(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240628BHJP
E02F 3/39 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
E02F9/00 B
E02F3/39
(21)【出願番号】P 2021022571
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 正一郎
(72)【発明者】
【氏名】茅根 征勲
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-033748(JP,A)
【文献】特開2004-244130(JP,A)
【文献】特開昭59-072327(JP,A)
【文献】特開2001-115483(JP,A)
【文献】米国特許第03609974(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/36
3/39
9/00-9/28
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席を有する自走可能な車体と、
前記車体に俯仰動可能に取付けられるブームと、
前記ブームの内部に設けられ、
第1油圧アクチュエータの動作に伴って長さ方向に伸縮するアームと、
前記アームの先端に設けられて、第2油圧アクチュエータの動作に伴って動作するアタッチメントと、
前記
第1及び第2油圧アクチュエータに圧油を供給する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出された圧油を前記
第2油圧アクチュエータに導入するための油圧ホースと、
前記油圧ホースが巻回されるホースリールと、
前記ホースリールを回転駆動する油圧モータと、
前記油圧モータにパイロット圧油を供給するパイロットポンプと、
前記運転席に設けられ、前記アームの伸縮動作を指示する操作装置と、を備えた建設機械において、
前記操作装置の操作に応じて、前記油圧モータに供給する前記パイロット圧油の圧力を調整するパイロット圧調整回路を備え、
前記パイロット圧調整回路は、
前記操作装置により前記アームの縮退動作が指示された場合に、前記パイロット圧油を第1の圧力で前記油圧モータに供給し、
前記操作装置により前記アームの伸長動作が指示された場合に、前記パイロット圧油を前記第1の圧力より低い第2の圧力で前記油圧モータに供給
し、
前記第1の圧力は、前記パイロットポンプの吐出側に設けられたリリーフ弁の設定圧である、ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
運転席を有する自走可能な車体と、
前記車体に俯仰動可能に取付けられるブームと、
前記ブームの内部に設けられ、
第1油圧アクチュエータの動作に伴って長さ方向に伸縮するアームと、
前記アームの先端に設けられて、第2油圧アクチュエータの動作に伴って動作するアタッチメントと、
前記
第1及び第2油圧アクチュエータに圧油を供給する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出された圧油を前記
第2油圧アクチュエータに導入するための油圧ホースと、
前記油圧ホースが巻回されるホースリールと、
前記ホースリールを回転駆動する油圧モータと、
前記油圧モータにパイロット圧油を供給するパイロットポンプと、
前記運転席に設けられ、前記アームの伸縮動作を指示する操作装置と、を備えた建設機械において、
前記操作装置の操作に応じて、前記油圧モータに供給する前記パイロット圧油の圧力を調整するパイロット圧調整回路を備え、
前記パイロット圧調整回路は、
前記操作装置により前記アームの縮退動作が指示された場合に、前記パイロット圧油を第1の圧力で前記油圧モータに供給し、
前記操作装置により前記アームの伸長動作が指示された場合に、前記パイロット圧油を前記第1の圧力より低い第2の圧力で前記油圧モータに供給
し、
前記パイロット圧調整回路は、
前記パイロットポンプから吐出されたパイロット圧油を減圧する減圧弁と、
前記操作装置の操作に基づいて作動し、前記パイロットポンプから吐出されたパイロット圧油の通過を遮断する第1の位置または前記パイロット圧油の通過を許容する第2の位置に切り換える第1切換弁と、
