバ400は、情報処理装置100に要求されることにより、情報処理装置100に使用される情報を選択的に出力してもよい。気象サーバ400によって出力される環境情報は、過去の履歴であってもよく、環境情報の現在値または予測値であってもよい。
【0047】
(情報処理装置)
情報処理装置100は、情報処理端末200と栽培センサ300と気象サーバ400により出力された情報を取得して、病害虫による作物への病害等の発病につながる感染が生じた感染時を推定する機能を主に有する。情報処理装置100は、取得部110と、記憶部120と、推定感染期間決定部130と、感染発生推定部140と、機械学習部150と、感染発生予測部160と、を備える。
【0048】
((取得部))
取得部110は、情報処理端末200と栽培センサ300と気象サーバ400とにより出力された環境情報および病害発生情報を取得する機能を有する。取得した環境情報および病害発生情報は、記憶部120に記憶される。
【0049】
((記憶部))
記憶部120は、取得部110にて取得した情報を記憶する機能を有する。具体的には、記憶部120は、取得部110にて取得した病害発生情報および環境情報を記憶する。また、記憶部120では、後述する感染推定における機械学習に関するパラメータ、感染予測モデル等も記憶する。
【0050】
((推定感染期間決定部))
推定感染期間決定部130は、病害虫発生情報を用いて、作物への発病につながる感染が生じた疑いがある推定感染期間と発病につながる感染が生じていない無感染期間とを決定する機能を有する。
【0051】
推定感染期間は、作物への発病につながる感染が生じた期間を少なくとも1点含む期間であればよい。具体的に推定感染期間には、作物への感染が生じた日時が含まれてもよい。また、推定感染期間には、作物への感染が生じる期間が複数含まれていてもよい。
【0052】
推定感染期間には、感染が生じた日時および感染が生じていない日時が混在して含まれてよい。推定感染期間として、例えば、推定感染期間決定部130では、発病時から、該病害虫の潜伏期間の日数を遡った期間を推定感染期間として決定してもよい。推定感染期間は、感染が生じる期間を含んでいればよく、病害虫の種類、感染予測の必要な精度に応じて適宜決定されてよい。例えば、既知の病害虫の潜伏期間が環境等に応じて変化する可能性がある場合には、潜伏期間をさらに長く設定して、推定感染期間をより長めにとってもよい。
【0053】
一方、推定感染期間決定部130では、感染が発生していないことが既知である期間を無感染期間として決定すればよい。例えば、発病が確認されていない時点から、少なくとも該病害虫の潜伏期間を遡った期間を無感染期間として決定する。無感染期間は、連続した無感染日時を含む期間であってもよく、任意の日時を一時点とした期間であってよい。また、無感染期間として、任意の日時を一時点として、複数の日時が決定されてもよい。
【0054】
((感染発生推定部))
感染発生推定部140は、推定感染期間決定部130により決定された推定感染期間の環境情報と、無感染期間の環境情報とを比較して、推定感染期間から感染が生じた感染時を推定する機能を有する。
【0055】
図4を参照して、感染発生推定部140における感染推定について具体的に説明する。
図4では、時間軸Tが示されている。ここではまず、発病時点Aが11月30日とする。該病害虫の潜伏期間が3~7日の間である場合に、推定感染期間の始点Cは、発病日時Aから潜伏期間の最長日数である7日を遡った11月23日となる。また、推定感染期間の終点Bは、発病日時Aから潜伏期間の最短日数である3日を遡った11月27日となる。
【0056】
一方で、無感染期間は、感染が生じていないことが既知の日時であればよく、少なくとも推定感染期間の始点Cよりも前の期間であれば、適宜決定されてよい。また、無感染期間は、推定感染期間以外の期間であってよい。
図4では、無感染期間は、推定感染期間の始点Cよりも前の日時D、つまり10月21日、および日時E、つまり10月20日で決定されている。
【0057】
感染発生推定部140では、推定感染期間の環境情報と、無感染期間の環境情報とを指定して比較する。推定感染期間の環境情報をそれぞれPositiveBag(PB)、無感染期間の環境情報をそれぞれNegativeBag(NB)として指定する。また、推定感染期間は、11月23日から11月27日の5日間である。
【0058】
ここでPBに分類される日時に対応する環境情報をそれぞれ、11月23日はPB1と指定し、11月24日はPB2と指定し、11月25日はPB3と指定し、11月26日はPB4と指定し、11月27日はPB5と指定する。一方で、NBに分類される日時に対応する環境情報をそれぞれ、10月20日はNB1と指定し、10月21日はNB2と指定する。
【0059】
