IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFEシビル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-コンクリート表面の強度測定方法 図1
  • 特許-コンクリート表面の強度測定方法 図2
  • 特許-コンクリート表面の強度測定方法 図3
  • 特許-コンクリート表面の強度測定方法 図4
  • 特許-コンクリート表面の強度測定方法 図5
  • 特許-コンクリート表面の強度測定方法 図6
  • 特許-コンクリート表面の強度測定方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】コンクリート表面の強度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/40 20060101AFI20240628BHJP
   E04G 21/10 20060101ALI20240628BHJP
   G01N 3/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
G01N3/40 B
E04G21/10 Z
G01N3/00 M
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021090530
(22)【出願日】2021-05-28
(65)【公開番号】P2022182797
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2024-03-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】入稲福 力
(72)【発明者】
【氏名】安田 博和
(72)【発明者】
【氏名】中村 信行
(72)【発明者】
【氏名】山岡 賢史
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-085548(JP,A)
【文献】特開2020-056673(JP,A)
【文献】特表2010-539495(JP,A)
【文献】国際公開第2021/068342(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/40
E04G 21/10
G01N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設したコンクリートの表面の強度を測定するために用いられる強度測定装置であって、
先端部に溝部を有する本体部と、
前記溝部の内部に収容され、前記溝部から押圧面が突き出してコンクリート表面に押圧する押圧部と、
前記溝部の内部に収容され、前記押圧部を前記コンクリート表面に向かって付勢する弾性部材と、
前記コンクリート表面に押圧させた前記押圧部の押圧力を測定する測定機構と、を有する、コンクリート表面の強度測定装置を用いて、前記コンクリート表面の強度を測定する方法であって、
前記強度測定装置の本体部の先端面を前記コンクリート表面に当接させた状態で、前記押圧面を前記コンクリート表面に押圧し、測定した押圧力の数値に基づいて、前記コンクリート表面の仕上げ時期を決定する、コンクリート表面の強度測定方法。
【請求項2】
前記コンクリート表面の仕上げ時期の決定は、前記強度測定装置で押圧力を複数回測定し、そのうち数値が高い上位の値を除く残りの値の平均値で評価する、請求項に記載のコンクリート表面の強度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打設したコンクリートの表面の仕上げ時期を決定するために用いられるコンクリート表面の強度測定装置用いたコンクリート表面の強度測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の床スラブ等は、コンクリートを打設して形成される。打設したコンクリートの表面仕上げ作業は、作業員が鏝を用いて手作業で行うか、又はトロウェルと呼ばれるコンクリート表面仕上げ装置を用いて行われる。従来、打設したコンクリートの表面の仕上げ時期については、床仕上げ職人によって長年培われた勘で決定されてきた。しかしながら、床仕上げ職人の勘に頼ることができない現場等においては、コンクリートの表面の仕上げ時期を見誤り、十分な表面仕上げができないおそれがある。そのため、床仕上げ職人の勘に頼ることなく、良好なコンクリートの表面仕上げを行えることが望まれている。
【0003】
