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特許7511560煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒、その製造方法、およびその使用
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  • 特許-煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒、その製造方法、およびその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒、その製造方法、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/22 20060101AFI20240628BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20240628BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20240628BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B01J27/22 A ZAB
B01D53/86 222
B01J37/02 101D
B01J37/02 301C
B01J37/08
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2021535717
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 CN2019125883
(87)【国際公開番号】W WO2020125609
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】201811565816.3
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】宋海涛
(72)【発明者】
【氏名】姜秋橋
(72)【発明者】
【氏名】田輝平
(72)【発明者】
【氏名】林偉
(72)【発明者】
【氏名】厳加松
(72)【発明者】
【氏名】王鵬
(72)【発明者】
【氏名】張久順
(72)【発明者】
【氏名】達志堅
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-206500(JP,A)
【文献】特開平08-323205(JP,A)
【文献】特開平05-049931(JP,A)
【文献】特開平05-154384(JP,A)
【文献】特開平08-057318(JP,A)
【文献】特表2006-503698(JP,A)
【文献】特表2008-538224(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101422736(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105148927(CN,A)
【文献】特開2010-184238(JP,A)
【文献】特表2007-532823(JP,A)
【文献】特表2020-525278(JP,A)
【文献】特表平11-508821(JP,A)
【文献】特開2012-050980(JP,A)
【文献】"自動車排ガス浄化用コーディエライトハニカム(1976年~現在)",セラミックス,2007年,Vol.42, No.9,p.680-682
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/73
B01D 53/86 - 53/90
B01D 53/94 - 53/96
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造化モノリス担体、ならびに構造化モノリス担体の内表面および/または外表面上に配置された活性成分のコーティングを含み、触媒の総重量に基づいて、前記活性成分のコーティングは、1~50重量%の量で存在し、前記活性成分のコーティングは、活性金属成分および基質を含み、前記活性金属成分は、第1金属元素、第2金属元素、第3金属元素、および第4金属元素を含み、前記第1金属元素は、第VIII族の非貴金属元素からなる群から選択され、前記第1金属元素は、FeおよびCoを含み、FeおよびCoの重量比は、酸化物基準で1:(0.05~20)であり、前記第2金属元素は、第IA族および/または第IIA族の金属元素からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第3金属元素は、第IB族から第VIIB族の非貴金属元素からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第4金属元素は、貴金属元素からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記基質は、アルミナであり、前記触媒中のFeの少なくとも一部は、炭化鉄の形態で存在し、組成物中のCoの少なくとも一部は、元素コバルトの形態で存在する、煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒。
【請求項2】
前記触媒の総重量に基づいて、前記活性成分のコーティングは、10~50重量%、15~40重量%、20~35重量%、2~30重量%、5~25重量%、または7~20重量%の量で存在する、請求項1に記載の構造化モノリス触媒。
【請求項3】
前記活性成分のコーティングの総重量に基づいて、前記基質は、10~90重量%の量であり、酸化物基準で、前記第1金属元素は、0.5~50重量%の量であり、前記第2金属元素は、0.5~20重量%の量であり、前記第3金属元素は、0.5~20重量%の量であり、元素基準で、前記第4金属元素は、0.001~0.15重量%の量である、請求項1または2に記載の構造化モノリス触媒。
【請求項4】
前記活性成分のコーティングの総重量に基づいて、前記基質は、50~90重量%の量であり、酸化物基準で、前記第1金属元素は、3~30重量%の量であり、前記第2金属元素は、1~20重量%の量であり、前記第3金属元素は、1~10重量%の量であり、元素基準で、前記第4金属元素は、0.005~0.1重量%の量である、請求項3に記載の構造化モノリス触媒。
【請求項5】
前記活性成分のコーティングの総重量に基づいて、前記基質は、55~85重量%の量であり、酸化物基準で、前記第1金属元素は、5~25重量%の量であり、前記第2金属元素は、5~15重量%の量であり、前記第3金属元素は、2~8重量%の量であり、元素基準で、前記第4金属元素は、0.01~0.08重量%の量である、請求項3に記載の構造化モノリス触媒。
【請求項6】
酸化物基準で、FeとCoとの重量比は、1:(0.1~10)である、請求項1~5のいずれか1項に記載の構造化モノリス触媒。
【請求項7】
酸化物基準で、FeとCoとの重量比は、1:(0.3~3)である、請求項6に記載の構造化モノリス触媒。
【請求項8】
酸化物基準で、FeとCoとの重量比は、1:(0.5~2)である、請求項6に記載の構造化モノリス触媒。
【請求項9】
前記触媒のXRDパターンは、2θで42.6°、44.2°、および44.9°に回折ピークを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の構造化モノリス触媒。
【請求項10】
前記第2金属元素は、Na、K、Mg、およびCaからなる群から選択される少なくとも1つであり;
前記第3金属元素は、Cu、Zn、Ti、Zr、V、Cr、Mo、W、Mn、および希土類元素からなる群から選択される少なくとも1つであり;
前記第4金属元素は、Pt、Ir、Pd、Ru、およびRhからなる群から選択される少なくとも1つであり、請求項1~9のいずれか1項に記載の構造化モノリス触媒。
【請求項11】
前記第2金属元素は、Kおよび/またはMgであり;
前記第3金属元素は、Zr、V、W、Mn、Ce、およびLaからなる群から選択される少なくとも1つであり;
前記第4金属元素は、Ruである、請求項10に記載の構造化モノリス触媒。
【請求項12】
前記第2金属元素は、Mgであり;
前記第3金属元素は、Mnであり;
前記第4金属元素は、Ruである、請求項11に記載の構造化モノリス触媒。
【請求項13】
前記構造化モノリス担体は、両端が開放された平行チャネルを有するモノリス担体から選択される、請求項1~12のいずれか1項に記載の構造化モノリス触媒。
【請求項14】
前記構造化モノリス担体は、断面において20~900細孔/平方インチの細孔密度、および断面において20~80%の開口率を有する、請求項13に記載の構造化モノリス触媒。
【請求項15】
前記構造化モノリス担体は、コーディエライトハニカム担体、ムライトハニカム担体、ダイヤモンドハニカム担体、コランダムハニカム担体、ジルコニウムコランダムハニカム担体、石英ハニカム担体、ネフェリンハニカム担体、長石ハニカム担体、アルミナハニカム担体、および金属合金ハニカム担体からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項13に記載の構造化モノリス触媒。
【請求項16】
煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒を製造する方法であって、
第1スキームにおいて:
(1)基質源、第1金属元素の前駆体、第2金属元素の前駆体、第3金属元素の前駆体、第4金属元素の前駆体、および水を混合することによってスラリーを作製し、活性成分のコーティングスラリーを得る工程、および
(2)前記活性成分のコーティングスラリーで構造化モノリス担体をコーティングし、次いで、乾燥および第1仮焼に供して、前記構造化モノリス担体の内表面および/または外表面上に配置された活性成分のコーティングを得る工程、または
第2スキームにおいて
a)基質源、第1金属元素の前駆体、第2金属元素の前駆体、第3金属元素の前駆体、および水を混合することによってスラリーを作製し、第1スラリーを得る工程、
b)前記第1スラリーで構造化モノリス担体をコーティングし、次いで、乾燥および第2仮焼に供して、前記構造化モノリス担体の内表面および/または外表面上に活性成分の部分を含むコーティングを生成し、半完成触媒を得る工程、および
c)ステップb)で得られた半完成触媒を、第4金属元素の前駆体を含む溶液でコーティングし、次いで、乾燥および/または第3仮焼に供して、前記構造化モノリス担体の内表面および/または外表面上に配置された活性成分のコーティングを得る工程、
を含み、
前記第1金属元素は、第VIII族の非貴金属元素からなる群から選択され、前記第1金属元素は、FeおよびCoを含み、前記第2金属元素は、第IA族および/または第IIA族の金属元素からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第3金属元素は、第IB族から第VIIB族の非貴金属元素からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第4金属元素は、貴金属元素からなる群から選択される少なくとも1つであり、かつ、前記基質は、アルミナであり、
前記第1金属元素の前駆体は、得られた触媒が酸化物基準で、1:(0.05~20)の重量比でFeおよびCoを含むような量でFeの前駆体およびCoの前駆体を含み、
前記第1仮焼および前記第2仮焼は、400~1000℃の温度で、0.1~10時間、炭素含有雰囲気下で独立して行われる、方法。
【請求項17】
前記炭素含有雰囲気は、炭素元素含有ガスによって提供され;前記炭素元素含有ガスは、CO、メタン、およびエタンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記炭素含有雰囲気は、COであり、前記炭素含有雰囲気中のCOの体積濃度は、1~20%である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