環境情報に含まれる因子を模式的に、白丸、黒丸、黒三角、白三角で示している。無感染期間とされる10月20日の日時Eの環境情報NB1には、白丸が4つ、黒丸が2つ、黒三角が2つ含まれており、10月21日の日時Dの環境情報NB2には、白丸が4つ、黒丸が3つ、黒三角が2つ含まれている。一方、推定感染期間とされる日時では、11月23日の環境情報PB1は、白丸が4つ、黒丸が2つ、黒三角が2つ、白三角が3つ含まれており、11月24日の環境情報PB2には、白丸が4つ、黒丸が3つ、黒三角が1つ、白三角が1つ含まれている。同様に、11月25日の環境情報PB3は、白丸が3つ、黒丸が3つ、黒三角が2つ含まれ、11月26日の環境情報PB4には、白丸が4つ、黒丸が2つ、黒三角が2つ、白三角が3つ含まれ、11月27日の環境情報PB5には、白丸が3つ、黒丸が3つ、黒三角が2つ、白三角が1つ含まれている。
【0060】
ここで、感染発生推定部140では、無感染期間の環境情報NB1及び環境情報NB2と、推定感染期間の環境情報PB1~環境情報PB5とを比較する。感染発生推定部140では、この比較により、無感染期間の環境情報NB1及び環境情報NB2には、白三角が含まれず、推定感染期間の環境情報PB1~環境情報PB5には、白三角が含まれることを把握する。これにより、環境情報の因子のうち白三角が発病につながる特徴量Sであるとして抽出する。
【0061】
感染発生推定部140では、抽出した特徴量Sを用いて、さらに推定感染期間の中での、該特徴量Sの変化による感染確率を算出する。
図4では、無感染期間および推定感染期間の日時X、作物への発病から各日時を遡った日数Y、および各日時における特徴量の変化Zを表として示している。なお、具体的に、
図4では、特徴量Sを湿度(%)として示している。
【0062】
特徴量の変化Zの欄に着目すると、湿度(%)が11月23日は95%、11月24日は60%、11月25日は55%、11月26日は95%、11月27日は50%である。一方、無感染期間における湿度は10月20日が55%、10月21日が60%である。これらの特徴量Sを用いて、感染発生推定部140では、推定感染期間の中から感染時を推定する。
【0063】
例えば、
図4に示した例では、湿度が高いほど、感染確率は高くなるため、推定感染期間で、湿度が最高値であった11月23日、および11月26日が感染時と推定される。係る例では、特徴量の値が高くなるほど、感染確率が高くなる場合を挙げたが、特徴量の値が低くなるほど、感染確率が高くなる場合であってもよい。
【0064】
さらに、特徴量の変化が急激であるほど、感染の発生確率が高くなる等、特徴量の種類および特徴量の変化推移に応じて、感染の発生確率が算出されてよい。また、感染発生推定部140では、このように、推定感染期間の中から、複数の感染日時を推定してもよく、一つの日時が推定されてもよい。
【0065】
感染発生推定部140では、感染確率に閾値を設け、感染が生じたか否かを判定してもよい。例えば、該閾値より高い感染確率を示した場合に、感染時として推定してもよい。一方で、該閾値より低い感染確率を示した場合には、再度、感染発生推定部140にて、感染確率の算出を行ってもよい。
【0066】
さらに、感染発生推定部140では、推定された感染時の信頼性を高めるために、推定された感染時が適切であるか否かを判定し、適切な感染時を選択する機能を有してもよい。例えば、推定感染期間の中から、複数の感染日時が推定された場合に、推定された感染時が適切でないと判定して、複数の感染時からより確実な感染時を選択してもよい。本機能は、ユーザにより行われてもよい。つまり、推定された複数の感染時が、ユーザにより適切であるか否かが判定され、該推定された複数の感染時の中から適切な感染時が、ユーザにより選択されてよい。この様にして、感染発生推定部140では、感染時がより精度よく推定される。
【0067】
((機械学習部))
機械学習部150は、感染発生推定部140により推定された感染時における環境情報に関して機械学習を行い、現在または未来の感染確率を予測するための感染予測モデルを構築する機能を有する。感染発生推定部140では、感染時が推定されるため、発病につながる感染に対して、環境情報の中のどの因子が感染を生じさせるか等の情報が蓄積される。このような、感染を生じさせる環境情報を機械学習することにより、機械学習部150では、環境情報内の各因子と感染との関係性を示した感染予測モデルを構築することができる。
【0068】
機械学習部150は、感染予測モデルを構築し、さらに、記憶部120に出力する。記憶部120に記憶された感染予測モデルは、作物の感染予測に適宜用いられる。
【0069】
((感染発生予測部))
