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  • 特許-熱交換器用タンクのコアプレート 図1
  • 特許-熱交換器用タンクのコアプレート 図2
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  • 特許-熱交換器用タンクのコアプレート 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】熱交換器用タンクのコアプレート
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/16 20060101AFI20240628BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
F28F9/16
F28F9/02 G
F28F9/02 301B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021514252
(86)(22)【出願日】2020-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2020016983
(87)【国際公開番号】W WO2020213738
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2019076834
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】信川 英一
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-170887(JP,U)
【文献】実開平03-046776(JP,U)
【文献】特開2017-075741(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0187077(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02 - 9/18
F28D 1/053
F28F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面の対向側が開口する細長いタンク本体(1)と、その開口を閉塞するコアプレート(2)と、により熱交換器のタンクを形成し、
そのコアプレート(2)には、その幅方向に長軸(3a)を位置する偏平孔(3)が、互いに平行に、定間隔に多数並列され、各偏平孔(3)の孔縁部にタンクの内面側に突出するバーリング加工(6)が施され、各偏平孔(3)に偏平チューブ(4)の端部が挿通され、その挿通部がろう付される熱交換器のコアプレート(2)において、
前記コアプレート(2)は、隣合う偏平孔(3)の中間位置で、偏平孔(3)に平行に且つ前記偏平孔(3)より長く、コアプレート(2)の外面側に突出する連続したリブ(5)を有し、
長軸(3a)に平行なリブ(5)の縦断面を、偏平チューブ(4)の幅方向と直交する方向から見た場合、偏平チューブ(4)の幅方向の両端の内側において、前記縦断面の稜線の延在方向の中間部が両端部に対して前記タンクの内面側に山形に突出している、
ことを特徴とする熱交換器用タンクのコアプレート。
【請求項2】
前記リブ(5)は、前記偏平孔(3)の長手方向の中間位置で、前記バーリング加工(6)の根元に対して浅く(t1)形成された中間リブ(5a)と、両端部の位置で深く(t2)形成された端部リブ(5b)と、を有する請求項1記載の熱交換器用タンクのコアプレート。
【請求項3】
前記リブ(5)は、前記偏平孔(3)の長手方向の中間位置で、その両側の裾野の幅が狭く(d1)形成された幅狭部(5c)と、両端部の位置で、その両側の裾野の幅が広く(d2)形成された幅広部(5d)と、を有する請求項1記載の熱交換器用タンクのコアプレート。
【請求項4】
前記リブ(5)は、前記偏平孔(3)の長手方向の中間位置で、前記バーリング加工(6)の根元に対して浅く(t1)形成された中間リブ(5a)と、両端部の位置で深く(t2)形成された端部リブ(5b)と、を有し且つ、
