(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】光応答の色スペクトル分解を用いた自動インビトロ検体検出のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/78 20060101AFI20240628BHJP
G01N 35/10 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
G01N21/78 C
G01N21/78 Z
G01N35/10 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021016479
(22)【出願日】2021-02-04
(62)【分割の表示】P 2017556847の分割
【原出願日】2016-04-28
【審査請求日】2021-03-01
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-16
(32)【優先日】2015-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】304043936
【氏名又は名称】ビオメリュー
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ, ヴェロニカ ルチア
(72)【発明者】
【氏名】フェロレッリ, ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】サネージ, アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ウバルディーニ, ジュゼッペ
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】樋口 宗彦
【審判官】渡▲辺▼ 純也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-82169(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0014171(US,A1)
【文献】国際公開第2014/073064(WO,A1)
【文献】特開2013-92541(JP,A)
【文献】特開2010-275311(JP,A)
【文献】特開昭55-110936(JP,A)
【文献】YAMAMOTO, Junya,A He3 Cryostat Using a Charcoal Adsorption Pump for a Far-Infrared Detector,JAPANESE JOURNAL OF APPLIED PHYSICS,1975年,Vol.14/No.11,PP.1807-1810
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/62-21/74
G01N21/75-21/83
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に含まれる検体を自動でインビトロ検出及び/又は定量する方法であって、
試料を1種以上の試薬と反応できる状態に置いて、上記試料中に所定の検体が存在するならば、所定の光学的性質を少なくとも1つ有する光学剤を含む反応溶液を直接的又は間接的に調製する工程と;
液相の上記反応溶液に電磁放射線を照射する工程と;
上記反応溶液の光応答を分光計によって検出する工程と;
上記光応答から上記検体の存在確認及び/又は定量を行う工程とを有し、
上記方法は、
1種以上の試薬を用いて、それぞれ所定の光学的性質を少なくとも1つ有する少なくとも2種の異なる光学剤を含む反応溶液を直接的又は間接的に調製し、前記少なくとも2種の異なる光学剤の上記所定の光学的性質は異なるものであること、及び、
上記光応答の色スペクトル分解を得る工程と、該スペクトル分解において前記少なくとも2種の異なる光学剤の上記異なる所定の光学的性質を別々に検出する工程とを有することを特徴とし、
前記電磁放射線は紫外領域の放射線であり、
前記分光計はハウジングを備え、前記ハウジングは、中央に入口絞りを有する前壁と、回折格子を有する凹面反射面と、前記前壁の内面に配置された光電センサとを有する、方法。
【請求項2】
前記方法は、放射線源から放出された上記放射線の強度を検出する工程を更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、入射放射線の一部を分析領域を通過させることなく誘導する工程と、その入射放射線の一部の色スペクトル分解を得る工程とを更に有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも2種の異なる光学剤が、375nm~550nmの間のピーク波長を有する放射線を放出する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
上記光応答の色スペクトル分解を得る工程は、上記光応答からの光線を波長分散させる工程と、このように分散させた光線の各種波長の成分の強度を検出する工程とを有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
上記入射放射線の色スペクトル分解を得る工程の前に、上記入射放射線の一部と、上記反応溶液の光応答とを混合する工程を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
光応答の経路にフィルタが存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成された、試料に含まれる検体を自動でインビトロ検出及び/又は定量する装置であって、
試料との反応で得られた反応溶液を収容する複数の光学的分析領域(26’)と;
電磁刺激に対する上記反応溶液の光応答を検出及び/又は定量できる光学読取り装置(30)とを備え、
上記光学読取り装置は、分析領域(26’)に照射できる少なくとも1つの電磁放射線源(58)と、上記分析領域に含まれる上記反応溶液からの放射光を受光するよう構成され且つ上記反応溶液の光応答を検出できる光電受信器(70)の両方を備えており、
上記光電受信器(70)は、上記装置の移動台(32)に保持され、上記移動台は、モータ駆動であり、且つ、自動制御下で移動して上記光電受信器を各分析領域(26’)に対応する複数の位置に運ぶものであり、
上記光電受信器(70)は、上記光応答の色スペクトル分解を供給できる分光計(64)の一部を構成することを特徴とする装置。
【請求項9】
上記分光計(64)は、λ
max≧2×λ
minを満たす2つの波長λ
min及びλ
max間の少なくとも1つの作用波長域にわたって上記光応答の色スペクトル分解を供給できることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
上記分光計(64)は、波長分散素子(68)と、線形又は二次元の主要光電センサ(70)とを有することを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項11】
上記分光計(64)は、上記光電受信器(70)と接続され且つ上記光応答の色スペクトル分解の画像である画像電気信号を供給する電子回路を有すること特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項12】
上記画像電気信号はアナログ信号であることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
上記放射線源は単色源であることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項14】
上記放射線源は多色源であることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項15】
上記光学読取り装置は、上記放射線源から放出された放射線の強度を検出する手段を有することを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項16】
上記放射線源から放出された放射線の強度を検出する手段は、上記分光計(64)と、入射放射線の一部を上記分析領域(26’)を通過させることなく上記分光計へ誘導する誘導システムとを有することを特徴とする請求項15に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光分析及び/又は比色分析等の光学的分析によって生物学的試料等の試料中に存在する少なくとも1種の検体を検出及び/又は定量するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、臨床分野又は産業分野において自動インビトロ分析機器に適用できる。