感染発生予測部160は、記憶部120に記憶された感染予測モデルと、作物の環境情報の現在値または予測値とを用いて、感染確率を予測する機能を有する。ここで、作物の環境情報とは、病害虫の発病が予測される作物に対する環境情報であり、栽培センサ300にて出力された環境情報と気象サーバ400にて出力された環境情報との少なくともどちらか一方により出力された環境情報であってよい。
【0070】
現在値または予測値とは、作物に対する現在の環境情報または、予測された環境情報を示す。例えば、現在値とは、栽培センサ300により、現在までに連続して取得される環境情報であってよく、定期的に更新取得される環境情報であってよい。また、現在値とは、定期的に更新されなくとも、情報処理装置100またはユーザの指示等により、適宜取得されてもよい。また、予測値とは、現在値よりも後の将来の環境情報を示し、現在から数時間後、数日後、数週間後等の予測値を示している。例えば、環境情報の予測値とは、気象サーバ400から出力される気象予報等を示す。
【0071】
感染発生予測部160は、上述した環境情報の現在値または予測値を用いて、感染が発生する確率の予測を行う。感染確率は、作物の経時的な変化に対して、任意の時点における感染確率であってもよく、経時的な変化に対応して、連続した感染確率であってもよい。また、確率のみならず、感染が発生するか否かを予測してもよい。なお、過去に対して、感染確率を予測してもよい。
【0072】
また、感染発生予測部160は、病害虫の種類毎に感染確率を算出してもよい。これにより、複数の病虫害に対して、感染確率を予測でき、病虫害対策の強化が可能である。
【0073】
感染発生予測部160は、さらに予測された感染確率を情報処理端末200に出力する機能を有する。情報処理端末200では、例えば、表示部230にて感染確率を表示し、ユーザに呈示する。ユーザは、感染確率を情報処理端末200にて確認して、農薬などの薬剤の散布等を計画することができる。また、感染確率の出力先は情報処理端末200に限定されず、複数の情報処理端末でもよい。
【0074】
<3.動作フロー>
以上までで、情報処理システム1の機能構成を説明した。次に、
図5~
図7を参照して、情報処理システム1の動作フローを説明する。
【0075】
情報処理システム1では、大まかに2つの処理を行う。つまり、情報処理システム1は、まず感染予測モデルを構築し(S100)、次に、構築した感染予測モデルを用いて、感染確率を予測する(S200)。以下それぞれの動作フローを詳細に説明する。
【0076】
(感染予測モデルの構築)
感染予測モデルを構築する際には、まず、情報処理装置100の取得部110にて、病害虫発生情報および環境情報の取得が行われる(S102)。病害虫発生情報は、発病日時を示す情報を含み、情報処理端末200等を通して、情報処理装置100に取得される。環境情報は、例えば、作物の栽培環境に設置された栽培センサ300または気象サーバ400にて出力された情報であり、栽培センサ300または気象サーバ400の少なくとも一方を通して、情報処理装置100に取得され得る。
【0077】
次に、情報処理装置100の推定感染期間決定部130にて、推定感染期間および無感染期間が決定される(S104)。推定感染期間は、作物の病害感染が少なくとも一つは生じる期間が含まれる期間であり、無感染期間は、感染が確認されていない期間である。
【0078】
ここで、推定感染期間決定部130では、例えば、推定感染期間および無感染期間における複数の環境情報に対してBag番号の付与を行い、推定感染期間に該当する環境情報にPositiveBag(PB)番号を与え、無感染期間に該当する環境情報にNegativeBag(NB)番号を与える。
【0079】
無感染期間に該当する環境情報NBを選択する際には、感染予測モデル構築の対象となる病害虫の発病が確認された病害発生情報の履歴から、無感染期間に該当する環境情報にNB番号を付与する。この時、病害虫発生情報として、複数の農家にて報告がされた病害虫発生情報を用いることにより、NB数を増やして感染予測モデルの精度を高めることができる。例えば、ある農家における病害発生情報に基づいた無感染期間における環境情報にNB1を付与し、別の農家における病害発生情報に基づいた無感染期間における環境情報にNB2を付与する。このように、感染を予測する作物と同種の作物、および感染予測を行う病害虫と同種の病害虫による感染に対応する無感染期間の環境情報にNB番号を付与して、NB番号の指定により、次処理にて感染時が推定される。
【0080】
次に、感染発生推定部140は、推定感染期間の環境情報および無感染期間の環境情報を比較して、推定感染期間の中から感染時の推定を行う(S106)。上述したPB番号およびNB番号が付与された環境情報を比較して、感染が発生する特徴量を抽出し、感染時の推定が行われる。
【0081】
