(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】エピトープおよびパラトープを同定する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240628BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240628BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240628BHJP
C40B 40/10 20060101ALI20240628BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240628BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240628BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240628BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240628BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240628BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240628BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240628BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240628BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240628BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
G01N33/53 D
C12N15/13
C12N15/63 Z
C40B40/10
C07K16/00
C12N15/62 Z
C07K16/46
C07K19/00
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12Q1/02
(21)【出願番号】P 2021536374
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(86)【国際出願番号】 US2019068346
(87)【国際公開番号】W WO2020139834
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-22
(32)【優先日】2018-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514283401
【氏名又は名称】ビステラ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウーラコット, アンドリュー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン, ルーク
(72)【発明者】
【氏名】ラマクリシュナン, ブーパシー
(72)【発明者】
【氏名】ティシレ, ハミド
(72)【発明者】
【氏名】ビスワナサン, カルシク
(72)【発明者】
【氏名】シュリバー, ザッカリー
(72)【発明者】
【氏名】バブコック, グレゴリー
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-525795(JP,A)
【文献】特表2007-504840(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0346192(US,A1)
【文献】C K Hua et al,Computaitonally-driven identification of antibody epitopes,eLIFE,2017年10月04日,e29023,pp.1-29
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的ポリペプチド上のエピトープを同定する方法であって、
(a)抗体分子を前記標的ポリペプチドの複数のバリアントに結合させることと、
(b)前記抗体分子への減少した結
合を示す複数のバリアント
を富化するこ
とと、
(c)前記複数の前
記富化バリアントのそれぞれについて富化スコアを決定するこ
とと、
(d)前記富化スコアに従って束縛される
、抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルを生成することと、
(e)前記抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルに基づいて、前記抗体分子によって結合され得る前記標的ポリペプチド上の部位を同定することと、を含み
それによって、標的ポリペプチド上のエピトープを同定する、方法。
【請求項2】
抗体分子上のパラトープを同定する方法であって、
(a)前記抗体分子を標的ポリペプチドの複数のバリアントに結合させることと、
(b)前記抗体分子への減少した結合を示す複数のバリアント
を富化するこ
とと、
(c)前記複数の前記富化バリアントのそれぞれについて富化スコアを決定するこ
とと、
(d)前記富化スコアに従って束縛される、抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルを生成することと、
(e)前記抗体
分子-標的ポリペプチドドッキングモデルに基づいて、前記標的ポリペプチドによって結合され得る前記抗体分子上の1またはそれを超える部位を同定することと、を含み
それによって、抗体分子上のパラトープを同定する、方法。
【請求項3】
ステップ(a)が、
(i)前記抗体分子を、
ライブラリーにより表示される前記標的ポリペプチドの複数のバリアン
トに結合させること;および/または
(ii)前記抗体分子を、前記標的ポリペプチドの複数のバリアントを発現する
、ライブラリーにより含まれる複数の細
胞に結合させること
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(i)前記複数の細胞のそれぞれが、前記標的ポリペプチドの
1つの別個のバリアントを発現する、かつ/または
(ii)前記細胞が、真核細
胞である、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のバリアントが、
(i)前記標的ポリペプチドの1またはそれを超える表面残基に変異を含む、
(ii)前記標的ポリペプチドの選択された表面残基の別個の変異を含む、
(iii)前記標的ポリペプチドの複数の選択された表面残基のそれぞれの別個の変異を含む、かつ/または
(iv)前記標的ポリペプチドの野生型アミノ酸配列に対して単一のアミノ酸置換を含む
、請求項
1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記複数のバリアントのそれぞれが、前記標的ポリペプチドの野生型アミノ酸配列に対して単一のアミノ酸置換を含む
、請求項
1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記単一のアミノ酸置換が、前記標的ポリペプチドの表面残基で生じる、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記減少した結合が、野生型標的ポリペプチドおよび前記抗体について検出された前記結合に対して、前記バリアントおよび前記抗体分子について検出された結合の減少を含む
、請求項
1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)が、野生型標的ポリペプチドによって示される前記抗体分子への前記結合
の80%未
満を示すバリアント
を富化するこ
とを含
む、請求項
1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ステップ(b)が、野生型標的ポリペプチドを含む細胞によって示される前記抗体分子への前記結合
の80%未
満を示す細胞
を富化するこ
とを含
む、請求項
1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ステップ(b)が、前記抗体分子への減少した結合を示すバリアントについて、1またはそれを超え
る富化を行うことを含む
、請求項
1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記抗体分子への減少した結合を示す前記バリアントを同定すること、をさらに含む
、請求項
1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ステップ(c)が、前記複数の前
記富化バリアントのそれぞれについて出現頻度を決定することを
含む、請求項
1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
(i)前記富化スコアが、前記標的ポリペプチド
のアミノ酸配列の単一残基に特異的である、かつ/または
(ii)各富化スコアが、前記標的ポリペプチド
のアミノ酸配列の異なる単一残基に特異的である
、
請求項
1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記標的ポリペプチドの前記複数のバリアントの複製物を用いてステップ(a)~(c)を少なくとも1
回繰り返すこと、をさらに含み、ステップ(c)が、1またはそれを超える無差別変
異を省略すること、をさらに含む
、請求項
1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルが、1またはそれを超える誘引性束縛を加えることによって束縛され、前記誘引性束縛が、第1の予め選択された値よりも大きい富化スコアを有する残基に対するもので
ある、請求項
1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記誘引性束縛が、前記富化スコアに基づいて線形に調整されたボーナスを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルが、第2の予め選択された値未満の富化スコアを有する残基に対する反発的束縛を加えることによって束縛さ
れる、請求項
1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
ステップ(d)が、
(i)前記抗体分子のモデルと前記標的ポリペプチドのモデルとの間に
1つのドッキングポーズを生成すること;および/または
(ii)前記抗体分子のモデルと前記標的ポリペプチドのモデルとの間に複数のドッキングポーズを生成すること
を含む
、請求項
1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
ステップ(d)が、ドッキングアルゴリズ
ムに従って前記複数のドッキングポーズをスコアリングすることをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(d)が、最高スコ
アを有する前記複数のドッキングポーズのサブセットを選択することをさらに
含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体分子の前記モデルが、前記抗体の複数の相同性モデルに由来するアンサンブル抗体相同性モデルを含む、請求項19~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
ステップ(d)が
、公知の抗体-抗原複合体には典型的でない会合様式を示す抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルを除去することをさらに含む
、請求項
1~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
ステップ(d)が、
(i)複数の抗体分子-標的ポリペプチドモデルを生成すること;および/または
(ii)前記抗体分子によって結合され得る前記標的ポリペプチド上の複数の部位を同定すること
を含む
、請求項
1~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記抗体
分子-標的ポリペプチドドッキングモデルが、
(i)前記抗体分子を前記標的ポリペプチドの複数のバリアントに結合させることと、
(ii)前記抗体分子への減少した結合を示す複数のバリアント
を富化するこ
とと、
(iii)前記複数の前記富化バリアントのそれぞれについて富化スコアを決定するこ
とと、
を含む方法によって決定される複数の富化スコアに従って束縛される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記抗体
分子-標的ポリペプチドドッキングモデルが、
(i)前記抗体を標的ポリペプチドの複数のバリアントに結合させることと、
(ii)
前記抗体分子への減少した結合を示すバリアント
を富化するこ
とと、
(iii)前記複数の前
記富化バリアントのそれぞれについて富化スコアを決定するこ
とと、を含む方法によって決定され
る複数の富化スコアに従って束縛される、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月24日に出願された米国仮出願第62/784,617号明細書の利益を主張する。前述の出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
抗体は、高い特異性および親和性で標的抗原に結合する。分子的には、結合が起こるためのエネルギー的に好ましい相互作用に寄与する抗体(パラトープ)および抗原(エピトープ)中のアミノ酸のセットによって、結合が、促進される。抗体-抗原相互作用を支配する構造的特徴を決定することは、抗体の作用機構を理解するために、および抗体工学の取り組みを支援するための参照として、重要である。X線共結晶学は、構造パラトープおよびエピトープの両方を高分解能で詳述する、抗体-抗原複合体の構造を決定するための主要な方法である。しかしながら、高分解能共結晶構造の達成には、かなりのリソース、スループット、および特殊な技術的専門知識の要件がある。パラトープおよびエピトープを特徴付ける他の方法は、より大きなスループットおよび実験的アクセス可能性を提供するが、典型的には分解能のトレードオフを伴う。競合結合によるエピトープビニングまたはアラニンスキャニングによるエピトープの特徴付けはそれぞれ、結晶学よりも速い速度およびスループットを提供するが、結晶学におけるような分子の詳細も特徴付けの包括性も提供することはできない。したがって、当技術分野では、抗体とその認識された抗原との間のエピトープおよびパラトープ領域を同定する改善された方法が、必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様では、本開示は、標的ポリペプチド(例えば、本明細書に記載の標的ポリペプチド)上のエピトープを同定する方法を特徴とし、上記方法は、
(a)抗体分子(例えば、本明細書に記載の抗体分子)を標的ポリペプチドの複数のバリアントに結合させることと、
(b)抗体分子への変化した(例えば、減少した)結合を示す複数のバリアントを得ること(例えば、富化すること)と、
(c)複数の得られた(例えば、富化)バリアントのそれぞれについて富化スコアを決定すること(例えば、計算すること)と、
(d)富化スコアに従って束縛される、抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルを生成することと、
(e)抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルに基づいて、抗体分子によって結合され得る標的ポリペプチド上の部位を同定することと、を含み、
それによって、標的ポリペプチド上のエピトープを同定する、方法。
【0004】
一実施形態では、変化した結合は、変化した結合親和性、例えば、低下した結合親和性を含む。
【0005】
一実施形態では、ステップ(a)は、抗体分子を、標的ポリペプチドの複数のバリアントを表示するライブラリーに結合させることを含む。一実施形態では、ステップ(a)は、抗体分子を、標的ポリペプチドの複数のバリアントを発現する(例えば、表示する)複数の細胞を含むライブラリーに結合させることを含む。一実施形態では、複数の細胞のそれぞれは、標的ポリペプチドの約1つの別個のバリアントを発現する。一実施形態では、細胞は真核細胞、例えば、酵母細胞である。
【0006】
一実施形態では、複数のバリアントは、標的ポリペプチドの1またはそれを超える表面残基上の変異を含む。一実施形態では、複数のバリアントは、標的ポリペプチドの選択された表面残基の別個の変異を含む。一実施形態では、複数のバリアントは、標的ポリペプチドの複数の選択された表面残基のそれぞれの別個の変異を含む。
【0007】
一実施形態では、複数のバリアントは、標的ポリペプチドの野生型アミノ酸配列に対して、単一のアミノ酸置換を含む。一実施形態では、複数のバリアントのそれぞれは、標的ポリペプチドの野生型アミノ酸配列に対して単一のアミノ酸置換を含む。一実施形態では、単一のアミノ酸置換は、標的ポリペプチドの表面残基で生じる。
【0008】
一実施形態では、変化した(例えば、減少した)結合は、野生型標的ポリペプチドおよび抗体について検出された結合に対して、バリアントおよび抗体分子について検出された結合の変化(例えば、減少)を含む。
【0009】
一実施形態では、ステップ(b)は、野生型標的ポリペプチドによって示される抗体分子への結合の約80%未満(例えば、約0.01%、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%未満)を示すバリアントを得ること(例えば、富化すること)を含む。一実施形態では、減少した結合は、野生型標的ポリペプチドによって示される結合の少なくとも約20%(例えば、少なくとも約20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)である。
【0010】
一実施形態では、ステップ(b)は、野生型標的ポリペプチドを含む細胞によって示される抗体分子への結合の約80%未満(例えば、約0.01%、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%未満)を示す細胞を得ること(例えば、富化すること)を含む。一実施形態では、減少した結合は、野生型標的ポリペプチドを含む細胞によって示される結合の少なくとも約20%(例えば、少なくとも約20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)である。
【0011】
一実施形態では、ステップ(b)は、抗体分子への減少した結合を示すバリアントに対して、1またはそれを超える、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれを超える富化を行うことを含む。
【0012】
一実施形態では、本方法は、例えばステップ(c)の前に、例えばバリアントをコードする遺伝子を配列決定することによって、例えば次世代シーケンシングによって、抗体分子への変化した(例えば、減少した)結合を示すバリアントを同定することをさらに含む。
【0013】
一実施形態では、ステップ(c)は、複数の得られた(例えば、富化)バリアントのそれぞれについて出現頻度を決定することを含む。一実施形態では、ステップ(c)は、特定の残基における別個の変異を含む各バリアントの出現頻度を集約すること、および/または出現頻度がより高いバリアントを重み付けすること(例えば、重く重み付けすること)をさらに含む。
【0014】
一実施形態では、富化スコアは、標的ポリペプチドのアミノ酸配列の単一残基に特異的である。一実施形態では、各富化スコアは、標的ポリペプチドのアミノ酸配列の異なる単一残基に特異的である。
【0015】
一実施形態では、本方法は、標的ポリペプチドの複数のバリアントの複製物を用いてステップ(a)~(c)を少なくとも1回(例えば、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回またはそれを超えて)繰り返すこと、をさらに含み、ステップ(c)は、1またはそれを超える無差別変異、例えば、複製物の50%超が30%超の富化スコアを有し、複製物の75%超が15%超の富化スコアを有する変異を省略すること、をさらに含む。
【0016】
一実施形態では、抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルは、1またはそれを超える誘引性束縛(attractive constraint)を加えることによって束縛され、必要に応じて、誘引性束縛は、第1の予め選択された値より大きい富化スコアを有する残基に対するものである。一実施形態では、第1の予め選択された値は、20%~40%、例えば、25%~35%、例えば、約25%、約30%、または約35%である。一実施形態では、誘引性束縛は、富化スコアに基づいて線形に調整されたボーナス(linearly scaled bonus)を含む。
【0017】
一実施形態では、抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルは、第2の予め選択された値未満の富化スコアを有する残基に対する反発的束縛(repulsive constraint)を加えることによって、束縛される。一実施形態では、第2の予め選択された値は、5%~20%、例えば、10%~15%、例えば、約10%、約12.5%、または約15%である。
【0018】
一実施形態では、ステップ(d)は、抗体分子のモデルと標的ポリペプチドのモデルとの間にドッキングポーズを生成することを含む。一実施形態では、ステップ(d)は、抗体分子のモデルと標的ポリペプチドのモデルとの間に複数のドッキングポーズを生成することを含む。
【0019】