ところで、従来からコンクリートの硬化状況を測定する手段として、例えば特許文献1に開示されたプロクター貫入試験と、特許文献2に開示されたN式貫入試験が知られている。プロクター貫入試験とは、コンクリート中のモルタルを容器に詰め、プロクター貫入抵抗試験器を用いて、時間の経過とともに、貫入針が深さ1cm貫入するのに要する力を測定し、この力を針の面積で除して貫入抵抗を測定するものである。また、N式貫入試験とは、打設したコンクリートの表面に突き棒を自由落下させ、突き棒の貫入長さを測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-59979号公報
【文献】特開2015-45163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したプロクター貫入試験は、高い荷重で貫入針をモルタルの内部に貫入させるため、コンクリートを打設した後の硬化初期段階におけるコンクリート強度の変化を検出することができない。同様に、N式貫入試験は、高い荷重で突き棒をモルタルの内部に貫入させるため、コンクリートを打設した後の硬化初期段階におけるコンクリート強度の変化を検出することができない。つまり、プロクター貫入試験及びN式貫入試験では、コンクリート表面の仕上げ時期の判断が困難である。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、打設したコンクリートの表面仕上げ時期を、床仕上げ職人の勘に頼ることなく、物理的数値を計測して決定することができる、ンクリート表面の強度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコンクリート表面の強度測定方法は、打設したコンクリートの表面の強度を測定するために用いられる強度測定装置であって、先端部に溝部を有する本体部と、前記溝部の内部に収容され、前記溝部から押圧面が突き出してコンクリート表面に押圧する押圧部と、前記溝部の内部に収容され、前記押圧部を前記コンクリート表面に向かって付勢する弾性部材と、前記コンクリート表面に押圧させた前記押圧部の押圧力を測定する測定機構と、を有する、コンクリート表面の強度測定装置を用いて、前記コンクリート表面の強度を測定する方法であって、前記強度測定装置の本体部の先端面を前記コンクリート表面に当接させた状態で、前記押圧面を前記コンクリート表面に押圧し、測定した押圧力の数値に基づいて、前記コンクリート表面の仕上げ時期を決定するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コンクリート表面の強度測定装置を用いることにより、打設したコンクリートの表面仕上げ時期を、床仕上げ職人の勘に頼ることなく、物理的数値を計測して決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係るコンクリート表面の強度測定装置を示した説明図である。
図2】(a)~(c)は、押圧面の形状のバリエーションをそれぞれ示した説明図である。
図3】実施の形態に係るコンクリート表面の強度測定装置であって、打設後の初期段階にあるコンクリート表面に押圧面を押圧させた状態を示した説明図である。
図4】実施の形態に係るコンクリート表面の強度測定装置であって、ほぼ硬化した状態のコンクリート表面に押圧面を押圧させた状態を示した説明図である。
図5図2に示した(a)~(c)の押圧面を、打設したコンクリート表面に押圧させて、その押圧力を測定した結果をそれぞれ示したグラフである。
図6】押圧面の突出量と押圧力の大きさとの関係がコンクリート表面200aの強度の測定に及ぼす影響を示したグラフである。
図7】コンクリートを打設してから硬化するまでの時刻と、各試験方法による測定値との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化する。また、各図に記載の構成について、その形状、大きさ、及び配置等は、本発明の範囲内で適宜変更することができる。
【0012】
実施の形態.
図1は、実施の形態に係るコンクリート表面200aの強度測定装置100を示した説明図である。図2の(a)~(c)は、押圧面の形状のバリエーションをそれぞれ示した説明図である。本実施の形態に係るコンクリート表面200aの強度測定装置100は、図1に示すように、打設したコンクリート200のコンクリート表面200aの強度を測定するために用いられるものである。この強度測定装置100は、本体部1と、押圧部2と、弾性部材3と、測定機構4と、を有している。
【0013】
