(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】船殻構造及び船舶
(51)【国際特許分類】
B63B 3/58 20060101AFI20240628BHJP
B63B 25/08 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B63B3/58
B63B25/08 J
B63B25/08 N
(21)【出願番号】P 2021040862
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】502116922
【氏名又は名称】ジャパンマリンユナイテッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】木下 克己
(72)【発明者】
【氏名】西浦 智成
(72)【発明者】
【氏名】平澤 宏章
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第04315613(DE,A1)
【文献】特開2007-261339(JP,A)
【文献】特表2002-521275(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0002397(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 3/58
B63B 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船長方向及び船幅方向に仕切られた複数のタンクを備えた船殻構造において、
前記船幅方向に隣接するタンク同士は、各タンクを前記船長方向に仕切るトランスバルクヘッドが前記船長方向の異なる位置に配置された構成を含み、
前記トランスバルクヘッドのずれ量は、タンク長に対して0.1~0.5倍の範囲内である、
ことを特徴とする船殻構造。
【請求項2】
船長方向及び船幅方向に仕切られた複数のタンクを備えた船殻構造において、
前記船幅方向に隣接するタンク同士は、各タンクを前記船長方向に仕切るトランスバルクヘッドが前記船長方向の異なる位置に配置された構成を含み、
前記トランスバルクヘッドのずれ量は、タンク長に対して0.2~0.5倍の範囲内である、
ことを特徴とする船殻構造。
【請求項3】
船長方向及び船幅方向に仕切られた複数のタンクを備えた船殻構造において、
前記船幅方向に隣接するタンク同士は、各タンクを前記船長方向に仕切るトランスバルクヘッドが前記船長方向の異なる位置に配置された構成を含み、
前記トランスバルクヘッドのずれ量は、タンク長に対して0.3~0.5倍の範囲内である、
ことを特徴とする船殻構造。
【請求項4】
前記船殻構造の両端部を構成するトランスバルクヘッドは、前記船長方向の同じ位置に配置されている、請求項1~3の何れか一項に記載の船殻構造。
【請求項5】
前記複数のタンクは、スロッシングの低減に寄与し得るトランスウェブ又はスウォッシュバルクヘッドを備える、請求項1~3の何れか一項に記載の船殻構造。
【請求項6】
前記複数のタンクは、前記船幅方向に配置された強度補強部材を備える、請求項1~3の何れか一項に記載の船殻構造。
【請求項7】
前記複数のタンクは、略同じ長さのタンク長を備える、請求項1~3の何れか一項に記載の船殻構造。
【請求項8】
請求項1~3の何れか一項に記載された船殻構造を備える、ことを特徴とする船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船殻構造及び船舶に関し、特に、船殻構造部材の削減を図ることができる船殻構造及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、船舶の価格競争が激化しており、価格競争力に強い船舶の開発が望まれている。例えば、特許文献1には、前記タンクの内部を分割するために船殻の長手方向に配列された長手隔壁(20)と、前記船殻の高さ方向にて前記長手隔壁(20)に結合されており、前記タンクの全高(H)の0.15倍から0.20倍の幅を有している複数の垂直ウェブ(22)と、前記船殻の長手方向に沿って配列された水平ガーダ(24)と、を備え、前記水平ガーダ(24)の端部には第2補強部(24a)が一体的に提供されており、前記第2補強部(24a)の幅は徐々に増大し、自由端部は丸形部に形状化されており、前記第2補強部(24a)は前記垂直ウェブ(22)に結合されていることを特徴とする巨大石油タンカーのタンク構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された発明は、タンクの構造強度を改善し、長手隔壁(20)間に配置されたクロスタイを削減しようとするものである。