一実施形態では、ステップ(d)は、ドッキングアルゴリズム、例えばSnugDockに従って複数のドッキングポーズをスコアリングすることをさらに含む。一実施形態では、ステップ(d)は、最高スコア、例えば、最高スコアリング1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900、1000またはそれを超えるドッキングポーズを有する複数のドッキングポーズのサブセットを選択することをさらに含む。一実施形態では、ステップ(d)は、複数のドッキングポーズの選択されたサブセットを使用してアンサンブルドッキングポーズを生成することと、アンサンブルドッキングポーズに従って抗体分子のモデルおよび標的ポリペプチドのモデルを設定することと、をさらに含む。
【0020】
一実施形態では、抗体分子のモデルは、抗体の複数の相同性モデルに由来するアンサンブル抗体相同性モデルを含む。
【0021】
一実施形態では、ステップ(d)は、例えば、抗体-抗原結晶構造に由来する構造フィルタに従って、公知の抗体-抗原複合体には非典型的な会合様式を示す抗体分子-標的ポリペプチドドッケティングモデルを除去することをさらに含む。
【0022】
一実施形態では、ステップ(d)は、複数の抗体分子-標的ポリペプチドモデルを生成することを含む。
【0023】
一実施形態では、ステップ(e)は、抗体分子によって結合され得る標的ポリペプチド上の複数の部位を同定することを含む。
【0024】
一実施形態では、部位は、標的ポリペプチド上の1またはそれを超える非連続領域を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、部位は、標的ポリペプチド上の連続領域を含むか、またはそれからなる。
【0025】
別の態様では、本開示は、標的ポリペプチド(例えば、本明細書に記載の標的ポリペプチド)上のエピトープを同定する方法であって、上記方法が、
(a)抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルを生成することであって、抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルが、
(i)抗体分子(例えば、本明細書に記載の抗体分子)を標的ポリペプチドの複数のバリアントに結合させることと、
(ii)抗体分子への変化した(例えば、減少した)結合を示す複数のバリアントを得ること(例えば、富化すること)と、
(iii)複数の富化バリアントのそれぞれについて富化スコアを決定すること(例えば、計算すること)と、
を含む方法によって決定される複数の富化スコアに従って束縛される、抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルを生成することと、
(b)抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルに基づいて、抗体分子によって結合され得る標的ポリペプチド上の部位を同定することと、を含み、
それによって、標的ポリペプチド上のエピトープを同定する、方法。
【0026】
一実施形態では、変化した結合は、変化した結合親和性、例えば、低下した結合親和性を含む。
【0027】
一実施形態では、ステップ(a)(i)は、抗体分子を、標的ポリペプチドの複数のバリアントを表示するライブラリーに結合させることを含む。一実施形態では、ステップ(a)(i)は、抗体分子を、標的ポリペプチドの複数のバリアントを発現する(例えば、表示する)複数の細胞を含むライブラリーに結合させることを含む。一実施形態では、複数の細胞のそれぞれは、標的ポリペプチドの約1つの別個のバリアントを発現する。一実施形態では、細胞は真核細胞、例えば、酵母細胞である。
【0028】
一実施形態では、複数のバリアントは、標的ポリペプチドの1またはそれを超える表面残基上の変異を含む。一実施形態では、複数のバリアントは、標的ポリペプチドの選択された表面残基の別個の変異を含む。一実施形態では、複数のバリアントは、標的ポリペプチドの複数の選択された表面残基のそれぞれの別個の変異を含む。
【0029】
一実施形態では、複数のバリアントは、標的ポリペプチドの野生型アミノ酸配列に対して、単一のアミノ酸置換を含む。一実施形態では、複数のバリアントのそれぞれは、標的ポリペプチドの野生型アミノ酸配列に対して単一のアミノ酸置換を含む。一実施形態では、単一のアミノ酸置換は、標的ポリペプチドの表面残基で生じる。
【0030】
一実施形態では、変化した(例えば、減少した)結合は、野生型標的ポリペプチドおよび抗体について検出された結合に対して、バリアントおよび抗体分子について検出された結合の変化(例えば、減少)を含む。
【0031】
一実施形態では、ステップ(a)(ii)は、野生型標的ポリペプチドによって示される抗体分子への結合の約80%未満(例えば、約0.01%、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%未満)を示すバリアントを得ること(例えば、富化すること)を含む。一実施形態では、減少した結合は、野生型標的ポリペプチドによって示される結合の少なくとも約20%(例えば、少なくとも約20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)である。
【0032】
一実施形態では、ステップ(a)(ii)は、野生型標的ポリペプチドを含む細胞によって示される抗体分子への結合の約80%未満(例えば、約0.01%、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%未満)を示す細胞を得ること(例えば、富化すること)を含む。一実施形態では、減少した結合は、野生型標的ポリペプチドを含む細胞によって示される結合の少なくとも約20%(例えば、少なくとも約20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)である。
【0033】
一実施形態では、ステップ(a)(ii)は、抗体分子への減少した結合を示すバリアントに対して、1またはそれを超える、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれを超える富化を行うことを含む。
【0034】
一実施形態では、本方法は、例えばステップ(a)(iii)の前に、例えばバリアントをコードする遺伝子を配列決定することによって、例えば次世代シーケンシングによって、抗体分子への変化した(例えば、減少した)結合を示すバリアントを同定することをさらに含む。
【0035】
一実施形態では、ステップ(a)(iii)は、複数の得られた(例えば、富化)バリアントのそれぞれについて出現頻度を決定することを含む。一実施形態では、ステップ(a)(iii)は、特定の残基における別個の変異を含む各バリアントの出現頻度を集約すること、および/または出現頻度がより高いバリアントを重み付けすること(例えば、重く重み付けすること)をさらに含む。
【0036】
一実施形態では、富化スコアは、標的ポリペプチドのアミノ酸配列の単一残基に特異的である。一実施形態では、各富化スコアは、標的ポリペプチドのアミノ酸配列の異なる単一残基に特異的である。
【0037】
一実施形態では、本方法は、標的ポリペプチドの複数のバリアントの複製物を用いてステップ(a)(i)~(a)(iii)を少なくとも1回(例えば、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回またはそれを超えて)繰り返すこと、をさらに含み、ステップ(c)は、1またはそれを超える無差別変異、例えば、複製物の50%超が30%超の富化スコアを有し、複製物の75%超が15%超の富化スコアを有する変異を省略すること、をさらに含む。
【0038】
一実施形態では、抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルは、1またはそれを超える誘引性束縛を加えることによって束縛され、必要に応じて、誘引性束縛は、第1の予め選択された値より大きい富化スコアを有する残基に対するものである。一実施形態では、第1の予め選択された値は、20%~40%、例えば、25%~35%、例えば、約25%、約30%、または約35%である。一実施形態では、誘引性束縛は、富化スコアに基づいて線形に調整されたボーナスを含む。
【0039】
一実施形態では、抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルは、第2の予め選択された値未満の富化スコアを有する残基に対する反発的束縛を加えることによって、束縛される。一実施形態では、第2の予め選択された値は、5%~20%、例えば、10%~15%、例えば、約10%、約12.5%、または約15%である。
【0040】
一実施形態では、ステップ(a)は、抗体分子のモデルと標的ポリペプチドのモデルとの間にドッキングポーズを生成することを含む。一実施形態では、ステップ(a)は、抗体分子のモデルと標的ポリペプチドのモデルとの間に複数のドッキングポーズを生成することを含む。
【0041】
一実施形態では、ステップ(a)は、ドッキングアルゴリズム、例えばSnugDockに従って複数のドッキングポーズをスコアリングすることをさらに含む。一実施形態では、ステップ(a)は、最高スコア、例えば、最高スコアリング1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900、1000またはそれを超えるドッキングポーズを有する複数のドッキングポーズのサブセットを選択することをさらに含む。一実施形態では、ステップ(a)は、複数のドッキングポーズの選択されたサブセットを使用してアンサンブルドッキングポーズを生成することと、アンサンブルドッキングポーズに従って抗体分子のモデルおよび標的ポリペプチドのモデルを設定することと、をさらに含む。
【0042】
一実施形態では、抗体分子のモデルは、抗体の複数の相同性モデルに由来するアンサンブル抗体相同性モデルを含む。
【0043】
一実施形態では、ステップ(a)は、例えば、抗体-抗原結晶構造に由来する構造フィルタに従って、公知の抗体-抗原複合体には非典型的な会合様式を示す抗体分子-標的ポリペプチドドッケティングモデルを除去することをさらに含む。
【0044】
一実施形態では、ステップ(a)は、複数の抗体分子-標的ポリペプチドモデルを生成することを含む。
【0045】
一実施形態では、ステップ(b)は、抗体分子によって結合され得る標的ポリペプチド上の複数の部位を同定することを含む。
【0046】
一実施形態では、部位は、標的ポリペプチド上の1またはそれを超える非連続領域を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、部位は、標的ポリペプチド上の連続領域を含むか、またはそれからなる。
【0047】
さらに別の態様では、本開示は、抗体分子上のパラトープを同定する方法であって、
(a)抗体分子を標的ポリペプチドの複数のバリアントに結合させることと、
(b)抗体分子への減少した結合を示す複数のバリアントを得ること(例えば、富化すること)と、
(c)複数の富化バリアントのそれぞれについて富化スコアを決定すること(例えば、計算すること)と、
(d)富化スコアに従って束縛される、抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルを生成することと、
(e)抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルに基づいて、標的ポリペプチドによって結合され得る抗体分子上の1またはそれを超える部位を同定することと、を含み
それによって、抗体分子上のパラトープを同定する、方法。
【0048】
一実施形態では、変化した結合は、変化した結合親和性、例えば、低下した結合親和性を含む。
【0049】
一実施形態では、ステップ(a)は、抗体分子を、標的ポリペプチドの複数のバリアントを表示するライブラリーに結合させることを含む。一実施形態では、ステップ(a)は、抗体分子を、標的ポリペプチドの複数のバリアントを発現する(例えば、表示する)複数の細胞を含むライブラリーに結合させることを含む。一実施形態では、複数の細胞のそれぞれは、標的ポリペプチドの約1つの別個のバリアントを発現する。一実施形態では、細胞は真核細胞、例えば、酵母細胞である。
【0050】
一実施形態では、複数のバリアントは、標的ポリペプチドの1またはそれを超える表面残基上の変異を含む。一実施形態では、複数のバリアントは、標的ポリペプチドの選択された表面残基の別個の変異を含む。一実施形態では、複数のバリアントは、標的ポリペプチドの複数の選択された表面残基のそれぞれの別個の変異を含む。
【0051】
一実施形態では、複数のバリアントは、標的ポリペプチドの野生型アミノ酸配列に対して、単一のアミノ酸置換を含む。一実施形態では、複数のバリアントのそれぞれは、標的ポリペプチドの野生型アミノ酸配列に対して単一のアミノ酸置換を含む。一実施形態では、単一のアミノ酸置換は、標的ポリペプチドの表面残基で生じる。
【0052】
一実施形態では、変化した(例えば、減少した)結合は、野生型標的ポリペプチドおよび抗体について検出された結合に対して、バリアントおよび抗体分子について検出された結合の変化(例えば、減少)を含む。
【0053】
一実施形態では、ステップ(b)は、野生型標的ポリペプチドによって示される抗体分子への結合の約80%未満(例えば、約0.01%、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%未満)を示すバリアントを得ること(例えば、富化すること)を含む。一実施形態では、減少した結合は、野生型標的ポリペプチドによって示される結合の少なくとも約20%(例えば、少なくとも約20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)である。
【0054】
一実施形態では、ステップ(b)は、野生型標的ポリペプチドを含む細胞によって示される抗体分子への結合の約80%未満(例えば、約0.01%、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%未満)を示す細胞を得ること(例えば、富化すること)を含む。一実施形態では、減少した結合は、野生型標的ポリペプチドを含む細胞によって示される結合の少なくとも約20%(例えば、少なくとも約20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)である。
【0055】
一実施形態では、ステップ(b)は、抗体分子への減少した結合を示すバリアントに対して、1またはそれを超える、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれを超える富化を行うことを含む。
【0056】
一実施形態では、本方法は、例えばステップ(c)の前に、例えばバリアントをコードする遺伝子を配列決定することによって、例えば次世代シーケンシングによって、抗体分子への変化した(例えば、減少した)結合を示すバリアントを同定することをさらに含む。
【0057】
一実施形態では、ステップ(c)は、複数の得られた(例えば、富化)バリアントのそれぞれについて出現頻度を決定することを含む。一実施形態では、ステップ(c)は、特定の残基における別個の変異を含む各バリアントの出現頻度を集約すること、および/または出現頻度がより高いバリアントを重み付けすること(例えば、重く重み付けすること)をさらに含む。
【0058】
一実施形態では、富化スコアは、標的ポリペプチドのアミノ酸配列の単一残基に特異的である。一実施形態では、各富化スコアは、標的ポリペプチドのアミノ酸配列の異なる単一残基に特異的である。
【0059】
一実施形態では、本方法は、標的ポリペプチドの複数のバリアントの複製物を用いてステップ(a)~(c)を少なくとも1回(例えば、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回またはそれを超えて)繰り返すこと、をさらに含み、ステップ(c)は、1またはそれを超える無差別変異、例えば、複製物の50%超が30%超の富化スコアを有し、複製物の75%超が15%超の富化スコアを有する変異を省略すること、をさらに含む。
【0060】
一実施形態では、抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルは、1またはそれを超える誘引性束縛を加えることによって束縛され、必要に応じて、誘引性束縛は、第1の予め選択された値より大きい富化スコアを有する残基に対するものである。一実施形態では、第1の予め選択された値は、20%~40%、例えば、25%~35%、例えば、約25%、約30%、または約35%である。一実施形態では、誘引性束縛は、富化スコアに基づいて線形に調整されたボーナスを含む。
【0061】
一実施形態では、抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルは、第2の予め選択された値未満の富化スコアを有する残基に対する反発的束縛を加えることによって、束縛される。一実施形態では、第2の予め選択された値は、5%~20%、例えば、10%~15%、例えば、約10%、約12.5%、または約15%である。
【0062】
一実施形態では、ステップ(d)は、抗体分子のモデルと標的ポリペプチドのモデルとの間にドッキングポーズを生成することを含む。一実施形態では、ステップ(d)は、抗体分子のモデルと標的ポリペプチドのモデルとの間に複数のドッキングポーズを生成することを含む。
【0063】
一実施形態では、ステップ(d)は、ドッキングアルゴリズム、例えばSnugDockに従って複数のドッキングポーズをスコアリングすることをさらに含む。一実施形態では、ステップ(d)は、最高スコア、例えば、最高スコアリング1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900、1000またはそれを超えるドッキングポーズを有する複数のドッキングポーズのサブセットを選択することをさらに含む。一実施形態では、ステップ(d)は、複数のドッキングポーズの選択されたサブセットを使用してアンサンブルドッキングポーズを生成することと、アンサンブルドッキングポーズに従って抗体分子のモデルおよび標的ポリペプチドのモデルを設定することと、をさらに含む。
【0064】
一実施形態では、抗体分子のモデルは、抗体の複数の相同性モデルに由来するアンサンブル抗体相同性モデルを含む。
【0065】
一実施形態では、ステップ(d)は、例えば、抗体-抗原結晶構造に由来する構造フィルタに従って、公知の抗体-抗原複合体には非典型的な会合様式を示す抗体分子-標的ポリペプチドドッケティングモデルを除去することをさらに含む。
【0066】
一実施形態では、ステップ(d)は、複数の抗体分子-標的ポリペプチドモデルを生成することを含む。
【0067】
一実施形態では、ステップ(e)は、標的ポリペプチドによって結合され得る抗体分子上の複数の部位を同定することを含む。
【0068】
一実施形態では、部位は、抗体分子上の1またはそれを超える非連続領域を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、部位は、抗体分子上の連続領域を含むか、またはそれからなる。
【0069】
さらに別の態様では、本開示は、抗体上のパラトープを同定する方法であって、
(a)抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルを生成することであって、抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルが、
(i)抗体を標的ポリペプチドの複数のバリアントに結合させることと、
(ii)抗体分子への減少した結合を示すバリアントを得ること(例えば、富化すること)と、
(iii)複数の得られた(例えば、富化)バリアントのそれぞれについて富化スコアを決定すること(例えば、計算すること)と、
を含む方法によって決定される(例えば、計算される)富化スコアに従って束縛される、抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルを生成することと、
(b)抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルに基づいて、標的ポリペプチドによって結合され得る抗体分子上の1またはそれを超える部位を同定することと、を含み
それによって、標的ポリペプチド上のパラトープを同定する、方法。
【0070】
一実施形態では、変化した結合は、変化した結合親和性、例えば、低下した結合親和性を含む。
【0071】
一実施形態では、ステップ(a)(i)は、抗体分子を、標的ポリペプチドの複数のバリアントを表示するライブラリーに結合させることを含む。一実施形態では、ステップ(a)(i)は、抗体分子を、標的ポリペプチドの複数のバリアントを発現する(例えば、表示する)複数の細胞を含むライブラリーに結合させることを含む。一実施形態では、複数の細胞のそれぞれは、標的ポリペプチドの約1つの別個のバリアントを発現する。一実施形態では、細胞は真核細胞、例えば、酵母細胞である。
【0072】
一実施形態では、複数のバリアントは、標的ポリペプチドの1またはそれを超える表面残基上の変異を含む。一実施形態では、複数のバリアントは、標的ポリペプチドの選択された表面残基の別個の変異を含む。一実施形態では、複数のバリアントは、標的ポリペプチドの複数の選択された表面残基のそれぞれの別個の変異を含む。
【0073】
一実施形態では、複数のバリアントは、標的ポリペプチドの野生型アミノ酸配列に対して、単一のアミノ酸置換を含む。一実施形態では、複数のバリアントのそれぞれは、標的ポリペプチドの野生型アミノ酸配列に対して単一のアミノ酸置換を含む。一実施形態では、単一のアミノ酸置換は、標的ポリペプチドの表面残基で生じる。
【0074】
一実施形態では、変化した(例えば、減少した)結合は、野生型標的ポリペプチドおよび抗体について検出された結合に対して、バリアントおよび抗体分子について検出された結合の変化(例えば、減少)を含む。
【0075】
一実施形態では、ステップ(a)(ii)は、野生型標的ポリペプチドによって示される抗体分子への結合の約80%未満(例えば、約0.01%、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%未満)を示すバリアントを得ること(例えば、富化すること)を含む。一実施形態では、減少した結合は、野生型標的ポリペプチドによって示される結合の少なくとも約20%(例えば、少なくとも約20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)である。