前記リブ(5)は、前記偏平孔(3)の長手方向の中間位置で、その両側の裾野の幅が狭く(d1)形成された幅狭部(5c)と、両端部の位置で、その両側の裾野の幅が広く(d2)形成された幅広部(5d)と、を有する請求項1記載の熱交換器用タンクのコアプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器用タンクのコアプレートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの熱交換器用タンクは、一端が開口したタンク本体とその開口を閉塞するコアプレートとの組み合わせによりなる。そのコアプレートは、従来、図4に示す如く、コアプレート2aの周縁に形成された環状溝7aの内側に、多数の偏平孔3aが並列され、それに偏平チューブ4aの端部が挿通され、その挿通部がろう付固定されたものである。そして各偏平孔3a間には主に、偏平チューブに生じる熱応力、特にコアプレートと偏平チューブとの接合部において偏平チューブの幅方向の両端部に集中する熱応力を低減するためのリブ9が形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図4に示すものは、コアプレート2aのリブ9が同一深さに直線的に形成されたものであり、それにより、コアプレート2aと偏平チューブ4aとの接合部における偏平チューブ4aの幅方向の両端部への熱応力の集中は緩和されるものの、偏平チューブ4aの幅方向の全域に渡って偏平チューブ4aの変形がより強く拘束されるので、その全域に渡って偏平チューブ4aに高い応力が生じる欠点があった。
そこで、本発明は偏平チューブに生じる熱応力をより低減することができる熱交換器用タンクのコアプレートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の本発明は、底面の対向側が開口する細長いタンク本体1と、その開口を閉塞するコアプレート2と、により熱交換器のタンクを形成し、
そのコアプレート2には、その幅方向に長軸3aを位置する偏平孔3が、互いに平行に、定間隔に多数並列され、各偏平孔3の孔縁部にタンクの内面側に突出するバーリング加工6が施され、各偏平孔3に偏平チューブ4の端部が挿通され、その挿通部がろう付される熱交換器のコアプレート2において、
前記コアプレート2は、隣合う偏平孔3の中間位置で、偏平孔3に平行に且つ前記偏平孔3より長く、コアプレート2の外面側に突出する連続したリブ5を有し、
前記リブ5は、前記偏平孔3の長手方向の中間位置で、前記バーリング加工6の根元に対して浅く(t1)形成された中間リブ5aと、両端部の位置で深く(t2)形成された端部リブ5bと、を有することを特徴とする熱交換器用タンクのコアプレートである。
請求項2に記載の本発明は、底面の対向側が開口する細長いタンク本体1と、その開口を閉塞するコアプレート2と、により熱交換器のタンクを形成し、
そのコアプレート2には、その幅方向に長軸3aを位置する偏平孔3が、互いに平行に、定間隔に多数並列され、各偏平孔3の孔縁部にタンクの内面側に突出するバーリング加工6が施され、各偏平孔3に偏平チューブ4の端部が挿通され、その挿通部がろう付される熱交換器のコアプレート2において、
前記コアプレート2は、隣合う偏平孔3の中間位置で、偏平孔3に平行に且つ前記偏平孔3より長く、コアプレート2の外面側に突出する連続したリブ5を有し、
前記リブ5は、前記偏平孔3の長手方向の中間位置で、その両側の裾野の幅が狭く(d1)形成された幅狭部5cと、両端部の位置で、その両側の裾野の幅が広く(d2)形成された幅広部5dと、を有する熱交換器用タンクのコアプレートである。
請求項3に記載の本発明は、底面の対向側が開口する細長いタンク本体1と、その開口を閉塞するコアプレート2と、により熱交換器のタンクを形成し、
そのコアプレート2には、その幅方向に長軸3aを位置する偏平孔3が、互いに平行に、定間隔に多数並列され、各偏平孔3の孔縁部にタンクの内面側に突出するバーリング加工6が施され、各偏平孔3に偏平チューブ4の端部が挿通され、その挿通部がろう付される熱交換器のコアプレート2において、
前記コアプレート2は、隣合う偏平孔3の中間位置で、偏平孔3に平行に且つ前記偏平孔3より長く、コアプレート2の外面側に突出する連続したリブ5を有し、
前記リブ5は、前記偏平孔3の長手方向の中間位置で、前記バーリング加工6の根元に対して浅く(t1)形成された中間リブ5aと、両端部の位置で深く(t2)形成された端部リブ5bと、を有し且つ、