しかしながら、特許文献1に記載された発明では、船殻の長手方向に水平ガーダを掛け渡すように配置していることから、重量が増加しやすいという問題がある。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、重量の増加を抑制しつつ船殻構造部材の削減を図ることができる船殻構造及び船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、船長方向及び船幅方向に仕切られた複数のタンクを備えた船殻構造において、前記船幅方向に隣接するタンク同士は、各タンクを前記船長方向に仕切るトランスバルクヘッドが前記船長方向の異なる位置に配置された構成を含み、前記トランスバルクヘッドのずれ量は、タンク長に対して0.1~0.5倍の範囲内である、ことを特徴とする船殻構造が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、船長方向及び船幅方向に仕切られた複数のタンクを備えた船殻構造において、前記船幅方向に隣接するタンク同士は、各タンクを前記船長方向に仕切るトランスバルクヘッドが前記船長方向の異なる位置に配置された構成を含み、前記トランスバルクヘッドのずれ量は、タンク長に対して0.2~0.5倍の範囲内である、ことを特徴とする船殻構造が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、船長方向及び船幅方向に仕切られた複数のタンクを備えた船殻構造において、前記船幅方向に隣接するタンク同士は、各タンクを前記船長方向に仕切るトランスバルクヘッドが前記船長方向の異なる位置に配置された構成を含み、前記トランスバルクヘッドのずれ量は、タンク長に対して0.3~0.5倍の範囲内である、ことを特徴とする船殻構造が提供される。
【0009】
前記船殻構造の両端部を構成するトランスバルクヘッドは、前記船長方向の同じ位置に配置されていてもよい。
【0010】
前記複数のタンクは、スロッシングの低減に寄与し得るトランスウェブ又はスウォッシュバルクヘッドを備えていてもよい。
【0011】
前記複数のタンクは、前記船幅方向に配置された強度補強部材を備えていてもよい。
【0012】
前記複数のタンクは、略同じ長さのタンク長を備えていてもよい。
【0014】
また、本発明によれば、上述した何れかの船殻構造を備える、ことを特徴とする船舶が提供される。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明に係る船殻構造及び船舶によれば、同位置で船幅方向に隣接するタンク同士のトランスバルクヘッドを船長方向の異なる位置に配置したことにより、強度の高いトランスバルクヘッドを分散させることができ、船殻構造の強度を向上させることができ、強度補強部材であるクロスタイの本数を削減することができる。したがって、本発明によれば、重量の増加を抑制しつつ船殻構造部材の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る船舶を示す側面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る船殻構造を示す平面図である。
【
図3】
図2に示した船殻構造の断面矢視図であり、(A)はA断面矢視図、(B)はB断面矢視図、(C)はC断面矢視図、である。
【
図4】船殻構造の部分拡大図であり、(A)は第一実施形態、(B)は第一実施形態の第一変形例、(C)は第一実施形態の第二変形例、(D)は第一実施形態の第三変形例、である。
【
図5】船殻構造の部分拡大図であり、(A)は第一実施形態の第四変形例、(B)は第一実施形態の第五変形例、(C)は第一実施形態の第六変形例、(D)は第一実施形態の第七変形例、である。
【
図6】船殻構造の部分拡大図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第二実施形態の第一変形例、(C)は第二実施形態の第二変形例、(D)は第二実施形態の第三変形例、である。