【0003】
臨床分野の場合、上記分析は、ヒト生物学的試料(尿、血液、唾液、膿、脳脊髄液等)に関して、外部微生物(細菌、ウイルス、寄生体、抗体等)に由来し得る検体を免疫学的試験又は分子生物学試験等として検出又は定量できる。
【0004】
産業分野の場合、上記分析は、食品、医薬品又は化粧品の試料に関して、例えば、微生物学的試験として製品の微生物学的品質を検査できる。一般に、これらの微生物学的試験は、無菌状態であること(微生物が存在してはならない)又は(感染症を引き起こし得る)病原性細菌が存在しないこと、あるいは共生細菌が一定の閾値未満しか存在していないこと(すなわち、ヒトに常在しているが低濃度では害のない細菌)を実証する。
【0005】
本発明はまた、動的解析、すなわちリアルタイム解析の分野、具体的には免疫学的/生物学的反応を経時的に制御及び/又は観察できる免疫学的試験及び分子生物学試験に対して適用できる。
【0006】
このようにインビトロで検出及び/又は定量するシステム又は方法は、蛍光分析によるインビトロ診断のための自動化装置等で公知であり、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5及び特許文献6等に開示されているが、そこでは、パルス光源、レーザーランプ又はアークランプを含む放射線源が用いられている。
【0007】
さらに本出願人は、これらの原理に基づく装置をVidas(登録商標)3又はVidas(登録商標)Legacy Blue等、Vidas(登録商標)という商品名で販売している。これらの装置は、例えば分析プロセスの自動化を可能にする。
【0008】
したがって、従来の装置及び方法では以下のものが見られる。
・分析用試料を収容する1つ以上の収容領域;
・上記試料を調製し、試薬と反応させて反応溶液を供給する自動調製及び反応手段;
・試料との反応で得られた反応溶液を収容する複数の光学的分析領域;及び
・電磁刺激に対する上記反応溶液の光応答を検出及び/又は定量できる光学読取り装置であって、分析領域に照射できる少なくとも1つの電磁放射線源と、上記分析領域に含まれる上記反応溶液からの放射光を受光するよう構成され且つ上記反応溶液の光応答を検出できる光電受信器の両方を有する光学読取り装置。
【0009】
従来の装置において、光学読取り装置は、上記装置の移動台に保持され、該移動台は、モータ駆動であり、且つ、自動制御下で移動して上記光学読取り装置を各分析領域に対応する複数の位置に運ぶことが知られている。したがって、このような装置では、移動可能な単一の読取り装置を使用して、複数の異なる分析領域における光応答を連続して分析でき、それを自動で行うことができる。なお、これらの装置において、実際、各分析領域を光学的に読み取るために移動するのは読取り装置であり、固定された読取り装置の前に領域が代わる代わる移動するのではない。したがって、光学読取り装置が移動可能でなければならないため、単純な設計とする必要がある。
【0010】
最新の技術では、上記装置によって、試料に含まれる検体を自動でインビトロ検出及び/又は定量する方法を実施でき、この方法は概して、
試料を1種以上の試薬と反応できる状態に置いて、上記試料中に所定の検体が存在するならば、蛍光性等の所定の光学的性質を有する薬剤を含む反応溶液を直接的又は間接的に調製する工程と;
上記反応溶液に電磁放射線を照射する工程と;
上記反応溶液の光応答を検出する工程と;
上記光応答から上記検体の存在確認及び/又は定量を行う工程とを有する。
【0011】
従来、光検出手段からの信号は、検出対象である検体の存在/量を表す薬剤に特徴的な所定の周波数/波長での光強度を検出するアルゴリズム等を使用して、アナログ又はデジタル処理で分析される。
【0012】
このため、一般的には光電センサが使用されており、反応溶液の光応答は、分析領域と光電センサとの間に配置された光学フィルタでフィルタリングされて、ある一つの波長又は所定の波長帯の光のみが通過する。その結果、光電センサは、その波長又は波長帯における光応答の強度を表す信号を供給する。反応溶液の光応答のフィルタリングは、従来の装置で実施される方法に必須の工程である。これにより、光学剤(蛍光剤等)の存在の定量を可能にする光学剤に関連する光応答を、単なる励起放射線の伝播であり得る及び/又は雑音である光学的放射線源に由来し得る潜在的な光応答と区別できるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】欧州特許第0864089号明細書(B1)
【文献】欧州特許第0871863号明細書(B1)
【文献】欧州特許出願公開第0241268号明細書(A1)
【文献】米国特許第5757013号明細書
【文献】欧州特許第0802413号明細書
【文献】国際公開第2004/055502号(A2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の装置及び方法は多くの点で非常に満足のいくものである。それにも関わらず、このような装置の測定精度を更に向上させてその結果の精度を高めることが望まれるようになっている。同時に、装置の全体的なサイズを著しく増大させることなく、このような装置の能力、すなわち単一の試料に対してより多くの分析結果を供給できる能力を更に高めることも望まれるようになっている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このため、本発明は、試料に含まれる微生物由来等の検体を自動でインビトロ検出及び/又は定量する装置であって、
試料との反応で得られた反応溶液を収容する複数の光学的分析領域と;
電磁刺激に対する上記反応溶液の光応答を検出及び/又は定量できる光学読取り装置とを備えるものであり、
上記光学読取り装置は、分析領域に照射できる少なくとも1つの電磁放射線源と、上記分析領域に含まれる上記反応溶液からの放射光を受光するよう構成され且つ上記反応溶液の光応答を検出できる光電受信器の両方を備える、装置を提供する。
【0016】
上記光電受信器は、上記装置の移動台に保持され、上記移動台は、モータ駆動であり、且つ、自動制御下で移動して上記光電受信器を各分析領域に対応する複数の位置に運ぶ。
【0017】
本発明によれば、上記光電受信器は、上記光応答の色スペクトル分解を供給できる分光計
の一部を構成する。
【0018】
個別に又は組み合わせて用いられる本発明の任意選択の他の特徴としては以下のものが挙げられる。
・上記分光計は、λmax≧2×λminを満たす2つの波長λmin及びλmax間の少なくとも1つの作用波長域にわたって上記光応答の色スペクトル分解を供給できる。
・上記分光計は、波長分散素子と、線形又は二次元の主要光電センサとを有する。
・上記分光計は、上記光電受信器と接続され且つ上記光応答の色スペクトル分解の画像である画像電気信号を供給する電子回路を有する。
・上記画像電気信号はアナログ信号である。
・上記放射線源は単色源である。
・上記放射線源は多色源である。
・上記光学読取り装置は、上記放射線源から放出された放射線の強度を検出する手段を有する。
・上記放射線源から放出された放射線の強度を検出する手段は、上記分光計と、入射放射線の一部を上記分析領域を通過させることなく上記分光計へ誘導する誘導システムとを有する。
・上記放射線源から放出された放射線の強度を検出する手段は、上記分光計とは異なる第二光電センサと、入射放射線の一部を上記分析領域を通過させることなく上記第二光電センサへ誘導する誘導システムとを有する。
【0019】
また本発明は、試料に含まれる微生物由来等の検体を自動でインビトロ検出及び/又は定量する方法であって、
試料を1種以上の試薬と反応できる状態に置いて、上記試料中に所定の検体が存在するならば、所定の光学的性質を少なくとも1つ有する光学剤を含む反応溶液を直接的又は間接的に調製する工程と;
上記反応溶液に電磁放射線を照射する工程と;
上記反応溶液の光応答を検出する工程と;
上記光応答から上記検体の存在確認及び/又は定量を行う工程とを有するものであり、
上記方法は、
1種以上の試薬を用いて、それぞれ所定の光学的性質を少なくとも1つ有する少なくとも2種の異なる光学剤を含む反応溶液を直接的又は間接的に調製し、上記2つの所定の光学的性質は異なるものであること、及び、
上記光応答の色スペクトル分解を得る工程と、該スペクトル分解において上記2つの異なる所定の光学的性質を別々に検出する工程とを有すること
を特徴とする方法を提供する。
【0020】
また本発明は、試料に含まれる微生物由来等の検体を自動でインビトロ検出及び/又は定量する方法であって、