本体部1は、強度測定装置100の外郭を形成するものである。本体部1は、円柱体形状とされ、作業員が片手で持つことができる程度の大きさとされている。本体部1の外周面には、例えば作業者が手で持つためのグリップが設けられている。本体部1は、長手方向の一端側が先端部とされ、該先端部には長手方向に延在する溝部10が形成されている。溝部10には、押圧部2と弾性部材3が収容されている。本体部1の先端部には、本体部1の先端面11となり、コンクリート表面200aに当接させる鍔部5が、溝部10の周囲に設けられている。本体部1の長手方向の他端側には、測定機構4が設けられている。なお、本体部1の形状は、図示した円柱体形状に限定されず、例えば角柱体形状でもよいし、その他の形状でもよい。
【0014】
押圧部2は、溝部10の内部に収容され、溝部10から押圧面20が突き出してコンクリート表面200aに押圧するものである。押圧部2は、打設した初期のコンクリートよりも硬い棒状部材で構成され、本体部1の溝部10内を移動自在に収容されている。押圧部2は、一例として鉄又はプラスチック等である。また、押圧部2は、直径が1cm程度である。押圧部2の直径を1.0[cm]程度とすることで、コンクリート表面200aに押圧させた際に、粗骨材に当たる可能性が低く安定した測定値が得られるからである。なお、押圧部2の直径は、1.0[cm]~1.2[cm]の範囲であればよい。
【0015】
押圧面20は、押圧部2の先端面を形成するものである。押圧面20は、図1に示すように、半球形状とされている。なお、押圧面20は、半球形状であることが好ましいが、例えば図2(b)に示す平面形状、図2(c)に示す円錐形状、又はその他の形状でもよい。
【0016】
押圧面20は、コンクリート表面200aに当接していない通常の状態において、本体部1の溝部10から1.0[cm]突き出している。押圧面20を1.0[cm]ストロークさせるのに必要な押圧力は1.0[kg/cm]とする。なお、押圧面20は、コンクリート表面200aに当接していない状態において、溝部10から0.5~2.0[cm]突き出すように構成してもよい。コンクリート表面200aから0.5~2.0[cm]の深さであれば、押圧面20がコンクリートの粗骨材に当たることが少なく、安定した押圧力を測定できる。但し、押圧面20の突出量が1.0[cm]を超えるとコンクリートの粗骨材に当たるおそれが高くなる。また、押圧面20の突出量が1.0[cm]未満であると十分な押圧力を測定できなくなるおそれがある。そのため、押圧面20は、コンクリート表面200aに当接していない通常の状態において、本体部1の溝部10から1.0[cm]突き出す構成とすることが好ましい。
【0017】
図3は、実施の形態に係るコンクリート表面200aの強度測定装置100であって、打設後の初期段階にあるコンクリート表面200aに押圧面20を押圧させた状態を示した説明図である。図3では、例えばコンクリート200を打設してから1時間程度が経過し、コンクリート表面200aが硬化し始めてきた状態であり、押圧力が0.3[kg/cm]程度である。この場合、押圧部2が本体部1の溝部10の内部に押し込まれる押込量は、0.3[cm]程度である。
【0018】
図4は、実施の形態に係るコンクリート表面200aの強度測定装置100であって、ほぼ硬化した状態のコンクリート表面200aに押圧面20を押圧させた状態を示した説明図である。図4では、例えばコンクリート200を打設してから4時間以上経過し、コンクリート表面200aがほぼ硬化した状態であり、押圧力が1.0[kg/cm]である。この場合、押圧面20が溝部10の内部に完全に収容されているため、押圧部2が本体部1の溝部10の内部に押し込まれる押込量は1.0[cm]となる。
【0019】
弾性部材3は、図1に示すように、溝部10の溝底に設けられており、押圧部2をコンクリート表面200aに向かって付勢するものである。弾性部材3は、一例としてコイルバネである。なお、弾性部材3は、板バネ、空気バネ又はゴム材等、押圧部2を付勢することができれば、他の形態でもよい。
【0020】
測定機構4は、図1に示すように、コンクリート表面200aに当接させた押圧部2の押圧力を測定するものである。測定機構4は、一例としてダイヤルゲージ式である。測定機構4は、本体部1に内蔵され、コンクリート表面200aに当接させた押圧部2が弾性部材3と連動することで測定値を得る測定部40と、本体部1の外面に設けられ、測定部40で測定した数値を表示する表示部41と、を有している。なお、表示部41は、デジタル式でもよい。また、測定機構4は、ひずみ等を測定できる装置に接続してもよい。
【0021】