【0076】
一実施形態では、ステップ(a)(ii)は、野生型標的ポリペプチドを含む細胞によって示される抗体分子への結合の約80%未満(例えば、約0.01%、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%未満)を示す細胞を得ること(例えば、富化すること)を含む。一実施形態では、減少した結合は、野生型標的ポリペプチドを含む細胞によって示される結合の少なくとも約20%(例えば、少なくとも約20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)である。
【0077】
一実施形態では、ステップ(a)(ii)は、抗体分子への減少した結合を示すバリアントに対して、1またはそれを超える、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれを超える富化を行うことを含む。
【0078】
一実施形態では、本方法は、例えばステップ(a)(iii)の前に、例えばバリアントをコードする遺伝子を配列決定することによって、例えば次世代シーケンシングによって、抗体分子への変化した(例えば、減少した)結合を示すバリアントを同定することをさらに含む。
【0079】
一実施形態では、ステップ(a)(iii)は、複数の得られた(例えば、富化)バリアントのそれぞれについて出現頻度を決定することを含む。一実施形態では、ステップ(a)(iii)は、特定の残基における別個の変異を含む各バリアントの出現頻度を集約すること、および/または出現頻度がより高いバリアントを重み付けすること(例えば、重く重み付けすること)をさらに含む。
【0080】
一実施形態では、富化スコアは、標的ポリペプチドのアミノ酸配列の単一残基に特異的である。一実施形態では、各富化スコアは、標的ポリペプチドのアミノ酸配列の異なる単一残基に特異的である。
【0081】
一実施形態では、本方法は、標的ポリペプチドの複数のバリアントの複製物を用いてステップ(a)(i)~(a)(iii)を少なくとも1回(例えば、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回またはそれを超えて)繰り返すこと、をさらに含み、ステップ(c)は、1またはそれを超える無差別変異、例えば、複製物の50%超が30%超の富化スコアを有し、複製物の75%超が15%超の富化スコアを有する変異を省略すること、をさらに含む。
【0082】
一実施形態では、抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルは、1またはそれを超える誘引性束縛を加えることによって束縛され、必要に応じて、誘引性束縛は、第1の予め選択された値より大きい富化スコアを有する残基に対するものである。一実施形態では、第1の予め選択された値は、20%~40%、例えば、25%~35%、例えば、約25%、約30%、または約35%である。一実施形態では、誘引性束縛は、富化スコアに基づいて線形に調整されたボーナスを含む。
【0083】
一実施形態では、抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルは、第2の予め選択された値未満の富化スコアを有する残基に対する反発的束縛を加えることによって、束縛される。一実施形態では、第2の予め選択された値は、5%~20%、例えば、10%~15%、例えば、約10%、約12.5%、または約15%である。
【0084】
一実施形態では、ステップ(a)は、抗体分子のモデルと標的ポリペプチドのモデルとの間にドッキングポーズを生成することを含む。一実施形態では、ステップ(a)は、抗体分子のモデルと標的ポリペプチドのモデルとの間に複数のドッキングポーズを生成することを含む。
【0085】
一実施形態では、ステップ(a)は、ドッキングアルゴリズム、例えばSnugDockに従って複数のドッキングポーズをスコアリングすることをさらに含む。一実施形態では、ステップ(a)は、最高スコア、例えば、最高スコアリング1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900、1000またはそれを超えるドッキングポーズを有する複数のドッキングポーズのサブセットを選択することをさらに含む。一実施形態では、ステップ(a)は、複数のドッキングポーズの選択されたサブセットを使用してアンサンブルドッキングポーズを生成することと、アンサンブルドッキングポーズに従って抗体分子のモデルおよび標的ポリペプチドのモデルを設定することと、をさらに含む。
【0086】
一実施形態では、抗体分子のモデルは、抗体の複数の相同性モデルに由来するアンサンブル抗体相同性モデルを含む。
【0087】
一実施形態では、ステップ(a)は、例えば、抗体-抗原結晶構造に由来する構造フィルタに従って、公知の抗体-抗原複合体には非典型的な会合様式を示す抗体分子-標的ポリペプチドドッケティングモデルを除去することをさらに含む。
【0088】
一実施形態では、ステップ(a)は、複数の抗体分子-標的ポリペプチドモデルを生成することを含む。
【0089】
一実施形態では、ステップ(b)は、抗体分子によって結合され得る標的ポリペプチド上の複数の部位を同定することを含む。
【0090】
一実施形態では、部位は、標的ポリペプチド上の1またはそれを超える非連続領域を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、部位は、標的ポリペプチド上の連続領域を含むか、またはそれからなる。
【0091】
一態様では、本開示は、標的ポリペプチド上のエピトープまたは標的ポリペプチドに対する抗体分子上のパラトープが、本明細書に記載の方法に従って同定される抗体分子を特徴とする。
【0092】
一態様では、本開示は、本明細書に記載の抗体分子または本明細書に記載の抗体分子の1またはそれを超える鎖(例えば、VHおよび/またはVL)をコードする核酸分子を特徴とする。別の態様では、本開示は、本明細書に記載の核酸分子を含むベクターを特徴とする。さらに別の態様では、本開示は、本明細書に記載の核酸分子または本明細書に記載のベクターを含む宿主細胞を特徴とする。一態様では、本開示は、抗体分子の発現に適した条件下で、本明細書に記載の宿主細胞を培養することを含む、抗体分子を作製する方法を特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【
図1】
図1A~1BはAPRILの表面上で調べた位置を示す一連の図である。(A)マウスAPRILとヒトAPRILとのアラインメントであって、ディープ変異スキャニングライブラリーで調べた位置を灰色で強調したアラインメント。キメラ形態のAPRILを、muAPRILにおいて赤色で下線を引いた5つの位置をhuAPRILにおいて見出される対応するアミノ酸に変異させることによって作製した。(B)ライブラリー内の多様化のために選択された位置を灰色で濃淡をつけ、抗原表面の均一な被覆のために選択した、APRILホモ三量体の構造。ライブラリー設計に存在するが、APRIL結晶構造では観察されないAPRILの9のN末端アミノ酸を表す(構造の下のボックス)。2つのLys残基が、多様化のために選択された。
【
図2】
図2は酵母表面に発現したAPRILに対する抗体及びTACI親和性を示すグラフである。一組の精製抗APRIL抗体(2419,4035,4540,3530)、アイソタイプコントロール、およびTACIを、酵母の表面に発現したAPRILに対するおおよその親和性について評価した。結合等温線を使用して、各抗体について80%の最大結合をもたらす濃度を推定し、これをライブラリー富化に使用した。
【
図3】
図3は計算によるドッキングワークフローを用いたエピトープマッピングの概要を示す一連の図である。APRIL抗原ライブラリーの部位飽和ライブラリーを生成し、酵母表面ディスプレイによって発現させた。抗体を酵母ライブラリーに適用し、FACS富化を行ってライブラリーの非結合メンバーを富化した。富化されたライブラリーをNGSに供して、基礎となる変異を確認および計数した。変異富化スコアをAPRILの表面上にマッピングして、マッピングされた抗体の推定エピトープ領域を決定した。これらのデータを使用して抗体-抗原ドッキングを束縛し、変異プロファイルデータと一致するモデルのクラスタを得た。得られた高信頼性モデルは、エピトープおよびパラトープ残基の分子定義を提供する。
【
図4A】
図4A~4Bは複数の抗体およびTACIに対するライブラリーのFACS富化を示す一連のグラフである。WT APRILまたはライブラリー酵母集団のいずれかのフローサイトメトリー分析を、富化前または富化後に示す。X軸はAPRIL表面発現(c-myc)を表し、Y軸は抗体/TACI結合を表す。第1のカラムは、酵母の表面上に発現されたWT APRILに結合する各抗体またはTACIを示す。第2のカラムは、同じ結合条件を表すが、出発の、富化されていないAPRILライブラリーに対するものである。最後の列は、2回のFACS富化後の富化された非結合集団を表す。
【
図4B】
図4A~4Bは複数の抗体およびTACIに対するライブラリーのFACS富化を示す一連のグラフである。WT APRILまたはライブラリー酵母集団のいずれかのフローサイトメトリー分析を、富化前または富化後に示す。X軸はAPRIL表面発現(c-myc)を表し、Y軸は抗体/TACI結合を表す。第1のカラムは、酵母の表面上に発現されたWT APRILに結合する各抗体またはTACIを示す。第2のカラムは、同じ結合条件を表すが、出発の、富化されていないAPRILライブラリーに対するものである。最後の列は、2回のFACS富化後の富化された非結合集団を表す。
【
図5A】
図5A~5Dは全ての試験された抗APRIL抗体についての変異プロファイルヒートマップを示す一連の図である。抗体(A)2419、(B)4035、(C)4540、および(D)3530についての富化ヒートマップ(左)を計算し、各抗体についてのAPRILの表面にマッピングされた残基富化スコア(右)を用いた。
【
図5B】
図5A~5Dは全ての試験された抗APRIL抗体についての変異プロファイルヒートマップを示す一連の図である。抗体(A)2419、(B)4035、(C)4540、および(D)3530についての富化ヒートマップ(左)を計算し、各抗体についてのAPRILの表面にマッピングされた残基富化スコア(右)を用いた。
【
図5C】
図5A~5Dは全ての試験された抗APRIL抗体についての変異プロファイルヒートマップを示す一連の図である。抗体(A)2419、(B)4035、(C)4540、および(D)3530についての富化ヒートマップ(左)を計算し、各抗体についてのAPRILの表面にマッピングされた残基富化スコア(右)を用いた。
【
図5D】
図5A~5Dは全ての試験された抗APRIL抗体についての変異プロファイルヒートマップを示す一連の図である。抗体(A)2419、(B)4035、(C)4540、および(D)3530についての富化ヒートマップ(左)を計算し、各抗体についてのAPRILの表面にマッピングされた残基富化スコア(右)を用いた。
【
図6A】
図6A~6Cは、TACIのエピトープマッピングが、共結晶構造との強い一致を示すことを示す一連の図である。(A)APRILの表面にマッピングされた値(右)を有するTACIの計算された富化ヒートマップ(左)。(B)変異した各位置について計算したTACIの総富化スコア。エピトープ残基は、TACIから5Å未満の重原子距離を有する残基として定義される。(C)APRILと複合体を形成したTACIの構造。TACI(<5Å)と接触するAPRIL上の変異位置を、それらの全富化スコアに従って濃淡をつけた球で示す。
【
図6B】
図6A~6Cは、TACIのエピトープマッピングが、共結晶構造との強い一致を示すことを示す一連の図である。(A)APRILの表面にマッピングされた値(右)を有するTACIの計算された富化ヒートマップ(左)。(B)変異した各位置について計算したTACIの総富化スコア。エピトープ残基は、TACIから5Å未満の重原子距離を有する残基として定義される。(C)APRILと複合体を形成したTACIの構造。TACI(<5Å)と接触するAPRIL上の変異位置を、それらの全富化スコアに従って濃淡をつけた球で示す。
【
図6C】
図6A~6Cは、TACIのエピトープマッピングが、共結晶構造との強い一致を示すことを示す一連の図である。(A)APRILの表面にマッピングされた値(右)を有するTACIの計算された富化ヒートマップ(左)。(B)変異した各位置について計算したTACIの総富化スコア。エピトープ残基は、TACIから5Å未満の重原子距離を有する残基として定義される。(C)APRILと複合体を形成したTACIの構造。TACI(<5Å)と接触するAPRIL上の変異位置を、それらの全富化スコアに従って濃淡をつけた球で示す。
【
図7】
図7A~7Bは、無差別変異の一例を示す一連の図である。(A)試験したリガンドのパネルに対するAPRILの残基V132についての富化ヒートマップ。AspおよびGluに対する無差別変異が強調され(行)、2419に対する抗体特異的変異が強調されている(行)。(B)APRIL(淡い灰色)に結合したTACI(濃い灰色)の構造。異なるモノマー上のAPRILの残基V132およびE182は、APRILホモ三量体の状況において近位にある。
【
図8】
図8A~8Cは、APRILのホモオリゴマー集合体の対称性を示す一連の図であり、異なる鎖からの等価な残基位置を、赤道領域付近ではなく、分子の頂点付近に近接して配置する。鎖(A)および残基位置(BおよびC)によって着色されたAPRILの構造。(B)の頂点にある淡い灰色の残基は、ホモ三量体の3つの異なる鎖に由来する。(C)APRILホモ三量体を(B)に対して90°回転させて、異なる鎖からの等価な残基位置が、赤道領域において近位ではないことを示す。
【
図9】
図9A~9Dは3530結合が、N末端切断型APRILに固有に失われていることを示す一連のグラフである。酵母表面発現APRILの2つの異なる形態に結合する抗体3530およびTACI。完全長APRIL(残基96~241)への結合が、3530(A)およびTACI(C)について示される。3530(B)およびTACI(D)について、N末端切断型APRIL(残基106~241)への結合が、示されている。
【
図10】
図10はディープ変異スキャニングに由来する変異データによって通知された抗体-抗原ドッキングを使用して、分子的に定義されたエピトープおよびパラトープマップを生成するための例示的な計算によるドッキングワークフローを示す概略図である。
【
図11A】
図11A~11Cはモデル化された2419の計算によるドッキングが、共結晶構造との良好な一致を示したことを示す一連の図である。(A)天然構造に対する、2419-APRIL複合体の上位500ドッキングモデルのコンピュータによるRosetta界面スコア(Isc) 対 界面RMSD。上位100のスコアリングドッキングモデルを濃淡付けする。淡い灰色(FW RMSD<5Å)、中程度の灰色(5Å<FW RMSD<10Å)、および濃い灰色(FW RMSD>10Å)。(B)高度の重複を示す、2419-APRILの最上位ドッキングモデルと2419-APRILの天然構造のオーバーレイ。ドッキングモデルおよび天然構造を、APRILリガンドのCα座標のみに基づいて重ね合わせた。(C)APRILへの2419の結合について実験的に決定された残基富化スコア。バーは、ドッキング信頼度スコア(対応する残基が上位100ドッキングポーズで2419(<5Å)に接触していることが分かった頻度)に基づいて、濃淡付けする。アスタリスクは、天然構造から同定された接触位置を示す。
【
図11B】
図11A~11Cはモデル化された2419の計算によるドッキングが、共結晶構造との良好な一致を示したことを示す一連の図である。(A)天然構造に対する、2419-APRIL複合体の上位500ドッキングモデルのコンピュータによるRosetta界面スコア(Isc) 対 界面RMSD。上位100のスコアリングドッキングモデルを濃淡付けする。淡い灰色(FW RMSD<5Å)、中程度の灰色(5Å<FW RMSD<10Å)、および濃い灰色(FW RMSD>10Å)。(B)高度の重複を示す、2419-APRILの最上位ドッキングモデルと2419-APRILの天然構造のオーバーレイ。ドッキングモデルおよび天然構造を、APRILリガンドのCα座標のみに基づいて重ね合わせた。(C)APRILへの2419の結合について実験的に決定された残基富化スコア。バーは、ドッキング信頼度スコア(対応する残基が上位100ドッキングポーズで2419(<5Å)に接触していることが分かった頻度)に基づいて、濃淡付けする。アスタリスクは、天然構造から同定された接触位置を示す。
【
図11C】
図11A~11Cはモデル化された2419の計算によるドッキングが、共結晶構造との良好な一致を示したことを示す一連の図である。(A)天然構造に対する、2419-APRIL複合体の上位500ドッキングモデルのコンピュータによるRosetta界面スコア(Isc) 対 界面RMSD。上位100のスコアリングドッキングモデルを濃淡付けする。淡い灰色(FW RMSD<5Å)、中程度の灰色(5Å<FW RMSD<10Å)、および濃い灰色(FW RMSD>10Å)。(B)高度の重複を示す、2419-APRILの最上位ドッキングモデルと2419-APRILの天然構造のオーバーレイ。ドッキングモデルおよび天然構造を、APRILリガンドのCα座標のみに基づいて重ね合わせた。(C)APRILへの2419の結合について実験的に決定された残基富化スコア。バーは、ドッキング信頼度スコア(対応する残基が上位100ドッキングポーズで2419(<5Å)に接触していることが分かった頻度)に基づいて、濃淡付けする。アスタリスクは、天然構造から同定された接触位置を示す。
【
図12】
図12A~12Bは2419の表面にマッピングされたパラトープドッキングスコアおよび位置を示す一連の図である。(A)2419の表面にマッピングされたドッキング信頼度スコア(パラトープ)。(B)huAPRIL-2419の天然構造に由来する、黒色に着色されたパラトープ位置。残基間の接触は、5Å未満の重原子距離として定義される。
【
図13】
図13A~13Dは計算によるワークフローに組み込まれた実験的に得られた束縛が、天然に近い会合の様式への収束を可能にしたことを示す一連の図である。パネルの一番上の行は、2419のAPRIL接触残基を示し、ドッキングモデルにおいて残基(重原子距離<5Å)が、抗体と接触している頻度によって濃淡をつける。下の行は、ドッキングした2419-APRILモデルまたは天然構造の上位10のスコアリングを示す。(A)実験的束縛のないグローバルドッキング。(B)富化スコア束縛を組み込んだグローバルドッキング。(C)完全エピトープマッピングワークフロー(束縛されたグローバルドッキング、続いて束縛されたSnugDock、続いて抗体特異的構造フィルタの使用)。(D)2419-APRILの天然構造。
【
図14】
図14A~14Bは、ドッキング結果に対する束縛の影響を示す一連のグラフである。富化スコアを束縛として使用することなく(A)、また富化スコアを束縛として使用して(B)、2419-APRIL複合体の天然構造と比較した、Rosetta 対 抗体リガンド(フレームワーク)RMSD(抗原のみに重ね合わせる)によって計算されたドッキング界面スコアのプロット。上位100のスコアリングドッキングモデルが色付けされており、淡い灰色(FW RMSD<5Å)、中程度の灰色(5Å<FW RMSD<10Å)、および濃い灰色(FW RMSD>10Å)であり、モデルは、上位100の灰色にランク付けされていない。
【
図15】
図15A~15Cは、APRILに対する各抗体の予測される会合様式を示す一連の図である。上のパネル:APRIL残基を、抗原残基が抗体と接触する(重原子距離<5Å)モデルのパーセンテージとして計算される、ドッキング信頼スコアに基づいて濃淡をつける。マップは、2419(列A)、4035(列B)、および4540(列C)について示されている。下のパネル:明確にするために、ARIL(灰色)と相互作用し、TACI(中程度の灰色)の結合を閉塞する単一の上位スコアリング抗体ポーズが示されている。抗体結合によるTACI上の予測される立体衝突の領域は、淡い灰色で示されている。
【
図16A】
図16A~16Cは計算によるモデルが、種結合特異性の合理的な抗体操作を可能にすることを示す一連の図である。(A)マウスAPRILとヒトAPRILとの違いは、APRILの構造で強調された。非相同変異は中程度の灰色に着色されており、相同変異は濃い灰色で示されている。各抗体のドッキングされたエピトープ(上位ランクのモデル)を淡い灰色で輪郭を付けて示す。(B)位置E181およびI219は、ドッキング結果に基づいて、APRILの重鎖においてR54の近位にあると予測される。muAPRILの構造の181および219の位置におけるアルギニンおよびリシンへの変異は、2419のHCDR2上のR54との不安定化相互作用をもたらすと予測される。(C)ELISAによって決定される、muAPRILに対する2419および設計されたバリアント抗体の結合。設計されたバリアントは、置換を含む。R54D(設計1);T28A_R54D(設計2);L53V_R54D_S56A(設計3)。
【
図16B】
図16A~16Cは計算によるモデルが、種結合特異性の合理的な抗体操作を可能にすることを示す一連の図である。(A)マウスAPRILとヒトAPRILとの違いは、APRILの構造で強調された。非相同変異は中程度の灰色に着色されており、相同変異は濃い灰色で示されている。各抗体のドッキングされたエピトープ(上位ランクのモデル)を淡い灰色で輪郭を付けて示す。(B)位置E181およびI219は、ドッキング結果に基づいて、APRILの重鎖においてR54の近位にあると予測される。muAPRILの構造の181および219の位置におけるアルギニンおよびリシンへの変異は、2419のHCDR2上のR54との不安定化相互作用をもたらすと予測される。(C)ELISAによって決定される、muAPRILに対する2419および設計されたバリアント抗体の結合。設計されたバリアントは、置換を含む。R54D(設計1);T28A_R54D(設計2);L53V_R54D_S56A(設計3)。
【
図16C】