試料を1種以上の試薬と反応できる状態に置いて、上記試料中に所定の検体が存在するならば、所定の光学的性質を少なくとも1つ有する光学剤を含む反応溶液を直接的又は間接的に調製する工程と;
上記反応溶液に電磁放射線を照射する工程と;
上記反応溶液の光応答を検出する工程と;
上記光応答から上記検体の存在確認及び/又は定量を行う工程とを有するものであり、
上記方法は、
上記光応答の色スペクトル分解を得る工程と;
上記光応答の色スペクトル分解の画像である、波長に対する強度の変化を示す近似的理論関係を決定する工程と;
上記波長に対する強度の変化を示す近似的理論関係において、波長の一次関数である強度
の線形オフセットを決定する工程と;
上記近似的理論関係を上記線形オフセットに応じて補正することによって、波長に対する強度の変化を示す補正理論関係を決定する工程と
を有することを特徴とする方法を提供する。
【0021】
個別に又は組み合わせて用いられる本発明の任意選択の他の特徴としては以下のものが挙げられる。
・上記波長に対する強度の変化を示す近似的理論関係を決定する工程は、上記光応答の色スペクトル分解の少なくとも一部に対して曲線を当てはめる工程を有する。
・上記光応答の色スペクトル分解を得る工程は、上記光応答からの光線を波長分散させる工程と、このように分散させた光線の各種波長の成分の強度を検出する工程とを有する。
・上記方法は、上記放射線源から放出された放射線の強度を検出する工程を有する。
・上記方法は、入射放射線の一部を分析領域を通過させることなく誘導する工程と、その入射放射線の一部の色スペクトル分解を得る工程とを有する。
・上記方法は、上記入射放射線の色スペクトル分解を得る工程の前に、入射放射線の一部と、上記反応溶液の光応答とを混合する工程を有する。
【0022】
本発明の主題の実施形態を示す添付の図面を参照しつつ以下の説明から他の様々な特徴が明らかとなる。ただし、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明を組み込むことができる蛍光分析及び/又は比色分析等の光学的分析によりインビトロ検出及び/又は定量する装置の概略斜視図であり、該装置には、分析領域を有する複数のストリップが組み込まれている。
【
図3】分析領域に含まれる反応溶液の光応答を読み取る光学読取り装置を保持する移動台の実施形態を表す概略斜視図である。
【
図4】移動台に好適に載置され且つ分光計を有する光学読取り装置を有する本発明の第一実施形態を表す。
【
図5】
図4と同様の図であって、本発明の第二実施形態を表す。
【
図6】本発明において得られる色スペクトル分解を表す。
【
図7】本発明の方法及び装置に従って3種の異なる光学剤で別々に得られた3つの色スペクトル分解を重ね合わせたものを表す。
【
図8】本発明の方法及び装置に従って3種の光学剤を同時に含む溶液で得られた色スペクトル分解を表す。
【
図9】
図8のスペクトル分解をモデル化するための全S字曲線を
図8の色スペクトル分解に重ね合わせて表す。
【
図10】全モデル化S字曲線のG525、G605及びG705成分の3つの曲線を
図8の色スペクトル分解に重ね合わせて表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、試料に含まれる検体を自動でインビトロ検出及び/又は定量する装置を表す。
【0025】
より正確にいうと、図示した自動装置は、検出及び/又は定量工程だけでなく、試料から反応溶液を調製する1つ以上の工程も実施可能である。
【0026】
記載した本装置は、出願人が「Vidas(登録商標)3」という商品名で販売しているタイプの装置等と一致する。この装置によれば、生物学的試料を自動で生物学的に分析でき、それにより、単一の装置において単一の試料又は複数の試料に対して複数の分析を実施できる。
【0027】
このような装置10の分解斜視図を
図1に模式的に示す。装置の「予備分析」部14と呼ばれる左下部分には、3つで一組の一次引出し16と二次引出し18とが並んで配置されている。各引出し16、18は、充填位置と使用位置との間で互いに独立して移動できるよう設計されており、具体的には装置前面に対して垂直な水平経路(長手方向と呼ばれるX軸方向)に沿って直線的にスライド移動する。本明細書中、「前」、「後」、「水平」、「垂直」等の用語は、図に示すような上記装置の正規の向きに対して示されるものである。例えば、一次引出し16は、各種形状の容器等に入れられた試料、希釈物質、試薬、標準物質等を収容するよう設計されている。したがって、各一次引出し16は複数の容器を保持してもよく、各容器は一次引出し16の所定位置に収容されることが好ましい。各一次引出し16は、装置から離して引出しを調製及び充填できるよう装置から着脱可能であってもよく、これにより、使用位置にある他の一次引出しに対して装置が作動している間、調製工程を実施できる。各一次引出し16は、その前方端にグリップハンドルを有していてもよい。本用途例の場合、二次引出し18は、例えば、自動分析プロセスにおいて装置が使用する使い捨て用具等の分析用具を収容するためのものである。ピペットチップや希釈カップ等のこれらの用具は、二次引出し18の(好ましくは所定の位置に)配置できる着脱式トレイに保持されていてもよい。また、二次引出し18は、複数の二次引出し18を交互に装置で使用できるように着脱可能であってもよい。
【0028】
さらに、
図1には、分析部20とも呼ばれる装置の右側部分が示されており、例えば分析ストリップを収容できる場所を同様に有する。上記ストリップは、
図2に示すストリップ等のように使い捨てであってもよい。分析ストリップ22は、特に本例示のように使い捨てである場合、通常はプラスチック材料で形成された部材である。ストリップ22は、上向きに開口している一連の容器24を画定する本体を有する。ストリップは長手方向に細長いため、容器24は長手方向(装置10の前後方向に対応)に一列に整列している。ストリップ22を使用する前に、容器24の少なくとも一部、好ましくは全ての容器を、ストリップ22の上面を密閉する漏止めフィルムで閉じることによって容器24が互いに分離される。ストリップを使用する前に、容器24を空にするか、又は、例えば緩衝液、洗浄液、希釈液、試薬等を含んでいてもよい物質で満たす。だが、本例示では、ストリップが装置の使用位置にある場合、ストリップの最後の容器又は後部容器26が装置の光学的分析領域26’と位置的に一致するよう設計されている。
【0029】
本例示では、ストリップは、各種容器に提供される物質の性質によって1種以上の分析に適応するが、全てのストリップが所定の分析で使用される必要はない。
【0030】
図示した装置の場合、装置10は、複数の分析ストリップ22を同時に収容するよう設計されている。これらのストリップ22は、互いに平行に並んで配置されるよう設計されており、したがってストリップは長手方向Xに対して垂直な横方向Yに整列している。したがって、本例示では、装置10は、分析位置で12個の分析ストリップ22を並んで収容できるよう設計されている。この位置では、各ストリップ22の後部容器26が、装置の対応する光学的分析領域26’と一致する。すなわち、装置は複数の分析領域26’を有しており、ストリップ22等の分析ストリップを用いる装置では、装置の各分析領域26’は、ストリップの後部容器26を収容するように設計されている。後部容器26が最終反応溶液を含む限り、この最終反応溶液は対応する分析領域26’で回収される。
【0031】
以下、図示した装置10の操作を簡潔に説明する。操作者が1種以上の分析用試料を一次引出し16の容器に充填する。また、操作者は、試料の調製及び/又は反応の準備に必要な物質をこれらの容器に充填することもできる。また、操作者は、この準備に必要なものを二次引出し16に充填することもできる。
【0032】
本例示では、装置10は自動調製・反応手段を有し、これによって試料を調製し試薬と反応させることにより、分析結果を好適に導き出せる電磁放射線による励起に対して光応答を示す最終反応溶液が得られる。
【0033】
このため、装置10は、3方向全て、すなわち長手方向X(前後)、横方向Y(左右)及び垂直方向Z(上下)に移動できることが好ましい移動可能なピペット装置27を有する。移動可能なピペット装置27は、二次引出し18から個々のピペットチップ28(
図2参照)を取り出すことができ、この個々のピペットチップ28を介して、物質(試料、試薬、希釈液、緩衝液等)を取り出したり投入したりできる。上記物質は、一次引出しの容器又は分析ストリップの容器から取り出すことができる。取り出した物質と試料とは、個々のピペットチップ又は二次引出し18内にある希釈カップのいずれか、あるいは1つの分析ストリップ22の1つの容器において混合してもよい。これらの各工程の間、試料中に存在する検体は試薬等の物質と接触して反応する。使用する物質としては光学剤の前駆体が挙げられ、該光学剤は、所定の光学的性質(色、蛍光、リン光等)を少なくとも1つ有する。