前記減圧弁にて減圧された前記パイロット圧油と前記第1切換弁にて通過または遮断された前記パイロット圧油とのうち高圧側を選択し、選択された前記パイロット圧油を前記油圧モータに供給する高圧選択パイロット弁と、を含み、
前記パイロット圧調整回路は、
前記操作装置により前記アームの縮退動作が指示された場合には、前記第1切換弁が前記第2の位置に切り換わることで、前記油圧モータに前記第1の圧力の前記パイロット圧油を供給し、
前記操作装置により前記アームの伸長動作が指示された場合には、前記第1切換弁が前記第1の位置に切り換わることで、前記油圧モータに前記減圧弁で減圧された前記第2の圧力の前記パイロット圧油を供給する、ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
運転席を有する自走可能な車体と、
前記車体に俯仰動可能に取付けられるブームと、
前記ブームの内部に設けられ、
第1油圧アクチュエータの動作に伴って長さ方向に伸縮するアームと、
前記アームの先端に設けられて、第2油圧アクチュエータの動作に伴って動作するアタッチメントと、
前記
第1及び第2油圧アクチュエータに圧油を供給する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出された圧油を前記
第2油圧アクチュエータに導入するための油圧ホースと、
前記油圧ホースが巻回されるホースリールと、
前記ホースリールを回転駆動する油圧モータと、
前記油圧モータにパイロット圧油を供給するパイロットポンプと、
前記運転席に設けられ、前記アームの伸縮動作を指示する操作装置と、を備えた建設機械において、
前記操作装置の操作に応じて、前記油圧モータに供給する前記パイロット圧油の圧力を調整するパイロット圧調整回路を備え、
前記パイロット圧調整回路は、
前記操作装置により前記アームの縮退動作が指示された場合に、前記パイロット圧油を第1の圧力で前記油圧モータに供給し、
前記操作装置により前記アームの伸長動作が指示された場合に、前記パイロット圧油を前記第1の圧力より低い第2の圧力で前記油圧モータに供給
し、
前記パイロット圧調整回路は、
前記操作装置による操作が行われていない場合に、前記パイロット圧油を前記第2の圧力を超え、かつ、前記第1の圧力未満である第3の圧力で前記油圧モータに供給する、ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項
3に記載の建設機械において、
前記第1の圧力は、前記パイロットポンプの吐出側に設けられたリリーフ弁の設定圧であり、
前記第2の圧力はゼロである、ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項
4に記載の建設機械において、
前記パイロット圧調整回路は、
前記パイロットポンプから吐出されたパイロット圧油を減圧する減圧弁と、
前記操作装置の操作に基づいて作動し、前記パイロットポンプから吐出されたパイロット圧油の通過を遮断する第1の位置または前記パイロット圧油の通過を許容する第2の位置に切り換える第1切換弁と、
前記減圧弁にて減圧された前記パイロット圧油と前記第1切換弁にて通過または遮断された前記パイロット圧油とのうち高圧側を選択し、選択された前記パイロット圧油を前記油圧モータに供給する高圧選択パイロット弁と、
前記高圧選択パイロット弁の下流側に設けられると共に、前記操作装置の操作に基づいて作動し、前記高圧選択パイロット弁で選択された前記パイロット圧油の通過を許容する第3の位置または前記パイロット圧油の通過を遮断する第4の位置に切り換える第2切換弁と、を含み、
前記パイロット圧調整回路は、
前記操作装置により前記アームの縮退動作が指示された場合には、前記第1切換弁が前記第2の位置に切り換わり、前記第2切換弁が前記第3の位置に切り換わることで、前記油圧モータに前記第1の圧力の前記パイロット圧油を供給し、
前記操作装置により前記アームの伸長動作が指示された場合には、前記第2切換弁が前記第4の位置に切り換わることで、前記油圧モータへ作用する前記パイロット圧油の圧力を前記第2の圧力であるゼロにし、