図16A~16Cは計算によるモデルが、種結合特異性の合理的な抗体操作を可能にすることを示す一連の図である。(A)マウスAPRILとヒトAPRILとの違いは、APRILの構造で強調された。非相同変異は中程度の灰色に着色されており、相同変異は濃い灰色で示されている。各抗体のドッキングされたエピトープ(上位ランクのモデル)を淡い灰色で輪郭を付けて示す。(B)位置E181およびI219は、ドッキング結果に基づいて、APRILの重鎖においてR54の近位にあると予測される。muAPRILの構造の181および219の位置におけるアルギニンおよびリシンへの変異は、2419のHCDR2上のR54との不安定化相互作用をもたらすと予測される。(C)ELISAによって決定される、muAPRILに対する2419および設計されたバリアント抗体の結合。設計されたバリアントは、置換を含む。R54D(設計1);T28A_R54D(設計2);L53V_R54D_S56A(設計3)。
【
図17】
図17は2419再設計のヒトAPRILへの結合を示すグラフである。ヒトAPRILに対する2419および設計されたバリアントのELISA結合結果。設計されたバリアントは置換を含んでいた。R54D(設計1);T28A_R54D(設計2);L53V_R54D_S56A(設計3)。最大半量結合濃度は、20nM(2419)、73nM(設計1)、63nM(設計2)、および306nM(設計3)であった。
【発明を実施するための形態】
【0094】
定義
本明細書で使用される場合、「抗体分子」という用語は、抗原特異的結合を提供するために、免疫グロブリン重鎖可変領域からの十分な配列および/または免疫グロブリン軽鎖可変領域からの十分な配列を含むポリペプチドを指す。それは、抗原結合を支持する完全長抗体ならびにその断片、例えばFab断片を含む。典型的には、抗体分子は、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。抗体分子には、ヒト抗体、ヒト化抗体、CDR移植抗体、およびそれらの抗原結合フラグメントが含まれる。一実施形態では、抗体分子は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域セグメント、例えば、免疫グロブリン可変ドメインまたは免疫グロブリン可変ドメイン配列を提供するアミノ酸配列を含むタンパク質を含む。
【0095】
抗体分子のVH鎖またはVL鎖は、重鎖定常領域または軽鎖定常領域の全部または一部をさらに含むことができ、それにより、重鎖免疫グロブリン鎖または軽鎖免疫グロブリン鎖をそれぞれ形成することができる。一実施形態では、抗体分子は、2つの重免疫グロブリン鎖および2つの軽免疫グロブリン鎖の四量体である。
【0096】
抗体分子は、重(または軽)鎖免疫グロブリン可変領域セグメントの一方または両方を含み得る。本明細書で使用される場合、「重(または軽)鎖免疫グロブリン可変領域セグメント」という用語は、抗原に結合することができる重(または軽)鎖免疫グロブリン可変領域全体またはその断片を指す。重鎖または軽鎖セグメントが抗原に結合する能力は、それぞれ軽鎖または重鎖と対になったセグメントで測定される。いくつかの実施形態では、完全長可変領域未満の重鎖または軽鎖セグメントは、適切な鎖と対になったとき、完全長鎖が軽鎖または重鎖と対になったときに見られるもののうち少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、または95%の親和性で結合する。
【0097】
免疫グロブリン可変領域セグメントは、参照配列またはコンセンサス配列と異なり得る。本明細書で使用される場合、「異なる」とは、参照配列またはコンセンサス配列中の残基が、異なる残基または欠如もしくは挿入された残基のいずれかで置き換えられることを意味する。
【0098】
抗体分子は、重(H)鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)および軽(L)鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)を含むことができる。別の例において、抗体は、2つの重(H)鎖可変領域および2つの軽(L)鎖可変領域またはそれらの抗体結合フラグメントを含む。免疫グロブリンの軽鎖は、カッパまたはラムダ型であり得る。一実施形態では、抗体分子はグリコシル化されている。抗体分子は、抗体依存性細胞傷害および/または補体媒介性細胞傷害に対して機能的であり得るか、またはこれらの活性の一方もしくは両方に対して非機能的であり得る。抗体分子は、インタクトな抗体またはその抗原結合フラグメントであり得る。
【0099】
抗体分子には、完全長抗体の「抗原結合フラグメント」、例えば、目的のHA標的に特異的に結合する能力を保持する完全長抗体の1またはそれを超えるフラグメントが含まれる。完全長抗体の「抗原結合フラグメント」という用語に包含される結合フラグメントの例としては、(i)Fabフラグメント、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価フラグメント;(ii)F(ab’)またはF(ab’)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);(vi)機能性を保持する単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VLおよびVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え法を使用して、VLおよびVH領域が対になって一本鎖Fv(scFv)として公知の一価分子を形成する単一タンパク質鎖として作製することを可能にする合成リンカーによって、連結することができる。例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-426;and Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883.を参照のこと。抗体分子には、二重特異性抗体が含まれる。
【0100】
本明細書で使用される場合、「抗体」は、免疫グロブリンの構造的および機能的特徴、特に抗原結合特徴を含む、ポリペプチド、例えば、四量体または一本鎖ポリペプチドを指す。典型的には、ヒト抗体は、2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖を含む。各鎖は可変領域を含む。
【0101】
可変重(VH)領域および可変軽(VL)領域は、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれる、より保存された領域が散在している、「相補性決定領域」(「CDR」)と呼ばれる超可変領域にさらに細分することができる。ヒト抗体は、フレームワーク領域FR1~FR4によって分離された3つのVH CDRおよび3つのVL CDRを有する。FRおよびCDRの範囲は、正確に定義されている(Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242;およびChothia,C.et al.(1987)J.Mol.Biol.196:901-917を参照のこと)。Kabatの定義を本明細書で使用する。各VHおよびVLは、典型的には、以下の順序でアミノ末端からカルボキシル末端に配置された3つのCDRおよび4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0102】
重および軽免疫グロブリン鎖は、ジスルフィド結合によって連結され得る。重鎖定常領域は、典型的には、3つの定常ドメイン、CH1、CH2、およびCH3を含む。軽鎖定常領域は、典型的にはCLドメインを含む。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、典型的には、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(Clq)を含む宿主組織または因子への抗体の結合を媒介する。
【0103】
「免疫グロブリン」という用語は、生化学的に区別することができる様々な広範なクラスのポリペプチドを含む。当業者は、重鎖がガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として分類され、その中にいくつかのサブクラスがあることを理解する(例えば、γ1~γ4)。抗体の「クラス」をそれぞれIgG、IgM、IgA、IgD、またはIgEとして決定するのは、この鎖の性質である。免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1などは、十分に特徴付けられており、機能的特殊化を付与することが知られている。これらのクラスおよびアイソタイプのそれぞれの改変バージョンは、本開示を考慮して当業者に容易に識別可能であり、したがって、本開示の範囲内である。すべての免疫グロブリンクラスは、明らかに本開示の範囲内である。軽鎖は、カッパまたはラムダ(κ、λ)のいずれかとして分類される。各重鎖クラスは、カッパ軽鎖またはラムダ軽鎖のいずれかと結合し得る。
【0104】
適切な抗体としては、限定されないが、モノクローナル抗体、単一特異性抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体、ヒト抗体、霊長類化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体、コンジュゲート抗体(すなわち、他のタンパク質、放射性標識、細胞毒素にコンジュゲートまたは融合した抗体)、小型モジュール免疫医薬品(「SMIPsTM」)、一本鎖抗体、ラクダ科抗体、および抗体断片が挙げられる。
【0105】
一実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。ヒト化抗体は、ヒトフレームワーク領域と、非ヒト、例えば、マウスまたはラットの免疫グロブリン由来の1またはそれを超えるCDRと、を含む免疫グロブリンを指す。CDRを提供する免疫グロブリンは、しばしば「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは、しばしば「アクセプター」と呼ばれるが、一実施形態では、供給源またはプロセスの制限は暗示されない。典型的には、ヒト化抗体は、ヒト化軽鎖およびヒト化重鎖免疫グロブリンを含む。
【0106】
「免疫グロブリンドメイン」は、免疫グロブリン分子の可変ドメインまたは定常ドメイン由来のドメインを指す。免疫グロブリンドメインは、典型的には、約7本のβ鎖から形成された2つのβシートと、保存されたジスルフィド結合(例えば、A.F.Williams and A.N.Barclay(1988)Ann.Rev.Immunol.6:381-405)とを含む。
【0107】
本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン可変ドメイン配列」は、免疫グロブリン可変ドメインの構造を形成することができるアミノ酸配列を指す。例えば、配列は、天然に存在する可変ドメインのアミノ酸配列の全部または一部を含み得る。例えば、配列は、1つ、2つ、またはそれを超えるN末端またはC末端アミノ酸、内部アミノ酸を省いてもよく、1つまたはそれを超える挿入またはさらなる末端アミノ酸を含んでもよく、または他の変化を含んでもよい。一実施形態では、免疫グロブリン可変ドメイン配列を含むポリペプチドは、別の免疫グロブリン可変ドメイン配列と会合して、標的結合構造(または「抗原結合部位」)、例えば、標的抗原と相互作用する構造を形成することができる。
【0108】
本明細書で使用される場合、抗体という用語は、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一ドメイン抗体(例えば、サメ単一ドメイン抗体(例えば、IgNARまたはその断片))、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および所望の生物学的活性を示す限り、抗体断片を含む。本明細書で使用するための抗体は、任意のタイプ(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM)であり得る。
【0109】
抗体または抗体分子は、哺乳動物、例えば、げっ歯類、例えば、マウス、またはラット、ウマ、ブタ、またはヤギに由来し得る。一実施形態では、抗体または抗体分子は、組換え細胞を使用して産生される。一実施形態では、抗体または抗体分子は、ヒト定常領域ドメインおよび/またはヒト可変領域ドメインを有する、例えばマウス、ラット、ウマ、ブタ、または他の種に由来するキメラ抗体である。
【0110】
本明細書で使用される場合、「バリアント」という用語は、野生型形態の標的ポリペプチドのアミノ酸配列と比較して、1またはそれを超える変異(例えば、アミノ酸置換、欠失、挿入、または当技術分野で公知の任意の他の変異)を含むアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。いくつかの例では、バリアントは、標的ポリペプチドの野生型形態のアミノ酸配列に対して、例えば、表面残基に対して約1つのアミノ酸置換を含む。本明細書で使用される「野生型」とは、参照アミノ酸配列を含む標的ポリペプチドの形態を意味する。いくつかの例では、野生型標的ポリペプチドは、天然に存在するアミノ酸配列(例えば、生体由来の内因性配列)を含む。他の例では、野生型標的ポリペプチドは、任意の参照アミノ酸配列(例えば、コンセンサスアミノ酸配列、例えば、標的ポリペプチドの複数の天然に存在するバージョンから編集されたもの)を含む。
【0111】
本明細書で使用される場合、「標的ポリペプチド」という用語は、抗体分子によって望ましく結合される任意のポリペプチドを指す。標的ポリペプチドは、抗体分子と接触するその表面上の1またはそれを超えるエピトープ領域を含み得る。本明細書に記載の方法は、そのようなエピトープ領域を同定するために使用され得る。標的ポリペプチドは、抗体分子上の1またはそれを超えるパラトープ領域に結合することができ、これも同様に本明細書の方法に従って同定することができる。いくつかの例では、「標的ポリペプチド」および「抗原」という用語は、互換的に使用され得る。
【0112】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、別のポリペプチド、例えば抗体分子によって、例えば、抗体分子の1またはそれを超えるCDRおよび/または抗体分子の1またはそれを超えるフレームワーク残基によって接触される標的ポリペプチド(例えば、本明細書に記載されるような)の一部を指す。いくつかの例では、エピトープは、標的ポリペプチドの1またはそれを超える表面残基を含む。タンパク質またはポリペプチドの「表面残基」は、一般に、例えばアミノ酸の少なくとも一部(例えば、側鎖)が、タンパク質またはポリペプチドの外部の別の分子にアクセス可能であるように、タンパク質またはポリペプチドの外部表面に配置されたアミノ酸残基である。エピトープ残基は、連続していてもよいし、連続していなくてもよい。いくつかの例では、エピトープは、抗体分子と接触する複数の領域またはパッチを含む。ある特定の場合において、2つまたはそれを超える領域またはパッチは、連続していないか、または物理的に近接しており、例えば、立体構造エピトープである。
【0113】
本明細書で使用される場合、「パラトープ」という用語は、標的ポリペプチド(例えば、本明細書に記載されるような)、またはそのバリアントと接触する抗体分子の一部を指す。パラトープは、抗体分子の1またはそれを超えるCDRおよび/または抗体分子の1またはそれを超えるフレームワーク残基を含み得る。いくつかの例では、パラトープは、抗体分子の1またはそれを超える表面残基を含む。パラトープ残基は、連続していても、連続していなくてもよい。いくつかの例では、パラトープは、標的ポリペプチドと接触する複数の領域またはパッチを含む。特定の例では、2またはそれを超える領域またはパッチが連続していないか、物理的に近接している。
【0114】
本明細書で使用される場合、「モデル」という用語は、一般に、1またはそれを超える分子(例えば、標的ポリペプチドおよび/または抗体分子)の構造、例えば、三次元モデル、例えば、シミュレートされたおよび/または計算された構造を指す。場合によっては、「モデリング」という用語は、モデルを生成するプロセスを指すために使用される。モデルは、例えば、X線結晶学によって、または例えば、本明細書に記載の計算による方法によって、生成され得る。モデルは、1またはそれを超える他のモデルからの情報を集約することによって生成され得る。場合によっては、モデルは、複数の他のモデルを含む。場合によっては、モデルは、複数の他のモデルを使用して生成される。実体の「モデル」は、実体の構造を表すモデルを指す。本明細書で使用される「ドッキングモデル」という用語は、一般に、抗体分子と標的ポリペプチド、またはそのバリアントとの間の相互作用のためのモデル(例えば、3次元モデル)を指す。いくつかの例では、ドッキングモデルは、抗体分子のモデルおよび標的ポリペプチドのモデル、またはそのバリアントを含む。場合によっては、ドッキングモデルは、抗体分子と標的ポリペプチド、またはそのバリアントとの間の接触点を示す。
【0115】
天然源から得られた抗体分子、例えば、抗体、免疫原、または一般にポリペプチドに関して本明細書で使用される「精製」および「単離」という用語は、天然源からの混入物質、例えば、天然源からの細胞物質、例えば、細胞破片、膜、小器官、細胞に存在する核酸またはタンパク質の大部分を実質的に含まない分子を指す。したがって、単離されるポリペプチド、例えば、抗体分子は、約30%、20%、10%、5%、2%、または1%(乾燥重量基準)未満の細胞物質および/または混入物質を有するポリペプチドの調製物を含む。「精製」および「単離」という用語は、化学合成種、例えば、抗体分子または免疫原の文脈で使用される場合、分子の合成に関与する化学前駆体や他の化学物質を、実質的に含まない種を指す。
【0116】
2つの配列間の「相同性」または「配列同一性」または「同一性」の計算(これらの用語は、本明細書では交換可能に使用される)は、以下のように行うことができる。最適な比較目的のために配列を整列させる(例えば、最適なアラインメントのために第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、比較目的のために非相同配列を無視することができる)。ギャップペナルティ12、ギャップ拡張ペナルティ4、フレームシフトギャップペナルティ5のBlossum 62スコアリングマトリックスを有するGCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用して、最適なアラインメントを最良スコアとして決定する。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められている場合、分子はその位置で同一である(本明細書で使用される場合、アミノ酸または核酸の「同一性」は、アミノ酸または核酸の「相同性」と同等である)。2つの配列間の同一性パーセントは、配列によって共有される同一の位置の数の関数である。
【0117】
細胞表示アッセイ
本発明の方法は、一般に、標的ポリペプチドのバリアントを細胞上に表示すること(例えば、酵母細胞)、および例えば、抗体に対する減少した結合(例えば、低下した結合親和性)を示すバリアントを示す細胞の集団を富化することによって、標的ポリペプチドのバリアントに対する抗体の結合能を評価することを含む。本明細書中に記載される方法に従って使用され得る細胞の例には、真核細胞(例えば、真菌細胞、例えば、酵母細胞;哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞またはヒト細胞)、または原核細胞(例えば、細菌細胞、例えば、大腸菌細胞)が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、細胞は、酵母細胞である。
【0118】
一実施形態では、エピトープマッピングデータは、典型的な変異誘発遺伝子型-表現型研究の低スループット性に対処し、機能への影響について多くの(例えば、数百、数千、または数万)変異バリアントの同時試験を可能にする、標的ポリペプチド(本明細書では抗原とも呼ばれる)のライブラリーのディープ変異スキャニングから得られる。本方法のスループットは、表面残基のより包括的なサンプリング、ならびに残基あたりの複数の別個の変異(すなわち、アラニンへの変異だけではない)、したがって、立体構造のエピトープを含むエピトープのより高感度で完全なマッピングを可能にし得る。
【0119】
一実施形態では、標的ポリペプチドのバリアントは、例えば、リンカー配列を介した内因性細胞表面タンパク質、例えば、酵母タンパク質Aga2への融合によって、細胞(例えば、酵母細胞)の表面に発現される。例えば、標的ポリペプチドが、通常多量体を形成する実施形態では、リンカーと所与のバリアントとの間の長い柔軟なリンカー配列(例えば、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50個またはそれを超えるアミノ酸を含むリンカー)は、隣接する標的ポリペプチド分子が会合するのに十分な近接性を提供し、それによって天然の四級構造を提示し得る。一実施形態では、リンカーは、35のアミノ酸を含む。
【0120】
一実施形態では、本方法は、実施例に記載の1またはそれを超えるステップを含む。一実施形態では、本方法は、実施例に従って実施される。
【0121】
標的ポリペプチドバリアント
一実施形態では、標的ポリペプチドのバリアントの集団を、目的の抗体に対する結合能および/または結合親和性について試験する。標的ポリペプチドバリアントの集団は、一実施形態では、標的ポリペプチドの表面残基に対する変異を含むことができ、これは、例えば、本明細書に記載のエピトープマッピング方法を使用して、または当技術分野で公知のように、目的の抗体と接触するポリペプチドの表面領域を同定するために使用することができる。例えば、バリアントの集団のそれぞれは、表面残基に少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、またはそれを超える)のアミノ酸置換を含み得る。一実施形態では、集団は、抗体と標的ポリペプチドとの間の接触領域を所望の分解能で同定するのに適した表面残基変異の分布を有するバリアントを含む。
【0122】