【0034】
上記前駆体は、所望の検体の存在に応じて、また場合によってはその濃度に応じて、特定の量の光学剤を最終反応溶液中に生成させる。したがって、最終反応溶液は、初期試料中の所望の検体の存在を表す濃度で蛍光剤等の光学剤を含有する。したがって、公知の方法で最終反応溶液の光応答を決定しようとする(例えば、光学剤の所定の光学的性質を検出して分析結果を導き出す)。
【0035】
上記光学剤は、反応溶液中に存在するか、又は、所定の検体が存在する場合にのみ所定の光学的性質を示すことが好ましい。所定の光学的性質の強度は、所定の試料中の検体の量又は濃度の関数であることが好ましい。このような所定の光学的性質は、溶液に電磁放射線が入射した際に反応溶液から放出される放射線の色スペクトル分解を分析することで検出できることが有利である。
【0036】
例えば、上記光学剤は蛍光剤であり、上記所定の光学的性質は蛍光発光であり、これらは、例えば、反応溶液に適当な励起電磁放射線を照射した際の特定の色スペクトル分解によって特徴付けることができる。
【0037】
上記光学剤は着色剤であっても同様に良好であり、その場合、上記所定の光学的性質は色であり、反応溶液に適当な入射電磁放射線を照射した際の色吸収スペクトルによって測定できる。だが、このような状況では、該システムは、電磁放射線源(又はその反射)と受光器とが整列した状態で伝播において作動する必要があるように思われる。
【0038】
このため、ストリップが使用位置にある場合、本例示では分析ストリップ22の後部容器26と一致する光学的分析領域26’内に一定量の最終反応溶液を配置することが知られている。また、例えば上述した装置Vidas(登録商標)3においては、分析領域に照射できる少なくとも1つの電磁放射線源と、分析領域に含まれる反応溶液からの放射光を回収するよう構成された光電受信器の両方を有する光学読取り装置30を使用できることも知られている。したがって、読取り装置は最終反応溶液の光応答を検出でき、この光学読み取り値に応じて、分析に特異的な光学剤の存在、更には濃度を決定できるようになる。
【0039】
したがって、上述の操作によって、装置10には複数の分析ストリップ22を同時に挿入でき、その結果、対応する数の異なる分析を同時に実施でき、各分析では、光応答を検出できるものでなければならない最終反応溶液を調製できることが理解される。なお、2つの異なる分析ストリップを使用し、装置へ同時に挿入して、単一の試料に対して2つの異
なる分析を実施してもよく、一次引出し16に充填した異なる試料に対して同じ分析を実施してもよく、例えば重複性等を目的として単一の試料の2つの部分に対して同じ分析を実施してもよい。このような状況では、2つのストリップの2つの後部容器26は、対応する数の光学的分析領域26’と一致するよう設計されており、したがって、上記領域はそれぞれ分析用最終反応溶液を収容すると考えられる。
【0040】
このため、光学読取り装置30は移動台32に載置される。移動台32はモータ駆動であり、その移動は装置10により自動制御されて、読取り装置30を複数の位置へと運ぶ。これらの位置の少なくとも一部は各分析領域に対応する。本例示では、装置10に挿入できる分析ストリップ22の後部容器と一致する各分析領域26’の横方向位置に対応する横方向に沿った位置に運ばれるように、移動台32は一方向、具体的には装置10の横方向Yにのみ移動可能である。移動台32は、装置にある複数の分析領域26’と同じ数の異なる位置に運ばれることが好ましい。
【0041】
図3は、移動台32を移動させる制御手段について考えられる一実施形態を表す。移動台32の本体34は、移動台32を横方向Yに沿って誘導する滑り溝36と協働する底部端を有している。さらに、本体34の底部端は、横軸に沿って延在する駆動スクリュー40と協働するナットシステム38を備えている。駆動スクリュー40は、電気モータ42により回転駆動する。したがって、電気モータ42を回転方向のどちらかへ適宜駆動すれば、移動台32に接続された駆動スクリュー40及びナット38で構成されるスクリュー/ナットシステムを介して、移動台32を横方向のどちらかへ移動できることが理解される。さらに、モータ42に関連するロータリエンコーダから供給される情報又は移動台32の経路に沿って配置されたセンサから供給される情報等に基づくものであってもよい台の位置を検出するシステムを配置して、滑り溝36に沿って移動台32の位置を取得することも有利である。滑り溝36は装置に対して固定されており、モータ42及びスクリュー40も同様に装置に対して固定されているため、それら自身の回転の動きは無視できる。したがって、電気モータ42は台32の移動を制御する。電気モータ42自体は、装置10の中央制御ユニットで制御される。当然ながら、移動台を移動させる他の手段を備えていてもよい。同様に、移動台は本実施形態のように直線路に沿って移動してもよく又は曲線路に沿ってもよく、あるいは平面上を2方向に、更には三次元空間を3方向に移動させることもできる。同様に、台を移動させる制御手段は、他のアクチュエータ及び/又はアクチュエータの移動を台の移動に変換する他の機構であってもよい。
【0042】
図示した実施形態では、移動台の本体34は、互いに対して傾斜して横方向に延在する2つの面を有する作業領域を有する。本実施形態では水平な第一作業面40’は、第一ウインドウ42’を備えている。横方向を含むが長手方向に対しては傾斜している第二作業面44は、第二ウインドウ46を有する。これら2つの作業面は、分析領域26’の正面に運ばれて、読取り装置が一方のウインドウから分析領域26’へ励起電磁放射線(例えば、可視、紫外又は赤外領域の放射光)を放出でき、他方のウインドウから分析領域26’の光応答を受信できるようにされる。
【0043】
したがって、図示した例では、台32は励起電磁放射線源と光電受信器の両方を保持することが理解される。しかしながら、一変形例では、例えば、光電受信器のみを移動台32に載置し、励起電磁放射線源は装置に固定することもできる。また、図示した実施形態では、台32は、特に電磁放射線源及び光電受信器の駆動及び信号処理の少なくとも一部を実施できる電子カード48を有することも考えられる。この電子カード48は台32と共に移動し、カード48に有用な電気信号がワイヤーハーネス50を介して装置の中央制御ユニットへ伝送される。上記ワイヤーハーネスは少なくとも一部分が柔軟であり、したがって台が移動できるように可逆的に変形可能であることが好ましい。例えば、ハーネス50は、装置10の固定末端ブロックに接続されている。本例示では、台の移動時に変形を
誘導するヒンジ連結部で構成された巻上げ誘導具54に収容されるため、ハーネスが台を移動させる機構を邪魔しないようになっている。なお、移動台32は、光学バーコード読取り機56等の他の装置を有していてもよい。電子カード48は、デジタル電気信号を出力することが好ましい。したがって、デジタル形式でワイヤーハーネス50により伝送される電気信号は、アナログ信号に比べて、ハーネスの周りに生成され得る外乱に対する感受性がはるかに低い。
【0044】
移動台32に載置した本発明に係る読取り装置の第一の実施形態を
図4に示す。この移動台の横移動方向に垂直な面の断面図では、まず、分析領域26’に含まれる最終反応溶液中に存在する光学剤を励起させる電磁放射線源58が本体34に固定されていることが分かる。また、
図4には、読取り装置30に対する作業位置に、分析領域26’と一致するストリップ22の後部容器26が存在しているため、光学剤を励起すると共にその光応答を検出できることが示されている。
【0045】
図4から、読取り装置30は、本実施形態では第一作業面40’の下で移動台32の本体34に固定されている電磁放射線源を有することが分かる。第一ウインドウ42’から分析領域26’へ励起電磁放射線を放出できるように配向していることが有利である。しかしながら、光ファイバ、1枚以上の鏡、1つ以上のプリズム等の導光装置を使用して、放射線源58から第一ウインドウ42’へ放射線を誘導することもでき、この場合、放射線源58は他の方法(例えば電子カード48に載置する)で移動台に配置されてもよい。電磁放射線源は、光学領域の放射線源、すなわち、紫外線、可視光及び赤外線等を含む10ナノメートル(nm)~1ミリメートル(mm)の範囲の波長を有する放射線源であってもよい。本例示では、放射線源58は単色源である。しかしながら、一変形例では、色スペクトルが離散的又は連続的又はこれらの組み合わせである多色源を検討できる。同様に、放射線源58は、単一の要素(例えば、白熱フィラメント、発光ダイオード、レーザーダイオード、蛍光管等)で構成されていてもよく、同種でも異なる種類でもよい複数の要素を組み合わせて構成されてもよい。放射線源58からの放射線は、場合によっては、