前記操作装置による操作が行われていない場合には、前記第1切換弁が前記第1の位置に切り換わり、前記第2切換弁が前記第3の位置に切り換わることで、前記油圧モータに前記減圧弁にて減圧された前記第3の圧力の前記パイロット圧油を供給する、ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、伸縮式のアームの先端側に油圧アクチュエータが設けられると共に、油圧アクチュエータに接続された油圧ホースが巻回されるホースリールを備えた建設機械が知られている。この種の建設機械では、油圧ホースが弛まないようにホースリールによって確実に巻き取られることが求められる。そのため、例えば特許文献1には、ゲートロックレバーが乗降口を遮断したときに、ホースリールを巻取り方向に回転させる油圧モータにパイロット圧を供給して、油圧ホースに対して巻取り方向へのテンションを付与する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、油圧ホースに対して常に巻取り方向にテンションを付与しているため、伸縮式のアームが伸長する場合においても、油圧ホースには巻取り方向のテンションが付与される。そのため、油圧ホースの長寿命化の観点からは改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、ホースリールによって巻き取られる油圧ホースを長寿命化できる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、代表的な本発明は、運転席を有する自走可能な車体と、前記車体に俯仰動可能に取付けられるブームと、前記ブームの内部に設けられ、第1油圧アクチュエータの動作に伴って長さ方向に伸縮するアームと、前記アームの先端に設けられて、第2油圧アクチュエータの動作に伴って動作するアタッチメントと、前記第1及び第2油圧アクチュエータに圧油を供給する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出された圧油を前記第2油圧アクチュエータに導入するための油圧ホースと、前記油圧ホースが巻回されるホースリールと、前記ホースリールを回転駆動する油圧モータと、前記油圧モータにパイロット圧油を供給するパイロットポンプと、前記運転席に設けられ、前記アームの伸縮動作を指示する操作装置と、を備えた建設機械において、前記操作装置の操作に応じて、前記油圧モータに供給する前記パイロット圧油の圧力を調整するパイロット圧調整回路を備え、前記パイロット圧調整回路は、前記操作装置により前記アームの縮退動作が指示された場合に、前記パイロット圧油を第1の圧力で前記油圧モータに供給し、前記操作装置により前記アームの伸長動作が指示された場合に、前記パイロット圧油を前記第1の圧力より低い第2の圧力で前記油圧モータに供給し、前記第1の圧力は、前記パイロットポンプの吐出側に設けられたリリーフ弁の設定圧である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ホースリールによって巻き取られる油圧ホースを長寿命化できる。なお、前述した以外の課題、構成、および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る建設機械の一例である解体機の側面図である。
【
図2】(a)はアームを最長に伸ばした状態における作業機の内部構成を示す概略断面図、(b)はアームを最短に縮めた状態における作業機の内部構成を示す概略断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る解体機の油圧回路図である。
【
図4】ホースリールモータに作用するパイロット圧の変化を示す図である。
【
図5】第2実施形態に係る解体機の油圧回路図である。
【
図6】第3実施形態に係る解体機の油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る建設機械の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は本発明に係る建設機械の一例である解体機1の側面図、
図2(a)はアーム22を最長に伸ばした状態における作業機20の内部構成を示す概略断面図、
図2(b)はアーム22を最短に縮めた状態における作業機20の内部構成を示す概略断面図である。なお、本明細書において、前後左右の方向は、運転席に座ったオペレータの視点を基準に定めるものとする。
【0011】
本実施形態に係る解体機1は、例えば、転炉や高炉の内壁に覆われた古い耐火煉瓦を破砕して剥すために用いられる。
【0012】
-解体機1-