得られた触媒において、触媒の総重量に基づいて、前記活性成分のコーティングは、10~50重量%の量で存在し、
得られた触媒において、前記活性成分のコーティングの総重量に基づいて、前記基質源は、10~90重量%の量であり、ならびに酸化物基準で、前記第1金属元素は、0.5~50重量%の量であり、前記第2金属元素は、0.5~20重量%の量であり、前記第3金属元素は、0.5~20重量%の量であり、および元素基準で、前記第4金属元素は、0.001~0.15重量%の量であるような量で、前記基質源、前記第1金属元素の前駆体、前記第2金属元素の前駆体、前記第3金属元素の前駆体、および前記第4金属元素の前駆体が用いられる、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
Feの前駆体およびCoの前駆体は、得られた触媒が酸化物基準で、1:(0.1~10)の重量比でFeおよびCoを含むような量である、請求項16~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記第2金属元素は、Na、K、Mg、およびCaからなる群から選択される少なくとも1つであり;
前記第3金属元素は、Cu、Zn、Ti、Zr、V、Cr、Mo、W、Mn、および希土類元素からなる群から選択される少なくとも1つであり;
前記第4金属元素は、Pt、Ir、Pd、Ru、およびRhからなる群から選択される少なくとも1つであり;
前記第1金属元素の前駆体、前記第2金属元素の前駆体、前記第3金属元素の前駆体、および前記第4金属元素の前駆体は、それぞれ、前記第1金属元素、前記第2金属元素、前記第3金属元素、および前記第4金属元素の水溶性塩から選択される、請求項16~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1スキームにおける前記基質の前駆体は、工程(2)における前記第1仮焼の条件下で前記基質を得ることができる材料であり;前記第2スキームにおける前記基質の前駆体は、工程(b)における前記第2仮焼および/または工程(c)における前記第3仮焼の条件下で前記基質を得ることができる材料である、請求項16~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記構造化モノリス担体は、コーディエライトハニカム担体、ムライトハニカム担体、ダイヤモンドハニカム担体、コランダムハニカム担体、ジルコニウムコランダムハニカム担体、石英ハニカム担体、ネフェリンハニカム担体、長石ハニカム担体、アルミナハニカム担体、および金属合金ハニカム担体からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
接触分解プロセスからの不完全再生煙道ガスの処理における、請求項1~15のいずれか1項に記載の、煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒の使用。
【請求項25】
不完全再生煙道ガスと触媒とを接触させる工程を含み、前記触媒は、請求項1~15のいずれか1項に記載の煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒である、不完全再生煙道ガスの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は一般に、接触分解の分野に関し、特に、煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒、その調製方法および使用、ならびに不完全再生煙道ガスを処理するための方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
原油価格の連続的な上昇は、製油所の加工コストを大幅に増加させる。その対応として、一方では製油所が低価格の劣った石油を購入することによってコストを削減するかもしれず、他方では重油を高度に処理することによって経済的利益を蓄積するかもしれない。接触分解は、製油所において重油を処理するための重要な手段であり、製油所において重要な役割を果たす。接触分解は、重油のバランスをとり、製油所でクリーンな燃料を生産するための主な方策であるだけでなく、製油所における省エネルギー・効率化の向上の鍵でもある。しかしながら、接触分解は、触媒の迅速な失活を伴う急速な接触反応系である。したがって、触媒再生のための解決策を見出すことは、接触分解の発展のための常に主要な課題である。
【0003】
流動接触分解(FCC)のプロセスでは、供給油と(再生された)触媒とをライザー中で迅速に接触させて接触分解反応を実施する。反応において生成されたコークスは、触媒上に堆積し、触媒を失活させる。生成されたコークスによって失活した触媒は、ストリッピングされ、次いで、再生塔に入り、そこで、底部から再生塔に入る再生のための空気または酸素富化空気と接触し、コークスを燃焼させることによって再生を実施する。再生された触媒は、反応器に循環して戻され、再び接触分解反応に用いられる。再生プロセスからの煙道ガス(以下、「再生煙道ガス」という)中の過剰酸素含有量、またはCOの酸化度に基づいて、接触分解装置は、完全燃焼モードで操作される再生を伴うもの、および不完全燃焼モードで操作される再生を伴うものに分け得る(以下、それぞれ、「完全再生接触分解装置」および「不完全再生接触分解装置」という)。
【0004】
完全燃焼モードで操作される再生において、コークスおよびコークス中の窒素含有化合物は、再生のために空気の作用のもとでCOおよびNを生成する。同時に、CO、NOxなどの汚染物質が生成される。プロモーターを使用することは、COおよびNOxの排出を制御するための重要な技術的手段である。
【0005】
煙道ガス(再生煙道ガスであり、再生塔オフガスまたは再生塔排出物とも呼ばれる)中のNOx排出を低減するためのプロモーターは一般に、NOx排出低減プロモーターまたはNOx低減プロモーターと呼ばれる。例えば、CN102371150Aは、接触分解ユニットからの再生煙道ガス中のNOx排出を低減するための非貴金属組成物を開示しており、この組成物は、0.65g/mL以下の仮比重を有し、酸化物として計算して、(1)50~99重量%の無機酸化物担体、(2)0.5~40重量%の、第IIA族、第IIB族、第IVB族、および第VIB族の非貴金属元素からなる群から選択される1つ以上、ならびに(3)0.5~30重量%の希土類元素を、前記組成物の重量に基づいて含む。FCCで使用される場合、前記組成物は、再生煙道ガス中のNOx排出を著しく減少させ得る。
【0006】
不完全燃焼モードで操作される再生において、再生塔の排出口での再生煙道ガスは、低含有量の過剰の酸素および高濃度のCO、ならびに、非常に低濃度のNOxを有しうるが、高濃度のNH、HCNなどの還元窒化物を有することができる。これらの還元された窒化物は、煙道ガスと共に下流に流れて、エネルギー回収のためのCOボイラーに入り、そこで、完全に酸化された場合、NOxが生成され;それらが完全に酸化されない場合、残りのNHなどは、容易に下流のスクラバー廃水中のアンモニア-窒素の基準を超えさせることができるか、または煙道ガス中のSOxと反応してアンモニウム塩沈殿物を生成し、これは、排熱ボイラーまたは他の煙道ガス後処理装置(SCRなど)中に塩析を引き起こすことができ、装置の長期操作に影響を及ぼすことがある。したがって、不完全燃焼モードで操作される再生煙道ガス(以下、「不完全再生煙道ガス」という)にプロモーターを使用して、NHなどの転化を触媒することにより、煙道ガス中のNOx排出を低減することができ、装置の操作時間を長くすることができる。
【0007】
米国特許第5021144号は、不完全再生FCC装置からの煙道ガス中のNH排出を低減するための方法を開示しており、当該方法では、希薄相床が後燃焼することを防ぐために必要とする最少量の2~3倍である過剰量で、CO燃焼プロモーターが再生塔に添加される。このような方法は、不完全再生FCC装置からの煙道ガス中のNH排出を低減し得るが、大量のCOが使用され、当該方法は、高エネルギー消費という欠点を有し、環境保全に有利ではない。
【0008】
米国特許第4755282号は、部分的または不完全再生FCC装置からの煙道ガス中のNH排出を低減するための方法を開示しており、当該方法では、10~40μmの粒径であるアンモニア分解触媒を再生塔に添加し、希釈相床中で一定濃度に維持して、NHをNおよび水に転化する。アンモニア分解触媒の活性成分は、無機酸化物担体上に分散された貴金属であってもよい。
【0009】
CN101024179Aは、(i)ゼオライトを実質的に含まない酸性金属酸化物、(ii)アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの混合物、および(iii)酸素貯蔵成分を含む、FCCプロセスで使用されるNOxを還元するための組成物を開示する。貴金属元素の含浸によって調製された組成物は、不完全再生接触分解装置からの煙道ガス中の気体還元窒素含有物質を転化し、それによって煙道ガス中のNOx排出を低減するために使用される。
【0010】
現在、不完全再生接触分解装置からの再生煙道ガス中のNHおよびNOx排出を制御するための、触媒の研究および使用に関する報告は、ほとんどない。不完全再生接触分解装置からの再生煙道ガスの組成物と、完全再生接触分解装置からの再生煙道ガスの組成物との間に著しい違いがあるため、完全再生接触分解装置に適した既存のプロモーターは、不完全再生接触分解装置に使用される場合に理想的な効果を有さない。上記文献に開示されたプロモーター組成物は、再生煙道ガス中のNHなどの還元窒化物の転化をある程度触媒し得るが、煙道ガス中のNHなどの還元窒化物の接触転化活性をさらに向上させて、NHなどからの塩析が装置の操作に及ぼす影響を低減する必要がある。したがって、不完全再生接触分解装置からの再生煙道ガス中の汚染物質排出を低減し、再生煙道ガス中のNOx排出を更に低減するのに適した触媒システムを開発することが求められている。
【0011】
〔発明の概要〕
従来技術の再生煙道ガス中の汚染物質排出を低減する際、特に不完全再生煙道ガス中の汚染物質排出を低減する際の、NHなどの還元窒化物の低接触転化活性の欠点を解決するために、本発明は、煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒、その製造方法および使用、ならびに不完全再生煙道ガスを処理する方法を提供する。本発明の煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒は、還元された窒化物に対して高い接触転化活性を有する。当該触媒は簡便な方法で得ることができる。当該触媒をFCCプロセスで使用すると、不完全再生煙道ガス中のNOx排出を効果的に低減し得る。
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様において、構造化モノリス担体、ならびに構造化モノリス担体の内表面および/または外表面上に配置された活性成分のコーティングを含み、触媒の総重量に基づいて、前記活性成分のコーティングは、約1~50重量%の量で存在し、前記活性成分のコーティングは、活性金属成分および基質を含み、前記活性金属成分は、第1金属元素、第2金属元素、第3金属元素、および第4金属元素を含み、前記第1金属元素は、第VIII族の非貴金属元素からなる群から選択され、前記第1金属元素は、FeおよびCoを含み、FeおよびCoの重量比は、酸化物基準で1:(0.05~20)であり、前記第2金属元素は、第IA族および/または第IIA族の金属元素からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第3金属元素は、第IB族から第VIIB族の非貴金属元素からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第4金属元素は、貴金属元素からなる群から選択される少なくとも1つである、煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒が提供される。好ましくは、触媒の総重量に基づいて、前記活性成分のコーティングは、約10~50重量%、約15~40重量%、約20~35重量%、約2~30重量%、約5~25重量%、または約7~20重量%の量で存在する。