前記リブ5は、前記偏平孔3の長手方向の中間位置で、その両側の裾野の幅が狭く(d1)形成された幅狭部5cと、両端部の位置で、その両側の裾野の幅が広く(d2)形成された幅広部5dと、を有する熱交換器用タンクのコアプレートである。
請求項4に記載の本発明は、前記リブ5は、前記長軸3aに平行な断面において、その稜線の中間部が、両端部に対して前記内面側に山形に突出する請求項1又は請求項3のいずれかに記載の熱交換器用タンクのコアプレートである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の発明のコアプレート2は、そのリブ5の両端部が偏平孔3より長く、コアプレート2の外面側に連続して突出する。そのリブ5は長手方向の中間位置で、浅くなる中間リブ5aと、両端部の位置で深く形成された端部リブ5bと、を有するものである。
このように、浅く形成された中間リブ5aと深く形成された端部リブ5bとを有することにより、両端部のリブ5bにおいては十分な剛性が確保されるとともに、中間部分のリブ5aの剛性が過剰となることは抑制されるので、コアプレート2と偏平チューブ4との接合部における、偏平チューブ4の幅方向の両端部の応力集中の緩和と、偏平チューブ4の幅方向の全域に渡る応力上昇の抑制とを両立させることができる。
請求項2に記載の発明のコアプレート2は、そのリブ5は、偏平孔3の長手方向の中間位置で、その両側の裾野の幅が狭く(d1)形成された幅狭部5cと、両端部の位置で、その両側の裾野の幅が広く(d2)形成された幅広部5dと、を有するものである。
このように、中間位置に幅狭部5cを有し、両端部の位置に幅広部5dを有することにより、両端部の位置の幅広部5dにおいては十分な剛性が確保されるとともに、中間位置の幅狭部5cの剛性が過剰となることは抑制されるので、コアプレート2と偏平チューブ4との接合部における、偏平チューブ4の幅方向の両端部の応力集中の緩和と、偏平チューブ4の幅方向の全域に渡る応力上昇の抑制とを両立させることができる。
請求項3に記載の発明のコアプレート2は、請求項1に記載の発明の特徴と請求項2に記載の発明の特徴とを併せ持つものである。
これにより、上述の請求項1の発明の効果と請求項2の発明の効果とが合わさり、よりいっそう、コアプレート2と偏平チューブ4との接合部における、偏平チューブ4の幅方向の両端部の応力集中の緩和と、偏平チューブ4の幅方向の全域に渡る応力上昇の抑制とを両立させることができる。
請求項4に記載の発明のコアプレート2は、リブ5の縦断面において、リブ5の稜線の中間部が、両端部に対して前記内面側に山形に突出するように形成されたものである。
これにより、その中間部におけるコアプレート2のタンク内圧に対する耐圧性が向上するので、両端部のリブについては十分な剛性が確保された上で、中間部のリブについては、その剛性が過剰となることが抑制されるとともに、その中間部のリブが浅くとも高い耐圧性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1は本発明のコアプレートを有する熱交換器用タンクの要部正面図。
図2(A)は図1のII-II矢視要部断面図、(B)はそのコアプレート2の図2(C)のB-B矢視断面図、(C)は同コアプレート2の要部平面図。
図3(A)はコアプレートの図3(C)のA-A矢視断面図、(B)は図3(C)のB-B矢視断面図、(C)は同平面図。
図4は従来型コアプレートの(A)は平面図、(B)は(A)のB-B線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1は、本発明のコアプレートを有する熱交換器用タンクの要部正面図であり、図2(A)は、図1のII-II矢視要部断面図である。
そして、図2(B)は、そのコアプレート2の図2(C)のB-B矢視断面図であり、図2(C)は、同コアプレート2の要部平面図である。
この熱交換器用タンクは、一例として、エンジン冷却水のラジエータとして用いることができるものである。そして、図1に示すように、上下に離間して一対のタンク(下側を省略)が配置され、それらの間に多数の偏平チューブ4及びコルゲートフィンが並列されたコアが配置されている。