図1に示す解体機1は油圧ショベルをベースマシンとして構成されており、車体10および作業機20を含んで構成されている。車体10は走行体11および旋回体12からなる。
【0013】
走行体11は解体機1の基部構造体であり、ホイール式の走行体でも良いが本実施形態では左右の履帯13を備えたクローラ式の走行体が用いてある。左右の履帯13はそれぞれ左右の走行駆動装置14により駆動される。走行駆動装置14は油圧モータと減速機からなる。旋回体12は走行体11上に旋回輪15を介して設けられており、旋回輪15を旋回モータ(不図示)で駆動することによって走行体11に対して鉛直軸周りに旋回する。旋回モータは油圧モータであるが、電動モータも用いられ得るし、油圧モータと電動モータを併用した構成ともなり得る。
【0014】
旋回体12は、旋回フレーム16、運転室17、機械室18、カウンタウェイト19等を含んで構成されている。旋回フレーム16は旋回体12のベースフレームであり、旋回体12に搭載される各機器を支持している。運転室17は旋回フレーム16の前部における左右方向の一方側に位置し、本例では左側に位置しているが右側に配置される場合もある。図示していないが、運転室17内には、オペレータが座る運転席、オペレータが操作する操作装置(ゲートロックレバー60、各種操作レバー61~63/
図3参照)等が配置されている。カウンタウェイト19は作業機20との重量バランスをとる錘であり、旋回フレーム16の後端に支持されている。
【0015】
機械室18は旋回フレーム16における運転室17の後側(運転室17とカウンタウェイト19の間の位置)に配置されている。機械室18には、原動機2、油圧ポンプ3、パイロットポンプ4、方向制御弁50,51,55(
図3参照)、熱交換器類(不図示)等が収納されている。また、図示していないが旋回フレーム16の前部における作業機20を挟んで運転室17と反対側にタンク類が配置してある。タンク類には、燃料タンク、作動油タンク等が含まれる。原動機2にはエンジン(内燃機関)が用いられるが、電動モータも用いられ得る。熱交換器類には、エンジン冷却水を冷却するラジエータや作動油を冷却するオイルクーラ等が含まれる。
【0016】
-作業機20-
図1および
図2に示すように、作業機20は、ブーム21、アーム22、アタッチメント23、ブームシリンダ24、モータ25、伸縮シリンダ28、チルトシリンダ29、ホースリール30、およびスイベルジョイント35を含んで構成されている。またアーム22は、アウタアーム22a、およびインナアーム22bを含んで構成されている。
【0017】
ブーム21は筒形に形成され、作業機20の基礎構造体を成す。ブーム21は、軸中心線を前後に延ばした姿勢で左右に延びるフートピン(不図示)を介して旋回フレーム16に上下に回動可能に連結されている。ここで、旋回フレーム16にはバケット等のアタッチメントを装着して掘削作業等に用いる多関節型の標準のフロント作業機を連結するブラケット部(不図示)が備わっている。本実施形態ではこのブラケット部がアダプタ(不図示)の装着により上方に拡張されており、アダプタで拡張された部分に対してブーム21が連結されている。
【0018】
ブームシリンダ24は油圧シリンダであり、旋回フレーム16とブーム21とを連結している。ブームシリンダ24のボトム側の端部は左右に延びるピン(不図示)を介して旋回フレーム16のブラケット部に連結され、ロッド側の端部は左右に延びるピン24bを介してブーム21の下部前側部分に連結されている。ブームシリンダ24を伸縮させることにより、ブーム21は上記フートピン(不図示)を中心として上下方向に回動(俯仰動)する。
【0019】
アウタアーム22aは、前後方向に延びる筒形の部材であり、基端側の部分(
図1中の右側部分)がブーム21に挿入されている。アウタアーム22aの先端側の部分(
図1中の左側部分)はブーム21から前方に突出している。ブーム21の先端部には旋回輪(ベアリング)26が設けてあり、アウタアーム22aの長手方向中間部の外周面が旋回輪26で支持されている。これによりアウタアーム22aがブーム21に支持されて自転可能(長手方向に延びる軸中心線周りに回転可能)な構成となっている。旋回輪26にはモータ25が連結されており、モータ25を作動させるとブーム21に対してアーム22(アウタアーム22aおよびインナアーム22b)と共にアタッチメント23が一体に360°回転(全旋回)する。なお、モータ25は油圧モータである。
【0020】