【0013】
好ましくは、酸化物基準でFeとCoとの重量比率は、約1:(0.1~10)、好ましくは約1:(0.3~3)、さらに好ましくは約1:(0.5~2)、最も好ましくは約1:(0.6~1)である。
【0014】
本発明の第2の態様において、煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒を製造する方法であって:
第1スキームにおいて:
(1)基質源、第1金属元素の前駆体、第2金属元素の前駆体、第3金属元素の前駆体、第4金属元素の前駆体、および水を混合することによってスラリーを作製し、活性成分のコーティングスラリーを得る工程、および
(2)活性成分のコーティングスラリーで構造化モノリス担体をコーティングし、次いで、乾燥および第1仮焼に供して、構造化モノリス担体の内表面および/または外表面上に配置された活性成分のコーティングを得る工程、または
第2スキームにおいて
a)基質源、第1金属元素の前駆体、第2金属元素の前駆体、第3金属元素の前駆体、および水を混合することによってスラリーを作製し、第1スラリーを得る工程、
b)前記第1スラリーで構造化モノリス担体をコーティングし、次いで、乾燥および第2仮焼に供して、構造化モノリス担体の内表面および/または外表面上に活性成分の部分を含むコーティングを生成し、半完成触媒を得る工程、および
c)ステップb)で得られた半完成触媒を、第4金属元素の前駆体を含む溶液でコーティングし、次いで、乾燥および/または第3仮焼に供して、構造化モノリス担体の内表面および/または外表面上に配置された活性成分のコーティングを得る工程、を含み、
前記第1金属元素は、第VIII族の非貴金属元素からなる群から選択され、前記第1金属元素は、FeおよびCoを含み、前記第2金属元素は、第IA族および/または第IIA族の金属元素からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第3金属元素は、第IB族から第VIIB族の非貴金属元素からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第4金属元素は、貴金属元素からなる群から選択される少なくとも1つであり、および
前記第1金属元素の前駆体は、得られた触媒が酸化物基準で1:(0.05~20)の重量比のFeおよびCoを含むような量で、Feの前駆体およびCoの前駆体を含む、方法が提供される。
【0015】
本発明の第3の態様において、上記の方法によって製造された、煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒が提供される。
【0016】
本発明の第4の態様において、接触分解プロセスからの不完全再生煙道ガスの処理における、煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒の使用が提供される。
【0017】
本発明の第5の態様において、不完全再生煙道ガスを触媒と接触させる工程を含み、前記触媒は上述の本発明に係る煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒である、不完全再生煙道ガスを処理するための方法が提供される。
【0018】
好ましくは、接触は、COボイラー中および/またはCOボイラーの手前の煙道ガスチャネル中で行われ、より好ましくは、接触は、COボイラーの手前の煙道ガスチャネル中で行われる。
【0019】
従来技術と比較して、本発明の煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒は、以下の技術的効果を有する。
【0020】
(1)構造化モノリス触媒において、特殊活性成分は、構造化モノリス触媒の内表面および/または外表面上に配置されたコーティングの形態である。したがって、コーティング中の活性成分は高分散性を有し、NHなどの還元窒化物の接触転化活性を大幅に改善する;
(2)本願は、本発明の構造化モノリス触媒を使用する、不完全再生煙道ガスを処理するための方法を提供する。これにより、NHなどの還元窒化物の接触転化活性が大幅に向上し、不完全再生煙道ガス中のNOx排出を効率的に低減し得る。好ましくは、触媒と不完全再生煙道ガスとの接触は、COボイラー中および/またはCOボイラーの手前の煙道ガスチャネル中、より好ましくは、COボイラーの手前の煙道ガスチャネル中で行われる。このような配置は、FCC生成物の分布に影響を与えることなく、NHなどの還元窒化物の接触転化活性を改善するために、より好都合である。
【0021】
〔図面の簡単な説明〕
添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部であり、以下の技術の詳細な説明とともに、本発明の実施形態を例示するが、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0022】
図面において、図1は、実施例1および5で得られた煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒のXRDパターンである。
【0023】
〔詳細な説明〕
本明細書に開示される範囲内の端点および任意の値は、正確な範囲または値に限定されず、それらの範囲または値に近い値を包含することを理解されたい。値の範囲については、範囲のそれぞれの端点間、範囲のそれぞれの端点と個々の点との間、および個々の点の間を組み合わせて、これらの値の範囲が本明細書で具体的に開示されているかのように、1つまたは複数の新しい値の範囲を与えることが可能である。説明および特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別段の明確な指示をしない限り、複数形も同様に含むことが意図され得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「構造化モノリス触媒」は、構造化モノリス担体、ならびに構造化モノリス担体の内表面および/または外表面上に配置された活性成分のコーティングを含む触媒を指し、用語「構造化モノリス担体」は、モノリス構造を有する担体を指す。
【0025】
本発明の第1の態様において、煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒であって、構造化モノリス担体、ならびに構造化モノリス担体の内表面および/または外表面上に配置された活性成分のコーティングを含み、触媒の総重量に基づいて、前記活性成分のコーティングは、約1~50重量%の量で存在し、前記活性成分のコーティングは、活性金属成分および基質を含み、前記活性金属成分は、第1金属元素、第2金属元素、第3金属元素、および第4金属元素を含み、前記第1金属元素は、第VIII族の非貴金属元素からなる群から選択され、前記第1金属元素は、FeおよびCoを含み、FeおよびCoの重量比は、酸化物基準で1:(0.05~20)であり、前記第2金属元素は、第IA族および/または第IIA族の金属元素からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第3金属元素は、第IB族から第VIIB族の非貴金属元素からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第4金属元素は、貴金属元素からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0026】
本発明の構造化モノリス触媒において、活性成分、すなわち第1金属元素(FeおよびCoを含む)、第2金属元素、第3金属元素、および第4金属元素は、構造化モノリス触媒の内表面および/または外表面上に配置された活性成分のコーティングの形態である。したがって、コーティング中の活性成分は、高分散性を有し、NHなどの還元窒化物の接触転化活性を大幅に改善する;
本発明の1つの好ましい実施形態では、触媒の総重量に基づいて、前記活性成分のコーティングは少なくとも約1重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約3重量%、少なくとも約4重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約20重量%など、および約50重量%まで、約45重量%まで、約40重量%まで、約35重量%まで、約30重量%まで、約25重量%まで、約20重量%まで、約15重量%までなどの量で存在する。好ましくは、触媒の総重量に基づいて、前記活性成分のコーティングは、例えば、約1~50重量%、約2~50重量%、約5~50重量%、約10~50重量%、約15~40重量%、好ましくは、約20~35重量%、さらに好ましくは、約20~30重量%の量で存在する。一変形例では、触媒の総重量に基づいて、前記活性成分のコーティングは、約2~30重量%、約5~25重量%、または約7~20重量%の量で存在する。
【0027】
本発明の構造化モノリス触媒において、好ましくは、前記活性成分のコーティングの総重量に基づいて、前記基質は、10~90重量%の量であり、酸化物基準で、前記第1金属元素は、0.5~50重量%の量であり、前記第2金属元素は、0.5~20重量%の量であり、前記第3金属元素は、0.5~20重量%の量であり、元素基準で、前記第4の金属元素は、0.001~0.15重量%の量である。
【0028】
さらに好ましくは、前記活性成分のコーティングの総重量に基づいて、前記基質は、50~90重量%の量であり、酸化物基準で、前記第1金属元素は、3~30重量%の量であり、前記第2金属元素は、1~20重量%の量であり、前記第3金属元素は、1~10重量%の量であり、元素基準で、前記第4金属元素は、0.005~0.1重量%の量である。
【0029】
さらにより好ましくは、前記活性成分のコーティングの総重量に基づいて、前記基質は、55~85重量%の量であり、酸化物基準で、前記第1金属元素は、5~25重量%の量であり、前記第2金属元素は、5~15重量%の量であり、前記第3金属元素は、2~8重量%の量であり、元素基準で、前記第4金属元素は、0.01~0.08重量%の量である。
【0030】
最も好ましくは、前記活性成分のコーティングの総重量に基づいて、前記基質は、66~85重量%の量であり、酸化物基準で、前記第1金属元素は、6~16重量%の量であり、前記第2金属元素は、5~12重量%の量であり、前記第3金属元素は、3~8重量%の量であり、元素基準で、前記第4金属元素は、0.05~0.07重量%の量である。
【0031】
好ましくは、酸化物基準での基質の量、酸化物基準での第1金属元素の量、酸化物基準での第2金属元素の量、酸化物基準での第3金属元素の量、および元素基準での第4金属元素の量の質量比は、10~90:0.5~50:0.5~20:0.5~20:0.001~0.15、好ましくは、50~90:3~30:1~20:1~10:0.005~0.1、より好ましくは、55~85:5~25:5~15:2~8:0.01~0.08、さらに好ましくは、66~85:6~16:5~12:3~8:0.05~0.07である。
【0032】
本発明において、構造化モノリス触媒中の各成分の量は、X線蛍光分光法(The Analytic Method of Petrochemicals (RIPP Experimental Method), Edited by Cuiding Yang, et. al., Science Press, 1990、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる)によって測定される。