【
図7】船殻構造の部分拡大図であり、(A)は第二実施形態の第四変形例、(B)は第二実施形態の第五変形例、(C)は第二実施形態の第六変形例、(D)は第二実施形態の第七変形例、である。
【
図8】船殻構造の部分拡大図であり、(A)は第二実施形態の第八変形例、(B)は第二実施形態の第九変形例、(C)は第二実施形態の第十変形例、(D)は第二実施形態の第十一変形例、である。
【
図9】船殻構造の部分拡大図であり、(A)は第三実施形態、(B)は第三実施形態の第一変形例、(C)は第三実施形態の第二変形例、である。
【
図10】船殻構造の部分拡大図であり、(A)は第三実施形態の第三変形例、(B)は第三実施形態の第四変形例、(C)は第三実施形態の第五変形例、である。
【
図11】船殻構造の部分拡大図であり、(A)は第四実施形態、(B)は第四実施形態の変形例、である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について
図1~
図11(B)を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の一実施形態に係る船舶を示す側面図である。
図2は、本発明の第一実施形態に係る船殻構造を示す平面図である。
図3は、
図2に示した船殻構造の断面矢視図であり、(A)はA断面矢視図、(B)はB断面矢視図、(C)はC断面矢視図、である。なお、
図3(A)~
図3(C)において、説明の便宜上、船幅方向の半分のみを図示してある。
【0018】
本発明の一実施形態に係る船舶1は、
図1に示したように、船体中央部に配置された船殻構造2と、船殻構造2の前方に配置された船首部3と、船殻構造2の後方に配置された船尾部4と、を備えている。船首部3は、例えば、造波抵抗を低減するためのバルバスバウ31を備えていてもよい。船尾部4は、例えば、推進装置(プロペラ41)、舵42、居住区43等を備えている。
【0019】
船舶1は、固体又は液体を搬送する貨物船であり、船首部3及び船尾部4を除く大部分が船殻構造2によって構成されている。船舶1は、例えば、タンカーであるが、タンカーに限定されるものではない。
【0020】
船殻構造2は、例えば、
図2に示したように、船体中心線CLに沿って配置された複数のセンタータンク21と、センタータンク21の両側に配置された複数のウイングタンク22と、を備えている。センタータンク21とウイングタンク22とは、船長方向Xに沿って配置された縦通隔壁23により船幅方向Yに仕切られている。
【0021】
すなわち、船殻構造2は、船長方向X及び船幅方向Yに仕切られた複数のタンクを備えている。なお、本実施形態において、船幅方向Yに隣接するタンク同士とは、センタータンク21及びウイングタンク22を意味している。また、船殻構造2の側面部24及び底面部25は、船体を構成する二重隔壁により構成されていてもよい。また、船殻構造2の天井部26は、船体を構成する甲板により構成されていてもよい。
【0022】
センタータンク21及びウイングタンク22は、船殻構造2の船長方向Xの両端部を除いて、センタータンク21を船長方向Xに仕切るトランスバルクヘッド21aとウイングタンク22を船長方向Xに仕切るトランスバルクヘッド22aとが船長方向Xの異なる位置に配置されている。
図2において、X字状に図示した一点鎖線は仕切られた領域を示している。
【0023】
ここで、センタータンク21のタンク長(船長方向Xの長さ)をLcとし、ウイングタンク22のタンク長(船長方向Xの長さ)をLwとすれば、大部分のタンクにおいてタンク長Lcとタンク長Lwとは略同じ長さを備えている。「大部分」とは、船殻構造2の両端部や中間部等の一部において、タンク長Lcとタンク長Lwとが異なる長さであってもよいことを意味している。また、「略同じ長さ」とは、製造誤差程度の差異を含む趣旨である。
【0024】
図2に示したように、センタータンク21のトランスバルクヘッド21aとウイングタンク22のトランスバルクヘッド22aとを船長方向Xにずらして配置したことにより、センタータンク21及びウイングタンク22を互い違い又は千鳥状に配置することができ、船殻構造2の強度を向上させることができる。
【0025】