そのようなバリアントのライブラリーは、例えば、本明細書中に記載されるようなディープ変異スキャニングによって生成され得る。一実施形態では、バリアントのライブラリーは、例えば、変異した場合にタンパク質構造に有意な有害作用を及ぼす可能性が低いすべての表面残基を最初に同定することによって、ディープ変異スキャニングに由来するエピトープマッピングの情報出力を最大化するように設計される。一実施形態では、表面残基は、相対的側鎖表面アクセス可能性(例えば、Discovery Studioを使用する)に基づいて選択され得る。一実施形態では、約25%(例えば、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%超)を超える相対的側鎖表面アクセス可能性を示す残基が、変異のために選択される。一実施形態では、変異に耐性のある残基は、例えば、目視検査および/または隣接残基との相互作用および/または隣接残基への近接によって同定され得る。一実施形態では、標的ポリペプチドのすべての表面残基は、結合した抗体と直接接触する潜在性を有する残基のセットとして同定される。一実施形態では、Proおよび/またはGly残基は、そのような残基を変異させるとタンパク質構造が乱される可能性が高く、結合に対する間接的な影響を介してエピトープマッピングの偽陽性をもたらし得るので、考慮から除外される。
【0123】
一実施形態では、標的ポリペプチドの表面全体にわたる均一なカバレッジのために、変異させる一連の残基を選択する。一実施形態では、表面全体にわたる変異のための一連の表面位置の選択のために、均一なカバレッジを確保するために残基を視覚的に精選することができる。一実施形態では、さらなるN末端および/またはC末端残基が、変異のために選択され得る。一実施形態では、標的ポリペプチドのX線結晶構造において分解されていない1またはそれを超える残基を、変異のために選択することができる。一実施形態では、少なくとも約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、225、250、275、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、または1000の残基が、変異のために選択される。
【0124】
一実施形態では、選択された位置を表す単一部位飽和変異誘発ライブラリーは、例えば、NNK縮重を使用して、合成される。合成されたライブラリーのディープシーケンシングを使用して、意図された位置における変異の存在を検証することができる。一実施形態では、遺伝子型-表現型の連結は、例えば、非コンビナトリアル部位飽和ライブラリーを使用して、単一変異を表現型に連結することによって維持される。
【0125】
ライブラリー選択
標的ポリペプチドバリアントのライブラリーを細胞に形質転換し、結合に対する変異の影響について評価することができる。一実施形態では、ライブラリーを酵母細胞に形質転換する。好ましくは、形質転換は、固有の遺伝的多様性(例えば、各位置で32の可能なコドン)の徹底的な(例えば、約5000倍、例えば、約100倍、500倍、1000倍、2000倍、3000倍、4000倍、5000倍、6000倍、7000倍、8000倍、9000倍、10,000倍、またはそれを超える)オーバーサンプリングを提供する。一実施形態では、例えば、細胞上に示される野生型標的ポリペプチドに対する最大結合約80%(例えば、約50%、60%、70%、80%、90%、または100%)に相当する濃度の抗体を使用して、抗体結合を破壊する変異の検出に対する感度が、最大化される。一実施形態では、抗体結合は、異なる結合特性を示すバリアントを区別するために使用される。一実施形態では、減少した結合を示すバリアントが選択される。一実施形態では、結合の増加を示すバリアントが選択される。
【0126】
一実施形態では、蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用して、異なる結合特性(例えば、野生型標的ポリペプチドと比較して、減少または増加した結合)を示す(例えば、富化)バリアントを選択する。一実施形態では、野生型標的ポリペプチドと比較して減少した結合、例えば、野生型標的ポリペプチドを含む細胞によって示される結合の少なくとも約20%(例えば、少なくとも約20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)の減少した結合、を示すバリアントが選択される。一実施形態では、野生型標的ポリペプチドと比較して増加した結合、例えば、野生型標的ポリペプチドを含む細胞によって示される結合の少なくとも約20%(例えば、少なくとも約20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)の増加した結合、を示すバリアントが選択される。一実施形態では、少なくとも2回(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれを超える)のFACS富化(例えば、発現しているが、結合していない集団の富化)が行われる。一実施形態では、所与の試料に対して少なくとも約1000個の細胞(例えば、少なくとも約1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10,000、15,000、20,000、25,000、30,000、35,000、40,000、45,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、または100,000個の細胞)が収集される。一実施形態では、所与の試料に対して少なくとも約30,000個の細胞が収集される。特定の実施形態では、FACS富化により、それぞれの抗体に対する有意な結合能を欠く集団が得られる。
【0127】
一実施形態では、標的ポリペプチドバリアントのライブラリーを発現する細胞(例えば、酵母細胞)を、例えば、野生型標的ポリペプチドを発現する細胞(例えば、酵母細胞)を用いた抗体滴定結合実験に基づいて、抗体の標的ポリペプチドへの最大結合約80%(例えば、約50%、60%、70%、80%、90%、または100%)に相当する濃度で、抗体に曝露する。
【0128】
ディープシーケンシングおよび生物情報学
一実施形態では、結合実験から選択されたバリアントをディープシーケンシングに供して、例えば、基礎となる遺伝子型を確認および定量する。一実施形態では、所定の閾値(例えば、約30未満の品質スコア)を下回る品質スコアを有する配列決定リードが、データセットから除去される。一実施形態では、挿入および/または欠失変異を含むリードが、データセットから除去される。一実施形態では、所定の閾値を超える数の塩基置換(例えば、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、または50を超える塩基置換)を含むリードが、データセットから除去される。一実施形態では、内部終止コドンを含むリード、意図しない位置における変異、および/または野生型標的ポリペプチドと比較して2以上のアミノ酸置換が、データセットから除去される。一実施形態では、ヌクレオチドライドは、アミノ酸リードに変換される。一実施形態では、所定の閾値数未満のリード(例えば、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、400、500、600、700、800、900、または1000未満のリード)数が、データセットから除去される変異体バリアント。
【0129】
一実施形態では、生物情報学的分析を行って、抗体に対する富化配列決定バリアント(enrichment sequenced variant)のレベルを計算する。一実施形態では、出発ライブラリーと比較して非結合集団が富化されたバリアントは、抗体結合親和性を低下させる変異を表す。一実施形態では、出発ライブラリーと比較して高い結合集団が富化されたバリアントは、抗体結合親和性を増加させる変異を表す。減少した結合を引き起こすと考えられる機構としては、例えば、抗体と直接接触する残基側鎖の変化などの直接的な効果、および接触残基とは無関係の局所的または全体的なタンパク質構造の変化などによる間接的な効果が、挙げられる。構造破壊的変異は、多様なエピトープを有する抗体の結合に影響を及ぼし得る。一実施形態では、抗体のパネルは、抗体結合に間接的な影響を引き起こす可能性がある変異を識別するための計算による試み(computational effort)を支援するために、異なる結合様式(例えば、競合結合実験を用いて決定される)で組み込まれる。
【0130】
富化スコア
ライブラリー選択後の特定のバリアントの富化レベルを表す富化スコアは、例えば、本明細書に記載されるように生成された選択データに基づいて、各バリアントについて計算され得る。一実施形態では、各変異の富化スコアは、以下のように計算される:非結合プールに収集された各サンプルについて、サンプル中の変異の位置依存的出現頻度は、発現体プール(expresser pool)中のその変異の出現頻度によって正規化され、以下のように非結合プール中に見出されるバリアントの割合によって調整される。
【数1】
式中、
【数2】
は、サンプル(s)の位置(p)における所与のアミノ酸(aa)の富化スコアであり、NB
sは、非結合プール中に見出されるバリアントの割合(プールサイズ)であり、f
p,aaは、サンプル(s)または発現体プール(wt)のいずれかにおけるアミノ酸の観察された位置頻度である。一実施形態では、富化スコアは、非結合プール(例えば、ここではパーセンテージとして表される)に見られる発現体プールからの変異の割合を表す。
【0131】
一実施形態では、非結合プール中の各変異の割合は、配列決定結果に基づいて計算される。一実施形態では、各変異について、発現体プールに見られる頻度に対する非結合プールに見られる出現頻度を使用して、富化スコアを計算する。一実施形態では、バリアントについて計算された富化スコアは、例えば、0~100%の範囲で、非結合プール中に見出された特定の変異の割合を表す。一実施形態では、Pro、Gly、またはCysへの変異は、三次または四次構造を変化させる傾向がより高いため、考慮から省かれた。一実施形態では、グリコシル化部位を挿入または除去すると予測される部位特異的変異は、考慮から省かれた。一実施形態では、残基富化スコアは、例えば、高い富化スコアを有する変異をより重く重み付けする方法で、特定の残基に対する各変異の富化スコアを集約することによって計算される。より高い富化スコアを有する残基は、一般に、結合に関して変異に対するより大きな感受性を反映し、例えば、この位置が、エピトープの一部である可能性がより高いことを示す。一実施形態では、次いで、富化スコアを標的ポリペプチドの表面にマッピングし、富化スコアが高い位置(例えば、標的ポリペプチドの表面パッチ上)をエピトープの一部として指定する。
【0132】
理論に束縛されることを望むものではないが、特定の変異は、しばしば低から中程度の富化スコア値を有する複数の系にわたってバックグラウンドを上回る富化スコアを示し得る。多くの抗体の結合に対するこの無差別効果は、場合によっては、例えば間接的な機構による結合の減少によって引き起こされる偽陽性を表し得る。エピトープマッピングから除去するための無差別変異を同定するための閾値は、例えば、すべてのサンプルの富化マップの検査に基づいて経験的に決定することができる。一実施形態では、サンプルの約50%超(例えば、約30%、40%、45%、50%、55%、60%、または70%)が、約30%超(例えば、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%)の富化スコアを有し、必要に応じて、サンプルの約75%超(例えば、約50%、60%、70%、75%、80%、90%、または95%)が15%超(例えば、約5%、10%、15%、20%、25%、または30%)の富化スコアを有する変異が、偽陽性とみなされ、エピトープ決定のために除去される。一実施形態では、無差別変異は、例えば、そのような残基が抗体-抗原接触に関与していないこと、または変異が、例えば、二次、三次、または四次構造を(例えば、静電引力または反発によって)不安定化し得ることを示すために、抗体-抗原複合体の構造分析によって同定することができる。
【0133】
一実施形態では、例えば再現性を評価するために、複数の生物学的複製物(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、または30の生物学的複製物)について富化スコアおよびエピトープマップを計算することができる。一実施形態では、富化スコア結果の精度は、例えば、それらを抗体またはその同等の代用物(例えば、標的ポリペプチドに対するリガンドまたは受容体)を有する標的ポリペプチドの共結晶構造と比較することによって、検証することができる。
【0134】
一実施形態では、例えば、アミノ酸位置がエピトープの一部であると評価するために、標的ポリペプチド上の所与のアミノ酸位置についての変異データの集合体を、生成することができる。一実施形態では、総富化スコアは、例えば、対応する位置における各変異の効果を集約することによって、各残基について計算される。一実施形態では、富化スコアは、以下のように計算される。
【数3】
式中、N
p,aaは、フィルタリング後の所与の位置におけるアミノ酸変異の数である。一般に、計算された総残基富化スコアは、大きな富化スコアを示す変異の効果および/または低い富化スコアを示す変異からのダウンウェイト寄与をより重く重み付けする。これは、ノイズに起因し得る複数の変異に対して低レベルの富化を示す位置が、より少ない数の変異を有するがより高い富化を有する可能性がある位置からの信号をマスクしないことを保証し得る。一実施形態では、各位置について総富化スコアが計算されると、総富化スコアをタンパク質表面にマッピングして、富化エピトープマップの可視化を容易にすることができる。
【0135】
抗体-抗原複合体の計算によるモデリング
本明細書に記載の方法は、一般に、目的の抗体またはその抗原結合フラグメントによって結合される標的ポリペプチド上の1またはそれを超えるエピトープ領域または部位を同定することを含む。そのようなエピトープ領域は、例えば、抗体-抗原複合体(例えば、ドッキングアルゴリズムを使用する。)の計算によるモデリングを使用して同定されてよく、これは、例えば、本明細書に記載されるような、例えば、細胞表示アッセイの結果によって、通知され得る。一実施形態では、細胞表示アッセイ(例えば、富化スコア、例えば、本明細書中に記載されるような富化スコア)の結果は、ドッキングアルゴリズムへの束縛として組み込まれる。一実施形態では、本方法は、実施例に記載の1またはそれを超えるステップを含む。一実施形態では、本方法は、実施例に従って実施される。
【0136】
抗体-抗原ドッキング
一般に、多段階ドッキング手法を実施して、好ましくは(1)実験的に得られたエピトープマッピングを束縛として組み込み、(2)抗体モデルのアンサンブルを使用して相同性モデリングの不確実性をよりよく説明し、(3)大量の抗体特異的構造知識を利用して、抗体-抗原複合体に特徴的な特徴を示すドッキングモデルをより効果的に同定する、抗体-抗原モデルを生成することができる。一実施形態では、例えば、本明細書中に記載されるようなディープ変異スキャニングデータから得られる残基富化スコアは、例えば、抗原表面全体にわたる抗体会合をサンプリングする抗体-抗原グローバルドッキングアルゴリズムのための束縛として使用される。一実施形態では、束縛は、高富化位置と最大に接触するときに抗体-抗原ポーズを好ましいものとして指定するために、および/または変異に耐性があると判定された位置と接触するときに抗体-抗原ポーズを好ましくないものとして指定するために、使用される。
【0137】
一実施形態では、抗体相同性モデル(例えば、抗体-抗原ドッキングモデルの生成に使用するために、)は、例えば、当技術分野で公知のアルゴリズムおよび/またはプロトコル(例えば、Rosetta抗体相同性モデリング、例えば、Rosette 3.8、またはBioLuminate Schroedinger)を使用して、生成される。一実施形態では、抗体相同性モデルは、例えば、CDR領域(例えば、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、および/またはLCDR3)の立体構造において変化する。一実施形態では、モデルは、主にHCDR3の立体構造で異なる(例えば、HCDR3ループで)。
【0138】
ドッキングは、例えば、異なる抗体相同性モデルのアンサンブルを入力として使用して、行うことができる。一実施形態では、ドッキングプログラムPIPERは、例えば、公知の抗体-抗原複合体に由来するカスタマイズされたスコア関数を使用して、グローバルドッキングに使用される。一実施形態では、例えば、ドッキング結果を変更するために誘引性および/または反発的束縛を利用するなど、ドッキングモデルの生成中に富化スコアからの束縛が使用される。これにより、高い富化スコア(例えば、ドッキングのための誘引性束縛に形質転換される)を有する残基を同定する、および/またはエピトープの一部であると予想されない低い富化スコア(例えば、反発的束縛に形質転換される)を有する残基を同定するエピトープマッピングアプローチが可能になる。一実施形態では、例えば、ドッキング中に中間の富化スコアを有する残基が束縛されないように、高いまたは低い富化スコアを有する残基のみを使用して、束縛が生成される。一実施形態では、抗体のパネルから生成されたデータを使用して、多くの抗体の結合に影響を及ぼし、したがって偽陽性である可能性がより高い変異を同定する。そのような偽陽性は、一実施形態では、束縛を生成するときに考慮から除外することができる。一実施形態では、本明細書に記載のドッキングアプローチは、富化位置がエピトープの一部として含まれるべきかどうかを決定するための絶対カットオフに依存しない。
【0139】
一実施形態では、以下のようにドッキング実行に束縛が組み込まれる:約30%(例えば、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%超)を超える残基富化スコアを有する部位に誘引性束縛が追加され、誘引性なボーナス、例えば、富化スコアに基づいて、例えば、0.35~0.99に線形に調整される。一実施形態では、残基富化スコアが約12.5%未満(例えば、約5%、10%、11%、12%、12.5%、13%、14%、15%、20%、25%、または30%)の部位に反発的束縛が追加される。一実施形態では、グローバルドッキングは、一連の入力抗体相同性モデル(例えば、一連の少なくとも約5、10、15、20、25、30、40、50、またはそれを超える入力抗体相同性モデル)のそれぞれに対して実行される。一実施形態では、合計で少なくとも約50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000のドッキングポーズが生成される。一実施形態では、クラスタ中心を表す約30のポーズ(例えば、約10、15、20、25、30、35、40、45、または50のポーズ)が、各サンプルについて得られる。
【0140】
一実施形態では、エピトープマップスコアを計算して、各ドッキングモデルと実験的に決定された富化スコアとの間の一致レベルを評価する。一実施形態では、エピトープマップスコアは、以下の式を使用して計算される。
【数4】
式中、ESは、エピトープマップスコアであり、Nは、変異部位の数であり、c
pは、位置pにおける束縛であり、E
pは、位置pにおける富化スコアである。一実施形態では、ドッキングモデルは、エピトープマップスコアによってランク付けされる。一実施形態では、特定の数の上位モデルが選択される(例えば、上位5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、またはそれを超えるモデル)。
【0141】
一実施形態では、抗体-抗原ドッキングは、複数の抗体相同性モデルが、抗原の1またはそれを超えるモデルにドッキングされているアンサンブルドッキングモデルを生成することに関与する。一実施形態では、複数の抗体相同性モデルは、抗原の1つのモデルにドッキングされる。一実施形態では、複数の抗体相同性モデルは、抗原の複数のモデルにドッキングされる。一実施形態では、上位ソリューションの全体(an ensemble of top solutions)を使用して抗体-抗原複合体を表す。別の実施形態では、ドッキングワークフローからの単一の上位ランクのモデルは、ドッキングされた複合体を表すために選択される。
【0142】
一実施形態では、本明細書で説明するように生成されたドッキングポーズは、例えば、ローカルドッキングアルゴリズム(例えば、SnugDock)を使用して改良することができる。一実施形態では、ローカルドッキングアルゴリズムは、例えば、小さな剛体の動きを探索することによって、ドッキングポーズを改良し、側鎖の再パッキング、CDR領域の再構築(例えば、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、および/またはLCDR3;好ましくはHCDR2および/またはHCDR3)、CDRループの改良(例えば、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、および/またはLCDR3;好ましくはHCDR2および/またはHCDR3)、および/またはVH/VL配向の再サンプリングを可能にする。一実施形態では、例えば、ローカルドッキング結果を変更するために誘引性および/または反発的な束縛を利用するなど、富化スコアからの束縛が、ローカルドッキングで(例えば、グローバルドッキングについて上述したように、)使用される。一実施形態では、高い富化スコアを有する残基は、ドッキングのための誘引性束縛に形質転換される。一実施形態では、富化スコアが低い残基は、反発的束縛に形質転換される。
【0143】
一実施形態では、例えば、利用可能な抗体-抗原結晶構造のセットに由来する、抗体特異的構造フィルタのセットを適用して、公知の抗体-抗原複合体に対して非定型の会合様式を示すモデルを除去する。一実施形態では、構造フィルタは、表1に列挙されたもの(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または表1に列挙された構造フィルタのすべて)から選択される。一実施形態では、両残基中の一対の重原子が<5Å離れている場合、残基が接触していると見なされる。
【表1】
【0144】