インナアーム22bは、アウタアーム22aに挿し込まれ、アウタアーム22aに出入り可能に支持された筒形の部材である。アウタアーム22aの先端には、中心軸をインナアーム22bの周方向に向けた複数のガイドローラ27が環状に並べて配置してある。これらガイドローラ27によりインナアーム22bの外周面が周方向の複数個所で支持されている。インナアーム22bは、ガイドローラ27にガイドされつつ、アタッチメント23と共に長手方向に移動する。そして、伸縮シリンダ28(油圧シリンダ)の伸縮に伴ってアウタアーム22aに対してインナアーム22bが長手方向に進退(アウタアーム22aに出入り)し、アーム22が伸縮する。伸縮シリンダ28はインナアーム22bの内部を通り、伸縮シリンダ28のボトム側の端部はインナアーム22bの長手方向の中間部の内周面に連結され、ロッド側の端部はアウタアーム22aの基端部に連結されている。
【0021】
アタッチメント23は本実施形態ではブレーカ(破砕機)であり、インナアーム22bの先端に連結されている。ブレーカは油圧シリンダであるブレーカシリンダ23b(
図3参照)を搭載しており、このブレーカシリンダ23bが油圧ポンプ3から供給される圧油により駆動されてチゼル23aを軸方向に高速で往復運動させ、例えば転炉(不図示)の内壁に設けられた耐火煉瓦をチゼル23aで破砕する。但し、ブレーカのチゼルの往復運動は空圧による場合もある。また、アタッチメント23はチルトシリンダ29を介してインナアーム22bに連結されており、チルトシリンダ29の伸縮に伴って
図1中の矢印方向に回動しチゼル23aの向きを変える。チルトシリンダ29やブレーカシリンダ23bはアタッチメント23を駆動する油圧アクチュエータであり、チルトシリンダ29はインナアーム22bの内部に配置され、ブレーカシリンダ23bはアタッチメント23に搭載されている。アタッチメント23は、例えばグラップルや小割機等、作業に応じて他のアタッチメントにも交換可能である。
【0022】
ホースリール30は、複数の油圧ホース40(40a~d)が巻き掛けられる複数のドラム31(31a~d)と、複数のドラム31を回転駆動するホースリールモータ32と、を備える(
図3参照)。ホースリールモータ32(油圧モータ)は、パイロットポンプ4からパイロット圧油が供給されることで、ドラム33を回転駆動させる。その回転により、複数の油圧ホース40が巻き取られる。
【0023】
次に、ブレーカシリンダ23b、チルトシリンダ29、伸縮シリンダ28、およびホースリールモータ32に圧油を供給するための油圧回路について、
図3を参照して説明する。
図3は、第1実施形態に係る解体機1の油圧回路図である。
【0024】
油圧ポンプ3は、タンク5と共にメインの油圧源を構成し、パイロットポンプ4は、タンク5と共にパイロット油圧源を構成している。油圧ポンプ3とパイロットポンプ4とは、原動機2(
図1参照)によって駆動される。
【0025】
油圧ポンプ3は、ブレーカシリンダ23b、チルトシリンダ29、および伸縮シリンダ28に圧油を供給する。具体的には、油圧ポンプ3は、方向制御弁50、スイベルジョイント35、および油圧ホース40a,40bを介してブレーカシリンダ23bに圧油を供給する。また、油圧ポンプ3は、方向制御弁51、スイベルジョイント35、および油圧ホース40c,40dを介してチルトシリンダ29に圧油を供給する。また、油圧ポンプ3は、方向制御弁55、スイベルジョイント35、および油圧ホース41a,41bを介して伸縮シリンダ28に圧油を供給する。
【0026】
パイロットポンプ4は、操作レバー61~63の操作に応じたパイロット圧を方向制御弁50,51,55のポートに作用させる。これにより、方向制御弁50,51,55は所定の位置(スプール位置)に切り換わる。また、パイロットポンプ4は、ホースリールモータ32にパイロット圧油を供給する。パイロットポンプ4と、操作レバー61~63およびホースリールモータ32との間にはゲートロックレバー60が設けられており、ゲートロックレバー60が遮断位置にあるときには電磁切換弁59が閉じて管路L1を遮断する。その結果、操作レバー61~63の操作が無効化され、パイロットポンプ4からホースリールモータ32へのパイロット圧油の供給も遮断される。
【0027】
操作レバー62が操作されると、油圧ポンプ3からの圧油は方向制御弁50を介してブレーカシリンダ23bに供給される。これにより、ブレーカシリンダ23bが伸縮動作する。また、操作レバー63が操作されると、油圧ポンプ3からの圧油は方向制御弁51を介してチルトシリンダ29に供給される。これにより、チルトシリンダ29が伸縮動作する。