なお、船長方向Xの両端部に配置されたトランスバルクヘッド(例えば、船首隔壁又は機関室前端隔壁)は、船殻構造2の全体形状を構成する隔壁であることから、船長方向Xの同じ位置に配置されていてもよい。もちろん、船長方向Xの両端部に配置されたトランスバルクヘッドを船長方向Xの異なる位置に配置するようにしてもよい。
【0026】
センタータンク21のトランスバルクヘッド21aには、水平面を備える水平ガーダ21bが配置されていてもよい。また、センタータンク21を構成する縦通隔壁23の壁面には、構造強度を保持するためのトランスウェブ21cが配置されていてもよい。トランスウェブ21cは、例えば、鉛直面(YZ平面)を備えた板材により構成される。かかるトランスウェブ21cを配置することによりスロッシングを低減することができる。
【0027】
ウイングタンク22のトランスバルクヘッド22aには、水平面を備える水平ガーダ22bが配置されていてもよい。かかる水平ガーダ22bを配置することにより構造強度を保持することができる。また、ウイングタンク22を構成するトランスバルクヘッド22aの間には、スロッシングを低減するためのスウォッシュバルクヘッド22cが配置されていてもよい。スウォッシュバルクヘッド22cは、非水密隔壁であり、ウイングタンク22を船長方向Xに部分的に区切る板材により構成される。
【0028】
図3(A)に示したように、センタータンク21のトランスバルクヘッド21aに対応する位置におけるウイングタンク22は、縦通隔壁23、側面部24、底面部25及び天井部26により仕切られた空間を備えている。なお、ウイングタンク22の上部にはデッキトランス22dが配置されていてもよい。
【0029】
図3(B)に示したように、ウイングタンク22のトランスバルクヘッド22aに対応する位置におけるセンタータンク21は、縦通隔壁23、底面部25及び天井部26により仕切られた空間を備えている。なお、センタータンク21の内側には、環状又はC字形状のトランスリング21dが配置されていてもよい。
【0030】
図3(C)に示したように、スウォッシュバルクヘッド22cは、例えば、縦通隔壁23、側面部24及び底面部25に接続された板材により構成され、天井部26との間に空間を形成するように構成されている。スウォッシュバルクヘッド22cには、水平ガーダ22eを配置してもよい。なお、ウイングタンク22の上部にはデッキトランス22dが配置されていてもよいし、センタータンク21の内側には、環状又はC字形状のトランスリング21dが配置されていてもよい。
【0031】
次に、第一実施形態に係る船殻構造2のタンク配置構成について、
図4(A)~
図5(D)を参照しつつ説明する。ここで、
図4は、船殻構造の部分拡大図であり、(A)は第一実施形態、(B)は第一実施形態の第一変形例、(C)は第一実施形態の第二変形例、(D)は第一実施形態の第三変形例、である。
図5は、船殻構造の部分拡大図であり、(A)は第一実施形態の第四変形例、(B)は第一実施形態の第五変形例、(C)は第一実施形態の第六変形例、(D)は第一実施形態の第七変形例、である。なお、各図において、説明の便宜上、スウォッシュバルクヘッドを点線で示し、強度補強部材を一点鎖線で示し、水平ガーダを灰色に塗り潰して示している。
【0032】
図4(A)に示したように、ウイングタンク22のタンク長Lw(トランスバルクヘッド22aの間隔)を十等分したとすれば、第一実施形態に係る船殻構造2は、例えば、センタータンク21のトランスバルクヘッド21aとウイングタンク22のトランスバルクヘッド22aとのずれ量Dがタンク長Lwに対して0.3倍となるように構成されている。すなわち、第一実施形態では、D=0.3Lwと設定される。
【0033】
また、ウイングタンク22のスウォッシュバルクヘッド22cは、トランスバルクヘッド22aに対して0.5Lwの位置に配置されている。また、水平ガーダ21b,22b,22eは、例えば、各バルクヘッドに対して同じ側(図の右側)に配置される。なお、スウォッシュバルクヘッド22cの水平ガーダ22eは、例えば、船長方向Xに隣接するトランスバルクヘッド22a又は水平ガーダ22bとの距離が長い方に配置される。
【0034】
トランスバルクヘッド21a,22a及びスウォッシュバルクヘッド22cの位置を決定した後、必要に応じて、船幅方向Yに配置された強度補強部材27を配置してもよい。ここでは、センタータンク21内における、トランスバルクヘッド22aとスウォッシュバルクヘッド22cとの略中間に対応する位置に強度補強部材27を配置している。強度補強部材27は、例えば、クロスタイである。