【0033】
本発明の前記第1金属元素は、FeおよびCoを含む。しかしながら、本発明は、第VIII族の非貴金属元素のFeおよびCo以外の元素、例えばNiを含有する場合を排除しない。
【0034】
本発明では、前記第1金属元素にFeおよびCoが含まれていれば、NHなどの還元窒化物に対する触媒の接触転化活性を向上させることができる。FeおよびCoの相乗効果をさらに利用するために、FeとCoとの重量比率は、酸化物基準で、好ましくは、1:(0.1~10)、より好ましくは、1:(0.3~3)、さらにより好ましくは、1:(0.5~2)、最も好ましくは、1:(0.6~1)である。
【0035】
本発明において、特に明記されていない限り、用語「酸化物基準」は、Feについては「Feに基づいて」、およびCoについては「Coに基づいて」を指す。
【0036】
本発明の好ましい実施形態によれば、触媒中のFeの少なくとも一部は、炭化鉄の形態で存在する。好ましくは、炭化鉄は、FeCおよび/またはFeである。本発明における炭化鉄の量は、特に限定されない。炭化鉄が存在する限り、構造化モノリス触媒の性能を効果的に改善し得る。
【0037】
本発明の好ましい実施形態によれば、組成物中のCoの少なくとも一部は、コバルト元素の形態で存在する。本発明におけるコバルト元素の量は、特に限定されない。コバルト元素が存在する限り、構造化モノリス触媒の性能を効果的に改善し得る。
【0038】
なお、既存の触媒では、金属元素の大部分は、酸化状態にあることに留意されたい。本発明の触媒の製造方法において、酸化鉄の一部は炭化鉄に転化され、および/または酸化コバルトの一部は元素コバルトに転化されるように、炭素含有雰囲気下で仮焼することが好ましい。本発明者は、炭化鉄および/または元素コバルトの存在は、触媒が還元された窒素含有化合物の分解をより良好に促進させ、窒素酸化物の生成を低減させ、窒素酸化物の還元をある程度促進させ得ることを見出した。
【0039】
好ましくは、本発明の構造化モノリス触媒のXRDパターンは、2θでの42.6°、44.2°、および44.9°の回折ピークを含む。
【0040】
特に、2θでの42.6°および44.9°の回折ピークは、炭化鉄の回折ピークであり;2θでの44.2°の回折ピークは、元素コバルトの回折ピークである。
【0041】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の触媒のXRDパターンにおいて、2θでの44.9°の回折ピークは、2θでの42.6°の回折ピークよりも強い。
【0042】
本発明において、構造化モノリス触媒をX線回折装置(Siemens D5005)上で測定して構造を決定する。その条件は、Cu標的、Kα放射、固体検出器、管電圧40kV、管電流40mAであった。
【0043】
本発明において、第IA族の金属元素は、Naおよび/またはKを含むが、これらに限定されない。第IIA族の金属元素は、Mg、Ca、Sr、およびBaのうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。第IB族~第VIIB族の非貴金属元素は、元素の周期表における第IB族~第VIIB族の非貴金属を指し、第IB族の非貴金属、第IIB族の金属、第IIIB族の金属、第IVB族の金属、第VB族の金属、第VIB族の金属、および第VIIB族の金属を含む。特に、第IB族から第VIIB族の非貴金属元素としては、Cu、Zn、Cd、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、W、Mn、Re、および希土類元素のうちの少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。希土類元素としては、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、およびEuのうちの少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。貴金属元素としては、Au、Ag、Pt、Os、Ir、Ru、Rh、Pdが挙げられる。
【0044】
好ましくは、本発明の構造化モノリス触媒において、前記第2金属元素は、Na、K、Mg、およびCaからなる群から選択される少なくとも1つであり、好ましくは、Kおよび/またはMgであり、最も好ましくは、Mgである。
【0045】
好ましくは、本発明の構造化モノリス触媒において、前記第3金属元素は、Cu、Zn、Ti、Zr、V、Cr、Mo、W、Mn、および希土類元素からなる群から選択される少なくとも1つであり、好ましくは、Zr、V、W、Mn、Ce、およびLaからなる群から選択される少なくとも1つであり、最も好ましくは、Mnである。
【0046】
好ましくは、本発明の構造化モノリス触媒において、前記第4金属元素は、Pt、Ir、Pd、Ru、およびRhからなる群から選択される少なくとも1つであり、最も好ましくは、Ruである。
【0047】
本発明の最も好ましい実施形態によれば、活性成分としてFe、Co、Mg、Mn、およびRuを組み合わせることにより、構造化モノリス触媒のNHなどの還元窒化物に対する触媒転化活性を大幅に向上させることができる。さらに、構造化モノリス触媒は、有利に、より良好な水熱安定性を有することができる。
【0048】
好ましくは、酸化物基準のFeの量、酸化物基準のCoの量、酸化物基準のMgの量、酸化物基準のMnの量、および元素基準のRuの量の質量比は、0.05~45:0.05~45:0.5~20:0.5~20:0.001~0.15、好ましくは、1~20:1~20:1~20:1~10:0.005~0.1、より好ましくは、1.5~15:1.5~15:5~15:2~8:0.01~0.08、さらに好ましくは、2~10:2~10:5~12:3~8:0.05~0.07である。
【0049】
本発明の最も好ましい実施形態において、触媒は、構造化モノリス担体と、構造化モノリス担体の内表面および/または外表面上に配置された活性成分のコーティングとを含み、触媒の総重量に基づいて、前記活性成分のコーティングは、約2~50重量%の量で存在し、前記活性成分のコーティングは、F、Co、Mg、Mn、Ru、およびアルミナを含み、FeおよびCoの重量比率は、酸化物基準で1:(0.5~2)であり、前記活性成分のコーティングの総重量に基づいて、アルミナは、約66~85重量%の量で存在し、酸化物基準で、FeおよびCoは、約6~16重量%の総量で存在し、Mgは、約5~12重量%の量で存在し、Mnは、約3~8重量%の量で存在し、元素基準で、Ruは、約0.05~0.07重量%で存在する。
【0050】
好ましくは、本発明の構造化モノリス触媒において、前記基質は、アルミナ、シリカ-アルミナ、ゼオライト、スピネル、カオリン、珪藻土、パーライト、およびペロブスカイトからなる群から選択される少なくとも1つであり、好ましくは、アルミナ、スピネル、およびペロブスカイトからなる群から選択される少なくとも1つであり、さらに好ましくは、アルミナである。
【0051】
本発明の構造化モノリス触媒において、構造化モノリス担体は、固定床反応器中の触媒床として使用することができる。構造化モノリス担体は、中空チャネルが生成されたモノリス担体であり得、触媒コーティングは、チャネルの内壁上に配置されてもよく、チャネル内の空間は、流動体のための流動空間として使用されてもよい。好ましくは、構造化モノリス担体は、両端が開放された平行チャネルを有するモノリス担体から選択される。構造化モノリス担体は、断面がハニカム形状の開孔を有するハニカムモノリス担体(以下、ハニカム担体という)であってもよい。
【0052】
好ましくは、本発明の構造化モノリス触媒において、構造化モノリス担体は、断面において、約20~900細孔/平方インチ、例えば、約20~300細孔/平方インチの細孔密度を有する。構造化モノリス担体は、断面において、約20~80%、好ましくは、約50~80%の開口率を有する。細孔は、規則的な形状であっても不規則的な形状であってもよい。細孔の形状は、同じであっても異なっていてもよく、各細孔は、正方形、正三角形、正六角形、円形、または波形の形状であってもよい。
【0053】
好ましくは、本発明の構造化モノリス触媒において、構造化モノリス担体は、コーディエライトハニカム担体、ムライトハニカム担体、ダイヤモンドハニカム担体、コランダムハニカム担体、ジルコニウムコランダムハニカム担体、石英ハニカム担体、ネフェリンハニカム担体、長石ハニカム担体、アルミナハニカム担体、および金属合金ハニカム担体からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0054】
本発明の第2の態様において、煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒を製造する方法が提供され:
第1スキームにおいて:
(1)基質源、第1金属元素の前駆体、第2金属元素の前駆体、第3金属元素の前駆体、第4金属元素の前駆体、および水を混合することによってスラリーを作製し、活性成分のコーティングスラリーを得る工程、および
(2)前記活性成分のコーティングスラリーで構造化モノリス担体をコーティングし、次いで、乾燥および第1仮焼に供して、構造化モノリス担体の内表面および/または外表面上に配置された活性成分のコーティングを得る工程、または
第2スキームにおいて
a)基質源、第1金属元素の前駆体、第2金属元素の前駆体、第3金属元素の前駆体、および水を混合することによってスラリーを作製し、第1スラリーを得る工程、
b)第1スラリーで構造化モノリス担体をコーティングし、次いで、乾燥および第2仮焼に供して、構造化モノリス担体の内表面および/または外表面上に活性成分の部分を含むコーティングを生成し、半完成触媒を得る工程、
c)ステップb)で得られた半完成触媒を、第4金属元素の前駆体を含む溶液でコーティングし、次いで、乾燥および/または第3仮焼に供して、構造化モノリス担体の内表面および/または外表面上に配置された活性成分のコーティングを得る工程、
を含み、
前記第1金属元素は、第VIII族の非貴金属元素からなる群から選択され、前記第1金属元素は、FeおよびCoを含み、前記第2金属元素は、第IA族および/または第IIA族の金属元素からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第3金属元素は、第IB族から第VIIB族の非貴金属元素からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第4金属元素は、貴金属元素からなる群から選択される少なくとも1つであり、および
前記第1金属元素の前駆体は、得られた触媒が酸化物基準で、1:(0.05~20)の重量比でFeおよびCoを含むような量でFeおよびCoの前駆体を含む。
【0055】
本発明の方法において、前記第1金属元素の前駆体、前記第2金属元素の前駆体、前記第3金属元素の前駆体、および前記第4金属元素の前駆体をスラリーに混合し、次いで、構造化モノリス担体をコーティングすることが可能である。前記第1金属元素の前駆体、前記第2金属元素の前駆体、および前記第3の金属元素の前駆体をスラリーに混合し、構造化モノリス担体をコーティングし、次いで、前記第4金属元素の前駆体でさらにコーティングすることも可能である。両実施形態とも、本発明における所望の効果に達し得る。構造化モノリス触媒の性能をさらに改善するためには、第2スキームが好ましい。本発明の第2スキームで調製された触媒は、第4金属元素(貴金属)のより良好な分散を有し、それによって貴金属元素の使用効率を改善する。
【0056】