【0028】
また、操作レバー61が操作されると、その操作に応じて方向制御弁55の両ポートのうち一方にパイロット圧が作用し、方向制御弁55が所定のスプール位置に切り換わる。これにより、油圧ポンプ3からの圧油が伸縮シリンダ28のロッド室またはボトム室に供給され、伸縮シリンダ28が伸長または縮退する。具体的には、
図3において、オペレータが操作レバー61を右側に倒すと、パイロットポンプ4からのパイロット圧油が管路L3を流れるため、方向制御弁55が位置aに切り換わる。その結果、油圧ポンプ3からの圧油が伸縮シリンダ28のボトム室に供給され、伸縮シリンダ28が伸長する。一方、オペレータが操作レバー61を左側に倒すと、パイロットポンプ4からのパイロット圧油が管路L4を流れるため、方向制御弁55が位置bに切り換わる。その結果、油圧ポンプ3からの圧油が伸縮シリンダ28のロッド室に供給され、伸縮シリンダ28が縮退する。
【0029】
パイロットポンプ4からのパイロット圧油がホースリールモータ32に供給されると、ホースリールモータ32が回転する。これにより、ドラム31が回転する。ドラム31(31a~31d)には、それぞれ油圧ホース40(40a~40d)が巻き掛けられており、ドラム31の回転によって、油圧ホース40が巻き取られる。
【0030】
パイロットポンプ4とホースリールモータ32との間には、ホースリールモータ32に供給するパイロット圧油の圧力を調整するためのパイロット圧調整回路PC1が設けられている。このパイロット圧調整回路PC1は、リリーフ弁56、減圧弁52、第1切換弁53、および高圧選択シャトル弁(高圧選択パイロット弁)54を含む。なお、パイロットポンプ4の吐出圧は、リリーフ弁56の設定圧Piに制限されている。
【0031】
パイロットポンプ4からのパイロット圧油は、管路L1を流れて第1切換弁53を介して高圧選択シャトル弁54へと送られる。管路L1を流れるパイロット圧油の圧力は、リリーフ弁56の設定圧である圧力Pi(第1の圧力)である。また、パイロットポンプ4からのパイロット圧油は、管路L2を流れて減圧弁52で圧力Pd(第2の圧力)に減圧され、高圧選択シャトル弁54に送られる。そして、高圧選択シャトル弁54は、2つのパイロット圧油のうち高圧側のパイロット圧油を選択してホースリールモータ32に供給する。なお、本実施形態では、減圧弁52にて設定圧Piの50%程度に減圧される構成としているが、減圧される圧力は任意である。
【0032】
ここで、本実施形態では、操作レバー61と方向制御弁55のポートとを繋ぐ管路L4から分岐した管路L5が第1切換弁53のポートと接続されており、操作レバー61の左側への操作に連動して第1切換弁53を切り換えることが可能な構成となっている。より詳細に説明すると、第1切換弁53は常態では位置c(第1の位置)にあり、オペレータが、操作レバー61を左側に倒す操作(アーム22を縮退させる操作)を行うと、この操作に連動して、第1切換弁53にパイロット圧が作用する。その結果、第1切換弁53は位置cから位置d(第2の位置)に切り換わる。
【0033】
この構成により、操作レバー61が操作されていない場合と、右側に倒す操作(アーム22を伸長させる操作)を行った場合とでは、第1切換弁53が位置cにあるため、管路L1は閉じられている。よって、高圧選択シャトル弁54は、減圧弁52により減圧されたパイロット圧油をホースリールモータ32に供給する。つまり、操作レバー61が非操作の場合とアーム22の伸長動作中は、リリーフ弁56の設定圧Piより低い圧力Pdがホースリールモータ32に作用することとなる。
【0034】
一方、操作レバー61を左側に倒す操作(アーム22を縮退させる操作)を行った場合には、パイロット圧が第1切換弁53に作用するため、第1切換弁53が位置cから位置dに切り換わる。よって、高圧選択シャトル弁54には、減圧弁52により減圧されたパイロット圧油(圧力Pd)と、パイロットポンプ4から吐出され第1切換弁53を介して流れてきたパイロット圧油(圧力Pi)とが合流する。リリーフ弁56の設定圧である圧力Piの方が減圧弁52で減圧された圧力Pdより大きいため、高圧選択シャトル弁54は、パイロットポンプ4から吐出された高圧側(圧力Pi)のパイロット圧油を選択して、ホースリールモータ32に供給する。つまり、アーム22の縮退動作中は、リリーフ弁56の設定圧Piがホースリールモータ32に作用することとなる。