さらに、感染発生推定部140では、推定された感染時が適切に推定されたか否かの判定が行われる(S108)。例えば、この判定は、推定された感染時をユーザが確認することで行われてもよい。
【0082】
推定された感染時が適切(S108/Yes)であれば、次処理に移行する。一方、推定された感染時が不適切(S108/No)であれば、再度、感染発生推定部140において、推定感染期間の環境情報および無感染期間の環境情報を比較して、感染時の推定を行ってよい。
【0083】
なお、推定された感染時が不適切とは、推定感染期間内で推定された感染時が複数ある場合、または、感染時の推定に際して、感染の確率が適切である範囲として、閾値範囲が設定された際に、感染確率が閾値範囲から外れる場合などが挙げられる。
【0084】
次に、感染発生推定部140では、推定した感染時の確定処理が行われる(S110)。前処理にて推定された感染時が適切(S108/Yes)であれば、そのまま感染時の確定処理が行われる。一方、推定された感染時が不適切(S108/No)である場合には、再度感染時の推定を行わなくとも、推定された感染時から、最も感染の確実性が高い感染時をユーザ等が選択して、感染時を確定させてもよい。
【0085】
次に、機械学習部150では、感染時の推定における感染時の環境情報に関して機械学習を行い、感染予測モデルを構築する(S112)。
【0086】
(感染予測モデルを用いた感染予測)
以上までで、感染予測モデル構築を行うまでの動作フローを説明した。次に、該感染予測モデルを用いた作物の病害虫感染予測に関して
図7を参照して説明を行う。
【0087】
まず、感染発生予測部160では、記憶部120から感染予測モデルを取得する(S202)。記憶部120には、上述した方法で構築された感染予測モデルが記憶されており、感染発生予測部160の指示により、記憶部120から感染予測モデルが出力される。
【0088】
さらに、感染発生予測部160では、記憶部120に記憶された環境情報の現在値または予測値を取得する(S204)。記憶部120には、栽培センサ300または気象サーバ400から取得された環境情報の現在値または予測値が記憶されており、感染発生予測部160の指示により、記憶部120から環境情報の現在値または予測値が出力される。
【0089】
次に、感染発生予測部160では、感染予測モデルと作物の環境情報の現在値または予測値とを用いて感染確率を予測する(S206)。
【0090】
感染発生予測部160は、予測された感染確率を出力する(S208)。出力先は、例えば、情報処理端末200等の感染確率を必要とするユーザが所持する端末であってよく、コンピュータまたはスマートフォン等の端末であってよい。
【0091】
以上のような、動作フローにより情報処理システム1にて、感染時の推定が精度よく行われる。更には、作物に対する現在以降の感染確率を予測することもできる。
【0092】
<4.ハードウェア構成例>
次に、
図8を参照して、本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成について説明する。
図8は、本実施形態に係る情報処理システム1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。なお、
図8に示す情報処理装置900は、例えば、
図3に示した情報処理システム1を実現し得る。本実施形態に係る情報処理システム1による情報処理は、ソフトウェアと、以下に説明するハードウェアとの協働により実現される。
【0093】
図8に示すように、情報処理装置900は、CPU(Central Processing Unit)901、ROM(Read Only Memory)902、RAM(Random Access Memory)903及びホストバス904aを備える。また、情報処理装置900は、ブリッジ904、外部バス904b、インタフェース905、入力装置906、出力装置907、ストレージ装置908、ドライブ909、接続ポート911及び通信装置913を備える。情報処理装置900は、CPU901に代えて、又はこれとともに、電気回路、DSP(Digital Signal Processor)若しくはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の処理回路を有してもよい。
【0094】
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って情報処理装置900内の動作全般を制御する。また、CPU901は、マイクロプロセッサであってもよい。ROM902は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM903は、CPU901の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。CPU901は、例えば、