【0035】
本実施形態に係る船殻構造2によれば、船幅方向Yに隣接するタンク同士のトランスバルクヘッド21a,22aを船長方向Xの異なる位置に配置したことにより、剛性が高いトランスバルクヘッド21a,22aを分散させることができ、船殻構造2の強度を向上させることができ、強度補強部材27(クロスタイ)の本数を必要最小限まで削減することができる。
【0036】
図4(B)に示した第一実施形態の第一変形例のように、強度補強部材27はウイングタンク22内に配置してもよい。強度補強部材27は、例えば、トランスバルクヘッド22aとスウォッシュバルクヘッド22cとの略中間に配置される。
【0037】
図4(C)に示した第一実施形態の第二変形例のように、ウイングタンク22内に配置した強度補強部材27はスウォッシュバルクヘッド22cに置換してもよい。このとき、スウォッシュバルクヘッド22cの水平ガーダ22eを他の水平ガーダ21b,22bと反対側(図の左側)に配置するようにしてもよい。
【0038】
図4(D)に示した第一実施形態の第三変形例のように、
図4(C)に示した二枚のスウォッシュバルクヘッド22cを各ウイングタンク22内において一つに統合してもよい。このとき、船殻構造2を構成する鋼材の種類や板厚、必要強度等の条件によっては、強度補強部材27を省略することができる。
【0039】
図5(A)に示した第一実施形態の第四変形例のように、センタータンク21にスウォッシュバルクヘッド21eを配置し、ウイングタンク22にトランスウェブ22fを配置してもよい。スウォッシュバルクヘッド21eは、例えば、トランスバルクヘッド21aとトランスバルクヘッド22aとの略中間に対応する位置に配置される。スウォッシュバルクヘッド21eは、水平ガーダ21fを備えていてもよい。トランスウェブ22fは、例えば、縦通隔壁23に配置される。また、ウイングタンク22内には、トランスバルクヘッド22a間に強度補強部材27を配置してもよい。
【0040】
図5(B)に示した第一実施形態の第五変形例のように、強度補強部材27はセンタータンク21内に配置してもよい。強度補強部材27は、例えば、トランスバルクヘッド21aとスウォッシュバルクヘッド21eとの略中間に配置される。その他の構成は、
図5(A)に示した構成と同じである。
【0041】
図5(C)に示した第一実施形態の第六変形例のように、
図5(B)に示した強度補強部材27はスウォッシュバルクヘッド21eに置換してもよい。このとき、スウォッシュバルクヘッド21eの水平ガーダ21fを他の水平ガーダ21b,22bと反対側(図の左側)に配置するようにしてもよい。
【0042】
図5(D)に示した第一実施形態の第七変形例のように、
図5(C)に示した二枚のスウォッシュバルクヘッド21eをセンタータンク21内において一つに統合してもよい。このとき、船殻構造2を構成する鋼材の種類や板厚、必要強度等の条件によっては、強度補強部材27を省略することができる。
【0043】
次に、第二実施形態に係る船殻構造2のタンク配置構成について、
図6(A)~
図8(D)を参照しつつ説明する。ここで、
図6は、船殻構造の部分拡大図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第二実施形態の第一変形例、(C)は第二実施形態の第二変形例、(D)は第二実施形態の第三変形例、である。
図7は、船殻構造の部分拡大図であり、(A)は第二実施形態の第四変形例、(B)は第二実施形態の第五変形例、(C)は第二実施形態の第六変形例、(D)は第二実施形態の第七変形例、である。
図8は、船殻構造の部分拡大図であり、(A)は第二実施形態の第八変形例、(B)は第二実施形態の第九変形例、(C)は第二実施形態の第十変形例、(D)は第二実施形態の第十一変形例、である。
【0044】
図6(A)に示したように、第二実施形態に係る船殻構造2は、センタータンク21のトランスバルクヘッド21aとウイングタンク22のトランスバルクヘッド22aとの位置関係を第一実施形態から変更したものである。
【0045】
センタータンク21のタンク長Lc(トランスバルクヘッド21aの間隔)を十等分したとすれば、第二実施形態に係る船殻構造2は、例えば、センタータンク21のトランスバルクヘッド21aとウイングタンク22のトランスバルクヘッド22aとのずれ量Dがタンク長Lcに対して0.5倍となるように構成されている。すなわち、第二実施形態では、D=0.5Lcと設定される。