図4に示す通り、色フィルタ60(例えば、高域、低域、帯域及び/又は偏光等)、絞り(図示せず)及び1枚以上のレンズ62を有していてもよい調整システムにより調整してもよい。例えば、励起に好適な波長を通すフィルタ60は、測定を乱し得る他の波長の存在を制限できる。調整システムは、本体34に保持され、放射線源58と第一ウインドウ42’との間に配置されることが好ましい。本例示では、ウインドウ42’には、部分的に
反射する平行面63又は半反射プリズムを有するプレート等であるビーム分離器が備えられており、以下に記載する目的で放射線源58から放出された放射線の一部を取り出す。したがって、本例示では、ビーム分離器63は、平行面を有する半反射プレートを備え、該分離器は放射線源58と分析領域26’との間でウインドウ42’に配置されている。放射線源58から放出された電磁放射線の主入射方向Iに対して45°の角度をなす面に延在している。
図4及び
図5に示す通り、放射線源58から放出された入射放射線は分析領域26’に照射される。本例示では、本例示では分析ストリップの後部容器26と一致する分析領域26’は、入射放射線が進入する入口ウインドウを少なくとも1つ有しており、該入口ウインドウは、放射線源58からの放射線に対して透明な材料で作製されていることが分かる。本例示では、このウインドウは、放射線源58から放出された電磁放射線の主入射方向Iに対して略垂直に延在する後部容器26の側壁面で構成されている。したがって、分析領域に含まれる最終反応溶液には、放射線源58から放出された放射線が照射される。
【0046】
本例示では、励起電磁放射線源58と分析領域26’との間の最短光路は、放射線源58から放出された励起放射線を調整する光学システムがこれら2つの要素間の光学軸の方向を変化させないという意味で、直線状に延在している。したがって、この最短光路によって、放射線源58から放出されて分析領域26’へ向かう励起電磁放射線の主入射方向Iが規定される。本例示では、主入射方向Iは、本体34の第一作業面40’に対して30°~60°の範囲、例えば45°であってもよい角度で傾斜していることが分かる。これらの値は、単に本実施形態を例証するものである。この主入射方向Iは、本体の第二作業面44に対して略平行である。本例示では、部分反射ブレード63は、主入射方向Iに対して例えば45°の角度で配向している半反射平面を有しているため、後述の通り、参照チャネルを介してビーム強度の一部(50%以下)を反射させつつ、残りのビーム強度を分析領域26’へと進ませる。
【0047】
本発明の一態様において、移動台32は、図示した実施形態の分光計64の一部を構成する光電受信器を有する。
【0048】
図示した実施形態で使用した分光計は、分光計が受光した放射線の色スペクトル分解を表す電子信号を供給できる光電子部材である。可視領域、赤外領域及び/又は紫外領域等の光学システムの領域の電磁放射線においては、放射線が個別単色波の重ね合わせであると考えられるが、その場合、上記分解は個別波の波長に対する各波の強度の分布を表す。
【0049】
分光計64が移動台32に設置されているため、通常、放射線源58から放出された励起電磁放射線が分析領域26’に照射されたときはいつでも、分光計が受光した放射線は該領域に含まれる最終反応溶液の光応答を含む。
【0050】
本例示では、分光計64は、入口絞り66、波長分散素子68及び光電センサ70を必須要素として有する。
【0051】
分光計64は、波長分散素子68及び入口絞り66を通して光電センサ70で観察される三次元空間に対応する視野を有する。
【0052】
図示した実施形態では、分光計64は本体34に配置されているため、移動台32の所定位置について、分析領域26’に含まれる最終反応溶液から放出された放射光が受光器の光学的調整システムによって適当な方向に分光計の入口絞り66へと向けられるように、受光器の光学的調整システムを介した分光計の視野は対応する分析領域26’を含んでいる。受光器の光学的調整システムは本体34に保持されていてもよく、分光計と第二ウインドウ46との間に配置されていてもよい。受光器の光学的調整システムは、場合によっては、色フィルタ(
図4の実施形態には存在しないが、例えば高域フィルタ、低域フィルタ、帯域フィルタ及び/又は偏光フィルタ等が挙げられる)、絞り(図示せず)及び/又は1枚以上のレンズ74等を有していてもよい。光ファイバ、1枚以上の鏡、1つ以上のプリズム、
図4に示すような円錐台形の導光装置等の導光装置を使用して、第二ウインドウ46からの放射線を(好ましくは入口絞り66を介して)所定の入口方向に分光計64へと誘導してもよい。例えば、受光器の光学的調整システムは、分析領域26’からの放射線の平行ビームを分光計の入口へ供給するよう設計されていてもよい。
【0053】
入口絞り66は、分光計64の所定の入口方向に対して垂直な略円系スポット絞りであってもよく、あるいはスロット状に形成された直線絞りであることが好ましい。
【0054】
光電センサ70は、線形センサ又は二次元センサであってもよい。電荷結合素子(CCD)又は相補型金属酸化物シリコン(CMOS)等の技術を利用したセンサであってもよい。
【0055】
波長分散素子68との相互作用において、多色入射ビーム(平行ビーム等)の各種色成分が、考慮する色成分の波長に応じた角度でそれらの経路から屈折するという意味で、波長分散素子は入射ビームの波長分散を生じさせる。波長分散素子68は回折格子を備えていてもよい。回折格子は、例えば一連の並列スロット(透過型格子)又は反射縞(反射型格
子)を有していてもよい。これらのスロット又は縞は、格子の「ピッチ」と呼ばれる一定の間隔で離れている。また、波長分散素子68は、屈折プリズム等を使用して、屈折により波長分散が得られる1つ以上の屈折面として、あるいは1つ以上の屈折面と1つ以上の回折格子との組み合わせとして実現できる。図示した実施形態では、回折格子は、分散した放射線を光電センサへと戻す凹面反射面の一部を構成するものとして表されるため、分光計を非常にコンパクトにできる。
【0056】
図示した実施形態では、光応答を調整する光学システムが光軸の方向を変化させないという意味で、分析領域26’と分光計64の入口絞り68との最短光路は直線に沿って延在する。したがって、この最短光路は、分析領域26’から分光計64への光応答の主転換方向Rを規定している。図示した実施形態では、この主転換方向Rは、本体の第二作業面44に対して垂直であることが分かる。なお、放射線源58から分析領域26’へ向かう主入射方向Iと、分析領域26’から分光計64へ向かう主転換方向Rとは、例えば蛍光光学剤を検出するための蛍光分析である場合、同時に平行及び同一方向ではないことが好ましい。一方、平行だが反対向きである各方向が互いに180°の角度を形成するとした場合、上記2方向は互いに特定の最小角度(例えば少なくとも45°)を形成する。図示した実施形態では、主入射方向Iと主転換方向Rとは垂直であるため、入射放射線からの光応答が干渉されるリスクを制限できる。一変形例では、放射線源58から分析領域26’へ向かう主入射方向Iと、分析領域26’から分光計64へ向かう主転換方向Rとは、平行であっても略平行であってもよいが反対方向であり、放射線源58と分光計とは分析領域26’に対して同じ側に配置される。後部容器26は、主転換方向Rに対して略垂直に延在する光応答用出口ウインドウを有することが好ましい。
【0057】
色系光学剤の検出による比色分析等、透過による分析を実施する場合、主入射方向Iと主転換方向Rとは、分析領域26’の入口及び出口と一直線になっていることが好ましく、それにより、反射装置を使用して2つのビームうちの一方を屈折させない限り、放射線源58から分析領域26’へ向かう主入射方向Iと、分析領域26’から分光計64へ向かう主転換方向Rとは平行且つ同じ方向である。
【0058】
分散素子68及び光電センサ70は、内部に入口絞り66が形成されたハウジング76内に配置されていることが有利である。
【0059】
当然ながら、装置を確実にコンパクトにするという理由から、小さい寸法の分光計64を使用することが適当である。日本の供給業者である浜松ホトニクス社(日本国430-8587静岡県浜松市中区砂山町325-6)等から、本発明において使用するのに好適な各種分光計が提案されている。例えば、本発明においては、C10988M1-01等の「ミニ分光器」シリーズや、C12666MA又はC12880MA等の「マイクロ分光器」シリーズの分光計のうちの1種を使用できる。
【0060】