図5は、図2に示した半球形状の押圧面(a)、平面形状の押圧面(b)、円錐形状の押圧面(c)を、打設したコンクリート表面200aに押圧させて、その押圧力を測定した結果をそれぞれ示したグラフである。横軸は、時刻をしている。縦軸は、押圧力[kg/cm]を示している。図2に示すように、半球形状の押圧面(a)は、直径Dが12mm、溝部10からの突出量Hが10mmである。平面形状の押圧面(b)は、直径Dが5mm、溝部10からの突出量Hが10mmである。円錐形状の押圧面(c)は、基部の直径Dが12mm、溝部10からの突出量Hが10mm程度である。各押圧面(a)~(c)を1.0[cm]ストロークさせるのに必要な押圧力は1.0[kg/cm]とする。
【0022】
図5に示すように、半球形状の押圧面(a)は、コンクリートを打設してから早期の段階で、コンクリート表面200aの強度を正確に測定できた。一方、平面形状の押圧面(b)及び円錐形状の押圧面(c)では、半球形状の押圧面(a)に比べて、コンクリートを打設してから、ある程度硬化が進むまで、コンクリート表面200aの強度を正確に測定できなかった。そして、半球形状の押圧面(a)と平面形状の押圧面(b)では、時間が経過してコンクリート表面200aの硬化が進み、最終的に押圧力が1.0[kg/cm]となるまで測定することができた。一方、円錐形状の押圧面(c)では、コンクリート表面200aが硬化するにつれて、他の押圧面(a)及び(b)と比較して、コンクリート表面200aの強度を正確に測定できなくなった。そして、円錐形状の押圧面(c)では、押圧力の測定の限界である1.0[kg/cm]に達することができなかった。以上のことから、図5に示すグラフによれば、半球形状の押圧面(a)は、平面形状の押圧面(b)及び円錐形状の押圧面(c)に比べて、コンクリート表面200aの強度を測定する上で有効であることがわかった。
【0023】
図6は、押圧面20の突出量と押圧力の大きさとの関係がコンクリート表面200aの強度の測定に及ぼす影響を示したグラフである。押圧面20の突出量とは、本体部1の溝部10から突き出している長さをいう。横軸は、コンクリートを打設してから硬化するまでの時刻を30分刻みで示している。縦軸は、本実施の形態の強度測定装置100による押圧力[kg/cm]と、プロクター貫入試験の貫入抵抗力[N/mm]と、N式貫入試験の貫入量[cm]、ブリーディング量[cm/cm]をそれぞれ示している。図6に示すグラフでは、11時10分頃にコンクリートを打設している。
【0024】
図6に示した(a)は、押圧面20の突出量を1.0[cm]、押圧面20を1.0[cm]ストロークさせたときの押圧力を1.0[kg]とし、コンクリート表面200aの強度を測定した結果を示している。押圧面20は、図2(a)に示す半球形状である。図6に示した○が測定値である。(a)の場合、コンクリートを打設してから早期の段階で、コンクリート表面200aの強度を測定できることがわかる。そして、押圧力が時間の経過に比例して上昇しており、コンクリート表面200aの強度を正確に測定できることがわかった。
【0025】
図6に示した(b)は、押圧面20の突出量を2.0[cm]、押圧面20を2.0[cm]ストロークさせたときの押圧力を1.0[kg]とし、コンクリート表面200aの強度を測定した結果を示している。押圧面20は、図2(a)に示す半球形状である。図6に示した△が測定値である。(b)の場合、コンクリートを打設してから早期の段階で、コンクリート表面200aの強度を測定することができるものの、打設してから3時間後の時刻13:30以降、測定を行うことができなくなった。つまり、(b)の場合では、早期に測定限界に到達することがわかった。
【0026】
図6に示した(c)は、押圧面20の突出量を1.0[cm]、押圧面20を1.0[cm]ストロークさせたときの押圧力を5.0[kg]とし、コンクリート表面200aの強度を測定した結果を示している。押圧面20は、図2(a)に示す半球形状である。図6に示した◇が測定値である。(c)の場合、コンクリートを打設してから、かなり時間が経過し、コンクリートの硬化がある程度進行した後でなければ、コンクリート表面200aの強度を測定することができなかった。しかも、測定値のばらつきが大きく、コンクリート表面200aの強度を正確に測定することができなかった。
【0027】
なお、その他、参考値として、(d)はプロクター貫入試験による測定値、(e)はN式貫入試験による測定値、(f)はブリーディング量をそれぞれ示している。
【0028】
以上のことから、押圧面20の突出量と押圧力の大きさとの関係は、図6の(a)に示すように、押圧面20の突出量を1.0[cm]、押圧面20を1.0[cm]ストロークさせたときの押圧力を1.0[kg]とすることが、コンクリート表面200aの強度を測定するうえで有効であることがわかった。