【0046】
第二実施形態に係る船殻構造2は、センタータンク21にトランスウェブ21cを備え、ウイングタンク22にスウォッシュバルクヘッド22cを備えている。スウォッシュバルクヘッド22cは、トランスバルクヘッド21aに対応する位置(トランスバルクヘッド22aに対して0.5Lcの位置)に配置されている。また、水平ガーダ21b,22b,22eは、例えば、各バルクヘッドに対して同じ側(図の右側)に配置される。
【0047】
トランスバルクヘッド21a,22a及びスウォッシュバルクヘッド22cの位置を決定した後、必要に応じて、強度補強部材27を配置してもよい。ここでは、センタータンク21内における、トランスバルクヘッド22aとスウォッシュバルクヘッド22cとの略中間に対応する位置に二本の強度補強部材27を配置している。
【0048】
図6(B)に示した第二実施形態の第一変形例のように、強度補強部材27はウイングタンク22内に配置してもよい。強度補強部材27は、例えば、トランスバルクヘッド22aとスウォッシュバルクヘッド22cとの略中間に配置される。なお、図示しないが、
図6(A)に示した二本の強度補強部材27のうち一本のみをウイングタンク22内に配置するようにしてもよい。
【0049】
図6(C)に示した第二実施形態の第二変形例のように、センタータンク21内に配置した二本の強度補強部材27のうち一本のみをウイングタンク22内に配置したスウォッシュバルクヘッド22cに置換してもよい。このとき、スウォッシュバルクヘッド22cの水平ガーダ22eを他の水平ガーダ21b,22bと反対側(図の左側)に配置するようにしてもよい。
【0050】
図6(D)に示した第二実施形態の第三変形例のように、
図6(C)に示した強度補強部材27をウイングタンク22内に配置するようにしてもよい。
【0051】
図7(A)に示した第二実施形態の第四変形例のように、
図6(D)に示した強度補強部材27をスウォッシュバルクヘッド22cに置換してもよい。
【0052】
図7(B)に示した第二実施形態の第五変形例のように、
図6(A)に示した強度補強部材27は、船殻構造2を構成する鋼材の種類や板厚、必要強度等の条件によっては省略することができる。
【0053】
図7(C)に示した第二実施形態の第六変形例のように、センタータンク21にスウォッシュバルクヘッド21eを配置し、ウイングタンク22にトランスウェブ22fを配置してもよい。スウォッシュバルクヘッド21eは、例えば、トランスバルクヘッド22aに対応する位置(トランスバルクヘッド21aに対して0.5Lcの位置)に配置される。また、センタータンク21内には、トランスバルクヘッド21aとスウォッシュバルクヘッド21eとの間に強度補強部材27を配置してもよい。
【0054】
図7(D)に示した第二実施形態の第七変形例のように、
図7(C)に示した強度補強部材27はウイングタンク22内に配置してもよい。なお、図示しないが、
図7(C)に示した二本の強度補強部材27のうち一本のみをウイングタンク22内に配置するようにしてもよい。
【0055】
図8(A)に示した第二実施形態の第八変形例のように、
図7(C)に示したスウォッシュバルクヘッド21eの位置を変更し、強度補強部材27を一本に変更してもよい。スウォッシュバルクヘッド21eは、例えば、トランスバルクヘッド21aとトランスバルクヘッド22aとの間に配置される。このとき、スウォッシュバルクヘッド21eの水平ガーダ21fを他の水平ガーダ21b,22bと反対側(図の左側)に配置するようにしてもよい。
【0056】
図8(B)に示した第二実施形態の第九変形例のように、
図8(A)に示した強度補強部材27をウイングタンク22内に配置するようにしてもよい。
【0057】
図8(C)に示した第二実施形態の第十変形例のように、
図8(A)に示した強度補強部材27をスウォッシュバルクヘッド21eに置換してもよい。
【0058】
図8(D)に示した第二実施形態の第十一変形例のように、
図8(C)に示した二枚のスウォッシュバルクヘッド21eをセンタータンク21内において一つに統合してもよい。このとき、船殻構造2を構成する鋼材の種類や板厚、必要強度等の条件によっては、強度補強部材27を省略することができる。
【0059】