一実施形態では、少なくとも約100(例えば、約100、150、200、250、300、350、400、450、500またはそれを超える)利用可能な抗体-抗原複合体の構造が、構造フィルタを生成するために使用される。一実施形態では、界面付近の欠損領域を有する複合体および/または界面でのリガンドもしくは翻訳後修飾を有する複合体が除去される。一般に、構造フィルタを生成するために使用される抗体-抗原複合体のセットについて、重要な界面特性の構造的特徴の分布が計算される(例えば、エピトープと会合するCDRおよび/またはフレームワーク残基の数、相互作用に関与するCDRループの数およびタイプ、エピトープ残基の数、埋没表面積、および/またはペアワイズ残基傾向)。一実施形態では、上記の界面特性の1またはそれを超える閾値は、所定量(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.9%)の構造が構造フィルタのうちの1つ以下に不合格となるように選択される。
【0145】
一実施形態では、ドッキングモデルのそれぞれについて界面特性が計算される。一実施形態では、構造フィルタのうちの2つ以上に不合格であるモデルが除去される。一実施形態では、残りのドッキングモデルは、エピトープマップスコア(例えば、本明細書に記載されるように、)に基づいてフィルタリングされる。一実施形態では、ドッキングモデルは、低い富化スコアを有する少数の残基と接触することができる。一実施形態では、最大観察エピトープマップスコアの約80%未満の富化スコアを有するモデルが除去される。一実施形態では、残りのドッキングモデルは、例えばRosettaを使用して計算されるように、それらの界面エネルギー(Isc)に基づいてランク付けされる。
【0146】
一実施形態では、利用可能な多数の構造に由来する抗体-抗原複合体の特異的知識を使用して、天然に近いモデルを同定する。ドッキングアルゴリズムは、一般に、タンパク質-タンパク質相互作用に一般的であるようにパラメータ化された物理学ベースのスコアリング関数を利用する。一実施形態では、抗体-抗原構造の精選されたデータベースが生成され、例えば、埋没表面積、抗原に会合するCDR残基の数および種類、CDRループに由来するパラトープ残基の割合、および/またはペアワイズ残基傾向を含む構造的特徴の分布が計算される。次いで、候補ドッキングモデルをこれらの構造的特徴について評価することができるが、非定型界面を有するモデルは検討から除外することができる。
【0147】
抗体工学
結晶構造と一致するエピトープ残基を同定することに加えて、ドッキングモデルは、パラトープ情報も提供することができる。これは、抗体のさらなる操作、例えば、ヒト化、親和性成熟、抗原結合特異性の変化、および/または生物物理学的特性(例えば、凝集傾向)の改善に利用することができる。一実施形態では、本明細書に記載されるように生成された抗体-抗原ドッキングモデルを使用して、パラトピック残基および/または領域を同定することができる。
【0148】
一実施形態では、同定されたパラトープ残基は、抗体の活性を調整するかまたは構造的特徴を変化させるように操作することができる。例えば、パラトープ残基は、標的ポリペプチド(例えば、マウスとヒト、カニクイザルとヒト、マウスとカニクイザル、または種の任意の他のペアワイズの組み合わせ)に対する異種間反応性を増加もしくは減少させるために、および/または標的ポリペプチドおよび1またはそれを超える関連タンパク質に対する交差反応性を増加もしくは減少させるために、改変され得る。
【0149】
一実施形態では、本明細書の開示は、本明細書に記載の方法によって操作された抗体分子を含む。一実施形態では、本明細書の開示は、本明細書に記載の方法によって操作された抗体分子および薬学的に許容され得る担体を含む組成物(例えば、医薬組成物)を含む。一実施形態では、本明細書の開示は、本明細書に記載の方法によって操作された抗体分子をコードする核酸分子を含む。一実施形態では、本明細書の開示は、本明細書に記載の方法によって操作された抗体分子をコードする核酸分子を含むベクターを含む。一実施形態では、本明細書の開示は、本明細書に記載の方法によって操作された抗体分子をコードする核酸分子を含む細胞(例えば、宿主細胞)を含む。一実施形態では、本明細書の開示は、本明細書に記載の方法によって操作された抗体分子を作製する方法を含む。
【0150】
本開示はまた、以下の番号が付けられたパラグラフのいずれかを含む。
1.標的ポリペプチド上のエピトープを同定する方法であって、
(a)抗体分子を標的ポリペプチドの複数のバリアントに結合させることと、
(b)抗体分子への減少した結合(例えば、低下した結合親和性)を示す複数のバリアントを得ること(例えば、富化すること)と、
(c)複数の得られた(例えば、富化)バリアントのそれぞれについて富化スコアを決定すること(例えば、計算すること)と、
(d)富化スコアに従って束縛される、抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルを生成することと、
(e)抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルに基づいて、抗体分子によって結合され得る標的ポリペプチド上の部位を同定することと、を含み
それによって、標的ポリペプチド上のエピトープを同定する、方法。
2.ステップ(a)が、抗体分子を、標的ポリペプチドの複数のバリアントを表示するライブラリーに結合させることを含む、パラグラフ1に記載の方法。
3.ステップ(a)が、抗体分子を、標的ポリペプチドの複数のバリアントを発現する(例えば、表示する)複数の細胞を含むライブラリーに結合させることを含む、パラグラフ1または2に記載の方法。
4.複数の細胞のそれぞれが、標的ポリペプチドの約1つの別個のバリアントを発現する、パラグラフ3に記載の方法。
5.細胞が、真核細胞、例えば、酵母細胞である、パラグラフ3または4に記載の方法。
6.複数のバリアントが、標的ポリペプチドの1またはそれを超える表面残基に変異を含む、前記パラグラフのいずれかに記載の方法。
7.複数のバリアントが、標的ポリペプチドの選択された表面残基の別個の変異を含む、前記パラグラフのいずれかに記載の方法。
8.複数のバリアントが、標的ポリペプチドの複数の選択された表面残基のそれぞれの別個の変異を含む、前記パラグラフのいずれかに記載の方法。
9.複数のバリアントが、標的ポリペプチドの野生型アミノ酸配列に対して単一のアミノ酸置換を含む、前記パラグラフのいずれかに記載の方法。
10.複数のバリアントのそれぞれが、標的ポリペプチドの野生型アミノ酸配列に対して単一のアミノ酸置換を含む、前記パラグラフのいずれかに記載の方法。
11.単一のアミノ酸置換が、標的ポリペプチドの表面残基で生じる、パラグラフ9または10に記載の方法。
12.減少した結合が、野生型標的ポリペプチドおよび抗体について検出された結合に対して、バリアントおよび抗体分子について検出された結合の減少を含む、前記パラグラフのいずれかに記載の方法。
13.ステップ(b)が、野生型標的ポリペプチドによって示される抗体分子への結合の約80%未満(例えば、約0.01%、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%未満)を示すバリアントを得ること(例えば、富化すること)を含む、前記パラグラフのいずれかに記載の方法。
14.減少した結合が、野生型標的ポリペプチドによって示される結合の少なくとも約20%(例えば、少なくとも約20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)である、パラグラフ13に記載の方法。
15.ステップ(b)が、野生型標的ポリペプチドを含む細胞によって示される抗体分子への結合の約80%未満(例えば、約0.01%、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%未満)を示す細胞を得ること(例えば、富化すること)を含む、前記パラグラフのいずれかに記載の方法。
16.減少した結合が、野生型標的ポリペプチドを含む細胞によって示される結合の少なくとも約20%(例えば、少なくとも約20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)である、パラグラフ15に記載の方法。
17.ステップ(b)が、抗体分子への減少した結合を示すバリアントについて、1またはそれを超える、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれを超える富化を行うことを含む、前記パラグラフのいずれかに記載の方法。
18.例えば、ステップ(c)の前に、例えば、バリアントをコードする遺伝子を配列決定することによって、例えば、次世代シーケンシングによって、抗体分子への減少した結合を示すバリアントを同定すること、をさらに含む、前記パラグラフのいずれかに記載の方法。
19.ステップ(c)が、複数の得られた(例えば、富化)バリアントのそれぞれについて出現頻度を決定することを含む、前記パラグラフのいずれかに記載の方法。
20.ステップ(c)が、特定の残基における別個の変異を含む各バリアントの出現頻度を集約すること、および/またはより高い出現頻度を有するバリアントを重く重み付けすること、をさらに含む、パラグラフ19に記載の方法。
21.富化スコアが、標的ポリペプチドのアミノ酸配列の単一残基に特異的である、前記パラグラフのいずれかに記載の方法。
22.各富化スコアが、標的ポリペプチドのアミノ酸配列の異なる単一残基に特異的である、前記パラグラフのいずれかに記載の方法。
23.標的ポリペプチドの複数のバリアントの複製物を用いてステップ(a)~(c)を少なくとも1回(例えば、1回、2回、3回、4回、5回、またはそれを超えて)繰り返すこと、をさらに含み、ステップ(c)が、1またはそれを超える無差別変異、例えば、複製物の50%超が、30%超の富化スコアを有し、複製物の75%超が15%超の富化スコアを有する変異、を省略すること、をさらに含む、前記パラグラフのいずれかに記載の方法。
24.抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルが、1またはそれを超える誘引性束縛を加えることによって束縛され、誘引性束縛が、第1の予め選択された値よりも大きい富化スコアを有する残基に対するものである、前記パラグラフのいずれかに記載の方法。
25.第1の予め選択された値が、20%~40%、例えば、25%~35%、例えば、約30%である、パラグラフ24に記載の方法。
26.誘引性束縛が、富化スコアに基づいて線形に調整されたボーナスを含む、パラグラフ24または25に記載の方法。
27.抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルが、第2の予め選択された値未満の富化スコアを有する残基に対する反発的束縛を加えることによって束縛される、前記パラグラフのいずれかに記載の方法。
28.第2の予め選択された値が、5%~20%、例えば、10%~15%、例えば、約12.5%である、パラグラフ27に記載の方法。
29.ステップ(d)が、抗体分子のモデルと標的ポリペプチドのモデルとの間にドッキングポーズを生成することを含む、前記パラグラフのいずれかに記載の方法。
30.ステップ(d)が、抗体分子のモデルと標的ポリペプチドのモデルとの間に複数のドッキングポーズを生成することを含む、前記パラグラフのいずれかに記載の方法。
31.ステップ(d)が、ドッキングアルゴリズム、例えばSnugDockに従って複数のドッキングポーズをスコアリングすることをさらに含む、パラグラフ30に記載の方法。
32.ステップ(d)が、最高スコア、例えば、最高スコアリング1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、またはそれを超えるドッキングポーズを有する複数のドッキングポーズのサブセットを選択することをさらに含む、パラグラフ31に記載の方法。
33.ステップ(d)が、複数のドッキングポーズの選択されたサブセットを使用してアンサンブルドッキングポーズを生成することと、アンサンブルドッキングポーズに従って抗体分子のモデルおよび標的ポリペプチドのモデルを設定することと、をさらに含む、パラグラフ32に記載の方法。
34.抗体分子のモデルが、抗体の複数の相同性モデルに由来するアンサンブル抗体相同性モデルを含む、パラグラフ29~33のいずれかに記載の方法。
35.ステップ(d)が、例えば、抗体-抗原結晶構造に由来する構造フィルタに従って、公知の抗体-抗原複合体には典型的でない会合様式を示す抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルを除去することをさらに含む、前記パラグラフのいずれかに記載の方法
36.ステップ(d)が、複数の抗体分子-標的ポリペプチドモデルを生成することを含む、前記パラグラフのいずれかに記載の方法。
37.ステップ(e)が、抗体分子によって結合され得る標的ポリペプチド上の複数の部位を同定することを含む、前記パラグラフのいずれかに記載の方法。
38.標的ポリペプチド上のエピトープを同定する方法であって、
(a)抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルを生成することであって、抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルが、
(i)抗体分子を標的ポリペプチドの複数のバリアントに結合させることと、
(ii)抗体分子への減少した結合を示す複数のバリアントを得ること(例えば、富化すること)と、
(iii)複数の富化バリアントのそれぞれについて富化スコアを決定すること(例えば、計算すること)と、
を含む方法によって決定される複数の富化スコアに従って束縛される、抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルを生成することと、
(b)抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルに基づいて、抗体分子によって結合され得る標的ポリペプチド上の部位を同定することと、を含み、
それによって、標的ポリペプチド上のエピトープを同定する、方法。
39.抗体分子上のパラトープを同定する方法であって、
(a)抗体分子を標的ポリペプチドの複数のバリアントに結合させることと、
(b)抗体分子への減少した結合を示す複数のバリアントを得ること(例えば、富化すること)と、
(c)複数の富化バリアントのそれぞれについて富化スコアを決定すること(例えば、計算すること)と、
(d)富化スコアに従って束縛される、抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルを生成することと、
(e)抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルに基づいて、標的ポリペプチドによって結合され得る抗体分子上の1またはそれを超える部位を同定することと、を含み
それによって、抗体分子上のパラトープを同定する、方法。
40.抗体上のパラトープを同定する方法であって、
(a)抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルを生成することであって、抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルが、
(i)抗体を標的ポリペプチドの複数のバリアントに結合させることと、
(ii)抗体分子への減少した結合を示すバリアントを得ること(例えば、富化すること)と、
(iii)複数の得られた(例えば、富化)バリアントのそれぞれについて富化スコアを決定すること(例えば、計算すること)と、
を含む方法によって決定される(例えば、計算される)富化スコアに従って束縛される、抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルを生成することと、
(b)抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルに基づいて、標的ポリペプチドによって結合され得る抗体分子上の1またはそれを超える部位を同定することと、を含み
それによって、標的ポリペプチド上のパラトープを同定する、方法。
41.標的ポリペプチド上のエピトープまたは標的ポリペプチドに対する抗体分子上のパラトープが、前記パラグラフに記載のいずれかの方法に従って同定される抗体分子。
42.パラグラフ41に記載の抗体分子の1またはそれを超える鎖(例えば、VHおよび/またはVL)をコードする核酸分子。
43.パラグラフ42に記載の核酸分子を含むベクター。
44.パラグラフ42に記載の核酸分子またはパラグラフ43に記載のベクターを含む宿主細胞。
45.抗体分子の発現に適した条件下で、パラグラフ44に記載の宿主細胞を培養することを含む、抗体分子を作製する方法。
【実施例】
【0151】
実施例1:包括的抗原ライブラリーのディープシーケンシングによる立体構造のエピトープマッピングを組み込んだ抗体-抗原複合体の計算によるモデリング
抗体-APRILモデル構造の品質を改善するために、実験由来抗原(APRIL)変異データを計算によるドッキングワークフローに束縛として組み込んだ。APRIL変異プロファイルは、典型的な変異誘発遺伝子型-表現型研究の低スループット性に対処し、結合への影響について同時に数千の変異バリアントの同時試験を可能にした抗原ライブラリーのディープ変異スキャニングから得た。この方法のスループットは、表面残基およびすべての変異(すなわち、Alaだけでなく)のより完全なサンプリングを可能にし、したがって、抗体結合に寄与する抗原残基のより高感度かつ完全な特徴付けを提供した。
【0152】
酵母表面ディスプレイを使用して、立体構造的にインタクトな抗原を表示する能力ならびにライブラリーの構築および選択のためのシステムの容易さのために、包括的な変異ライブラリーのハイスループットスクリーニングを容易にした。酵母の表面におけるhuAPRILの生産的発現は、以前の観察と一致して、不十分であることが見出された。したがって、マウスAPRIL(muAPRIL)のキメラ形態を設計し、TACI結合部位およびその周囲の表面残基をhuAPRIL(
図1)中の同等の残基に変異させて、TACIおよびブロッキング抗体の結合部位を保存した。得られたキメラは、特に明記しない限り、本明細書ではAPRILと呼ばれる。全てのヒト特異的抗APRIL抗体およびTACIは、この設計されたAPRIL(
図2)に結合することが示され、その立体構造の完全性が実証された。
【0153】
(多量体化を促進するための)35残基の柔軟なリンカーを含有するAga2-APRIL融合タンパク質は、TACIに対する強い結合を示した(
図2)。TACIの結合部位は、2つの隣接するAPRILモノマーの界面を横切る有意な接触を有する四級構造からなる。これらの結合結果は、酵母の表面上に生産的なAPRILモノマー-モノマー界面の形成を示唆した。
【0154】
マウス由来抗huAPRIL抗体のパネルを、酵母上に発現したAPRILに対して試験した。全ての抗体は、精製された組換えhuAPRILへのそれらの結合と一致する滴定可能な結合(
図2)を示し、酵母表面上に発現されるAPRILタンパク質の構造的完全性をさらに裏付けた。APRILの部位飽和変異誘発表面位置の酵母表面ディスプレイライブラリーをAPRIL抗体に対してスクリーニングして、結合に影響する変異の包括的プロファイルを生成し、その結果を使用して計算による抗体-抗原ドッキング(
図3)を束縛した。
【0155】
実施例2:ライブラリー選択およびディープシーケンシング
本明細書に記載のNNK縮重を使用して単一部位飽和変異誘発ライブラリーを合成し、ライブラリーのディープシーケンシングにより、意図した位置にすべての変異が存在することを確認した。合成したライブラリーを酵母に形質転換し、非変異APRILと同様の表面発現を得た。TACIおよび一連の抗APRIL抗体を使用した結合試験により、ライブラリーのほとんどが強い結合を保持し、少数が結合の減少を示すかまたは結合を示さないことが明らかになった(
図4A~4B、最初の2列)。発現しているが非結合集団の2回のFACS富化を行った(
図4A~4B、最後の列)。次いで、異なる結合実験からの非結合プールを、本明細書に記載のディープシーケンシングに供した。
【0156】
実施例3:各抗体の変異プロファイルの生成
各抗体の定量的変異プロファイルを生成するために、生物情報学的分析を実施して、本明細書に記載されるように、各抗体に対するすべての抗原バリアントの富化レベルを計算した。出発ライブラリーと比較して非結合集団が富化されたバリアントは、抗体結合親和性を低下させる変異を表した。2つの主要な方法は、減少した結合を引き起こす可能性があると考えられた:抗体と直接接触する側鎖などの直接的な効果、および接触残基への変異に由来しない、局所的または全体的なタンパク質構造の変化によって引き起こされる、間接的な効果。特性評価された抗体のパネルは、異なるエピトープを認識し(競合結合実験を用いて決定される、表2)、タンパク質構造変化を介して抗体結合に間接的な影響を引き起こす可能性がある変異を識別するための計算による試みを支援した(すなわち、ほとんどまたはすべての抗体への結合に影響を及ぼす)。問い合わせたすべてのAPRIL変異の変異プロファイルをすべての抗体(
図5A~5D)およびTACI(
図6A)について生成した。
【表2】
【0157】
大部分のリガンドにわたってバックグラウンドを上回る富化スコアを示すいくつかのAPRIL変異が観察された。競合実験から決定されたすべての抗体の重複しないエピトープを考えると(表2)、多くの抗体の結合に対するこの無差別効果は、間接的な機構を介した結合の減少によって引き起こされる偽陽性を表した可能性がある。除去のための無差別変異を同定するための閾値は、すべてのサンプルの富化マップの検査に基づいて決定された(補足情報を参照)。
【0158】
V132のAspまたはGluのいずれかへの変異について、無差別変異の実例が観察された。これらの変異は、TACIの両方の生物学的複製試料への結合に対する有意な影響を含む、3530以外のすべてのリガンド(