本発明において、第1スキームにおける前記基質の前駆体は、工程(2)における第1仮焼の条件下で基質を得ることができる任意の材料であってもよい。第2スキームにおける前記基質の前駆体は、工程b)における第2仮焼および/または工程c)における第3仮焼の条件下で基質を得ることができる任意の材料であってもよい。本発明においては、特に限定されるものではない。適切な基質の種類は、上述したものであってもよく、ここでは再度説明しない。基質がアルミナであることが好ましい場合、前記基質源は、アルミナの前駆体であってもよい。試験者のために、前記基質源は、ギブサイト、パイアルミナイト、ヌオシューアルミナイト、ダイアスポア、ベーマイト、および擬似ベーマイトからなる群から選択される少なくとも1つであってもよく、最も好ましくは、擬似ベーマイトである。
【0057】
好ましくは、本発明の方法ではスラリーを作製する前に、酸性ペプチド化によって基質源を処理してもよい。酸性ペプチド化は、当技術分野における従来の手段に従って実施することができる。さらに好ましくは、酸性ペプチド化に使用される酸は、塩酸である。
【0058】
本発明において、酸性ペプチド化のための条件は、広い範囲で選択することができる。好ましくは、酸性ペプチド化は、0.12~0.22:1の酸対アルミナの比率で、約10~40分間行うことができる。
【0059】
本発明において、特に指示がない限り、酸対アルミナの比は、36重量%の濃度を有する濃塩酸に換算した塩酸の、乾燥基準でのアルミナの前駆体に対する質量比を指す。
【0060】
本発明において、前記第1金属元素の前駆体、前記第2金属元素の前駆体、前記第3金属元素の前駆体、および前記第4金属元素の前駆体は、それぞれ、硝酸塩、塩化物、塩素酸塩、または硫酸塩などの、第1金属元素、第2金属元素、第3金属元素、および第4金属元素の水溶性塩から選択される。本発明においては、特に限定されるものではない。
【0061】
本発明の方法では、構造化モノリス担体、前記第1金属元素、前記第2金属元素、前記第3金属元素、および前記第4金属元素は、上述のように選択することができ、ここでは再度説明しない。
【0062】
本発明において、第1スキームにおける前記活性成分のコーティングスラリーおよび第2スキームにおける前記第1スラリーの各々は、約8~30重量%の固形分を有することができる。
【0063】
本発明において、第2スキームでは、前記第4金属元素の前駆体を含む溶液は、第4金属元素基準で約0.03~3重量%の質量濃度を有する。
【0064】
本発明の方法において、第1スキームでは、前記基質源、前記第1金属元素の前駆体、前記第2金属元素の前駆体、前記第3金属元素の前駆体、前記第4金属元素の前駆体、および水を混合してスラリーを作製する方法は、特に限定されない。前記基質源、前記第1金属元素の前駆体、前記第2金属元素の前駆体、前記第3金属元素の前駆体、および前記第4金属元素の前駆体を添加する順序は、前記基質源、前記第1金属元素の前駆体、前記第2金属元素の前駆体、前記第3金属元素の前駆体、および前記第4金属元素の前駆体が水と接触する限り、特に限定されない。好ましくは、前記第1金属元素の前駆体、前記第3金属元素の前駆体、および前記第4金属元素の前駆体は水に溶解され、それに前記基質源が添加されて(好ましくは、基質源は酸性化されて)、第1溶液を得る。前記第2金属元素の前駆体を水と混合して、第2溶液を得る。第1溶液および第2溶液を混合して、スラリーを得る。
【0065】
本発明の方法において、第2スキームでは、前記基質源、前記第1金属元素の前駆体、前記第2金属元素の前駆体、前記第3金属元素の前駆体、および水を混合してスラリーを作製する方法は、特に限定されない。前記基質源、前記第1金属元素の前駆体、前記第2金属元素の前駆体、および前記第3金属元素の前駆体を添加する順序は、前記基質源、前記第1金属元素の前駆体、前記第2金属元素の前駆体、および前記第3金属元素の前駆体が水と接触する限り、特に限定されない。好ましくは、前記第1金属元素の前駆体および前記第3金属元素の前駆体を水に溶解し、それに前記基質源を添加して(好ましくは、基質源を酸性化して)、第1溶液を得る。前記第2金属元素の前駆体を水と混合して、前記第2溶液を得る。第1溶液と第2溶液とを混合してスラリーを得る。
【0066】
本発明において、第1スキームの第1仮焼および第2スキームの第2仮焼においても、従来の技術手段を採用することにより、NHなどの還元窒化物に対する構造化モノリス触媒の接触転化活性を向上させることができる。しかしながら、NHなどの還元窒化物に対する接触転化活性および構造化モノリス触媒の水熱安定性をさらに向上させるために、第1仮焼および第2仮焼は、炭素含有雰囲気下で行うことが好ましい。本発明者らは驚くべきことに、研究中に、第1仮焼および第2仮焼を炭素含有雰囲気下で実施すると、NHなどの還元窒化物に対する接触転化活性および構造化モノリス触媒の水熱安定性の両方を有意に改善することができることを見出した。好ましくは、本発明は、第2スキームを採用し、ここで、第2仮焼は半完成触媒を得るために、炭素含有雰囲気下で実施される。また、後の工程において第4金属元素(貴金属元素)の分散を容易にすることができる。活性の改善は、酸化物から還元状態の炭化物への活性成分の転化に関連し、一方、水熱安定性の改善は、高温での処理が触媒中の活性成分の粘着、融合および架橋を促進するという事実に関連し得る。XRDスペクトルの比較から、処理後、炭化鉄および元素コバルトについて明らかなピークがあることが観察され得る。特に、図1に示すように、炭素含有雰囲気下での処理を受けていない構造化モノリス触媒S-5のXRDスペクトルにおいて、MgOについて43.0°に回折ピークがあり、Al、CoAlO、およびMgAlについて45.0°に回折ピークがある。XRDスペクトルにおいて、組成物S-1は、炭素含有雰囲気下で処理される。MgOについて43.0°に回折ピークがあり、Al、CoAlO、およびMgAlについて45.0°に回折ピークがあるだけでなく、約43.0°および45.0°の回折ピークは、大幅に強くなり左側にシフトする。このことは、炭素含有雰囲気下での処理を受けた構造化モノリス触媒S-1では、42.6°および44.9°に回折ピークがあり、42.6°および44.9°での回折ピークが、炭化鉄(FeCおよびFe)のピークであることに起因すると考えられる。加えて、構造化モノリス触媒S-1については2θで44.2°に回折ピークが存在し、44.2°の回折ピークは元素コバルトのピークである。
【0067】
図1は、41°~50°の範囲のXRDスペクトルを示すに過ぎないことを留意されたい。このスペクトルは、主に構造化モノリス触媒に存在するFeおよびCoの形態を示すために使用される。41°~50°の範囲では、他の回折ピークが存在し、例えば、FeOについては2θで37°、59°、および65°に回折ピークが存在し、CoOについては2θで31°、37°、および65°に回折ピークが存在するが、本発明ではこれらについてさらなる説明は行わない。
【0068】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1仮焼および第2仮焼は、400~1000℃、好ましくは、450~650℃の温度で、0.1~10時間、好ましくは、1~3時間、炭素含有雰囲気下で独立して行われる。
【0069】
第1および第2仮焼中に使用される圧力は、特に限定されない。仮焼の各々は、通常の圧力、例えば、0.01~1MPa(絶対圧力)下で実施してもよい。
【0070】
本発明において、炭素含有雰囲気は、炭素元素含有ガスによって提供される。好ましくは、炭素元素含有ガスは、還元性を有する炭素元素含有ガスからなる群から選択され、さらに好ましくは、CO、メタン、およびエタンからなる群から選択される少なくとも1つであり、最も好ましくは、COである。
【0071】
本発明において、炭素元素含有ガスは、さらに、いくつかの不活性ガスを含んでいてもよく、不活性ガスは、当技術分野で一般に使用される様々な不活性ガスであってもよい。好ましくは、不活性ガスは、窒素、アルゴン、およびヘリウムからなる群から選択される少なくとも1つであり、さらに好ましくは、窒素である。
【0072】
本発明の好ましい実施形態によれば、炭素含有雰囲気は、COおよび窒素を含有する混合ガスであり、炭素含有雰囲気中のCOの体積濃度は、好ましくは、約1~20%、さらに好ましくは、約4~10%である。本発明の好ましい実施形態を使用することによって、処理要件をより良好に満たすことができるだけでなく、操作者の安全性も保証することができる。
【0073】
本発明において、第1仮焼および第2仮焼は、接触分解触媒およびプロモーターの製造に使用される仮焼炉で独立して行われてもよく、前記仮焼炉は回転仮焼炉であってもよい。炭素元素含有ガスは、仮焼炉内の固体材料と対向流で接触する。
【0074】
本発明において、「第1」、「第2」、および「第3」という用語は、仮焼を何ら限定するものではなく、異なるスキームの異なる工程における仮焼を区別するためにのみ使用される。
【0075】
第2スキームの工程c)において、コーティング工程から得られる生成物は、乾燥のみに供されてもよく、第3仮焼のみに供されてもよく、または乾燥に供され、次いで第3仮焼に供されてもよい。本発明においては、特に限定されるものではない。好ましくは、コーティング工程から得られた生成物を乾燥させ、次いで第3仮焼に供する。本発明における第3仮焼の条件は、特に限定されない。それは、当該技術分野における従来の手段に従って操作してもよい。例えば、空気または不活性ガス(窒素など)雰囲気下で、第3仮焼を行ってもよい。本発明における第3仮焼の条件は、特に限定されない。第3仮焼の条件は、300~550℃の温度で1~10時間を含んでいてもよい。
【0076】
本発明における第1スキームの工程(2)、ならびに第2スキームの工程b)および工程c)における乾燥の条件は、特に限定されない。それは、当該技術分野における従来の手段に従って操作してもよい。例えば、第1スキームの工程(2)、ならびに第2スキームの工程b)および工程c)における乾燥の条件は、独立して、60~150℃の温度で2~10時間を含んでいてもよい。
【0077】
好ましくは、本発明の方法において、コーティング工程は、触媒をもたらすことができ、触媒の総重量に基づいて、前記活性成分のコーティングは、約10~50重量%、好ましくは、約15~40重量%、さらに好ましくは、約20~35重量%、最も好ましくは、約20~30重量%の量で提示される。注意すべきことであるが、当業者は、コーティング工程のパラメーター、例えば、コーティング工程で使用されるコーティングスラリーおよび構造化モノリス担体の量を制御することによって、活性成分のコーティングの量を調節することができる。
【0078】
本発明の方法において、コーティングは、構造化モノリス担体の内表面および/または外表面上にスラリーを塗布し得る任意のコーティング方法であってもよい。コーティング方法は、水性コーティング、含浸、または噴霧であってもよい。本発明における塗布工程の繰り返し回数は、特に限定されない。コーティング工程を繰り返すことが可能である。コーティング工程の繰り返し時間は、触媒中の活性成分のコーティングの量に応じて選択することができる。コーティングの特定の操作は、CN1199733Cに記載されている方法を参照することによって確認することができる。好ましくは、コーティング工程は、水性コーティングであり、ここで、担体の一端はスラリー中に浸漬され、そして他端は真空で適用され、その結果、スラリーは担体のチャネルを連続的に通過する。担体のチャネルを通過するスラリーは、担体の体積の約2~20倍の体積であってもよい。真空度は、約-0.1MPaから約-0.01MPであってもよい。コーティングは、約10~70℃の温度で約0.1~300秒間行ってもよい。コーティングされた構造化モノリス触媒は、構造化モノリス担体の内表面および/または外表面上にコーティングを得るために、乾燥に供されてもよい。
【0079】