次に、第三実施形態に係る船殻構造2のタンク配置構成について、
図9(A)~
図10(C)を参照しつつ説明する。ここで、
図9は、船殻構造の部分拡大図であり、(A)は第三実施形態、(B)は第三実施形態の第一変形例、(C)は第三実施形態の第二変形例、である。
図10は、船殻構造の部分拡大図であり、(A)は第三実施形態の第三変形例、(B)は第三実施形態の第四変形例、(C)は第三実施形態の第五変形例、である。
【0060】
図9(A)に示したように、第三実施形態に係る船殻構造2は、センタータンク21のトランスバルクヘッド21aとウイングタンク22のトランスバルクヘッド22aとの位置関係を第一実施形態から変更したものである。
【0061】
ウイングタンク22のタンク長Lw(トランスバルクヘッド22aの間隔)を十等分したとすれば、第三実施形態に係る船殻構造2は、例えば、センタータンク21のトランスバルクヘッド21aと図の上側のウイングタンク22のトランスバルクヘッド22aとのずれ量Dがタンク長Lwに対して0.3倍(D=0.3Lw)となるように構成されている。
【0062】
また、第三実施形態に係る船殻構造2は、例えば、センタータンク21のトランスバルクヘッド21aと図の下側のウイングタンク22のトランスバルクヘッド22aとのずれ量Dがタンク長Lwに対して0.2倍(D=0.2Lw)となるように構成されている。
【0063】
このように、センタータンク21に隣接する二列のウイングタンク22において、トランスバルクヘッド22aが船長方向Xの異なる位置に配置されていてもよい。すなわち、センタータンク21に隣接するウイングタンク22のトランスバルクヘッド22aのずれ量Dの数値が異なっていてもよい。
【0064】
第三実施形態に係る船殻構造2は、センタータンク21にトランスウェブ21cを備え、ウイングタンク22にスウォッシュバルクヘッド22cを備えている。スウォッシュバルクヘッド22cは、トランスバルクヘッド22aの略中間の位置(トランスバルクヘッド22aに対して0.5Lwの位置)に配置されている。また、水平ガーダ21b,22b,22eは、例えば、各バルクヘッドに対して同じ側(図の右側)に配置される。
【0065】
トランスバルクヘッド21a,22a及びスウォッシュバルクヘッド22cの位置を決定した後、必要に応じて、強度補強部材27を配置してもよい。ここでは、センタータンク21内における、トランスバルクヘッド22aとスウォッシュバルクヘッド22cとの略中間に対応する位置に強度補強部材27を配置している。
【0066】
図9(B)に示した第三実施形態の第一変形例のように、強度補強部材27はウイングタンク22内に配置してもよい。強度補強部材27は、例えば、トランスバルクヘッド22aとスウォッシュバルクヘッド22cとの略中間に配置される。
【0067】
図9(C)に示した第三実施形態の第二変形例のように、ウイングタンク22内に配置した強度補強部材27はスウォッシュバルクヘッド22cに置換してもよい。このとき、スウォッシュバルクヘッド22cの水平ガーダ22eを他の水平ガーダ21b,22bと反対側(図の左側)に配置するようにしてもよい。
【0068】
図10(A)に示した第三実施形態の第三変形例のように、センタータンク21にスウォッシュバルクヘッド21eを配置し、ウイングタンク22にトランスウェブ22fを配置してもよい。スウォッシュバルクヘッド21eは、例えば、上下のトランスバルクヘッド22aの略中間であってトランスバルクヘッド21aから離れた側の位置(トランスバルクヘッド21aに対して0.4Lwの位置)に配置される。また、センタータンク21内には、トランスバルクヘッド21aとスウォッシュバルクヘッド21eとの間に強度補強部材27を配置してもよい。
【0069】
図10(B)に示した第三実施形態の第四変形例のように、
図10(A)に示した強度補強部材27はウイングタンク22内に配置してもよい。なお、図示しないが、
図10(A)に示した三本の強度補強部材27のうち一部のみをウイングタンク22内に配置するようにしてもよい。
【0070】
図10(C)に示した第三実施形態の第五変形例のように、
図10(A)に示した強度補強部材27をスウォッシュバルクヘッド21eに置換してもよい。このとき、スウォッシュバルクヘッド21eの水平ガーダ21fを他の水平ガーダ21b,22bと同じ側(図の右側)に配置してもよいし、一部の水平ガーダ21fを他の水平ガーダ21b,22bと反対側(図の左側)に配置するようにしてもよい。