図7)について高い富化スコアをもたらした。APRILとの複合体中のTACIの構造分析は、これらの残基がTACIと接触しておらず、結合に直接影響を及ぼすと予想されないことを明確に示した。特に、残基V132は、2つのモノマー間の界面に見出され、別のモノマー上のE182に構造的に隣接していた。V132でのAspまたはGluへの変異は、E182との静電反発をもたらし、APRILの四級構造を不安定化し、それによってリガンドのパネルへの結合に間接的な影響を及ぼした可能性がある。負に帯電した残基へのV132での変異は、ほとんどの抗体への結合を消失させるが、様々な他のアミノ酸への変異は、抗体2419のみに特異的な結合の減少をもたらした(
図7)。この場合、変異体V132DおよびV132Eは偽陽性とみなされ、さらなる検討から除外され、全残基富化の計算に含まれなかった。
【0159】
実施例4:変異プロファイルの分析
3530を除いて、全ての試料は、他のほとんどのアミノ酸への変異が結合を破壊した2~6の位置を示した(
図5)。予想されるように、TACI結合(
図6A)に対して評価されたR197などのいくつかの位置は、Alaへの変異について低い富化スコアを示したが、他のアミノ酸への変異に対して高感度であり、部位飽和変異誘発によって各位置をより完全に調べる利点を実証した。
【0160】
対照タンパク質TACIの変異プロファイルを、muAPRILとのその公知の共結晶構造に関連して分析した。富化レベルは結合に対する影響の程度に関連すると予想されたので、この定量的情報を分析および構造可視化のために保持した。富化スコアを可視化のためにAPRILの表面にマッピングし、8残基から構成される明確に定義されたパッチを示し、最も高い残基富化スコアは、X線構造とよく一致してエピトープの中心に位置していた(
図6B)。これらの位置は、APRILの二量体界面を横切って見出された;残基F167、V172、R186、I188、およびR222が1つのモノマー上に見出され、R197、Y199、およびH232が隣接するモノマー上に見出され、酵母の表面上に発現されたAPRILが生産的なモノマー-モノマー界面を形成したことが再び実証された。エピトープの周辺部に見られる4つの残基(T183、D123、S192、およびE196)は、非エピトープ残基(
図6C)と区別できない富化スコアを有することが示され、これらの位置での変異耐性を示唆した。全体として、TACIの変異プロファイル結果は、共結晶構造データからの構造プロファイルと密接に一致した。
【0161】
各抗体について、変異プロファイルデータを(すべての鎖について)APRILの表面上に可視化し、高いスコアを有する位置も表面パッチにクラスタ化することが観察され、各抗体についての可能性のあるエピトープ領域を示した(
図5)。TACIと同様に、抗体2419のエピトープ領域は、目視検査した場合、二量体界面にわたって異なるモノマーに由来する残基によって形成された表面パッチを示した。表面上に可視化されたとき、抗体4035および4540についての高い残基富化のパッチは、2419よりも大きく、より分散して見えた。マップの明瞭さの違いは、部分的には、ホモオリゴマーAPRIL分子の対称性および形状に起因していた。異なるAPRILモノマー上の等価な残基位置は、分子の頂点付近に近接しており(
図8)、4035のような頂点結合分子についてのパッチを、はるかに大きく見せる。
【0162】
APRILのN末端における線状エピトープを認識する抗体3530と一致して、APRILのN末端における2つの残基のみが高い富化スコアを示し、これらの両方が、muAPRILのX線構造において分解されなかった。これは、他の抗体およびTACIとは異なり、非常に低い割合の非結合剤を独自に示したAPRIL部位飽和ライブラリーに対して試験した抗体3530の観察結果と一致した(
図2)。これらの結果は、N末端ペプチド(
図9A~9D)の欠失を伴うAPRILへの結合結果、および他の抗体に対する3530による結合競合の欠如を実証する試験によって裏付けられた(表2)。
【0163】
実施例5:計算による抗体-抗原ドッキング
抗体-抗原モデルを生成するために、多段階ドッキングアプローチを実施した(
図10)。実験由来の富化スコアに比例して重み付けされた部位束縛を使用して、APRILに対する各抗体について全体的な剛体ドッキングを行った。これにより、抗体-抗原ポーズが、高富化位置と最大接触するときに最も有利であることが保証されたが、逆に、結合が変異によって影響されないと決定された位置との相互作用は不利であった。次いで、最上位にランク付けされたドッキングポーズを、アンサンブルベースのローカルドッキングアルゴリズムであるSnugDockへの入力として使用した。得られた上位100のランク付けされたモデルは、抗体-抗原配向に関して一般的に正確であり、エピトープおよびパラトープ中の接触残基、および程度は低いがエピトープ-パラトープ残基の相互作用対の同定を可能にし得るポーズが、富化されると予想された。残基ベースのドッキング信頼度スコアを、残基が抗体または抗原と接触していることが見出された選択モデルの割合として計算した。
【0164】
実施例6:2419ドッキングモデルと結晶構造との比較
ドッキング結果を検証するために、huAPRILとの2419の共結晶構造を解明した。huAPRIL(残基115~250)との複合体における2419のFabドメインの単結晶構造を6.5Åの分解能で決定した。結晶構造において、Fab-APRIL錯体は、非結晶学的擬三回対称に関連する3:3分子錯体を形成した。huAPRIL分子は、muAPRILについて見出されるものと同様のホモ三量体を形成した(PDB:1U5Y)。各Fabドメインは、2つのhuAPRILモノマーを架橋するホモ三量体界面を横切って結合した。分解能が低いため、2419およびhuAPRILの側鎖について明確な電子密度は観察されなかった。しかしながら、huAPRILの構造は、BAFFとのヘテロ三量体として高分解能で以前に解明されている(PDB:4ZCH)。huAPRILの以前に決定された構造は、2419-huAPRILの電子密度に明確に適合し、したがって複合体をモデル化するために使用され、複合体からhuAPRILエピトープ残基を高い信頼性で同定することを可能にした。電子密度マップに基づいて、huAPRILに対する2419の配向は明確であり、コアパラトープ残基の解明を可能にしたが、CDR領域におけるより大きな不確実性のために、周辺パラトープ残基を明確に定義することはできなかった。VHおよびVLドメインのCDRは、主にホモ三量体界面を介して個々のhuAPRILモノマーに結合し、VHは、TACIの結合部位を閉塞していることが観察された。
【0165】
2419のドッキング結果の分析は、ドッキングモデルのAPRILへの会合様式が、天然構造と強く一致することを示した。ほぼ天然な抗体-抗原配向を示す多数のモデルが得られ、大部分のモデル(90/100)は、低い抗体リガンドRMSD(L_rms)<10Åを有し、明確な結合エネルギーファネル(
図11A)を形成した。抗体リガンドRMSDは、抗原座標のみを重ね合わせ、続いて抗体フレームワーク骨格原子上のRMSDを評価することによって、天然構造に対するドッキングモデルの厳密な比較を提供した。抗体リガンドRMSDに基づくCAPRI型ランキングを使用して、27/100のモデルを中品質(L_rms<5Å)とみなし、63/100を許容され得る品質(L_rms 5Å~10Å)とみなし、この単一のメトリックに基づいて10のモデルを不正確とみなした。最上位のモデルは、
図11Bに天然の構造(抗原にのみ重ね合わせた)と比較して示されており、会合様式の良好な一致が観察され得る。2419では、実験由来の富化スコアが高い残基も高いドッキング信頼スコアを有し(
図11C)、ドッキングモデルの大部分が、変異への結合に最大の影響を示す残基と接触したことを実証した。
【0166】
ドッキングモデルの会合様式は、2419の天然の構造に類似していたが、モデル化HCDR3は、ネイティブのようなコンフォーメーションを採用しなかった。基準CDRについて、上位100のスコアリングモデルで計算した平均RMSDは、H1:1.17Å、H2:1.72Å、L1:1.57Å、L2:1.90Å、およびL3:1.93Åであった。しかしながら、HCDR3については、平均RMSDは6.17Åであった。上位10のスコアリングモデルのRMSD値を表3に示す。
【表3-1】
【表3-2】
【0167】
2419のHCDR3は、(Chothiaナンバリングを使用して)11残基を含有し、この長さのループは、一般に、正確にモデル化することが困難であると考えられている。2419のHCDR3立体構造を正確にモデル化する際の課題にもかかわらず、抗原のみに由来するモデル化の束縛として実験データを含めることは、抗体および抗原相互作用表面のほぼ正確な接触を同定するためのドッキングワークフローを導くのに十分であった。
【0168】
2419のドッキングモデルから決定されたエピトープの分析は、実験データのみから得られたものよりもはるかに詳細な表面パッチを示した。2419の天然構造から決定された22の接触エピトープ残基のうち、14が変異していたが、これらのうち7のみが、高い富化スコア(>20%)を有することが分かった(
図11C)。対照的に、最上位のドッキングモデルは、エピトープ上の22の接触残基のうち21を正確に同定した。最上位のドッキングモデルは、それらの残基が変異していない場合、または実験的に決定された富化スコアが低い場合でも、2419(
図11Cにおいてアスタリスクで示されている。)のエピトープ残基を正確に同定することができた。
【0169】
結晶構造と一致するエピトープ残基を同定することに加えて、ドッキングモデルはまた、貴重なパラトープ情報を提供した。パラトープに対する実験的に決定された束縛がなかったとしても、ドッキングモデルから決定されたパラトープは、低分解能天然構造と良好に全体的に一致していた(14の天然パラトープ残基のうち10はドッキング信頼度スコア>50%を有していた)(
図12A~12B)。エピトープ残基の決定とは対照的に、ドッキングモデル中の残基が天然構造では観察されない抗原と接触しているいくつかの偽陽性(ドッキングスコア>50%を有する3残基)が同定された。2419について、これらの残基は、このループの立体構造を正しくモデル化する際の誤差を反映してHCDR3ループ上に見出された。誤った立体構造を採用することにより、ドッキングモデル中のHCDR3残基は、天然構造では観察されない抗原と接触することができる。いくつかの例では、抗体相同性モデリング(SnugDockのHCDR3リモデリングを含む)のエラーは、明示的な実験上の束縛の欠如と相まって、パラトープマッピングをエピトープマッピングよりも不正確にする可能性がある。全体として、予測されたパラトープ表面と実際のパラトープ表面との間に良好な一致があった。
【0170】
実施例7:ドッキングに対する束縛の影響
この計算によるワークフローは、ファネリングアプローチを利用してモデルを絞り込んだ。これらのモデルは、実験データと一致し、したがって天然に近いポーズである可能性が高かった(
図13A~13D)。ワークフローに束縛を組み込む影響を評価するために、2419を例として使用して、(i)実験的変異プロファイルデータを使用しないグローバルドッキング、(ii)変異プロファイルデータを使用するグローバルドッキング、および(iii)フルドッキングワークフロー(SnugDockおよび抗体-抗原界面特性に基づくフィルタリングを含む)の3つの異なる方法によって生成された上位モデルからのドッキングエピトープ結果を評価した。
【0171】
予想通り、実験的に得られた束縛を含まないグローバルドッキングは、ドッキングモデルの大きな多様性をもたらした。ここで、ほとんどのドッキングモデルは、2419が視覚化された配向でAPRILの塩基付近のどこかに結合すると予測したが、モデル間のコンセンサスはほとんどなかった。これにより、全体的なドッキング信頼スコアが低く、2419(
図13D)についての実際のエピトープとの類似性がほとんどないマップ(
図13A)が得られた。グローバルドッキング手順に変異プロファイルデータを含めると、真のエピトープの近くに集中した多数の重複ポーズが得られたが、相対的な結合配向の大きな変動が、依然として観察された(
図13B)。アンサンブルローカルドッキングコンポーネント(SnugDock)を含むフルドッキングワークフローの使用は、天然に近いポーズ(
図13C)の緊密なクラスタおよび結晶構造に由来するものと非常に類似したエピトープマップをもたらした。実験的に得られた変異プロファイルデータを含めると、天然に近い構造の明確なドッキングファネルが得られたが、束縛なしでドッキングワークフローを実行すると、非天然モデルの数がはるかに多くなった(
図14A~14B)。この結果は、変異プロファイルデータの組み込みが、天然に近いモデルを選択する際の計算によるドッキングスコアリング方法の欠点を克服することができることを示した。
【0172】
実施例8:ドッキングモデルの分析が、機構的洞察を明らかにする
3つすべての抗体のドッキングモデルは、APRILとのそれらの会合様式およびそれらがTACI結合を遮断する様式を示した(
図15A~15C)。2419は二量体界面を横切って結合し、その重鎖はAPRILの赤道領域に結合し、それによってTACI結合部位を閉塞した。4035はAPRILの頂点付近に結合し、その重鎖はTACI結合部位との実質的な相互作用を示した。4540について、ドッキングモデルは、TACI結合部位を閉塞したのが主に軽鎖であることを示唆した。3つすべての抗体のドッキングモデルは、各抗体について別個のエピトープを明らかにし、エピトープの重複は、4540が、2419および4035の両方と競合するが、2419が、4035と競合しなかったことを示す競合結合データと一致した(表2)。上部ドッキングモデルの目視検査は、すべての抗体が、抗体の3:3の結合比と一致する様式でAPRILと会合し、それによってAPRILホモ三量体の3つすべてのモノマー上のTACI結合部位を遮断することができることを示した。
【0173】
実施例9:抗体工学への応用
治療的抗体開発において、げっ歯類モデルにおけるより簡便な有効性およびPK/PD試験を容易にするために、げっ歯類およびヒト種の両方への交差反応性結合が望ましい場合がある。したがって、モデル化結果を使用して、分子的に定義されたエピトープおよびパラトープの有用性および精度の例証として、異種間反応性を改善するための合理的な操作を可能にした。muAPRILとhuAPRILは、85.6%の配列同一性(
図1)を共有しており、配列の相違をmuAPRILの構造上で可視化し、モデリングワークフローを用いて得られた各抗体について生成されたドッキング信頼度マップに関連して分析した。2419のエピトープパッチでは、非保存的変異が最も少なかった。他の抗体とは対照的に、これらの変異が、2419エピトープの周辺部に見出された(
図16A)。アミノ酸サイズ、電荷または疎水性の劇的な差をもたらす非保存的変異は、抗体結合に対してより大きな影響を与えると予想される。
【0174】
上位モデル複合体中のAPRIL-2419界面残基の目視検査は、2つの非保存的ヒト-マウス変異、Q181RおよびI219Kが、2419の重鎖上のR54の近位にあることを示した(
図16B)。muAPRIL中の位置181および219における2つの正に帯電した残基の存在は、静電反発ならびに2419のHCDR2上のArg54との潜在的な立体衝突をもたらし、muAPRILに対する2419の結合の欠如の主要な決定因子であり得ると仮定された。HCDR2上のR54のAspへの変異は、ヒト残基Q181およびI219への結合に有意に影響しないが、muAPRIL中のR181およびK219の正電荷と好ましい相互作用を形成すると予測された。さらに、R54Dと組み合わせるために、2419に対するいくつかの他の変異が推薦され、この変異では、残基をより小さいアミノ酸(T28A、L53V、S56A)に変異させて、muAPRILの位置181および219におけるより大きい側鎖の存在に起因し得るあらゆる潜在的な立体衝突を緩和した。これらの変異についての実験結果は、2419の3つすべての設計バリアントが、muAPRIL(
図16C)に対する実質的な結合を示し、huAPRIL(
図17)に対する結合に対する影響は、わずかであったことを示した。これらの結果は、ワークフローが、構造誘導抗体の再設計を容易にするのに十分な品質の抗体-抗原構造モデルを生成することを示した。
【0175】
実施例10:材料および方法
APRIL変異体位置の選択
手短に言えば、ホモ三量体マウスAPRIL(PDB:1XU1)の構造をガイドとして使用して、25%を超える相対的な側鎖表面アクセス可能性を有する残基を選択し、タンパク質表面上の位置の均一な表面被覆を確実にすることによって、表面残基の初期セットを選択した。構造内で分解された46の表面位置を選択し、分解されなかったタンパク質のN末端のさらに2つの残基を変異調査のために選択した(
図1のAPRILの配列および構造において強調されている)。変化させる各位置でNNK縮重コドンを使用して、部位飽和ライブラリーを設計および合成した(IDT)。
【0176】
酵母ライブラリーの構築およびFACS選択
酵母表面表示を前述のように行った。手短に言えば、キメラAPRIL遺伝子(A120D、H163Q、R181Q、K219I、N224R)を、ヒトAPRIL(huAPRIL)遺伝子に見出されるアミノ酸に変異したTACI結合部位およびその周囲の5位を有するマウス配列(残基96~241)を使用して設計した(
図1Aも参照のこと)。APRIL遺伝子の合成縮重(NNK)ライブラリーをPCR増幅し、線形化発現ベクターでEBY100酵母に共形質転換し、前述のように培養した。APRILライブラリーを発現する酵母を、最大結合80%に相当する濃度で抗体に曝露し、試験抗体および酵母APRIL表面発現タグMycに対する蛍光抗体で染色し、BD FACSAriaを用いて選別した。cMyc発現を示し、非変異APRILに対する結合よりも低い結合を有する酵母を選択した。2回のFACSを実施し、富化ライブラリーのAPRIL遺伝子をPCR増幅し、Illumina MiSeq 2x75 PE(Genewiz)によって配列決定した。
【0177】
次世代配列決定(NGS)分析
手短に言えば、高品質のリードをアセンブルし、さらなる分析のために鋳型遺伝子(APRIL)に対して単一のアミノ酸変化を含むものを選択した。各変異についての富化スコアを、以前に記載されたものと同様の様式で計算し、FACS後に非結合プール中に見出される発現体プールからの変異の割合を表した。
【0178】
高品質のリードを鋳型遺伝子(APRIL)にアラインメントし、N’を含むリード、インデル、および>10の塩基置換を有するリードを除去した。ヌクレオチドリードをアミノ酸リードに変換し、鋳型遺伝子に対して終止コドン、意図しない位置での変異、または2以上のアミノ酸置換を含むものを除去した。順方向および逆方向のアミノ酸リードを組み合わせ、1つを超える置換が観察された場合、または重複領域上の配列が一致しなかった場合、組み合わせたリードを除去した。各試料における各変異のカウントの中央値は、1,845であり、453(5パーセンタイル)~7,760(95パーセンタイル)の範囲であった。100未満のリードが観察された変異を、検討から除外した。各変異の富化スコアは、前述のものと同様の方法で計算した。非結合プールに収集された各サンプルについて、サンプル中の変異の位置依存的出現頻度は、以下のように、発現体プール中のその変異の出現頻度によって正規化され、非結合プール中に見出されるバリアントの割合によって調整される。
【数5】
ここで、
【数6】
は、サンプル(s)の位置(p)にある所与のアミノ酸(aa)の富化スコアであり、NB
sは、非結合プールに見られるバリアントの割合(プールサイズ)であり、f
p,aaは、サンプル(s)の非結合プールまたは発現体プール(wt)のいずれかからのアミノ酸の観察された位置頻度である。したがって、富化スコアは、FACS後に非結合プール中に見出される発現体プールからの変異の割合(ここではパーセンテージとして表される)を表す。
【0179】
Pro、Gly、またはCysへの変異は、N-グリコシル化部位を導入または除去すると予測された変異と同様に、さらなる分析から除去した。大部分のタンパク質の結合に影響を及ぼすことが観察された変異は、これらが三次または四次構造の変化などの間接的な効果を介してそれらの効果を発揮している可能性が高いので、除去された。対応する位置における各変異の効果を集約することによって、各残基について総富化スコアを計算した。富化スコアが高い残基は、結合に関して変異に対する感度が高いことを反映しており、位置がエピトープの一部である可能性がより高いことを示している。この試験では、試料の50%超が、30.0%超の富化スコアを有し、試料の75%超が、15.0%超の富化スコアを有する変異をさらなる分析から除去し(「無差別効果」、タンパク質折り畳みへの全体的な影響)、この試験で可能性のある816の変異のうち68を除去した。
【0180】
多数の単一点変異体(single point mutant)について富化スコアを計算したが、残基がエピトープの一部であるかどうかを決定する場合、各位置の変異データの集合体を考慮しなければならない。対応する位置における各変異の効果を集約することによって、各残基について総富化スコアを計算した。富化スコアを以下のように計算した:
【数7】
ここで、N
p,aaは、フィルタリング後の所与の位置におけるアミノ酸変異の数である。各変異に対する富化スコアの単純な合計ではなく、計算された総残基富化スコアは、大きな富化スコアを示した変異の効果をより重く重み付けし、低い富化スコアを示した変異からの寄与を減少させる。各位置について計算したら、視覚化による分析を容易にするために、残基富化スコアをタンパク質表面にマッピングした。
【0181】
抗体およびAPRILの相同性モデリング
モデルを選択するための公開されたプロトコルに記載された指針に従って、最近に記載されたRosetta抗体相同性モデリングプロトコル(Rosetta 3.8で実施)を使用して生成された2,800のモデルから、10の構造的に多様な抗体相同性モデルを選択した。相同性モデルはまた、デフォルト設定を使用してBioLuminateの(Schroedinger Release 2016-4:BioLuminate,Schroedinger,LLC,New York,NY,2016)抗体相同性モデリングプロトコルを使用して生成した。上位2つの非相同構造鋳型のそれぞれについて5つのモデルを作製した。2419の鋳型は、3DGGおよび3S35であり、4035の鋳型は、1FLDおよび4EDWであり、4540の鋳型は、2E27および5AZ2であった。
【0182】