【0035】
ここで、ホースリールモータ32に作用するパイロット圧の変化について、
図4を用いて説明する。
図4は、ホースリールモータ32に作用するパイロット圧の変化を示す図であり、横軸は時間tの経過に伴うオペレータの操作、縦軸はパイロット圧Pを示している。
【0036】
図4に示すように、オペレータがゲートロックレバー60を上げた状態(乗降口を遮断した状態)では、パイロットポンプ4からのパイロット圧油はホースリールモータ32に供給されないので、ホースリールモータ32に作用するパイロット圧Pはゼロである。
【0037】
オペレータが時間t1においてゲートロックレバー60を下げると、ホースリールモータ32に作用するパイロット圧Pは、減圧弁52にて減圧された圧力Pdまで徐々に上昇する。つまり、ゲートロックレバー60を下げた状態(操作レバー61を操作していない状態)では、ホースリールモータ32に対して減圧弁52にて減圧されたパイロット圧Pdが作用する。
【0038】
オペレータが時間t2において操作レバー61を操作してアーム22を縮退させた場合には、第1切換弁53が位置dに切り換わるため、ホースリールモータ32に作用するパイロット圧Pはリリーフ弁56の設定圧Piまで、徐々に上昇する。つまり、アーム22の縮退動作中は、ホースリールモータ32に対してリリーフ弁56の設定圧Pi(Pi>Pd)が作用する。
【0039】
時間t3において操作レバー61が非操作状態になると、ホースリールモータ32に作用するパイロット圧Pは、設定圧Piから減圧弁52にて減圧された圧力Pdまで徐々に減少する。
【0040】
そして、時間t4において、オペレータがゲートロックレバー60を上げると、パイロットポンプ4からホースリールモータ32へのパイロット圧油の供給は遮断されるため、ホースリールモータ32に作用するパイロット圧Pはゼロまで徐々に減少する。
【0041】
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
【0042】
アーム22の縮退動作中は高圧のパイロット圧油がホースリールモータ32に供給されているので、油圧ホース40には高いテンションが作用する。その結果、アーム22の縮退時における油圧ホース40の弛みは抑止される。
【0043】
一方、アーム伸長時における油圧ホース40の弛みは、アーム縮退時と比べて少ない。そのため、本実施形態では、アーム伸長時には、ホースリールモータ32に供給するパイロット圧油を低圧にすることで、油圧ホース40に作用するテンションを抑えている。その結果、油圧ホース40の長寿命化を図ることができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る建設機械の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態と比べて、パイロット圧調整回路の構成の一部が異なっている。そこで、以下、第1実施形態と重複する説明は省略し、相違する点について
図5を参照しながら説明する。
図5は、第2実施形態に係る解体機101の油圧回路図である。
【0045】
図5に示すように、第2実施形態では、パイロット圧調整回路PC2が第2切換弁57を備えている点が第1実施形態と異なる。第2切換弁57は、高圧選択シャトル弁54の下流側の管路L6に設けられる。第2切換弁57のポートには管路L7を介してパイロット圧油が供給される。常態において、第2切換弁57は位置e(第3の位置)に保持されている。そのため、ホースリールモータ32と高圧選択シャトル弁54との間は連通している。
【0046】
オペレータが操作レバー61を右側に倒すと、パイロットポンプ4からのパイロット圧油が管路L7を介して第2切換弁57のポートに流れ、第2切換弁57のスプールを押圧する。その結果、第2切換弁57は位置eから位置f(第4の位置)に切り換り、管路L6が遮断される。即ち、パイロットポンプ4からのパイロット圧油がホースリールモータ32に供給されない。
【0047】
これにより、第2実施形態では、操作レバー61を左側に操作(アーム22を縮退動作)した場合には、リリーフ弁56の設定圧Piのパイロット圧がホースリールモータ32に作用する。操作レバー61を操作していない場合には、減圧弁52にて減圧された圧力Pd(第3の圧力)のパイロット圧がホースリールモータ32に作用する。操作レバー61を右側に操作(アーム22を伸長動作)した場合には、ホースリールモータ32にパイロット圧が作用しない状態となる。