本例示では、ハウジング76は四角形の箱形ハウジングであって、第二ウインドウ46と対向し且つ放射線の分光計への主入口方向に対して略垂直に配向している前壁78を有する。具体的には、前壁78は、本実施形態ではスロット状である入口絞り66を略中央に備えている。ハウジング76の内側では、回折格子68を有する凹面反射面が、波長分散された入射ビームを、前壁78の内面に接して配置された光電センサ70へと返す。したがって、光電センサ70は、入口スロット66に対して横にずれており、その感光面は、ハウジング76の後部と対向し、回折格子68を有する反射面の正面である。このような構成は非常にコンパクトであるという利点を有するため、このような分光計であれば、ハウジング76の容積が10立方センチメートル(cm3)未満であっても内部に収容できる。
【0061】
分光計64は、入口絞り66を通って進入した放射線の色スペクトル分解を表す電子信号を供給する。この電子信号は、光電センサ70に関連する電子回路によって生成される。電子回路は、ハウジング76に組み込まれていても連結させていてもよく、あるいは少なくともその一部が移動台34に関連する電子カード48に保持されていてもよい。電子信号はアナログ信号を含んでいてもよいが、外乱に対する感受性が低いことからデジタル信号を含むことが好ましい。信号は完全にデジタルであってもよい。ワイヤーハーネス50を介して装置の中央制御ユニットへ伝送されることが有利である。
【0062】
分光計は、第一波長から、第一波長の2倍の第二波長までにわたる少なくとも1つの作動波長域で光応答の色スペクトル分解を供給できることが好ましい。例えば、作動波長域は、2つの波長λmin及びλmax(λmax≧2×λmin)間にわたるものであってもよい。具体的には、移動台34に載置した分光計を使用すると、光応答のスペクトル組成に関する情報が得られる。意味のある一定の範囲にわたってこの情報を分析すれば、後述する通り、分析の結果の精度を高めることができる。当然ながら、分光計の作動域は、最終反応溶液で検出される光学剤の特定の光学的性質に対応するよう選択される。分光計64の作動域は、それぞれ少なくとも2つの異なる光学剤、あるいは2つより多い異なる光学剤に対応する2つの異なる所定の光学的性質(2つの異なる波長等)を含むことができることが有利である。
【0063】
反応溶液が少なくとも1種の蛍光剤(その反応溶液中の存在及び/又は量は試料中の所望の検体の存在及び/又は量に依存する)を含む場合に上述した装置を使用するのが有利であることが理解される。当然ながら、蛍光剤の発光スペクトルの少なくとも一部が分光計の作動波長域に確実に含まれるよう注意する。
【0064】
放射線源58から放出された励起電磁放射線は、所望の光学剤の発光スペクトルとは異なるスペクトルを有することが好ましい。より具体的には、2つのスペクトルがそれぞれ波長域に含まれ、該2つの波長域は重複しないという意味で、これらのスペクトルは分離している。これにより、例えば、光応答が励起放射線に干渉されるというリスクを更に制限できる。
【0065】
また、光学読取り装置は、放射線源から放出される放射線の強度を検出する手段を有していてもよい。
【0066】
上記手段は、放射線源58から放出される強度を放射線源58の制御パラメータ及びその公知特性等に応じて概算する回路又はアルゴリズムを有していてもよい。例えば、電子カード48は、アルゴリズムを実行するための命令を記憶した情報メモリと、その命令を実行して光強度を制御パラメータに応じて決定するマイクロプロセッサユニットとを有していてもよく、決定された強度は、ハーネス50を介して中央制御ユニットへ伝送される。変形例では、制御パラメータ及び命令は、コンピュータ型の中央ユニットの情報メモリに記憶され、該中央ユニットが上記命令を実行して光強度を決定する。
【0067】
しかしながら、上記手段は、放射線源58から放出された励起放射線の実際の強度を測定する光電検出器を有していてもよい。
【0068】
図4に示した実施形態では、励起放射線源58から放出された放射線の強度を検出する手段は、分光計64とは異なる第二光電センサ80を有している。第二光電センサ80は、例えばフォトダイオードであってもよい。第二光電センサ80は、放射線源58から放出された波長又は波長域に感受性を示す。
【0069】
光学読取り装置は、励起放射線を誘導する誘導システムを有しており、該システムによっ
て、入射放射線の一部を分析領域を通過させることなく第二光電センサへ誘導することが有利である。
図4の実施形態では、この誘導システムは、例えば、平行面を有する半反射板63等であるビーム分離器を有しており、放射線源58から放出された放射線の一部を第二センサ80へと向ける。放出された放射線のうちビーム分離器63により分離されたこの部分を参照ビームという。誘導システムは、フィルタ82を有し、及び/又は、例えば、参照ビームを第二センサ80へ送る目的で1枚以上のレンズ、あるいは光ファイバ、プリズム、鏡及び/又は
図4に示すような円錐台形の導光装置を含む1つ以上の素子をフィルタ82より下流に有していてもよい。参照ビームは、放射線源58及び第二センサ80間のその経路において分析領域26’を通過しない。その結果、第二センサ80は、放射線源58から放出された放射線の強度の画像である参照電気信号等として情報を供給できる。
【0070】
図5に本発明の第二の実施形態を示すが、放射線源58から放出された放射線の強度を検出する手段と、光応答の経路にフィルタ72が存在してもよいこととを除き、全ての点で
図4に示した第一の実施形態と同じである。
図4に示した実施形態と異なり、上記放射線源58から放出された放射線の強度を検出する手段は、分光計64とは異なる第二センサに基づくものではなく、分光計64を利用して、放射線源58から放出された放射線の強度を検出する。
図4の実施形態と同様に、検出手段は、ビーム分離器64により分離される参照ビームを誘導する誘導システムを有する。誘導システムは、上記実施形態の誘導システムで上述したものと同じ又は類似の要素を備えていてもよい。一方、誘導システムは、参照ビームを分光計64の入口絞り66へ送る。本実施形態は、放射線源58から放出された電磁信号の強度を検出するために別の光電子部材を必要としない点で有利である。なお、第二の実施形態では、参照ビームを誘導するシステムによって、参照ビームが分析領域26’を確実に通過しないようにすることもできる。さらに本例示では、ビーム分離器63により反射された後、参照ビームはフィルタを通過しない。
【0071】
この第二の実施形態は、検出したい光学剤の特徴である光学的性質に対して放射線源58の放出スペクトルが異なる、好ましくは分離している場合に特に有利である。具体的には、このような状況では、分光計64から供給されるスペクトル分解情報から、放射線源58から放出された放射線と分析下の最終反応溶液の光応答に対応する放射線の両方について各種波長に対応する強度ピークを非常に明確にはっきりと特定できる。
【0072】
なお、第二の実施形態では、参照ビームは、場合によっては、分析領域からの光応答と混合してから分光計64の絞り66を通して進入させてもよい。
【0073】
しかしながら、第二の実施形態の変形例では、参照ビーム及び分光計64の光応答のどちらかのみを、他方は遮断しつつ、交互に送ることも考えられる。このような状況では、分光計64は参照ビームの強度、次いで分析領域26’の光応答の色スペクトル分解を順次決定する。光電センサが1つであるという利点を保持しているこのような変形例は、放射線源58から放出された励起放射線のスペクトルが分析領域26’からの光応答スペクトルと少なくとも一部重複している場合に有利であり得る。
【0074】
なお、
図5の実施形態では、場合によっては、光応答の経路に光学フィルタ72を設けることができる。このフィルタは、所望の光学剤を検出するのに必要な分光計の作動域の波長を通過させることが好ましい。だが、光応答の経路にフィルタが存在していなくても、物理的適合を必要とすることなく、複数の波長を放出する複数の光学剤を用いてシステムを作動できる。同様に、参照ビームの経路にフィルタが存在していてもよいが、任意である。
図5に示すようなフィルタが存在していなくても、システムを物理的に適合させることなく、複数の波長の放出源58を用いてシステムを作動することができる。
【0075】