【0071】
次に、第四実施形態に係る船殻構造2のタンク配置構成について、
図11(A)及び
図11(B)を参照しつつ説明する。ここで、
図11は、船殻構造の部分拡大図であり、(A)は第四実施形態、(B)は第四実施形態の変形例、である。
【0072】
図11(A)に示したように、第四実施形態に係る船殻構造2は、センタータンク21のトランスバルクヘッド21aとウイングタンク22のトランスバルクヘッド22aとの位置関係を第三実施形態から変更したものである。具体的には、
図9(A)に示した図の下側のウイングタンク22のトランスバルクヘッド22aのずれ量Dをタンク長Lwに対して0.3倍(D=0.3Lw)に変更したものである。
【0073】
したがって、第四実施形態に係る船殻構造2は、センタータンク21のトランスバルクヘッド21aとウイングタンク22のトランスバルクヘッド22aとのずれ量Dは同じ数値であるが、図の上側のウイングタンク22のトランスバルクヘッド22aと図の下側のウイングタンク22のトランスバルクヘッド22aとは船長方向Xの異なる位置に配置されている。このように、トランスバルクヘッド21aとトランスバルクヘッド22aとのずれ量Dは任意に変更することができる。
【0074】
第四実施形態に係る船殻構造2は、センタータンク21にトランスウェブ21cを備え、ウイングタンク22にスウォッシュバルクヘッド22cを備えている。スウォッシュバルクヘッド22cは、トランスバルクヘッド21aとトランスバルクヘッド22aとの略中間に対応する位置に配置されている。スウォッシュバルクヘッド21eの水平ガーダ21fは、他の水平ガーダ21b,22bと同じ側(図の右側)に配置してもよいし、一部の水平ガーダ21fを他の水平ガーダ21b,22bと反対側(図の左側)に配置するようにしてもよい。
【0075】
なお、
図11(A)に示した第四実施形態では強度補強部材27を省略しているが、トランスバルクヘッド21a,22a及びスウォッシュバルクヘッド22cの位置を決定した後、必要に応じて、強度補強部材27を配置するようにしてもよい。
【0076】
図11(B)に示した第四実施形態の変形例のように、センタータンク21にスウォッシュバルクヘッド21eを配置し、ウイングタンク22にトランスウェブ22fを配置してもよい。スウォッシュバルクヘッド21eは、例えば、上下のトランスバルクヘッド22aに対応した位置に配置される。なお、必要に応じて、強度補強部材27を配置してもよい。
【0077】
上述した第一実施形態~第四実施形態(各変形例を含む)において、トランスバルクヘッド21aとトランスバルクヘッド22aとのずれ量Dは、タンク長Lc又はタンク長Lwに対して0.2倍、0.3倍及び0.5倍の場合について説明しているが、ずれ量Dはこれらの数値に限定されるものではない。例えば、ずれ量Dは、タンク長Lc又はタンク長Lwに対して0.1倍~0.5倍の範囲内で任意に設定することができる。
【0078】
上述した実施形態では、説明の便宜上、タンク長Lc又はタンク長Lwを十等分した長さを基準にずれ量Dを設定しているが、ずれ量Dを設定する基準の長さは任意に設定することができる。また、スウォッシュバルクヘッド22c,21e及び強度補強部材27の配置は、図示した実施形態及び変形例に限定されるものではない。
【0079】
また、上述した実施形態では、船殻構造2を船幅方向Yに三分割した場合について説明しているが、かかる構成に限定されるものではない。船殻構造2は、例えば、船幅方向Yに二分割されていてもよいし、四つ以上に分割されていてもよい。
【0080】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0081】
1 船舶
2 船殻構造
3 船首部
4 船尾部
21 センタータンク
21a トランスバルクヘッド
21b 水平ガーダ
21c トランスウェブ
21d トランスリング
21e スウォッシュバルクヘッド
21f 水平ガーダ
22 ウイングタンク
22a トランスバルクヘッド
22b 水平ガーダ
22c スウォッシュバルクヘッド
22d デッキトランス
22e 水平ガーダ
22f トランスウェブ
23 縦通隔壁
24 側面部
25 底面部
26 天井部
27 強度補強部材
31 バルバスバウ
41 プロペラ
42 舵
43 居住区