各タンクは、タンクの底面の対向側が開口された細長いタンク本体1と、その開口を閉塞するコアプレート2との組立体からなる。この例では、タンク本体1の開口端の小フランジ部が、シール10を介してコアプレート2の環状溝に嵌着され、コアプレート2の縁部に設けた爪部8がカシメられ、タンクが形成される。
コアプレート2の平面は、図2(B)及び図2(C)に示す如く、外周に環状溝7が形成されている。コアプレート2の幅方向に長軸3aを位置する多数の偏平孔3が、コアプレート2の長手方向に向けて定間隔に並列して形成され、その縁部がタンクの内面側に突出するようにバーリング加工6が施されている。各タンクのそれぞれの偏平孔3には、偏平チューブ4の両端部が挿通され、その挿通部がろう付固定されている。
この実施例のコアプレート2では、各偏平孔3間には、リブ5が一直線上に配置されている。そのリブ5は、コアプレート2の隣合う偏平孔3の中間位置で、偏平孔3に平行に且つ、偏平孔3より長くコアプレート2の環状溝に達しており、また、コアプレート2の外面側に突出し、連続している。また、そのリブ5は、偏平孔3の長手方向の中間位置で、バーリング加工6の根元に対して浅いt1に形成された中間リブ5aが形成され、両端部で中間リブ5aよりも深いt2に形成された端部リブ5bが形成されている(図2(B)を参照)。
さらに、この例では、図3に示す如く、リブ5の両側に裾部がリブ5に沿って形成されている。その裾部は、偏平孔3の長手方向の中間位置では、図3(B)に示すように、幅が狭いd1に形成された幅狭部5cが形成され、偏平孔3の両端位置では、図3(A)に示すように、幅が広いd2に形成された幅広部5dが形成されている。
ここに裾部の幅狭部5cと幅広部5dの関係は、幅狭部5cの幅<幅広部5dの幅、となる。
このようなコアプレート2とタンク本体1とで構成するタンク内に、エンジンの冷却水が導かれるが、エンジンの起動停止に伴う温度変化により、偏平チューブ4が伸長し或いは収縮する。それに伴い、偏平チューブ4とコアプレート2との間に熱応力が生じる。本発明のコアプレート2は、そのリブ5の上記構成によって耐圧性を保持しつつ、偏平チューブ4の伸縮に対応して生じる応力を吸収する。
この実施例のコアプレート2の場合、浅く形成された中間リブ5aと深く形成された端部リブ5bとを有することにより、両端部のリブ5bにおいては十分な剛性が確保されるとともに、中間部分のリブ5aの剛性が過剰となることは抑制される。それと共に、偏平孔3の長手方向の中間位置に幅狭部5cを有し、両端部の位置に幅広部5dを有することにより、両端部の位置の幅広部5dにおいては十分な剛性が確保されるとともに、中間位置の幅狭部5cの剛性が過剰となることは抑制される。
つまり、リブ5の中間リブ5aと端部リブ5bとの関係及び、幅狭部5cと幅広部5dとの関係の相乗効果により、コアプレート2と偏平チューブ4との接合部における、偏平チューブ4の幅方向の両端部の応力集中の緩和と、偏平チューブ4の幅方向の全域に渡る応力上昇の抑制とを両立させることができる。
他の実施例
上記実施例は、中間リブ5aと端部リブ5bが形成されるとともに、幅狭部5cと幅広部5dが形成されたコアプレート2を例示した。
この中間リブ5aと端部リブ5bの形態、幅狭部5cと幅広部5dの形態は、それぞれ独立してコアプレート2に採用することができる。つまり、図1に記載された中間リブ5aと端部リブ5bのみが形成されたコアプレート2であっても良い。また、図2に記載された幅狭部5cと幅広部5dのみが形成されたコアプレート2であっても良い。
さらに、中間リブ5aと端部リブ5bが形成されるコアプレート2の形態については、図2(B)に記載のように、そのリブ5が、偏平孔3の長軸3aに平行な断面において、その稜線の中間部が、両端部に対してタンクの内面側に山形に突出するように形成することができる。
これにより、その中間部におけるコアプレート2のタンク内圧に対する耐圧性が向上するので、その中間部のリブが浅くとも高い耐圧性が確保される。
【符号の説明】
【0008】
1 タンク本体
2 コアプレート
2a コアプレート
3 偏平孔
3a 長軸
4 偏平チューブ
4a 偏平チューブ
5 リブ
5a 中間リブ
5b 端部リブ
5c 幅狭部
5d 幅広部
6 バーリング加工
7 環状溝
7a 環状溝
8 爪部
9 リブ
10 シール
t1 浅く
t2 深く
d1 狭く
d2 広く
図1
図2
図3
図4