抗原APRILについての相同性モデルを、鋳型としてのmuAPRIL(PDB:1XU1)の構造を使用してRosettaを用いて生成した。fixbb設計プロトコルを使用して、muAPRILと比較してAPRILに存在する5つの変異を導入し、ホモ三量体の鎖のそれぞれで適切な変異が確実に行われるようにした。次いで、Rosettaで実施された緩和プロトコルを使用して抗原構造のアンサンブルを生成し、それらのRosetta総スコアに基づいて100の緩和構造から25の最低スコアリングモデルを選択した。
【0183】
束縛を伴うグローバルドッキング
簡潔には、デフォルト設定を使用し、部位束縛としてより高い富化スコアを組み込むBioLuminateに実装されているように、PIPERを使用して全体的な剛体ドッキングを実行した。変異の際に結合に実質的な影響が観察された部位(ここでは残基富化スコア>30.0%として定義される)に対して誘引性束縛が追加され、変異の際に結合に最小限の影響を与えた部位(ここでは残基富化スコア<12.5%として定義される)に対して反発的束縛が追加された。20の入力抗体相同性モデルのそれぞれについてグローバルドッキングを実行し、合計600のドッキングポーズを生成した(クラスタ中心を表す30のポーズを各サンプルについて得た)。
【0184】
「エピトープスコア」を計算して、以下の式を使用して、各ドッキングモデルと実験的に決定された富化スコアとの間の一致レベルを評価した。
【数8】
ここで、ESは、エピトープスコアであり、Nは、束縛を有する部位の数であり、c
pは、位置pにおける束縛であり、E
pは、位置pにおける実験的に得られた富化スコア(前述のように計算される)である。各抗体について、600のドッキングモデルをエピトープスコアによってランク付けし、上位25のモデルをさらなるローカルドッキングのための開始テンプレートとして選択した。
【0185】
SnugDockによるローカルドッキング
グローバルドッキング後、直近に記載されたプロトコルを使用して、Ensemble SnugDock(Rosetta 3.8で実施)を使用してローカルドッキングを行った。20の抗体相同性モデルを抗体構造のアンサンブルとして使用した。BioLuminateによって生成された相同性モデルは、最初にRosettaを使用して緩和され、すべてのモデルが同じ力場によって生成され、一致することを確実にした。上位25の全体的なドッキングポーズを、Ensemble SnugDockの開始入力座標として使用し、各入力に対して200のドッキングモデルを生成し、合計5,000のドッキングモデルを得た。PIPERと同様に、富化スコアに基づいてSnugDockにドッキング束縛を利用した。ホモ三量体の対称性を説明するために、Rosettaの曖昧な部位束縛(シグモイド関数を使用)を抗原残基に適用して、それらがAPRILの任意のモノマーに由来することを可能にした。ローカルドッキングで束縛された残基のセットは、グローバルドッキングで束縛された残基と同等であった。
【0186】
SnugDockによって生成されたドッキングポーズをフィルタリングして、抗体-抗原界面の典型ではない界面を有するモデルを除去した。公開されている利用可能な抗体-タンパク質複合体の非重複性データベースを得て4、界面付近に欠損領域を有する構造、または界面でリガンドもしくは翻訳後修飾との複合体を除去するように精選した。得られた297の複合体について、エピトープに関与するCDRおよびフレームワーク残基の数、相互作用に関与するCDRループの数および種類、エピトープ残基の数、埋没表面積、およびペアワイズ残基傾向を含む、重要な界面特性の構造的特徴の分布を計算した(表1)。適切な閾値は、天然構造の95.2%が、構造フィルタのうち1つ以下に不合格となるように経験的に選択された。計算されたフィルタおよびその閾値を表1に列挙する。ドッキングモデルのそれぞれについて界面特性を計算し、2つ以上の構造フィルタに不合格となるモデルを除去した。残りのドッキングモデルは、エピトープマップスコア(グローバルドッキングについて記載)に基づいてフィルタリングした。エピトープの周辺部の残基は変異に対してより耐性であると予想され得るので、ドッキングモデルを低富化スコアを有する少数の残基と接触させた。ここで、本発明者らは、最大観察エピトープマップの80%未満の富化スコアを有するモデルを除去した。残りのドッキングモデルは、Rosettaを使用して計算した界面エネルギー(Isc)に基づいてランク付けした。
【0187】
競合ELISA
ビオチン化試験抗体(50ng/mLで固定)および非標識競合抗体(10,000ng/mLで開始する8点の段階希釈物)を、0.1μg/ウェルのヒトAPRILでプレコートしたウェルに移した。プレートを洗浄し、ストレプトアビジン-セイヨウワサビペルオキシダーゼを加えた後、洗浄し、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン基質を用いて展開した。ビオチン化試験抗体の結合の部分的または完全な減少の観察は、重複または隣接するエピトープへの結合についての抗体間の競合を示した。試験抗体に対して200倍モル濃度過剰で存在したときでさえ、結合シグナルの>90%を遮断することができない場合(10,000対50ng/ml)、抗体を「非競合」として分類した。
【0188】
調製、結晶化、および構造決定
ヒトAPRIL(残基105~250、(His)
6エピトープタグ))およびマウス抗体2419を、Expi293細胞において組換え発現させ、それぞれニッケルまたはプロテインA親和性クロマトグラフィーを用いて精製した。2419のFabフラグメントをパパイン消化によって生成した。APRILおよびFabは溶液中で3:3複合体を形成し(サイズ排除クロマトグラフィーによって決定)、複合体を精製した。2.2M硫酸アンモニウム、160mM硝酸アンモニウム、4%エチレングリコール、および沈殿剤として1mM NiCl
2を使用して、回折品質の結晶を得た。ほとんどの結晶は最大7Åの分解能までしか回折せず、凍結保護剤として20~36%のエチレングリコールを使用して、100Kで結晶から完全なX線回折データセットを収集した(表4)。
【表4】
【0189】
自己回転関数は、3:3のAPRIL-Fab複合体が、この擬3回対称に関連することを確認する、擬3回対称の存在を示唆した。Fab構造とともに、マウスAPRILホモ三量体結晶構造(PDB 1U5Y)に基づいて生成されたホモ三量体APRILモデルを用いた分子置換によって構造を解明し、APRILホモ三量体に結合した3つのFab分子を含む特有の構造ソリューションを得た。最終的な精密化統計を表4に示す。
【0190】
他の例示的な方法は、Wollacott et al.,J Mol Recognit.2019;32(7):e2778に記載され、その内容全体が参照により組み込まれる。
【0191】
参照による組み込み
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許および受託番号は、あたかも各個々の刊行物または特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0192】
均等物
本発明の特定の実施形態を説明したが、上記の明細書は例示的なものであり、限定的なものではない。本発明の多くの変形形態は、本明細書および以下の特許請求の範囲を精査することによって当業者に明らかになる。本発明の全範囲は、特許請求の範囲、その均等物の全範囲、および明細書、ならびにそのような変形を参照することによって決定されるべきである。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
標的ポリペプチド上のエピトープを同定する方法であって、
(a)抗体分子を前記標的ポリペプチドの複数のバリアントに結合させることと、
(b)前記抗体分子への減少した結合(例えば、低下した結合親和性)を示す複数のバリアントを得ること(例えば、富化すること)と、
(c)前記複数の前記得られた(例えば、富化)バリアントのそれぞれについて富化スコアを決定すること(例えば、計算すること)と、
(d)前記富化スコアに従って束縛される、前記抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルを生成することと、
(e)前記抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルに基づいて、前記抗体分子によって結合され得る前記標的ポリペプチド上の部位を同定することと、を含み
それによって、標的ポリペプチド上のエピトープを同定する、方法。
(項目2)
ステップ(a)が、前記抗体分子を、前記標的ポリペプチドの複数のバリアントを表示するライブラリーに結合させることを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
ステップ(a)が、前記抗体分子を、前記標的ポリペプチドの複数のバリアントを発現する(例えば、表示する)複数の細胞を含むライブラリーに結合させることを含む、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記複数の細胞のそれぞれが、前記標的ポリペプチドの約1つの別個のバリアントを発現する、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記細胞が、真核細胞、例えば、酵母細胞である、項目3または4に記載の方法。
(項目6)
前記複数のバリアントが、前記標的ポリペプチドの1またはそれを超える表面残基に変異を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記複数のバリアントが、前記標的ポリペプチドの選択された表面残基の別個の変異を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記複数のバリアントが、前記標的ポリペプチドの複数の選択された表面残基のそれぞれの別個の変異を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記複数のバリアントが、前記標的ポリペプチドの野生型アミノ酸配列に対して単一のアミノ酸置換を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記複数のバリアントのそれぞれが、前記標的ポリペプチドの野生型アミノ酸配列に対して単一のアミノ酸置換を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
前記単一のアミノ酸置換が、前記標的ポリペプチドの表面残基で生じる、項目9または10に記載の方法。
(項目12)
前記減少した結合が、野生型標的ポリペプチドおよび前記抗体について検出された前記結合に対して、前記バリアントおよび前記抗体分子について検出された結合の減少を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目13)
ステップ(b)が、野生型標的ポリペプチドによって示される前記抗体分子への前記結合の約80%未満(例えば、約0.01%、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%未満)を示すバリアントを得ること(例えば、富化すること)を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目14)
前記減少した結合が、前記野生型標的ポリペプチドによって示される前記結合の少なくとも約20%(例えば、少なくとも約20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)である、項目13に記載の方法。
(項目15)
ステップ(b)が、野生型標的ポリペプチドを含む細胞によって示される前記抗体分子への前記結合の約80%未満(例えば、約0.01%、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%未満)を示す細胞を得ること(例えば、富化すること)を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目16)
前記減少した結合が、前記野生型標的ポリペプチドを含む細胞によって示される前記結合の少なくとも約20%(例えば、少なくとも約20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)である、項目15に記載の方法。
(項目17)
ステップ(b)が、前記抗体分子への減少した結合を示すバリアントについて、1またはそれを超える、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれを超える富化を行うことを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目18)
例えば、ステップ(c)の前に、例えば、前記バリアントをコードする遺伝子を配列決定することによって、例えば、次世代シーケンシングによって、前記抗体分子への減少した結合を示す前記バリアントを同定すること、をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目19)
ステップ(c)が、前記複数の前記得られた(例えば、富化)バリアントのそれぞれについて出現頻度を決定することを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目20)
ステップ(c)が、特定の残基における別個の変異を含む各バリアントの出現頻度を集約すること、および/またはより高い出現頻度を有するバリアントを重く重み付けすること、をさらに含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記富化スコアが、前記標的ポリペプチドの前記アミノ酸配列の単一残基に特異的である、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目22)
各富化スコアが、前記標的ポリペプチドの前記アミノ酸配列の異なる単一残基に特異的である、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目23)
前記標的ポリペプチドの前記複数のバリアントの複製物を用いてステップ(a)~(c)を少なくとも1回(例えば、1回、2回、3回、4回、5回、またはそれを超えて)繰り返すこと、をさらに含み、ステップ(c)が、1またはそれを超える無差別変異、例えば、複製物の50%超が、30%超の富化スコアを有し、複製物の75%超が15%超の富化スコアを有する変異、を省略すること、をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目24)
前記抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルが、1またはそれを超える誘引性束縛を加えることによって束縛され、前記誘引性束縛が、第1の予め選択された値よりも大きい富化スコアを有する残基に対するものである、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目25)
前記第1の予め選択された値が、20%~40%、例えば、25%~35%、例えば、約30%である、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記誘引性束縛が、前記富化スコアに基づいて線形に調整されたボーナスを含む、項目24または25に記載の方法。
(項目27)
前記抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルが、第2の予め選択された値未満の富化スコアを有する残基に対する反発的束縛を加えることによって束縛される、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目28)
前記第2の予め選択された値が、5%~20%、例えば、10%~15%、例えば、約12.5%である、項目27に記載の方法。
(項目29)
ステップ(d)が、前記抗体分子のモデルと前記標的ポリペプチドのモデルとの間にドッキングポーズを生成することを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目30)
ステップ(d)が、前記抗体分子のモデルと前記標的ポリペプチドのモデルとの間に複数のドッキングポーズを生成することを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目31)
ステップ(d)が、ドッキングアルゴリズム、例えばSnugDockに従って前記複数のドッキングポーズをスコアリングすることをさらに含む、項目30に記載の方法。
(項目32)
ステップ(d)が、最高スコア、例えば、最高スコアリング1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、またはそれを超えるドッキングポーズを有する前記複数のドッキングポーズのサブセットを選択することをさらに含む、項目31に記載の方法。
(項目33)
ステップ(d)が、前記複数のドッキングポーズの前記選択されたサブセットを使用してアンサンブルドッキングポーズを生成することと、前記アンサンブルドッキングポーズに従って前記抗体分子の前記モデルおよび前記標的ポリペプチドの前記モデルを設定することと、をさらに含む、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記抗体分子の前記モデルが、前記抗体の複数の相同性モデルに由来するアンサンブル抗体相同性モデルを含む、項目29~33のいずれかに記載の方法。
(項目35)
ステップ(d)が、例えば、抗体-抗原結晶構造に由来する構造フィルタに従って、公知の抗体-抗原複合体には典型的でない会合様式を示す抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルを除去することをさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目36)
ステップ(d)が、複数の抗体分子-標的ポリペプチドモデルを生成することを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目37)
ステップ(e)が、前記抗体分子によって結合され得る前記標的ポリペプチド上の複数の部位を同定することを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目38)
標的ポリペプチド上のエピトープを同定する方法であって、
(a)抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルを生成することであって、前記抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルが、
(i)前記抗体分子を前記標的ポリペプチドの複数のバリアントに結合させることと、
(ii)前記抗体分子への減少した結合を示す複数のバリアントを得ること(例えば、富化すること)と、
(iii)前記複数の前記富化バリアントのそれぞれについて富化スコアを決定すること(例えば、計算すること)と、
を含む方法によって決定される複数の富化スコアに従って束縛される、前記抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルを生成することと、
(b)前記抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルに基づいて、前記抗体分子によって結合され得る前記標的ポリペプチド上の部位を同定することと、を含み
それによって標的ポリペプチド上のエピトープを同定する、方法。
(項目39)
抗体分子上のパラトープを同定する方法であって、
(a)前記抗体分子を標的ポリペプチドの複数のバリアントに結合させることと、
(b)前記抗体分子への減少した結合を示す複数のバリアントを得ること(例えば、富化すること)と、
(c)前記複数の前記富化バリアントのそれぞれについて富化スコアを決定すること(例えば、計算すること)ことと、
(d)前記富化スコアに従って束縛される、抗体分子-標的ポリペプチドドッキングモデルを生成することと、
(e)前記抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルに基づいて、前記標的ポリペプチドによって結合され得る前記抗体分子上の1またはそれを超える部位を同定することと、を含み
それによって、抗体分子上のパラトープを同定する、方法。
(項目40)
抗体上のパラトープを同定する方法であって、
(a)抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルを生成することであって、前記抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルが、
(i)前記抗体を標的ポリペプチドの複数のバリアントに結合させることと、
(ii)抗体分子への減少した結合を示すバリアントを得ること(例えば、富化すること)と、
(iii)前記複数の前記得られた(例えば、富化)バリアントのそれぞれについて富化スコアを決定すること(例えば、計算すること)と、を含む方法によって決定される(例えば、計算される)複数の富化スコアに従って束縛される、前記抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルを生成することと、
(b)前記抗体-標的ポリペプチドドッキングモデルに基づいて、前記標的ポリペプチドによって結合され得る前記抗体分子上の1またはそれを超える部位を同定することと、を含み、
それによって、標的ポリペプチド上のパラトープを同定する、方法。
(項目41)
標的ポリペプチド上の前記エピトープまたは前記標的ポリペプチドに対する抗体分子上の前記パラトープが、前記項目のいずれかに記載の方法に従って同定される、抗体分子。
(項目42)
項目41に記載の抗体分子の1またはそれを超える鎖(例えば、VHおよび/またはVL)をコードする核酸分子。
(項目43)
項目42に記載の核酸分子を含むベクター。
(項目44)
項目42に記載の核酸分子または項目43に記載のベクターを含む宿主細胞。
(項目45)
抗体分子の発現に適した条件下で、項目44に記載の宿主細胞を培養することを含む、前記抗体分子を作製する方法。