図3に示す情報処理装置100または情報処理端末200の機能を実行し得る。
【0095】
CPU901、ROM902及びRAM903は、CPUバスなどを含むホストバス904aにより相互に接続されている。ホストバス904aは、ブリッジ904を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス904bに接続されている。なお、必ずしもホストバス904a、ブリッジ904および外部バス904bを分離構成する必要はなく、1つのバスにこれらの機能を実装してもよい。
【0096】
入力装置906は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチ及びレバー等、ユーザによって情報が入力される装置によって実現される。また、入力装置906は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、情報処理装置900の操作に対応した携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)等の外部接続機器であってもよい。さらに、入力装置906は、例えば、上記の入力手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などを含んでいてもよい。情報処理装置900のユーザは、この入力装置906を操作することにより、情報処理装置900に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。入力装置906は、
図3に示す情報処理端末200の入力部210に対応してもよい。
【0097】
出力装置907は、取得した情報をユーザに対して視覚的又は聴覚的に通知することが可能な装置で形成される。このような装置として、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、EL (electroluminescence)ディスプレイ装置、レーザープロジェクタ、LEDプロジェクタ及びランプ等の表示装置や、スピーカ及びヘッドホン等の音声出力装置等がある。出力装置907は、例えば、情報処理装置900が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、出力装置907は、情報処理装置900が行った各種処理により得られた結果を、テキスト、イメージ、表、グラフ等、様々な形式で視覚的に表示する。他方、音声出力装置を用いる場合は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して聴覚的に出力する。出力装置907は、例えば、
図3に示す情報処理端末200の表示部230の機能を実行し得る。
【0098】
ストレージ装置908は、情報処理装置900の記憶部の一例として形成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置908は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等により実現される。ストレージ装置908は、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出し装置および記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置などを含んでもよい。このストレージ装置908は、CPU901が実行するプログラムや各種データ及び外部から取得した各種のデータ等を格納する。ストレージ装置908は、例えば、
図3に示す情報処理装置100の記憶部120の機能を実行し得る。
【0099】
ドライブ909は、記憶媒体用リーダライタであり、情報処理装置900に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ909は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体に記録されている情報を読み出して、RAM903に出力する。また、ドライブ909は、リムーバブル記憶媒体に情報を書き込むこともできる。
【0100】
接続ポート911は、外部機器と接続されるインタフェースであって、例えばUSB(Universal Serial Bus)などによりデータ伝送可能な外部機器との接続口である。
【0101】