【0029】
次に、本実施の形態に係るコンクリート表面200aの強度測定方法について説明する。コンクリートの床施工では、打設したコンクリートの硬化の初期段階で、鏝又はトロウェルと呼ばれるコンクリート表面仕上げ装置を用いて、コンクリート表面200aを平坦に仕上げる。このコンクリート表面200aの仕上げのタイミングは、非常に重要である。打設したコンクリートの硬化が進んだ状態で、コンクリート表面200aの仕上げ作業を行うと、コンクリート表面200aに亀裂又は凹凸が生じて、品質の悪い床となる。
【0030】
打設したコンクリートの表面の仕上げ時期については、床仕上げ職人によって長年培われた勘で行われてきた。しかしながら、床仕上げ職人の勘に頼ることができない現場等においては、コンクリート表面200aの仕上げ時期を見誤り、十分な表面仕上げができないおそれがある。そのため、床仕上げ職人の勘に頼ることなく、良好なコンクリート表面200aの仕上げを行えることが望まれている。
【0031】
そこで、本実施の形態に係るコンクリート表面200aの強度測定方法では、強度測定装置100の本体部1の先端面11をコンクリート表面200aに当接させた状態で、押圧面20をコンクリート表面200aに押圧し、測定した押圧力の数値に基づいて、コンクリート表面200aの仕上げ時期を決定する。
【0032】
具体的には、作業者は、図1に示すように、コンクリート表面200aに対して強度測定装置100の押圧部2が鉛直となるように構え、図3に示すように、本体部1の先端面11である鍔部5の端面をコンクリート表面200aに当接するところまで押し当て、押圧面20をコンクリート表面200aに押し付ける。鍔部5の端面をコンクリート表面200aに当接させることにより、作業者によるコンクリート表面200aへの押圧部2の押し付け方の影響又は強度測定装置100の自重の影響を受けることなく、安定した測定値が得られる。
【0033】
そして、押圧部2がコンクリート表面200aにどの程度押し込まれるかを、測定機構4で測定する。そして、強度測定装置100でコンクリート表面200aの強度を複数回測定し、そのうち数値が高い上位の値を除く残りの値の平均値で評価することとする。例えば、強度測定装置100でコンクリート表面200aの強度を9回測定し、そのうち最も数値が高い3つの値を除く6つの値の平均値で評価する。これは、コンクリートの状態によって、測定値にばらつきが生じ、複数回測定したうち、コンクリート中の骨材の影響等により、高い測定値が含まれてしまう場合があるからである。コンクリート表面200aの強度を複数回測定し、そのうち数値が高い上位の値を除く残りの値の平均値で評価することにより、コンクリートの状態に関わらず、安定した測定値を得ることができる。
【0034】
なお、作業者によるコンクリート表面200aへの押圧部2の押し付け方の影響又は強度測定装置100の自重の影響等により、測定値に影響がでなければ、必ずしも鍔部5の端面をコンクリート表面200aに当接させて測定する必要はない。
【0035】
次に、本実施の形態に係るコンクリート表面200aの強度測定方法によって測定した結果と、プロクター貫入試験及びN式貫入試験によって測定した結果と、を図7に基づいて説明する。図7は、コンクリートを打設してから硬化するまでの時刻と、各試験方法による測定値との関係を示したグラフである。横軸は、コンクリートを打設してから硬化するまでの時刻を1時間刻みで示している。縦軸は、本実施の形態の強度測定方法による押圧力[kg/cm]と、プロクター貫入試験の貫入抵抗力[N/mm]と、N式貫入試験の貫入量[cm]をそれぞれ示している。
【0036】
図7に示すグラフでは、11時10分頃にコンクリートを打設し、本実施の形態に係る強度測定方法(A)、プロクター貫入試験(B)、及びN式貫入試験(C)による測定値を時刻ごとに示している。
【0037】
コンクリート表面200aの仕上げ時期は、コンクリートを打設してから0.5時間~4時間の間で測定を行い、コンクリート表面200aが硬化したタイミングで判断する。本実施の形態に係る強度測定方法(A)では、コンクリートを打設してから1時間が経過した12時10分に押圧力が0.3[kg/cm]と測定された。そして、コンクリートを打設してから1時間45分が経過した12時55分に押圧力が0.7[kg/cm]と測定された。つまり、コンクリートを打設してから1時間~2時間の間で、コンクリート表面200aがある程度硬化していることが確認できた。そのため、コンクリートを打設してから1時間~2時間の間が、コンクリート表面200aの仕上げ時期であると判断できる。また、本実施の形態に係る強度測定方法(A)では、コンクリートを打設してから4時間20分が経過した15時30分に、押圧力が1.0[kg/cm]と測定された。つまり、コンクリートを打設してから4時間以上が経過すると、コンクリート表面200aの硬化がほぼ進んだ状態であることがわかる。