本発明において、前記基質源、前記第1金属元素の前駆体、前記第2金属元素の前駆体、前記第3金属元素の前駆体、および前記第4金属元素の前駆体の量は、広い範囲にわたって選択することができる。好ましくは、前記基質源、前記第1金属元素の前駆体、前記第2金属元素の前駆体、前記第3金属元素の前駆体、および前記第4金属元素の前駆体は、活性成分のコーティングの総重量に基づいて、得られた触媒において使用され、前記基質源は、約10~90重量%の量であり、酸化物基準で、前記第1金属元素は、約0.5~50重量%の量であり、前記第2金属元素は、約0.5~20重量%の量であり、前記第3金属元素は、約0.5~20重量%の量であり、元素基準で、前記第4金属元素は、約0.001~0.15重量%の量である。好ましくは、前記活性成分のコーティングの総重量に基づいて、前記基質源は、約50~90重量%の量であり、酸化物基準で、前記第1金属元素は、約3~30重量%の量であり、前記第2金属元素は、約1~20重量%の量であり、前記第3金属元素は、約1~10重量%の量であり、元素基準で、前記第4金属元素は、約0.005~0.1重量%の量である。さらに好ましくは、前記活性成分のコーティングの総重量に基づいて、前記基質源は、約55~85重量%の量であり、酸化物基準で、前記第1金属元素は、約5~25重量%の量であり、前記第2金属元素は、約5~15重量%の量であり、前記第3金属元素は、約2~8重量%の量であり、元素基準で、前記第4金属元素は、約0.01~0.08重量%の量である。最も好ましくは、前記活性成分のコーティングの総重量に基づいて、前記基質源は、約66~85重量%の量であり、酸化物基準で、前記第1金属元素は、約6~16重量%の量であり、前記第2金属元素は、約5~12重量%の量であり、前記第3金属元素は、約3~8重量%の量であり、元素基準で、前記第4金属元素は、約0.05~0.07重量%の量である。
【0080】
好ましくは、本発明の方法において、酸化物基準の前記基質源の量、第VIII族の非貴金属元素の酸化物基準での前記第1金属元素の前駆体の量、第IA族および/または第IIA族の金属元素の酸化物基準での前記第2金属元素の前駆体の量、第IB族~第VIIB族の非貴金属元素の酸化物基準での前記第3金属元素の前駆体の量、および貴元素基準での前記第4金属元素の前駆体の量の質量比は、約10~90:0.5~50:0.5~20:0.5~20:0.001~0.15、好ましくは、約50~90:3~30:1~20:1~10:0.005~0.1、さらに好ましくは、約55~85:5~25:5~15:2~8:0.01~0.08、より好ましくは、約66~85:6~16:5~12:3~8:0.05~0.07である。
【0081】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記第1金属元素の前駆体は、得られた触媒が酸化物基準で、約1:(0.1~10)、さらに好ましくは、約1:(0.3~3)、さらにより好ましくは、約1:(0.5~2)、最も好ましくは、約1:(0.6~1)の重量比でFeおよびCoを含むような量で、Feの前駆体およびCoの前駆体を含む。
【0082】
本発明の第3の態様において、上記の方法によって製造された、煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒が提供される。触媒は、構造化モノリス担体、ならびに構造化モノリス担体の内表面および/または外表面上に配置された活性成分のコーティングを含み、触媒の総重量に基づいて、前記活性成分のコーティングは、約10~50重量%の量で存在し、前記活性成分のコーティングは、活性金属成分および基質を含み、前記活性金属成分は、第1金属元素、第2金属元素、第3金属元素、および第4金属元素を含み、前記第1金属元素は、第VIII族の非貴金属元素からなる群から選択され、前記第1金属元素は、FeおよびCoを含み、FeおよびCoの重量比率は、酸化物基準で約1:(0.05~20)であり、前記第2金属元素は、第IA族および/または第IIA族の金属元素からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第3金属元素は、第IB族~第VIIB族の貴金属元素からなる群から選択される少なくとも1つであり、および前記第4金属元素は、貴金属元素からなる群から選択される少なくとも1つである。上記の方法によって製造された構造化モノリス触媒は、任意の技術的特徴において、本発明の構造化モノリス触媒と同じである。詳細については、構造化モノリス触媒に関する以前の開示を参照されたい。
【0083】
本発明の、煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒は、様々な作業条件に適しており、還元窒化物に対する高い接触転化活性を有し、良好な水熱安定性を有し、製造が容易であり、接触分解プロセスで使用される場合、不完全再生煙道ガス中のNOx排出を効果的に低減し得る。したがって、本発明の第4の態様では、接触分解プロセスによって不完全再生煙道ガスを処理する際に、煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒の使用が提供される。
【0084】
本発明の第5の態様において、不完全再生煙道ガスを触媒と接触させる工程を含む、不完全再生煙道ガスを処理するための方法が提供され、ここで、触媒は、本発明の煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒である。
【0085】
不完全再生煙道ガスの組成は、特に限定されない。不完全再生煙道ガスは、不完全再生接触分解装置から得られるものであってもよい。好ましくは、不完全再生煙道ガスは、約0.1%以下の体積含有量のO、約4%以上の体積含有量のCO、約200ppm未満の含有量のNH、および約10ppm以下の含有量のNOxを含んでいてもよい。不完全再生において、再生塔の出口での再生煙道ガスは、低含量の過度の酸素、高濃度のCO、非常に低濃度のNOxを含むが、NH、HCNなどの高濃度の還元窒化物を含む。これらの還元窒化物は、煙道ガスと共に下流のCOボイラーにエネルギー回収のために流れ、このボイラーにおいて完全に酸化されるとNOxが生成される。したがって、不完全再生煙道ガスと触媒との接触は、好ましくは、COボイラーおよび/またはCOボイラーの手前の煙道ガスチャネル中において行われ、より好ましくは、接触は、COボイラーの手前の煙道ガスチャネル中において行われる。すなわち、還元窒化物は、酸化される前に除去されてもよい。補充空気は、通常、COボイラーに導入される。触媒の欠如下では、還元窒化物は、容易に酸化されてNOxを生成する。還元窒化物の酸化を防止するために、好ましくは、接触がCOボイラー中で行われる場合、接触は、好ましくは、COボイラーの手前にある。最も好ましくは、不完全再生煙道ガスと触媒との接触は、COボイラーの手前の煙道ガスチャネル内で行われる。すなわち、触媒は、COボイラーの手前の煙道ガスチャネルに配置される。不完全再生煙道ガスは、煙道ガスチャネル内で酸素希薄状態にある。従って、不完全再生煙道ガスと煙道ガスチャンネル中の触媒との接触は、還元窒化物(例えば、NHなど)の接触転化のためにより好都合である。
【0086】
従来技術における不完全再生煙道ガスを処理するための触媒は、不完全再生煙道ガスがNOx排出を低減する効果を達成するために触媒と十分に接触することができるように、再生器の流動床においてプロモーター微小球の形態で提供される。
【0087】
本発明において、特に断らない限り、ppmは体積基準である。
【0088】
COボイラーの種類は、特に限定されない。垂直COボイラーまたは水平COボイラーなど、当技術分野で一般に使用される様々なCOボイラーを使用してもよい。
【0089】
本発明において、接触条件は、好ましくは、約600~1000℃の温度、約0~0.5MPaの圧力(ゲージ圧)、および約100~1500h-1の煙道ガスの質量空間速度を含む。さらに好ましくは、接触条件は、約650~850℃の温度、約0.1~0.3MPaの圧力、および約500~1200h-1の煙道ガスの質量空間速度を含む。特に限定されるものではないが、ここでの煙道ガスの質量空間速度は、構造化モノリス触媒中の活性成分のコーティングに対して計算される。すなわち、活性成分のコーティングの単位重量を単位時間で通過する煙道ガスの質量である。
【0090】
好ましくは、構造化モノリス触媒は、触媒床の形態で提供される。本発明の不完全再生煙道ガスを処理するための方法において、構造化モノリス触媒は、COボイラーの手前のCOボイラーおよび/または煙道ガスチャネル中の固定触媒床として提供されることができ、ここで、流動する不完全再生煙道ガスは、構造化モノリス触媒床を通過し、すなわち、構造化モノリス担体中のチャネルを通過し、チャネルの壁上に配置された活性成分のコーティングと反応する。
【0091】
本発明の方法は、エネルギー回収をさらに含む。エネルギー回収は、当技術分野において従来の手段に従って操作することができる。特に、不完全再生接触分解装置から得られた不完全再生煙道ガスは、サイクロン分離器を通過して(好ましくは、2段階サイクロン分離器および3段階サイクロン分離器を順次通過する)、そこに運ばれた触媒微粉末の一部を分離し、次いで煙道ガスタービンに送られる。煙道ガスタービンは、主要なファンと接続されている。煙道ガスタービンは、膨張力を供給して主要なファンを駆動し、不完全再生煙道ガス中の圧力エネルギーおよび熱エネルギーを回収する。煙道ガスタービンでエネルギー回収した後、不完全再生煙道ガスをCOボイラーに送る。
【0092】
実施例
本発明の実施および有益な効果は、以下の実施例を通して詳細に記載され、これは読者が本発明の精神をより良く理解するのを助けることを意図するが、本発明の実施可能な範囲を限定することを意図しない。
【0093】
実施例では、蛍光X線分光分析(XRF)により、煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒中の各成分の量を測定した。参考文献は、“The Analytic Method of Petrochemicals (RIPP Experimental Method”, Edited by Cuiding Yang, et. al., Science Press, 1990)であった。
【0094】
実施例において、煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒のXRDスペクトルをX線回折計(Siemens D5005)で測定し、構造を決定した。その条件は、Cu標的、Kα放射、固体検出器、管電圧40kV、管電流40mAであった。
【0095】
実施例および比較例で使用された原材料は、Sinopharm Group Chemical Reagent Co、Ltd.から入手可能な、分析的に純粋な硝酸コバルト(Co(NO・6HO)、分析的に純粋な硝酸鉄(Fe(NO・9HO)、分析的に純粋な過マンガン酸カリウム(KMnO)、分析的に純粋な酸化マグネシウム(MgO);GRIKIN Advanced Material Co、Ltd.から入手可能であり、Ruを37%以上含有している、分析的に純粋な塩化ルテニウム(RuCl);Shandong Company of Aluminum Corporation of China Limitedによって製造され、産業グレードであり、64重量%のアルミナ含有量および0.31ml/gの細孔体積を有する擬似ベーマイト;Beijing chemical worksから入手可能であり、分析的に純粋な、36.5重量%の濃度の塩酸;Beijing AP BAIF gas Industrial Co., Ltd.から入手可能であり、バランスガスとして窒素を伴う、10体積%の濃度の一酸化炭素である。
【0096】
以下の実施例および比較例に含まれるコーティングは、水性コーティングであり、特に、コーティングの各実施中に、構造化モノリス担体(または半完成触媒)の一端を、活性成分のコーティングスラリー(または第4金属元素の前駆体を含む溶液である、第1スラリー)に浸漬し、他端に真空を適用して、スラリーが担体中のチャネルを連続的に通過するようにした。真空度は、-0.03MPaであった。コーティングは、35℃の温度であった。