以下、蛍光光学剤から放出される放射線が、所定の波長又は所定の狭い波長域を有するか、あるいは所定の波長域で特徴的なピークを1つ以上有するスペクトル分解を示す用途において、本発明の装置を用いて実現できる分析方法を説明する。当然ながら、分光計64は、蛍光剤に対応するこのような波長又は波長域を含む作動域を有する。蛍光剤は、蛍光波長とは異なる波長の放射線からの励起によってその蛍光が誘発されるよう選択されることが有利である。例えば、本発明は、紫外領域の放射線(例えば、波長が370nm(±5mn)の放射線)により好適に励起される一般に4-MU(4-メチルウンベリフェロン)と呼ばれる蛍光剤であって、ピークが約450nmに存在する波長域(約375nm~550nmにわたる放射線領域等)の蛍光放射線を放出する蛍光剤を用いる用途において使用してもよい。他の蛍光剤としては、325nmの励起放射線により励起された際の蛍光発光ピークが420nmである「QuantaBlue(登録商標)」(Thermo Fisher Scientific社、Pierce Biotechnology(米国、61105イリノイ州、ロックフォード、私書箱117))が挙げられる。同じ供給業者からは、例えばQdot(登録商標)605、Qdot(登録商標)705又はQdot(登録商標)525も使用できる。しかしながら、どの場合も、適当な励起放射線が実際に放出されるように光源を確実に適合させるよう注意する必要がある。
【0076】
図6は、4-MU蛍光剤を含む溶液を分析領域26’に配置し、本例では370nm±5nmという狭い波長域等で発光する紫外領域の発光ダイオードで構成された励起放射線源58によって分析領域を照射する場合に、分光計64により供給される色スペクトル分解を表す。
図6のグラフは、放射線の色成分の強度の大きさ画像を縦軸に表し、分光計64が受光した放射線の色成分の波長LOに対して横軸に沿ってプロットした。
【0077】
分光計64により供給される信号は不定形信号Sである。しかしながら、この信号は、波長450nm周辺で最大となる強度ピークを明確に示す一般的な形状を有する。しかしながら、350nm~550nmにわたる強度ピークのどちらかの側において、信号Sはゼロではないことに留意されたい。このような信号の非ゼロ部分は、蛍光剤の蛍光とは直接関係のない外乱又は干渉要素を表している。
【0078】
したがって、本発明の第二の態様は、分光計により供給される信号において所望の特徴をより良好に単離する方法を提供することであり、該特徴は、具体的には検出及び/又は定量される光学剤の特徴である光学的性質に対応する。
【0079】
したがって、本発明の一態様は、分析で得られる結果の精度を高める方法を提供する。
【0080】
このような方法は、試料に含まれる検体を自動でインビトロ検出及び/又は定量するのに使用してもよい。本発明の装置を用いて実行することが有利である。特に、本方法のデータ処理工程は、該工程を実行するのに必要な全てのパラメータ及び命令を記憶した情報メモリを有するコンピュータを含む、装置の制御を担当する中央ユニットによって実行される。本方法の結果は、例えば、中央ユニットに記憶され及び/又は装置に附属の画面に表示される。変形例では、中央ユニットは遠隔コンピュータに接続されており、遠隔コンピュータに対して、該工程を実行するため及びその結果を記憶及び/又は表示するために装置が使用する制御及び測定パラメータを伝える。
【0081】
このような方法では、試料を1種以上の試薬と反応できる状態に置いて、試料中に所定の
検体が存在するならば、所定の光学的性質(色、リン光又は冷光等)を少なくとも1つ有する薬剤を含む反応溶液を直接的又は間接的に調製できる。光学剤は、反応溶液中に存在するか、又は、所定の検体が存在する場合にのみ所定の光学的性質を示すことが好ましい。所定の光学的性質の強度は、所定の試料中の検体の量又は濃度の関数であることが好ましい。このような所定の光学的性質は、溶液に電磁放射線が入射した際に反応溶液から放出される放射線の色スペクトル分解を分析することで検出できることが有利である。例えば、光学剤が蛍光剤であり、その所定の光学的性質が蛍光発光であるが、該蛍光発光は、例えば特定の色スペクトル分解により特徴付けられる。
【0082】
本工程は、特に上述した中央ユニット又は遠隔コンピュータでデータを処理する工程に関して上述した装置で実施してもよく、あるいは、他の装置で実施してもよく、手動又は他の任意の手段で実施してもよい。
【0083】
次に、本方法では、反応溶液に励起電磁放射線を照射することが考えられる。このため、上述の通り、例えば分析ストリップ22の後部容器26と一致する分析領域に反応溶液を配置する。照射は、上記装置の放射線源58を用いて実施してもよい。
【0084】
本方法では、反応溶液の光応答を検出し、該光応答から検体の存在及び/又は量を導き出すことが考えられる。光応答は、分光計64により得られた光応答の色スペクトル分解を解釈するなどして、上記装置によって検出されることが有利である。
【0085】
本方法の一工程において、光応答の色スペクトル分解の画像である、波長に対する強度の変化を示す近似的理論関係が決定される。
【0086】
この近似的理論関係は、図式的に又は数学的に得られる。公知の曲線当てはめ法で得られることが有利である。曲線当てはめ法としては、最小二乗法による当てはめが挙げられる。
【0087】
図6は、理論関係において2つの部分が特定される例を表す。T1部分は、約350nm~約550nmにわたる強度ピークと良く対応する。このT1部分は、多項式曲線、ガウス曲線又は他のパラメトリック曲線として事前に規定してもよく、その後、公知の回帰法を用いて理論関係のT1部分を決定できる。理論関係のT2部分は線形関係であり、350nm~550nmにわたる強度ピークから離れた信号Sと最も良く対応する。理論関係のこのT2部分は、例えば線形回帰により決定してもよい。
【0088】
したがって、波長に対する強度の変化を示す近似的理論関係において、波長の一次関数である強度の線形オフセットを決定でき、これが曲線全体に影響を与える。本例示では、この線形オフセットは理論関係の線形部分T2であると考えられる。実際には、この線形オフセットは、例えば、分析ストリップ22の後部容器26を構成する材料による放射線の差分吸収と少なくとも部分的に関連し得る。
【0089】
これに基づき、近似的理論関係を線形オフセットに応じて補正することによって、波長に対する強度の変化を示す補正理論関係を決定できる。例えば、近似的理論関係から1点ずつ線形オフセットを単に減じることができる。このように減じることで、光学剤の特性(例えば蛍光性)のみに関連する光応答と考えられる補正曲線TCが得られる。
【0090】
補正曲線TCは、例えば使用者の注意を引きつけるため画面に表示してもよいが、この補正曲線から、最大強度又はピーク幅の平均強度に対応する強度ピークを導き出せ、その強度を表示することもできる。
【0091】
したがって、本発明の装置における分光計を用いて実現できる本方法で得られる色スペクトル分解によって、光応答の測定値を光学剤の特性の波長域外で使用できるため、光学剤の特性の波長域での検出の精度が高まることが理解される。
【0092】
さらに、上述の通り、従来公知の装置では、所定の分析領域に含まれる所定の最終反応溶
液において1種類の光学剤しか検出されないため、同じ分析ストリップ内では1回しか分析できない方法が実施されてきた。
【0093】
本発明では、単一の分析においてより多くの情報が得られる新規な方法を提供する。本方法は、上述した分光計を使用する本発明の装置を用いて実施できる。
【0094】
上述の方法と同様に、本方法は、試料に含まれる検体を自動でインビトロ検出及び/又は定量するために、特に本発明の装置を、特に上記した中央ユニット又は遠隔コンピュータでデータを処理する工程に関して使用して実施できる。上記と同様に、本方法は、
試料を1種以上の試薬と反応できる状態に置いて、試料中に所定の検体が存在するならば、所定の光学的性質を少なくとも1つ有する薬剤を含む反応溶液を直接的又は間接的に調製する工程と;
反応溶液に電磁放射線を照射する工程と;
反応溶液の光応答を検出する工程と;
光応答から検体の存在確認及び/又は定量を行う工程とを有する。
【0095】
具体的には、上記各工程は、上記方法において記載した対応する各工程と同じ又は類似していてもよい。したがって、これらの詳細はここで繰り返さない。
【0096】
この新規な方法は、1種以上の試薬を用いて、それぞれ所定の光学的性質(上述の通り、色、蛍光、リン光等)を少なくとも1つ有する少なくとも2種の異なる光学剤を含む反応溶液を直接的又は間接的に調製するものであり、各光学剤と対応する2つの所定の光学的性質は異なる。したがって、2種の光学剤は、色、蛍光、リン光等、色スペクトル分解により区別できる全ての性質が異なっていてもよい。
【0097】
上記方法は、光応答の色スペクトル分解を得る工程と、上記スペクトル分解において上記2つの異なる所定の光学的性質を別々に検出する工程とを有する。
【0098】
上記方法では、好ましくは、所定の入射電磁放射線下で単一のスペクトル分解を得ることが考えられる。このような状況では、単一のスペクトル分解においてそれぞれ特定されるという意味で、光学的性質は別々に検出される。例えば、各光学的性質は、異なる波長で最大となる強度ピークを生じさせるものであってもよい。このような状況では、強度ピークは、異なる波長域と対応することが好ましく、分離している波長域と対応することがより好ましい。