通信装置913は、例えば、ネットワーク920に接続するための通信デバイス等で形成された通信インタフェースである。通信装置913は、例えば、有線若しくは無線LAN(Local Area Network)、LTE(Long Term Evolution)、Bluetooth(登録商標)又はWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置913は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ又は各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置913は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。通信装置913は、例えば、
図3に示す栽培センサ300の通信部220、または情報処理端末200の通信部220等の機能を実行し得る。
【0102】
なお、ネットワーク920は、ネットワーク920に接続されている装置から送信される情報の有線、または無線の伝送路である。例えば、ネットワーク920は、インターネット、電話回線網、衛星通信網などの公衆回線網や、Ethernet(登録商標)を含む各種のLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などを含んでもよい。また、ネットワーク920は、IP-VPN(Internet Protocol-Virtual Private Network)などの専用回線網を含んでもよい。
【0103】
また、情報処理システム1に内蔵されるCPU、ROM及びRAMなどのハードウェアを上述した本実施形態に係る情報処理システム1の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記録媒体も提供される。
【0104】
<5.変形例>
以上までで、本発明が、作物への被害発生につながる事象の発生を推定する場合、病虫害の発生を主に例として説明した。本発明は、係る例に限らず、被害発生と被害につながる事象発生とが同時に起こらない事例に関して適用可能である。本発明は、具体的には、動物の感染症、動物の食中毒発生等に対しても用いることができる。
【0105】
(動物の感染症)
本実施形態においては、作物に病虫害が発生する例を挙げて説明したが、本発明は、動物が感染症を発病したときの感染日時の特定に適用可能である。動物が感染症を発症するまでには、感染症の感染が起こり、該感染症の潜伏期間を経て、該感染症が発症する。動物の感染症の場合、感染症が発症してからよりも、発症前、特に感染前後に薬剤を服薬する方が、感染症抑制効果が高い場合が多い。よって、動物を生育させる上で、感染確率を予測することは重要である。
【0106】
動物の感染症において、本発明が適用される場合には、動物への被害発生時、つまり感染症発生日時を含む感染症発生情報と、動物の生育環境を含む環境情報が取得される。感染症発生情報を用いて、動物へ感染症が感染した疑いのある期間を推定事象発生期間、感染疑いのない期間を無事象期間とする。
【0107】
該推定事象発生期間と該無事象期間との生育環境情報を比較して、生育環境情報の中から感染症に感染する因子となる特徴量を抽出する。この特徴量を用いて、該推定事象発生期間から、事象発生時を推定する。
【0108】
(動物の食中毒発生)
本発明は、動物が食中毒を発生した際に、原因食品の特定、または毒摂取時期の特定等にも適用可能である。動物が食中毒を発病するまでには、食中毒の摂取、食中毒を引き起こすウイルスまたは菌などの増殖が起こる。増殖が閾値を超えた場合に、動物に対して食中毒の症状が発症する。食中毒の場合、ウイルスまたは菌などの増殖が起こる前に、薬剤を服薬することにより食中毒の症状が緩和または抑制される可能性が高くなる。また、食中毒の原因によって、服薬する薬剤も異なるため、食中毒の原因が特定されることは、症状を緩和する上で重要となる。
【0109】
動物の食中毒において、本発明が適用される場合には、食中毒の発症時が被害発生時とされる。つまり、食中毒発症日時を含む食中毒発生情報と、動物が食品などを摂取した摂取情報が取得される。この食中毒発生情報を用いて、食中毒の原因となる食品等を摂取した疑いのある期間を推定事象発生期間、摂取疑いの無い期間を無事象期間とする。
【0110】
該推定事象発生期間と該無事象期間との摂取情報を比較して、摂取情報の中から食中毒の原因となる特徴量、つまり食品等を抽出する。この特徴量を用いて、該推定事象発生期間から、事象発生時を推定することができる。
【0111】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0112】
100 情報処理装置
110 取得部
120 記憶部
130 推定感染期間決定部
140 感染発生推定部
150 機械学習部
160 感染発生予測部
200 情報処理端末
210 入力部
220 通信部
230 表示部
300 栽培センサ
310 センサ部
320 通信部
400 気象サーバ