【0097】
実施例1
(1)262gの擬ベーマイトを1.42kgの脱イオン水に添加し、分散させてスラリーを作製した。このスラリーに、23.8mLの塩酸を添加して15分間酸性化し、アルミナゲルを得た。金属酸化物基準に基づいて、6gの硝酸鉄(Fe換算)、6gの硝酸コバルト(Co換算)、10gのKMnO(MnO換算)、および金属元素基準に基づく質量含有量が12.5g/Lである、9.6mLのRuCl溶液を350mLの水に添加し、完全に溶解するまで撹拌した後、アルミナゲルを添加し、さらに15分間撹拌して第1溶液を得た。10gのMgOを30gの水に添加し、10分間撹拌し、次いで第1溶液に添加し、さらに20分間撹拌して、活性成分のコーティングスラリーを得た。
【0098】
(2)コーディエライトハニカム担体(細孔密度400細孔/平方インチおよび断面開口率70%、ならびに正方形の細孔)を、工程(1)で得られた活性成分のコーティングスラリーでコーティングした。乾燥(100℃、4時間)後、得られたコーディエライトハニカム担体を管状炉に移し、COの濃度が10体積%であるCOおよびNの混合物を、100mL/分の流量で導入し、600℃で1.5時間処理して、構造化モノリス担体の内表面および/または外表面に配置された活性成分のコーティングを得て、構造化モノリス触媒S-1を得た。ここで、構造化モノリス触媒の総重量に基づいて、活性成分のコーティングは、25重量%の量であった。
【0099】
構造化モノリス触媒S-1の活性成分のコーティング中の各成分の含有量の試験結果を表1に列挙した。
【0100】
構造化モノリス触媒S-1をXRDにより分析し、XRDスペクトルを図1に示した。図1に示すように、炭素含有雰囲気下での処理を受けていない構造化モノリス触媒S‐5のXRDスペクトルにおいて、MgOについて約43.0°に回折ピークがあり、Al、CoAlO、およびMgAlについて約45.0°に回折ピークがあった。炭素含有雰囲気下での処理を受けた構造化モノリス触媒S-1のXRDスペクトルにおいて、MgOについて約43.0°に回折ピークがあり、Al、CoAlO、およびMgAlについて約45.0°に回折ピークがあったばかりでなく、約43.0°および約45.0°の回折ピークは、大幅に強くなり、左側にシフトした。炭素含有雰囲気下での処理を受けた構造化モノリス触媒S-1において、42.6°および44.9°に回折ピークがあり、ここでの42.6°および44.9°の回折ピークは、炭化鉄(FeCおよびFe)のピークであると考えられる。さらに、構造化モノリス触媒S-1では、2θで44.2°に回折ピークが存在し、44.2°の回折ピークは、元素コバルトのピークであった。
【0101】
図1は、41°~50°の範囲のXRDスペクトルを示すに過ぎないことに留意されたい。このスペクトルは、主に構造化モノリス触媒におけるFeおよびCoの形態を示すために使用される。41°~50°の範囲では、他にも回折ピーク、例えば、FeOについて2θで37°、59°、および65°に回折ピークがあり、CoOについて2θで31°、37°、および65°に回折ピークがあった。41°~50°の範囲外の回折ピークは、炭化鉄および元素コバルトの回折ピークには関係しておらず、本発明ではさらなる説明を行わない。
【0102】
実施例2
(1)253gの擬似ベーマイトを1.37kgの脱イオン水に添加し、分散させてスラリーを作製した。このスラリーに、22.9mLの塩酸を添加して15分間酸性化し、アルミナゲルを得た。金属酸化物基準に基づいて、10gの硝酸鉄(Fe換算)、6gの硝酸コバルト(Co換算)、6gのKMnO(MnO換算)、および金属元素基準で質量含有量が12.5g/Lである、8.8mLのRuCl溶液を350mLの水に添加し、完全に溶解するまで撹拌した後、アルミナゲルを添加し、さらに15分間撹拌して第1溶液を得た。16gのMgOを48gの水に添加し、10分間撹拌し、次いで第1溶液に添加し、さらに20分間撹拌して、活性成分のコーティングスラリーを得た。
【0103】
(2)コーディエライトハニカム担体(細孔密度400細孔/平方インチ、断面開口率70%、正方形の細孔)を、工程(1)で得られた活性成分のコーティングスラリーでコーティングした。乾燥(100℃、4時間)後、得られたコーディエライトハニカム担体を管状炉に移し、COの濃度が10体積%であるCOおよびNの混合物を、100mL/分の流量で導入し、500℃で3時間処理して、構造化モノリス担体の内表面および/または外表面に配置された活性成分のコーティングを得て、構造化モノリス触媒S-2を得た。ここで、構造化モノリス触媒の総重量に基づいて、活性成分のコーティングは、30重量%の量であった。
【0104】
構造化モノリス触媒S-2の活性成分のコーティング中の各成分の含有量の試験結果を表1に列挙した。
【0105】
構造化モノリス触媒S-2は、実施例1と同様のXRD試験結果を有した。炭素含有雰囲気下での処理を受けた構造化モノリス触媒S-2のXRDスペクトルにおいて、MgOについて約43.0°に回折ピークがあり、Al、CoAlO、およびMgAlについて約45.0°に回折ピークがあったばかりでなく、約43.0°および約45.0°の回折ピークは、大幅に強くなり、左側にシフトした。このことは、炭素含有雰囲気下での処理を受けた構造化モノリス触媒S-2について、42.6°および44.9°に回折ピークがあり、42.6°および44.9°の回折ピークが、炭化鉄(FeCおよびFe)のピークであることに起因すると考えられる。加えて、構造化モノリス触媒S-2について、2θで44.2°に回折ピークが存在し、44.2°の回折ピークは、元素コバルトのピークであった。
【0106】
実施例3
(1)209gの擬似ベーマイトを1.13kgの脱イオン水に添加し、分散させてスラリーを作製した。このスラリーに、19.0mLの塩酸を加えて15分間酸性化し、アルミナゲルを得た。金属酸化物基準に基づいて、20gの硝酸鉄(Fe換算)、12gの硝酸コバルト(Co換算)、10gのKMnO(MnO換算)、および金属元素基準で質量含有量が12.5g/Lである、10.4mLのRuCl溶液を350mLの水に加え、完全に溶解するまで撹拌した後、アルミナゲルを加え、さらに15分間撹拌して第1溶液を得た。24gのMgOを72gの水に添加し、10分間撹拌し、次いで第1溶液に添加し、さらに20分間撹拌して、活性成分のコーティングスラリーを得た。
【0107】
(2)コーディエライトハニカム担体(細孔密度400細孔/平方インチ、断面開口率70%、正方形の細孔)を、工程(1)で得られた活性成分のコーティングスラリーでコーティングした。乾燥(100℃、4時間)後、得られたコーディエライトハニカム担体を管状炉に移し、COの濃度が10体積%であるCOおよびNの混合物を、100mL/分の流量で導入し、650℃で1時間処理して、構造化モノリス担体の内表面および/または外表面に配置された活性成分のコーティングを得て、構造化モノリス触媒S-3を得た。ここで、構造化モノリス触媒の総重量に基づいて、活性成分のコーティングは、20重量%の量であった。
【0108】
構造化モノリス触媒S-3の活性成分のコーティング中の各成分の含有量の試験結果を表1に列挙した。
【0109】
構造化モノリス触媒S-3は、実施例1と同様のXRD試験結果を有した。炭素含有雰囲気下での処理を受けた構造化モノリス触媒S-3のXRDスペクトルにおいて、MgOについて約43.0°に回折ピークがあり、Al、CoAlO、およびMgAlについて約45.0°に回折ピークがあったばかりでなく、約43.0°および約45.0°に回折ピークは、大幅に強くなり、左側にシフトした。このことは、炭素含有雰囲気下での処理を受けた構造化モノリス触媒S-3について、42.6°および44.9°に回折ピークがあり、42.6°および44.9°の回折ピークが、炭化鉄(FeCおよびFe)のピークであることに起因すると考えられる。加えて、構造化モノリス触媒S-3について、2θで44.2°に回折ピークが存在し、44.2°の回折ピークは元素コバルトのピークであった。
【0110】
実施例4
a)262gの擬似ベーマイトを1.42kgの脱イオン水に添加し、分散させてスラリーを作製した。このスラリーに、23.8mLの塩酸を添加して15分間酸性化し、アルミナゲルを得た。金属酸化物基準で、6gの硝酸鉄(Fe換算)、6gの硝酸コバルト(Co換算)、10gのKMnO(MnO換算)を350mLの水に添加し、完全に溶解するまで撹拌した後、アルミナゲルを添加し、さらに15分間撹拌して第1溶液を得た。10gのMgOを30gの水に添加し、10分間撹拌し、次いで第1溶液に添加し、さらに20分間撹拌して、第1スラリーを得た。
【0111】
b)コーディエライトハニカム担体(細孔密度400細孔/平方インチ、断面開口率70%、正方形の細孔)を、工程a)で得られた第1スラリーでコーティングした。乾燥(100℃、4時間)後、得られたコーディエライトハニカム担体を管状炉に移し、COの濃度が10体積%のCOとNの混合物を、100mL/分の流量で導入し、600℃で1.5時間処理して半完成触媒を得た。
【0112】
c)工程b)で得られた半完成触媒を、30mlのRuCl溶液(溶液は、0.12gの量の元素Ruを含んでいた)でコーティングし、100℃で4時間乾燥し、400℃で2時間仮焼して、構造化モノリス担体の内表面および/または外表面上に配置された活性成分のコーティングを得て、構造化モノリシック触媒S-4を得た。ここで、構造化モノリス触媒の総重量に基づいて、活性成分のコーティングは25重量%の量であった。
【0113】
構造化モノリス触媒S-4の活性成分のコーティング中の各成分の含有量の試験結果を表1に列挙した。
【0114】
構造化モノリス触媒S-4は、実施例1と同様のXRD試験結果を有した。炭素含有雰囲気下での処理を受けた構造化モノリス触媒S-4のXRDスペクトルにおいて、MgOについて約43.0°に回折ピークがあり、Al、CoAlO、およびMgAlについて約45.0°に回折ピークがあったばかりでなく、約43.0°および約45.0°に回折ピークは、大幅に強くなり、左側にシフトした。このことは、炭素含有雰囲気下での処理を受けた構造化モノリス触媒S-4について、42.6°および44.9°の回折ピークがあり、42.6°および44.9°の回折ピークは、炭化鉄(FeCおよびFe)のピークであることに起因すると考えられる。加えて、構造化モノリス触媒S-4について、2θで44.2°に回折ピークが存在し、44.2°の回折ピークは、元素コバルトのピークであった。
【0115】
実施例5
COの濃度が10体積%であるCOおよびNの混合物を空気に置き換えたこと以外は、実施例1を繰り返し、構造化モノリス触媒5を得た。
【0116】
構造化モノリス触媒S-5中の各成分の含有量の試験結果を表1に列挙した。構造化モノリス触媒S-5をXRDによって分析した。XRDスペクトル(図1に示すように)から、2θで42.6°、44.2°、および44.9°には明らかな回折ピークは存在しなかったことが分かり、これは、構造化モノリス触媒S-5中のFeおよびCoの全てが、酸化物の形態で存在することを示している。
【0117】
実施例6
金属酸化物基準で、MgOを同量のCaOに置き換えたこと以外は、実施例1を繰り返し、構造化モノリス触媒S-6を得た。
【0118】
構造化モノリス触媒S-6中の各成分の含有量の試験結果を表1に列挙した。構造化モノリス触媒S-6は、実施例1と同様のXRD試験結果を有した。炭素含有雰囲気下での処理を受けた構造化モノリス触媒S-6のXRDスペクトルにおいて、42.6°および44.9°に回折ピークがあり、42.6°および44.9°の回折ピークは、炭化鉄(FeCおよびFe)のピークであった。加えて、構造化モノリス触媒S-6について、2θで44.2°に回折ピークが存在し、44.2°の回折ピークは、元素コバルトのピークであった。