【0099】
例えば、各光強度はガウス形状であってもよい。
【0100】
変形例では、上記方法では、異なる(特に色スペクトル分解の点で異なる)入射電磁放射線を分析領域に照射することによって、複数の色スペクトル分解を得ることが考えられる。このような状況では、異なる色スペクトル分解においてそれぞれ特定されるという意味で、異なる所定の光学的性質は別々に検出される。
【0101】
所定の光学的性質を検出する工程は、このような所定の光学的性質が存在しないことを検出することにより実施されてもよい。
【0102】
上記方法を実行することで、試料中に少なくとも2種の異なる検体が存在していることを検出してもよい。このような状況では、各種光学剤は異なる検体に対応する。また、上記方法を実行することで、同じ検体に関与する少なくとも2つの異なる反応を検出してもよい。このような状況では、各種光学剤は単一の検体の異なる反応に対応する。
【0103】
上述した方法のいずれにおいても、光応答の色スペクトル分解を得る工程は、光応答からの光線を波長分散させる工程と、このように分散させた光線の各種波長の成分の強度を検出する工程とを有する。
【0104】
同様に、上記方法はそれぞれ、放射線源から放出された放射線の強度を検出する工程を有していてもよい。
【0105】
この工程は、入射放射線の一部を分析領域を通過させることなく誘導する工程と、特に
図5に示す装置で実行されるような分光法を用いて、参照ビームを形成する上記入射放射線の一部の色スペクトル分解を得る工程とを有していてもよい。このような状況では、入射放射線の色スペクトル分解を得る工程の前に、例えば
図5に示す装置で実行されるように、上記入射放射線の一部を反応溶液の光応答と混合する工程が考えられる。
【0106】
さらに、国際公開第2013/045807号に記載の方法及びシステムを用いて本発明を改良してもよい。この文献には、放射線源を変調させ、検出及び参照信号を復調させることにより、検出測定における信号/雑音比を改善するシステム及び方法が記載されている。上記システム及び方法は、国際公開第2013/045807号には、検出信号が1つしかないものとして記載されている。変調及び検出の同じ原理を本発明において適用してもよい。したがって、搬送波の周波数/波長の振幅で放射線源58を変調できる。その後、作動波長域を含む分光計からの出力信号(アナログであってもデジタルであってもよい)を、それぞれ個別波長又は個別波長域について分光計に回収された信号の強度を表す一連のN個の個別信号へと構成できる。N個の個別波長又は個別波長域は、好ましくは連続的又は略連続的に、上記作動波長域を含むことが好ましい。各個別信号について、あるいは少なくとも一連の(好ましくは代表的な)個別信号について、国際公開第2013/045807号に記載された通り、変調・復調システム及び方法を個々に実施できる。この教示を個別信号の全てに、あるいは一連の該信号に適用すると、その結果、より良好な信号/雑音比を示す光応答の色スペクトル分解、すなわち、測定時の周囲雑音による妨害が少ない分解が得られる。
【0107】
本発明は、その範囲を逸脱することなく様々な変更を行うことができるため、ここで説明及び例示した実施形態に限定されない。
【0108】
[実施例]
(実験部)
以下、本発明の装置及び方法によって3種の光学剤に対応する光応答を1回で得ることができ、且つ、各光学剤の存在を定量できることを示す実験を記載する。
【0109】
本実験では、Thermo Fisher社(米国、61105イリノイ州、ロックフォード、ノースメリディアンロード3747、私書箱117)が販売している3種の光学剤を使用した。
A剤:F(ab’)2-ヤギ抗マウスIgG(H+L)二次抗体、Qdot(登録商標)605複合体
B剤:F(ab’)2-ヤギ抗マウスIgG(H+L)二次抗体、Qdot(登録商標)705複合体
C剤:F(ab’)2-ヤギ抗マウスIgG(H+L)二次抗体、Qdot(登録商標)525複合体
【0110】
光源は、紫外線(370nm±5nm)を放出して分子を励起する単色源を使用した。
【0111】
CHES(N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸)緩衝剤(pH9.2)を
使用してA剤、B剤及びC剤の溶液を調製した。
【0112】
下記5種類の溶液を調製した。
【0113】
【0114】
各溶液250マイクロリットルを分析領域に置き、本発明の装置を用いて各溶液の光応答を得た。
【0115】
図7は、溶液1、2及び4について別々に得られた光応答のスペクトル分解を重ね合わせたものである。したがって、各スペクトル分解は良好に特定されたピークを示す。曲線は、光応答の相対強度単位RUを波長λ(単位nm)に対して表したものである。
【0116】
図8は、3種の薬剤の混合物を含む溶液5から別々に得られた光応答のスペクトル分解を表す。3つのピークが見られるため、1回の分析で3種の異なる光学剤を別々に検出できることが分かる。曲線は、光応答の相対強度単位RUを波長λ(単位nm)に対して表したものである。
【0117】
図8に示すスペクトル分解から得られたデータを使用し、動的ガウス回帰アルゴリズムを適用して、3種の光学剤に起因する応答を区別した。
【0118】
したがって、
図8の信号は、それぞれG525、G605及びG705と呼ぶ3つのガウス関数の合計としてモデル化されており、各関数は対応する光学剤の蛍光ピークが中心となっており、下記式で表される。
【0119】
【0120】
式中、
Xは変数であり、本実施例では波長に相当する。
A、σ及びμは、各ガウス関数の振幅、標準偏差及び平均値を特定するパラメータである
。
【0121】
したがって、溶液5について別々に得られた光応答のスペクトル分解を表す
図8の曲線をモデル化するのに使用したモデルは、以下のようなガウス曲線の集合として記載できる。
【0122】
【0123】
したがって、最適化により解決すべきパラメータベクトルには、以下の9個のパラメータが含まれる。
【0124】
【0125】
採用した最適化過程は、「フレキシブルシンプレックス(Flexible Simplex)法」と呼ばれるアルゴリズムを用いてMatlabソフトウェアで利用できる過程である。このアルゴリズムによって、(考慮する反復に対するベクトルパラメータの瞬時値を有する)モデルと実験曲線との誤差を表す誤差二乗和で構成されるコスト関数を最小化する。各反復において、アルゴリズムを用いてベクトルPを修正し、誤差二乗和を確認する。所望の正確度に依存する所定の閾値を誤差が下回ったら反復を停止する。
【0126】
最適化過程で使用したパラメータの初期値は以下の通りである。
【0127】
【0128】
これらの値によって解を迅速に得られるが、他の初期値も使用できる。
【0129】
最適化の結果、以下のパラメータ(次の桁に切り捨て)が得られた。
【0130】
【0131】
図9は、上記最適化パラメータで得られた関数Sの曲線を
図8の曲線に重ね合わせたものである。曲線は、光応答の相対強度単位RUを波長λ(単位nm)に対して表したものである。
【0132】
上記最適化パラメータで規定される3つの関数G525、G605及びG705によって、各光学剤に個別に起因する光応答を
図8に示す全光応答から抽出できる。適当な校正スケールを参照して、単一の分析溶液中の各光学剤の濃度を容易に定量できる。
【0133】
図10は、上記パラメータで得られた3つの関数G525、G605及びG705を
図8の曲線に重ね合わせたものである。曲線は、光応答の相対強度単位RUを波長λ(単位nm)に対して表したものである。
【0134】
本実験から、本発明の装置及び/又は方法を用いて、複数の分析反応を示すことができる複数の異なる光学剤の存在を単一の分析で定量できる方法が示される。
【0135】
具体的には以下である。
・検査技師又は装置が分析用試料を調製し、この試料は異なる複数種の検体を含んでいてもよい。
・異なる光学的性質を、好ましくは異なる(例えば分離している)光学領域において、示す複数の異なる光学剤の溶液を試料に適宜導入する。各薬剤は、試料中の存在及び/又は濃度/量を求めたい特定種の検体に特異的である。
・試料の光応答は分光計で測定し、したがって、その応答は、上述の通り、対応する検体が試料中に実際に存在していれば、各光学剤の応答を含む。
・応答は、中央ユニット又は遠隔コンピュータへ伝えられ、それがコンピュータ処理を実行することで応答して、上述の通り、光学剤に対応するガウス曲線の集合を特定する。
・次いで、上述の通り、コンピュータ処理によって、上記集合の各ガウス曲線に応じて対応する検体の濃度及び/又は量を決定する。
・その後、処理の結果は、例えば、記憶されるか、あるいは画面に表示されてもよい。