【0038】
一方、プロクター式貫入試験(B)では、コンクリートを打設してから1時間~2時間が経過した時点において、コンクリート表面200aの貫入抵抗値[N/mm]が0と測定された。つまり、プロクター式貫入試験(B)では、コンクリート表面200aの仕上げ時期になっているにも関わらず、コンクリート表面200aの状態を正確に測定できていない。そして、プロクター式貫入試験(B)では、コンクリートを打設してから4時間20分が経過した15時30分に貫入抵抗値が0.2[N/mm]と測定された。この時点では、コンクリート表面200aの硬化がほぼ進んだ状態であり、コンクリート表面200aの仕上げ作業を行うことはできない。
【0039】
また、N式貫入試験(C)では、コンクリートを打設してから1時間~2時間が経過した時点において、突き棒の貫入長さが15~16[cm]と測定された。つまり、N式貫入試験(C)では、コンクリート表面200aの仕上げ時期になっているにも関わらず、コンクリート表面200aの状態を正確に測定できていない。そして、N式貫入試験(C)では、コンクリートを打設してから4時間20分が経過した15時30分に突き棒の貫入長さが1.0[cm]と測定された。この時点では、コンクリート表面200aの硬化がほぼ進んだ状態であり、コンクリート表面200aの仕上げ作業を行うことはできない。
【0040】
つまり、図7に示すグラフによれば、本実施の形態に係る強度測定方法(A)は、プロクター式貫入試験(B)及びN式貫入試験(C)と比べて、コンクリートを打設してから早期にコンクリート表面200aの硬化性状を正確に測定することができるので、コンクリート表面200aの正確な仕上げ時期を決定することができることがわかった。一方、プロクター式貫入試験(B)及びN式貫入試験(C)では、コンクリートを打設してから早期にコンクリート表面200aの硬化性状を正確に測定することができないので、コンクリート表面200aの仕上げ時期を正確に決定することができないことがわかった。
【0041】
以上のように、本実施の形態に係るコンクリート表面200aの強度測定装置100は、先端部に溝部10を有する本体部1と、溝部10の内部に収容され、溝部10から押圧面20が突き出してコンクリート表面200aに押圧する押圧部2と、溝部10の内部に収容され、押圧部2をコンクリート表面200aに向かって付勢する弾性部材3と、コンクリート表面200aに押圧させた押圧部2の押圧力を測定する測定機構4と、を有している。また、本実施の形態に係るコンクリート表面200aの強度測定方法は、強度測定装置100の本体部1の先端面11をコンクリート表面200aに当接させた状態で、押圧面20をコンクリート表面200aに押圧し、測定した押圧力の数値に基づいて、コンクリート表面200aの仕上げ時期を決定する。よって、打設したコンクリートの表面仕上げ時期を、床仕上げ職人の勘に頼ることなく、物理的数値を計測して決定することができる。また、打設したコンクリートが硬化し始める時期を正確に捉えることができるので、コンクリート表面200aの適切な仕上げが可能となる。
【0042】
以上、実施の形態に基づいてコンクリート表面200aの強度測定装置100及びコンクリート表面200aの強度測定方法を説明したが、コンクリート表面200aの強度測定装置100及びコンクリート表面200aの強度測定方法は上述した実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば上記した強度測定装置100の構成は、一例であって、他の構成要素を含んでもよい。また、本体部1は、必ずしも先端部に鍔部5を設ける必要はなく、鍔部5を省略してもよい。要するに、コンクリート表面200aの強度測定装置100及びコンクリート表面200aの強度測定方法は、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更及び応用のバリエーションの範囲を含むものである。
【符号の説明】
【0043】
1 本体部、2 押圧部、3 弾性部材、4 測定機構、5 鍔部、10 溝部、11 先端面、20 押圧面、40 測定部、41 表示部、100 強度測定装置、200 コンクリート、200a コンクリート表面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7