【0048】
以上説明したように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏することに加えて、ホースリールモータ32に作用するパイロット圧の値を3段階(圧力Pi、圧力Pd、ゼロ)に調整できるため、より一層、油圧ホース40の寿命を延長させることができる。
【0049】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る建設機械の第3実施形態について説明する。第3実施形態は、第2実施形態と比べて、パイロット圧調整回路の構成の一部が異なっている。そこで、以下、第2実施形態と重複する説明は省略し、相違する点について
図6を参照しながら説明する。
図6は、第3実施形態に係る解体機201の油圧回路図である。
【0050】
図6に示すように、第3実施形態では、電気的にホースリールモータ32に作用するパイロット圧を制御している点が第2実施形態と大きく相違する。この相違点について具体的に説明すると、第3実施形態において、パイロット圧調整回路PC3は、電磁比例減圧弁58を備えている。電磁比例減圧弁58は、コントローラ70と電気配線E3を介して接続されている。電磁比例減圧弁58は、コントローラ70からの電気信号に基づいて作動し、パイロットポンプ4からのパイロット圧油を所望の圧力に減圧する。
【0051】
管路L3,L4にはそれぞれ圧力センサ71が設けられており、圧力センサ71の検出信号は電気配線E1,E2を介してコントローラ70に入力される。コントローラ70は入力された圧力センサ71の検出信号に基づいて、操作レバー61が左右のどちらに操作されたか(アーム22を伸長または縮退のどちらを指示したか)を判断する。そして、コントローラ70は、操作レバー61が左側に操作された場合(アーム22が縮退動作する場合)には、パイロット圧が設定圧Piになるよう電磁比例減圧弁58に電気信号を出力する。すると、電磁比例減圧弁58が電気信号に応じた開度に制御され、ホースリールモータ32にパイロット圧Piが作用する。
【0052】
操作レバー61が右側に操作された場合(アーム22が伸長動作する場合)には、コントローラ70は、パイロット圧がゼロになるよう電磁比例減圧弁58に電気信号を出力する。すると、電磁比例減圧弁58が閉じて、ホースリールモータ32にはパイロット圧が作用しない。
【0053】
一方、操作レバー61が非操作の場合には、コントローラ70は、パイロット圧が圧力Pd(圧力Pd<設定圧Pi)になるよう電磁比例減圧弁58に電気信号を出力する。すると、電磁比例減圧弁58が電気信号に応じた開度に制御され、ホースリールモータ32に圧力Pdが作用する。
【0054】
以上説明したように、第3実施形態によれば、第2実施形態と同様の作用効果を奏する。しかも、電磁比例減圧弁58を用いてホースリールモータ32に作用するパイロット圧を制御する構成としたので、第2実施形態と比べて、部品点数の低減、配線の簡素化も可能となる。
【0055】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1,101,201 解体機(建設機械)
2 原動機(エンジン)
3 油圧ポンプ
4 パイロットポンプ
10 車体
11 走行体
12 旋回体
17 運転室
20 作業機
21 ブーム
22 アーム
22a アウタアーム
22b インナアーム
23 アタッチメント(ブレーカ)
23a チゼル
23b ブレーカシリンダ
24 ブームシリンダ
28 伸縮シリンダ(油圧アクチュエータ)
29 チルトシリンダ
30 ホースリール
31(31a~d) ドラム
32 ホースリールモータ(油圧モータ)
35 スイベルジョイント
40(40a~d) 油圧ホース
41a,41b 油圧ホース
50 方向制御弁
51 方向制御弁
52 減圧弁
53 第1切換弁
54 高圧選択シャトル弁(高圧選択パイロット弁)
55 方向制御弁
56 リリーフ弁
57 第2切換弁
58 電磁比例減圧弁
59 電磁切換弁
60 ゲートロックレバー
61,62,63 操作レバー(操作装置)
70 コントローラ
71 圧力センサ
E1~E3 電気配線
L1~L7 管路
PC1~PC3 パイロット圧調整回路