【0119】
実施例7
金属酸化物基準で、KMnOを同じ量のCeClに置き換えたこと以外は、実施例1を繰り返し、構造化モノリス触媒S-7を得た。
【0120】
構造化モノリス触媒S-7中の各成分の含有量の試験結果を表1に列挙した。構造化モノリス触媒S-7は、実施例1と同様のXRD試験結果を有した。炭素含有雰囲気下での処理を受けた構造化モノリス触媒S-7のXRDスペクトルにおいて、MgOについて約43.0°に回折ピークがあり、Al、CoAlO、およびMgAlについて約45.0°に回折ピークがあったばかりでなく、約43.0°および約45.0°の回折ピークは、大幅に強くなり、左側にシフトした。このことは、炭素含有雰囲気下での処理を受けた構造化モノリス触媒S-7について、42.6°および44.9°に回折ピークがあり、42.6°および44.9°の回折ピークは、炭化鉄(FeCおよびFe)のピークであることに起因すると考えられる。加えて、構造化モノリス触媒S-7について、2θで44.2°に回折ピークが存在し、44.2°の回折ピークは、元素コバルトのピークであった。
【0121】
実施例8
金属酸化物基準で、3gの量の硝酸鉄を使用し、9gの量の硝酸コバルトを使用したこと以外は、実施例1を繰り返し、構造化モノリス触媒S-8を得た。
【0122】
構造化モノリス触媒S-8中の各成分の含有量の試験結果を表1に列挙した。構造化モノリス触媒S-8は、実施例1と同様のXRD試験結果を有した。炭素含有雰囲気下での処理を受けた構造化モノリス触媒S-8のXRDスペクトルにおいて、MgOについて約43.0°に回折ピークがあり、Al、CoAlO、およびMgAlについて約45.0°に回折ピークがあったばかりでなく、約43.0°および約45.0°の回折ピークは、大幅に強くなり、左側にシフトした。このことは、炭素含有雰囲気下での処理を受けた構造化モノリス触媒S-8について、42.6°および44.9°に回折ピークがあり、42.6°および44.9°の回折ピークは、炭化鉄(FeCおよびFe)のピークであることに起因すると考えられる。加えて、構造化モノリス触媒S-8について、2θで44.2°に回折ピークが存在し、44.2°の回折ピークは、元素コバルトのピークであった。
【0123】
実施例9
金属酸化物基準で、9gの量の硝酸鉄を使用し、3gの量の硝酸コバルトを使用したこと以外は、実施例1を繰り返し、構造化モノリス触媒S-9を得た。
【0124】
構造化モノリス触媒S-9中の各成分の含有量の試験結果を表1に列挙した。構造化モノリス触媒S-9は、実施例1と同様のXRD試験結果を有した。炭素含有雰囲気下での処理を受けた構造化モノリス触媒S-9のXRDスペクトルにおいて、MgOについて約43.0°に回折ピークがあり、Al、CoAlO、およびMgAlについて約45.0°に回折ピークがあったばかりでなく、約43.0°および約45.0°の回折ピークは、大幅に強くなり、左側にシフトした。このことは、炭素含有雰囲気下での処理を受けた構造化モノリス触媒S-9について、42.6°および44.9°に回折ピークがあり、42.6°および44.9°の回折ピークは、炭化鉄(FeCおよびFe)のピークであることに起因すると考えられる。加えて、構造化モノリス触媒S-9について、2θで44.2°に回折ピークが存在し、44.2°の回折ピークは、元素コバルトのピークであった。
【0125】
実施例10
COの濃度が10体積%であるCOおよびNの混合物を、エタンの濃度が10体積%であるエタンおよび窒素の混合物に置き換えたこと以外は、実施例1を繰り返し、構造化モノリス触媒10を得た。
【0126】
構造化モノリス触媒S-10中の各成分の含有量の試験結果を表1に列挙した。構造化モノリス触媒S-10は、実施例1と同様のXRD試験結果を有した。炭素含有雰囲気下での処理を受けた構造化モノリス触媒S-10のXRDスペクトルにおいて、MgOについて約43.0°に回折ピークがあり、Al、CoAlO、およびMgAlについて約45.0°に回折ピークがあったばかりでなく、約43.0°および約45.0°の回折ピークは、大幅に強くなり、左側にシフトした。このことは、炭素含有雰囲気下での処理を受けた構造化モノリス触媒S-10について、42.6°および44.9°に回折ピークがあり、42.6°および44.9°の回折ピークは、炭化鉄(FeCおよびFe)のピークであることに起因すると考えられる。加えて、構造化モノリス触媒S-10について、2θで44.2°に回折ピークが存在し、44.2°の回折ピークは、元素コバルトのピークであった。
【0127】
実施例11
使用したコーディエライトハニカム担体が、40細孔/平方インチの細孔密度および70%の断面開口率、ならびに正方形の細孔を有すること以外は、実施例1を繰り返した。構造化モノリス触媒11が得られ、ここで、構造化モノリス触媒の総重量に基づいて、活性成分のコーティングは、7重量%の量であった。
【0128】
実施例12
使用したコーディエライトハニカム担体が、40細孔/平方インチの細孔密度および70%の断面開口率、ならびに正方形の細孔を有すること以外は、実施例1を繰り返した。構造化モノリス触媒12が得られ、ここで、構造化モノリス触媒の総重量に基づいて、活性成分のコーティングは、10重量%の量であった。
【0129】
実施例13
使用したコーディエライトハニカム担体が、40細孔/平方インチの細孔密度および70%の断面開口率、ならびに正方形の細孔を有すること以外は、実施例1を繰り返した。構造化モノリス触媒13が得られ、ここで、構造化モノリス触媒の総重量に基づいて、活性成分のコーティングは、15重量%の量であった。
【0130】
比較例1
金属酸化物基準に基づいて、硝酸コバルトを同量の硝酸鉄に置き換えたこと以外は、実施例1を繰り返し、構造化モノリス触媒D-1を得た。
【0131】
構造化モノリス触媒D-1中の各成分の含有量の試験結果を表1に列挙した。
【0132】
比較例2
金属酸化物基準に基づいて、硝酸鉄を同量の硝酸コバルトに置き換えたこと以外は、実施例1を繰り返し、構造化モノリス触媒D-2を得た。
【0133】
構造化モノリス触媒D-2中の各成分の含有量の試験結果を表1に列挙した。
【0134】
比較例3
34.4gの乾燥γ-アルミナ微小球担体を秤量し、10.09gの硝酸セリウム、2.13gの硝酸ランタン、2.7gの硝酸銅、および18mLの水からなる溶液を含浸させ、120℃で乾燥させ、次いで600℃で1時間仮焼して、触媒前駆体を得た。10gの触媒前駆体を30gのアルミニウムゾル(固形分21.5%)と混合して、コーディエライトハニカム担体(400細孔/平方インチの細孔密度および70%の断面開口率、ならびに正方形の細孔)にコーティングし、次いで、乾燥(100℃、4時間)および仮焼(400℃、2時間)に供して、構造化モノリス触媒D-3を得た。ここで、構造化モノリス触媒の総重量に基づいて、活性成分のコーティングは、25重量%であった。
【0135】
【表1】
【0136】
第1金属元素、第2金属元素、および第3金属元素の含有量は、酸化物基準で重量パーセントとして表した。第4金属元素の含有量は、元素基準で重量パーセントとして表した。
【0137】
試験例1
この試験例を使用して、実施例および比較例で得られた触媒の、好気条件下において不完全再生煙道ガス中のNOx排出を減少させることに関する効果を示した。特に、構造化モノリス触媒を、100%水蒸気雰囲気下で12時間、800℃でエージングし、次いで、不完全再生煙道ガスの処理に関するシミュレーション評価を行った。
【0138】
不完全再生煙道ガスの処理に関する評価は、煙道ガス中のNOxを減少させることをシミュレートする固定床装置上で行われ、構造化モノリス触媒は、10gの充填量、650℃の反応温度、および1500mL/分の供給ガスの体積流量で触媒床中に充填された。供給ガスは、3.7体積%のCO、0.5体積%の酸素、800ppmのNH、および残りのNを含有していた。気体生成物をオンライン赤外分析器で分析して、反応後のNH、NOx、およびCOの濃度を得た。結果を表2に列挙した。
【0139】
【表2】
【0140】
表2のデータから、好気条件下で接触分解プロセスによって不完全再生を処理する際に使用した場合、比較例で得られた触媒と比較して、本発明の構造化モノリス触媒は、NHおよびNOxの排出を低減するより優れた性能を有していたことが分かった。加えて、評価の際には、エージングされた構造化モノリス触媒を使用した。エージングされた構造化モノリス触媒は、依然として、NHおよびNOxを除去する高活性を達成した。したがって、本発明の構造化モノリス触媒は、良好な水熱安定性を有していた。
【0141】
試験例1を使用して、不完全再生煙道ガスと構造化モノリス触媒との接触をCOボイラー中で行った、不完全再生煙道ガスを処理するプロセスをシミュレートした。補助空気がCOボイラーに導入されたため、接触は、酸素の存在下で行われた。したがって、試験例1で使用した煙道ガスは、いくらかの酸素を含有していた。試験例1の結果は、本発明の構造化モノリス触媒がCOボイラー内で不完全再生煙道ガスと接触した場合、本発明の構造化モノリス触媒は、従来技術と比較して、NHなどの還元窒化物に対してより高い触媒転化活性を有することを証明することができた。
【0142】
試験例2
この試験例を使用して、実施例および比較例で得られた触媒の、酸素希薄条件下において不完全再生煙道ガス中のNOx排出を減少させることに関する効果を示した。特に、構造化モノリス触媒を、100%水蒸気雰囲気下で12時間、800℃でエージングし、次いで、不完全再生煙道ガスの処理に関するシミュレーション評価を行った。
【0143】
不完全再生煙道ガスの処理に関する評価は、煙道ガス中のNOxを減少させることをシミュレートする固定床装置上で行われ、構造化モノリス触媒は、10gの充填量、650℃の反応温度、および1500mL/分の供給ガスの体積流量で触媒床中に充填された。供給ガスは、3.7体積%のCO、800ppmのNH、および残りのNを含有していた。気体生成物をオンライン赤外分析器で分析して、反応後のNH、NOx、およびCOの濃度を得た。結果を表3に列挙した。
【0144】
【表3】
【0145】
表3のデータから、嫌気条件下で接触分解プロセスによって不完全再生を処理する際に使用した場合、比較例で得られた触媒と比較して、本発明の構造化モノリス触媒は、NH排出を低減するより優れた性能を有していたことが分かった。加えて、評価の際には、エージングされた構造化モノリス触媒を使用した。エージングされた構造化モノリス触媒は、依然として、NHを除去する高活性を達成した。したがって、本発明の構造化モノリス触媒は、良好な水熱安定性を有していた。
【0146】
試験例2を使用して、不完全再生煙道ガスと構造化モノリス触媒との接触をCOボイラーの手前の煙道ガスチャネル中で行った、不完全再生煙道ガスを処理するプロセスをシミュレートした。COボイラーの手前の煙道ガスチャネルが酸素希薄条件下にあったため、接触は、酸素がほとんど存在しない状態で行われた。したがって、試験例2で使用した煙道ガスは、酸素を含有していなかった。試験例2の結果は、本発明の構造化モノリス触媒がCOボイラーの手前の煙道ガスチャネル中で不完全再生煙道ガスと接触した場合、本発明の構造化モノリス触媒は、従来技術と比較して、NHなどの還元窒化物に対してより高い触媒転化活性を有することを証明することができた。
【0147】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で、任意の適切な様式での技術的特徴の任意の組み合わせを含む、様々な容易な改変が、本発明の実施形態に対してなされてもよい。そのような容易な改変および組み合わせは、本発明の開示とみなされるべきであり、それによって、本発明の保護範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0148】
図1図1は、実施例1および5で得られた煙道ガス中のNOx排出を低減するための構造化モノリス触媒のXRDパターンである。
図1